アニ「さあ、出かけようか」(35)
8巻くらいまでのネタバレを含むのでアニメ派の方は御注意ください。
太陽が顔を隠しはじめ、辺りを真っ赤に染め上げる。
本日の訓練は終了し、私はその真っ赤に染まった景色をぼんやりと眺めていた。
訓練兵となってからはや2年が経ち3年目を迎えている今、私はとても憂鬱だ。
何故かといえば・・・
「おい、こんなところで何やってるんだよ」
来た、この憂鬱の原因が・・・
少しくらい静かに考えさせて欲しいよ、全く。
「・・・別に、ただ外を眺めていただけ。何か用?」
振り返らずに外を眺めたまま素っ気なく返した。
「明日の資材調達の集合時間は朝食の後すぐでいいか?」
はぁ、とわざとらしく溜息をついて
「それでいいよ・・・」
とだけ答えた。
こんなことになったのもあの教官が資材調達を私達に押し付けたせいだ。
何が『それだけ元気があり余っていれば大丈夫だろう』だ。
また溜息が出る。
「まあ観念しろよ。俺を派手に投げ飛ばしていれば目にも留まるだろ」
「あんたが簡単に投げ飛ばされるのが悪い。こんなか弱い乙女に」
実際にはこいつの動きはかなり良くなっている。
そのうち私を追い抜くかもしれない。
私が教えているのだからそれくらいになってもらわなきゃ困る。
「男を軽々と投げ飛ばすか弱い乙女はいねぇよ」
こいつは本当に女の子に対する口の聞き方がなっていないね。
そこで初めて向き直り非難めいた眼差しをエレンにぶつけた。
「・・・あんたねぇ・・・」
「そんなに嫌なら誰かに代わってもらえばいいだろ」
エレンはやれやれという感じで愚痴をこぼす。
それは嫌・・・かも・・・
「別に嫌だとは言ってないよ。・・・じゃあ、明日の朝だね」
そう言って私はこの場から立ち去る。
後ろから、ちゃんと来いよと念を押す声が聞こえたので背を向けたまま手だけ上げて軽くふる。
もちろん行くよ。
少なからず私は明日のことを楽しみにしているんだから。
でもそれを非難する自分もいる。
戦士でもある自分がこんな気持ちを持っていいのかと・・・
最近はあいつと居ると楽しいと思う気持ちが大きくなっているような気がする。
そうなればなるほど反発する自分も大きくなる。
こんな2つの気持がせめぎあっていれば魂も枯れてくるよ。
もっと頭の軽い女だったらこんなに悩まずに済んだのかもね。
夕食の時間も終わりお風呂を済ませベッドに潜り込む。
布団を被りまぶたを閉じる。
またモヤモヤとしたものが首をもたげてくる。
自分はどうあるべきかの堂々巡り。
結局結論など出るわけもなく意識は暗闇の中に消えていった。
外からの明るい日差しに目が覚める。
よかった、どうやら外は晴れているようだ。
寝ぼけ眼でのそのそとベッドから這いずり出て着替えを終えると朝食に向かう。
今日はもう難しく考えるのはやめよう。
これは頼まれた仕事なんだからと戦士の自分に言い聞かせる。
ただ、あいつとお出かけだと思うと少し気分が高揚した。
「ようアニ、おはよう」
突然、後ろから声をかけられた。
ドキッとして後ろを振り向くとエレンが軽く手を上げて近づいてきた。
「・・・おはよう」
そう素っ気なく答えるも
「なんか楽しそうだな。何かいいことでもあったのか?」
と言われ少し顔が緩んでいた事に気付く。
「・・・別に。ただ朝食が楽しみだっただけ」
自分でも苦しい言い訳だと思いアイツの方を見ると
「食いしん坊キャラはサシャだけにしとけよ」
と笑顔で返された。
こんな些細なことだけれど今の私には嬉しく感じた。
こいつと同じように笑顔で返してやったらこいつはどんな反応を見せるのだろうか。
でもそんなことは怖くて出来ないし、戦士としての自分がそれをさせないだろう。
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