ランディ「マンザイスリー」 (31)


ランディ「タリホー! どーもぉ、トリオ・ザ・ドーベルマンですぅ」

チャンドラ「わーぱちぱち」

パトリック「ひゅーひゅー」

ランディ「おいまて、なんでお前らそっちにいるんだ」

チャンドラ「?」

パトリック「?」

ランディ「きょとんとするな! チームドーベルマン、3人で、ガッカリスリーだろ!」

チャンドラ「なにを言っている、ガッカリワンだろう。……ドーベルマンなだけに」

ランディ「……その発言で十分ガッカリだ」

パトリック「わんわんっ」

ランディ「こらそこ! 1人だけかわいい路線に逃げようとするな!」

 
 


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ランディ「さて、マンザイスリーが無事揃ったところで」

チャンドラ「無理矢理引きずり上げたの間違いだろう」

パトリック「僕なんか軽く首締まりましたよ」

ランディ「無事揃ったところで、恒例のアレ、いきますか! 俺秘蔵のA・V!」キコキコキーン

チャンドラ「漫才じゃなかったのか」

パトリック「そういうネタなんじゃないですか?」

ランディ「本当は注文していた新作を持ってきたかったが、あいにくまだ届いていなくてな」

チャンドラ「なら届いてから言え」

パトリック「まあまあ。秘蔵ってことは、先輩のお気に入りなんですか?」

ランディ「整理していたら奥の方で見つけたヤツだ」

チャンドラ「単に忘れていたのか」

パトリック「ある意味、秘蔵の品ですね……」

ランディ「俺にも中身がわからん。せっかくだから見てみようと思ってな」

パトリック「そう言われると気になってきますね」

ランディ「だろ?」

 
 

 
ランディ「じゃあ再生するぞ」ピッ

チャンドラ「……」

パトリック「……」

ランディ「……」

チャンドラ「……おい、いつ出るんだ」

パトリック「これ、壊れてるんじゃないですか?」

ランディ「ずいぶんと奥の方にあったからなあ……」

チャンドラ「秘蔵過ぎだ」

パトリック「いったいどんな内容だったんでしょう……」

ランディ「見れないとなると、よけいに過激に思えるぜ……」

チャンドラ「ああ、目隠しとか興奮すると聞くな、そういえば」

ランディ「つまりアレか……俺達は今、映像機器に弄ばれている、と」

チャンドラ「……なんでやねん」ペシッ

パトリック「ナイスツッコミです!」

 
 

 
ランディ「ようやく漫才らしくなってきたな」

チャンドラ「これ漫才か?」

パトリック「そもそも、なんでいきなり漫才なんですか?」

ランディ「いや、普段マンザイスリーと呼ばれているからな。一度本気で受け入れてみようかと」

パトリック「受け入れて何かあるんですか?」

ランディ「特に意味は無い」

チャンドラ「まあそうだろうとは思った」

ランディ「ただ、俺達がガッカリなことは事実だからな。そういう部分を認めて強くなるってのは、なかなかカッコいいだろ?」

チャンドラ「その顔でカッコいいと?」

ランディ「そう! この! イケメンが!」

チャンドラ「……」ペタ

ランディ「……」

パトリック「ランディ先輩は常に熱があると思いますよ、わざわざ計らなくても」

 
 

 
パトリック「顔はともかく、僕達ってけっこう活躍してますよね!」

ランディ「顔は大事だろ」

チャンドラ「戦績もなかなかといったところだな、ランディの顔はともかく」

ランディ「俺の顔はそんなに問題か」

パトリック「でも近々、新型機が導入されるそうですね」

チャンドラ「例のジュリアシステムを搭載した機体か」

ランディ「ライノスとはかなり変わるみたいだな。専用パイロットの育成っつって、第三世代が乗るんだったか」

チャンドラ「我々の戦績など、すぐに抜かれてしまうかもしれないな」

パトリック「かなり優秀な機体らしいですからねー。先輩として頑張らないと!」

ランディ「お、やる気だなぁパトリック!」

パトリック「当然です! 後輩にいいところ見せたいじゃないですか」

チャンドラ「ランディのようにはなるなよ」

パトリック「はい!」

ランディ「ああ。俺ほどにカッコよくなったら問題だからな!」

チャンドラ「ツッコまないぞ」

ランディ「なんでやねんっ」ペシッ

 
 

 
ランディ「新人、か。俺達もベテランって感じになってきたんじゃないか?」

パトリック「名前も通ってますもんね」

チャンドラ「問題は、それが必ず名声とは言えないところか」

ランディ「だから漫才してるんだろう?」

チャンドラ「だから漫才なのかこれは?」

パトリック「ところで、先輩らしさってなんでしょう」

ランディ「やっぱりカッコよさだろ」

チャンドラ「より豊富な経験に基づく技術を見せられるか、だろうか」

パトリック「新しい機体に僕達の経験や技術が通用するかはわかりませんけどね」

ランディ「きれいに無視すんな。大事だろカッコよさは」

パトリック「あー、でもそうですね、カッコよくて頼れる優秀な先輩っていいですね」

チャンドラ「優秀、か。どれだけ勝ち抜けば、その域にたどり着くだろうな」

ランディ「さあな。先の見えない今は、どの程度まで戦えば“勝ち”で、そこまでにどのくらいの時間がかかるのか、わからないからな」

パトリック「この戦いが終わる前に、僕達おじいさんになっているかも」

チャンドラ「……その前に“英雄”になっているかもしれないがな」

パトリック「え? ……ああ、そういう……不吉なこと言わないでくださいよ」

ランディ「そうやって諦めてたら、できるモンもできないぞ」

チャンドラ「やれるつもりなのか?」

ランディ「もちろんだ。なにより顔がいいからな!」

チャンドラ「……時には諦めも必要だぞ?」

ランディ「俺の顔になんの恨みがあるんだお前は」

 
 

 
パトリック「まあたしかに、諦めない姿勢は大事ですよね」

チャンドラ「こんな時世だしな、戦況を覆すだけの気合いも必要だろう」

ランディ「だが、こんな時世だからこそ、根性だけじゃどうにもならんだろう」

パトリック「! ランディ先輩が急に真面目なことを」

ランディ「俺はいつだって真剣だ!」

 
 

 
ランディ「いいか、諦めないのは大事だ。不利な状況だろうと、冷静に動くことができれば逆転のチャンスは見える」

パトリック「冷静に、ですか」

ランディ「冷静に、だ。必要があるなら、諦める決断もしなきゃならない」

チャンドラ「諦めて、それをどう次に繋げるかが肝心だな」

パトリック「乗り越えていかなければ、ですね」

ランディ「俺達は一兵士だ、全体の方針やその決定権は無い。だが刻一刻と変わる戦場では、俺達の道は己の決断力にかかっている」

パトリック「だからこそ、勝つために、決断しなくちゃいけないってことですね」

チャンドラ「そうやってくぐり抜けてこその、優秀な兵士なのだろうな」

ランディ「そんで、俺達はチームだ。全員で勝ち抜いていこうぜ!」

パトリック「いいですね。先輩達と一緒なら、夢じゃない気がします!」

チャンドラ「大丈夫か、こんな先輩で?」

ランディ「なんだよ、仲間だろ? 信じろ!」

チャンドラ「……そうだな、信じてみよう。顔くらいで諦めないで」

ランディ「俺の顔も信じろよ!」

 
 

 
パトリック「ところで、漫才は?」

ランディ「あっ」

チャンドラ「ずれまくりだったな、始めから芯もなかったが」

ランディ「パトリック、お題!」

パトリック「ええっ? うーん、新人に会ったらなにしますかっ」

ランディ「鑑賞会」

パトリック「そればっかりやないかー!」ペシッ

ランディ「これもまた訓練だ、男の!」

パトリック「なるほどたしかに……ってならんわー!」ペシッ

ランディ「先輩と一緒だと緊張するだろうから、始めは新人だけでじっくり訓練できるようにするか……」

パトリック「なんかやらしいです先輩」ペシッ

 
 

 
パトリック「チャンドラ先輩はどうしますか?」

チャンドラ「まずは親睦を深めることが大事だとは思うが……」

パトリック「……鑑賞会?」

チャンドラ「初対面でそれか……」

パトリック「“先輩”に期待してたら、ガッカリされそうですね」

ランディ「なにをしてもガッカリはされるだろう、俺達だからな!」

チャンドラ「……」バシッ

パトリック「……」バシッ

ランディ「いてっ、ちょっ、やめ』プツッ
 

 
 
 ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
 


 
ピッ

 
 
チャンドラ「……」


チャンドラ「……残っていたものを整理してやろうと思ったら」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

チャンドラ「こんなものを、わざわざ保管するなよ」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……こんな、奥の方に」

チャンドラ「……」

 
 

 
チャンドラ「……秘蔵の品、か」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

チャンドラ「まるで、目隠しをされて、弄ばれているようだな」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

 
 

どのランディ?

 
チャンドラ「なあ、ランディ、パトリック」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

チャンドラ「チームドーベルマンは、一人になってしまった」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……ドーベルマンなだけに」

チャンドラ「……」

チャンドラ「……」

チャンドラ「…………なあ、おい」

 
 

 
チャンドラ「一人では、漫才できないだろうが」
 

 
おわり


>>16
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