杉坂海「ちょっと待ちな?」 (10)

・杉坂海
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杉坂海「……」チクチク

P「……いや、ほんとにすまないな。まさかズボンがここまで酷く破けるとは」

海「いいんよ。こういう作業も嫌いじゃないし」チクチク

海「ん……少し生地が弱ってるみたいだね。繕ってはいるけど、買い換えたほうがいいかもしれないかな」チクチク

P「そうだな。ずいぶん長いこと穿いていたし、限界だったんだろう」

P「しかし、少し寂しいな。就活の時からの付き合いなんだよ、そのズボン」

海「ウチがスカウトされた時も、確かこのズボンだったかな?」チクチク

P「よく覚えているな」

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・杉坂海
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海「忘れないよ、あの日の……あの日から始まった日々の事は。まあ、随分昔のことのようにも思えるんだけどね」チクチク

P「海も随分と変わったからなぁ」

海「あははっ、そうだね。昔のウチが今のウチを見たら、きっとびっくりすると思うよっ」チクチク

海「ガサツなウチがアイドルになるなんて思いもしなかったし、大学へ行く前に地元を出るなんて考えたこともなかったし」チクチク

P「出会った時は確か浜辺だったなぁ。ウインドサーフィンの帰りだったか」

海「そうだね。いつも通り波を感じて、風に乗って……そんな、当たり前に過ごしてきた一日の終わりだった」チクチク

P「あの時は偉いべっぴんさんが歩いてくるもんだと思ったよ」

海「あははっ、お世辞でも嬉しいよ」チクチク

P「お世辞なんかじゃないさ。艶やかな黒髪に、明るい笑顔……これは行ける! って、スカウトに走ったのは無意識のうちに、なんだぜ?」

P「そして、その勘は正しかったわけだ」

海「……へへっ」チクチク

P「ダンスも歌も、どんなレッスンでも熱心に受けてくれた。厳しいレッスンもこなしてくれた」

海「歌もダンスも経験なんて全然なかったからね。ちょっと熱心なくらいじゃ追いつけない、追い越せないって事もわかってたし……」チクチク

海「何よりも、ウチが失敗したりレッスンが上手くいかなくて落ち込んだ時も励ましてくれたじゃない」チクチク

海「だから、こうして頑張れたんだよ……っと」チク、プチ

P「ん、できたか」

海「うん。これで今日のうちは大丈夫だと思う」

P「ありがとう。……ええと」

海「あははっ、後ろ向いてるからそのうちに穿くといいよ。……まあ、見せたいのなら構わないけどさっ」

P「馬鹿言え。ほら、後ろ向いた向いた」

海「はいはい……」

P「……よし、もういいぞ」カチャカチャ

海「……うん、問題はなさそうだね」

P「おう、前よりしっかりしてるくらいだ」

海「あははっ、それはさすがに無いと思うけど……あ、もう少し時間ある?」

P「ん……そうだな。次の営業までまだあるし、もう少し話そうか」

海「久々だからねー。どこまで話したっけ?」

P「レッスン云々の事までだな」

海「となると……あの頃から、レッスンと並行して細々とした仕事も始めていたね。……まあ、今でもすっごく多い、ってわけじゃないけどさ」

P「だが、あの時を境にどっと仕事が増えたろ?」

海「あー……そういやそうだね。メルヘン&ゴシック」

・杉坂海
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P「そうそう。何とかして起爆剤になる仕事はないかと思ってな、色々と探してるうちにこれだ! って思ったんだ」

海「あの時は、ウチにはあんま合ってない仕事だと思ってたんだよねぇ」

P「前半のメルヘン衣装の時、恥ずかしそうにしてたもんな」

P「ウチを見てて。目を離したら……恥ずかしい、だっけか」

海「そうそう……って、今考えると無茶苦茶恥ずかしいこと言ってるね、ウチ」

P「最初はぎこちなかったのも覚えてるぞ」

海「だって、ああいう服なんて着たことなかったし、スカートも気になったし、カワイイ服なんて似合わないと思ってたし……」

・大西由里子
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・櫻井桃華
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海「由里子みたいにはっちゃけられるわけでも、桃華みたいに落ち着いていられるわけでもなかったし……でも」

P「でも?」

海「意識しすぎ、って言ってくれたから。普段通りにすればいいって。それに……」

P「それに?」

海「Pさんも嬉しそうな感じだったしね。そう思うと、だんだんノって来たんだ」

P「その結果が……」

海「うん、後半のゴシック」

・杉坂海
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P「あれは凄かったなぁ。メルヘンも文句なしに可愛かったが、ゴシックは……」

海「カワイイ系の着こなし方、分かって来てたからね」

海「ウチが照れてたらまわりも照れる。ペースさえつかめば、もうウチの独壇場」

海「逃げようとしていた乃々も巻き込んで、魅力を最大限に披露する」

・森久保乃々
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海「……うん、楽しかった! 知らない自分が見つかって、全力を出せて……」

P「ああ、綺麗だった。海は十歳ぐらい若返ったみたいと言っていたが、俺はむしろ逆に感じたな」

海「老けて見えるって?」

P「馬鹿、大人っぽく見えたってことだよ」

海「へへっ、そう見えたのも……魅せる事ができたのも、うん、嬉しいなっ」

P「ははっ。これからも色んな衣装持ってくるから、覚悟しとけよ」

海「任せなさいって。Pさんの持ってきた服なら、どんなものでも着こなして見せるからさ! ……と」

海「そういえば。時間は大丈夫?」

P「ん……おお、もうこんな時間か」

P「それじゃ、そろそろ営業行ってくるな。海は……レッスンだったか」

海「うん、いつでも全力を出せるよう腕を磨いておくからさ。Pさんも営業、頑張ってね!」

P「おう。それじゃ、行ってきます!」バタバタ

海「いってらっしゃい!」

海「……ほんと、頑張ってくれてるよね。ウチらのために、全力で」

海「Pさんがいるからウチらは頑張れるし、全力を出せる」

海「支えてくれているから限界以上の力を出せるし、より魅力的に輝けるんだよ」

海「だから、ウチも支えていくよ。Pさんも、全力で仕事ができるように」

海「幸い、お世話をするのは好きだしね、へへっ」

 おしまい

海さんお誕生日おめでとう!

書いてる時は長いのに、投下してみると少なく感じる不思議。
ともあれ、海さんこと杉坂海の誕生日SS、読んでいただきありがとうございました。
紹介SSのような形でしたが、楽しんでいただけていたら幸いです。

それでは、HTML依頼の方、出して参ります。

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