夏だし、怖い話を頑張って書いてみる。 (91)
書き溜めとかないよ。
とくに話を考えてたわけじゃないから。最初は、とりあえず実体験を書いてみることにする。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1374815956
使っている麺がパスタのラーメン屋がある。
ちょうど今から3年くらい前の夏。
俺はマンションから新築一戸建ての家に引っ越すことが決まった。
俺の家は八人家族でマンションに住んでいたんだ。間取りは3LDK。
八人で暮らすには少し狭すぎた。
それにそのマンションの家賃もばかにならないくらい高くて、ローンを組んで一軒家を買ったほうが安く済む程だった。
だから、うちの両親は一戸建てを購入することを決意する。
俺は一戸建てに住めることを大いに喜んだ。
一戸建てになれば自分の部屋がもらえるからね。
マンションでは、兄貴と部屋が同じでエッチな動画とかPCで見れなくて悶々としてたんだよ。
だから、一人部屋が出来るかもしれないから喜んだ。
一軒家に引っ越す当日。新しい家に着くと真っ白な色をした一軒家が俺を出迎えてくれた。
工事中に何度も行っていたから、多少新鮮味は薄れていたが、それでも嬉しい気持ちは変らなかった。
家は注文住宅でマンションのときとは比べ物にならないくらい広かった。
本当は分譲住宅を購入する予定だったんだけど、安い土地が見つかったから注文住宅にすることが出来た。
荷物を全て運び終えて、引越しが完了した夜。
俺は舞い上がってなかなか、眠れなかった。
六畳の部屋のベットの上を転がりながら、これから一人部屋でなにをしようかと胸を膨らませていた。
エッチな画像を検索したり。動画を見たり。エロ本を隠したりもしようか。
まだ、学生だった俺はとにかくエロしか頭に無い。
引越ししてすぐだったためネットは繋がっておらずお預け状態だった。
収まりがつかなくなった俺は、窓を開け、部屋と繋がっているバルコニーに出ることにする。
夜風に当たれば少しだけ気が治まると思って。
バルコニー出ると夏の夜風が俺の体を撫で回した。
大きく息を吸い込んで落ち着こうと努力していた。
しばらくすると、頭の中の欲求は消えてスッキリとした気分になった。
「よし」
俺は一人で呟いて部屋に戻ろうとした。
しかし、それと同時に悪寒のようなものも感じ体を震わせる。
不気味な気配を感じた俺は、すぐ様部屋の中に戻った。
なにかを見たわけでもないのに、怖くなった俺は急いで窓を閉めて、布団の中に包まった。
たぶん、新しい家で暮らす初めての夜だったから余計に怖くなったんだと思う。
ホラー好きの癖にびびりな俺は布団の中から顔を出すことはしなかった。
先ほどとは違った意味での興奮状態になって、就寝することができなくなる。
けど、布団の中に居ると気持ちは落ち着いてきて、いつしか俺は眠りについていた。
明くる日。朝目覚めた俺はボーっとしながら昨日の夜のことを思い出した。
布団から起き上がり。バルコニーに目をやる。朝日が部屋の中に降り注いでいる。
俺は足音を立てながら近付いていき窓に手を掛けてドアを開いた。
足を出してサンダルを履く。キョロキョロと辺りを見回す。特に変ったものはない。
景色も家々が見えるくらいなのと、近くのコンビニが目に入るくらいだった。
俺は溜息を付いて手すりに右手を乗せた。
ちょっと寒気がしたくらいで怖がるなんて。自分でも驚くくらい情けなくなりもう一度溜息を付く。
すると、黒い排水溝が俺の瞳の中に飛び込んできた。
ホラー映画とかではこういう所に髪の毛が入ってたりするんだよな。
そう思った俺は、興味本位で排水溝に近付いていき、しゃがみこんで排水溝の蓋を取り中を覗き込んでみた。
しかし、髪はおろか、そこにはなにもなかった。
新築だし当たり前か。俺はそう思い蓋を閉じてから、部屋の中に戻った。
引っ越してから一ヶ月が経った。
その後は変ったことはなにもなく。普通の学校生活と自宅生活を送っていた。
ネットも使えるようになり、テレビも買ってまさに天国のようだった。
心配事も何も無く、有意義に過ごしていた。
あの夜にあった悪寒のことは頭の中から綺麗スッポリ抜け落ちていた。
そんなある日。部活から帰ってくるとき、家の中から大きな機械音が聞こえてきた。
しかし、それはすぐに鳴り止んだ。
最初は何事かと気を揉んだが、どうやら危ないような事態だったわけではないみたいだ。
俺は玄関のドアを開け部屋に入る。
訂正
俺は玄関のドアを開け家に入る
リビングに入ると、兄ちゃんと母が珍しくお喋りをしていた。
「どうしたの?」
俺はびっくりして訪ねた。うちの兄ちゃんと母は仲があまり良くない時期だったため、話をしていることが、驚きだった。
母はちょっと引きつった様子で
「お前の部屋の火災報知機が鳴りっぱなしなんだけど」
と、言われた。火災報知機? 俺はすぐさま二階に行き確認した。
そこには椅子を持った弟がすでにいて状況を聞いた。
「僕が帰ってたときにはもう鳴ってただよ? 母さんが何度も止めようと停止ボタンを押してたんだけど、一旦は鳴りやまるんだけど、押した数分後にまた鳴り出しちゃってもう手に負えない状況なんだよ」
説明された俺は、家の外で聞いた音はこれかと火災報知機を見つめた。今はなっていない。
「今は止まってるけど?」
俺が聞くと弟は、
「一分前くらいに僕が停止ボタンを押したんだよ。後一分すればまた鳴り始めると思う」
「なるほど」
なら、と。俺は鳴り始めるのを待った。
どうせなにかの誤作動だろうし、このまま続くようならそこの会社に電話しようと思った。
辺りを見ても火災報知機が鳴るような原因になりそうなものはなにもない。
俺は弟と二人火災報知機を眺めた。
しかし、十分経ってもなぜか鳴らない。
「んー?」
弟が堪らず声を漏らした。
「ならねーじゃん」
俺は騙された気分になって弟をにらみつけた。すると、弟はびくびくしながらリビングにいる兄ちゃんと母を大声で呼んだ。
階段を上ってきた母と兄ちゃんは目を丸くした。
「いろんなことしても鳴り止まなかったのになんで?」
母は首を傾げていた。すると、兄ちゃんは
「さっきも言ったけど、やっぱり座敷わらしとかじゃね? きっと>>1の部屋に住み着いたんだよ」
兄ちゃんは目を輝かせながらはきはきと発言する。
「>>1がいなくて寂しくて……だっけ? まぁ、鳴り止んだしいっか」
母はそういい残すと一人で階段を下って行った。
寂しがりやな座敷わらしちゃんとかなにそれ可愛い。俺は心の中でそのことを呟くと兄ちゃんが
「寂しがりやな座敷わらしとか萌えるよな」
やはり、兄弟。思考するところは同じのようだ。兄ちゃんは薄気味笑い笑顔を浮かべながらそのまま自室へと消えていった。
弟も、興味が失せたのかDSを取り出して階段を降りて行った。
訂正
「座敷わらしが>>1がいなくて寂しいからつい悪戯しちゃった……だっけ? まぁ、鳴り止んだしどうでもいいか」
訂正
兄ちゃんは薄気味悪い笑顔を浮かべながらそのまま自室へと消えていった。
俺はみんながいなくなった後、ふとバルコニーに目をやった。
一ヶ月前の夜の出来事が思い出される。
あれは、座敷わらしの仕業? なら、納得がいくのかもしれない。
けれど、俺はどうも違うような気がした。理由は無い。直感だった。
しかし考えても答えは出ない。
俺はそのまま自室の中に入り買って来た漫画本を読むことにした。
それにびびりな癖にホラー好きな俺は怖いというよりはワクワクが上回っていた。
これからどんな怪奇現象に出会えるのかと、胸の高鳴りが止むことはなかった。
その出来事があった当日の夜。俺は怖い気持ちとワクワクが入り混じった心境で夜を迎えていた。
俺はご丁寧にカメラと動画を取るためのビデオカメラを用意している。
時刻は11時を回ったくらい。俺はそれを確認すると電気を消してベットの上に寝転がった。
バルコニーのほうにビデオカメラを向けて録画ボタンを押した。
俺はこのとき凄く気持ち悪い笑顔を浮かべていた。
窓に反射する気持ち悪い笑みを今でも覚えている。
ベットに入ってから一時間後の十二時。俺は一枚目のシャッターをバルコニーに向けて押した。
カメラの液晶が撮った画像を映し出してくれる。
しかし、異質なものは何も写ってなくて、オーブとかも写ってはいなかった。
いつも通りのフラッシュで明るく照らされたバルコニーしか写っていなかった。
訂正
俺は電気を消す前から凄く気持ち悪い笑顔を浮かべていた。
ごめんな。割と記憶が曖昧なんよ
まだまだ、時間はある。それに2時くらいがおそらく本番だと思い俺はなにもない状況を耐え忍んだ。
1時。シャッターを押すがなにも写らない
2時。シャッターを押すがなにも写らない
3時。シャッターを押すがなにも写らない。
結局俺はそのまま寝落ちしてしまった。
朝、俺は目覚ましの音で起きてバッと布団を剥いだ。
そこで自分が寝てしまったことに気付く。
頭を掻いてから俺は昨日の夜撮った写真を見直すことにした。
じっくり見れば変わったものが――
「あれ?」
無い。昨日撮った写真がファイルのどの中を探しても無くなっていた。
俺は明らかに胃が重くなるのを感じた。
額には脂汗を掻いている。
手なんかも震えていて、足には上手く力が入らなかった。
俺は慌ててビデオカメラに手をやった。
そこで俺は再度驚かされることになる。
録画ボタンをしっかり押しておいたはずなのに、動画がきちんと撮れていなかったのだ。
しばらくの間、思考と体が停止していた。
さ、最近の幽霊はデジタル化してるんだな。なんて思いながら。
しかし、どうもおかしな部分があった。
カメラを撮ったときにはなにも写っていなかったはず。
幽霊の仕業だったとしたら自分が写ってもいないのにわざわざ消す必要があるのだろうか?
それとも、遠回しの警告のつもりなのか。
もしくは俺の思い違いでただのカメラとビデオの故障か。
どちらにせよ。もう遊び半分でこんなことはしてはいけない気がした。
次はもっと恐ろしいようなことが起こりそうで怖くなり。
もう、この時点で俺の好奇心は全くもってなくなっていた。
ただ、あるのは恐怖だけ。
つぎの日の夜。俺は念のためバルコニーに塩を撒いておいた。
確か、清めの効果があるとか、なにとか。そんな知識で俺はこの行動を取った。
少しでも、霊障が起こらないようにするために。
そしてその日はもう早めに就寝することにした。
寝た時間は、おそらく9時だったと思う。
その日は部活で疲れていてあっさりと眠りの中に陥ることに成功した。
しかし、眠りが浅かったのかまだ暗い時間帯に目を覚ます。
俺は寝ぼけ眼でガラケーを開いた。時刻は午前2時。
その時間表示を見て俺の脳は一気に覚醒する。
津波のように恐怖がやってきて。
胸を締め付けられるような感覚が俺を襲った。
体は動くか試してみる。だが、体の自由はある。金縛りにはあっていない。
バルコニーに目をやる。けれど、なにもそこにはいなかった。
俺は一安心して溜息をついた。
そんな俺の心の油断が穴となった。
また、眠りにつこうとした瞬間。目の端に着物のような物が写った。
俺は反射的にバルコニーに目をやってしまった。
そこには白い着物を着た気品のある女性が立っていた。
その女性が来ている着物は、映像などで見る幽霊のような安っぽそうですぐに切れてしまいそうな服ではなく。
本当に、上質そうな布で出来た着物を着ていた。
俺は思わずその女性の横顔を見入ってしまった。
色白の肌。おっとりとした、優しそうな大きな瞳。腰まで伸ばした艶のある黒い髪。
大和撫子。美しい女性がそこには立っていた。
俺はたぶん、瞬きをしていなかったと思う。
すると、女性はゆったりとした歩きでバルコニーを右に行ったり左に行ったりを繰り返し始めた。
そして、その行ったり来たりが終ると。バルコニーの真ん中で動きを止めた。
こっちを振り向く。真正面でみるとさらに美しいように思えた。
なにも考えられなくなっていた俺はボケッとしていた。
人間。本当にびっくりするとなにも出来ない。
俺と女性の目と目が合う。
しかし、女性は清楚な笑顔を浮かべるとそのまま消えていった。
俺は呆然と女性が消えたバルコニーを見つめている。
何分間そうしていただろう。俺はなにも理解出来ずにそうしていた。
だが、時間が経つとあれが異質なものだったという認識が追いついてきた。
そうなってくると、収まっていた恐怖心がまた舞い戻って来る。
俺はその日の夜。布団の中で震えながら朝を待った。
朝。待ちに待った朝日が昇る。俺はそれを確認すると布団から這い出して兄ちゃんの元に向かった。
朝の早い時間に起こしたら怒るだろうがそんなのには構っていられなかった。
俺は兄ちゃんの部屋の前まで行き、ノックしようと手を上げて拳を作った。
けれど、その手がドアを叩くことはなかった。
言っても、どうせ信用してくれるわけは無い。
おそらく、冗談として軽く流されるだろう。
座敷わらしをした後だ。余計にそう捉えられてしまうはず。
俺は諦めて自室に戻った。
それに、冷静になった状況で考えてみれば。
あの女性の笑み。どうにも悪いものには思えなかった。
笑ったときの瞳も慈愛に満ちたもので優しげだった。
あの幽霊は悪いものではないんじゃないか?
全ての幽霊が害を成すわけではないので俺はそう認識することにした。
また、次の日の夜。
同じ時間帯にまた目が覚めた。
俺はバルコニーを見ることにする。
すると、また女性がどこからともなく現われた。
そして、またしても左に行ったり右に行ったりを繰り返していた。
俺は喉に上がってくるものを感じながらその女性を観察した。
年齢は、どのくらいなのかはわからない。しかし、とても若いということはわかった。
女性はバルコニーの真ん中に来るとまた止まり、こちらを向いてくる。
あの、笑みを浮かべて消えていった。
次の日も次の日も次の日も。
俺は同じ時間に目を覚ますと、彼女を見かけた。
さらに、毎回毎回同じ行動を取っていた。
そうなってくると俺の行動もだんだんと大胆になっていった。
ベットの上から手を振ってみたりした。
だが、なんの反応も無かった
次にベットの上から話しかけてみることにした。
が、結局聞こえてないかのようにスルーされてしまう。
慣れてきた俺は恐怖心がほとんどなくなってしまい
ベットのから上がって近づいてみたりした。
しかし、近づこうとした段階で女性は消えてしまった。
そして、最終的に俺が出した結論は
「彼女は空気と同じ。害を与えるわけじゃないし無視をしよう。」
これで、収まり俺は夜目覚めたとしても
彼女の行動を見守った後は、なにもせずすぐに寝るようにした。
ただ、毎日夜中に起されるのは本当に辛かった。
そんなのが一月続いたある日。
俺は最近出来た彼女が俺の部屋に来たいといいはじめた。
なぜかというと、
「俺の家幽霊出るwwww」
っと言ったところ彼女が興味があると俺の家に来たいと申し出た。
別に断る理由も無いので二つ返事をする。
けれど、予め明るい時間に面白いことは起こらないと説明はしておいた。
彼女はわかったと短く返事を返してくれた。
そして、予定通り彼女は俺の部屋に来ることになる。
しかし、案の定なにも起こることはなく。
その日は明るい時間のうちに彼女を家まで送ってあげた。
だが、夜。俺はとんでもない目に遭う事になる。
いつも通りの時間に起きた俺は半身だけ起き上がらせてバルコニーに目をやった。
これまた、いつも通り女性がやってくる。
俺は欠伸をしながら女性の行動を見守っていた。
バルコニーの真ん中に女性が来る。
案外、俺は女性のあの笑みが好きで心の中で今か今かと待っていた。
しかし、なかなか彼女は笑おうとしない。
はて。俺は小首を傾げる。
すると、女性はいきなり下唇を噛みながら窓の近くにやってきた。
その顔、瞳には。憎悪の意思が宿っている。
予想外な展開に驚いた俺は肩をびくつかせた。
そして、あまりにもの鬼の形相に小便を軽く漏らしてしまったと思う。
女性は涙を流して顔は8の字を描くように動かしている。
歯に力を入れすぎているせいか、下唇から大量の血が流れ始めた。
女性の両目は血走っていて、今にも俺を殺しそうな勢いだった。
俺は声を出そうと必死だった。しかし、どう足掻いても声を上げることは出来なかった。
まるで、喉を門が閉めているようだ。
「あ……あ……」
息の抜けた「あ」しか俺は言えなかった。
体全身を震わせて涙まで流した。上手く力が入らず自分の体が自分の体でないようだった。
金縛りにあっているわけではないのにあの女性に対する恐怖で体の自由が利かない。
さらに、体を動かせない、声が出せない恐怖が上乗せされていく。
最終的には、呼吸の仕方もわからなくなっていった。
吸った息が吐き出せなくなりパニック状態に陥いる。
そんな中で女性は突然、張り付いていた窓から離れると
こっちを向いたまま手すりに背をつけて、
頭から落っこちるようにして地面へと身を投げた。
そこで俺の意識は途切れる。
朝日が顔に当たり俺はそれで目を覚ました。
一瞬、ボーッとする時間を有してから、昨日あったことを思い出していった。
全部思い出した段階で俺はダッシュで兄ちゃんの部屋へと駆け込んで行った。
ノックもせずに入る。
「起きろ!」
俺は思い切りに兄ちゃんの尻を蹴った。
すると、薄っすらと目を開けて俺の顔を見る。
「き、昨日の夜! 午前の二時くらい! 俺の部屋に!」
「午前の二時?」
兄ちゃんは目を擦りながらなにかを思い出すようにしている。
「なにいってるんだよ。お前寝てただろ」
「へ?」
俺は間抜けな声を上げる。
「俺、その時間帯にお前の部屋に忍び込んで漫画本勝手に借りたんだぞ?」
「そのときはうなされてはいたけど、ちゃんと寝てたぞ」
……
俺はふらふらと兄ちゃんの部屋を後にする。
たぶん、その時の兄ちゃんは奇怪なものを見る目をしていたはずだ。
夢。俺が見ていたのは夢だったのか?
俺はリビングのソファで寝転がると思考を回転させる。
兄ちゃんが時間を間違えていただけじゃないのか?
そこの真偽は定かではない。
しかし、あれはどう考えても夢じゃなかった。
あの恐怖は俺の体が覚えていた。
見えない鎖で繋がれるような感覚。
きっと、あれが夢かどうかは今夜すぐに判明するだろうと
俺はわかっていた。おそらく、今日もまたやつは来る。
夜――
俺はカメラを片手に布団の中に潜り込んでいた。
時刻は午前1時50分を回ったところ。
布団の中の温もりが今では本当に気持ち悪く思えてくる。
手や背中。額には嫌な汗を大量に掻いていた。
俺は滴る汗を拭いながら女性を待った。
心の準備は出来ている。
写真を取ればこれが夢じゃないことが証明できるし、
もしそれが消されたとしても俺はまず眠りについていない。だから、夢を見ることは絶対に不可能だ。
それに……と俺はすぐ横を見る。
そこには床に寝ている兄の姿があった。
もし、現われたらその瞬間に兄ちゃんを起す。
そうすれば、兄もあの幽霊を信じてくれるはず。
大丈夫。あれはホラーゲームで言えばビックリイベント。
一回見てしまえばもう驚くことは無い。体もきっと動くはずだ。
そう言い聞かせて俺は時が経つのを待った。
2時――
俺は心臓を誰かが胸の中からバチで叩いているんじゃないかというくらいの動悸にあっていた。
手は汗のせいでふやけてしまっている。
息を押し殺して、女性が来るタイミングをはかる。
すると、俺の目に白い着物が入る。
来た――
俺は急いでシャッターを押そうとする。
しかし、またしても予想外なことを目の辺りにして動けなくなってしまった。
女性はバルコニーを左に右に歩いている。そこまでは普通だ。
普通じゃないのは彼女の腕。
おかしな方向に折れ曲がっているのだ。
白い着物にも少量の血が付いている。
綺麗な顔にも痣が出来ていて髪も乱れてしまっている。
まるで、どこかに身を投げたかのように。
俺は昨日の映像を思い出した。
確か、彼女は俺の意識が途切れる前、バルコニーから身を投げていた。
またしても、俺は自分の体の自由が効かなくなっていった。
隣にいる人間にすら声を掛けられない。
俺はロボットのような動きで首を兄に向ける。
兄は気持ち良さそうに寝ていた。
腕を少し動かばいいのに。声を少しだけ出せばいいのに。
それが出来ない。口を閉じることすら忘れて涎を垂らしてしまう。
俺はどうすることも出来ずに目を閉じた。
そうすれば、見なくて済む。
音はなにもないのでこうしていれば幾分か恐怖心は薄れる。
昨晩は目を閉じる余裕すらなかったが今回はどうにかなったようだ。
何十分くらいそうしていただろう。
俺の体感では三時間だったがおそらく現実の時間では10分かそこいらだったのではないかと思う。
ゆっくりと瞼を開ける。
すると、バルコニーに女性の姿はなかった。
俺はホッと一息つく。
だが、俺は大きな思い違いをしていた。
あの現象が一日一回限りだと俺は思い込んでいた。
しかし、それは俺の勝手な先入観だったようだ。
二週目。
その日の夜にはそれがあった。
安心した俺の瞳に写ったのはバルコニーにいる白い着物の女性。
今度は曲がった腕の他に鼻が折れていた。
そして、またあの動きを開始する。
俺は何度目かわからない意表を付かれて目を閉じる余裕を失った。
女性は真ん中に止まり昨日と同じような顔をする。
俺は唇を震わせてその光景を目に焼き付けていた。
そこで、俺はある事に気付く。
女性の唇が微かに動いていてなにか呟いているのだ。
俺はその「なにか」を理解したくなかったので必死に思考を停止させようとした。
しかし、人間というのはこういうときに限って瞬時に答えを導き出してしまう。
女性がなにを呟いているのか。俺はわかってしまう
『わたしといっしょにしんで』
俺は口から胃の中のものをぶちまけそうになる。
そして、その日の夜。
何週も何週も。彼女は俺の目の前に現われた。
その度どんどん容姿は変っていき最終的には人の顔かどうかもわからなくなり
手足が折れ立てなくなった状態の時は倒れた体勢でバルコニーからずーっとこっちを見て憎悪の視線をぶつけていた。
その時ももちろん、唇を動かしていた。
俺は重いまぶたを上げる。
瞼はもらもらいになったかのようにヒリヒリして痛い。
いつの間にかに寝てしまっていたようだ。
俺は放心状態のまま天井を見つめた。
あれが今日から何度も続くことになるのかもしれない。
そう思うと自然と涙が溢れてきた。
すると、兄ちゃんが目を覚ました。
俺は堪らず訪ねてみる。
「寝ててわかんなかったと思うけど俺、昨日の夜おきてたでしょ」
俺は天井を見据えたまま呟くように言葉を発する。
「んー? いや、お前の様子がおかしいから寝た振りして俺は起きてたぞ?」
「そこから言わせてもらうと……うなされてたけどお前、寝てたから」
眠たそうに答えてくれた兄ちゃんはそのまま倒れこむようにして眠った。
俺は天井にずっと目を向けていた。
そうか。夢だったのか。今までのことは全て。
俺が作り出した映像だったのか。俺はそう自分を納得させる。
最初から……全部。全部。全部。夢だった。
女性の着物を来た幽霊なんていなかった。
俺はそう結論付けて目を瞑った。
その日から。俺は女性の幽霊を見ることはなくなった。
夜中に起きることも無い。
あれは現実だったのか夢だったのかはわからない。
物的証拠がないため現実だったことを証明することはできない。
なにもかもはわからず終い。
それから二年後。
俺はすっかり怖かった体験のことなど頭の外に放り出してしまっていた。
そんなある日、バルコニーの排水溝が詰まってしまったようで水が流れなくなってしまった。
おそらく、落ち葉やほこりで詰まってしまったのかと思い。俺は手袋でつまりを取る事にした。
排水溝の蓋を開けて手を突っ込む。
なにかを掴み、俺は引っ張り上げる。
すると、その引っ張り上げたものは、
黒色の女性の長い髪だった。
end
という、まぁ
半分創作で半分まじの話
>>1
まだ怖い話ある?
>>50
うーん。今回見たく本当にあったものをある程度改変して怖くするならいくらでも書けると思うよ。
後は人から聞いた信憑性の薄い噂を怖くするとかね。
創作部分って最後の髪見つけたのくだりとかかな?
>>52
いや、火災報知機、排水溝の髪、白い着物の人は本当だよ。
その体験を怖くしたのがこれ。
白い着物の人ここまで怖くないし。一緒に死んでなんていわれたことないしw
ただバルコニーから飛び降りるのは俺も意味がわからないんだよね。
どんな意味があるんだろ。
後、髪に関しては親の可能性が一番高い……っと信じたい。
冬。
まだ、小学生だった俺はバスケットボールをやってた。
その日は遅くまで練習があって夜の9時過ぎに家に帰ることになる。
マウンテンバイクを漕ぎながら駅から家を目指していた。
耳をつんざく風を切りながら上機嫌でペダルを踏んでいた。
頬に冷気が当たっても気にすることは無い。
ちょうど、その帰路には公園があった。
公園の周りは畑に囲まれていて昼間はそれなりに人はいるが夜になると全くいなくなる。
俺はその人がいなくなるのをいい事に夜。密かにそこでドリブルの練習をしていた。
近隣に住宅はないし騒音で怒られることは無い。だから重宝していた。
あ、それから最初のと俺のキャラ違うけど許してね。
主に創作しているのは俺のキャラと怖いシーンくらいだから。
そして、公園の前に差し掛かったところで今日も練習をしようと決めた。
遅いけれど、五分だけなら大丈夫と自分に言い聞かせて。
公園に自転車で猛スピードで入ってきた俺はブレーキを掛けてドリフトを決めた。
この時期はなぜか周りでこのドリフトがはやっていた。
俺は自転車から降りる。
しかし、降りた瞬間、目に飛び込んで来たものせいで停止する。
ブランコが風も吹いていないのに一人でに揺れている。不思議に思った俺は目を凝らしてみた。
すると、そのブランコには5歳にも満たない男の子がつまらなそうな顔で乗っていた。
俺は黙って自転車に跨る。
過去にこういうものを見たことは何度もあった。
しかし、叔母に「そういうのを見ても構ってはいけない」と教え込まれていたのでいつも通り俺は見て見ぬ振りをして帰ろうとした。
けれど……どうにもその男の子の顔が気になって仕方なかった。
毎回見てきているものとは違う。
そんな感覚があった。
俺は胸のうちで叔母に謝りつつその男の子に近づいてみた。
至近距離で見る男の子は思ったよりも可愛い顔つきをしていた。
坊さんのような髪型にクリクリとした瞳。
いい頭の形をしていて俺は少し羨ましいと思った。
その時、俺も坊主頭だったけど、頭の形が悪くてあまり似合っていなかった。
男の子が俺の存在に気付き、俯いていた顔を上げた。
男の子の視線と俺の視線が重なり合う。
「おにいさんぼくのことみえてるの?」
俺は首を縦に振る。すると、男の子はひまわりの花のような明るい笑顔を見せた。俺も釣られて笑う。
俺は男の子にどうしてここにいるのかを訪ねてみた。
「おうちがわからなくなっちゃたの」
俺は小首を傾げた。家が分からない。なぜ、わからないのだろうか。
もしかしたら死のショックでそういうのを忘れているのかもしれない。
いや、それ以前に少年は死んだことすら気付いていないのかもしれない。すると、少年は急に、
「ひとにはなしかけてもだれもへんじをかえしてくれないの。どうして?」
俺は言葉を詰まらせた。やはりこの少年は自分が死んだことを認識していない。
「おにいさんいがい。だれもぼくをみていなかったよ……」
きっと、少年は心細い気持ちで人に話しかけていただろう。しかし、誰も答えてはくれなかった。
悲痛な言葉に俺は胸を抉られたような気分になる。
ここで少年がなぜ他の幽霊と違うのかに気付いた。
他の霊は大半が自分が死んだことを認識している。
しかし、少年はそのことを認識していなかった。
だから、普通の霊と違うように感じられたのだ。
俺はどうしていいのかわからずあたふたした。
本当のことを伝えるべきなのかそうじゃないのか。
小さかった俺は判断に戸惑った。
ゆえに、保留という決断を出した。
少年にはなんで誰も君の話を聞いてくれないんだろうね。と曖昧な答えを言い渡した。
「おにいさんはぼくのおうちをしってる?」
唐突な言葉に、俺はこれまた戸惑った。
答えてあげたいがその解答を俺は保持していない。
なので、わからない。と素直に答えることにした。
少年はがっかりしたように落胆する。
見ているこっちまでも落ち込んでしまう。
忍びなかった俺は探しといてあげるね。と無責任な発言をしてしまう。
少年はそれでも、悲しそうな声のトーンで返事を返すことしかしなかった。
その日はとりあえず時間も遅かったので帰ることにした。
少年にはまた来るからと言い残して。
その日の夜。
俺は親にあの公園で事故かなにかなかったのか訪ねてみた。
しかし、知らないといわれてしまい。
後日、公園の近くに住んでいる仲の良い老婆に訪ねてみることにした。
訂正
しかし、知らないといわれてしまう。
明くる日。
学校が休みだった俺はおんぼろな家屋の老婆を訪ねた。
インターホンを押すと老婆が出てきた。
家の中に上がるように指示をされると、俺は黙ってそれに従った。
老婆の家は古びた木の匂いと畳みの匂いが入り混じっていてとてもいい香りがしていた。
俺はリビングに通されて席に座らされる。
すると、老婆は戸棚の中からお菓子を取り出した。
どうやら、俺にお菓子をくれるみたいだ。
俺は遠慮気味に断ったが老婆はそれを許さず俺は渋々もらうことにする。
そんなやり取りが終了すると本題に入ることが出来た。
俺は老婆にあの公園で小さな子供の死亡事故がなかったか尋ねた。
しかし、あの公園が出来てからそのようなことは一度もなかったという。
俺は思考を回転させる。
だとしたら、少年は他所で死に公園に住み着いたことになる。
幽霊は基本死んだ場所に停滞し続けると勝手に解釈していたが、実はそうでもないようだ。
じゃあ、どうしたらその死んだ場所以外のところに住み着くのか。
なにか……そこに重要な思い出があってそれが原因なのかもしれない。
俺はそう判断した。じゃあ、どんな思いでなのか。
考えてみることにする。子供の思い出といったらやっぱり両親と遊んだ記憶だろう。
なら、間違いなくあの子はここら辺に住んでいた子のはずだ。
ここの近くに住んでいてそれで両親と良くあそこの公園で遊んでいた。
そして、それが思い出に深く残っている。そう俺は考えた。
それならと、俺は老婆にここの付近で子供が死んだ事件はないか訊いてみることにする。
すると、老婆は重苦しい表情をした。聞いたら不味いことだったのかもしれない。
しかし、老婆は喋りづらそうな素振りは見せずに淡々と俺にあったことを説明してくれた。
「ここの家からそう遠くないアパートで前に母と子の心中事件があった」
俺はそれを聞いて納得してしまった。
なぜ、あの少年が自分の死を知らないのかを。
大方寝てるところを母親に刺された。
そんなところだろうと。
そして、母はそのまま首吊った。
俺はそう予想を立てる。
そして、それは老婆の話を聞いて見事に命中する。
しかし、生まれて初めて的中したのに気分を害した。
俺はその話を聞けただけで十分だったので老婆にお礼をいいその家を後にした。
その日の夜。俺はもう一度少年に会いに行った。
訂正
しかし、自分の予想が的中したのに気分を害したのは生まれて初めてだった。
少年は昨日会ったブランコに乗っていた。
俺は軽く会釈をすると少年は笑顔でこっちに駆けて来た。
「ぼくのおうちみつかった?」
そう尋ねられた俺は自信満々に首を立てに振った。
アパートの場所は日の出ている間に自分で確認していた。
俺は行こう、と少年に声を掛けて歩き出す。
少年は俺の後ろをアヒルの子供のようについてくる。
しかし……少年が自分の家を知ってしまうとどうなってしまうのだろうか。
俺には全く想像が出来なかった。
全てを思い出すのか。もしくは成仏とかするのか。
どちらにせよ、少年は自宅を知りたがっている。
なら、教えてやってもいいだろう。
俺は黙々と歩き続けた。
数分もすると、少年のアパートに着いた。
俺は、どう? と聞いてみる。
だが、少年の答えは返ってこなかった。
まるで、全てを悟ってしまったかのような顔をしてる。
この年の子がそんな顔をするとは思いもよらず、俺は驚いてしまう。
少年は口を開いた。
「ここはぼくのおうちじゃないよ」
思わず俺は違うの? と尋ねてしまった。
「むかしはそうだったけど、ちがう」
「あそこにはたのしいおもいでがあるけど、つらいおもいでもおおい」
「あそこはぼくのいえじゃない。ぼくのいえはこうえん」
公園が家? 俺は頭を悩ませる。
「ぱぱとままがえがおになってくれるのはこうえんだけだった。だからこうえんがぼくのいえ」
「あそこのにいるとぱぱとままはけんかしちゃう。だからちがうの」
少年はアパートの101号室のドアを指を差した。なるほど。
少年にとって家というのはパパとママが喧嘩をせずに笑顔でいる場所のようだ。
よって、アパートにいると二人は仲良くしないから家ではない……と。
さらに、心中事件の話を聞けば両親はどうやら離婚してしまったようだ。
俺は少年に同情の視線を送ってしまった。おそらくその視線はあまり嬉しいものではなかっただろう。
訂正
「あそこにいるとぱぱとままはけんかしちゃう。だからちがうの」
「でも、ありがとう。ぼくおもいだしたよ」
「ぼく、もういくね。ままがまってるから」
そういい残すと、少年は風のようにどこかに消えていった。
少年にとっては災難だった……のかはわからない。
いや、少年自体そんなことは思っていないはずだ。
あるがままを受け入れた。そんな感じだろう。
強い。俺は心のなかでそう思った。
俺のほうが少年より数年は長く生きているのに向こうのほうが強く見えてしまった。
俺は両手を天高く伸ばすとそのまま屈伸をして歩き出した。
しかし、なにか違和感があることに気付いた。
空気が重く苦しい。さっきまで点いていた街灯も消えている。
「わたしの子……」
地獄の底から呻くような声が俺の耳に届いた。
俺は反射的にアパートの101号室に目をやった。
そこのドアはさっきまで人の気配がしていなかったのにドアが半開きになっている。
そして、その半開きのドアの中から包丁を握った青白い手が伸びてきた。
その手はなにかを探すように絶え間なく動いている。
俺は口を開いたり閉じたりする。
まるで現実味の無い。ここに立っているのが自分じゃないんじゃないかと錯覚した。
「おまぇ……が。つれてったのかぁぁ……?」
ドアの隙間から声が聞こえる。
俺は首が取れるんじゃないかというくらい横に振った。
すると、ドアの隙間からこっちを覗く赤い片目が見えた。
その瞬間。俺は脱兎の如く走り出した。奇妙な雄たけびを上げて走っていたと思う。
「やっぱぃおまえか!」
その声と同時にドアが勢いよく開いた音が聞こえる。
後ろを振り向いちゃいけない。本能的に感じていた。
両手を大振りして、スタミナ配分なんて考えずに全力疾走した。
爪先で走りながら俺は横腹の痛みに堪えた。
苦しくなっても足を止めることはなかった。
横腹を必死に押さえながら走った。
俺の耳には自分の足の音と後ろから迫ってきている裸足でアスファルトを走る音が聞こえていた。
体全体はおもりをつけたように重かった。
たぶん、この重さはプレッシャーだったんだと思う。
捕まったら殺されるという、死の重圧の。
何分も走り続けているが全く景色は変らない。
おかしい、同じ道を何度も走っている感覚だ。
こんなに走っていればもう公園の前を通り過ぎているはず。
俺はそのことに思考を向けていると、足が止まりかけた。
しかし、後ろで一瞬だけなった金属音によりまた全力疾走を開始する。
背筋にビリビリと死の恐怖を感じる。
全身が後ろに引っ張られそうだった。
とにかく走ろう。俺はそう決意した。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません