春香「プロデューサーさん!」五十嵐隆「」ビクッ (133)
春香「このお話は、ちょっと変で」
千早「ていうか挙動不審で」
やよい「頼りなくて」
律子「だらしなくて」
伊織「見栄っ張りで」
真「体力もなくて」
あずさ「不健康で」
響「何考えてるのかわからなくて」
貴音「何を食べているのかもわからなくて」
亜美真美「「チョ→臆病なのに」」
美希「ちょっぴり優しい」
「「「「プロデューサーのお話です!!」」」」
社長「いいよいいよー、君たちぃ! 素晴らしいビデオになるよぉ! これで五十嵐君も浮かばれるよぉー!」
小鳥「いや、死んでませんから、社長」
五十嵐「そうだね、うん」
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Xヶ月前——
五十嵐隆「765プロ……すか?」
遠藤代表「知り合いのまた知り合いの会社なんだけどね、なんか人手が足りないっていうから」
五十嵐「でも俺、あ、ボク、Syrup終わらせたばっかりで……」
遠藤「ステージ立って歌ってって話じゃないよ。レコーディングとか手伝ってくれってさ」
五十嵐「でも俺、あ、ボク、まだ曲作ってて……」
遠藤「そんなこと言ってまたひきこもるんでしょ?」
五十嵐「……」
遠藤「外出る理由程度でいいんだよ。新しいバンドもすぐ発足ってわけじゃないからさ。曲作りしたかったらそっち優先してもいいから。ちょっと手伝ってって」
五十嵐「はぁ、じゃあ、わかりました」
prrrr……
遠藤「おぅ、高木出してくれ。あぁ、話はついたよ」
ガチャ
五十嵐「」ビクッ
高木「やあやあ、初めてましてだよぉ、五十嵐くぅん。私が765プロの社長、高木だよぉ!」
五十嵐「あ、ど、どうも……」
高木「じゃあ、さっそくで悪いけど、ウチの事務所案内したいから、ついてきてくれるかい?」
五十嵐「えっ、あの……」
高木「さぁ、こっちだよ」
五十嵐「えっ、ちょっ——」
バタン
遠藤「……」シュボッ
遠藤「あ〜、よかった」フゥ
数十分後——
キキーッ バン
高木「お待たせぇ! ここが我が765プロダクションの事務所だよ!」
五十嵐「はあ」
高木「ん、顔色が良くないねぇ?」
五十嵐「車酔い……っす」
高木「それはよくない! まあ、少しここで待っていてくれたまえ! 後で呼ぶから、初顔合わせなんだからお互い良い笑顔で決めたいじゃないか!」
五十嵐「わかりました」
高木「うむ! それじゃあ、先に行かせてもらうよ」テクテク
五十嵐「はい」
高木「」カンカンカン
五十嵐「……」
五十嵐「」テクテク
事務所内——
高木「やあやあ、みんなおはよう!」
律子「あ、社長!」
「「「「おはようございまーす!!」」」」
社長「うむ、元気だねぇ! 今日はちゃんとみんないるかな!?」
亜美「いま→す!」
真美「いま→す!」
伊織「ていうか社長が言ったんでしょ、今日はみんな事務所にいるようにって……」
やよい「重大発表があるんですよね!」
社長「うむ! 驚きたまえ! ついに君たちのプロデューサーが決定したぞ!」
「「「「おぉぉーっ!!!」」」」
五十嵐「……えっ?」
春香「社長さん、プロデューサーさんってどんな人ですか?」
社長「そうだねぇ、音無君よりは年上だったかな」
小鳥「ちょっと、社長!」
雪歩「ひょっとして……男の人、ですか……?」
社長「そうだね」
雪歩「お、おとこのひとー……」フラッ
真「あぁっ、雪歩!」
社長「聞いて驚かないでくれたまえよ、なんとプロのミュージシャンだ!」
「「「「おぉぉーっ!!!」」」」
五十嵐「…………期待されちゃってる……」
響「プロの人って、有名な人なのか?」
社長「う〜む、あまりテレビには出ないかなぁ、ライブばっかりやってたからねぇ……五十嵐隆君って言うんだけど」
小鳥「!」ガタッ
美希「ピヨちゃん知ってるの?」
小鳥「え、えぇ、そうね……名前だけは……」
社長「有名な人じゃあないが、プロはプロだよ! 決して、決して! L'Arc〜en〜Cielのhydeさんが良かったとか、GLAYのTAKUROさんがよかったとか、BUMP OF CHIKENの藤原さんがよかったとか、言っちゃいけないよ!」
「「「「はーい!!」」」」
社長「彼は、本気でヘコむから」
「「「「……」」」」
社長「本ッ気で! ヘコむから」
「「「「……はーい!!」」」」
五十嵐「…………」
社長「呼んでくるから、ちょっと待っててくれたまえよ」
五十嵐「あ、やばい……」スタコラ
「「「「はーい!!」」」」
ガチャ
社長「待たせたねぇ、五十嵐君!」
五十嵐「あ、はい……」
社長「みんなの準備は万端だよ! バッチリ決めてくれよ!」
五十嵐「え、えっと……」
社長「さぁ、はやく!」グイグイ
五十嵐「ちょ、まっ——」
ガチャ
社長「さぁ、みんな! 新しいプロデューサーだよ!」
「「「「よろしくお願いしまーす!!」」」」
五十嵐「あっ、え、どうも……よろしく」ペコ
社長「五十嵐君、自己紹介頼むよ」
五十嵐「あ、えっと……五十嵐隆です。Syrup16gのヴァーカルとギターでした」スリスリ
美希「でした? 今は違うの?」
五十嵐「あ、えっと……解散しちゃって……」スリスリ
千早(すごい手摩ってる……)
春香(目を合わそうとしない……)
雪歩(ていうかサングラスつけてる……怖い)
真(それでも顔を合わせようとしない……)
響(全身真っ黒だぞ……)
あずさ(すごい顎髭ねぇ)
亜美「ね→ね→」ヒョコ
五十嵐「な、なに……?」ビクッ
律子(すごいびびってる……)
真美「サングラス外してい→い?」
五十嵐「え、あ、えっと……」オロオロ
社長「どうせ素顔なんてすぐ見られるんだから、いいじゃないか」
五十嵐「はあ……」スチャ
((((めっちゃ普通のおっさんだ……))))
五十嵐宅——
藤原『がっちゃんじゃん、久しぶり』
五十嵐「うん、ひさしぶり」
藤原『どうしたの、Syrupやめてなんかほかの事務所の手伝い行くって聞いたけど?』
五十嵐「うん、なんかアイドルのプロデュースすることになっちゃった」
藤原『マジで? すげーじゃん』
五十嵐「でも、みんな若い子ばっかりで、どうしたらいいかわかんない」
藤原『普通でいいんじゃない?』
五十嵐「いや、俺普通に女の子と接したことあんまりないし」
藤原『俺らもそうだよ』
五十嵐「ていうかレコーディング手伝ってってだけなのに、なんでアイドルのプロデューサーになってんだろ?」
藤原『俺に聞かれてもわかんないよ』
五十嵐「どうしよう、藤くん?」
藤原『俺に聞かれてもわかんないって』
五十嵐「会話できるかな?」
藤原『じゃあさ、ウチのゲーム持ってく?』
五十嵐「えっ?」
藤原『ゲームすれば会話できなくてもなんとかなんじゃん』
五十嵐「でも、藤くん困るでしょ?」
藤原『いいよ、俺はチャマん家でやるし。持ってきなよ』
五十嵐「わかった。ありがとう、藤くん」
藤原『いいよいいよ、またね、がっちゃん』
五十嵐「うん、また」
五十嵐生還おめでとう。
だらだらやるよ。
シロップみたいなぬるい感じでだらだらやっていくよ。
がっちゃん×アイマスとか俺得でしかないわ
生還のニュース見て書き出したのか
SSも久しぶりだから全レスでもしながらいきます。
>>13
あなたのその一言で「あ、書いてもいいんだ」って思えました。
がんばります。
>>14
ニュース以前から考えてましたが、ニュース見てテンション上がってスレ立てました。
面白いことはないかもしれませんが、ちょっとでも五十嵐を感じていただければと思います。
ではまた明日。
しまった。sage忘れた。
見てるよ
765プロダクション——
ガチャ
五十嵐「おはようございまーす……」
小鳥「ピヨッ!?」
五十嵐「あ、おはようございます」
小鳥「おぉおはよぅございます……!」
五十嵐「みんな、まだ来てないんすか……?」
小鳥「そ、そうですね……ていうか五十嵐さんこそ六時は早すぎますよ」
五十嵐「あ、やっぱりそうすか……友達にゲーム借りようと思ってたら関西に行っちゃうって言うんで……」
小鳥「えっ?」
五十嵐「昨日、夜中に取りにいって、そこでご飯食べて戻ってきたんです」
小鳥「じゃあそのリュック、ゲームが入ってるんですか?」
五十嵐「あ、うん……藤くんに相談したらゲームしたらいいよって」
小鳥「ふ、藤くんッ!?」
五十嵐「」ビクッ
小鳥「え、そ、そこに藤原さんのゲームが入ってるんですか!?」
五十嵐「あ、うん」
小鳥「えっ、ていうか、BUMPって今、ホームシップツアー中じゃないですか!?」
五十嵐「そうだね、今日関西に行くって」
小鳥「すげぇぇぇー……」
五十嵐「えっと……音無さんでしたっけ……?」
小鳥「は、はい……あ、ごめんなさい、一人で盛り上がっちゃって……」
五十嵐「いや、それはいいけど……BUMPのファンなんですね」
小鳥「あ、いえ! Syrupも大好きでしたよ!」
五十嵐「あ、ホントですか……ぇへ」
小鳥「ご、ごめんなさい……だ、だから五十嵐さんって聞いてウソ!? って思いましたよ」
五十嵐「ボクもまだホントだって信じられないんだけど……」
小鳥「えっと……この中に藤原さんのオススメのゲームが入ってるんですよね?」
五十嵐「あ、うん」ゴソゴソ
スーパーファミコン&マリオカート
小鳥「さっすが藤原さん……」
五十嵐「さっきまでやってたけど、やっぱり面白いっすね」
小鳥「あ、あの、五十嵐さん」
五十嵐「はい?」
小鳥「よかったら、ちょっとだけやりませんか?」
五十嵐「えっ?」
小鳥「ま、まだみんなが来るまでちょっとありますし」
五十嵐「じゃあ、やりましょうか」ヒョイ
小鳥「あれ? スーファミの裏になんか書いてありますね」
ますひでお
五十嵐「」
小鳥「……さ、さあ、やりましょうか!」
五十嵐「あ、はい……」テクテク
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
—Perfect Communication!!—
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションが上がった〜
小鳥(……解散のこととか聞きたかったけど、さすがに核兵器級の地雷に触れるのは怖いわね)
ガチャ
亜美真美「「おっは→☆」」
五十嵐「」ビクッ
亜美「アッミーだっよ→☆」
真美「マッミーだっよ→☆」
小鳥「おはよう、亜美ちゃん真美ちゃん」
五十嵐「お、おはよう」ビクビク
亜美「あぁー! がっちゃんとピヨちゃんがゲームしてるー!」
真美「ずるーい! 真美たちもやるー!」
亜美「がっちゃん貸して貸してー!」
真美「うわっ! なにこれ!? マリカー!?」
五十嵐「」
小鳥「」
亜美「すっげー! コントローラ薄い→!」
真美「画面みづら→い!」
小鳥「……あ、二人とも、六時半にはここを出ますからね」
亜美「は→い!」
真美「わかってま→す!」
五十嵐「……何かあるんすか?」
小鳥「二人は朝の子ども番組に出るので早いんですよ」
五十嵐「へぇ」
小鳥「あ、五十嵐さんよかったら二人を送ってもらってくれます
か?」
五十嵐「えっ?」
小鳥「いつもは私が送っていってるんですが、せっかくのプロデ
ューサーさんなんですから、お願いします」
五十嵐「あ、はあ……わかりました」
亜美「ほらほら→☆」」
真美「がっちゃんこっちだよ→☆」
五十嵐「……!」ゼェゼェ
亜美「がっちゃん遅いぞ→☆」
真美「遅刻しちゃうよ→☆」
五十嵐「も……っ、無理……っ!」ゼッゼッ
亜美「がっちゃん体力ないねー!」
真美「ほらー、駅までもうちょいだから、ファイトだぜ!」
五十嵐(電車移動嫌だなぁ……)
プシュー
五十嵐「……!! ……!!!」
亜美「もー、がっちゃんがSuica持ってないせいで乗り遅れるところだったじゃん→☆」
真美「てゆ→かSuica持ってないとか社会人として有り得ないっしょ→☆」
亜美真美「「亜美(真美)たち大人だもんね→☆」
五十嵐「…………」ゼハ、ゼハ
ガタンゴトン——
五十嵐(満員電車嫌だ……)
亜美「でねでね→☆ その時真美が——」
真美「えー! 亜美のほうこそ——」
五十嵐(元気だなぁ……)
亜美「でもやっぱあの時の千早おね→ちゃんの顔が——」
真美「やよいっちだってぇ——」
五十嵐(知らない子だったら、うるせぇなぁ……とか思ってたかもなぁ……)
ツギハー ヨモギハラー ヨモギハラー
五十嵐「二人とも、もう降りるから」
亜美真美「「は→い☆」」
プシュー
亜美「わー!」タタタッ
真美「わー!」タタタッ
五十嵐「あぁ、疲れた」
女性「ちょっとあなた」ガシッ
五十嵐「えっ?」
女性「あなた、さっきからあの子たちに付きまとってるでしょ?」
五十嵐「えっ?」
女性「誰かー! この人チカンよー!!」
五十嵐「……」ポカーン
女性「誰かー!」
ざわざわ… ざわざわ…
五十嵐「——っ! いや、ちょっとボクは……」
女性「言い訳すんじゃないわよ、変態!」
五十嵐「へ、変態じゃない……!」
女性「ニヤニヤしてんじゃないわよ!」
五十嵐「し、してません……」
女性「気持ち悪いわね!」
五十嵐「……」
亜美「がっちゃん、どうしたのー?」
真美「送れちゃうよー?」
女性「あんなに小さい子を連れまわして!」
五十嵐「ち、違う……二人とも……」
女性「話しかけてんじゃないわよ!」
五十嵐「た、助けて……」
亜美「えっ、どゆこと?」
女性「あなたたち、こんな知らないおじさんについてきちゃダメでしょう!」
亜美「えーっ! 知らないおじさんじゃないよー!」
真美「知ってるおじさんだよー!」
五十嵐「……」
女性「いつ知り合ったの!?」
亜美「昨日」
真美「午後四時」
女性「誰かああああああ!! 誘拐犯よおおおおおおおおおおお!!」
五十嵐「……」
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
—Bad Communication!!—
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションが下がった〜
765プロダクション——
真「それで、五十嵐さんそのまま帰っちゃったんですか?」
律子「えぇ、亜美と真美だけ先に行かせて自分は事情聴取。釈放された後に遅れてテレビ局に行って二人にミスドを渡して帰っちゃったらしいわ」
美希「ドーナツおいしーのー!」
響「あーっ! それ自分が食べようとしてたやつだぞ!」
律子「本当に大丈夫かしら……あの人で……」
真「うーん……明日来てくれますかね?」
律子「さぁ……? はあ、あのプロジェクト、本当に始められるのかしら?」
真「? プロジェクトってなんですか?」
律子「あっ! うぅん、なんでもないのよ!」
真「……?」
五十嵐宅——
ジャーン……ティロリロティロリロ……
「一周回って小学生……」
「一生かけてもしょうがねぇ……」
「一秒経って変わんねぇ……」
「三回回ってワンとなけぇ……」
アカン、五十嵐死んでまう
>>17
がんばります。ぇへ
五十嵐は音楽意外のプロデューサー活動はまったく向いてなさそうだなぁ…
期待
五十嵐生きてたんだな、すげえ嬉しいわ。
SS書いてくれたおかげで知れたわ、ありがとう。
五十嵐宅——
「……765プロ……どうしよう」
ピンポーン
「……」
ピンポーン イガラシクーン
「……? 社長?」
ピンポーン イガラシクゥーン イルンダロォー
「……はい」
ガチャ
「おぉ、五十嵐君! よかった! さぁ、来てくれたまえ!」
「えっ? でも、ボクは……」
「なぁに、昨日のことなら気にしないでくれ! それより、主役が不在ではパーティーもつまらんよ!」
「えっ? 主役?」
「さぁ、さぁ!」
「ちょっ、あの——」
スタジオ——
「「「「カンパーイッ!!!」」」」
社長「今日はまたみんなの予定がなかったからね! 五十嵐君の歓迎パーティだよ! はっはっは!」
律子「はあ、予定がないことを喜んでどうするんですか……」
社長「なぁに、心配はいらないよ! これから五十嵐君がばっちり忙しくしてくれるからね!」
五十嵐「はあ」
律子「本当にだいじょうぶかしら……」
小鳥「まあまあ、だいじょうぶなんじゃないですか?」
五十嵐「……」ゴクゴク
美希「プロデューサーさんっ」
五十嵐「えっ?」
美希「ミキが、おかわりをオシャクしてあげるの」
五十嵐「あ、うん」
美希「プロデューサーさんのドーナツ、とってもおいしかったの。だから、サービスしてあげる」トクトク
五十嵐「……」トクトク
美希「あのね、ミキね。アイドルやるのってよくわかんないけど、楽しいことなら好きなの。だから、きびしいのとかナシで……あふぅ」ビチャビチャ
五十嵐「ちょっ、ちょっ……」
美希「あっ、ごめんなさいなの、ぷろりゅーさー……あふぅ」
律子「もう! なにやってんのよ、美希!」
五十嵐「……」ズズ
小鳥「そういえば、社長」
社長「なんだね?」
小鳥「どうしてレッスン場でパーティしてるんです? 狭いけど事務所なら費用かからなくて済むのに」
社長「よく聞いてくれた音無君!!」
小鳥「ピヨッ!?」
五十嵐「」ビクッ
社長「何を隠そう! 今、この場でアイドルみんなの実力を五十嵐君に見てもらうのだ!」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
五十嵐「あぁ、そうすか……」
社長「さぁ、みんな! 日頃の練習の成果を見せてくれたまえ!」
「「「「はーい!!!」」」」
五十嵐「……」ゴクゴク
\ジャーン!/
\ジャーン!/
五十嵐「……」パチパチパチ
律子「五十嵐さん、どうでした?」
社長「忌憚のない意見を述べてくれたまえ!」
五十嵐「あ、えーと……普段からこのみんなで歌うんですか?」
律子「いえ、今日はみんな集まったからですけど、全員で一つのグループって訳じゃないですね」
五十嵐「えーと……みんな初めて……ですよね? 新人的な」
律子「そうですね。事務所の発足が昨年末で、第一期のメンバーです」
五十嵐「えーと……ボク、アイドルのこととか全然わかんないんすけど、とりあえず……まとまりがないですよね」
ザワッ
春香「まとまりがない……ですか?」
五十嵐「うん……まあ、出会ってまだ何ヶ月ってメンバーだからだと思うけど、みんなバラバラにやってるって感じがした……かな」
やよい「ばらばら……」
五十嵐「歌とか、ダンスとか、みんな一所懸命練習してるなってのはよくわかったけど、自分のことで精いっぱいって感じかな。一人がハシって、それを追いかけようとしちゃったり、逆に遅れたのにつられちゃったり」
千早「私、ダンスはあまり自信なくて……」
五十嵐「うん、えーっと、ごめん、名前なんだっけ?」
千早「如月千早です」
五十嵐「如月、君だね。歌すごいうまい、けど……それが周りを食っちゃってるんだよね」
千早「えっ?」
五十嵐「人間、集まってるから、上手とか下手とかあるんだよね。で、それが、バンドの話しちゃうけど、バンドも同じで……みんなもちろん、最初はへたくそなんだよ」
亜美「ふむふむ」
五十嵐「へたくそ同士で練習していくんだけど、うまくなって……それで、まあ、人間だから……人間だから、いろいろあって、まあ、俺もその辺失敗しちゃったけど」
真美「けど?」
五十嵐「いや、うーんと……一人で先走っちゃうと、よくないから、お互いもうちょっと合わせていこうってこと、かな」
千早「つまり、どういうことですか?」
五十嵐「えっ」
千早「今の話と私の歌、何の関係があるんですか?」
春香「ちょ、千早ちゃん」
五十嵐「いや、だから周りに合わせて……」
千早「私は私にできることをやっているだけです。一生懸命にやって何がいけないんですか?」
五十嵐「えっと……」
千早「私に足りないものがあるなら教えてください」
律子「ストップ! ストーップよ、千早! 噛みつきすぎ」
千早「別に、噛みついてなんかいません」
律子「たしかに千早が一生懸命なのはわかってるわ。でもプロデューサーが言いたいのはもっとみんなと歩調を合わせてってことよ。そうですよね?」
五十嵐「あ、うん……」
千早「でも、私は……」
美希「……あふぅ」
あずさ「あら、美希ちゃん?」
美希「ミキ……疲れて眠くなっちゃったの……あふぅ」
あずさ「あらあら……」
千早「……くっ。すみません。今日は帰ります」
春香「あ、ちょっと、千早ちゃん!」
ガチャ バタン
響「ありゃりゃ……二人とも行っちゃったぞ」
貴音「千早は真面目なのが取り柄ですが……」
五十嵐「……はあ」
数十分後——
五十嵐「社長、やっぱり俺、無理っすよ……」
社長「何を言っているんだね。まだ始めたばかりじゃないか、この程度の衝突で音をあげてもらっては困るよ!」
五十嵐「でも……」
社長「なぁに、如月君だって悪い子じゃない。彼女にはきっと逆境を跳ね返す力があると私は睨んでいるからね!」
五十嵐「そうっすか……」
社長「すまないとは思っているよ。この事務所もまだできたばかりで、みんなどうすればいいのか不安なんだ」
五十嵐「……」
社長「頼むよ、五十嵐君」
五十嵐「……わかりました」
面白いなー 続きたのしみにしてる
千早に明日を落としてもを歌わせよう(ゲス顔)
期待
Syrup16gをネットで検索してパープルムカデのPVを発見して卒倒する事務所の面々
デパート——
「ここかぁ……」
\ワーワー/
「」チッ
昨日——
社長「そうだ、忘れるところだったよ。これを」
五十嵐「なんすか……これ?」
社長「ウチのアイドルたちのプロフィールとアピールビデオだよ。時間のある時に見てくれるとありがたい」
五十嵐「はあ」
社長「それと、こっちは今出している曲のテープと楽譜だね。何かの参考にしてくれればいい」
五十嵐「はあ」
社長「それと、昨日の今日で申し訳ないが、頼みごとがあるんだ」
五十嵐「なんでしょう?」
社長「うむ、明日は萩原君がデパートの小さなイベントに出演する予定なんだが、一緒に行ってやってくれないかね?」
五十嵐「萩原君ってえっと……」
社長「これぐらいの髪の子だよ。単独での行動は初めてでね、フォローしてやってくれるとありがたい」
『イオンモール イベントスペース
今日の催し物
11:00 アンパンマンショー
12:00 お昼のビンゴ大会
13:00 なし
14:00 よいこのピアノ教室
765プロダクション 萩原雪歩さん』
「おめぇらぁ!! 今日はお嬢のステージだ!!」
「「「おぉ!!」」
「ビデオの用意は!?」
「「「おぉ!!」」」
「楽屋への贈り物は!?」
「「「おぉ!!」」」
「周囲の警戒は!?」
「「「おぉ!!」」」
「社長への中継準備は!?」
「「「おぉ!!」」」
「よし! 絶対にお嬢に見つかるんじゃねぇぜ!!」
「「「おぉ!!」」」
「見つかった奴は東京湾のフカヒレにしてやるからな!!」
「「「おぉ!!!」」」
「いくぞぉ!! 萩原組ッ! ファイッ!!」
「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」ゴゴゴゴゴ
五十嵐「」コソコソ
舞台袖——
五十嵐「すー……はー……失敗しませんように」
トントン
雪歩「はぁい」
ガチャ
雪歩「ひぇっ、ぷ、プロデューサーさん……」
五十嵐「あぁ、うん、おはよう」
雪歩「お、おはようございましゅ」ススス
五十嵐「あ、えっと、聞いてると思うけど、今日、とりあえず見てるから」
雪歩「は、はいぃ、よろしくお願いします……」ススス
五十嵐「……今日の台本、ていうか構成? は目を通してもらってると思うけど」
雪歩「は、はい、ピアノと歌……です」ススス
五十嵐「簡単な曲ばっかりだから、だいじょうぶだと思うけど、ピアノ、弾けるんだよね?」
雪歩「ひ、ひけましゅっ……小さい時に習い事で」ススス
五十嵐「えっと……緊張してる?」
雪歩「そ、そそそそんなことなりでしゅ」スススガン!
五十嵐「…………」
雪歩「ごごっ、ごめんなさいぃ! わたし、男の人とか、人前とかまだ苦手で……! でもでも、律子さんがせっかく取ってきてくれたお仕事だから、がんばりたくて……あぅぅ」
五十嵐「……俺も人前は苦手だけど」
雪歩「えっ……はい」
五十嵐「正直、君たちと目を合わせるのすら怖いけど」
雪歩「あの、だからサングラスなんですか……?」
五十嵐「太陽も眩しいから」
雪歩「そうなんですか……?」
五十嵐「正直、ライブの前とか緊張で死にたくなるぐらい怖いけど」
雪歩「……」
五十嵐「怖くてもいちおう、好きなことで勝負してたから」
雪歩「——!」
五十嵐「アイドル、好きなんだよね?」
雪歩「あ、あの! 好きというか、自分を変えたくて……引っ込み思案で、なんでも怖くて逃げ出しちゃうし……そんな自分を変えたくて……変わりたくて……」
五十嵐「……詩を書くのが趣味って聞いたけど」
雪歩「……っ! は、はい……」
五十嵐「あとは、お茶」
雪歩「はい……」
五十嵐「ほかには?」
雪歩「あ、あと……家のサボテンに水を上げるのも……」
五十嵐「……音楽は好きじゃない?」
雪歩「——す、好きです!」
五十嵐「アイドルは?」
雪歩「好きです!」
五十嵐「じゃあ、がんばろう」
雪歩「は、はい!」
一時間後——
雪歩「あ、ありがとうございます。無事に成功できて……プロデューサーさんのおかげです……」
五十嵐「……楽しかった?」
雪歩「えっ? ……はい!」
五十嵐「それならいいか」
雪歩「はい!」
五十嵐「……帰ろうか」
雪歩「はい!」
五十嵐「ピアノ教室かぁ……」
雪歩「……?」
五十嵐「アイドルってそんなこともやるんだ」
雪歩「そう、ですね。たまに恥ずかしい格好して写真撮ったりも……」
五十嵐(絶対やりたくないなぁ)
雪歩「でも、お仕事がんばって、ちょっとずつでも変わっていけたらなって思います」
五十嵐「……頭が下がるなぁ」
雪歩「……えっ?」
765プロダクション——
ガチャ
律子「あ、戻ってきましたね」
五十嵐「あ、はい」
雪歩「ただいま戻りました」
真「おかえり、雪歩!」
雪歩「ただいま」
律子「これで、全員集まったわね?」
雪歩「重大発表があるからってメールが来ましたけど……」
響「まさかまた新しいプロデューサーが来るのか!?」
五十嵐「えっ、ホント?」
律子「違います。なんですか五十嵐さんそのすごい複雑な表情は?」
五十嵐「いやぁ」
社長「オホンッ!」
五十嵐「」ビクッ
春香「社長さん!?」
社長「みんなに集まったのは他でもない。なぜなら、本日ただいまをもって、765プロの新ユニット�竜宮小町�が正式に始動するのだ!」
五十嵐「……?」
>>46
おもしろい? 嘘つくなよ!(震え声
>>47
syrupの曲は封印させながらやるつもりなので、悪しからず。
>>48
だけど今日の話はパープルムカデだったんだよなぁ……
PVというよりライブ映像を見せる話くらいはしたかったけどもうタイミング逃した。
日刊アイドル——
『765プロダクション �竜宮小町�始動!!
高木順一郎氏が昨年末に起ち上げた765プロダクションがついに本格的なユニット活動を発表した。
その名は�竜宮小町�
メンバーは三浦あずさ、双海亜美、水瀬伊織の三人。
かつては�やり手�と言われた高木社長が送り出したユニットが今年のアイドル界の台風の目となるのか。
昨日の765プロ——
……
……
萩原雪歩 イオンモールにてよいこのピアノ教室』
店員「今日はどんな感じにしますか?」
五十嵐「あ、軽く梳く感じで」
店員「ボリュームは変わらないくらいですか?」パシュパシュ
五十嵐「そうですね」
店員「もみあげは自然な感じで?」パシュパシュ
五十嵐「そうですね」
店員「毛先は肌から浮く感じで?」パシュパシュ
五十嵐「そうですね」
店員「かしこまりましたー」パシュパシュ
五十嵐「……」
店員「〜♪」パシュパシュ
五十嵐(……首、つめたっ)
楽屋前——
美希「真クンのぶぁぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ガチャーン!
真「ごめん! だからごめんてば、美希!」
五十嵐「……」
ガチャ
真「てっきり、差し入れだと思って!」
美希「おにぎりぃぃぃぃぃ! ミキのおにぎりぃぃぃぃぃ!!」
五十嵐「……」
真「あっ、い、五十嵐さん!」
五十嵐「あ、うん……」
美希「ぷ、プロデューサーさん……真クンがね……真クンがミキのおにぎり食べたの……!」
五十嵐「……」
真「だって、あんな風に置いてあって……あぁっ! ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
美希「ひっぐ……ダメなのぉ……真クンでも許さないのぉ……」
五十嵐「……おにぎりなら、コンビニ行って買ってくるけど……」
美希「違うのぉ! 今日のミキは手作りのおにぎりじゃないと力が出ないのぉ……」
五十嵐「……」
美希「今日は一日かけての撮影だから、お昼に特製おにぎり食べようって……なのに真クンがぁぁぁぁぁ!」
五十嵐「……」
真「あわわ、どうしよう……午後の撮影が……」
美希「くすん……もうダメなの……ミキの笑顔はもううしなわれたの……」
五十嵐「……」
美希「もう美希に笑顔がもどることはないの……」ポテン
真「だ、ダメだ……完全にふてくされちゃってます……」ヒソヒソ
五十嵐「……出られないの?」ヒソヒソ
真「美希はあぁなっちゃうともうしばらくあのまんまです……」ヒソヒソ
五十嵐「……とりあえず、君は撮影に戻っちゃって。もう時間だから」
真「は、はい……美希、ごめんね」
バタン
五十嵐「……」ハァ
美希「……」
五十嵐(……どうしよう)
美希「……」チラ
五十嵐(あ、ちょっとこっち見た)
美希「……」チラチラ
五十嵐(えっ、なに? なんなの?)
美希「……プロデューサーさん、怒らないの?」
五十嵐「えっ?」
美希「律子は怒るの……あと、千早さんとかも……」
五十嵐(あ、それはそうかもしんない)
美希「でも、ミキはもうダメなの……ミキだってこんなのしちゃいけないってわかってるの……でも、もうキラキラが出てこないの」
五十嵐「……キラキラ?」
美希「そうなの、ミキはキラキラがないとダメなの。キラキラしてないミキなんてまるで海苔のないおにぎりなの」
五十嵐「……のり?」
美希「……」
五十嵐「そっか……」
美希「……」
五十嵐「今日はもうダメ?」
美希「ダメなの……」
五十嵐「じゃあ、しょうがないか」ガタッ
美希「……?」
五十嵐「体調不良ですって伝えてくる」
美希「…………ホントに?」
五十嵐「うん」
監督「出られないぃ?」
五十嵐「……すみません」
監督「うーん……午前すっごく調子良さそうだったのになぁ……本当にダメ?」
五十嵐「ダメ、ですね……」
真「……」
監督「うーん……今回は二人で12ページの大特集なんだけど……これじゃ美希ちゃんの分が足りないなぁ……」
真「あ、あの! ボクががんばります!」
五十嵐「えっ?」
真「ボクが美希の分もがんばりますから! お願いします!」
監督「うーん、菊池君かぁ……美希ちゃんの服とはイメージが全然違うんだけどなぁ」
真「むしろ着たいです! 美希の服だって着れるってことをアピールしてください!」
監督「でも、これから二人分も一気に撮るんだよ? 休憩も全然できなくなるよ?」
真「大丈夫です! 体力には自信あります!」
監督「それじゃあ、それで手を打ちましょう。美希ちゃんのページが減るのはわかってもらいますよ」
五十嵐「……はい」
真「プロデューサー……本当にごめんなさい」
五十嵐「うん、がんばって」
監督「よし、菊池君! さっそくだけど次はこの衣装でお願いします!」
真「はい! うわぁ! ボク本当にこういうの着たかったんです!」
五十嵐「……」
765プロダクション——
律子「それで、そのまま帰ってきちゃったんですか!?」
五十嵐「……」
律子「ぅ甘い! 甘すぎです! っていうか相手から見たら765プロはドタキャンするように思われますよ!」
五十嵐「……ごめんなさい」
律子「今回は真がいたからなんとかなりましたけど、12ページも空けてもらうのにどれだけ苦労したか……!」
五十嵐「……」
律子「それに、来週には竜宮小町の特集だってしてもらうのに……! もう、なんのためのプロデューサーですか!」
五十嵐「……」
五十嵐「……はあ」
美希「プロデューサーさん……」
五十嵐「ん?」
美希「ごめんね……? ミキのせいでプロデューサーさん、怒られちゃったの」
五十嵐「そうだね」
美希「でも、ミキ……鏡で見たらひどい顔なの……こんなの撮られたくないの……」
五十嵐「……」
美希「真クンにもひどいこと言っちゃったの……明日謝らなきゃ」
五十嵐「……」
美希「……ごめんなさいなの」
五十嵐「……ねぇ」
美希「……?」
五十嵐「おにぎり、二人分持って来ればいいんじゃない?」
美希「えっ!?」
五十嵐「……あっ、やっぱなし——」
美希「ナイスアイディアなのー!!」
五十嵐(あ、眩し、キラキラしてる)
日刊アイドル——
『�週刊 IdolBox�が765プロ連続特集!
次週のIdolBoxの情報が公開された。
先月、デビュー曲を発売した菊地真と星井美希がセンター記事を飾ることになる。
二人とも女性向け雑誌のモデルとして人気を得ていただけあり、17位、18位と健闘した。
IdolBoxは二人のデビュー曲をイメージしたグラビア特集を組む。
�エージェント夜を往く�の菊地真(写真左)はタキシードや革ジャンを着こなし、夜のプリンスをイメージしている。こちらはIdolBoxホームページでも一部を見ることができる。
一方で�ふるふるフューチャー�の星井美希(写真右)は撮影衣装以外の情報がなく、何らかのサプライズがあることを匂わしている。
撮影現場に居合わせた日刊アイドル記者とのミニインタビューでは赤いタンバリンを持った菊地真が「本当はカワイイ服も着たいんですけど……」とはにかむ彼女が印象的だった(ミニインタビューは紙面3に)。
IdolBoxはさらに次々週での765プロの特集を予定。
注目の新ユニット�竜宮小町�のインタビュー記事を業界最速で掲載する』
貴音「プロデューサー殿、お静かに」
五十嵐「えっ?」
貴音「らぁめんの音が聞こえなくなってしまいます」
五十嵐「えっ? なんの音?」
貴音「らぁめんです」
五十嵐「ら、えっ?」
貴音「らぁめんです」
五十嵐「らぁめ……、あ、あぁ、ラーメン」
貴音「はい」ピトッ
五十嵐(カップヌードルに耳あててる……)
貴音「……ふむ、よろしいですか?」
五十嵐「えっ?」
貴音「あぁ、このらぁめんの声です。食べごろですよー、と」
五十嵐(なにそれこわい)
貴音「〜♪」カサカサ
五十嵐(すごい上機嫌……)
貴音「〜♪」カサカサ
五十嵐(あ、おにぎり)
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Perfect Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
765プロダクション——
五十嵐「おはようございまーす……」
やよい「プロデューサーさん! おはようございまーす!」
五十嵐(あ、ガルウィング)
伊織「ちょっとやよい、人と話すときはイヤホン外しなさい」
やよい「あ、ごめんなさい!」スポ
五十嵐「あぁ、うん」
やよい「そうだ、プロデューサーさん! わたし、ついにデビュー曲が出るんですよ!」
五十嵐「え、おめでとう」
やよい「うっうー! そのCDが今届いたので、聴いてたんです!」グイグイ
五十嵐「えっ、ちょ、なんでイヤホン押し付けるの……」
やよい「えっと、プロデューサーさんにも聴いてほしいかなーって!」
五十嵐「あ、あぁ、そういうこと……」
やよい「曲名は�キラメキラリ�って言うんですよ!」
五十嵐「ありがとう」
やよい「どういたしまして! どうでした?」
五十嵐「うん、イメージ合ってると思う……明るくて……うん」
やよい「ホントですかー!? うっうー! ありがとーございます!」
五十嵐「あ、でも、これ、最初の一番の歌詞、タニシって言ってるの?」
やよい「あぁー! やっぱりプロデューサーさんにもそう聴こえちゃいましたかぁ……?」
五十嵐「えっと……ごめんね」
やよい「あ! だいじょうぶです! 実はさっき伊織ちゃんにも同じこと聞かれちゃって……」
伊織「本当にタニシとしか聴こえないからね……まあ、その……かわいいと思うわよ」
やよい「ホントに!?」
伊織「う、うん……」
やよい「ホントですか!? プロデューサーさん!」
五十嵐「そ、そうだね……」
やよい「えへへぇ……うっうー! いっぱい売れますように!!」
五十嵐「あ、あとコーラス担当してるのは……」
伊織「……!」
五十嵐「き、君だよね?」
伊織「——!? ちょっと!」
五十嵐「は、はい」ビクッ
伊織「君とはなによ君とは! 玉子じゃあるまいし! 私には水瀬伊織っていう立派な名前があんのよ!」
五十嵐「ご、ごめんなさい」ビクビク
伊織「これから私を呼ぶときはかわいいかわいい伊織ちゃんって言いなさいよね!」
五十嵐「は、はい、かわいいかわいい伊織ちゃん……」
伊織「バッ、バッカじゃないの!? なに本気にして言っちゃってんのよ! アアアンタ今の顔はっきし言って犯罪者よ、犯罪者! こっ、この変態プロデューサー!」
五十嵐(なにこれめんどくさい……)
伊織「そ、そうよ! 私がやよいのコーラスをしたのよ! 悪い!? なんか文句あるの!?」
五十嵐「な、ないです……コーラスうまいなって……」
伊織「……〜っ!!?? 死んじゃえ! バカプロデューサー!!」ダッ
やよい「あっ、伊織ちゃーん! ごめんなさい、プロデューサーさん! ありがとうございます! 失礼しまーっす!」ダッ
五十嵐(あ、ガルウィング)
小鳥「ふふふっ」
五十嵐「」ビクッ
小鳥「あ、ごめんなさい」
五十嵐「い、いたんですか……?」
小鳥「えーっと、私、事務員ですから事務所が空いてる時はいつでもいますよ」
五十嵐「あ、そうなんですか……」
律子「私もいるんですけどね」
五十嵐「」ビクッ
律子「まあ、これから竜宮小町の営業に出かけるんですけど」
五十嵐「そうですか、いってらっしゃい……」
律子「はい、今日は千早と春香と雪歩がレッスンに出てますので、気が向いたらそちらを見てあげてください」
五十嵐「わ、わかりました」
律子「それじゃ、失礼します」ガタンッ
五十嵐「」ビクッ
スタスタスタ……バタンッ!
五十嵐「……はぁ」
小鳥「五十嵐さん、律子さん苦手そうですねぇ……」
五十嵐「えっ、いや、苦手というか……昨日の今日で……」
小鳥「たぶんですけど……律子さん、五十嵐さんをライバル視してるんじゃないかと思いますよ」
五十嵐「えっ?」
小鳥「ほら、竜宮小町の決定とほぼ同時ですから……それまでは律子さんがほとんど全員のプロデューサーを兼ねてて……大変だったんですから」
五十嵐「そう……っすか」
小鳥「たぶん、発破をかけているんだと思いますよ。律子さんも竜宮小町に集中したいでしょうし……」
五十嵐「そっかぁ……」スタスタ
小鳥「五十嵐さん、どちらへ?」
五十嵐「レッスンを見に行かないと、また秋月さんに怒られると思うので……」
小鳥「ふふっ、がんばってください。あっ」
五十嵐「……?」
小鳥「えっと、さっきの伊織ちゃんの悪口って、ツンデレの照れ隠しなので、あんまり真に受けなくていいですよ」
五十嵐「え、あ、はい……」
バタン
小鳥「……今、私、地雷ふんだ? 選択肢まちがえた?」
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Perfect Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションが上がった〜
レッスン場——
〜♪
春香「〜♪」
千早「〜♪」
雪歩「〜♪」
五十嵐「……」
春香「プロデューサーさん、おはようございます!」
千早「……おはようございます」
雪歩「お、おはようございましゅ」
五十嵐「うん、おはよう」
春香「えへへ、レッスン見に来てくれたんですか?」
五十嵐「そうだけど……あの、先生は……?」
春香「今日、自主練なんですよ」
五十嵐「あぁ、そう……」
春香「プロデューサーさん、私たちのダンスと歌、どうでした?」
五十嵐「ボク、ダンスはわからない、よ?」
千早「それでも」
五十嵐「」ビクッ
千早「なにか思うところがあったのなら、お願いします」
五十嵐「……三人ともバラバラ、かな」
雪歩「ふぇっ……」
五十嵐「えっと……天海、さんを基準にすると、萩原、さんが遅すぎて如月、さんが早い、かな」
如月「……」
五十嵐「歌も、やっぱり如月さんが強くて萩原さんが弱い、ていうか聞こえづらい……」
雪歩「ご、ごめんなさぃ……私、同時にやるのうまくいかなくて……」
春香「で、でも雪歩も一人でやってるときはちゃんとうまくできてるんですよ……」
五十嵐「えっと……」
千早「同時にやるのが難しいならまずは歌なしで合わせられるようにしましょう」
春香「いいの、千早ちゃん? 歌の練習したいんじゃあ……」
千早「体を動かしてからのほうが良いのよ。さ、萩原さん」
雪歩「はいぃ……」
春香「じゃあ、今度は歌なしでやってみよう! プロデューサーさん、すみませんが、再生ボタンお願いします!」
五十嵐「あ、うん」
\ジャーン!/
春香「イェーッ!」パン
千早「イェー」パン
雪歩「いぇーっ!」パン
春香「なんとなくだけど、今度は二人と合わせられた気がしたよ!」
千早「私もよ」
雪歩「私も、えへへ」
春香「プロデューサーさんはどうでした? 揃ってました?」
五十嵐「うん、さっきよりは」
春香「やった! ねね、もう一回やろうよ!」
千早「えっ」
春香「今の感じを忘れないために!」
千早「……そうね、私はかまわないわ。萩原さんは?」
雪歩「私も、もう一回やりたいです」
春香「えへへ、動画にも撮りたいね」
千早「ど、動画? ……そうね、こんなにうまくいっている気がするのも珍しいからね。良いイメージを残しておきたいわ」
春香「ちょっと待ってて、ビデオカメラ借りてくるから!」タタッ
春香「これで、良しっと! えへへ、それじゃあプロデューサーさん、お願いします!」
五十嵐「うん」
〜♪
春香「イッ、エェーイッ!!」パン
千早「すごいわ、やるたびに息が合っていく気がするわ」
雪歩「つ、疲れましたけど、すごいからだがポカポカしますぅ〜」
五十嵐「お疲れ様」
春香「はいっ! 一休みしたらビデオ見てみようね!」
〜♪
春香「あ、千早ちゃん、今のところのつま先、ぴったしだね!」
千早「えぇ、前の春香を意識したの」
雪歩「春香ちゃんやっぱり上手だね〜」
春香「えへへ……で、千早ちゃんが前にきて……」
雪歩「……?」
千早「……あら?」
春香「……んっ?」
千早「……あら?」
春香「あれ? 今のところ……」
雪歩「手のタイミングが一つ早かった……?」
千早「というより、常に一歩くらい早いわ」
春香「でも揃ってるね……」
千早「えぇ、三人で早くなってるわ」
春香「で、雪歩が前に替わって……」
千早「……」
雪歩「……」
春香「……」
千早「今度は遅いわね……」
春香「三人そろって……」
雪歩「ここで三人並んで……」
春香「あ、合った」
千早「そして春香が前で……」
雪歩「ここは〜……」
春香「合ってる……かな?」
千早「今度は萩原さんが前に……」
雪歩「……」
春香「……あ、遅れてる」
五十嵐「…………」
春香「……」
雪歩「……」
千早「……」
五十嵐「……あの」
春香「ぷっ、あははははははははっ!!」
五十嵐「」ビクッ
千早「ふ、ふくくっ……」
五十嵐「」オロオロ
雪歩「……み、みんなで揃ってズレちゃってます〜!」
春香「あははははっ! おかしー!」
千早「た、たしかに揃ってはいるわね……ふくく……」
五十嵐「あ、あの、なんかごめん」
春香「なに言ってるんですか、プロデューサーさん……ぷふっ」
五十嵐「いや、なんかボクが揃ってるとか言って……」
春香「で、でも、五十嵐さんの言うとおり、こんなに息ピッタリになりましたよ、私たち……!」
千早「息ピッタリに間違えて……ぷふっ!」
雪歩「お、お腹痛いですぅ〜!」
五十嵐「……はは」
春香「これおもしろいから明日みんなに見せようっと」
千早「だ、ダメよ、春香、恥ずかしいわ!」
雪歩「わ、私も恥ずかしいよ〜!」
春香「だーめ!」
雪歩「だめぇ〜」
五十嵐「……」
765プロダクション——
〜♪
小鳥「ぶふぅっ! ぶふっ! うふっ、うふひひひゃははははははは!!」
春香「あはははははっ!」
千早「もう、春香ったら……」
雪歩「ふえぇ、恥ずかしいです〜」
五十嵐(音無さん笑い声こえぇ……)
千早「はぁ……私、もうちょっと意識しないとダメね」
雪歩「そうですね……私も前に出るといっそう緊張しちゃいます……」
千早「さすがに、あんな恥ずかしいものを撮られるのはもうごめんだわ」
雪歩「私も……」
五十嵐「如月さんが早くて、萩原さんが遅いから……」
雪歩「はい?」
五十嵐「お互いを意識すればちょうどいいのかな……」
千早「……えぇ、そうですね」
雪歩「が、がんばります!」
五十嵐「あ、うん……」
春香「あはははははっ!」
小鳥「ひぃーっ、ひひっ! あひゃっひゃひゃひゃ!」
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Perfect Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションが上がった〜
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! 幻さんからお手紙ですかー!
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! 明日を落としても誰も拾ってくれないんですよー!
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! もしも犬に生まれたら飼われるか保健所に行くだけですよー!
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! 道も教える親切な人間ですけど、遠くでその人が死んでても気にしません!
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! スキルがついたら好きにしたくて、サカリがついたら逆恨みですー!
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! 最新ビデオの棚の前で2時間以上も立ち尽くして借りたのがハリー・ポッターですかー!
ζ*'ヮ')ζ<うっうー! お情けで人生の全てを神様に決めてもらおうなんてクソクラエですよね、プロデューサーさん!
「…………」
「…………夢か」
「……やっぱりやめようかな」
「でも……まあ、言うだけだし……」
社長室——
社長「五十嵐くぅん……」
五十嵐「はぁ……」
社長「それは……大変だよぉ?」
五十嵐「やっぱり、ダメっすか?」
社長「ダメとは言ってないよぉ! ただ、大変だよぉ?」
五十嵐「……いちおう、わかってます」
社長「律子君もなんていうか、わからないしねぇ」
五十嵐「ついででいいですから。そんなでかいことにしなくても」
社長「とは言っても、やっぱり大変なんだよぉ。特に私が」
五十嵐「……すんません」
社長「いや! しかしやはり、五十嵐君がやる気を出してくれたんだ! ここで引き下がっては男が廃るというものだね!」
五十嵐「ありがとうございます」ペコ
社長「ともかく、本人たちの意見も聞かなくてはね」
765プロダクション——
春香「えぇぇ!?」
真「新しい!?」
響「ユニットを!?」
律子「組むですってぇぇぇ!?」
社長「ほーら、言った通り、律子君怒ってるよぉ」ヒソヒソ
五十嵐「すんません」
社長「オホン!」
五十嵐「」ビクッ
社長「何を隠そう、新しいユニットのことを考えたのは五十嵐君なのだよ!」
真美「がっちゃんが?」
五十嵐「あ、うん」
律子「それで、どんなユニットなんですか?」
美希「律子、メガネ動かしすぎなの〜」
律子「律子、さん! でしょうが!」
美希「あひぅ」
五十嵐「……えっと、ユニットのメンバーは……萩原さん」
雪歩「はひぃっ!? えっ、私……? えぇぇ!?」
五十嵐「あと……如月さん」
千早「私、ですか……?」
五十嵐「うん」
五十嵐「…………」
「「「「…………」」」」
五十嵐「…………あれ?」
亜美「えっ?」
五十嵐「えっ?」
伊織「えっ? じゃないわよ!」バン
五十嵐「」ビクッ
伊織「新ユニットのメンバーは雪歩と千早だけなの!?」
五十嵐「あ、はい……」
真「二人……デュオってことですか?」
五十嵐「あ、うん、そう」
千早「私と萩原さんが……」
雪歩「千早ちゃんと私かぁ……」
律子「いいかしら?」
五十嵐「はい」
律子「まず、千早と雪歩を組ませた意味は?」
五十嵐「えっと……昨日、二人を見てて」
律子「……いつごろから活動させますか?」
五十嵐「割とすぐ……」
律子「割とすぐ? そんなのじゃスケジュール組めないでしょうがぁぁ!!」
五十嵐「ひっ!」ビクッ
亜美「うわ、りっちゃんキレた!」
律子「ミーティングに持ってくるなら、プレゼン作ってから持ってきてくださいよ! いつ! どこで! だれと! なにを! なぜ! どのように! して、この企画を立てて通すのかを考えてきてください! 以上!」
五十嵐「ご、ごめんなさい……」
律子「ユニット一つ作るのだって遊びじゃないんですから! 打ち合わせから宣伝からライブまで何から何までしっかり予定立てていって……そしてお金が……お金がぁぁぁぁぁぁっ!!」
貴音「律子……落ち着いてください」
律子「はぁ……はぁ……」
社長「律子君の言うとおり、ウチの経費は今、竜宮小町に大部分を割いてしまっているからねぇ。そこから新しいユニットの創設、CDを出すなら、作詞、作曲、演奏……さらに宣伝費となると……うぅーん……火の車だねぇ!」
春香「社長さん……笑いごとじゃないですよ……」
五十嵐「あ、曲なら既に作ってあるんで」
「「「「…………えっ!?」」」」
春香「プロデューサーさん、作曲できたんですか!?」
五十嵐「えっ? 最初にそう言わなかった?」
響「ギターとヴォーカルって言ったぞ」
五十嵐「そうだっけ?」
真美「がっちゃんの隠された才能ってやつですな!!」
五十嵐「いや、隠してないけど……」
小鳥「ていうか、五十嵐さんはバンドの曲のほとんどを一人で作詞作曲してたんですけど……」
「「「「おぉぉ〜っ!!」」」」
パチパチパチパチ……
真美「それじゃあ、作詞もがっちゃんがやるの!?」
五十嵐「いや、ボクの作詞は……えっと、萩原さんにしてもらおうかと」
雪歩「へぇぇっ!? わたしですかぁっ!!?」
五十嵐「うん、あとピアノとコーラス」
雪歩「ぴ、ピアノ!? コーラスも……!」
五十嵐「それで、メインヴォーカルが如月さん」
千早「私がメインで……」
五十嵐「なんていうかな……19じゃなくて……あ、Every Little Thingみたいな感じ」
あずさ「あらあら〜、たしかに二人ならそんな雰囲気ですね〜」
貴音「ピアノを弾く雪歩嬢と千早……なるほど、思い浮かびます」
小鳥「でも、それじゃあダンスは……どうなるんです?」
五十嵐「ダンスは……ない、かな?」
春香「そ、それじゃあダメですよ!」
五十嵐「え、ダメなの?」
響「アイドルは、歌とファッションとダンスって言われるからな! アイドルとして評価するならダンスはどうしても必要なことになるさー!」
五十嵐「そうなんだ……じゃあ、やっぱり……」
千早「いえ……私、やりたいです」
春香「千早ちゃん!?」
千早「私は……歌えるなら、アイドルという枠に入らなくてもいいと考えるから」
律子「というより、千早ってもともとアイドル志望って訳じゃないからね」
千早「えぇ、765プロにいる以上はアイドルになる訳だけど……歌えるなら、形は問いません」
雪歩「わ、私もやります!」
真「雪歩!?」
雪歩「ち、千早ちゃんががんばるなら私もがんばらなきゃって思うし……! じ、自分を変えるためなら、なんでもがんばらないとって思うから!」
五十嵐「……いいの?」
雪歩「はいっ! ピアノも作詞もがんばります!」
千早「私も、どうかご指導をよろしくお願いします」
五十嵐「あ、えっと……」
社長「うむ!!」
五十嵐「」ビクッ
社長「諸君! ここに新たなユニットが誕生した! 新たな門出に盛大な拍手を!!」
パチパチパチパチ!
律子「……はぁ」
伊織「気に病むことはないわよ、律子」
律子「そうだけどねぇ……」
美希「ところで……プロデューサー?」
五十嵐「……?」
美希「ユニット名はどうするの?」
五十嵐「ユニット名……? あ」
春香「あ、って……考えてないんですか、プロデューサーさん!?」
五十嵐「え、えっと……」
貴音「それなら、今、名付けてはいかがです?」
五十嵐「えっと……えっと……」
如月千早
萩原雪歩
五十嵐「……�早歩き�」
「「「「…………ダサッ!!」」」」
よし、しゃべってないやつはいないな!
これで明日は遅刻確定だ。
「はいさーい! 雪歩は犬が苦手って聞いたぞ!」
「う、うん……」
「でもそんなことないぞ! 犬はかわいいしかっこいいし自分の言うことなんでも聞いてくれて都合がいいし頼りになるんだぞ!」
「そ、そう言われても……」
「だから自分は今日、雪歩のためにいぬ美を連れてきたぞ!」
「へぅっ!?」
「大丈夫! いぬ美は自分の家族だからな! 雪歩にとっては弟みたいなものだぞ! いきなり噛みついたりしないぞ!」
「う、うん……響ちゃんが言うなら、私がんばってみる」
「よーしっ! いぬ美はもうスタンバってるからな! いぬ美、カモーン!」
プシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!
「「……えっ?」」
デデレデデデデデデデデデデデデデデデデッデッデッデ
ベビベビベイビベイビベイビベイビベイベー
俺のすべーてーはーおまえーのものーさー
ドカーン!
「「!?」」
「俺がッ! 犬美ッ! だッ!!」
「ぅ、うわああああああ!! なんだお前!」
「犬美だッ! つってんだろ!」
「ひぇぇぇぇ! 犬さん怖いですぅぅぅぅ!」
「何言ってるんだ! 犬の被り物かぶったハ、ハダカの男じゃないか!」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
「犬美ッ! だッ! つってんだろッ!」
「少なくともいぬ美じゃないぞぉ!」
「今日はッ! 萩原雪歩にッ! 犬美であるッ! 家畜の俺がッ! 一言、物申ーす!」
「ひぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「まず! 俺はお前らみたいな18歳未満に不用意に近づかないッ!」
「うわああああん! こんなの聞いてないぞぉぉぉぉ!」
「そのッ! お前らが立っている丸くて赤いマルッ! そこに俺は入らないッ!」
「いぬ美ぃぃぃぃぃ! 助けてくれいぬ美ぃぃぃぃ!」
「俺はッ! お前の犬嫌いを治すためにきたッ!」
「怖いですぅぅぅぅぅぅ! 犬怖いですぅぅぅぅぅぅ!」
「雪歩ぉぉぉぉぉ! あれは犬じゃないぞぉぉぉぉ! 自分も怖いぞぉぉぉぉぉぉ!」
「もしも! 万が一にも! ギブアップって時はッ! そこのボタンを押せッ!」
「ひぃぃぃぃぃん!」
ブッブー!
「は、や、す、ぎ、んだろぉぉぉぉぉぉ!!」
「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ!」
「もぉぉぉぉぉ! がっぺむかつく! がっぺむかつく!」
「ひぃぃぃぃん!!」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「これからッ! 江頭大開脚とかッ! 犬美ブリッジとかッ! 見せようとしてたのにッ!」
「あぅあぅぅ……」
「えぐっ、えぐぅっ……」
「もぉぉぉぉぉ! ドーンッ!! ドーンッ!!!」
小鳥「っていう企画はどうでしょう!?」
律子「どう考えてもダメです。干しますよ?」
五十嵐「……」
日刊アイドル——
『週刊IdolBox発売! 765プロ連続特集!!
ティーン雑誌の超新星�星井美希�&�菊地真�
CDデビューからもっとも速いグラビア特集!!
日刊アイドルの予想は裏切られた。
事前情報の少なかった星井美希ではなく、菊池真にこそサプライズが用意されていたのだ。
デビュー曲をアピールした各5ページずつのグラビアとインタビューを終えた最後の見開き。
そこに誰も考えもしなかった菊地真の姿があった。
アイドルファンの諸君には是非とも見ていただきたい。
そこにはフリフリのエプロンドレスを着たアイドル本来の姿で映った菊地真の姿があるのだから。
しかも、今週の週刊IdolBoxのプレゼントはそのおそろしくかわいい菊地真のピンナップポスターなのだ。
筆者は既に10通の応募を終えた。
次週には�竜宮小町�のロングインタビュー記事が掲載される。
追記:765プロダクションの公式ホームページをご覧になられている方は気づいているかもしれない。
�萩原雪歩�と�如月千早�を撮った�早歩き�なるページがあることを——』
小鳥「ほら、五十嵐さん。アクセスカウンターうなぎのぼりですよ」
五十嵐「すごいっすね、日刊アイドル」
小鳥「ホントですねぇ、だってこのページの素材ほとんどタダなんですよ」
五十嵐「事務所からレッスン場まで歩かせて写真撮っただけっすからね」
小鳥「掲示板でもちょっと話題になってますよ。もともと竜宮小町でちょっと騒いてましたからね」
五十嵐「あんまり期待しないでほしいなぁ」
小鳥「そうですか?」
五十嵐「プレッシャー苦手だから」
小鳥「そうですかぁ……」
五十嵐「うん」
小鳥「雪歩ちゃんと千早ちゃんはどうです? 時間合わせて打ち合わせしてるとは聞いてますけど」
五十嵐「今日、それを見させてもらいますんで」
部屋——
雪歩「プロデューサーさん……やっぱりわたし……ダメダメなんですぅ……」グスッ
五十嵐「……うん」
千早「うん、じゃありませんよ、プロデューサー」
五十嵐「あ、ごめん……えっと、最初からうまくできるわけがないから、ね」
雪歩「はぃ……あの、聞いてもいいですか……?」
五十嵐「俺に?」
雪歩「はぃ……その、作詞ってどうやればいいのか……」
五十嵐「…………あぁ……」
雪歩「わたし、自分で詩を書くことは好きで、書いているんですけど……その、歌の詞を書こうと思ったらぜんぜん思い浮かばなくて……」
千早「……私も一緒に考えてみたんですけど、どうすればいいのか……」
五十嵐「どうするものでもないと思うけれど」
千早「はい?」
五十嵐「ボクも、作詞のやり方とかぜんぜんわかんないけど、音楽やって、作詞が必要になったから始めたってだけで、わかんないから自分のこと書いただけだから……」
雪歩「自分のことですか……?」
五十嵐「それぐらいしか書くことなかったから……」
五十嵐「もともとさ、二人の、この早歩きってユニットだって、そんな、売ろうと思ってた訳じゃないから……」
千早「えっ、どういうことですか? 売る気がないって……」
五十嵐「こないだの練習の時に二人がちょっと極端だったから、まあ、うーんと、なんていうか、まあこうなんか近寄ればいいのかなって思って、しばらく一緒に活動してみたらって、社長に言ったら、それはユニットってことかい? って……」
千早「あの、律子じゃないですけど、ホントに何も考えてなかったんですね……」
五十嵐「いや、ごめん、ね……あの、そもそもしかもホームページも作っちゃって、で、新曲出すってなって、俺すごい困ってる、んだけど……」
千早「プロデューサーが困らないでくださいよ!」
五十嵐「ご、ごめん」
千早「……はあ」
五十嵐「……ごめん、なさい」
千早「いえ……プロデューサーの話もわかります」
五十嵐「えっ?」
千早「その、私もこの前のことで……一人で出過ぎていたことに気付いたので……」
五十嵐「そう……」
千早「だから、萩原さん」
雪歩「千早ちゃん……?」
千早「私も、一緒に考えるわ。変な形でユニットになったけど、萩原さんと一緒に新曲……新しい歌を作りたいわ」
雪歩「千早ちゃん……ありがとう……」
雪歩「わたし、少しわかりました」
五十嵐「えっ?」
雪歩「今、書きますから……」
千早「思いついたの?」
雪歩「うん……私、千早ちゃんがうらやましいんだ」
千早「私が?」
雪歩「千早ちゃんって、私よりずっと前を歩いている気がするの」
千早「そんな、私は……」
雪歩「千早ちゃんがそう思ってなくても、私から見たらそうなの。それでね」
千早「うん」
雪歩「プロデューサーさんみたいに、今のこの気持ちを言葉にしてみようと思う。私より前を歩いている千早ちゃん……ユニット名とおんなじ、早歩きってタイトル」
千早「……ふふっ、ホントに変なユニット名」
雪歩「そうだね」
五十嵐(…………なんか、ごめんなさい)
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Nomal Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションがちょっと複雑になった〜
日刊アイドル——
『765プロダクション�高槻やよい�デビューシングル発売!
デビューシングル隔週リリース中の765プロダクション。
今週は高槻やよいの�キラメキラリ�だ。
アップテンポの曲調で13歳の元気な女の子によく似合っている。
既に早朝ニュースの占いコーナーのテーマソングに使用されているため、765プロ初のCDランキングトップ10入りに期待がかかる。』
「撮影終了です! お疲れ様でーす!!」
貴音「お疲れ様です。ありがとうございました」
響「お疲れ様でーす!」
やよい「お疲れ様でーっす!」
五十嵐「お疲れさまでーす……」ボソッ
やよい「あっ、プロデューサーさん、おはようございまーす!」
五十嵐(あ、ガルウィング)
響「どうしたんだ、プロデューサー。撮影はもう終わっちゃったぞ」
五十嵐「あ、えっと……がなは? さんのこの後の収録の場所が変わったから、それを伝えるのと、いちおう、送るのも」
響「了解さー!」
貴音「わたくしとやよいはこの後はレッスンになりますね」
五十嵐「うん」
貴音「それでは、失礼いたします」ペコリ
五十嵐「お疲れさま」
やよい「お疲れ様でーっす!」タタタッパラッ
貴音「あら、やよい、頭の花がとれましたよ」スッ
ドンッ
五十嵐「えぁっ——」
貴音「あ、もうしわけ——」
ドガッ!
五十嵐「うっ!」
やよい「はわっ! プロデューサーさんが貴音さんのおしりにぶつかって飛ばされて壁にぶつかっちゃいましたー!」
響「すごい説明口調だぞ、やよい!」
五十嵐「……超痛い」
貴音「も、申し訳ありません……! わたくしのでん部が粗相を……!」
五十嵐「いったぁ……」
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Bad Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションが下がった〜
電車——
響「なぁなぁ、プロデューサー」
五十嵐「あ?」
響「」ビクッ
五十嵐「……どうしたの?」
響「あ、えと……プロデューサーさん……」
五十嵐「プロデューサーでいいけど……?」
響「でも、今怒って……」
五十嵐「え? 怒ってないけど」
響「ほ、ほんと……? 今、あ? って、すごい怖い顔で……」
五十嵐「え、そんな顔してないよ……」
響「そ、そうか……自分、食べられるかと思ったぞ……」
五十嵐「食べない食べない」
響「そ、そっか……」
五十嵐「それで……どうしたの?」
響「あ、えっと、次のデビューシングル出すの自分なんだ」
五十嵐「へぇ……あ、おめでとう」
響「うん! 自分、ダンスすごい好きなんだけど、デビューシングルもノリノリになれる曲で、すごい気に入ってるんだぞ!」
五十嵐「そうなんだ」
響「振り付けも自分とトレーナーさんで考えたんだぞ! 自分が気に入ってるのはこんな感じの——」クルッ
ゴンッ!
響「あたっ!」
五十嵐「あっ……だいじょうぶ?」
響「あいたた、な、なんくるないさー!」
五十嵐(らんくる……? ランドクルーザー?)
響「あっ、プロデューサー!」
五十嵐「」ビクッ
響「こないだ、春香たちのレッスンのビデオ見たじゃないか」
五十嵐「あ、あぁ、あれ……」
響「あの、自分ダンスはいちもんちゃくあるんだけど……」
五十嵐「……一家言?」
響「んっ?」
五十嵐「いちもんちゃくじゃなくて、一家言って言いたかったのかなって」
響「えっと……よくわかんないけど、とりあえず三人のダンスだけど、あれリズム合ってるの千早だぞ」
五十嵐「えっ? ……えっ?」
響「自分も最初はすごい笑ってたんだけど、改めて見ると最初の春香がちょっと遅いんだぞ」
五十嵐「……ほんと?」
響「ほんとだぞ。千早は一歩目を焦っちゃう癖があるから早いように見えるけど、練習量凄いからダンスも完璧だし、リズムとるのもすごい上手なんだ」
五十嵐「じゃあ俺のせいか……」
響「えっ?」
五十嵐「俺が天海さん基準にしちゃったから、如月さんもそれに合わせるようにしちゃったんだと……思う」
響「あー……そうなのかー……」
五十嵐「ていうか俺ダンス全然わかんないし……」
響「そ、それはこれから勉強していけばいいと思うぞ!」
五十嵐「いやー……」
響「ダンスすごい楽しいぞ! 体動かして嫌なことなんて忘れられるさー!」
五十嵐「すごいなぁ……」
響「そうだぞ! ダンスはすごいんだぞ!」
五十嵐「ボク、ギター弾いてても嫌なこと忘れられないからなぁ……」
響「そ、そうなのか……?」
五十嵐「うん……良いことも悪いことも全部思い出しちゃうなぁ」
響「良いことも悪いこともかぁ……」
ツギハーハクシドウーハクシドウー
五十嵐「それじゃあ、お願いします」
スタッフ「はい、それでは我那覇さんお預かりします」
響「いってくるさー! プロデューサー!」
五十嵐「うん。あ、直帰でいいから」
響「はいさーい!」
「……はぁ」
「……難しいなぁ」
「……曲どうなったんだろ?」
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Nomal Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションがちょっと複雑になった〜
パリパリ
ビリッビビッ
五十嵐「……」
もそっ、ぽり、ぽり……
五十嵐「……かっ」
ピッ、ジャー……ジョボボ……
亜美「がっちゃーん!」
五十嵐「」ビクッ
亜美「あ、がっちゃんお昼→?」
五十嵐「う、うん」
亜美「スタミナラーメン? がっちゃんせいがでますなー!」
五十嵐「うん……何か用?」
亜美「あっ、そうそう! がっちゃんって大人だよね!?」
五十嵐「……いや、別に」
亜美「そういうのいいから、年的には大人だよね!」
五十嵐「うん、まあ」
亜美「今日いおりんにちょっとは大人らしさを学びなさいよ! って怒られちゃったの! そこで、大人のがっちゃんに大人っぽさを教わろうと思ったのだ!」
五十嵐「大人っぽさ……」
亜美「あずさおねーちゃんもあれでけっこう子どもっぽいからねー、まあ、がっちゃんが考えてる大人っぽさを教えてちょ!」
五十嵐「…………」
ぺりっ
亜美「ん?」
五十嵐「これをちょっと食べてみて」
亜美「なにこれ? コーンフロスティ?」
五十嵐「ニンニクチップ」
ぱくっ
亜美「……!!?!??!? からーいっ!!」
五十嵐「あっ、やっぱり辛いよね」
亜美「なに!? 亜美にこんなもの食べさせてがっちゃんは亜美をどうしようっていうの!?」
五十嵐「ボクも、子供の時は辛かったなぁ」
亜美「……それじゃあ、今は?」
五十嵐「平気になっちゃった」
ピアノのあるレッスン場——
雪歩「プロデューサーさん……やっぱりわたし……ダメダメなんですぅ……」グスッ
五十嵐「……うん」
千早「うん、じゃありませんよ、プロデューサー」
五十嵐「あ、ごめん……えっと、最初からうまくできるわけがないから、ね」
雪歩「でも……ピアノは小っちゃい時から弾いてるのに……」
五十嵐「あの、弾きにくいところは自分で調整してもいいから……」
雪歩「でも、プロデューサーさんがせっかく作ってくれた曲なのに……」
五十嵐「いや、この譜面ってギターで弾いたやつだから……ピアノで合わない部分があるから……」
千早「ひょっとして、私たちは今、編曲をやっているんでしょうか?」
五十嵐「……そうだね」
千早「どう考えてもプロの仕事ですよね?」
五十嵐「……そうだね」
千早「さすがに無理があると思います」
五十嵐「…………そうだね」
千早「たしかに座学のレッスンもありますが、編曲なんて習っていませんし……」
雪歩「うぅぅ……私、和音見るとどうしてもぉ……」
千早「どうしても?」
雪歩「わおん、って……犬みたいで……」
五十嵐「……え?」
千早「ぷふっ!」
五十嵐「えっ?」
雪歩「うぅぅ〜……見てるとこんがらがってきますぅ〜……」
千早「まあ、ギターのタブ譜を置き換えただけだから……」
五十嵐「……ごめんなさい」
雪歩「うぅ……うぅぅ……私なんてひんそーでダメダメで……こうなったら穴掘って埋まるしかぁ……」
千早「えっと……萩原さん、詞は出来ているのかしら?」
雪歩「えっ……? あ、うん……」
千早「プロデューサーのデモテープはあるから……私がまず歌ってみるわ」
雪歩「で、でもまだ全然……まとまってないから……」
千早「曲と合わせながらのほうが、きっとまとまりやすいと思うの。歌いながらアレンジしていきましょう」
雪歩「そっか……千早ちゃんが歌ってくれるんだもんね」
千早「えぇ。その……大船に乗ったつもりで……って言いすぎかしらね」
雪歩「ふふっ……あ」
千早「なに?」
雪歩「ちょ、ちょっと待って……」
千早「どうしたの? 直すところでも?」
雪歩「み、見せると思ったらすごく恥ずかしくなってきちゃった……」
千早「大丈夫よ、笑ったりなんかしないわ」
雪歩「そ、そうだけど……あぅぅ……すごく……なんかすごく恥ずかしいよ……」
五十嵐「あぁ……ボクも、新しい詞とかすごい恥ずかしかったから」
雪歩「プロデューサーさん……」
五十嵐「せっかく作ったんだから」
雪歩「……はい。どうぞ、千早ちゃん」
千早「ありがとう。これでがんばってみましょう」
千早「……」
雪歩「……」
千早「……」コクリ
雪歩「い、いやぁぁ〜!」
千早「えっ? えっ?」
雪歩「ひぃぃぃ! 顔から火が出るほど恥ずかしいですぅ〜!」ジャキン
千早「あ、プロデューサー! 止めてください!」
雪歩「穴掘って埋まってますぅ〜!!」
ずどどどどどどどっ!
五十嵐「えっ?」
ずどどどどどどどっ!
千早「あぁ……どうしましょうか、プロデューサー?」
五十嵐「まあ、気持ちは痛いほどわかるよ」
「くすん……また私……やっちゃったぁ……」
〜♪
「……? プロデューサーさんの曲?」
〜♪
「……千早ちゃんの歌だ」
〜♪
「千早ちゃん……歌ってくれてる……」
「私なんかの詞を……」
〜♪
「やっぱり、上手だなぁ……」
「……雪歩」
「千早ちゃん?」
「すごく素敵な詞だったわ」
「ほ、ほんとう?」
「えぇ、すぐにでも一緒に歌いたいと思う」
「……えへへ」
のそ……
千早「お帰りなさい、萩原さん」
雪歩「えへへ、ありがとう、千早ちゃん」
千早「えぇ、一緒にピアノのアレンジを考えましょう」
雪歩「うん!」
五十嵐(……恥ずかしいなぁ)
皆さん、作詞の経験はおありですか?
私は、けっこうやります。
今回の早歩きも、詞を、ちゃんと作ってあるんですよ。
それを書き込む寸前までいったんですよ。
死ぬほど恥ずかしいんですよ。
本当に恥ずかしい。
でも、そのおかげで今日のオチが浮かんでホッした。
明日も遅刻だ。
詞を載せることまではまだギリギリ抵抗がなかったですけど、
それを、千早が歌うことを想像したら限界だった。
踏みとどまって良かった。
765プロダクション——
〜♪
雪歩「音無さん、すごいです!」
小鳥「私もいちおう、音楽業界に長くいますから」
千早「本当に、昨日の私たちの苦労ななんだったのかと思うぐらい……音楽編集ソフトって、こんなことまでできるんですね」
小鳥「編曲ならむしろDTMを使ったほうが楽器を用意する必要がない分、楽ですからね」
五十嵐「……本当に、すっかり忘れてた……ボクもいちおう勉強してたのに……」
千早「こんなに簡単に自分の曲が作れてしまうんですね……」
小鳥「作業自体は単純だけど、あらかじめ曲があっての作業ですから……それに今回はピアノだけでしたけど、本当ならギターからベース、ドラム、キーボード……全部考えて打ち込んでいく必要があるんですよ」
千早「なるほど……」
小鳥「もし興味があるなら、教えてあげますよ」
千早「あ、でも私……機械は……」
小鳥「作曲したい、でもいいですよ。譜面を持ってきてくれれば打ち込むだけですから」
千早「作曲と言われても……」
小鳥「作曲のプロならすぐそこにいるじゃないですか」
五十嵐「えっ?」
千早「そういえば……そうでしたね」
五十嵐「いや……教えるって言われても……」
小鳥「この曲も五十嵐さんが作ったんですよね」
五十嵐「あ、うん、そう」
小鳥「こう、言ってはあれなんですけど……ちょっと、普通ですよね……syrupっぽくなくて、普通の感じです」
五十嵐「あ、それは、うん……アコギ一本用の曲だから」
小鳥「へぇ……あぁ、でも確かにピアノの曲って感じじゃないですね」
千早「ピアノとギターでは求める音が違いますからね」
小鳥「ピアノの曲をギターで再現するのも、ギターをピアノにするのも、イメージが全然ちがっちゃうんですよね」
五十嵐「そうだね、全然違うね」
小鳥「とりあえず、雪歩ちゃん」
雪歩「はい」
小鳥「これはあくまでも基本だから、あとは千早ちゃんと二人で合わせて、良いところ悪いところ、表現したいところをちゃんと決めてね」
雪歩「は、はいっ!」
小鳥「完成させるのは雪歩ちゃんですからね」
雪歩「わかりましたぁ!」
雪歩「それじゃあ、私はこれから収録ですので、失礼します」
小鳥「はい、いってらっしゃい」
千早「がんばって」
五十嵐「いってらっしゃい」
雪歩「はぁい」
カチャ パタン
千早「あの、プロデューサー」
五十嵐「えっ?」
千早「私はこれから、自主トレなんですけど……その、私の歌を聴いてもらってもいいですか……?」
五十嵐「え、うん」
——蒼い鳥 Vo:如月千早
(超うめぇ……)
(こんなの聴かされて……なんて言えばいいのかな……)
(うまいなぁ……パワーあるし……)
(何歳だっけ……17か……)
(松任谷さんとか……あと、なんだっけ……)
(……)
(ダンスも教えられないし、歌も俺よりうまいし……送り迎えも満足にできないし……)
(俺、意味あんのかな……)
「あの……」
「えっと……」
「……」
「……」
「あの……私……」
「あ、うん」
「買ったんです……その、プロデューサーのアルバム……」
「……えっ?」
「えっと�syrup16g�っていうタイトルの……」
「あ、本当に……?」
「……はい」
「えっと……ありがとう……?」
「あ、どういたしまして……それで……同じ日なんです」
「……なにが?」
「その……私のデビューシングルの発売日と……」
「そうなの?」
「はい……今、聴いてもらった�蒼い鳥�という歌です」
「あぁ……」
「それで……どうでしたか、私の歌は……?」
「あ……うまい、すごくうまいよ。今まで聞いた中でも、すごくうまい」
「そうですか……でも……」
「……?」
「……37位……だったんです。私のCDは……ぜんぜん売れなくて……」
「……」
「春香がその前に出したデビュー曲は24位でした……後の美希と真が17、8位で……」
「……」
「今まで、私の歌を聴いてくれた人はみんな、上手と言ってくれました……でも、やっぱり……歌がうまいだけでは、聴いてもらえないのでしょうか……私は、もっとたくさんの人に、私の歌を聴いてもらいたいのに……」
「……聴いてもらって、どうするの?」
「えっ……?」
「あ、えっと…………37位かぁ……」
「……はい」
「ボクも……シングルの売り上げはそれぐらいだったと思うけど……」
「でも、アルバムは13位くらいでした……」
「それは、最後のアルバムだったから、かな……それまでは50位くらいだったよ」
「その、日本武道館も……音無さんから聞きましたが……」
「それも、最後のライブだからかな……一万……何人かぐらい」
「それでも、一万人もの人が……いえ、それ以上の応募があったと……」
「そう、だね……たしか」
「それだけの人がプロデューサーの歌を聴きにきたんですよね……私は……誰も私の歌を聴いてはくれなくて……」
「そのことで、悩んでいた……って、こと……?」
「……はい」
「……さっきの歌だよね?」
「はい」
「まあ、売れないよね」
「——ッ!」
「」ビクッ
「売れない、ということは、聴いてもらえないということですよね?」
「……うん」
「どうしてですか? どうして私の歌は……」
「歌がうまい人なんて、ほかにいっぱいいるからね」
「でも——! 五十嵐さんは私の歌をさっきは、今まで聴いたことがないくらいって……」
「ボクが売れなかった理由……で、いい?」
「なんですか?」
「共感できないから」
「……共感?」
「なんか、確かなんかであったかもしれないけど、音楽とか、絵とか……売れるっていうのは、共感してくれる人がいっぱいいるってことなんだって」
「私の歌は、共感してもらえないんですか……?」
「一番共感してもらえるのって、愛とか未来で……ボクはそれが書けなかったんだよね。で、それが良いって人が、ボクのファンになってくれたんだと思うんだけど……」
「この歌も、愛を歌っていると思うんですけれど……」
「えっ、そうなの?」
「は、はい……歌詞には……」
「あっ、ホントだ……でもさ、みんなこんな真剣に聴いてくれないからさ」
「……」
「みんなもっと、わかりやすい歌が好きなんだよ、きっと」
「わかりやすい歌……」
「うん、あと、明るい歌」
「……プロデューサー……今、萩原さんと作っている歌は、どう思いますか?」
「……明るいと思うよ。詞も、萩原さんが�こうなりたい�って気持ちがわかる」
「……私は、明るく歌うということが、苦手です」
「……うん」
「でも、萩原さんの想いが詰まった詞を、明るく歌うことが私の役割なんですね」
「そういうことになるね」
「そうすれば、もっと多くの人に私の歌を聴いてもらえる……そうですね?」
「きっとね」
「……わかりました。私、やってみます」
「……うん」
「そういえば、プロデューサーの歌は確かに、明るい内容ではありませんでしたね」
「……あぁ、うん」
「プロデューサーは自分のことを詞に書くしかないって聞いたので……」
「うん」
「私……�さくら�と�イマジネーション�という歌が、好きですよ」
「…………共感した?」
「……そうですね、少しだけ」
「……そっか。ありがとう」
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
Perfect Communication!!
☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆
〜五十嵐のテンションが上がった〜
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