バステト+45「あ、ホルスさんだ」(20)

バステト+45「なにやってるんですか?」

ホルス「……すまない」

バステト+45「え?」

プレイヤー「おーい、終わったかー?」

ホルス+45「あ、はい…」

プレイヤー「お前は期待のエースだからな。頑張って+食わないと」

ホルス「はい…」

ホルス「くそ…まだ頭から離れない……」

俺はバステトを食った。
出た当初はスキル、LS共に最強とされたバステト。初心者にも扱いやすく見た目も可愛いから幅広いユーザーから指示を受けていた。
出た当初は+297もたくさんいた。
しかし同じエジプト神の俺は上級者でないと扱いにくい上に倍率は3倍、スキルはドロ強化火。
イシスは初心者でも土日Dという道があったが俺はせいぜい火パのサブ。息をしていないも同然だった。

しかし2013年1月10日(木)14時のエジプト神の強化、そして俺を使ったゼウスノーコン動画が出回った辺りから俺の評価は変わった。
今まで使いにくいだとかステはいいんだけど…とか言われ続けていたが一転して最強だともて囃された。一気にリセマラランキング上位に登りつめた。

火 ホルス
S ドロップ強化火 ターン15
火ドロップ強化
LS炎隼の猛襲
4属性以上で同時に攻撃する時、攻撃力3倍

水 イシス
S クイックヒール ターン8
自分の回復力×3のHP回復
LS ナイルの恵み
3属性以上で同時に攻撃する時、攻撃力2.5倍

木 バステト
S スプレッドキャッツ ターン15
3Tの間、攻撃が全体攻撃
LS キャットコンビネーション
4コンボ以上で全モンスター攻撃力2.5倍

闇 アヌビス
S 暗黒の呪い ターン25
5Tの間、ダメージを受けると闇属性反撃
LS 冥狼の雄叫び
10コンボ以上で全モンスター攻撃力8倍

光 ラー
S ソーラレーザー ターン14
敵全体に5000の固定ダメ
LS 太陽の威光
5属性以上で同時に攻撃する時、攻撃力5倍

CMが始まりユーザーが増え、初期からいたユーザーはパズル力が高まっていった。

俺はリセマラランキングでは一位を奪取、+を振るのも最優先とまで言われた。
皆こぞって+297にした。気づくと主人のフレンド欄は+297ホルスでいっぱいだった。一方、大量にいたバステトは消えていた。

そして、悲劇は起こった。
主人はホルスフレから切られまいと俺に+を集め、振り始めた。次第に標的はBOX内のモンスターに向けられた。

主人もバステトには愛着があったのだろう、最後まで俺に食わせるのをためらっていた。
だが、俺の+値は既に200を越えていたにも関わらず、297ホルスのフレからは切られることが多くなった。

きっと主人は焦ったのだろう。ついにバステトを餌にすることを決断したのだった。

そのときのことは忘れられない。腹を突かれ、泣き叫び、痛みに悶え許しを乞う…。俺は吐きそうになった。俺は声を聞かないように無心で彼女を貪り続けた。

だが、かくして俺の+値は297になった。

全てが終わったとき、俺は泣いた。古参のヴァルキリーも、新参の狩猟の神も泣いていた。中には吐く者もいた。

なぜ、俺は今になってこんなことを思い出しているのだろうか。

気が付くと、俺がバステトを食らった場所にいた。立場が逆ということを除けば後はみな、同じだった。
風景も匂いも全て同じ。ふと、バステトの匂いが香ったように思えた。

扉が開き、一人の女性が現れた。俺は瞬時に理解し、泣いた。懇願する気はなかった。俺がバステトにしたことをされるだけ、自業自得だ。

???「……すいません」

彼女はそれだけ言うと俺の首元を切り、足を縛り宙吊りにして血を抜き始めた。
薄れ行く意識の中、俺はバステトに会ったら謝ろう、そう思った。

???「……ケプッ」

主人「あ、終わったー?サクヤちゃん」

サクヤ「あ、はいー!終わりましたぁ!」

主人「これから一緒に頑張ろうな!」

サクヤ「はい!」


サクヤ「……ご馳走様」

おわり

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