【姉御】ボーイッシュなあの子が可愛い【メガネ】 (63)



春の涼けさの残る6月の夜のこと、月に照らされた男女が向き合うように立っていた


「ぼ、僕は君が好きだ!!」


少年は少し緊張しているのか、頬が紅く染まっていた

しかし、視線だけは彼女から1mmも逸らさなかった

先程まで少年を応援するように五月蝿く鳴いていた虫たちが一斉に鳴り止んだ


「…………」


少女も視線をそらさず少年を見つめ、そしてゆっくりと口を開けた





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少年の名前はメガネ。彼女いない歴=年齢のどこにでもいる高校生童貞

少女の名前は姉御。勝気な性格だが素直に自分を出せない初心女子校生

これは、そんな二人が織り成す甘いを越した恥ずかしい物語である








季節は戻って四月


入学式と書かれた立看板の前で真新しい制服を着て写真を撮る家族の横を

一人の少年は携帯を見つめながら歩いていた

『ごめんね……、母さんも父さんも行けなくなっちゃった』

と書かれたメールを見て溜め息を零した

(今どき親同伴じゃなくて悲しむ高校生がどこにいるんだよ……)

彼の名前はメガネ。彼女いない(ry……の今年入学の一年生だ

メガネは適当に返信を終えると、止めていた足を再び進ませようとしたとき



ドンッ!!


「うわぁ」

「ちょ!!」

二つの驚いた悲鳴が交差すると同時に、バランスの崩れた二つの影は地面へと倒れていった

「いててて……」

少年は衝撃の痛みに顔を歪ませながら

「ハァ……酷い目にあったなぁ」

と溜め息混じりに愚痴をこぼした


「酷い目ににあったのは……」

「はい?」

少年は先程から腹辺りに、柔らかい感触が乗っているのに気付き

声のする方へ視線を向けると腹にまたがるように座るショートヘアの少女が

拳を握り締め何かを呟いていた

「えーっと、大丈夫?」

少年はとりあえず、少女の心配をするように声を掛けた

「だ、大丈夫なわけねーだろ!!///」

少女は叫ぶと同時に握り締めていた拳を力いっぱい少年の腹めがけて振り落とした

「で、ですよねー……ぐふっ」

そう言い終えると彼は静かに意識を手放した






次に彼が目覚めたときは、見知らぬ白い天井を見上げていた

「あれ?ここどこだ……」

少年がベッドから身を起こそうとしたとき

「気がついた?」

どこからか可愛らしくともくすぐったくとも聞こえる声が聞こえてきた

少年は立ち上がると、カーテンの奥から聞こえた声の主を確かめるべく

勢い良くカーテンを開けた

「あれ?確かに聞こえたんだけどな」

そこを開けると小学5年生ぐらい?の女の子が、子供デスクに座っていただけだった


「ねぇ、君以外の誰かがいなかったかお兄ちゃんに教えて欲しいなぁ?」

メガネは相手を怖がらせないように、なるべく下から頼み込んだ

「…………」

しかし女の子は聞こえていないのか、黙々と目の前に広げられたノートに何かを書き込んでいた

メガネは聞こえていないものだと思い、気づかせる為に女の子の肩に触れた瞬間



「へぇ……?」


気の抜けた声を上げたのはメガネだった

と次の瞬間、視界が逆さまになったかと思うと本日二回目の地面との接触をしていた

(な、なんだ?何が起きたんだ!?)

突然のことで理解できていないのか、目をパチクリさせ当たりの様子を見渡した。すると


「おうおうおう、ガキの分際で調子のってんじゃねーぞ。テメーのせいで仕事が増えちまっただろうがぁ!!」


「えっ?」


メガネは声のする方へ視線を向けると先程の女の子が意地悪そうな顔で自分を見下ろしていた



「これはどういうことでしょう……?」


メガネは姿勢を正すと無意識なのか、目の前の女の子に対し畏まった口調で質問をしていた

「理解出来てないようだから、しょうがねぇから教えてやる!講堂前でお前が倒れてたから保健室(ココ)に運ばれた。以上」

「凄くわかりやすいけど、もの凄く適当に聞こえる……いやいやそうじゃなくて」

メガネは、ここに運ばれた理由は少しだが予想できていた

いま引っ掛かっているのは、目の前の可愛らしい容姿からは、考えられない動きで軽々と投げ飛ばされたことだった


「そういえば、さっきのは何!?子供とは思えない動きだったけど、てか君は何者なんだ?」

「あぁ……そういっぺんに質問してんじゃねぇよ。まったく、これだからガキはめんどぉだぜ」

女の子はヤレヤレと言いたそうに椅子に腰掛けてタバコに火を点け始めた

(僕よりガキな子がタバコ吸ってるぅぅぅ!!)

「あぁん、何か言いたげだな……テメェも吸いてぇんか?」

メガネは全力で首を横に振ると黙り込んでしまった



「保健医だ……」

「えっ」

「保健医だって言ってんだろ、聞こえてんなら返事しろガキっ!!」

「は、はははははい…………ん?ええええええええええええええ!!」

「なんだよ、うっせぇ野郎だなー……」

保健医と名乗る女の子は、眉間にシワを寄せながらメガネを睨んだ

メガネが驚くのも無理はない。自分よりも幼いと思っていた女の子が、保健医という冗談にしては笑えないソレであったのだから

「ほ、ほ保健医ってことは成人なさってるんですよね?」

「ガキの分際で大人様を疑ってんですかー?」

そういうと女の子はポキポキと指を鳴らしながら意味深な笑みを浮かべた


「…………すいませんでしたー!!」

メガネの奥底に眠る野生の勘が危険信号を発したのか無駄のない動きで地面にひれ伏した

「それでいいんだよ。まだケツの青いガキが余計なことなんざ考えてんじゃねえよ」

「は、はぁ……」

「賢く生きろ、じゃねーとあぁなるぞ」

メガネは保健医が指を指す方に近づいてみると



「あ……さっきの」


そこには先ほどの騒ぎで出会った少女がロープでグルグル巻にされていた

「んーんーんー!」

「えーっと、これも説明お願いできますか?」

「少しとっちめようとしたら、暴れたから本気で締めた。以上」

「んーっと……ご愁傷さま?」

メガネはグルグル巻きにされている少女に手を合わせるとドアへと歩いていった

「おいおい……何帰ろうとしてやがる」

「えっ?だって入学式が……」

「いいんだよ、そんなめんどくせーモン出なくて」

「ここで俺と話すか、そこのソイツを連れて入学式に出るかどっちがいい?」

(な、なんだよ、その究極の選択……そういうのってもっと大人になってから問われるもんじゃねーのかよ)

「さぁ!さあぁ!!さああぁ!!!……」

「んーんーんー」ウルウル…

「今夜のご注文はどっちだぁ!!」

「あ〜〜〜〜、もぉ〜〜〜!!」

メガネは何かを覚悟したのか、ゆっくりと口を開けた




「えー、以上をもちまして今年度の入学式を閉会します。新入生の諸君は各自の担任の指示に従いましょう」

ざわざわ……ざわざわ……

「ふー、なんとか出られた……」

メガネは額の汗を拭いながら椅子の背もたれに全体重を預けた

結局あの後、少女のロープを解いてやり、自由にしてやったところまでは良かったが、

ソレと同時に鳩尾にパンチを頂き「死ねっ!」と罵声を頂き

保健医には大笑いされながら体育館の場所を聞き出し、現在に至るのであった

(俺が何したってんだよ……ハァ、初日から最悪だ)

「おい!」

「……んあ?(いま悲観中なんだよ!そっとしておいてくれよ……)」

メガネは声をかけられたので、ダルそうに反応した


「入学初日から問題を起こすとか、やるなお前!こんなふざけた奴は見たことねーよ」

勘弁してくれと言いたげに溜め息を零すと身を起こした

「俺、友な!いやー、お前一躍有名人だぜ」

「……俺はメガネ宜しく。ははは、勘弁して欲しいよホント」

すると周りの人間たちも話を聞いて興味がわいたのかワラワラと群がってきた

(俺のバラ色になる予定だった高校生活が……アディオス)

メガネはできるだけ変に見られないように無難な受け答えで対処していった




「それじゃ大統領。そろそろお時間ですし、お部屋の方へいきませぬか?」

何のキャラだよと思いながら友からの誘いに素直に頷き案内されるように後ろについて行った

教室につくとさっそく友が意気揚々と座席を確認しに走り出した

(どうせ出席番号順だろ……いいや、予想つくし適当に座ってよ)

メガネは小・中の席のパターンを思い出し適当な席に座った

「おい……」

「ん?」

席に腰掛けて一息つこうとしたとき、後ろから急に声を掛けられた

「またかよ、今度は……なんの御用でございましょうか?」ガクガク

そこには今日だけで三度目の顔合わせとなる例の少女がイライラしたように、こちらを睨んでいた


「そこ私の席だから……どけ」

「すすす、すいません。……というより一緒のクラスだったんですね。僕はメガネ宜しくね」

メガネは自分の持てる力を全て注いぎ、嫌味にならない口調と笑みで挨拶をした

「死ね……ゴミ」

そう言い終わるとハンカチを取り出し先程までメガネが座っていた椅子の上に敷いた

(ハハハ……さいですか)

メガネは俯いて座席表を確認しようとフラフラと歩きだした


「待てよ……」

「えっ?」

メガネは突然呼び止められて驚いた

「忘れもん」

そういうと少女はカバンから何かを取り出しメガネに投げつけた

「わわっ!!あれ、俺の携帯……なんで?」

「めんどくせーな、落ちてたから拾ったんだよ。それと……」




「さ、さっきは、助けてくれてサンキューな///」




ドキューーン


その瞬間、メガネはハートを何かに撃ち抜かれたような衝撃を受けた

「…………」

「おい、大丈夫か?」

少女は急に黙ってしまった目の前の男に不安を感じ動揺が隠せずにいた。そこへ


「聞いてくれー!俺とお前の席となりだってよ……ってアレ?」

意気揚々と戻って来た友が先ほどと空気が一変していることに気が付いた

「おーい、メガネー」

友は状況がいまいち掴めていないが、とりあえずメガネに話しかけてみることにした

すると先程まで微動だにしなかったメガネがゆっくりと口を開けた


「可愛……る」


「「えっ?」」

「可愛すぎるだろおおおおおおおお!!なんだよ、なんだよツンデレちゃんですか!?
 大好物だよバーカ!初めは無愛想だったのに、これは卑怯だろ!ふおおおおおおお!」

「お、おい……急にどうした!! お前からも何か言ってやってくれよ」

「か、可愛いって言うんじゃねー//////や、やっぱ死ねぇぇぇぇぇ!!」


ギャーギャーギャー

 < ナンダ、ケンカ カ?  < アサモ、アイツラ ヤッテタゾ < リアジュウ、バクハツ シロ−!!


「ダメだこいつら…………もう知らね」

友は自分の席に着くと深く溜め息を零した

(俺の高校生活が変態どものせいでどうにかなりそうな件について…………ハァ)

さてさて、どこにでもありそうな彼らの日常が静かに幕を開けた


以上、次回は水曜 夜10:00を予定しております。では

なぁ、知ってるか
女子『校』生ってのは女子校に通ってる生徒を指す言葉だ

そして
「女子『高』生は基本的に18歳未満だろうけど、女子『校』生だから18歳未満とは限らないんだぜ!」

とAVやエロゲが
「この作品の登場人物に18歳未満はいません!アウトな要素はありません!どう見てもセーフです!」
とごまかすために使う言葉でもあるんだぜ

姉御はどっちなんだい

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