ペトラとオルオの仲が良いだけの話
*
オルオ「なあ、ペトラ」
ペトラ「なに、オルオ」
オルオ「俺が死んだらお前、どうする?」
ペトラ「え、オルオ死ぬの」
オルオ「死なねぇよ。例えばの話だ」
ペトラ「ふーん、まあ、泣くかなあ」
オルオ「そうか」
ペトラ「じゃあ、オルオは私が死んだらどうする?」
オルオ「殺しても死なんだろ、お前は」
ペトラ「殺してかつ死んだ場合は」
オルオ「まあ、泣くだろうな」
ペトラ「なにそれ、それだけ?」
オルオ「お前と同じ答えだろうが」
ペトラ「いやいや、オルオから言い出してきたんだからもっと気の利いた答え用意しといてよ」
オルオ「お前は俺が守るから死なん、とかか?」
ペトラ「うーん、65点」
オルオ「ちなみに模範回答は」
ペトラ「え?いきなり言われてもそんなの考えてないよ」
オルオ「じゃあなんでその点数なんだよ」
ペトラ「気分とオルオが言ったということを加味しての点数です。ちなみに兵長がそれを言ったとしたら2500点」
オルオ「インフレ起こしすぎだろ」
ペトラ「だって兵長かっこいいもん」
オルオ「俺は」
ペトラ「え…」
オルオ「おいおい、俺様がかっこよすぎて声にもならないってか?」
ペトラ「…オルオのそういうポジティブなとこ好きよ」
オルオ「そりゃ、どうも。なんなら嫁にしてやってもいいぞ」
ペトラ「この度はペトラの旦那候補選考にご応募いただきまして誠に有難うございました。慎重に選考させていただきました結果、オルオ様のご期待に添えない結果となりました」
オルオ「おい」
ペトラ「ここにご報告させていただきますと同時に、ご了承いただきますようお願い申し上げます。オルオ様の今後のご健闘をお祈り申し上げます」
オルオ「おい、祈るな」
ペトラ「だって、オルオが変なこと言うから」
オルオ「嫁にもらってやるって言っただけだろ」
ペトラ「ご遠慮させていただきます」
オルオ「ふん、後悔するなよ。お前をもらってやろうなんて物好きなやつは俺だけだと言うのに」
ペトラ「いやいや、引く手数多だし」
ペトラ「…まあ、でも」
オルオ「でも?」
ペトラ「このままなーんにもないまま30歳になっちゃったらオルオと結婚してもいいよ」
オルオ「なんで俺がそんなババァを嫁にもらわなきゃならんのだ」
ペトラ「はぁ?私が30歳ならオルオも30歳なんですけど」
オルオ「男はいいんだよ」
ペトラ「じゃあ29歳」
オルオ「25歳」
ペトラ「28歳」
オルオ「なんで刻むんだ。…26歳」
ペトラ「…27歳、これで手を打とう」
オルオ「いやいや、俺だって若い女の肉体を楽しみたいんだが?」
ペトラ「は!?うわ、なにそれ。…35歳」
オルオ「おい、めっちゃ増えてんじゃねぇか」
ペトラ「オルオが気持ち悪いこと言うのが悪い。…いやらしい目でこっち見ないで。その眼球にアンカー撃ち込もうか?」
オルオ「いて、おい、目潰しやめろ」
ペトラ「ズババババババ…」
オルオ「おい、のしかかってくんじゃねぇよ。あと目潰しをやめろ!」
ペトラ「これに懲りたら私のことをいやらしい目で見るのはやめてよね」
オルオ「確約は出来んな」
ペトラ「…立体機動用意!」
オルオ「わかったわかった。指をこっちに向けるな!というかだな、ペトラお前近すぎる。離れろ」
ペトラ「いいじゃん…オルオといると落ち着くんだもん」
オルオ「ペトラ」
ペトラ「はあ…これがオルオじゃなければなあ…兵長ならなあ…」
オルオ「……おい、ちょくちょく俺に失礼な発言をするな」
ペトラ「本当のことだもん」
オルオ「なら自分の部屋帰れよ」
ペトラ「やだ、オルオのベッド落ち着くんだもん」
オルオ「襲うぞ」
ペトラ「訓練兵時代、対人格闘だけは互角だったの忘れた?」
オルオ「言ってろ」
ペトラ「………私、強くなったよ?」
オルオ「それはわかってる…が、ペトラ、あまり男をなめないほうがいい。まあ、俺は舐められるのは嫌いではないがな」
ペトラ「気持ち悪い。離れて」
オルオ「だから、お前が離れろ。狭いんだよ。俺のベッドだ」
ペトラ「やだ」
オルオ「ならもっと詰めろ」
ペトラ「わ、ちょっと、押さないでよ」
*
エルド「お、エレン。オルオたち起こしてきてくれたか?もう朝食できるからな」
エレン「えっと…」
エルド「なんだ…その様子だとまたあいつら同じベッドで寝てたんだろ」
グンタ「またか」
エレン「あの…よくあることなんですか?」
グンタ「まあな」
エレン「…まさかペトラさんがオルオさんと付き合ってたとは思いませんでした」
グンタ「ん?あいつら別に付き合ってないぞ」
エレン「え?」
エルド「あいつらはあれが普通なんだよ。ほら、お前にも幼馴染いるだろ?小さいときは一緒に寝たりしなかったか?」
エレン「…しましたけど、本当に小さいときですよ」
エルド「ま、普通はそうだな。はじめは俺たちも驚いたが…まあ、もう慣れた。あれがあいつらなんだろう」
グンタ「あいつらは訓練兵時代の同期だからそこまで昔馴染みっつーわけじゃないが、馬が合うというか合いすぎるというか…一緒にいるのが当たり前みたいな関係なんだとよ」
エルド「エレンはまだ見たことないだろうが、あいつらの連携技は本当にすごいぞ?息ぴったりだ」
エレン「…でも付き合ってないんですよね?」
エルド「………それを言ってやるな」
グンタ「付き合うのも秒読みと言われてもう何年になるのか」
エルド「オルオがペトラのことを好きなのはもうお察し状態だと思うが、ペトラが…なかなか手ごわいんだ」
グンタ「ペトラの理想が兵長というのがなぁ…」
エルド「それより、よくオルオも我慢してられるよな。ペトラみたいなかわいい女が隣りで寝てたら何もしない自信がないぞ、俺は」
グンタ「エルド、あまり不粋なことを言ってやるな」
エルド「悪い、悪い」
エレン「はあ…でもそれならペトラさんのあの毒舌は愛情の裏返しってやつなんですか?」
グンタ「いや、あれは半ば本気で気持ち悪がっているな」
エレン「え、オルオさん不憫」
リヴァイ「おい、お前ら」
エレン「!兵長、おはようございます」
リヴァイ「…ペトラとオルオがまだのようだが」
エルド「ははは、兵長聞いて下さいよ。エレンに起こしに行かせたんですが、あいつらが一緒に寝てるのを見てびっくりしてそのまま帰ってきちまったんですよ」
リヴァイ「…知らなかったのか?」
エレン「知りませんでしたよ」
リヴァイ「まあ、いい。とっとと起こして来い」
エレン「え、またオレがいくんですか?」
グンタ「ほら早くしろ、エレン。それともお前には刺激が強すぎたか?」
エレン「グンタさん何笑ってるんですか。…分かりました。行ってきますよ」
*
エレン「ペトラさん、オルオさん、起きて下さい」
ペトラ「んー…」
オルオ「………」
エレン「………」
エレン「…オルオさん、起きてますね」
オルオ「寝てるぞ……ペトラは」
エレン「やっぱり起きてるじゃないですか。早く起きて下さいよ、朝食もう出来てます」
オルオ「ペトラを起こしてくれ。こいつ寝起きが悪くてな」
エレン「…?ペトラさんいつも朝早いじゃないですか」
オルオ「俺と寝た日は寝起きが悪いんだよ。…まあ、ぐっすり眠り過ぎてるというかな」
エレン「なんですか、それ」
オルオ「俺ほどの包容力があるとな?自然と女を安眠させられるんだ。覚えておけ」
エレン「はあ…」
オルオ「なんだその目は」
エレン「……いえ…ペトラさーん、起きて下さい」
ペトラ「…ん……お父さ…ん…」
エレン「!」
エレン「…あの」
オルオ「あと少しだけ寝かせてやってくれ」
エレン「オルオさん」
オルオ「ペトラは元々そんなに成績良くはなかったからな。精鋭班に選ばれるまでにどれだけ努力してきたかお前には想像もつかんだろう」
オルオ「選ばれてからもそうだ。紅一点だからってわけじゃねぇが周りに置いていかれないように毎日根詰めて訓練してる」
オルオ「…そんなペトラがゆっくり寝れるってんなら俺はいつでも側にいてやりてぇんだよ」
エレン「…オルオさん…その、言ってることはかっこいいんですけど…朝勃ちが…あの、それ…ペトラさんが起きる前にどうにかしたほうが」
オルオ「………」
オルオ「お前に俺の気持ちが分かってたまるか」
エレン「し…心中お察しします…」
エレン「ペトラさん、そろそろ本当に起きて下さい」
ペトラ「ん、オルオおは…よ………あれ、エレン?…オルオは?」
エレン「はは…」
*
ペトラ「ねぇ、オルオ」
オルオ「なんだ、ペトラ」
ペトラ「私が死んだらどうする?」
オルオ「縁起でもねぇこと言うんじゃねぇよ。明日は壁外調査だぞ」
ペトラ「前にも話したじゃん。例えばの話だよ」
オルオ「まあ、泣くだろうな」
ペトラ「そうじゃない」
オルオ「なんだ?」
ペトラ「そうじゃないでしょ?」
オルオ「…お前は俺が守るよ」
ペトラ「55点」
オルオ「なんで前より下がってんだ」
ペトラ「すぐ言わなかったから」
オルオ「いやいや、いきなり言われてもな」
ペトラ「ちなみに」
オルオ「うん?」
ペトラ「ちなみに模範回答は…」
オルオ「………」
ペトラ「俺に背中を預けてくれ」
オルオ「考えてそれか」
ペトラ「違う。いま思い出して、いま思い付いて、いま言いたくなったの」
オルオ「…お前の背中を俺に預けてくれ」
ペトラ「オルオの背中も私に預けて」
オルオ「あぁ」
ペトラ「ふふ」
オルオ「勝手に死ぬんじゃねぇぞ」」
ペトラ「オルオこそ。…約束だからね」
オルオ「おう」
ペトラ「約束守れる?」
オルオ「しつこいぞ、ほら、明日の準備は全部終わってるのか?」
ペトラ「うるさいなあ。終わってるよ…でね?…オルオが約束守れるならね」
ペトラ「25歳でいいよ」
オルオ「あ?」
ペトラ「なんでもない。明日、頑張ろうね。お休み」
オルオ「…24歳」
ペトラ「ばーか」
オルオ「うるせ」
ペトラ「………ふふ」
オルオ「……もう寝ろ」
ペトラ「うん、今日は自分の部屋で寝るね」
オルオ「明日はこっちきてもいいぞ」
ペトラ「考えとく」
オルオ「いやいや、そこは素直に頷けよ」
ペトラ「…お休み、オルオ」
オルオ「…お休み、ペトラ」
ペトラ・オルオ「「また明日」」
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