穂乃果「朝起きると猫になっていた」 (65)
穂乃果「う~~ん……よく寝た」
穂乃果「──ううっ、寒い! って、なんで穂乃果、お外で寝てるの!?」
穂乃果「しかもここは私の家の前じゃん!」
穂乃果「もしかして寝ぼけて外に出ちゃったのかな……くしゅん」
穂乃果「夏とはいえ、朝はまだ冷えるなあ。とりあえずお家に戻ろう」スッ
穂乃果「……って何これ!? 家ってこんなに大きかったっけ!?」
穂乃果「さっきから何か変だけど早く家へ……」
穂乃果「ドアも大きくなってる……、なにがどうなってるの……?」
穂乃果「とりあえず開けてみよう──え?」
穂乃果「……え……え? ……私の手が……毛むくゃらになってる!」
穂乃果「しかもよく見ると指も小さくなってる……。これってまるで──猫の手みたい!?」
穂乃果「一体何がどうなってるの……?」
ガラッ
穂乃果ママ「今日はいい天気ね」
穂乃果「お母さん!」
穂乃果(お母さんまで大きくなってる……)
穂乃果ママ「あら、こんなところに猫が。可愛いわね」ナデナデ
穂乃果「──!」
穂乃果ママ「初めて見る子ね。人間に慣れてるのかしら、逃げないのね。よしよし」ナデナデ
穂乃果(お母さんに頭撫でられてる……それに、私のこと猫って……)
穂乃果ママ「さて、穂乃果たちが起きてくる前に掃除をすませましょう」
穂乃果(やっぱり私のこと穂乃果だって気付いてない。これってもしかして……もしかして……)
穂乃果「──確かめなきゃ!」タタッ
穂乃果ママ「きゃ、猫が家の中に入っちゃったわ」
穂乃果(幸いドアは開けたまま。鏡は玄関脇にある。それで自分の姿を確かめないと……)
穂乃果(──って位置が高い。そうだ、ここの鏡は上半身しか見えないんだった。これじゃ確かめようが……)
穂乃果ママ「もうだめじゃない。勝手に家に中に入っちゃあ」
穂乃果「お母さん!」
穂乃果ママ「さあ、お外出ましょうね」ヒョイ
穂乃果(お母さんに抱き上げられた。外に出されちゃう。……でもこれで鏡が見れる)
穂乃果(……ああ、やっぱり)
──鏡の中に映ったお母さんの腕の中には一匹の猫がいた。
穂乃果(穂乃果、猫になっちゃったんだ……)
穂乃果(でも一体なんで……)
穂乃果ママ「ごめんね、うち、食べ物屋だから動物入れちゃダメなのよ」
穂乃果(──お母さん! そうだ、猫になっても話せばわかってもらえるかも!)
穂乃果「お母さん、私だよ、穂乃果だよ!」ニャーニャー
穂乃果ママ「あら、急に暴れて。抱き上げられるのが嫌だったのかしら。でももうちょっと我慢してちょうだいね」
穂乃果(やっぱり通じない……穂乃果、言葉も話せなくなっちゃったみたい……)
穂乃果ママ「今度は急におとなしくなったわ。忙しい子ね。じゃあまたね」
穂乃果「あ……」
穂乃果(ドア、閉められちゃった……)
穂乃果(これからどうすればいいのかな……ずっと猫のままなのかな……)
穂乃果(そんなの嫌だよ! 学校に行きたい! せっかくスクールアイドルも始めたのにまだ何も出来てない! 廃校も阻止できてない!)
穂乃果(だけど、こんな姿のままじゃなんにもできない……)
穂乃果(本当に、どうしよう……)
ピンポーン
穂乃果「──あ」
海未「おじゃまします」
穂乃果(海未ちゃん!)
穂乃果(でもなんでうちに来たんだろう? いつもなら外で待ち合わせなのに)
穂乃果ママ「あら、いらっしゃい」
海未「おはようございます。穂乃果はもう起きてますか?」
穂乃果(海未ちゃん、穂乃果はここだよ!)
穂乃果ママ「それがねえ、いくら起こしても全然起きないのよ」
穂乃果(え? 私の体はちゃんとあるってこと?)
海未「またいつもの寝たふりですか?」
穂乃果ママ「それがそうじゃないみたいなのよ。ちょっと無茶なこともしたけど全く反応もなくて」
穂乃果(お母さん、ちょっとは手加減して……)
海未「それって……穂乃果は大丈夫なんですか!?」
穂乃果ママ「息はしてるみたいだけど、もしこのまま午後になっても起きないなら病院に連れて行こうかと思ってるの」
穂乃果(それって、私がここにいるから体の方は目を覚ましてないってこと……?)
穂乃果(うう、穂乃果バカだからよくわからないよ)
海未「穂乃果……」
穂乃果(海未ちゃんを心配させちゃってる……。ごめんね、海未ちゃん)
穂乃果ママ「大丈夫よ、あの子のことだからきっとひょっこり目を覚ますわよ」
海未「……そうですね、穂乃果ならきっと大丈夫ですね」
穂乃果ママ「穂乃果が目を覚ましたらすぐに連絡してあげるから、海未ちゃんは学校に行きなさい」
海未「はい、では失礼します」
穂乃果(お母さん、元気そうにしてたけど、少し声が震えてたな……)
穂乃果(海未ちゃんも明るく答えてたけど、今は顔が暗い……)
穂乃果(きっと雪穂やお父さんもそうなんだろうな……)
穂乃果(元に戻る方法はわからないけど、とりあえず海未ちゃんにくっついて学校に行ってみよう)
海未「……あら、猫がついてきています」
穂乃果(気付いてくれた!)
海未「この辺りは猫が多いですけど、あまり人に懐かないのに珍しいですね」
海未「よしよし、あ、頭も撫でられました」ナデナデ
穂乃果(あ、気持ちいい……)
穂乃果(海未ちゃん、嬉しそう。笑顔になってくれたし、初めて猫になってよかったと思った)
海未「どうしてでしょうか。取り立てて可愛いわけではないのに、この子には妙に惹かれるものがあります」
穂乃果(海未ちゃん!?)
海未「きっと穂乃果がことがあったからナーバスになってるだけでしょう。さあ、そろそろ行かないと」
穂乃果「待って、海未ちゃん! 私だよ、穂乃果だよ!」ニャー、ニャー
海未「まだついてきていますね。ですが私も行かないといけないので」
穂乃果(やっぱりダメかあ……)
ことり「あ、海未ちゃん、おはよう」
穂乃果(ことりちゃん! あ、そうかここは朝、いつも待ち合わせる場所!)
海未「ことり、おはようございます」
ことり「海未ちゃん、今日はちょっと元気ないね。体調でも悪いの?」
海未「……やはり、ことりにはわかってしまいますか。実は穂乃果が──」
ことり「ええっ、そんなことがあったの!? 穂乃果ちゃん、心配だなあ……」
穂乃果(ことりちゃん……ことりちゃんもごめんね、心配かけて)
海未「ええ……ですが私たちがいても何かできるわけではありません。それに穂乃果ならきっと大丈夫です。きっと何事もないように目を覚ましますよ」
ことり「うん、そうだよね……」
海未「はい、私たちはいつも通り過ごすべきかと思います」
ことり「うん、私もそう思う……」
海未「さあ、学校へ行きましょう」
ことり「うん。……あ、猫さん!」
穂乃果(ことりちゃん!)
ことり「わあっ、人懐っこい。すっごく可愛い!」さわさわ
海未「この猫、穂乃果の家の前からずっとついてきてるんです」
ことり「そうなの? あ、じゃあ実はこの子が穂乃果ちゃんだったりして」
穂乃果(ことりちゃん! まさか穂乃果に気付いてくれた!?)
海未「そんなわけないでしょう。まったく、なにか変な本でも読んだのですか?」
ことり「えへへ、そうだよね。そんなことあるわけないもんね」
穂乃果「ことりちゃん、違うよ! 本当に穂乃果なんだって!」ニャー!
海未「ほら、猫だって怒ってるじゃありませんか」
ことり「ゴメンね、猫さん」
海未「さあ、もう行きますよ」
ことり「うん」
穂乃果(ことりちゃんでもダメか……)
穂乃果(でも仕方ないよね、穂乃果だってそんなこと信じないと思うし)
穂乃果(そのまま海未ちゃんたちの後をつけていたら学校に着いてしまった)
穂乃果(まさかこんな姿で学校に来るなんて夢にも思わなかったなあ)
穂乃果(そういえばお腹が空いたな……朝は何も食べられなかったし)
穂乃果(外は人や車でいっぱいで怖いし、しばらくここにいよう)
穂乃果(お昼になればきっと誰かがお弁当をわけてくれるよね)
穂乃果(いろいろあって疲れちゃった……少し眠ってよう……)Zzz
穂乃果「…………」ムニャムニャ
穂乃果「──はっ」
穂乃果「えっと、今は……って、うわあ、もうすぐ放課後じゃん! かなり眠っちゃってたなあ」
穂乃果「お昼も食べ損ねてお腹がペコペコ……どうしよう……」
穂乃果「部室に行ってみようかなあ。きっとみんないるだろうし、もしかしたら誰かが穂乃果に気付いてくれるかもしれない」
穂乃果(運よく誰にも見つからないで部室前まで来れたけど、まだ誰も来てなくて開いてない)
穂乃果(もうチャイムも鳴ってるし、そろそろ誰か来てもいいころだけど……)
凛「あ、部室の前に猫がいるニャ!」
穂乃果(凛ちゃん!)
花陽「本当だ。でもなんでこんなところに?」
真姫「イミワカンナイ」
穂乃果(花陽ちゃんに真姫ちゃんも!)
凛「うわあ、猫だ猫! かわいいニャー」グシャグシャ
穂乃果(り、凛ちゃん、ちょっと痛い……)
凛「ほらほら、かよちん見て見て! 猫だニャ♪」
穂乃果(ああ、すごく痛かった……。これからは猫はやさしく撫でてあげよう)
花陽「ダメだよ、凛ちゃん。猫さん、ぐったりしてるよ」
凛「ホントだニャ! ゴメンニャ……」
花陽「凛ちゃんはいつもちょっと乱暴なんだから気をつけないとダメだよ」
花陽「ほーら、猫さん。毛並み直してあげるからおいで」ナデナデ
穂乃果(すごく気持ちいい……。うう、花陽ちゃんマジ天使。凛ちゃんはちょっと嫌いになったかも)
凛「さっすがかよちんだニャ♪ 猫さんも気持ちよさそう。凛にもしてほしいニャ」
真姫「さすが花陽ね。私は……その、猫苦手だからそんなことできないわ」
花陽「え、真姫ちゃんは猫が好きなんだと思ってた」
真姫「な、なんでよ?」
花陽「だって、ニコちゃんがネk」
真姫「うわああああ! い、いきなり何言ってるのよ、花陽!」ワタワタ
花陽「ご、ごめん……」
凛「どういうことなのかニャ?」
花陽「凛ちゃんは知らなくていいことだよ」
凛「かよちんがそういうならわかったニャ」
真姫「単純ね」
穂乃果(穂乃果にもよくわからなかったな)
真姫「で、その猫どうするのよ?」
凛「μ'sのみんなで飼うニャ!」
真姫「それって部室で飼うってこと? 無理に決まってるでしょ」
花陽「あ、それ面白いかも。μ'sのマスコットキャラクターみたいで」
真姫「ヴぇええ……、花陽まで……」
凛「いっそのことこの猫さんに部長になってもらうとかどうかニャ?」
花陽「いいかも。最近では猫が駅長さんをやったり社長だったりするし」
真姫「駅長はともかく社長なんていたかしら?」
凛「さっすがかよちんだニャ♪ じゃあ猫部長に決定!」
穂乃果(いきなり部長に昇格しちゃったよ!)
にこ「そんなこと認められるわけないでしょ!」
穂乃果(今度はニコちゃんだ)
真姫「ニコちゃん、いつからいたのよ?」
にこ「? 『凛ちゃんは知らなくていい』あたりからかしら」
真姫「絶妙なタイミングね……」
にこ「とにかく、ニコは部長を譲る気はないわ! その猫はさっさと追い出すことね」
穂乃果「ええええええええ! もうちょっとだけ待ってよお!」ニャー! ニャー!
凛「ほら、ニコちゃんが変なこと言うから猫さん怒っちゃったニャ!」
にこ「ニコのせいって言うの!?」
花陽「おー、よしよし。いい子いい子」ナデナデワサワサ
穂乃果(もう猫でもいいかな……)フワァ
絵里「いい加減にしなさい。なに猫相手にムキになってるのよ」
穂乃果(絵里ちゃん!)
にこ「だって凛ちゃんがその猫を部長にするって……」
希「それ以上言うとワシワシアンド喉をゴロゴロするよ」
穂乃果(希ちゃんも!)
にこ「ひえっ、希……、やめて、やめて……」
希「わかればいいんや」
絵里「で、その猫はどうしたの?」
希「誰かの飼い猫?」
凛「違うニャ、凛たちが来たら部室の前にいたニャ」
絵里「部室の前に? どうしてかしらね?」
花陽「さあ、それはわからないですけど……」
絵里「その猫ちゃんがしゃべってくれればわかるんだけどね。まあしかたないわ」
穂乃果(せめてしゃべることができればなあ……)
穂乃果(でもしゃべる猫とかちょっと怖いかも)
希「えりち、その猫どうするん?」
絵里「そうね、すぐに外に放してあげてもいいんだけど、部活終わってからでもいいわ」
絵里「どうせ今日は話し合いだけの予定だったしね」
凛「やったニャ♪ 絵里ちゃん、ありがとうニャ」
絵里「別に飼うとは言ってないわ。部活が終わったらちゃんと放してあげるのよ」
凛「はーい……わかったニャ」
穂乃果(やっぱりここも追い出されちゃのか。まあ仕方ないよね……)
絵里「ところで穂乃果たちは? まだ来てないようだけど」
希「なんて言ってたらちょうど向こうから来たやん」
凛「おーい、海未ちゃーん、ことりちゃーん」
海未「みんな、部室の前に集まってどうしたのですか?」
ことり「どうして中に入らないの? もしかして部室の鍵を失くしたとか?」
凛「それはこの子がいたからニャ!」ズイ
海未「その猫は朝の……」
ことり「わあ、朝に会った猫さん!」
希「この猫知ってるん?」
海未「はい、今朝、学校に向かう途中、その猫がずっと私のあとを追いかけてきたのです」
ことり「うん、とても人懐っこい猫ちゃんで可愛いの♪」
希「せやったんか、じゃあこの猫は海未ちゃんたちを追ってここまで来たということかな」
凛「感動的だニャー」
花陽「海未ちゃんたちはこの猫さんに愛されてるんですね」
絵里「ところで穂乃果の姿が見えないけど。今日は欠席かなにか?」
海未「っ!」
ことり「…………」
全員「?」
ことり「海未ちゃん……」
海未「……そうですね、ちゃんと話さないといけませんね」
海未「そのことは部室に入ってから話しますので、ひとまず中に入りましょう」
絵里「……穂乃果が目を覚まさない……って、本当なの? 海未、ことり」
海未「はい、私が朝、穂乃果の母から直接聞きました」
海未「もし目が覚めたらすぐに連絡してくれる手筈になってるので、連絡がないということはおそらくは……」
海未「念のためこちらからも掛けてみましたが、繋がりませんでした」
絵里「そう……」
ことり「穂乃果ちゃん……」
にこ「あのバカ……」
全員「…………」
穂乃果(みんな、心配かけさせてゴメンね……)
穂乃果(穂乃果だって早く元に戻っていつものように練習したいよ)
絵里「さすがに今日は部活って気分じゃないわね」
希「せやな、μ'sは9人いてこそなんやし」
にこ「目を覚まさないってなによ。起きてなきゃ文句も言えないじゃない」
真姫「いったいどうしたっていうのよ」
凛「穂乃果ちゃん、心配だニャー……」
花陽「うん、そうだね……」
海未「私はこれから穂乃果の家に行きます。放ってはおけません」
ことり「私も行くよ、海未ちゃん」
絵里「私も行きたいところだけど、あまり大人数で押しかけても迷惑でしょうから二人だけで行ってちょうだい」
絵里「なんたって二人は穂乃果の幼馴染だもんね」
海未「絵里……」
ことり「絵里ちゃん……」
絵里「今日はこれで解散にします。二人はすぐに行ってちょうだい」
海未「はい! 行きましょう、ことり」スッ
ことり「うん!」ダッ
穂乃果(私も!)タッ
凛「あ! 猫さんも行っちゃったニャ」
希「あの猫、本当に海未ちゃんたちを待ってたのかもしれへんな」
穂乃果(二人とも全力で走ってるけど、簡単についていける。猫の足ってこんなに速いんだ)
海未「穂むらには着きましたが、これは……」
ことり「臨時休業のお知らせ……」
海未「おそらく病院の行ったのでしょう。ですが、どの病院か分かりません……」
ことり「もう一度、電話してみよう!」
海未「…………やはり出ません。雪穂にもかけてみましたがこちらも……」
ことり「このあたりで行きそうな病院というと……西木野総合病院!」
海未「真姫のところの……行ってみましょう!」
海未「病院には着きましたが、一体どの病室でしょうか……」
ことり「海未ちゃん、あれ!」
海未「あれは雪穂! ということはやはりここに穂乃果が」
海未「雪穂! 穂乃果は、穂乃果はどうなってるんですか!」
雪穂「海未さん……」
ことり「海未ちゃん、落ち着いて。ここは病院だよ。もっと静かにしないと」
海未「ですが、穂乃果が……」
雪穂「…………お姉ちゃん」
海未「雪穂!?」
雪穂「……お姉ちゃんが目を覚まさないんです……昨日まではあんなに元気だったのに、今日になっていきなり……」
雪穂「昨日の夜、ちょっとした喧嘩をしたんです。いつもやってるような喧嘩で、本当に大した理由なんてなかったんです」
雪穂「いつもだったら次の日の朝にはお互い忘れてて、普通に挨拶して、ご飯食べて、行ってきますって言い合って……」
雪穂「なにの今回はそれができなかった。仲直りできなかった。喧嘩したままお姉ちゃんとお別れなんてイヤ……」
雪穂「うわああああああああああああ、お姉ちゃああああああああああああん!!」
穂乃果(雪穂……)
穂乃果(雪穂があんなに取り乱してるのなんて初めて見た……)
穂乃果(私も、雪穂と喧嘩したままお別れなんて絶対にイヤ! 絶対に元に戻ってもう一度会うんだ!)
海未「雪穂、落ち着いてください! それで穂乃果の病室はどこなのですか!?」
雪穂「…………×××号室です」
海未「ありがとうございます!」ダッ
ことり「あ、待って、海未ちゃん!」
穂乃果(私も行くんだ。そこに行けば元に戻れるヒントがあるかもしれない)
穂乃果(まだ雪穂の絶叫が聞こえる。ごめんね、お姉ちゃん、絶対に元に戻るから!)
海未「×××……ここですね。失礼します!」ガラッ
穂乃果(お父さん、お母さん……、そしてベッドの上に横たわっているのが……私)
穂乃果(パジャマも昨日着てたものと同じ。正真正銘、私だ……)
穂乃果ママ「海未ちゃん……ことりちゃん……」
ことり「穂乃果ちゃんの様子はどうですか?」
穂乃果ママ「…………」フルフル
海未「そうですか……」
穂乃果ママ「お医者様も手は尽くしたが原因はわからないって……」
穂乃果ママ「この子が何をしたっていうの? そりゃあこの子は頭は悪くて勉強は全然できないけど、家の手伝いもちゃんとするし、家族も友達も思いやれる優しい子で、今だって母校を廃校から救おうと一生懸命がんばっている」
穂乃果ママ「穂乃果は何も悪いことはしていない。なのに、なんでこんな良い子がこんな目に遭わないといけないの? ねえ、どうして? ねえ?」
穂乃果(お母さん……)
穂乃果(お母さん……、勉強できなくてゴメンね。私もお母さんのこと大好きだよ)
海未「穂乃果……」
ことり「穂乃果ちゃん……」
海未「どうして目を覚まさないんですか。あなたは授業中にだってよく寝ています。普段からたっぷり睡眠をとっているはずです。もう十分眠ったでしょう。なのでいい加減に起きてください……」
ことり「穂乃果ちゃんは一度やると決めたことは絶対に投げ出したりしないよね。まだオトノキを廃校から救ってないよ。絵里ちゃんや希ちゃんが入ってやっと9人揃ったっていうのにこんなのってないよ!」
海未「そうです! 私たちを巻き込んでおいて自分だけ抜けるなんて卑怯です!」
ことり「ねえ、穂乃果ちゃんお願いだから起きて。私、穂乃果ちゃんがいないと寂しいよぉ……」
海未「穂乃果!!」
ことり「穂乃果ちゃん!!」
穂乃果(海未ちゃん、ことりちゃん……)
穂乃果(穂乃果はたくさんのひとを悲しませた。お父さん、お母さん、雪穂、海未ちゃん、ことりちゃん、μ'sのみんな……)
穂乃果(でも同時にたくさんのひとの想いに触れることができた)
穂乃果(こんなにもみんなを悲しませてしまったことは簡単には償えないけど、私はみんなに愛情を教えてもらった)
穂乃果(元の姿に戻ったら、みんなに与えてしまった悲しみと、みんなに貰った愛をお返しに行くんだ)
穂乃果(だから、穂乃果は絶対に元の姿に戻る──)
そう思うと、体は自然と駆け出していた
私の体が眠っているほうへと
そして、真っ白な光に包まれると、私の意識はそこで途切れた──
穂乃果「……う……ん」
海未「穂乃果! 穂乃果!!」
ことり「穂乃果ちゃん、目が覚めたの!?」
穂乃果「……海未ちゃん……ことりちゃん、……ここは、どこ?」
穂乃果ママ「穂乃果! 目が覚めたのね! よかった……」
穂乃果「お母さん……」
穂乃果「お父さん、それに雪穂も……。みんな揃ってどうしたの?」
海未「どうしたの、じゃありません! あなた、一日中眠ったままだったのですよ!」
穂乃果「穂乃果が……?」
ことり「そうだったの。でも目覚めてくれて本当に良かった!」
雪穂「お姉ちゃあああああああああん!!」ガシッ
穂乃果「……雪穂、ちょっと痛いって。そんなに強く抱きしめないでって」
雪穂「お姉ちゃんが私を置いて行こうとしたのが悪いんだよ! もう絶対一人でなんて行かせないから!」ギュッ
穂乃果「雪穂……ごめんね……」
雪穂「謝らなきゃいけないのは私のほうだよ……お姉ちゃん、ごめんなさい……」
海未「穂乃果、体の方は問題ありませんか? あなたはずっと眠っていたのですから、なにか変なところがあったらすぐに言ってください」
穂乃果「体? 特に何も問題ないよ。……ああ、そういえば」
ことり「なに?」
穂乃果「関係ないと思うんだけど、なんか不思議な夢を見ていた気がする」
海未「夢……ですか?」
穂乃果「うん。でも全然中身を覚えてないんだ。でもなんとなく、つらいけど幸せな夢だったのは覚えてる」
海未「なんなんですか、それは……」
穂乃果「海未ちゃん、ありがとね。ことりちゃんも」
海未「いきなりお礼を言うとかどうしたんですか」
穂乃果「わからない。でも言わないといけないような気がしたんだ」
穂乃果「雪穂、お母さん、お父さんもありがとう。穂乃果、今とても幸せな気分だよ」
終わりです
正直、オチを考えないままで勢いで書いたんで後半グダグダです
本当は、海未ちゃん家で少しおかしくなった海未ちゃんに一晩中撫で回されるシーンとか書きたかったけど、うまく流れを作れませんでした
穂乃果パパはよくわからないのでセリフも無しに()
他の人が書いたSSを読むのも好きですが、猟奇的なのはちょっと……
安価スレは怖いです……
それではノシ
このSSまとめへのコメント
小学校の道徳の教科書に載ってそうな話だなと思った。
凛ちゃん猫アレルギーなんだよなぁ
うみちゃん撫で回してもええんやで