エレン「短編を」ライナー「三編」ベルトルト「纏めて載せるよ」(66)

それぞれスレ立てるのが憚られた為、一気に纏めて載せます


○エレン「敵さんって、仲間になった途端戦力落ちるよなぁ」
○ライナー「ありゃどうみても、俺に気があるよな?」
○ベルトルト「あぁ、皆で巨人を倒そう」


将来的に無理だろうが、こんな展開があって欲しいと言う願望の一遍
読み間違いから生まれた一遍
シリアスな気分で一気に描いた一遍

せめてジャンルを纏めろよ、と言うツッコミは既に己で入れ
二十四時間体制かつ、サシャ風のスライディング土下座をしながら、絶賛謝罪中です

●エレン「敵さんって、仲間になった途端戦力落ちるよなぁ」



これは、なんやかんやで山奥組が仲間になり

これで「進撃の巨人」と言うタイトル通り、巨人を駆逐しまくる巨人軍団が出来る事に……
……なんて、ならなかったお話です




「お前らこれ……、酷いわ」


そう呟いたのは、エレン・イェーガー
言わずと知れた主人公で、趣味は巨人を駆逐する為の技術を磨く事……と言う、巨人化の能力の保持者である

調査兵団と言う場所に、巨人の力を持ってして様々な功績を上げた
その功績が認められ、エレンは最年少での分隊長となっている

そんな彼の表情は、今現在酷く歪んでおり――視線はナイフの様に鋭い


そして彼の視線を、一心に受けている者たちがいる
元壁を壊す為の戦士、だが今は兵団の兵士として共に闘う事となった三人組

ライナー、ベルトルト、アニ
彼らは今まで散り散りとなり、人類と協力をしてきたが――この度分隊長に就任したエレンの元で、彼直属の部下として働く事となった三人だ

そして三人は今現在
その身を縮めるようにしながら、自らの直属の上司――エレンの次の言葉に怯えている


「まず、ベルトルト」
「はい」

運が悪く一番最初に呼ばれたのは、黒髪の青年
元々気の弱さを宿していた彼の表情は――エレンの不機嫌を理解している為に、一層弱々しくなっていた


「お前さ、最初の登場からして凄かったよな?……人類を守る壁を壊しながらの登場は、さながら人類VS巨人の縮図的で」
「そう、だったね」

嘘は言われていない為、否定のしようがない
二度に渡り、壁を崩した事……その直接的な原因はベルトルト自身であり、彼もそれは自覚している

なのに――と、エレンの口が呆れた様に動く


「何なんだよ、お前さ……殆ど動けない、動きが滅茶苦茶に鈍いって言うこの設定」

上司の言葉に、指摘された者は視線が泳ぐ
そのまま泳いで、大河にでも行っちまえ――なんて無意味で無責任な言葉が、エレンの脳裏によぎって行った


「でっでも――これでも一番の破壊力がある…」

その言葉は、エレンの睨みつけによって遮られた
ベルトルトの喉はひくりと痙攣をし、こめかみの辺りから冷や汗が流れてきている


「破壊力なんて、無駄だろうが」

この声は地を這う様な声、とでも言うのだろうか
それとも怒りを宿した、と言うべきか?

場違いな考えがふとよぎる……が
そんな考えを掻き消す様に、エレンは拳と共に声を張り上げた


「動き回るんだよ、敵はっ!」

どん!とお茶を乗せたテーブルが揺れ
苛立ちがそのまま出て来たとでも言う様な、大きな音が三人の鼓膜を揺らす

破壊力があったって、自身が動けないと言うのなら意味が無いだろ!
と言う反論の勢いを保ったまま――苛立ちと共に、エレンは言葉を続けた


「しかも、高さを生かして避難所にしようとしても!お前ってば体温高すぎて人が近づけないし!
唯一の、人を安全に保管でき場所が口の中って……口の中って!」

戦力期待していたのに使えない、と言う
そんな行き場の無い焦燥感は、吐きだされた言葉の中でもしっかりと存在感を現していた

その勢いに負けて、ベルトルトも思わずエレンを気遣って言葉を口にせざるを得ない


「う、あ……なんか、その……ごめん」

正直、それは体質なので仕方のない物ではないか――とも思える部分はある物の
素直な謝罪に、気遣われたその人は少しだけ冷静さを取り戻す

まぁ本当に――ほんの少しの、冷静さではあったが


でも


「今じゃお前の巨人ってさ、役に立っている事って……平地で手先を動かす事だけだもんな」
「…………うん」

多少の冷静さを取り戻しても、彼の心の中にある焦燥感までは拭えなかったらしい
責めたてられている言葉は、依然口から漏れ続けている

そして立体機動がし難い平地で、アンカーを刺される仕事なんて……そう誇りに思う事など出来ないのだろう
ベルトルトの眉は八の字になり、目尻には若干ながら水分が見え始めていた


「おい、待てよエレン」

ベルトルトの隣に立っていた、青年――ライナーが擁護するように口を開く
同情や憐みは無い、ただ真摯な表情で言葉を発する


「ベルトルトは巨人の力は扱い慣れているし――腕を部分的に巨大化させて、攻撃なんて事も出来るんだぞ」

役立たずなはず無いだろう、と言う意を込められた反論

その言葉に、ベルトルトは反射的に顔を上げ
上げられた顔を横目で確認したライナーは、励ましの意を込めて背中をぽんっと叩いた


「ライナー……ありが…」

ありがとう、そう告げようと紡がれていた言葉は
他人の声によって、遮られた


「いつやったんだ」
「――――え」

ライナーに対するお礼に、言葉がかぶせられた
それに驚いた声を漏らすと、エレンの口からもう一度同じ言葉が放たれた


「だから、お前確か――腕のみの巨人化は以前やっていたよなぁ。それはいつだったかって聞いているんだよ」
「え、えぇっと……一ヶ月くらい前に平地での交戦時、かな」

その時は、複数の巨人と遭遇していたと思う
正確に告げられた言葉に、同期であり上司である黒髪の男は言葉を紡いだ


「資料には……お前の巨人化自体、建物のある地域や森の中では使えない……それに加えて人が入り乱れる地域では使えないと書いてある
ついでに前回の、その平地での使用時は――腕の巨人化後に、全身の巨人化が遅れていた。と書かれているんだが」

問題をしっかりと把握された報告書に、ベルトルトの体から再び水分が出て来た
今回は涙はなく、冷や汗のみと言う形で

そんな彼の心情を汲んだのだろうか
エレンはその資料を机の上に置くと、ジッと青年を見つめた


「勝手な事はもうやるな、あと腕のみの巨人化は禁止だな」
「うぅ――返す言葉もありません」

溜息と共に吐きだされた言葉は、正にその通りで
前回は元々指示をされていた事柄の前に、無理な攻撃を行った……その反動により巨人化が遅れていたのは事実

其処を指摘されると、反論なんて出来ない
しゅんと項垂れてしまったベルトルトを見て、慌てたライナーが自分達の責任者へと声を上げた


「お――おい、エレン!やめろよ、仕方ないだろう。こいつだって頑張って…」

擁護の甲斐があったのか、エレンの冷たい視線はベルトルトを庇った者へと向かった
そう、擁護の甲斐はあったのだ……が

これから言われる事柄を考えると、な
ライナーの背筋に、冷たい物が流れていった

なんなのよ...胸がドギマギするじゃない...


「うるせぇゴリラ、大体お前だって使い辛すぎる」
「――――すまん」

結果
ベルトルトと同じく、ライナーも素直に謝るしか出来なかった

そして、おそらく次に来る言葉も理解できる
しかしライナーは、その言葉を止める術を持ち合わせていない


「なぁ……未だに兵士側と戦士側に分かれているとか、何なのお前」
「…………」

予想と、寸分違わぬ言葉が発せられる
その告白には、ライナーの両隣りにいた二人も驚いた表情をした

仲間になってからは裏切り防止の為に、それぞれ別々の任務を命じられていた為
知らなくても当然、なのだが

二人の表情を一瞥した後
エレンは少しだけ、意地の悪い口調で続きを話し出した


「しかも今、それを治す為に病院に通っているんだろ?」
「あぁ、きたるべき戦いの為…」

言葉の途中だが、エレンはピクリとこめかみを揺らした
そして得た感情を吐き捨てる様に、大きい声でライナーを妨げる


「その戦いが今だろ!その戦いの真っ最中に療養中とか、どうしてくれるんだ!」
「…………ぐ」

再び凄い剣幕で怒鳴られ、さすがのライナーも二の句が継げない
確かに来るべき戦いの真っ最中に、戦に備えて療養――なんて、あまりの自堕落ぶりだ


「しかも何だ、医者になんて言われたか……言ってみろよ」

容赦のない追い打ちが、再び放たれる
そんな厳しい対応で、言い訳を挟む雰囲気すら認めないエレンに


「――ストレスを感じない生活を心掛けろ、と」

ライナーは、通院以上に……他の二人には知られたくなかった情報を


「そう、言われました」

口にするしかなかった


その時、ライナーの心にのみだったが
ボキッと何かが折られる様な音が聞こえた

完全に折られた心、自尊心
それは隣にいる二人を守る、と堅く心に誓っていた彼にとって羞恥としか言い表せない感情だった


「戦場でストレスの感じない場所ってあるのか?」
「…………」

「何処にあるんだよ!!」
「…………ありません」

効果音が付きそうな位に、ライナーが項垂れる

先程励まされたベルトルトも、同じく隣に立っていたアニも
普段見る、兄貴肌な幼馴染の傷ついた姿に……どう反応していいのか分からなかった

ライナー…。


「お陰で筋肉隆々の頼れる兄貴キャラのお前は、後方で本部との連絡のやり取りばっかりだなんてな」
「そうだな」

ベルトルトは「やめて、もうライナーのライフはゼロ!」と思いっきり顔に書かれている様子で、オロオロしつつも
でもその様子を眺めている事しか出来ない、と言った様にしている

アニも表情には出ていないが、ライナーの様子をひたすら伺っているので心配しているのだろう
だがそんなに心配したからと言って


「キャラじゃねぇだろ、役立たず」

この鋭利なセリフを止める事なんて、出来ないのだけれど


そして、先程の雰囲気とは少し変わり
幾分柔らかい表情を浮かべて、エレンは最後の一人へと目線を向けた


「それに比べて、アニは流石だな」

その視線には、訓練兵時代にあった尊敬のまなざしがまだ幾分か残っている様に見え
キツイ事を言われると予想していたアニは、少しだけ肩すかしをくらった


「そ、そうかな」

だが、しかし……油断はならない
次に何が来るかは分からない為、少しだけ強張った返答


「そうそう、戦闘でも役立つし、巨人たちを引き連れて逃げてくれた事もあるんだろ?」

お前が巨人達を引きつけてくれたお陰で、危機を脱した
そんな明確な評価を提示してくれたエレンに、アニはどう対応していいか分からない

結果、無言のまま少しだけ頬を染めて口角を少しだけ緩める
それが彼女の照れている時の表情である事は、今はベルトルトだけが理解した


(よかった、アニはキツイ事を言われずにすんで)

未だに放心してしまっているライナーの横で申し訳ないが、想い人の傷つく表情を見ずにすんだ事に安堵し
タイミング良く、少し交わった視線で彼女にその事を伝えた

アニもようやく肩の力を抜いて、安心した様に視線だけで笑む


「でもまぁーー結晶体から出てくるのが遅すぎて、もう能力的には特筆される程でも無いって言うのがな」

だが世界は残酷だった
そして評価と言う物は、とてもシビアだった

警戒心を解いた所に突き出された鋭利な刃物に、アニの表情がビシリと固まる
だがそんな顔なんて歯牙にも掛けず、エレンは溜息と共に思いを馳せる様に呟いた


「俺の頭をふっとばしていたあの蹴りが懐かしいよ」
「…………」

ぐうの音も出ない

正にそんな様子の少女に対して、エレンの表情は「考慮する必要は無い」とでも言う様に素っ気ないままだ
そんなエレンの……まるで値踏みをする様な視線に固まる少女に、小さな声が彼女の鼓膜を揺らす


「アニ……」


エレンはその言葉を発した青年へ、軽く目をやる

発言権は無いのに、それを承知で少女を心配する青年は
自分の親の死に、直接的な原因を作った――親の仇とも呼べる奴だ

その存在を軽く注視した後に、そしてその隣へと視線を移す


「…………」

未だに項垂れたままの青年は、顔を上げる気力さえも失ってしまった
その姿からは訓練兵時代に見た、あの頼りになる雰囲気は見てとれない

そして……


「…………ぅ」

悔しそうに、唇を噛みしめる少女
小さな体に合う小さな手のひらを、ギュッと握りしめながら言葉に耐えている

エレンは各々三人の姿を認めた後
ゆっくりと、視線を伏せて――そして何かを決心したように、瞳を開けた


「なんてな…………嘘だよ」

場違いな言葉が、三人の耳に届いた
その言葉を認識した瞬間、三人ははじかれた様に顔を上げる

そこには少しだけ辛そうに眉を顰めながらも、笑顔を湛えた……自分達のよく見知っている少年
彼の成長した姿があった


「がっかりなんてするもんか、お前たちが仲間になってくれて……実は嬉しかったりするんだ」

嘘ではない、と付け足された言葉に
三人の脳はゆっくりとその事実を染み込ませていく

でも、しかし


「エレン」

辛そうに、でも嬉しそうに
希望と絶望と言う相反する心情を、相手の名前に込めたのはベルトルトだった

仲間と認められて嬉しい、でもそんな事はあり得ない
おそらくその感情が一番強い彼の言葉を、真っ直ぐなエレンの声が遮った


「あ、でも許した訳じゃないからな。この戦いが終わったら……お前たちをもう一度、ボコボコにするつもりはあるんだぜ」

エレンの瞳にも、二つの相反する感情があった

一方の感情はなりを潜め、とても小さい
そして、大きいほうの感情――共に闘えて嬉しいと言う心情が、希望と言う形でその表情に宿っている

それは訓練兵の時に彼がしていた眼差しと、とてもよく似ている瞳
成長し、様々な真実を知って来た為に、全く同じ瞳とは言えないが……それでも

ただひたすらに、前だけを見ている瞳だ


その瞳を見た瞬間に、三人は

――帰ってきたんだ、と思った


罪深い自分達に、もう向けられる事は無いと思っていた感情
自分達の姿をしっかりと見つめて、言われた言葉

それが自分達を恨んでいる、彼の口から……


「ふん、どこかで聞いた様なセリフだね、また返り討ちにしてやろうか?」
「……引きこもって鈍りまくった奴が、何を言うんだ」

噛みしめられていた唇を、アニは開き
ライナーは頼りがいのあるその大きな手を、アニとベルトルトの背中に力強く押しつける

まるで背中を守る様な、そして押してくれている様な感触に
力強さを与えられた二人は、じんわりと涙腺から涙が染み出してくるのを感じた


「この戦いが終わるまでに、私は必ず本調子を取り戻してみせるよ」
「俺も、必ず……体調を取り戻ず!」

涙を堪えて言いきったセリフの後に、最後の最後に涙声を含んでしまった声
アニが視線をチラリと向けてみると……其処には二つの瞳から、豪快に涙を流しているライナーの姿があった

本当に思いにも寄らず見てしまったその顔に、アニは口と鼻から息が吹き出しそうになり慌てて手を添えた
が……笑いを押し殺した自分とは対照的な楽しそうな声が、四人の間に響く


「ふはっ、ライナーは先に精神面だろ!……ったく、最終的にはアニよりお前の方が、鈍っていそうだな」
「はぁ!?」

急にツッコミを入れられた所為か、ライナーが素で素っ頓狂な声を上げる
それは今のライナーが兵士だと言う証明の様な物で、そんな彼がエレンと共に笑いあっていて……


「ふ、あはは」

その二人のやり取りで、笑い声を上げたのはベルトルトだった
つられてしまい、ついにアニも笑う

笑い声と共に、大量の涙を引き連れて


共に過ごしてこれなかった、時間の長さを埋める様に
笑い声と涙は、三人の体から溢れ続けた


「なにはともあれ、おかえり。よく帰って来てくれたな……ライナー、ベルトルト、アニ」

「ただいま、エレン」

「エレン、待たせちまったな」

「ありがとう。ただいま、エレン」


それぞれの口から、それぞれの言葉が流れる
エレンは一つ一つの言葉に、あぁと相槌を打ちながら笑顔で答えた





その時――古びた扉の開く音が、唐突に響く
そして音と共に、扉を開けた者の姿が部屋中に歩を進めてきた

――その姿には全員、見覚えがあった

部屋の中に居た全ての人物の視線を受けた者は、気だるそうに全員の姿を確認すると
特に驚いた様子もみせず――何故かじろりと、その鋭い視線のまま四人を睨みつけて来た


「よぉ、お前ら――こんな所で油売ってんのか?クソ、こんな扱き使っているのにお前らは談笑かよ」

ひょろりとした体系に、鋭い三白眼
そのストレートすぎる言い回しは、間違えようがなかった


「え……ユミル?」
「ハァー、疲れた」

唐突に入ってきた元同期はその言葉と共に体の力を抜いて、入り口付近に置いてあったソファーに座りこんだ
髪には埃っぽさがついており、用事から帰ってきた事が窺える

そんなユミルに文句も言わず、エレンはさも当然と言う様に口を開いた


「おかえりユミル、戦果はどうだった?」
「南側の方は潰してきた、エルヴィンが腕のいい奴らを貸してくれたお陰でな」

さらり、と団長の名前を呼び捨てにしながらユミルは報告をする
そしてチラリと、この部屋の主である分隊長以外の者たちに視線を向けた


「ついでにエル……団長殿は。そいつらがエレンの部下になる事も教えてくれていたんだが、本当なんだな」
「なんだ、せっかく驚かせようと思っていたのに」

知ってんのかよ、残念だと笑いながら話すエレンに
ユミルもまた、残念だったなと意地悪く笑う

目の前で交わされる会話に、つい先ほどまで感極まっていた三人は思わず呆けた


(え、なに……この信頼されている感)
(それに戦果、だと?)

つい今しがたまで
自分達がどれだけ使えないかを突き付けられていた三人に、その会話は眩しすぎ


「ついでに、散っていたユミルの民を三人程見つけて来た。まぁ私が巨人のまま出たんで、移動がスムーズに出来たのがよかった――て
おいおい、どうしたんだお前ら!そんな俯いて……なんか肩も震えているぞ!?」

その気遣いもまた、三人の「嫉妬」と言う炎には十分すぎる油であった為



「ゆ……」

「ユミルの……」

「アホー!」


「――――はぁ!?」


なんて……三人組がそんな言葉を、つい叫ぶには
十分すぎる理由になったのだった





【敵さんって、仲間になった途端戦力落ちるよなぁ...end】


【一つ目のあとがき】

漫画では、仲間になった途端パッとしなくなるの法則で三人組を考えてみた
意外にしっくりときた!ので突発的に書いた短編でした

個人的反省は、ライナーを苛めすぎた事……でも、ライナーならいいかと思ってしまう自分を否定しきれない事
――が反省点です

一気に三篇行けるかと思ったが、時間が無かった
ごめんなさい今日は落ちます


>>11 ドキマギしてくれてありがとう!

>>15 ライナーには可哀想な事をしてしまった

乙でした!!面白かったです。
ライナーとか仲間になったら敵の攻撃力を際立たせるためのかませにされそうww
エレンは幾つくらいなんです。アニが出てくるのが遅すぎたって言うくらいだから25歳くらい?


>>29 特に年齢は明確にせず書こうと思ってました、エレンも「青年」表記避けてたので
そしてライナーは先陣切って嫌な役割も引き受けてくれるので、噛ませになってくれると信じてます


●ライナー「ありゃどうみても、俺に気があるよな?」



巨大樹の森にて――紡がれているライナーの言葉に、俺たちは微動だに出来なかった
それくらいに、その言葉は俺たちの現状とかけ離れていたから


兵士としてのそれなりの評価?
それに、幸いにも壁は壊されていなかっただと?

壁を壊して人類を攻撃してきた、巨人の言葉とは信じられなかった


そして、その言葉は俺の知っている――訓練兵時代の彼と、口調が見事に重なる
敵の癖に、訓練兵時代に似た彼はユミルに礼を言い……話は塔での攻防の話へ繋がって行った


「そんでもって、その後のクリスタなんだが……」

ありゃどうみても、俺に気があるよな?と呟いた彼は、まさしく俺の知っているライナーだった

失ってしまったと思った彼が、近くに存在する事を信じられず
言葉を失ってしまった俺は、ライナーをじっと見つめる事しか出来ない


「実はクリスタはいつも俺に対して、特別優しいんだが――」
「おい……」

言葉を失った俺に代わり、その声を遮ったのは……ユミルだった


「てめぇ、ふざけてんのか?」

ビキビキとまるで血管が張り裂けて仕舞いそうな程に、こめかみに青筋を立てた彼女は――ゆらりと体を揺らした
それと同時に、シュウシュウと音を立てて蒸気が一層高く上がる

彼女の欠けている左半身は、その蒸気の量に合わせてその形を形成して行った


「…………は……おいユミル、お前……?」

俺のその言葉なんて、聞こえていなかったのかもしれない
だがその言葉が終わる頃には、皮膚までは完全に再生し終えてはいない物の――手足が完全に生え揃っていて

その再生したばかりの足に力を込めて、ユミルは立ち上がる


皮膚の再生していない足は、立ち上がるだけでも激痛を伴うだろうに……彼女は痛がる素振りも見せずに、彼らから視線を逸らさなかった
その目は爛々と輝き、まるでオオカミの様に凶悪だ

驚いたのはライナーと同じく、視線を向けられているベルトルトも同様だったらしい
彼は木の枝の上に体操座りをしたままだったが、ユミルに顔を向けたまま目を見開いている


「何を怒っているだユミル、俺が……何かマズイこと言ったか?」
「あぁ、言ったね――この脳味噌まで筋肉まで単細胞な、ゴリラ野郎が」

罵詈雑言を口にした後、「いいか?」と彼女は言いながらその視線に力を込める



「クリスタは、私と!将来を共に過ごす事を約束してんだよ!」


声を上げて、高らかに宣言されたその言葉に
俺は、自身を縛っていた緊迫感が霧散していくのを感じた


「……な、何だと!?」
「えぇっと……ユミル、それはどう言う……?」

ユミルの告白に、驚いたのか……身振り手振りを大きくしているライナーに対し
落ち着いているベルトルトが、ゆっくりとその意を問いかけた

だが問いかけられている彼女自身が、何故か酷く満足気な為に返事をしない
未だに怒りを堪えつつも、まるで勝ち誇った様に二人を睨みつける


ここでようやく、オレも声を発する事を思い出し
巨人の領域に連れ攫われたのに、至って普通に会話している彼女を咎めた


「え、おい……ユミル、今はそんな話をする展開だったか?」
「そんな展開なんて問題じゃないんだよ、エレン」

こいつはクリスタの事を、妄想で穢したも同然なんだからな
と、相も変わらずにこちらを一瞥もせずに返答をする

視線だけで人を殺せるとしたら、間違いなくユミルはライナーを殺している

そんな事を思わせるには、十分な視線を向けながら
彼女はライナーへ、再びクリスタに関する事を話し出した


「私達はな、お互いに相手が了承をした相手じゃないと結婚しないと決めてるんだ」

その言葉に、視線を向けられていた男はピクリと顔を引き攣らせる
まぁそれもそうだろう、だってそれは


「つまりだな、クリスタと結婚を前提のお付き合いをする為には“私の”了承が必要なんだ!」
「な、なんだ……と」

つまり、そう言う事

その事実を知らされたライナーはぶるぶると肩を震えながら、宣言をした者に怖気づいていた
そんな反応が満足したのか、ユミルは自慢げに鼻を鳴らす


「そしてだな、お互いにそう言った相手がいなかったら――一緒に家を建てて暮らそうと誓い合ったんだよ」
「嘘だっ!」

絶叫が、森の木の中に反響する
その声は少しエコーが掛り、その場に居た者の鼓膜を何度も何度も繰り返し揺さぶった

信じられない、信じたくない
そんな彼の心の状態を表す様に返ってきた音の反響は、エレンにとって酷く不愉快に思えたが


「――と、言うかユミル。もう一度言うが……今はそんな話をする展開じゃ」
「更に絶望的な話を続けようか、ライナー」

あ、この話続けるんだ、と言う
俺の言葉は……悲しいかな彼女の心に少しも反響もせず、空気に溶けて行った

そんな俺の状態に、憐みの様な視線を向けて来たベルトルトに少しだけ殺意が湧く
分かっている、八つ当たりだ――でも許してくれ


「更に私は巨人だ、結婚するつもりは無いしする意思もない」

なのでだな
と言うユミルは、ようやく先程の戯言の怒りが静まってきたのか……いつもの口調に戻ってきた


「ならば私が許可を出さなければクリスタは、お付き合いも出来ずに私と一緒に暮らすしかないんだよ――でも私もそこまで鬼じゃない」

テンポよく、楽しそうに
ユミルは言葉を紡いく


「年収10000金貨程で、内地に持家有り、私も一緒に暮らす事を許してくれる――そんな奴なら大丈夫とクリスタに日頃から言い聞かせているんだが」

ニヤリ、と笑う彼女は本当に……邪悪だった



「お前は無理だな、巨人だもんな」
「くそぉおおおおお!」

その声が、また森の中に響いた
何度も何度も、響いた

下で群れていた巨人の群が、少しだけ彼の信条を汲みとったのかもらい泣きしていた様にも見える
彼らに知性は無いので、もちろん見えるだけ……なのだろうが



「……ライナー、君はもう」

そんな中、響いたベルトルトの落ち着いた声が


「もう、振られたも同然なんだね」

ライナーに、とどめを刺した



その後

俺は脅威のスピードで完全復活したユミルに連れられて、調査兵団に戻った
クリスタに抱きつくユミルは、本当に心から幸せそうだったと――ここに追記する





【ありゃどうみても、俺に気があるよな?...end】


【二つ目のあとがき】

11巻を読んだ時、エレンの「おい……」をユミルが言ったのではないかと一瞬錯覚した
そう言う人は多いよね!多いはずだよね!……やはり私だけか?orz

多分今日中に三篇目の更新いけるかな?と言う微妙なお仕事状況


ちなみに、ここでちょっと注意書きをば……
三作目は死ネタなので嫌な方はここで終了してください!

乙。次のも楽しみにしてるよ。

乙!

更新します


●ベルトルト「あぁ、皆で巨人を倒そう」



「ベルトルト!」
「おい、ベルトルト!しっかりしろ!」

「……っ?」

気がついた時は、僕は装備を万全にして剣を握りしめていた
周りには瓦礫の山、そして……血の海


「な、これは……?」
「おいおい、しっかりしろよ!こんな事態に」

そう言って、コニーが僕の元へと走ってくる
そして……僕の顔面を、思いっきり殴り飛ばした


「――っ!?…………な、にを」
「しっかりしろ、お前に構っている時間はねぇんだ!」

捲し立てる様に放たれたその言葉に、サシャが続ける
その言葉も、やや興奮気味だ


「そうですよ!巨人が進行してきた、この時に……!」
「巨人……?」

思考が追いついていかない

何が、どうなっているんだ
そんな言葉が、口に出来なかった時だ


「超大型巨人が、攻めて来たんですよ!」
「……は?」

僕は、言葉すらを失った


超大型巨人とは、何だった?
それは自分の巨人の名称では?

でも僕は此処に居る


「ほら、アレを見て下さい!」

指をさすサシャの先には、そう……紛れもなく「超大型」と言ってもいい様な巨人が町中を歩いていた



「ぎゃああ!」
「嫌だ、助けてくれぇ!」

ブチッ
ガシャン

「お母さーん!」
「くそ、死ねぇえ!」

ガラガラ

「ぎゃあああ、死にたくねぇ、死にたく」



人が死に、物が壊れる音
そんな音が耳に届き、僕は今どうしてこの場に立っているのかが分からなかった


(ら、ライナーは何処に……それに、アニは?)

反射的に、心の中でその二人に縋りついた

彼らにこの状況を説明してもらえない事には、僕は自分の意思で動けない
だって……僕は指先の動かし方すら、忘れてしまっている

そんな僕を見て、コニーはチッと舌打ちをした


「……チッ、お前は一旦後方に下がれ!」
「そうですよ、足手纏いです!」

二人の叱咤が、僕に向かって飛んだ


「あ、あぁ……分かったよ」

場面が分からなければ、何もする事は出来ない
僕はひたすら超大型巨人の進行する方向とは離れている方へと向かい、ライナーとアニを探した



そして


「……っ!ライナー、アニ!!」

彼らの姿を見つけられたのは、本当に幸運だったと思う


「一体、どうなっているんだい、これは!」

駆け寄り声を掛けると、二人は驚いた様にこちらを見つめた


「ベルトルト!?」
「ベル、どうして此処に!」

彼らが口々に、困惑した様に僕の名前を呼ぶ
でもそれはこっちも同じだ、おそらく僕も困惑した表情で叫ぶしかない


「僕が聞きたい、あの超大型巨人は何だ!?」

その質問には、ライナーがぽつりと答えた


「アレはお前じゃないのか」
「そうだよ!だって……僕は此処にいるんだろう?」

肯定の後、唐突に不安になって疑問系の言葉が漏れてしまう
でも二人とも、僕の気持ちなんて分かりきっているからか――疑問も吐かずに言葉を続けてくれた


アニは、僕ではないと知って……少しだけ安堵したように
ライナーも大きく息を吐いて、肩の力を抜きながら声を発する


「あんたが変身して、暴れているんだったら止めないとと思って……私達も変身しようとしていた所だった」
「だが……このざまさ」

目の前に差し出されたライナーの手を見て、目を見張る
彼の腕は、ナイフによって無残に切り裂かれていた

僕は驚き、アニの方へも目を向ける
彼女の腕も傷だらけだ


それを見た瞬間……不意に怒りの様な焦燥感の様な
何か大きな感情が頭を掠めて行った

それは傍から見たら「呆然とした様な」と形容される物だと
何故か、客観的に理解した


「なんで……」

ぽつりと漏れた言葉は、三人の誰が呟いた物かは分からない
誰かが無意識に呟いたのか、それとも僕が見ていなかっただけかも


「分からない――変身しない事に加えて、再生もしない」

ライナーは自らの蒸気の出ない腕を、マジマジと見つめながら言うその姿を見て
自然と――ベルトルトは自分の腕へと視線を注いだ



「ぼ、僕も試し……」

試さなくては、そう思って自分の手の甲を口に持っていく
だがそれは、他人の手によって妨げられた

誰か、なんて分かり切っている
その手の主はやはり、ライナーだった


「止めておけ、変身を試したところで――アレがあっちにいる」

無駄な傷を負う事は無い、そう言ってライナーは僕の腕を抑え続ける
いや、でも!声を荒らげ様とした所に、アニが割って入った

彼女の手も、僕の手を抑えるライナーの腕に沿わされる


「やめときなよ、ベル」
「だって、アニの腕が……アニの…………、女の子の腕なのに」

伸ばされた手のひらの、その上に僕は手を這わす
彼らの掌を、ちょうど僕が挟んでいる様な形だ

添わした手の先には――鮮血が滴り、固まった跡と
傷を付けた際に、僅かに浮きあがってきた凹凸のある肉の感触


(痛かっただろうに、なんで僕を止めるんだ)

ベルトルトはその感情を、涙を流すことでしか体の外に出す事が出来ない
そんな自分が、どうしようもなく嫌いだ


「……俺たちは巨人では無くなってしまった」
「こうなったら、兵士としてしか生きる道は無いんだ」

ライナーの言葉に、アニが続く
二人ともその言葉で決意を固めたのか、すっと利き手を硬質ブレードへと手を伸ばした

そして、もう一方の手を僕の方へと伸ばす


「さぁ、行こうベル」
「やるぞ、ベルトルト……巨人を倒すんだ」


僕はその手を掴む為に、手を伸ばした



「あぁ、皆で巨人を倒そう」


その先に



「さっさとくたばれよ!裏切り者!」

エレンの、憎悪の顔が見えた



(あぁ、僕は……)


もう、首が半分以上無くなっているのか


僕の巨人の体を壊すには多くの時間と、斬撃の数が必要だった

ゆっくりと、ゆっくりと切り込みが深くなる首
エレンが、ミカサが、コニーが、サシャが、クリスタが協力をして僕の首を落としに掛っている

僕は空っぽの心で、その様子を見ていた


人と言うのは、死ぬ前に走馬灯を見ると言うけれど
……どうやら僕が見たのは、全員が一丸となって巨人を倒す世界らしい



でももう、どうでもいい
鎧の巨人や、女型の巨人が倒され……巨人を生み出す巨人の王も倒されて

僕にはもう、意思を決定してくれる人はいない



――だから、君たちの決定に僕は従うよ



しゅううう


「蒸気!?」
「てめぇ、また逃げる気か!?そんな事はさせね……ぇ?」

うなじから体を切り離して、その振り下ろされた刃を両手を広げて迎え入れる
体の中を、冷たい異物と激痛が通り過ぎて行った



「な、に……?」
「おいこら、テメェ何を……!?」


――何も考えていなかった

立体機動の勢いで動く、彼らの刃は
僕の行動に驚いたとしても、その慣性の法則で止まらない


――ただ、僕は君たちの決定に従っただけだよ

ひとつ、またひとつと体の中を走り
その冷たさと、異物の感覚と痛みだけが僕の体に染み込んでいく


――でも、その言葉は、もう、いえ…な…………






ぶつん





頭の奥で、何かが擦り切れた様な音がして
僕は暗闇の中へと意識を落とした
.




……あれ、ここはどこだろう



ベルトルトは、ゆっくりと意識を覚醒させた

僕は空間に浮いている
それを認識した瞬間に、何故か自分が何処に居るのか分かった


この空間は僕の意識、僕の世界

その僕の意識の――目の前に、他の意識が入ってくる
侵入者は意識の中にぷかぷか浮かんでいる僕の目の前に、その姿形を纏って現れた



「よぉベルトルさん」
「あぁ……君か」

あぁ、私だ
そう言いながらこちらを見てくる瞳は、生前と変わらない

生前――そうか、僕も君も死んだんだった


「本当に、君は最後まで掴みどころが無いなぁ。人の意識に急に入ってくるなんて」
「ま、それが私の売りだからな」

不思議な感覚だった
自分の意識の中に他人が入ってきて、雑談をするなんて

それは夢の様に、違和感が無く僕の体に染み込んで行く


彼女はキョロキョロと、僕の意識を見まわした
人の意識を観察するなんて、本当に図々しい奴だと――僕は思いつつも止めない

止めたって無駄な事を理解しているから


僕達は今、暗い中にぽつりぽつりと光の浮かぶ空間に浮かんでいる

その光景を見ながら
これが僕の意識、と思うと不思議な感覚を得た


――まるで心の中に、僕自身がダイブしている様な感覚


「死んでまで、僕の意識ってこんなに暗いのか」
「暗いなんて言うなよ、綺麗な星空だぞ」

まぁ星の数は少なめだがな、と呟かれた言葉
僕は無難に、確かに……と同意した

星空と言われれば、そう見えなくもないが
それは単に、客観性の違いだろう――と提言する前に、侵入者に行動を起こされる

人の意識の中を見まわした後に、ふわりふわりと浮かびあがったのだ
そしてその――光っているモノを触ったり覗きこんだり、観察をした後に

彼女はこちらの方へと、顔を向ける


「何を勝手に、人の決定に従った事にして死んでんだお前は」


言いたい事は分かった――何故か理解できていた
死に際の事だと


「……本当の事だよ」

死んだにしては、普通に回る頭で会話を続ける
幽霊になると、もっとふわふわとした感覚があるものと思っていたが――そう言う物ではないらしい

意外に普通だった


「僕は皆の決定に従って、死んだ」
「いいや、違うね」

僕の心を込めて呟いた言葉を、あっさりとした非定形が被せられた
なんでその場にもいない、君が勝手に否定するのか――彼女の言葉は、その思考を得る前に放たれる


「……お前はただ単に、皆と一緒に行動しようと考えただけだろ」

言葉を上手く返せなくなる
生前もそうだった、僕は一度として彼女のこのペースに逆らえた事が無い


「お前が皆と一緒に巨人をやっつけたいと思うのは、お前の意思だ――他人の所為にすんな!」


確かに
僕は、僕の中にある巨人と言う運命を……皆で倒したかったのかもしれない


「……そうかもね」

彼女は僕の返答を聞くと
ふん、っと言いながら顔を逸らした


「じゃあ、次の所に行くわ」
「唐突だね」

もう行くんだ、何処に行くかは謎だけれど
でもなんとなく……これが最後になる様な、でもまた何処かで会える様な気がする


「もう会えないのかな」
「死んだ奴らが多すぎてよぉ、こっちも大変なんだよ」


あぁ、会える気の正体が分かった
彼女はこの死後の世界で、就職でもしたらしい

何故か心に湧いてきた物だが……何故かこの考えは正しいのだろうな、と思う


――つまり
転生して、また死んだら会えると言う事だ


「また何かに巻き込まれているの?」

そう尋ねると「全くもって面倒臭いよ」と言う不機嫌な気持ちが吐きだされた
本当に、面倒臭そうな顔

でも、まぁ……
意外と世話焼きが好きなのだから、まぁこう言った死後の世界での就職もいいのではないだろうか


「ったく……前世と言い、第二の人生と言い。ついでに死後の世界と言い、この要職への巻き込まれ体質はいつになったら治るんだろうな」
「要職に就いているの?大変だね」

大変だよと返答しながらも、彼女は言葉少なに忠告をする為に口を開いた


「間違ったままの意識だと、転生に時間が掛るから……そこだけ気をつけろよ」
「ありがとう、ユミルは本当に優しいね」

そう言うと、ユミルはちょっと気まずそうに鼻の頭を掻いた
照れた時の彼女の癖だ

そして


「まぁ同期のよしみってやつだよ、じゃあな」

それだけ言い残して、彼女の意識は消えた
僕はまた――暗い空間に、ぽつんと取り残される

すると途端に、星空と思いこもうと思っていた景色は……ただの暗い空間へと変わってしまった



でも
……そうか


(僕はちゃんと、自身で選択をした最後を過ごせたのか)

そう思うと、ふと心が軽くなった
気付かせてくれたユミルには、素直に感謝する


(そうと決まれば……早速、次の行動を自分で決ようかな)


――早く転生をして、ライナーとアニに会いに行こう

そう心に決めて、暗闇だった意識の中を歩いて行く
こちらの方へ進めばいい事は、これまた心の何処かで理解はしている様だ

後はただ、目標へと向かって進むだけ


僕は歩いた


もしかしたら次の転生先では、僕も彼らも忘れてしまっているけれど

今回少しでも、自分の意思を持って生きられたのだから
次は、もっと自分の意思で生きて行きたいと思えているかもしれない


まぁきっと大丈夫だよね
きっと


僕は、自信を持って
これから先にある、転生への道へと踏み出した





ベルトルト「あぁ、皆で巨人を倒そう」【完】

【三つ目のあとがき】

過去の走馬灯ではなく
皆と共に行きたいと思っていた願望が駆け巡る話

自分の死を糧にしてもいいから、ベルトルさんには前を向いて欲しい
と思ったら衝動的に書いた

愛故にだけれど、もっかいベルトルさんで死ネタやりた……げふんげふん


今までコメント下さった方々、閲覧して下さった方々、本当に感謝ばかりです!
これですべての短編は終わりですがこれを糧に、またひっそりと書き続けて行こうと思います



>>41 楽しみにして下さり、ありがとうございました!

>>42 ありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom