モバP「雨の強い日に」 (16)




三船美優「夜のデートってなんだか新鮮ですね」


そう言いながら嬉しそうに微笑む、君の手のひらの温もりを感じて歩く夜道


しかし何故だろう、少し寂しそうな顔をしている


自分の手はいつしか離れ、ポケットに手を突っ込み振える何かを探していた


まるで心の中の感情を漁るように荒々しく



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ヴー ヴー ヴー


P「ごめん、仕事のメールかもしれないからちょっと返信させて」


美優「いいですよ…仕事の事は大切ですから…」



◯月△日 21:31
from 高垣 楓
sub 今度のデート

今度のデートはショッピングに行きませんか?
服や家具を買いたいので、郊外のショッピングセンターに行きたいのですが?



楓からのメールに返信をして戻る


P「おまたせ、じゃあ行こうか」


美優「遅いです! 心配したんですよ…」


こんなはずじゃなかった、君一人を愛すつもりだったのに


美優「きれいな夜空ですね。けれど明日からは曇りが続いて週末には大雨になるらしいです。今週夜空が見えるのは今日が最後なんですね」



P「そうか、じゃあ今週最後の夜空を美優と見れたのか嬉しいな」


美優「は、恥ずかしいこと言わないでください…嬉しいですけど…」


そんな本心ではないくさい台詞を吐く
心の底では君を愛していないのに


ずっとずっと君の側で笑っていられる気がしてた


そっとそっと僕の心 君から離れていった




君といる時間が長くなるにつれて、大切な思い出、約束さえも僕を苦しめる縄になっていった


『二股をして何がいけない、これまで美優には優しくしてきた』

『付き合って長くなれば何時かは冷めて、自分の気持ちが変わることがあるはずだ』

そんな自己弁護の言い訳を頭の中で繰り返した

美優「あの…Pさん、手が怪我して、ますよ…?」

ハッとして我に帰り掌をみると、爪の痕が深く残っていた。





身勝手なことを正当化しようとしていた自分が恥ずかしくて、悔しくて、情けなくて、拳を強く握っていた。


ずっとずっと都合の悪い気持ちと向き合うことから

そっとそっと逃げ回ってた 綺麗事を盾にして



美優「あの、今日はありがとうございました。また今度もこんな風に何処かに行きましょうね?」

P「ああ、わかったよ。おやすみ」

美優「Pさん、おやすみなさい…」

キスをしたあと、帰っていく君の後ろ姿を眺めながら心の中に一つの決心が沸いた。



~気持ちを伝えよう、自分の心は君から離れていってしまったことを、もう愛していないことを~


~そしてこの事を伝えるなら雨の強い日にしよう、君が
声だして泣けるように~





プルルルルルル……ガチャッ
美優『はい、もしもしPさんですか?』


P「美優は今週の週末空いてるよな?」


美優『Pさん言う通りその日はオフですが…?』


P「話をしたいんだ、場所は中央公園で」


美優『いいですけど…週末は雨が降りますよ?』


P「屋根のあるベンチのとこなら大丈夫だろ、そこでしかできない話なんだ」


美優『…わかりました、じゃあ週末ですね』


P「ああ、じゃあな」

ガチャッ……ツー ツー…



ザァァァァァァァァァァァァァ……

予報通り、週末は強い雨になった。

時間より早く来て君を待つ

美優「すみません…遅れちゃいましたか?」

P「いや、俺が早いだけだよ」

美優「そうですか…あの、話って…」

P「ちゃんと聞いててくれ」

自然と鼓動が速くなる




P「俺は君と別れようと思う」




美優「…どう、して……?なんで…なんですか……?…どうして……?」


P「俺はもう、君のことを愛していないんだ。もう君から心が離れてしまったんだ」


美優「なん、で…?…私の、何が気に入らないんですか……?」


P「君は悪くない、俺が悪いんだ。俺の心が移り変わっただけだ」


美優「そん、なの……納得するわけ…ないじゃないですか……何があったんですか……?」


目に涙が溢れ、今にもこぼれてしまいそうになって、言葉が途切れるたび小さな嗚咽が聞こえる。


P「ずっとずっと俺は自分のことしか考えないでいた、
だから最後に心の奥から言いたい」


P「ごめんよ、そしてありがとう」


そう言った後、君を背にして帰る。
離れていくたび、君の嗚咽混じりの泣き声は雨の音に掻き消されていった。


ザァァァァァァァァァァァァァ…


雨の中傘をさして歩いていく、君との思い出の場所を歩いて行くたび心に何かが込み上げてくる。



込み上げてくるものは心のダムを越え、涙と嗚咽となって溢れ出た。



P「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



人目も気にせずに泣いていた、雨の強い日に。

すごく短いですがこれでおしまいです。

ちなみに元ネタは藍坊主の「雨の強い日に」からです

https://www.youtube.com/watch?v=gDnrSJwOI38&feature=youtube_gdata_player


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