モバP「にゃん・にゃん・にゃんがやって来る」 (71)

※オリジナル設定あり
※前川さんネタあり
※このSSでは前川さんは高1として設定しています



——女子寮・みくの部屋



ガチャッ



みく「ふにゃあ〜……今日もおつかれにゃあ〜……」


ボスッ


みく「にゃあ……やっぱりふかふかのベッドは最高だにゃあ……。一日の疲れを優しく受け止めてくれるにゃあ……」

みく「——って、そうだった」


カパッ


前川「ふう、これでよし……」

前川「はぁ〜……」


ゴロゴロ


前川「………」チラッ

前川「あと一週間かぁ……」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1372533511

——1ヶ月前



みく「にゃあ!? みくの学校でLIVEをする!?」

P「ああ、そうだ」

のあ「……急な話ね」

P「今度みくの学校で創立記念祭が有るらしくて、理事長直々に打診があったんです」

アーニャ「にゃん・にゃん・にゃん、にですか?」

P「うん、理事長もなかなかのアイドル好きらしくてね。結成したばかりのにゃん×3のLIVEを見て、ティンときたそうだ」

P「みくが在籍してることも知ってて、これも何かの縁だから、と……」

P「幸い、学園祭規模のイベントなら、大掛かりな準備も必要ないし、期間は余裕が有るはずだ」

みく「で、でもウチは女子校だにゃあ……女の娘のアイドルがLIVEをしても……」

P「いや、今の世はまさに大アイドル時代と言っても過言じゃない。老若男女、あらゆる層にアイドル達を受け入れる土壌は有る」

のあ「そうね……現に私もアイドルのファンの一人だから」



みく「にゃあ……でも……」

アーニャ「みく、どうかしましたか?」

P「みく、お前がアイドルだってことは、学校のみんなも知ってることなんだろう?」

みく「それは……そうにゃ。でも、やっぱり知ってる人達の前だと恥ずかしいというか……その……」モジモジ

P「……確かに今回は急な話だ。メンタル的にも、みくのことを考えると、今回は断っても……」

みく「! そ、それはダメにゃ!」


みく(みくのわがままでのあチャンとアーニャチャンの仕事まで潰す訳にはいかないにゃ!)


アーニャ「みく……」


みく「……わかったにゃ、Pチャン。その仕事、やるにゃ。ううん、やらせて欲しいにゃ」

P「そうか! ——よーし、力強い返事を聞いて俺も燃えてきたぞ! 絶対大成功させるからな!」

みく「にゃはは……頼りにしてるにゃあ、Pチャン」



のあ「………」




前川「——ああは言ったものの、やっぱりみんなの前で『みくにゃん』は……」


前川「……うぅ〜!」ジタバタ


前川「……お風呂入って寝よう……」



——次の日の朝・登校中



前川「ふあ……うう、昨日は結局あんまり眠れなかったなぁ……」



???「おはようございます、みくお姉さん」



前川「あ、おはよう、さっちゃん。ごめんね、今日少し出るの遅れちゃって……待った?」

幸子「いいえ! カワイイボクは、人を待たせることはあっても、待ったりすることなんてありません!」

幸子「だからちょうど今来たところです! 気にする必要はありませんよ!」

前川「ふふっ、そっか。……じゃあ、行こっか」




幸子「——みくお姉さん、最近元気がありませんね」

前川「えっ、そ、そうかな?」

幸子「はい。ボクの見立てでは、日を追うごとに元気がなくなっています。ため息の回数も増えています」

前川(うっ、するどい……)

幸子「……なにか悩み事でも有るんですか?」

前川「え、えーと……」

幸子「遠慮しなくていいんですよ! 太陽のごとく明るいボクが、天使の慈愛を持ってお姉さんの悩みを聞き入れましょう! さあ!」

前川「……ありがとう、さっちゃん。でも、大したことじゃないから……」

幸子「……そうですか」シュン

前川「うん……ごめんね」ナデナデ




——学園内・みくの教室



ワイワイ ガヤガヤ


前川「おはよう」

A子「あ、みく、おはよう! ね、ね、もうすぐだねっ、学園祭!」

前川「う、うん。そうだね」

A子「私、絶対最前列でみくのこと応援するからね!」

前川「はりきってるね……」

A子「そりゃそうだよ! もう水面下では、みんないい席を取るために必死なんだから!」

前川「えっ、そんなに?」

A子「アイドルのLIVEなんて催し物、ウチの学校じゃ初めてだし、なにより高峯のあさんが来るからね!」

A子「みくにゃんもアーニちゃんも人気だけどさ、やっぱりクールでミステリアスでカッコイイ大人の女性だもん。女子からの人気高いんだから!」

前川「く、クールでミステリアスで……カッコイイ……」ヒクヒク

A子「——ここだけの話さぁ、実際のあさんってどんな人なの? ちょっとだけ教えて〜」ヒソヒソ

前川「……知らないほうがいいんじゃないかなぁ」

A子「えー、それってどういう——」



キーン コーン カーン コーン


担任「はーい、みなさん席についてー」

A子「あっ、先生来ちゃった。続きはまた後でね!」

前川「あはは……うん」


担任「——えー、朝のHRを始める前に……今日はみなさんに紹介したい方たちが来ています」


エー ナニナニ? ドウイウコト? テンコウセイ?


前川「……? なんだろ」

A子「ねー」



担任「どうぞ。お二人とも、入って来て下さい」



ガラガラガラ



のあ「転校生の高峯のあです」

アーニャ「アナスタシアです」


前川「ブーーーーーーーッ!!」

とりあえずここまで。続きは多分、きっと、今日中に

前川「な、な……!」プルプル

A子「えっ、どゆことどゆこと!? サプライズ!? もー、知ってたなら教えてよ—!」


担任「えー、みなさんも既に御存知かと思いますが、今度の創立祭にアイドルグループ『にゃん・にゃん・にゃん』のみなさんが来てくれます」

担任「そこで、イベントの前に学園のみなさんと交流したいとのことで、今日は特別に生徒として、みなさんと一日を過ごしていただくことになりました」

担任「——生徒、でいいんですよね?」チラッ

のあ「ええ、生徒よ」

担任「……はい。ということですので……前川さん」

前川「は、はい!」ガタッ

担任「お二人のこと、よろしくお願いしますね」

前川「……は、い……」ヒクヒク

担任「それでは、アナスタシアさんはあちらの席に……高峯さんは前川さんの隣の席へどうぞ」

のあ「わかったわ」

アーニャ「ダー」




のあ「——よろしく、前川さん」

前川「な、に、し、に、来たんですかっ!」ヒソヒソ

のあ「あら、いけなかったかしら……?」

前川「あかんわ!」

のあ「みく、自分が曲がっていてよ」

前川「ぐぬぬ……。……はあ、もういいです。でも、ちゃんと大人しくしててくださいよ」

のあ「ええ、安心して……。ところで、私の制服姿、どうかしら……?」

前川「……堂々と着こなし過ぎてて、何も言うことがありません」

のあ「ふっ、褒め言葉として受け取っておくわ……」




「アーニャちゃん肌白ーい! 目も髪もキレーイ!」

アーニャ「スパシーバ、ありがとう」

「ねえねえ、普段はどこの学校に通ってるの?」

「日本語お上手なんですね」

「知らないの? アーニャちゃんは北海道出身で——」



前川「ああ、アーニャちゃん、早速囲まれちゃって……」


A子「た、高峯さん! あの……握手、してもらえませんか……?」オズオズ

のあ「ええ……構わないわ」ギュッ


キャー! ズルーイ! アタシモ アタシモー!

「あのっ、高峯さんって普段はなにをなされてるんですか?」

「趣味とか聞いてもいいですか!?」

「好きなものってありますか?」


のあ「そうね……普段はみくをいじって遊ぶのが好きよ」

前川「んなっ!?」

「え? みくを、いじる……?」

のあ「他にも凛——もがっ」

前川「あははははー! やだなぁー、もう、のあさんはお茶目なんだから!」



「なんだー、冗談かー」

「ですよねー」


のあ「……何をするの、みく」

前川「いいですか? あなたはファンの前では『クールでミステリアスでカッコイイ大人の女性』で通ってるんですから」

前川「普段の奇想天外、荒唐無稽なキャラはやめて下さい。禁止です」

のあ「そう……。でもクールでミステリアスって、どうすればいいのか分からないわ……」

前川「……文末に『それと元素記号』とでも付ければいいんじゃないですか」



「高峰さん、好きな食べ物とかってありますか?」

のあ「そうね……唐揚げが好きよ。それと元素記号」

「みくちゃんやアーニャちゃん以外のアイドルとも仲良かったりするんですか?」

のあ「ええ……特に楓、高垣楓とはよく話すわ。それと元素記号」

「好きな言葉とかってありますか?」

のあ「wish upon a star……星に願いを、なんて。それと元素記号」

前川「冗談です。私が悪かったです。やめてください」




世界史教師「——と、いうことでここから世界四大文明と呼ばれるものが登場していくことになるのですが……えー、高峯さん」

のあ「はい」

世界史教師「世界四大文明と呼ばれるもの、なにかお分かりになりますか?」

のあ「そうね……それに答えるにはまず世界の興りから考える必要が有るわ」

のあ「そもそも、世界、いえ宇宙の始まりというのは——」

前川「座って下さい」




英語教師「それではこの問題を……アナスタシアさん」

アーニャ「ダー」

英語教師「『あなたが私のプロデューサーですか?』この文章を訳してもらえるかしら」

アーニャ「はい」


カキカキ


アーニャ「……出来ました」

英語教師「……うん、そうね。合っているわ。でもロシア語じゃなくて英語で書いてもらえるかしら」

アーニャ「オー……ソーリー」




のあ「みく」

前川「……なんですか、その大荷物は」

アーニャ「今日は水泳の授業は……」

前川「ありません」

のあ「そう……」

アーニャ「残念です……」

前川「二人共どれだけ泳ぎたかったんですか。……あとのあさん、私の目が黒い内はプールでスイカ割りなんてさせませんよ」

とりあえずここまで。残りは帰ってきてから書きます

誰かキツくない制服のあさんを描いて下さいお願いします! みくにゃんがなんでもしますんで!

——学園内中庭・昼休み



前川「——っはあー……」

のあ「どうしたの? みく。疲れているようだけど……」

前川「ええ、ええ、なんででしょうね。なんでこんなに疲れるんでしょうね」

前川「まったく、事務所ばかりか、学校でものあさんに振り回されることになるなんて、思いもしませんでした」

のあ「みく……貴女の運命(さだめ)は私が決めるわ」

アーニャ「宇宙、来ました」

前川「のあさん、あなたの罪を数えて下さい……」



タッタッタッタッ


幸子「ふう……お待たせしました、みくお姉さん」

前川「ああ、さっちゃん。私たちも今来たところだから」

幸子「あれ? この方たちは……?」



幸子「——なるほど、同じアイドルグループの……」

のあ「みく、この娘は……?」

前川「この娘は輿水幸子ちゃんと言って、私の幼馴染なんです」

前川「私がまだ大阪に居た頃、隣に引っ越してきたのがさっちゃんなんです」

前川「と言っても、転勤の多いご家族だったので一緒にいられたのは一年くらいでしたけど……」

のあ「……だけど、またこの学校で再会できたわけね」

前川「はい、再会した時は驚きましたけど……でも、嬉しかったです」

幸子「えへへ……」

アーニャ「幸子、嬉しそうです」



幸子「——んんっ! そうです、さきほどご紹介にあずかりました、このボクが! あの! 輿水・世界一カワイイ・幸子です!」

のあ「………」

前川「あはは……こういう娘だったので、ちゃんとやれてるのか私も心配だったんです」

前川「まあ、根はいい子なのはみんな分かってくれてるみたいで、心配する程でもなかったんですけど……」

幸子「何を案ずることがありますか! ボクのこの五大陸に響き渡るほどのカワイさがあれば、皆に寵愛されるのは必然——ふえ!?」

のあ「………」ギュゥ

幸子「ひょ、ひょっと! いひなりなにほふるんでふか!」

のあ「あら……ごめんなさい、つい……」パッ

幸子「まったくもう! つい、じゃありませんよつい、じゃ!」



幸子「——そういえば、今気づいたんですけど……」

前川「どうしたの?」

幸子「みくお姉さんって、アイドルだったんですね」

前川「え゛」

アーニャ「幸子、『みくにゃん』を知らなかったんですか?」

幸子「はい、知りませんでした」キッパリ

幸子「だから皆さんのことも知りませんでしたし」

のあ「……そういえば、そうね」

前川「自惚れてたつもりはないんですけど、ちょっとショックかも……はは」ズーン



アーニャ「幸子は、テレビとか、あまり見ませんか?」

幸子「少しは見ますけど、アイドルの人たちのことは特に覚えてないです」

幸子「だって覚える必要がありませんから! なぜなら! ボクが! どのアイドルよりもカワイイのは自明の理——ふぎゅ!」

のあ「……面白いわ、この娘……」ムギュゥ

幸子「ま、まひゃやりまひたね!? さっひからなんなんでふか! いふらボクはかわひいからっひぇ!」

のあ「………」グニグニコネコネ

幸子「ふひゅーん! むらでふよ! どれらけかほをこねふりまわされほうと、ぼふのかわいひゃは、まるへぜんぜん! ひゅるがなひんでふよねぇ!」

のあ「……この娘、本当に面白いわ……」

前川「それくらいにしてあげて下さい……」



幸子「やっと、落ち着いてご飯が食べられますよ。まったく、高峯さんは失礼な人ですね!」

のあ「ごめんなさい……」

幸子「いいですよ! 許してあげます! 世界一カワイイボクは、心の広さにおいても世界一ですから!」

のあ「………」サッ

幸子「!」バッ

前川「はいはい、もうそれはいいから」



幸子「——あっ、ところで気になったんですけど」

前川「どうしたの?」

幸子「みくお姉さんがアイドルの時……『みくにゃん』って、どんな感じのアイドルなんですか?」

前川「え゛」

アーニャ「カヴァーイ、可愛いですよ。『みくにゃん』」

アーニャ「こう、にゃん、にゃん、にゃーん、って……」

前川「ちょ、ちょっとアーニャちゃんやめて! 恥ずかしいから!」カァァ

のあ「にゃん、にゃん、にゃーん」

アーニャ「にゃん、にゃん、にゃーん」

前川「コラー!」



幸子(『みくにゃん』……普段のみくお姉さんからは想像もつかないですね……)




前川「二人共、午後の授業はちゃんと大人しくしててくださいよ」

のあ「ええ、わかっているわ……ところでその唐揚げ、美味しそうね」

アーニャ「私は卵焼きがいいです」

みく「知ってますか、二人共。そういうのを脅迫って言うんですよ! 脅迫!」



幸子(でも……お姉さん、元気になったみたいでよかったです)




キーン コーン カーン コーン



前川「——えー、それでは今から創立祭に向けての最後の打ち合わせを始めます」

前川「私達のクラスでは喫茶店を開くことになり、そのための準備を今もみんなで協力して——」

のあ「はい」スッ


前川「……準備をみんなで——」

のあ「大衆の意見には耳を傾けるものよ、みく」

前川「……なんですか、高峯さん」

のあ「メイド喫茶がいいと思います」

前川「……はい?」

のあ「ただの喫茶店ではなく、メイド喫茶にしましょう」



メイド? チョット タノシソウカモー ワタシ イチド メイドフク キテミタカッタンダー


前川「ちょっと、ちょっと待って! 今からそんなもの準備する予算なんて……」

のあ「問題ないわ。衣装はすべて私のポケットマネーで用意するから」

のあ「ただ衣装をメイド服にするだけだから、他に新しく何かを用意する必要もないわ」

前川「いや、でも……」


「私やりた—い♪」

「私もさんせーい」

「異議なーし」


アーニャ「……みく」ジッ

前川「アーニャちゃん……」

前川「………」チラッ

のあ「………」


前川「——はあ、もう分かりましたよ……。何考えてるのか相変わらずわかりませんけど」

前川「反対意見が無いようでしたら、その……メイド喫茶、風の喫茶店にしようと思います。いいですか?」


『はーい!』




——学園正門・下校時間



幸子「——あれ? 高峯さん……それにアナスタシアさんも。みくお姉さんとは一緒じゃないんですか?」

アーニャ「みく、学園祭の打ち合わせがあるって、言ってました」

のあ「……私たちは、先に帰らせてもらって、あなたを待っていたの」

幸子「ボクを、ですか?」

アーニャ「……今度のLIVE、幸子、あなたも見に来てくれませんか?」

幸子「え……?」

のあ「あなたに一度、みくの……『みくにゃん』のステージを見て欲しいの」

幸子「お姉さんの……」

アーニャ「どう、ですか?」


幸子「……いいですよ。元より頼まれるまでもなく、見に行くつもりでしたから」

幸子「みくお姉さんはボクの……友達……ですから」


のあ「……そう。ありがとう……」

幸子「……フフーン! まあボクの——ふぎゃ! まらなにもいっへないじゃないでふか!」

とりあえずここまで。後編へ続く(キートン)

月末ガチャまでに間に合うかにゃあ……

——創立記念祭・当日



ドンッ ドンッ ドンッ……



P「——じゃあ今日のスケジュールの確認です。13:00から衣装合わせとリハーサル、15:00に開場、15:30から公演開始……」

P「リハーサル開始30分前には会場入り出来るようお願いします。いいですか?」

のあ「わかったわ」

アーニャ「はい」

前川「………」

P「みく? どうした?」

前川「あっ、はいっ! 大丈夫です!」

P「……緊張してるのか?」

前川「えっと、まあ、その……少し」

アーニャ「みく……」

のあ「………」

P「……会場入りまでは時間が有る。それまでクラスの出し物に参加するなり、みくも学園祭を楽しんできてくれ」

前川「……はい」

P「それじゃあ、時間までは自由行動なので、解散!」




P「——のあさん。ちょっと」

のあ「なにかしら……?」

P「みくのこと、よろしくお願いします。俺はもう打合せに行かないといけないので……」

のあ「……ええ。わかっているわ」



前川「アーニャちゃんは、時間までどうする?」

アーニャ「ヤー、私、お祭りが見たいです」

前川「そっか。私が学校の中、案内してあげたいけど、クラスの方も手伝いたいし……」

アーニャ「大丈夫です、みく。この前、いろいろ見て回りました。カールタ、地図もあります」

アーニャ「みくは、喫茶店、頑張ってください」

前川「うん、わかった。それじゃ、気をつけてね」

前川「時間に遅れちゃダメだよー!」




ワイワイ ガヤガヤ


アーニャ(人、いっぱいです)

アーニャ(なにから見ようかな……。あっ、あれは……)



アーニャ「——幸子」

幸子「ああ、アナスタシアさん。どうも、こんにちは」

アーニャ「ズドラーストヴィチェ、こんにちは、幸子」

幸子「アナスタシアさん——」

アーニャ「幸子、アーニャでいいですよ」

幸子「あ、はい……。アーニャさん、お一人なんですか?」

アーニャ「はい、リハーサルまで、時間あります。お祭りを見ています」

幸子「そうですか……」

アーニャ「……幸子、良かったら、私とお祭り見ませんか?」

幸子「え、ボクと?」

アーニャ「私、この学校のこと、よく知りません。迷ったら大変です」

アーニャ「幸子に、案内して欲しいです」

幸子「そ、そうですか! それなら仕方がないですね! カワイイボクが、アーニャさんを学園の隅々まで案内しますよ!」

アーニャ「ありがとう、幸子」

幸子「行きますよ、アーニャさん!」

アーニャ「ダー♪」




——学園内・中等部校舎



アーニャ「いろいろなお店、ありますね」

幸子「中等部も、高等部に負けないくらい頑張ってますよ」

アーニャ「幸子のクラスは、なにをしてますか?」

幸子「展示です。だから、特にやることがないんですよ」

アーニャ「展示、ですか」

幸子「ちなみに内容はボク監修の——」

アーニャ「幸子、あれはなんですか?」

幸子「ちょっと、人の話を……ああ、あれは占いですね。タロット占いをしてるみたいです」



???「——セフィラに置かれたのは……『世界』の正位置ね」

生徒「あの、このタロット、全部『世界』なんですけど……」



アーニャ「……変わってますね」

幸子「……まあ、いろんな出し物がありますから」




ドンッ


???「あっ……」ユラッ

幸子「あ、すみません! 大丈夫ですか?」

不健康そうな女の娘「へ、へーき……です……あの……ご、ごめんなさい……」オドオド

幸子「いえ、ボクも不注意でした」

不健康そうな女の娘「……そ、それじゃ……」ペコリ


幸子(ふらふらしてるけど、大丈夫かな……)



不健康そうな女の娘「うん……楽しかったね……」



幸子(? 誰と話してるんでしょうか……)



アーニャ「幸子」

幸子「あっ、はい。なんですか?」

アーニャ「あれ、入りましょう」



[恐 怖 の 館] キャーッ!



幸子「ひっ……お化け屋敷……!」

アーニャ「楽しそうです」ワクワク


幸子「おっ、お化けなんて非科学的なものはボクは信じてませんし!?」

幸子「ましてや、作り物とわかってるのに、怖くもなんともないですけど!?」

幸子「ですが、カワイイボクには、ああいうおどろおどろしい雰囲気はふさわしくないというか——あっ、ねえ、ちょっと! やめて! ひっぱらないで!」




——学園内・中庭



アーニャ「楽しかったですね、幸子」

幸子「お、恐ろしい……まさか、こんにゃくをあんな使い方するなんて……」


アーニャ「ここは……屋台がたくさんありますね」キョロキョロ

幸子「ええ、室内だと売り辛い食べ物とかは、この広場に集まってます」

アーニャ「へー……」キョロキョロ

幸子「目移りするのはいいですけど、後のことを考えないと……」



ポトッ



幸子「——あっ、ちょっと、そこの人!」

アーニャ「どうしました? 幸子」

幸子「すみません、アーニャさん。ちょっと待ってて下さい!」

タッタッタッ



幸子「そこのあなた!」

???「……フヒ……わ、私……?」

幸子「そうです。これ、落としましたよ」スッ

挙動不審な女の娘「こ、これ……私の……お財布……」

幸子「気をつけてくださいね。人混みの中だと、落とし物に気づきにくいですから」

挙動不審な女の娘「ドモ……わざわざ……アリ、ガト……フヒ」

幸子「どういたしまして。それじゃあボクはこれで」



クルッ


挙動不審な女の娘「フヒ?」


幸子「あのー、今日、LIVEがあるって知ってましたかーっ?」


挙動不審な女の娘「ラ、ライブ……ううん……」フルフル


幸子「多分ー、楽しいと思いますーっ!」

幸子「3時からあっちの広場で演るので—、見に行かれてはどうでしょうかーっ?」


挙動不審な女の娘「フヒ……わ、わかった……いく……」コクコク


幸子「それではーっ!」ヒラヒラ

挙動不審な女の娘「バ、バイバイ……」ヒラヒラ





幸子「——ふう、お待たせしました」

アーニャ「お帰りなさい、幸子」

幸子「って、どうしたんですか、その大量の食べ物!」

アーニャ「待っていたら、みんながくれました」

幸子「お地蔵様じゃないんですから……どうするんですか?」

アーニャ「………」ジッ

アーニャ「食べましょう」

幸子「無茶ですよ。ボクたち二人じゃとても食べきれないです」

幸子「仮に食べきれても、このあとリハーサルもあるんですよね? 途中でお腹痛くなっちゃいますよ」

アーニャ「あー……」


???「おーい、アーニャー」



幸子「?」

アーニャ「奈緒、みんな……」

凛「やっほ、遊びに来たよ」

卯月「アーニャちゃん、この娘は?」

アーニャ「幸子です。みくと私の、友達です」

幸子「え?」

卯月「幸子ちゃんかー、よろしくね! 私、島村卯月だよ!」

凛「渋谷凛。アーニャと同じ事務所のアイドルなんだ。よろしくね」

幸子「あっ、はい、こちらこそ……」ペコリ


奈緒「——ところでいいのか? リハーサルは13時からって聞いたけど、そろそろ行ったほうがいいんじゃないか?」

幸子「えっ……12時10分。確かに、そろそろ向かったほうが良さそうですね」

奈緒「だろ? ほら、アーニャ、その焼きそばとか持っててやるよ」



アーニャ「奈緒、ありがとう」

奈緒「ふう、しかし大量だなぁ」

加蓮「いただきまーす、あむ♪」パクッ

奈緒「あ、コラ、加蓮。食べるなら自分で持てよ」

未央「どれどれ……んー、この焼きそばも美味ですなー♪」モグモグ

奈緒「だから自分で持てって! 両手塞がってんだぞ!」


凛「こっちはほっといていいから、行って来なよ」

卯月「アーニャちゃん、私たちも見に行くからね!」

幸子「はい、ではよろしくお願いします。——行きましょう、アーニャさん。案内します」

アーニャ「ダー、よろしく、幸子」



幸子「——ところで、良かったんですか?」

アーニャ「?」

幸子「あの方たちもアイドルなんでしょう? 堂々とお祭りに参加したりして……」



キャー! シブヤ リンチャンダー! ナオチャン カワイー!



アーニャ「あー……」




幸子「……あの、アーニャさん」


ピタッ


アーニャ「シトー? なんですか? 幸子」

幸子「聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

アーニャ「はい、いいですよ」


幸子「その……アーニャさんは、アイドルとしての目標、とかあるんですか?」

アーニャ「はい、ありますよ」

アーニャ「私の目標は、宇宙で一番のアイドルに、なることです」

幸子「う、宇宙で一番ですか。大きく出ましたね……」

幸子「でも、それじゃどうして、みくお姉さんや高峯さんと、一緒にアイドルをしてるんですか?」

アーニャ「?」

幸子「……みんなと一緒じゃ、本当の一番にはなれませんよ」

アーニャ「……んー……それは少し、違いますね」

幸子「どういうことですか?」

アーニャ「幸子は、サズヴェズディエ……あー、星座、わかりますか?」

幸子「星座ですか? もちろん知ってますよ」

アーニャ「サズヴェズディエ、星座は、一つの星じゃ、できないです。たくさんの星が集まって、できます」



アーニャ「星座とは少し違うけど、夏の大三角、知ってますか?」

幸子「ええと、こと座のベガ、わし座ののアルタイル、はくちょう座のデネブ……ですか?」

アーニャ「幸子、詳しいですね。ハラショー」

幸子「フフン! このくらいは常識ですよ! 常識!」


アーニャ「夏の大三角、ベガ、アルタイル、デネブ、三つの星を結んで出来ます」

アーニャ「三つの星は、みんな、必要です。みんな、主役です」


幸子「………」


アーニャ「でも、私たちは、ベガでも、アルタイルでも、デネブでもないです」

アーニャ「アーニャと、みくと、のあさんです」

アーニャ「私たちが、どんな星になるのか、どんな星座を作れるのか。誰も知らないです。わかってないです」

アーニャ「だから……みんなで一番を目指すのは、いいです」

アーニャ「みんなで一番になった時、それぞれが一番輝いていたら、素敵です、ね?」

アーニャ「んん……伝わっているかな……」



幸子「……大丈夫ですよ、アーニャさん。伝わりました」

アーニャ「そうですか?」

幸子「少なくとも、『一番』の価値観が一つじゃないということは、わかりました」

アーニャ「んー、そういうことです。多分」


幸子「——変なことを聞いてしまいましたね。ちょっと急ぎましょうか」

アーニャ「ダー」

——みくの教室



前川「のあさん……私が今、何を言いたいか、わかりますか?」

のあ「なにかしら」

前川「ど、お、し、て! あなたまでメイド役をする必要があるんですか! まったく、私がちょっと席を外した隙に……」

のあ「私が提案したことなのだから、私も給仕に勤しむのが筋ではないかしら……?」

前川「ええ、責任感溢れる姿勢はご立派ですよ。素晴らしいです。でも——」


ガラッ


前川「見てくださいよ! こぉーーーーーーの長蛇の列!」

のあ「……満員御礼ね」

前川「当然ですよっ、あなた仮にもアイドルなんですよ!?」

前川「そのアイドルがメイド服来て店員してるなんて知ったら、みんな押し寄せるに決まってるじゃないですか!」

前川「どうするんですか、このお客さん! 捌ききれませんよ!」

のあ「大丈夫よ、問題ないわ。私がすべて捌ききってみせる」

前川「あなたには出来ても、あなたにはこれからやることがあるでしょーが!」

前川「——こうなったら呼ぶしか無いか……」



ポパピプペ Trrrrrrr....




P「——まったく、連絡がないと思ったら何やってんですかあなたは!」ズルズルズル

のあ「……P……私にはまだメイドとしての責務が……」ズルズルズル

P「まずアイドルとしての責務から果たして下さい!」ズルズルズル



前川「ふう……これでよし」

A子「あははっ、みくも大変だね—。でものあさんって見た目より面白い人なんだね!」

前川「……がっかりした?」

A子「ううん、全然! むしろもっと好きになっちゃったよ!」

「そうそう、いつの間にかみんな『のあさん』って名前で呼ぶようになってたしね」

「印象変わったって言えば、みくもそうだよね」


前川「えっ?」



「うん、のあさんと一緒の時のみくって、普段よりすごい元気だもん」

「正直さ、今まで前川さんと『みくにゃん』ってなんか違うなって思ってたんだよね」

「わかる。なんか、無理してるのかなー、なんてテレビで見てて思ったもん」

「でも今だとしっくりくる、っていうかむしろ『みくにゃん』が自然体?」


前川「そ、そんなこと……」


「あ、勘違いしないでね! 私、元気な前川さんもいいなって思ってるから!」

「このメイド服もさー、こういう衣装って私ら普通着ないじゃん?」

「だから着てると、ちょっと特別になった気分というか、あー、アイドルってこういう気分なのかーって」

「アイドルって、他にもいろんな可愛い衣装着れるよね! ちょっと羨ましいって思ったり!」


前川「……特別、かぁ」




A子「あっ、ごめん! つい話し込んじゃったけど、もうリハーサルの時間近いよ!」

「112時20分! やばっ!」

「ほら、みく! ここは私たちに任せて、行った行った!」


前川「——はっ! そ、そうだね、行ってくる! ごめん、あとお願い!」ダッ


『がんばれー! みくにゃーん!』


前川「うう……」カァァ

>>68訂正


112時20分→12時20分






——舞台裏・LIVE開始前



前川「……ふう」


のあ「……緊張は解けた? みく」

前川「のあさん」

アーニャ「もう、大丈夫ですか?」

前川「……うん。——誰かさんのおかげで、なんか考えすぎてたのがバカバカしくなっちゃった」

のあ「そう……それは良かったわ」


スタッフ「そろそろ本番始まりまーす。みんな、準備の方よろしくお願いしまーす」

のあ「……みく」


スッ


前川「……うん」


カポッ


みく「それじゃ、行っくにゃー!」




キャー! ミクー! ノアサーン! アーニャチャーン!



みく「みんなー、今日は来てくれてありがとにゃー!」

みく「こんなにたくさんの人に来てもらえてみくはとっても嬉しいにゃー!」

みく「最後までみんなのこと、退屈させないよー!」



ミクニャーン!



みく「それじゃ一曲目! みくの曲、行っくよー!」

みく「『おねだり Shall We〜?』!」

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