コブラ「無口な男はモテるってね」 キリコ「……」 (162)

コブラ(COBRA THE SPACE PIRATE)と装甲騎兵ボトムズのクロスオーバー
一応全部書き終わっていますが、ちょいちょい誤字確認しながらゆっくりと投下していきます
ゆったりとしていって下さい

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俺の運命を狂わせた、あの忌々しい日々はようやく終わりを告げた。
人に知恵の実を託さんとして、神は死んだ。そして、俺は生き残った。

だが、俺の地獄は終わらない。
この身に浴びた神の血が、きな臭い隣人達を引き寄せる。
火薬と硝煙は肺を満たし、冷たい鉄が母の腕のように俺を抱く。

——そして、戦場はアイツを俺の元へと運んできた。
炎を担ぎ、その中から浮き上がる、赤い影、黄金の髪。
地獄が塒、悪魔が隣人、そいつの名は——。



——

「次の行き先が決まったぜ」

「あら早いのね。それで、今度は何がお目当て? どこかの綺麗なレースクイーンかしら」

「いんや……というかレースクイーンってこの間のだろ? まだ根に持ってるのか?」

「さて、どうかしらね? で、本当は?」

「機械に埋め込まれた宝石、ヂヂリウムってね。そいつがわんさかとある場所を海賊ギルドのやつらが見つけたらしい」

「ふふっ、相変わらず放っておけないみたいね」

「そういうこと。さ、全速前進よろしくどうぞ」

「了解」




——




【とある辺境の惑星】



キリコ「ゴウト、残りのヂヂリウムは、あとどれくらいなんだ」

ゴウト「うーん……ありゃあもってあと一、二回分ってとこだな」

キリコ「そうか……」

バニラ「あの発掘場所ももう枯れちまったみたいだしなぁ。もうこの星にヂヂリウムが採掘できる場所なんてきかねぇし……」

キリコ「……そうか」

バニラ「い、いやぁ! でもまだ探しゃどっかにあるかもしれねぇし! まだ望みはあるさ! なっ!?」

ゴウト「お、おうそうだな……」

キリコ「……」

バニラ「……」

ゴウト「……なぁ、キリコ」

キリコ「……なんだ」

ゴウト「お前さんら、本当にこの前言ってたようにするのか? 今からでも考えなおしちゃくれんのか?」

キリコ「……」

バニラ「そうだぜ、キリコちゃんよぉ。別に、お前から戦争なんかに関わらならきゃ良いだけだろう?
    誰もいねぇような星にでも行って、静かに暮らすとか方法ならいくらでもあるじゃねぇか」

ゴウト「そうだそうだ。第一フィアナと普通に暮らすほうが、お前達にとって——」

キリコ「……もう、決めた事だ。関わる関わらないじゃない……戦争がある限り、俺達は戦争に呑み込まれる」

バニラ「だからって、コールドスリープで二人仲良く宇宙の塵みたいになるってのは、俺は受け入れられねぇぜ」

ゴウト「あぁそうだ。また俺達仲間を置いて何処かに行こうだなんてのは許せねぇ。
    それにな、俺は野菜を使ったビジネスアイディアを構想してるんだ。こいつは必ず成功する。だからお前達を金銭的に援助することくらいも訳ない。
    どうだ? お前達が暮らす場所も見つけて、静かに暮らせるようにしてやる」

キリコ「……すまない。もう決めたんだ」

ゴウト「……」

バニラ「……けっ、勝手にしな! こうも仲間思いなヤツだとは思わなかったぜ! ションベン行ってくる!」


バタンッ


ゴウト「おいバニラ! 建てつけ悪いんだからドアは綺麗に閉めろぃ!」

キリコ「……」

ゴウト「はぁ……まぁ、お前の言う事はわからんでもない。今までレッドショルダーやらロッチナ達の陰謀やらで疲れきって、お前は達観しちまったんだろう。
    だがな、わがままかも知れんが俺達はもっとお前と、そしてフィアナとも一緒にいたいんだ。バニラも俺も、お前達が大事だから反対してるんだ」

キリコ「……」

ゴウト「どうしても、曲げちゃくれないか?」

キリコ「……すまない」

ゴウト「ったく、お前さんの頑固さは本当に筋金入りだよ……」

——ワイズマンを倒し、それから少しの時間が経った。
フィアナに必要なヂヂリウムが発掘できる場所を転々としながら、俺達は今までよりもずっと平和な日々を過ごしていた。

フィアナが、自分に残された時間がどれくらいなのか、俺に告げるまでは——。


ココナ「おーい! 良い情報仕入れてきたよーっ!」バタンッ

ゴウト「だぁからっ! もっと丁寧にドア開けろってんだ!」

ココナ「一々うるさいんだよぉ! そんな年寄りみたいな小言ばっか言ってると、あっという間に禿げちまうよ!」

ゴウト「なんだとぅ!」

キリコ「……」

バニラ「はぁーすっとした。ん、なんだココナ戻ってきたのか」

ココナ「あっ、こんな爺さんと喧嘩してる場合じゃないんだよ。キリコキリコ、やっと見つかったのさ!」

バニラ「何がだよ」

ココナ「ヂヂリウムのありかさぁ! なんかでっかい研究所跡みたいで、この前見つけた場所なんかよりもずっと大きな鉱脈なんだって!」

バニラ「おおぅっ! でかしたぞココナぁ!」

ココナ「これでキリコとフィアナと、もっと一緒に居られるだろう! ねぇキリコ!」

キリコ「……」

ゴウト「あぁー……それなんだがな、ココナ……」

キリコ「……場所はどこだ」

ゴウト「えぇっ?」

キリコ「場所はねぇ、こっから北に行った崖の近くにあるんだってさ。今はなんかATがいるらしいけど」

バニラ「ATだぁ!? 先客がいんのかよ」

ココナ「あぁ。なんでも、海賊ギルドの連中らしいよ」

ゴウト「海賊ギルドだぁ!?」

バニラ「海賊ギルドって、あの海賊ギルドか?」

ココナ「それ以外になにがあるってのさ」

キリコ「……ココナ、今の話は本当なのか」

ココナ「あぁ、間違いないさ。飲み屋でいかにもガラの悪そうな奴らから盗んだ情報だもの。アイツら、大きな声で言っちゃってさ」

キリコ「……そうか」

バニラ「大量のヂヂリウムって言ってもお前……海賊ギルドが絡んでたら無理だろ……」

ココナ「何だらしない事言ってんだい! それじゃあ他にヂヂリウムがある場所知ってるのかい!?」

バニラ「いや……それは……」

ゴウト「だがなココナ……いくらなんでも海賊ギルドのシマを荒らすのは無謀だ。いくらキリコとシャッコでもな」

ココナ「でももうヂヂリウム切れるんだろう!? そしたら、そしたら……キリコとフィアナは……」

キリコ「……」

ゴウト「あぁ……だがな……」

キリコ「ココナ、敵の戦力の情報は盗み聞き出来なかったのか」

ココナ「え、えぇと……まだ本隊が来るのに時間がどうたらって言ってた気がするけど……」

キリコ「……そうか」

バニラ「お、おいおいキリコちゃんよ。何荷物まとめてんだ? まさか、行くつもりかよ」

キリコ「……コールドスリープするにも、準備がまだかかる。そうだろうゴウト」

ゴウト「あ、あぁ……まだブツが来るまで後五日は……」

キリコ「ヂヂリウムは何とかもつかも知れないが、何があるかわからない。少しでも蓄えがあった方が良い……敵が少ない今がチャンスだ」

バニラ「で、でもよ……」

キリコ「ゴウト、シャッコは何処だ」

ゴウト「え? ま、まだアイツはATの整備をしているはずだが……」

キリコ「そうか。なら、俺とシャッコの二人で行ってくる。三人は、フィアナを頼む」

バニラ「おいおいキリコちゃん。何もそんな無理しなくったって良いだろう?」

キリコ「……俺も」

バニラ「?」

キリコ「俺も、できるだけ皆と一緒にいたいとは、思っている」

バニラ「キ、キリコ……」

キリコ「フィアナが目を覚ますまでには、戻れるようにする。後は頼む」

ゴウト「……はぁ、しょうがねぇ。お前はこうなっちまったら、テコでも動かねぇのはウドの頃から知ってるよ。フィアナは俺達に任せろ、だがな、無茶はするんじゃねぇぞ」

キリコ「……すまない」


ガチャッ バタンッ


ココナ「キリコ……」



——

「いやーしっかし、なんも無い所だねぇ。砂と岩と木くらいしか無い。砂でお城作って木登りするくらいしか娯楽が無いって感じだねこりゃ」

「ポイントはあそこのようね……あら?」

「ん? どうした? カワイコちゃんでもいたか?」

「いえ……ポイントに向かっているATが二機いるわ」

「ギルドの連中か?」

「いえ、目立たないように行動しているのを見ると、違うようね」

「へへっ。どうやら、俺達と目的は同じみたいだな」

「そうね。どうする?」

「障害物競争と洒落こもうじゃないの」



——

キリコ「……あそこのようだが」

シャッコ「……あぁ、ATが五機確認できる……」

キリコ「内部の様子は見えるか」

シャッコ「いや、崖に扉は見えるが、それだけだ。センサーもその奥は感知できない」

キリコ「そうか。どうやらその扉以外に侵入方法は無いようだな」

シャッコ「……ん、待て」

キリコ「どうした」

シャッコ「センサーが船を一機捉えた」

キリコ「ギルド本隊か?」

シャッコ「いや、それにしては小さい」

キリコ「……どういうことだ?」

シャッコ「さぁな……俺達と同じ目的の連中じゃないか」



——シャッコが捉えた一機の宇宙船。その存在に俺は、異様な胸のざわつきを覚えていた。

キリコ「そうか……急がねばならないようだな」

シャッコ「あぁ」

キリコ「行くぞ。まだ数は少ない、真正面から突っ切る」

シャッコ「了解」


キュイイイイイッ……


——ローラーダッシュに乗せられて、不安と焦燥、そして少しの孤独を引きずり、また俺達は火薬の空気を吸いに行く。
加わるも無し、退くも無し。ただ幾許の、胸に沈んだこの気持ちを沈める為に、トリッガーを引く。フィアナの為に、引く。

海賊A『ふぁあーあ……ったく、ヂヂリウム掘るんだったら、本隊来てからでも別に良いよなぁ?』

海賊B『あぁ。採掘に手を回し過ぎて、見張りがこんだけってのは酷いもんだぜ』

海賊A『まぁどうせこんなとこ誰も来ないだろ。適当にほっつき歩いてりゃ——ぐわぁっ!』

海賊B『ど、どうした!? 応答s——がぁっ!』


バンッ バンッ


キリコ「シャッコ、二機撃破した」キュィイイイイッ


ガキンッ ガキンッ


シャッコ「こっちもだ。後は扉の前の一機だけだ」

海賊C『て、敵襲! 敵はAT二体! 採掘要員も至急応援に——がぁーっ!』


バンッ


キリコ「急ぐぞ。中からも来るようだ」

シャッコ「わかっている。扉をこの爆薬でこじ開ける。下がっていろ」



チッ チッ チッ ピーッ
チュドォオオンッ


キリコ「シャッコ、センサーでどこにATが多いかわかるか」

シャッコ「この階層から二つ下の所に多数の反応がある」

キリコ「そこが採掘場だ。急ぐぞ」

シャッコ「了解」

『て、敵襲! 敵ATは入り口を爆破し、現在F−2地区を進み採掘場へと向かっている! 総員迎撃せよ!』

『いたぞ!』

『死ねぇーっ!』

キリコ「無駄弾は撃たない……」


バンッ バンッ バンッ


『ぐはっ!』 『がぁ!』 『うわぁーっ!』

シャッコ「次を右だ!」

キリコ「わかった」

『くそ、何をやっている! 敵はたった二機だ! ソリッドシューターを撃て!』


バシューッ


キリコ「……」


ガキンッ キュィイイイッ


『ぴ、ピックで回って避けやがった!?』


キリコ「……」バンッ

『ぐわぁっ!』

『な、なんだアイツら!』 『化けモンだぁっ!』

キリコ「邪魔だ」バンッ バンッ

『うわぁーっ!』

シャッコ「キリコ、後ろから増援が来ている」

キリコ「シャッコ、どけ。道を塞ぐ」



ドシュッドシュッドシュッ
ドキュゥウウウンッ


『う、うわーっ!』 『て、天井が!』


キリコ「これでしばらく時間を稼げるはずだ。行くぞ」


キュィイイイイイッ……


シャッコ「キリコ、ここだ」

キリコ「ここか……」


——深く、青みをおびた機械の宝石。ヂヂリウムがそこにあった。
フィアナの命を繋ぐ、俺の血よりも価値のある宝石。

——だが、俺が喜びに湧き立つ間もなく、あの胸騒ぎが確たる動悸となって俺を阻んだ。


シャッコ「……む?」

キリコ「どうした」

シャッコ「バカな……こんな小さな……」

キリコ「敵か?」

シャッコ「金属反応だ……だが、ATではない」

キリコ「何?」


「——そこを動くな」

シャッコ「……」

キリコ「……どういうつもりだ。生身でATに動くな、とは……」

「へへへっ、こいつは小型ミサイル並の威力はある。ATくらいだったらあっという間に葬式に出せる状態にできるぜ」

キリコ「……貴様……海賊か」

「そっ、御名答。しがない一匹狼の海賊さ」

キリコ「……悪いが、このヂヂリウムは渡せない」

「ダメだね。早いもの勝ちさ」

キリコ「……」

シャッコ「小型ミサイル並と言ったな……」

「うん?」

シャッコ「ならば、試してみるか!」


キュィイイイイイッ

キリコ「っ! よせ!」


ズキュウウンンッ


シャッコ「うおっ!」ガキィインッ

キリコ(ベルゼルガの盾を撃ち砕いた!?)

「言ったろ。ATくらいなら簡単にスクラップだって」

シャッコ「ぐぬっ……」

キリコ「シャッコ、よせ」

「なるべく爆発しないように撃っちゃいるが、ATは走る火薬みたいなもんだ。次も腕を狙うが、爆発するかも知れん」

キリコ「……」

シャッコ「くっ……」

「大人しく帰ってくれればいいだけさ。俺も、別にやり合いたくはないからな」

キリコ「……」

「ほら、汚いケツ見せて帰んな」

キリコ「……」カチッ

シャッコ「キ、キリコ……」

「ほう……今のを見てまだ構えるかい?」

キリコ「……俺は」

「?」

キリコ「俺は、退く訳にはいかない」

「そうか……」

キリコ「……」

「……」

——ターレット越しに、ヤツの視線が突き刺さる。
先程まで薄い笑いを浮かべていたはずの海賊の視線は、まるで奥底の見えない銃口のような鋭さを持つに変わっていた。
互いに銃を構え、押し黙る。そんな静寂の中、ATの機動音が静かに俺を揺すぶり、囃してていた。


キリコ「……」

「……」

キリコ「……っ」ガキンッ


キュィイイイイッ


コブラ「もらった!」ズキュウウウンッ

キリコ「……」ピッ ピッ


ガキンッ キュンッ


「(!? ターンピックでマグナムを回避した?)」

キリコ「ミッションディスクは、機能している……」

「へへっ、やるじゃないか……だが、一発かわしたくらいじゃ……」ズキュンズキュンッ

キリコ「……」キュィイイイイッ

「ヒューッ、よく回ること……」

キリコ(精密であり、そして速い……何より恐ろしいのはあの威力……だが)


キリコ「その隙が命取りだ……」


ズガガガガガッ


「おおっと……へへっ、鬼さんこっちだぜ!(並の強さじゃないな……サイボーグか?)」

キリコ「……(鋭い身のこなしだ……まさか、PSか?)」



キュィイイイイイイイイッ キュィイイイイッ


シャッコ「……っ! キリコ! 増援が来たぞっ!」

キリコ「くそっ……」

「おやまぁ……」

シャッコ「キリコ! ここは退くぞ!」

キリコ「ダメだ!」ズガガガガッ

「おっと! へへっ、相方が退いた方が良いって言ってるぜ! 人の言う事を素直に聞かないと碌な死に方しないぞ!」

キリコ「フィアナの……フィアナの為に! 俺は!」

「……」



『いたぞ!』 『へへへっ、こいつを打ちこんでやる!』


バシュッバシュッバシュッ
ドキュウウウウウンンッ


シャッコ「ぬおっ!」

キリコ「くっ……」

「どわぁーあっ!」


ガラガラッ


シャッコ「まずい、岩盤が脆かったか! 崩れるぞ!」

「ひぃーっ!」

キリコ「くっ……」






——

キリコ「うっ……」

「よう、気が付いたかい」

キリコ「……ここは……」

「さっき俺とおたくが戦ってた場所さ。お空が崩れて降ってきやがった。そんで、閉じ込められたって訳」

キリコ「そう、か……」

「はぁ……ヂヂリウムも崩落に巻き込まれちまったし……レディに何か言われるなこりゃ……」

キリコ「ヂヂリウムが……」

「あぁ、全部埋まっちまった……」

キリコ「……」

「こんな所に野郎と閉じ込められちまうし、今日の占い見とくんだったな……最下位だぜきっと」

キリコ「何故……」

「ん?」

キリコ「何故、俺を殺そうとしない。貴様の腕なら造作も無いはずだ」

「おたくと俺が争ってた理由はヂヂリウムだろ? それももう埋まっちまったんだ、争う理由なんて無いさ」

キリコ「……お前は海賊だ」

「海賊だって、人殺しが嫌なヤツだっている。それと、俺はギルドの仲間じゃない」

キリコ「……」

「それで、お前はどうするんだ。そのタコ坊主と一緒に土葬でもしてもらうのか、それともここを出るのか」

キリコ「……」カチッ カチッ

「ソイツ動くのか?」

キリコ「……いや、計器が死んでいるようだ」

「だろうな」

キリコ「仕方がない。他に出る方法を考えよう」

「あぁ、あんまりちんたらしてると敵さんの応援がくるかも知れないしな」

キリコ「……そうだな」

「そういうこと。そんじゃ、にいさんはそっちの方を探してくれ。俺はこっちと……」

キリコ「……」

コブラ「ん、どうした?」

キリコ「……名前は」

「うん?」

キリコ「お前の、名前だ」

「名前を聞くんだったら、まず自分から名乗るもんだぜ」

キリコ「……キリコ。キリコ・キュービィー」

「俺はジョンソン……いや、コブラだ」

キリコ(何処かで聞いた名だが……)

コブラ(なんか聞いた事ある名前だな……)


——



キリコ「……」ガラッ

コブラ「よう、そっちは出口見つかったかい?」

キリコ「……いや」

コブラ「あっ、そう……」

キリコ「……」

コブラ「……」

キリコ「……」

コブラ「無口な男はモテるってねぇ……」

キリコ「……」

コブラ「ダメだこりゃ」


——地の中で、俺は先程まで戦っていた男と共に足掻いていた。
出口を求め、埃にまみれ、瓦礫の隣にあるはずの現実を手さぐりで探していた。

僅かな一跨ぎ、それすら出来ず、ただ悶々と俺は手を動かす。
この状況を共に過ごす、奇妙な同居人と共に。



キリコ「それは……」

コブラ「うん?」

キリコ「その明りの強い葉巻は、便利だな。」

コブラ「あぁこいつか。特注でね、トルコでも売ってないぜ」

キリコ「……そうか(どこかの地名か……)」

コブラ「そう」

キリコ「……」ガラッ

コブラ「……」



……ガインッ ガインッ


キリコ「っ!?」

コブラ「ATの足音か」

キリコ「予想以上に早いな」

コブラ「けっ、おいにいさん。早く出口を見つけないとマズいぜ」

キリコ「っ……わかっている」


ガラララッ


キリコ「っ!?」

コブラ「ちっ、見つかったか」カチャッ



「無事か! キリコ!」


キリコ「っ……待て、撃つな!」

コブラ「あぁん?」

キリコ「……シャッコか」

シャッコ「キリコ、無事だったか」

キリコ「あぁ、何とかな」

コブラ「なぁんだ、さっきの相方か」

キリコ「良かった、お前も無事だったか」

シャッコ「あぁ。マヌケな敵もあの崩落に巻き込まれた。誰かのせいで盾がやられて散々だったがな」

コブラ「けっ、陰険同士でつるんでるのか……やぁねぇ全く」

シャッコ「……コイツとはもう戦わないのか」

キリコ「……あぁ、どうやら、ギルドとは敵らしい。ヂヂリウムという互いの目的が無くなった今、戦う理由は無い」

コブラ「そっ、そういう事。仲良しこよしね!」

シャッコ「……それよりもキリコ。ゴウト達から通信だ」

コブラ「無視かよ……」

キリコ「ゴウトから?」

シャッコ「……あぁ、繋ぐぞ」


ガー ピー

ゴウト『……ぁから、少しは静かにしろってんでい! おっ、繋がったか! おいキリコ無事か!?』

キリコ「あぁ……なんとかな」

ゴウト『そうか……あのなキリコ、落ちついて聞いてくれよ……良いな?』

キリコ「……どうした」


ゴウト『……フィアナが拉致された』


キリコ「何っ!?」

ゴウト『お前達が出てから少し時間がたった後、突然青い服着た連中が俺達のアジトを襲いやがったんだ! 大軍でな!』

コブラ「恐らくギルドの連中だな……」

キリコ「フィ、フィアナが……」

ゴウト『俺達は逃げるのに夢中で……勿論、フィアナも一緒に逃がそうとした! だが、俺達を先に逃がす為の時間を稼ぐだなんて言って彼女は……』

キリコ「……くっ……き、貴様!」ガシッ

コブラ「おいおい、なんで俺に当たるんだよ。最初に言ったろ、俺は一匹狼の海賊だってな」

キリコ「……そんな言葉を、信じろとでも言うのか! お前と戦っていたから俺はフィアナを助けに行けなかった! お前は時間稼ぎを命じられたんじゃないのか!」

コブラ「……俺はギルドに追われてる身だ。ヤツらと組む道理が無い」ギラッ

キリコ「ぐっ……」ギリギリ

コブラ「……」

キリコ「……くっ」パッ

コブラ「ふぅ……」

キリコ「……お前達は、今何処にいる」

ゴウト『命からがら逃げて来て、妙な宇宙船に海賊ギルドに追われてるって言ったら助けて貰えたんだ。今そこの無線を借りて連絡している。アーマロイド? が船にいる』

キリコ「そうか……」

コブラ「ん、アーマロイド? おい、オッサン!」

ゴウト『あぁ? 誰だお前は』

コブラ「その船の持ち主さ。おいレディ、いるんだろ? かわってくれ」

レディ『コブラ、無事だったのね』

コブラ「あぁ、土埃かぶっても色男のまんまだぜ。妙な付録を拾ったみたいだが」

レディ『えぇ、ギルドに追われているって聞いたから。彼らの連絡が済んだら貴方にも伝えようと思ったのだけれど』

コブラ「そうかい。ところで、そっちのお客さんの知り合いもここにいるんだが……どうする」

キリコ「……」

ゴウト『とりあえずな、キリコ、シャッコ、お前らも——イタタタ、おい押すんじゃねぇ! かわってやるから押すな! バニラもどけ!』

ココナ『キリコー! シャッコー! 無事かい!?』

キリコ「……あぁ、ケガは無いか」

ココナ『ケガは無いさー。ゴメンよキリコ、フィアナと一緒に逃げれなくて……』

キリコ「……相手は海賊ギルドだ。お前達が無事で良かった」

ココナ『ガラス細工みたいなツンツルテンの金ピカに追われてもう怖かったんだよ……ズガガガガッてさぁ……』

コブラ「……何?」

ココナ『レディさんに頼んで今どこにさらわれたのか探して貰ってるんだ! 場所がわかったらすぐに助けに行くよ!』

コブラ「……おいお嬢ちゃん。そのツンツルテン、生意気に鉤爪なんかつけてなかったか」

ココナ『えぇ? 逃げるのに必死でよく見てないけど、多分つけてたような……』

コブラ「……そうか」

レディ『クリスタルボーイね……これは厄介だわ』

コブラ「あぁ……」

キリコ「おい、コブラ」

コブラ「なんだい」

キリコ「仲間を助けてくれて、感謝する。それと、フィアナの居場所探しも……」

コブラ「へっ、別に良いさ。しっかしまぁ、偶然が重なるな」

キリコ「……フィアナの居場所を教えてくれれば、お前達に迷惑はかけない。さっきは疑ってすまなかった」

コブラ「おいおい。ここでさよならっての言うのか?」

キリコ「あぁ、俺達に関わればギルドに追われているお前にも飛び火するだろう。これ以上迷惑はかけられない」

コブラ「そうはいかないさ。お前の女を攫ったヤツに、俺も少々因縁があってね……それに、女を無碍に扱う輩をおいそれと見逃す程、俺は野暮じゃないぜ」

キリコ「……」

コブラ「俺と組まないか」

キリコ「……」

コブラ「……お前は、そこらのAT乗りとは格が違う。お前となら組める、ギルドが相手だろうとな。どうだ?」

シャッコ「買いかぶられているな……どうする、キリコ」

キリコ「……海賊のお前を、信じて良いのか」

コブラ「へっ、ボトムズがそれを言うのかい?」

キリコ「……船を呼んでくれ。そして、出来ればATを調達して欲しい」

コブラ「へへっ、駄賃は高いぜ? よし、レディ! このポイントまで来てくれ!」



——

ココナ「キリコー!」

バニラ「良かった! シャッコも無事でなによりだ」

シャッコ「お前達もな」

キリコ「……すまないな、仲間を助けて貰って」

レディ「良いのよ。偶然居合わせただけだから」

キリコ「それで……フィアナの居場所はわかったのか」

レディ「えぇ、判明しているわ。この惑星から遠くない所にいるみたい。既に座標は入力済みよ」

コブラ「ギルドの別荘にアポ無し家庭訪問ってね」

キリコ「そうか」

シャッコ「それで、作戦は」

コブラ「戦える俺達三人皆で遊びに行って順番にガラス細工の頭を撃ち抜く。これでどうだ」

シャッコ「……つまり作戦は無いんだな」

コブラ「へへっ、ある程度マップも調べて頭に入れてある。どこで引きつけて中に入るかくらいは考えたさ」

シャッコ「ならいいんだが」

ゴウト「しかし……おたくも助けてくれるのは良いが、こんな小さな船一隻だけで行くのか?」

ココナ「こらおやっさん! 今更怖くなったのかい!」

ゴウト「いやぁ……そうじゃねぇよ、ただ……」

コブラ「へへっ、オッサン舐めて貰っちゃ困るぜ。この船につぎ込んだ金だけでテルタイン級の船を十隻とプール付き豪邸買ってもツリが来るぜ? 生半可な船じゃないさ」

キリコ「……俺は、やるだけだ」

コブラ「そういう事。わかってるじゃないキリコちゃん」

バニラ「おいそれは俺の十八番でしょうに……」

シャッコ「俺はATの整備をしてくる。誰かさんのせいで使いものにならなくなった盾が心配だからな」

コブラ「あーらら、本格的に嫌われちゃったみたい」

バニラ「お、俺も一応パイロットだ! レディさん、小型艇の操縦法を教えてくれ!」

レディ「良いわ。こっちに来て」

ゴウト「わしは、シャッコの手伝いでもして来るか」

ココナ「あ、あたしも行くよ!」


シュイーン……

キリコ「……」

コブラ「へっ、お前さんの仲間はラジオみたいで面白いな。チャンネルは多いのか?」

キリコ「……あぁ、多少はな」

コブラ「なんだよ、少しは冗談も言えるじゃないか」

キリコ「よせ。俺は、糞真面目な男だ」

コブラ「……お前さんの女、パーフェクトソルジャーだっけ?」

キリコ「あぁ」

コブラ「ヂヂリウムの情報は、お前を釣る餌だったようだな。本来の目的は、そのフィアナを連れ去る事が目的だったんだろう。ついでに、俺も釣られちまったみたいだが」

キリコ「そのようだな」

コブラ「……」シュボッ

キリコ「……」

コブラ「……お前の事も、少し調べさせて貰ったぜ」フゥー

キリコ「……そうか」

コブラ「元ギルガメス軍曹長のレッドショルダー、異能生存体、そんで神殺しの男……こんなにニックネームが多いと、悪い友達もさぞ多いんだろうよ」

キリコ「……」

コブラ「俺も不死身の男だ、宇宙一の賞金首だとか呼ばれてきたが、おたくには敵いそうにない」

キリコ「どれも、好きでなった訳じゃないがな」

コブラ「そうかい。まぁ、ギルドが真っ向から戦おうともしない程のタマってのは確かさ。お前と組んだのは正解だった訳だ」

キリコ「……」

コブラ「神様ってのは、どんなヤツだった」

キリコ「……俺を異能者と呼び、叶うはずもない夢を見た、つまらないヤツだった」

コブラ「……おたくとは気が合いそうだな」

キリコ「……そうか」

コブラ「さってと、俺が調達したATを見に行くかい? キリコ」

キリコ「……いいだろう、コブラ」



——


「これがPS……素晴らしい。普通の人間と何ら変わらない見た目……」

「ふふふっ……ヂヂリウムの情報を流し、あの男を誘導できたのは大きかった」

「ヤツら程度では、この船を感知する事はできない。いくら神殺しの男と言えど、こちらを見つける事が出来なければ他愛も無い」


タタタタッ


「ほ、報告しますっ!」

「何事だ」

「そ、それが……小型の宇宙船が異様な速度でこのアジト付近に向かっている……」

「……ほう。どうやって嗅ぎつけたか……」

「そ、そして……それが、どうやらタートル号のようで……」

「何ッ!?」

「い、いかがなされますか……」

「くっ……ヤツも一緒だと……どういう事だ」

「……」

「ふん……まぁいい。こちらには、PSという人質もいる。そして、このアジトのAT配属数はおよそ300を超える……。
 いくらヤツらと言えど、生きてここまではこれまい、むしろ一遍に片付ける好都合だ。総員に警戒レベルを最大限に上げろと伝えるのだ!」

「ハッ!」

(ふふふ……そして、この秘密兵器もな……)


「……あなたは」

「うん?」

「あなたは、誰?」

「ほう、これはこれは、お目覚めかファンタムレディ」

フィアナ「……あの時の海賊ね」

「そうだ。ご婦人に少し手荒い真似をしてしまったが、どうか許して欲しい。これも、我がギルドの為なのだ」

フィアナ「あなたも……戦いを起こそうとする人なのね」

「ふふふっ、まぁそうだな。そして、これからすぐに小さな戦いが始まる」

フィアナ「……どういう、こと」

「お前のキリコが、このアジトに向かっているらしい。どうだ、嬉しいか」

フィアナ「っ……キリコが」

「そうとも。我々としても、神殺しと呼ばれる程の男をぞんざいに扱う気は無い。全力で当たらせてもらうさ」

フィアナ「キリコを……殺す気?」

「あぁ。神殺しも死ぬのか、実験してみなくてはな」

フィアナ「……そう」

「随分と聞きわけが良いじゃないか」

フィアナ「……貴方に、キリコは殺せないわ」

「……ほう」

フィアナ「キリコは、死なない。貴方はキリコに勝てないわ」

「……じきにわかる。それまで、そのカプセルで眠っているのだな」

フィアナ「……」


(ふっ……何が勝てないだ、笑わせる……)

ボウイ「見ておれ……因縁だろうと、異能だろうと、このクリスタルボウイが断ち切ってくれる」



——

コブラ「二連装対戦車ミサイル、ショルダーロケットポッド、ソリッドシューターにヘビィマシンガン。
    脇には豆でっぽうのガトリング。ミッションパックその他弾薬もたっぷり込みこみでちゃんと動けるように整えてあるぜ」

キリコ「そうか……助かる」

ゴウト「ほぉーっ……どっかの部隊並だな」

バニラ「あぁ。これで街歩いたら、あっという間に捕まるぜ」


ココナ「あんたは操縦法覚えたのかい?」

バニラ「覚えたよ。ったく、俺だってそれなりのパイロットだったんだぜ?」



コブラ「ラビット(囮)機までは用意できなかったが、こんだけありゃお前なら十分だろ?」

キリコ「あぁ」

コブラ「へへっ、どうだい。コイツの肩は赤く塗るかい?」

キリコ「……」

ゴウト「はははっ、いつかのウドを思い出すな」

バニラ「あぁーあったなー。左肩を俺が塗ってよ。『レッドショルダーの赤はもっと暗い、血の色だ。それとマークは右肩だ』
    なんてキリコちゃんに注意されたっけな」

ココナ「もう、やめてあげなよ! キリコがレッドショルダーにいた事気にしてんの忘れたのかい?」

キリコ「……少し制御系を見させてくれ」

コブラ「どうぞ、坊ちゃんの好きなように見てくれ」

キリコ「……」シュイーンッ ガシィッ

コブラ「そっちはどうだいデカイ旦那」

シャッコ「……悪くない。パイルバンカーも新品に代えたのか」

コブラ「あぁ一応な」

シャッコ「すまないな」

コブラ「良いって事、さてと……」

レディ「そろそろ到着するわ。皆、準備は良い?」

キリコ「大丈夫だ」

バニラ「いつでもOKよ!」

シャッコ「いつでも行ける」

ゴウト「ワシは砲手じゃな……へぇーえ、この歳でできるか……」

ココナ「レディさん! あたしはどうすりゃいいんだい」

レディ「私のサポートをお願いできるかしら」

ココナ「えっへへ、了解!」

コブラ「皆準備は出来たみたいだな! よし、ギルドのお家に遊びに行くぜ! レディ!」

レディ「わかったわ。タートル号、最大出力で敵警戒線を突き抜ける」

コブラ「へへへ、何かにつかまってないと吹っ飛んじまうぜ! さぁ敵さんのおいでだ!」

レディ「来たわ!」

バニラ「あぁーあぁー! レディさんお願いしますよー!」

レディ「任せて! それと、貴方達は早く小型艇に乗り込んで」

バニラ「ガ、ガッテンしました!」

ココナ「何してんのさ! 早く行きなよ!」

ゴウト「早く来いバニラ!」


『奴らが来たぞ!』 『撃ち落とせ!』



ティウンッ ティウンッ ズガガガガッ

バニラ「ひぃーっ!」タタタッ


コブラ「キリコ! シャッコ! 惑星の地表付近で、お前らを射出する! 降下経験はあるな!」

キリコ『あぁ。何度かな』

シャッコ『俺もだ』

コブラ「よし! これから大気圏に突入する。その後、俺の合図でハッチを開くから、構えとけよ!」

キリコ『了解』

シャッコ『了解だ』

コブラ「へへっ、頼もしい限りだ」

レディ「6時方向、三機つかれたわ」

コブラ「よし、タートル号の凄い所を見せてやるか! 反加速装置作動!」

レディ「了解」

コブラ「見てろよ!」ガチッ


シュイーンッ フッ……


『な、何!?』 『や、奴は何処へ消えた!』


ココナ「うわ! いつの間にか敵が前に!」

コブラ「へへっ、どうだ! 汚いケツ見せて帰んな!」


ズガガガガッ
チュドォオオオンッ


『ぬわぁーっ!』 『ぶわぁっ!』

コブラ「よし! このまま大気圏も突っ切るぜ!」



グラグラグラグラッ


ココナ「あわわわわっ!」

レディ「まだ追ってくるわ!」

ゴウト『けっ、これでも喰らえってんでい!』チューンッ


ズガァアンッ


ゴウト『どんなもんでい!』

レディ「大気圏抜けたわ。射出可能範囲まで、あと数十秒」

コブラ「その調子だオッサン! おい御両人! 射出まであとちょいだ、覚悟は良いな!」

キリコ『できている』

シャッコ『そう何度も聞かなくてもわかっている』

コブラ「けっ、相変わらず愛想がねぇこと」

レディ「射出カウントダウン。10、9……」

ココナ「キリコ! シャッコ! 必ずフィアナを助け出してね!」

レディ「3、2、1、ハッチ開放」


コブラ「鳥になってこい!」ガチッ



キリコ『……出る』


ガシンッ バッ……


レディ「射出完了。私達も着陸できる所を探すわよ」

ココナ「いけーっ! キリコー! シャッコー!」

コブラ「俺の分も残しといてくれよキリコ!」


——五体が宙へと飛ばされ、深緑の大地へと放られる。弾幕は空を蹂躙し、煌びやかなカーテンコールの如く、俺達を待ちに待ったと包みこむ。
その合間に見えるこの深い森のどこかに、フィアナがいる。
俺の命が、俺の宿命が、このどこかに——。

緑に塗り込められた地獄の根城、その中に荘厳とそびえ立つバベルの塔。
この邪教の塔に、フィアナがいる。俺の宿命が待っている。
その塔に輝くステンドグラスが、己を焼く地獄の様相を映していたとしても。
進むしかない。俺の塒は地獄、俺の友は悪魔。温い地獄では止められぬ。

次回、「突入」
触れてはならぬ、望みもある。

ねる おれ げんかい
スレ落ちるのか知らんけど落ちてたらまたPart2で立てるわ
こんなニッチなもの書いてて、レス付くのは嬉しいよ

乙。むせる
1か月だか2か月>>1が書き込みしないでいない限りは、スレは落ちんよ

>>75
へぇ、というとトリとかも付けんでええのか、便利やねぇ
あと教えてくれてありがとうね
明日は日曜ですし、朝から投稿すると思います




     ——第二話——
       「突入」







ズガガガガガッ フィウンフィウンッ


シャッコ「キリコ! このままじゃ良い的だ!」

キリコ「この高さならパラシュートを切り離しても大丈夫だ。行くぞ!」


ガシュッ……


シャッコ「うぉおおっ!」ズガガガガッ


ガインッ ガインッ

シャッコ「着陸したぞ」

コブラ『そうかい! 俺ももう少しした行く! それまで死ぬんじゃないぜ!』

シャッコ「わかっている」

キリコ「あの塔だ、急げ!」

シャッコ「くっ、敵が来たぞ!」


『船よりも先にヤツらを倒せ!』 『敵は二機だが油断するな!』


キュィイイイイイッ
ズダダダダダッ バシュッバシュッ


キリコ「……」ダダンッ ダダンッ


『がはっ!』 『うわぁーっ!』
『怯むな! 数で押すんだ!』 『撃って撃って撃ちまくれ!』


キュィイイイイッ キュィイイイイッ

キリコ「ここは開けていてマズイ。行くぞシャッコ」

シャッコ「了解!」


『逃げたぞ!』 『追え!』



キュィイイイイイイッ


シャッコ「クソッ、何て数だ……木々の隙間全てに敵がいるようだ」ダダダダダッ

キリコ「遮蔽物が少ない。そこの分岐点で一旦幕を張るぞ」

シャッコ「わかった!」


バシューッ……
モワァアッ


『クソ! スモークか!』 『どの道に行った! ええい、分散して探せぇ!』



キュィイイイイイッ……


キリコ(……待っていてくれ、フィアナ!)



——

コブラ「へへへっ……二人とも派手にやってるみたいだな。レディ、こっちも無事に降りられたぜ」

レディ『OK。空の敵は私達が退きつけておくわ』

コブラ「あぁ、頼むぜ!」

ココナ『コブラー! 頑張ってー!』


コブラ「へへっ、黄色い声援だ元気が出るね。あいよお嬢ちゃん! パーティの準備でもして待っててくれ!」

コブラ(さてと……あの塔だな……)タタタッ


キュィイイイッ


コブラ(おっと、敵さんだ……隠れるか)ササッ


フィゥウンッ……

海賊C『クソ……ヤツらはまだ見つからんのか』

海賊D『ハッ……それが、逃げ足の速いヤツらで……』

海賊C『早く探すのだ! PSに近づけてはならん!』

海賊D『りょ、了解です!』キュィイイイッ

海賊C『ふん……神殺しだが何だか知らんが、こんな所まで乗り込んでくるとはな……ふん、愚かなヤツよ』

海賊C『ヤツを殺してから、あのPSを我々ギルドで弄らせてもらう……フフッ、実に良い計画ださすがクリスタルボーイ様と言った所』

海賊C『そして調査が終われば、ただの女……アイツも中々上玉だったな。さっさとあんなヤツを鎮圧して、俺も楽しみたいものだ』


「俺もそのパーティに参加しても良いのかい?」


海賊C『何ぃ? 誰だ貴様h——』


バシュゥウウウウッ

コブラ「へっ、ついカッとなっちまったぜ……」シュウウッ……

『あ、あいつ……あの腕は!』


バシュバシュバシュゥウンッ


『サ……サイコガン……』ジジジジジッ


チュドォオオンンッ


コブラ「そう、コブラさ!」


『こっちにも敵だ!』 『何だと! 早く当たれ!』
ズガガガガッ……


コブラ「ひぇーっ! お、隠密で行くつもりだったのに! 全く手癖の悪い左腕だぜ!」

コブラ(これで少しは敵もこっちに退きつけられるだろう……キリコ、シャッコ。死ぬんじゃないぞ!)


ドキュンッドキュンッ ズガガガガッ バキューンッ


コブラ「そ、それにしてもこのATの数は多過ぎだぜー! ひゃーっ!」



——

——緑の中に潜む狩人から息をひそめ、虎子を得んと息をひそめる。
爆死か焼死か、その境界となる不安定な一線、活路を見出す為に。



キリコ「……」

シャッコ「……」ピッ ピピピッ

キリコ「どうだシャッコ」

シャッコ「警戒線が妙に薄くなっている部分がある……ここから入るとしよう」

キリコ「敵の罠の可能性は」

シャッコ「いや、この場所にいたはずの連中が、どこかに駆り出されて消えたと見える。恐らく、あの海賊だろう」

キリコ「そうか……なら、そこへ行くぞ」

シャッコ「あぁわかっt——」


ズキュウウンッ

シャッコ「ぬおぉっ!」

キリコ「シャッコ! クソッ、もう嗅ぎつけられたか」

シャッコ「くっ……キリコ、お前は先に行け! センサーでは敵は五機だけしか捉えていない! この数なら俺だけで十分だ!」

キリコ「だがっ……」

シャッコ「急げ! 奴らの警戒線が元に戻るのも時間の問題だ!」

キリコ「っ……わかった!」


キュィイイイイッ……


シャッコ「……行くぞォッ!」

『いたぞ! ヤツらだ!』 『殺せ!』
ズガガガッ

シャッコ「……ぬるいぞ!」カキンッ カキンッ

『クソ! 盾なんてつけやがって!』

シャッコ(一気に近づき……)キンキンッ

シャッコ「喰らえ!」ガキンッ


ズバンッ


『ぐふぅっ!』バゴォオンッ

シャッコ「このパイルバンカーは、アームパンチとは比べ物にならんぞ!」

『ちぃっ!』

シャッコ「行くぞ!」


『ぐはぁ!』 『ぬわぁ!』


シャッコ「あと一機……」


『……』キュィイイイイッ


シャッコ「貴様で最後だ!」ズガガガッ

『……』ピッ ピピッ


キュィイイイッ ガキンッ キュインッ
ヒュンッ ヒュンッ……


シャッコ「なっ……(なんだ今の軌道は!? まるで全て読まれたように……)」

『……』ピッ カカッ

シャッコ(なんだあのATは……)



ズガガガガッ


シャッコ「ぬぅ……(こちらの行動が先読みされている……)」キンッ キンッ

『……』ダダダダッ

シャッコ「ま、まさか……貴様はっ!?」

『……』


バンッ


シャッコ「ぬぉおおっ!」


ズガァアアアンッ……


『……』



——

『どこに消えた!』 『探すんだ!』

コブラ(ふぅ……なんとか中に潜り込めても、こう数が多いんじゃあな……)

コブラ「全く、歯医者みてぇな音ばっかりでうるさい事……この排気口からいけるはずだ……」

コブラ(予想じゃ、この塔の上部にいるらしいが……さてどうなるか)

コブラ「レディ! そっちはどんな感じだ」

レディ『ちょっと……敵が多いかもね……』

コブラ「そうか……頼むぜ! お客さんも乗ってるんだからな!」

レディ『えぇ。そのお客さん達も頑張ってくれてるわ。今は降りてしまったけど』

コブラ「何?」

レディ『バギーに乗って応援に向かったわ。なんとか無事だと良いけど……』

コブラ「へっ……お熱い連中だ」

レディ『空の敵はこっちが引きつけておくから、貴方は目的を果たしてね。コブラ』

コブラ「あぁ、美女をお持ち帰りしてきてやるさ。オマケに美男もな! 死ぬんじゃないぜ!」

レディ『えぇ、貴方も』プツンッ

コブラ「さて、よっこいしょと……(まずはこの上からだな)」



バウッ


コブラ「んん? なんだぁ?」

『バウッ! バウッ!』

コブラ「げぇっ! サイボーグ犬!」

『ガァッ!』

コブラ「ちぃっ! こんな狭い所で出てきやがるとは!」バシュゥウッ

『キャインッ!』

『バウッ!』 『アウゥーンッ!』

コブラ「クソ、団体さんか! ここはひとまず……」バシュバシュッ


ボコンッ


コブラ「広い所に出ないとな!」ドサッ

『いたぞ!』 『ヤツらは追いこめとの命令だ! 殺すな!』キュィイイイッ

コブラ「ちっ、あの犬が応援を呼んだか……オニさんこちらだ!」タタタッ

『バウッ!』 『ガウッ!』

コブラ「さぁ来いワンチャンってな!」

『殺すんじゃないぞ! 銃撃はしても威嚇に抑えるのだ!』
『J班、進路塞ぎ完了との事です!』
『よし、このまま追え!』


コブラ(チッ……これじゃあPS探しどころじゃないな……)



——




ズガガガガッ
フィウンッ……

キリコ「くっ……」

キリコ(妙だ……射撃は行ってくるが、どうも狙いが適当な感じがする……)


『ここを通すな!』 『喰らえ!』


キリコ「ここもかっ……」キュィイイイッ

キリコ(先程から俺は誘導されているのか? 通路を塞ぐのは定石だが、それにしてはあえて横道を残しているようだ……)

キリコ「……」バンッ バンッ

キリコ(シャッコからの応答も途絶えた……)

キリコ「……」ズガガガッ

キリコ(フィアナから遠ざけられているのか……いや、或いは……)

キリコ「くそっ……フィアナ……」

キリコ「フィアナァーッ!」



——



コブラ「ひぃーっ!」タタタッ


——


キリコ「フィアナー! どこだーっ!」ズガンッ


——



コブラ「そぉら喰らえ!」バシュウウゥウンッ


——


キリコ「また塞き止めか……」キュィイイイッ


——



コブラ「ちっ、広場に出ちまったか……ん、あれは……」タタッ


——


キリコ「くっ、ここは遮蔽物が……あ、あれは……」シュィイイッ


——




コブラ「キリコ!」
キリコ「コブラ!」





——

ココナ「シャッコ! シャッコ! 応答しておくれ! シャッコ!」

レディ「……だめね、こっちもコブラに応答がつかないわ……」

ゴウト『ちくしょうが!』バキューン

バニラ『おわっととと! レ、レディさん! 俺達もそろそろ下に降りましょう! ……オラオラ!』ババババッ

レディ「っ……そうね。どこかに降りれる所が無いか探すわ」

ココナ「この船はどうするんですか?」

レディ「私に任せて……貴女は、友達が心配でしょ?」

ココナ「……わかった!」

レディ「さぁ、バギーの用意はしてあるから。それにゴウトさんと乗って!」

ココナ「聞いたかいおやっさん! 早くこっちに来て運転頼むよ!」

ゴウト『年寄りはもっと労らんかい! 今行くからさっさと乗りこんどけ!』バキューン

ココナ「わかったよ! バニラも降りてきてこっちに合流すんだよ!」

バニラ『わ、わかってる! でも今それどころじゃねぇんだ! うわわ!』フィウンフィウン

レディ「私がそっちの敵も引きつけておくわ。幸い、空の敵は地上より少ない。なんとかできる」

バニラ『あ、ありがてぇ! じゃあ頼みましたよレディさん!』

レディ「じゃあ乗りこんでココナ」

ココナ「はい!」タタタッ

レディ「ゴウトさん、もう砲手は大丈夫よ。早くバギーに」

ゴウト『りょ、了解した!』

レディ「……くっ、シールドエネルギーもつかしら……」


ガガー ポー


ココナ『レディさん! こっちはバギーに乗り込んだよ! あっ、ほらおやっさん早く!』

レディ「わかった……一応完全に着陸はできないから、キリコ達みたいに射出する形になるわ」

ココナ『えぇ!?』

レディ「大丈夫。自動運転で着陸まではやってくれるわ。運転くらいはできるでしょうから、そこからは手動よ」

ココナ『ふぅ……ビックリした』

ゴウト『えぇと……よし、準備できた! いつでもいいぜレディさん!』

レディ「じゃあ、しっかり掴まっててね」ガシンッ


フィイイインッ ギュンッ

ゴウト『ぬぉおお!』

ココナ『うわぁうわあ!』

レディ「ハッチ、開くわ」ポチッ


ウィイイイン


レディ『そこの赤いボタンを押して!』

ゴウト「こ、これか! ようしココナ! 振り落とされんなよ! 拾ってやんねぇからな!」

ココナ「おやっさんこそ!」

ゴウト「ようし行くぜ!」ポチッ


ブルゥウウンッ ギキッ
バッ


ゴウト「うおおおお!」ヒューンッ

ココナ「ひぃいいい!」ガタガタ

ゴウト「ハ、ハンドルハンドル!」グルグル

ココナ「空中でハンドル切ってなんの意味があんのさぁ!」



ドカッ


ココナ「うわわわ!」ガタンッガタンッ

ゴウト「ぬぉおおお!」

ココナ「お、おやっさん! 前だよ前! 木! 木!」

ゴウト「わかってる!」キキキィイイッ

ココナ「ひぃいい! 前見てらんない!」

ゴウト「ぬわっとっとっと……へへっ、どんなもんだい! 俺もまだまだ現役って事だn ココナ「前ぇ!」 うぉおおお!」キキキィイイッ


キキィイイイッ
ドンッ

ゴウト「いつつつつ……」

ココナ「いたたたた……おやっさん! どこ見て運転してんのさ!」

ゴウト「うるせぇな! こんなジャングルでどこから何がくんのかなんてわかる訳ねぇだろ!」

ココナ「あたしを道連れに心中する気かい!」

ゴウト「えぇい、良いじゃねぇか無事だったんだから! ほら見ろ! バギーだってピンピンしてらぁ! 止まる為にちょいとぶつかっただけで……」

ココナ「そんな事よりバニラも回収しないと」

ゴウト「そ、そんな事って……はぁ、まぁいい。おいバニラ! どこほっつき歩いてんだ!」

バニラ『アタシがそこらを散歩してるように見えますーっ!? 上だよ! 上ぇ!』

ゴウト「上だぁ?」


キィイイイインンッ……


ゴウト「あ、あの野郎なに撃墜されてんだよ!」

ココナ「ちょ、ちょっとおやっさん……あれこっちに来てないかい?」

ゴウト「あ、あぁ……」

ココナ「……」

ゴウト「……」

ココナ「お、おやっさん! アクセルアクセル! 巻き込まれるよ!」

ゴウト「お、おう!」グッ キキィイッ

バニラ『あちちちっ! だ、脱出装置はどこだ!』キィイインンッ……

ゴウト「バ、バカ野郎! こっちに向かってくんじゃねぇ!」

バニラ『そっちが俺が飛んでる方に進んでんだろ!』

ゴウト「飛んでんじゃねぇ落ちてんだろうが!」

バニラ『あつっ! アツゥイ! あ、あった! このレバーだ!』

ゴウト「せめて軌道を変えてから出て来い! このままじゃぶつかる!」

バニラ『もうどうにもできねぇよ! えぇい、脱出!』グイッ


バシュッ


ゴウト「あの野郎!」

ココナ「あ、ほら! アフロが宙に出たよ! 回収しないと!」

ゴウト「わかってる! だが……えぇいもうどうにでもなりやがれ!」キキィイイッ

バニラ「ひぃー! パ、パラシュートがなんでひらかねぇんだよ!」

ゴウト「あの高さならなんとかなるか! 行くぞ!」

バニラ「きゃーっ! 落ちるーっ!」


ドサッ


ココナ「おやっさんナイスキャッチ!」

ゴウト「へっ、どうだバニラ。バギーのクッションの味はよ」

バニラ「あぁ……ちょっと臭い」

ココナ「おやっさん! ほら墜落してくるよ!」

ゴウト「だぁーっ! やっぱりきやがったか! えぇと……ん、あれは……」

ココナ「おやっさん!」

ゴウト「……掴まってろ!」キキィイイッ


ヒュウウウンッ……


ゴウト「ちっ、なんとか……」


オ゙ォオオオオオッ……

ココナ「ひぃいーっ!」

バニラ「うわぁあっ!」

ゴウト「だぁああっ!」


チュドォオオンッ



『……墜落したか』


メラメラメラメラ……


『こちらN−2。敵機を一機撃墜! その他乗務員も巻き込まれた模様!』
『ハッ……はい、了解しました!』 『作戦は成功したようだ。後はあの宇宙艇を落とすぞ!』
『了解!』




「……」

「……」

「……」

「……」


ゴウト「ふぅーっ……一時はどうなるかと思ったぜ……」

バニラ「へぇーえ……クエント並にヤバかったな……」

ココナ「何言ってんのさ! アンタがもっとマシな運転してなかったら墜落してなかったろ!」

バニラ「何をっ!」

ココナ「何さっ!」

ゴウト「まぁ落ちつけ二人とも……それよりも、無事でよかったぜ、シャッコ」

シャッコ「あぁ……なんとかな」

コブラ「おい、シャッコはどうした?」

キリコ「敵の足止めを……それから応答が無い」

コブラ「ちっ……だが、こっちもピンチのようだぜ。あそこを見ろ、キリコ」

キリコ「……ヤツが、頭か」

コブラ「クリスタル、ボウイ……」


ボウイ「……よく来てくれたな、コブラ。そして、神殺しの男キリコ。歓迎しよう」


コブラ「へへっ、そんな高い所に

ココナ「応答が無くなったから心配してたんだよ。こんな洞窟みたいな所に避難してたんだね」

バニラ「シャッコちゃん、ATはどうした?」

シャッコ「……やられた。なんとか離脱はできたが」

ゴウト「こんだけの数だ、しょうがない。生きててよかったぜ」

シャッコ「……敵とは、真っ向からの一騎討ちだった」

ゴウト「何?」

バニラ「シャッコを一対一で負かすだなんて……相当なヤツだな」

シャッコ「あぁ……俺は手も足も出なかった」

ココナ「そ、そんなヤツがいたのかい?」

シャッコ「……信じがたいが、恐らく、PSだ」

バニラ「PS……フィ、フィアナか!?」

シャッコ「……わからない。だが常人で無い事は確かだ。キリコも勝てるかどうか……」

ゴウト「ちっ、なんてヤツらだ……PSまで抱えてやがるとは……」

ココナ「フィアナ……」

シャッコ「この洞窟の先に、あの塔への入り口を見つけた。使い古されているのか知らんが見張りもいない」

バニラ「虎子を得らずんば虎穴に入れってね」

ココナ「それなんか違くないかい?」

バニラ「う、うるせぇな……へいおやっさん出してくれ。お客さんも一人追加だ」

ゴウト「おう任せとけ。行くぞシャッコ」

シャッコ「あぁ……」

ココナ(キリコ……フィアナ……)




——

コブラ「おい、シャッコはどうした?」

キリコ「敵の足止めを……それから応答が無い」

コブラ「ちっ……だが、こっちもピンチのようだぜ。あそこを見ろ、キリコ」

キリコ「……ヤツが、頭か」

コブラ「クリスタル、ボウイ……」


ボウイ「……よく来てくれたな、コブラ。そして、神殺しの男キリコ。歓迎しよう」

コブラ「へへっ、そんな高い所にいねぇで、こっちに来て一緒にお茶でも飲まないかい?」

ボウイ「いや、生憎だが俺はここで十分だ」

コブラ「馬鹿と煙は高い所が好きとはよく言ったもんだ」

ボウイ「ふふっ、相変わらず口の減らない男よ……だが、これを見てもその減らず口を叩けるかな?」


キュィイイイッ キュィイイイイッ

キリコ「っ! コブラ、囲まれたぞ」

コブラ「あぁ……ざっと5ダースくらいはいるぜ……」

ボウイ「ふふふっ、それだけでは無いさ……見ろ!」


ガインッ ガインッ

キリコ「……新型の、ATか?」

コブラ「へっ、そんなオモチャで俺らを倒せるとでも思ってんのかい?」

ボウイ「良いマシンだがな、こいつの性能だけなら俺もそうは思わん……だが、こいつの中にいるのが、PSだとしたら……はたしてどうかな?」

キリコ「何っ!?」

コブラ「貴様、まさか!?」カチッ

ボウイ「そう構えるな。それに、貴様のサイコガンは俺には効かんのを忘れたのか?
    安心しろ、こいつの中に入ってるのはファンタムレディでは無い。我々が技術提供を受けて作った新たなPSだ」

キリコ「新たなPS、だと……?」

ボウイ「そうだ。貴様の持っているファンタムレディを誘拐し、提供する事を前提にとある宗教団体から得たものだ。
    人間に外部から人口知能を取り付け、生身のままその運動、瞬発、演算能力を拡張する活気的なPSだ」

コブラ「けっ、だったら端っからサイボーグにした方が早いんじゃねぇか?」

ボウイ「わかっていないな、コブラ。このPSとサイボーグでは一人あたりの処置費用が雲泥の差だ。
    生身のまま、ただ取り付けるだけ、或いは洗脳するだけで良いのだ。この技術を利用すれば廉価で最強の軍隊が完成するのだよ」

コブラ「最強の軍隊? なんだ、お前は軍人にでも鞍替えする気かい?」

ボウイ「何処かの軍幹部が、死なない兵士のみで構成された軍隊というものを構想した。
    初めは生存率の高い常人のみでやろうとしていたらしいが、後に死なない兵士を”創る”という発想に至った。
    俺は、その構想を少々借りたのだよ。強い兵を持つ事に、越したことは無いだろう?」

キリコ「……だが、その軍人は失敗した。俺の仲間が殺した」

ボウイ「その通りだ。だが、そいつの死因は完全にPSを掌握できていなかったからだ。他の者も同様、PSが先走り、兵器としての体を成さなかった故の失敗だ」

コブラ「お前は違うってのかい?」

ボウイ「あぁそうとも。この新たなPSは自我を潰され、外部機関に完全に意識を統治されている。完璧な兵器なのだ。
    まぁ、まだ試作段階らしく、100%の機能は果たせていないらしいがな」

キリコ「……そんなものを、どうする気だ」

ボウイ「貴様とここで一対一で戦わせる。そこで、PSの真価とやらを見させてもらい、使えるようならこの計画を更に進めるさ」

コブラ「キリコが勝ったら?」

ボウイ「十時砲火で死んでもらうさ。ここでお前らを囲んでいるATは何も観客という訳じゃない」

コブラ「割に合わない提案だぜ……」

キリコ「……」


ボウイ「ふふふっ、それでは戦って貰おう。地球では、昔コロッセオなんて場所でこんな風に奴隷を戦わせたらしいじゃないか、えぇ? コブラ」

コブラ「けっ……俺が黙って見ているとでも思ってるのか!」

ボウイ「わかっているさ。お前の相手は俺がしてやる」


スタッ


コブラ「へっ……エンターテイナーだな、ボウイさんよ……」カチッ

ボウイ「ふふふっ、期待には応えなければな……やれ、PSよ。キリコを殺せ!」



キュィイイイッ


キリコ「っ!」

コブラ「キリコ!」

ボウイ「どこを見ている!」ヒュンッ

コブラ「おわ! っと……ちっ……頼むぜパイソン!」カチッ


ヒュンッ ズガガガッ



キリコ「くっ……」ヒュンッ ヒュンッ

PS『……』

キリコ(なんて軌道と速さだ……フィアナやイプシロンとも遜色無い……)

キリコ(武装はヘビィマシンガンと九連装ロケット……だが、敵は新型ATだ。何を仕掛けてくるか……)ガチンッ



キュウィイイッ ガシンッ キュンッ


キリコ(弾薬も残り少ない……無駄弾は撃たない)

PS『……』キュウンッ キュウンッ

キリコ「そこだ」ダンッ ダンッ

PS『……』カカッ ピッ



キュウンッ ヒュヒュッ


キリコ(くっ……予測が読まれているか)

PS『……』キュウンッ ピピッ

キリコ(ち、近づいてくる!)


ズガンッ バキィインッ


キリコ「ふぉおおっ!(け、蹴りだと!?)」バゴンッ

キリコ(な、なんて機動力だ……速過ぎる……)

キリコ「くっ……はぁ、はぁ……」


——ドッペルゲンガーというものを聞いた事がある。
もう一人の自分、それを見た者は死ぬという幻影の生物。
それがまさに今、目の前にいるのだとしたら。無機質で、無味乾燥、表情の無い敵機。
その白紙の表情に、黒く淀んだ俺の顔が貼り付けられている。そしてソイツは俺に言う。
お前は死ぬと——。


PS『……』ズガガガッ

キリコ「ぬっ……ぐぁあっ!」ガキンッ ガキンッ

コブラ「キリコッ!」

ボウイ「隙だらけだぞコブラ!」バキィッ

コブラ「のわぁっ!」

PS『……』キュィイイッ カキンッ

キリコ「っ……ミッションディスクが……」

キリコ(ゆ、指一本触れられないとは……)


バキィインッ バキィインッ


キリコ「うわぁああっ!」

PS『……』ピピッ カシンッ

キリコ「くっ……(きょ、距離をとらねば……)」


バッ

キリコ(っ!? なんだあれは……グレネード?)


カッ


キリコ「うっ!?」

キリコ(くっ! 目くらましか!)

PS『……』ガシュッ ガシュッ

キリコ(ミ、ミサイルか!? 一旦後ろに……)


バキュンッ


キリコ「ふおっ!(後ろから爆風!? た、退路が!)」


ドガガガガッ


キリコ「ぐああああっ!」

コブラ「キ、キリコ!」


ドガァアアンッ!!


コブラ「キリコォーッ!」

ボウイ「ふふふっ、さすがPSだ。あの神殺しと謳われた男を爆殺するとは」

コブラ「お、おい……キリコ……」



ドサッ……


ボウイ「ん?」

コブラ「あれは……」


「フィ、フィアナ……」


ボウイ「キリコだと!? あの爆発から抜けだしたか!」

コブラ「へへっ……さすがゴキブリ並にしぶといじゃないか……」



「フィアナ……」


ボウイ「ふっ、だがもう虫の息ではないか……」

コブラ「おっと! よそ見をすんなよ!」カチッ


ズキュウウンッ


ボウイ「!?」

コブラ「ぐあっ!」ガキンッ

PS『……』シュウウウ……

ボウイ「ほう、さすがPS。気配りもできるとはな」

コブラ「ちっ……(パイソンが弾かれちまったか……)」

ボウイ「そうらどうした! 不死身の男が仲間を気にして戦えんか!」ビュンッ ビュンッ

コブラ「クソッ!」ヒュンッ ヒュンッ

ボウイ「喰らえ!」グワッ


バキィッ


コブラ「がはっ……」

ボウイ「もう一発だ!」


ドゴォッ


コブラ「ぬわぁっ!」ドサッ

ボウイ「ふっふっふ、どうだコブラ。俺のタックルは効いただろう。お前の仲間の所まで飛ばしてやったんだ、感謝しろよ」

コブラ「ぐっ……」

ボウイ「どうした? 不死身の男コブラが地を這い蹲って。まぁ、その方が蛇らしい。似合っているぞコブラよ」


『わはははっ!』 『ざまぁねぇぜ!』


コブラ「くっ……おい、キリコ……生きてるか?」ジリッ……

キリコ「……フィ、アナ……」

コブラ「へっ……たまには俺の心配もしてくれよ……」

コブラ(不死身と呼ばれたこの俺が、ざまぁねぇぜ……あんなガラス細工の攻撃でこんなボロ雑巾みたくなるとはよ……)

ボウイ「さて……トドメは俺が刺してやるぞ……」シャキンッ

コブラ(ちっ、体が動かねぇ……俺が、死ぬのか……この俺が……)

ボウイ「長かったな……貴様との因縁も……」

コブラ(最後がこんな野郎と一緒たぁ……へへっ、こりゃ閻魔様に裁かれるまでもねぇ。俺は地獄行きらしい……)

ボウイ「さらばだ……コブラよっ!」グワッ


ドスッ

ボウイ「……」

PS『……』


『……』 『……』


「ぐ……はっ……」

ボウイ「……何故だ」


「はぁ……はぁ……」


ボウイ「何故貴様は動ける!」




「キリコッ!」


キリコ「ぐっ……さぁ……な……」


ポタッ ポタッ


コブラ「っ……キリコォッ!」

ボウイ「ふっ……味方の盾になるとは、なんとも泣かせてくれるじゃないか……」シュッ


ドサッ


キリコ「ぐはっ……」

コブラ「キリコ!」

キリコ「……」

コブラ「おい、キリコ! しっかりしろ!」

キリコ「コ、コブラ……」

コブラ「なんで俺の盾になった! 俺の!」

キリコ「コブラ……た、のむ……」

コブラ「おい! 辞世の句にはまだ早いぜ!」

キリコ「フ——、た——」

コブラ「っ!?」

キリコ「フィアナを——」




フッ


コブラ「……」

「……」

コブラ「おい……おいキリコ!」ユサユサ

ボウイ「はははっ! どうだ! 神殺しの男を、殺してやったぞ! どうやら俺は神をも超えたらしい!」


ヒューヒュー ワアァアアアアッ



コブラ「おい! 神様殺した癖に何神様の所に行こうとしてんだ!」ユサユサ

ボウイ「ふふっ、奴らめ……何が触れ得ざる者だ。この通り死ぬではないか……」


「……」

コブラ「くっ……貴様ら……」

ボウイ「うん?」

コブラ「俺は……俺は喜んで……」








コブラ「貴様らを殺すぞ!」ガチャッ






バシュゥウンッ バシュゥウンッ


ボウイ「はははっ! 俺にサイコガンは効かんと言ったはずだぞ!」スゥウウ スゥウウ

コブラ「黙れっ!」バシュウッ バシュウッ

ボウイ「どうしたコブラ。サイコガンの威力をまるで感じないぞ?」

コブラ「く、そっ!」バシュッ バシュッ

ボウイ「ふっ、見苦しい……もっと誇り高き男かと思ったが、俺の見る目が間違っていたようだな……」

コブラ「く……そ……」バシュ バシュ

ボウイ「ふんっ!」ドムッ

コブラ「ぐはっ!」

ボウイ「ふっ、大人しく寝ていろ……貴様は正式に、我らが海賊ギルドが処刑してやる事にした……」

コブラ「チク、ショウ……」ズルズル





フィアナを……




コブラ「キリ……コ……」ズルズル

ボウイ「不死身の男よ、眠るがいい」





フィアナを……助けてくれ……




コブラ「すま、ない……」




ドサッ



——




沈んでいく意識の中で、今まで過ごした地獄がスクリーンに映し出されるように流れる。
炎の中で、あの手を取れなかったあの日が。
敵の返り血を肩に浴び、何にも従わないと誓ったあの日が。
異能の明媚に苛まれた、味方の血肉を喰らい、生き延びたあの日が。

そして、戦争は終わった。
そして、運命に出会った。

酸の雨に濡れながら、緑に染まる業火をくぐり、一握の砂に己の命を埋めてきた。

そして、神は死んだ。

そして……。

そして——。



——



地より這い出る死者の手が、己の足を掴み取る。
悪口両舌の戦友が、仲間になれと囃し立つ。
——いいや違う。この手、この臭い。こいつらの意志は違う。
こいつらは死へと誘う者ではない。
お前は死ぬなと呪詛を吐き、お前はいらぬと罵り呪う。この地獄へと、永遠に繋ぎ止めんとする者だ。
俺はまだ、生きねばならぬ。この赫奕たる地獄の中で。

次回、「安息」
宿命とあれば、俺は生きる。


ちょっと書き足りない部分があったので修正したりしてきます。
また夜になるかと。






     ——第三話——
       「安息」








「ひぃーっ、ひぃーっ……」





ゴウト「な、なぁ。ちょ、ちょっと休ませちゃもらえねぇか?」

ココナ「あぁ? 何言ってんだい! まだまだ先は長いんだよ!」

ゴウト「で、でもよぉ……こんだけ長い階段なんて聞いてねぇよ……」ゼェゼェ

バニラ「はぁー……俺ももうダメ……」ゼェゼェ

ココナ「だらしないねぇ! 今キリコとコブラが命懸けてフィアナを助けに行ってんだよ!? 少しでもその役に立とうと思わないのかい!?」

ゴウト「役に立ちてぇけど、このままじゃ役に立つ前に、この二本の足で立てなくなっちまうよ……」


シャッコ「……おかしい」

バニラ「どうしたのシャッコちゃん……この階段の長さがおかしいのは知ってるよ……」ヒィーヒィー

ココナ「何がおかしいんだい?」

シャッコ「ここは確かに使い古された道だ。だが、あいつ等がここを知らないという道理は無い。それなのに、見張りの一人もいないのがおかしいと言うんだ」

ココナ「……確かに」

バニラ「ションベンでも行ってんじゃねぇか? それか大か」

ココナ「アンタじゃないんだからんな訳あるかい!」バシンッ

バニラ「いたっ! な、ナグルコトナイデショーッ!?」

シャッコ「ふん……だが、急いだ方が良いのは確かだな」

ココナ「ほら、まだ先がどれだけあんのかわかんないんだから、さっさと行くんだよ!」

ゴウト「ったく、年寄りに鞭打ちやがって……」

バニラ「クソッ……わかったよ行けば良いんでしょー!?」

ココナ「ほら、早く昇る!」タンタン

バニラ「はぁ……なんでアイツあんな元気なんだよ……」タンタン

ゴウト「あぁ、全くだ……」タンタン

シャッコ「……」タンタン

ココナ「ん……あぁ!」

ゴウト「今度はどうした?」

ココナ「やっと上に着いたみたいだよ!」

バニラ「ほ、本当か!?」

ココナ「うん、このドアで行き止まりだ!」

ゴウト「へぇー……ようやくか……じゃあ開けるぞ……」ギシッ


ガンッ ガンッ


ゴウト「ん、あかねぇぞ。錆ついてんのか……」ギシッ

シャッコ「どいてろ」


バコンッ

バニラ「ヒューッ! さすがシャッコちゃん、良いタックルだ。傭兵やめてラグボール選手になったらどうだ?」

シャッコ「所詮、あんなものは遊びだ」

ゴウト「しかし、ここはなんだ……格納庫か?」

ココナ「でも真っ暗だよ?」

バニラ「あぁ。人気もなんも、どこにも無いぜ?」

ゴウト「どういうことだ?」

シャッコ「……」

ココナ「あ、でも! 沢山ATあるよ! シャッコどれが良い?」

ゴウト「まぁ誰もいない今がチャンスだな。選り取り見取りだぜシャッコ」

バニラ「ATのバーゲンセールだ!」

シャッコ「……ツヴァークで良いだろう。またヤツ戦うとなると、コイツくらいの機動性は欲しい」

バニラ「俺の両手はマシンガンってやつだな」

シャッコ「……この中では一番性能が良い。それだけだ」

バニラ「なぁ、俺たまに思うんだけどさ。シャッコちゃんとキリコちゃんってサシでどんな会話するの?」

シャッコ「……行くぞ。足にでも掴まってろ」

バニラ「無視ですか……」


ガシンッ ピッ ピッ


シャッコ「正常だ。振り落とされないようにな」

ココナ「よーし、飛ばせー!」

ゴウト「馬鹿野郎、年寄りもいんだ!」



キュィイイイイッ


ゴウト「ぬおっと!」ガクンッ

バニラ「うぉおお……へへへっ、いいじゃないシャッコちゃん! このままキリコちゃんのとこに行っちゃいましょー!」

ココナ「でも、何処にいんのかわかんのかい?」

バニラ「あぁ? ふん……そいつぁ考えて無かった……」

シャッコ「コイツには精密なレーダーが無い。が、これだけ人気が無いとなると、一点に集中しているのだろう」

バニラ「というと? あの人数が集まれそうな広場を、探せっつう訳か……」

シャッコ「その程度ならコイツでも調べられる。ここから大体10m上の地点だ」

バニラ「ようし、そこだな。待ってろよ、二人とも」チャキッ

シャッコ「戦闘前には降りてくれ。いくらATと言えど、コイツはベルゼルガみたくヘビィでは無い」

ゴウト「へっ、対AT用ライフルでもありゃ良いんだが、ありゃ重過ぎて持てんか」

バニラ「なぁに。このアーマーマグナムがありゃ大丈夫さ。キリコちゃんとお揃い」

ココナ「こっちだって、ちゃんと手榴弾も持ってきたよ!」

ゴウト「うん? ……おい、そりゃ手榴弾じゃねぇ。閃光音響弾だな」

ココナ「あれ、そうだったのかい」

バニラ「けっ、これだからお前はダメなんだよ」

ココナ「あっさり撃墜されたアンタが言うのかい!?」

バニラ「あんな数相手にしてたら当然でしょー!?」

ゴウト「まぁまぁ、今喧嘩するんじゃねぇよ……」

バニラ「けっ、それもそうだな。よし、腰入れていくぜ!」

ココナ「頭を倒してフィアナを取り返そう!」




キュィイイイイッ……







——




ボウイ「海賊ギルドの同士よ! ようやくこの日が来た!」


ワァアアアアアアアアッ


コブラ(こ……ここは……)

ボウイ「我々は完璧な兵士を手に入れた! そして神殺しと、この不死身と呼ばれた男を捕える事に成功したのだ!」

PS『……』


ドワァアアアアッ

コブラ(へっ、そうか……あの後気絶して、とっ捕まったって訳か……今日はとことん情けねぇな……)

ボウイ「我々の力が! 圧倒的である事をここに証明したのだ!」

コブラ(ボウイの後ろにあるカプセル……あれは……あれがキリコの言っていたフィアナか……。美人だな……キリコには勿体ねぇくらいだ……。
    すまない……助ける事は、できないみたいだ……)

ボウイ「見ろ! 我らに仇を成したコブラを! 見ろ! あの無残にも死んだキリコ・キュービィーを!」

コブラ(キリコの死体もここに運ばれたか……死体で御対面なんて洒落にもなりゃしねぇ……。
    クソッ……こんな枷、いつもなら容易くぶち切ってる所なんだがな……)ジャラッ

ボウイ「さぁ、海賊ギルドの同士諸君よ! これより、我らに盾突く最後の敵を処断する!
    この者を最後に、我ら海賊ギルドの道を塞ぐ者は現れない! 最強の兵士と共に、我らが宇宙を牛耳るのだ!」


ウワァアアアアッ


コブラ(へっ、相変わらずお口が達者だこと……やっぱりあんたは政治家の方が向いてるよ……)





……ュイィイイイイイイッ




PS『……っ』

ボウイ「さぁ見ろ! この哀れな男の最後を!」

PS『……クリスタルボウイ様』

ボウイ「この不死身と呼ばれた男の最後を!」

PS『クリスタルボウイ様』

ボウイ「……えぇいなんだ!」

PS『まだ、敵が残っていたようです。ATのローラーダッシュ音がこちらに向かっています』

ボウイ「何だと!? 」

PS『……私が取り逃した者のようです』

ボウイ「何ィ!? くっ……完璧なる兵士が聞いて呆れる! 早くATに乗って殺せ!」

PS『ハッ……ですが、見張りの隊員も全てATから降ろしここに集めたのは得策ではないかと……』

ボウイ「黙らんか! その分貴様のATはそこにあるだろう! さっさとしろ!」

PS『ハッ』タタタッ ガシンッ



シャッコ「キリコー!」キュィイイイッ

ボウイ「ふんっ、キリコの片割れの傭兵が、我らのATを奪い来おったか……やれ、PSよ!」

PS『……』キュィイイイッ

コブラ(くっ……体が動けば……)ジャラッ

シャッコ「ぬうっ……またお前か」ズダダダダッ

PS『……』シュンッ シュンッ

ボウイ「はっはっは。キリコにも倒せなかったPSを貴様如きでは話にもならんわ!」

PS『……』ズダンッ

シャッコ「ぐぬぅっ!」バキンッ


ズドォオオンッ

シャッコ「ぐぅっ!」ドサッ

ボウイ「ふっ、咄嗟に爆発から抜けたか。貴様らはよくもまぁ生への執着が強いな」

シャッコ「くっ……」

コブラ(ちっ……本当に万事休すだぜ……)

ボウイ「ふふふっ、見ろ。あそこで死に絶えたキリコを。貴様もあの男のように、この俺の爪で殺してやろう」シャキンッ

シャッコ「……」

ボウイ「どうした? 怖くて声も出んのか。今からお前はコブラを処刑する前座になるのだ、もう少し盛り上げてくれなくては困る」

シャッコ「……」

ボウイ「どうだ、何か言ってみろ!」

シャッコ「ふっ……」

ボウイ「っ……何がおかしい!」

シャッコ「本当に、キリコが死んだと思っているのか」

ボウイ「……何ィッ?」

シャッコ「アイツが何故異能者と呼ばれるか、お前はわかっていない。だからこそそうやってぬか喜びをしているのだ」

ボウイ「黙れ! ヤツは俺がこの手で確かに殺した! この爪で腹を一突きしてな!」

シャッコ「それだけか」

ボウイ「それだけか、だと……心臓も停止した! ヤツは完璧に死んでいる! それだけで十分だ!」

シャッコ「ふっ……刺しただけでキリコを殺した喜ぶとは、とんだマヌケな上官だ。前にもそんなヤツがいたが、そいつは死んだ。お前もそうなる」

ボウイ「……ふん、では貴様の言う通りに、キリコをこの場で切り刻んでやろう!」

シャッコ「っ!(くっ……隙を作るつもりだったが……)」

ボウイ「私がマヌケだと? 笑わせる……」

シャッコ(こ、このままでは……)

ボウイ「ふふふっ、良い事を思いついたぞ。ファンタムレディにもこの光景を見て頂こうじゃないか」ピピッ

シャッコ「や、やめろ!」

ボウイ「さぁ覚醒しろ、ファンタムレディよ」


「……ん……」ゴポッ

ボウイ「やぁ、お目覚めかね?」

フィアナ「こ、ここは……」

ボウイ「我らが勝利の宴にようこそ……」

フィアナ「キリ……コ……」

ボウイ「彼ならこの近くにいるぞ? さぁ、探してみろ」

フィアナ「……っ!?」

ボウイ「おや、見つけたのかね。キリコ君にも来て頂いたのだが、退屈なのか深く眠ってしまってね。そう、二度と目覚める事のないほどにな」

フィアナ「……嘘……」

ボウイ「嘘でも夢でも無いさ。私が腹を一突きしたら寝付いてしまったよ……」

フィアナ「い、いやっ! キ、キリコッ!」

ボウイ「しかし……御友人曰く、切り刻まないと彼はちゃんと眠れないそうだ……だから……」

フィアナ「起きて! キリコ!」






ドク……





ボウイ「しっかりと、寝てもらうことにしよう」シャキンッ

フィアナ「キリコォッ!」

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