兄「……」
そこには、血塗れの兄が居た
頭から血を流し、ついには命の鼓動を止めた兄
そしてそれを悲しむ、彼の妹と見られる少女が一人
妹「ど、どうして…!?どうしてなの…!?」
妹「お兄ちゃん…!お兄ちゃぁん…!!うぅぅぅ……ひどいよ…ひどいよ…」
妹「こんなのって…こんなのってないよぉ……うぅぅぅぅ……」
母「う…うぅ…い、妹…!!…辛いのはアンタだけじゃないのよ…妹…」
父「そうだな…まだ悲しむのは早い…まずはコイツを天国へちゃんと送り届けてやらないと、な…」
妹「うぅ…やだよ…やだよ……お兄ちゃん…うぅ……お兄ちゃん…」
野次馬達は群がり、彼女達、彼女を見つめる…
言葉にならない思いを全員が抱き、哀れみの目でそっと彼女達を見つめる…
いつか乗り越えるであろう…一時の悲しみの中で…
兄「いやいやいや!!なんだよこれ!なんだよこれ!なんだよこれ!」
天使「あれ、気に入りませんでした?」
兄「…てか、これ何…?」
天使「あなたの死亡PVでっす☆」
兄「…は?」
天使「いやー、久々に良い出来ですよ!これ!最高の出来と言っても過言ではない!」
兄「あぁ…っと…?ん…?」
天使「どうなされたんですか?」
兄「あぁ、いや…」
兄「そもそもなんで俺ここにいんのかなーっと思ってさ…俺、さっきまで」
天使「死んだからですよ」
兄「は?」
天使「死んだからですってば」
兄「は?は?は?」
天使「…死ね」
兄「生きる」
兄「てかなにこれ!?は?」
兄「俺さっきまでめちゃくちゃ元気だったぞ!」
兄「さっきまで愛猫と遊んでたからな!おい!!!」
天使「んな事言われても知りませんよ、死んでるんですから」
兄「だから死んでないってば」
天使「じゃあこの、血だらけで倒れてるむさい男は誰ですか?」
兄「……」
兄「この血も滴る良い男なクールフェイスは…間違いなく俺だ…」
天使「でしょ?この頭かち割れてる素人映画のゾンビA見たいな顔付きは間違いなくあなたですよね?」
兄「そうだな、軽く見て福山雅治以上ジョニーデップ以上のこのビューティボーイは世界に俺しか居ないな」
天使「世界中に25億は居ると思いますよ」
兄「っで、俺はこれからどうしたらいいの?」
天使「どうしたらいい、とは?」
兄「俺死んでるんだろ?じゃあもうどうあがいても仕方ねえよ」
兄「さっさと天国にでも地獄にでも連れてってくれ…」
天使「お、案外飲み込みがいいですねー、少しだけ好感度上がりました」
兄「ってか、背中に羽が生えてて、頭の上に輪っかが見えるって、お前が天使じゃない限り信じれないないからな」
天使「おっ!そこに目を付けるとは!流石私が担当してるだけはあります!」
兄「最初はダサいコスプレかと思ったけど、こんなダサいコスプレしてても利点がないような気が」
天使「…死ね」
兄「…あ、気にしてたのか、ごめん」
天使「気にしてねえよ」
兄「気遣えなくてごめん」
天使「だから気にしてねえよ」
兄「で、どうすりゃいいの、なるべく簡潔に頼む」
天使「いや、むしろ話を複雑にしてんのお前だろ、マジお前見た目通りで役に立たねえな、どうせ生きてる時も録に…」
天使(あ…はーい♪無駄話してすいませーん、じゃあ簡潔に説明させて頂きますねー♪)
兄「なんか…ごめん……」
兄「さっきの話…大分気にしてたんだな…」
天使「だから気にしてねえつってんだろ」
天使「つまりですねー、あなたが死人No,10兆目の人間な訳です」
天使「私達としては、10兆人目記念としてですねー、特別にあなたにプレミアムな体験をさせてあげたい、という事でしてー」
兄「つまり…?」
天使「…チッ」
天使「タララッラー♪第二の人生、引き換え券~!つまり~死者蘇生プレゼント!って事なんですねー!」
兄「さり気なく舌打ちしてんじゃねえ、泣くぞ、こら、泣くぞ」
天使「いらないとは思うんですけど、このチケット、最大3回まで蘇生が可能となっている優れ物です!」
天使「使うも使わないもあなた次第ですけどー、私的にはー」
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