【学マス】広「ままならないね」 (23)

p「ままならないですか」

広「うん。もう動けない」

p「それなら休憩を挟んでから、最後までトレーニングを終わらせましょう」

広「…」

p「15分後に再開です」

広「プロデューサーの、鬼」

p「これが好きなんでしょう」

広「うん」


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p「ですが、見違えるほどの成長ですよ。準備運動すらままならなかったあの頃と比べればね」

広「ふふ。今でも、体力の半分を持っていかれる」

p「このままではライブのやり方が限られます。しっかりしてください」

広「プロデューサーは、いつだってわたしを元気にする言葉を知ってる」

p「学習したので」

広「プロデューサーの得意分野」

p「あなたが言うと皮肉に聞こえる。不思議ですね」

広「そんなつもりはないよ」

広「プロデューサーはこうして、休日までわたしの面倒に、費やしてくれる」

p「そういうものですよ」

広「それでも芽の出ないわたしに、苛々しない?」

p「そうすればあなたはもっと喜びますか?」

広「…どうかな」

p「性分ですので。気にせず、励んでください」

間違えて切れた

広「うん」

p「といいますか、それがあなたの強みでしょう?周囲の評価を気にせず自分の道を突き進める度胸こそが」

広「それ、皮肉?」

p「どうでしょうか」

広「…昔のわたしを、知ってる人たちからは、今でも連絡が来るよ。今となってはもう、恨み言に近いかな」

p「鮮烈な才能だったのですね」

広「あなたも、間違ってるとは思う?」

p「何が?」

広「わたしがここにいること」

p「さあ。ただ、逆の立場で考えれば、彼らに同情すべきでしょうね」

広「…そうかな?」

p「そうですよ」

広「わたしの進路なんて、他人事なのに?」

p「…他人事だからかもしれません」

広「わたしの、勝手」

p「…」

広「そう言ったら、プロデューサーはわたしを軽蔑する?」

p「いえ。まさにその通りなので」

広「そうだよね」

p「はい。性癖は人それぞれですし」

広「わたしのことマゾだと思ってる?」

p「どうしたんですか?」

広「プロデューサーは、わたしのことを理解してくれてると思ってたのに」

p「なんのことですか?」

広「辛いことは、楽しい」

p「標語のように言われても」

広「意地悪しないで」

p「嬉しくないんですか?」

広「試行錯誤してる?」

p「辛いことが楽しい人間は、一般的にマゾと分類されるのでは?」

広「それはマゾの人に失礼」

p「それもそうですね」

広「プロデューサーはそんな簡単に、人を分類してしまう人種?」

p「それが、あなたの括りですか?」

広「…混ぜっ返し」

p「そういえば」

広「なに?」

p「まだ一人でも交流が続いているのですか?」

広「…」

広「一人でもって?」

p「はい」

広「…連絡は来るって、さっき言ったけど?」

p「そうですね」

広「何その質問」

p「言葉通りです」

広「…」

広「…そういえば、そろそろ15分経った?」

p「あと7分あります」

広「…プロデューサーは、わたしの答えに何を期待していたの?」

p「期待なんてしてませんよ。そんなもの、あなたにするだけ無駄でしょう?」

広「…」

広「ねえ。プロデューサーは、わたしが間違ってると思うの?」

p「そんなこと、気にするんですか?」

広「わたしは間違ってるのかな?」

p「全然。あなたはあなたの好きなようにすればいい」

p「あなたへ無理強いすることこそが間違いだ」

広「…そうだよね」

広「…わたし、実は、そこまで人とずれてることをしてるつもりはない」

p「はい」

広「苦しい壁を、不可能だって思うような崖を、登り続けて得られるものがある。途中で落ちようが、落ちまいが。結果を、重んじる人は、いるけれど」

p「はい」

広「わたしが求めるものは、そこにはない。わかるでしょ?」

p「まあ、そうですね」

広「…それとは、別の話?」

p「どういう話だと思っているんですか?」

広「…」

p「突き詰めて言えば、あなたの言うことは間違ってないように思えます。理解はあまり得られませんが」

広「どうして怒ってるの?」

p「怒ってませんよ。どうしてそう思うんですか?」

広「…」

p「…おっと。もう時間ですね。トレーニングを再開しましょうか」

広「待って」

p「なんでしょう」

広「もっと話そう。まだ再開したくない」

p「珍しいですね。まあ、構いませんよ」

広「…」

p「…何をそこまで焦っているんですか?」

広「そんな、顔してる?」

p「はい」

広「…今日のプロデューサーのことが、わからないから?」

p「なるほど。では、何をお答えすれば疑問が解消されて、トレーニングに戻れますか?」

広「…」

広「プロデューサーは…」

広「プロデューサー…」

広「…」

広「わたしのこと、嫌い?」

p「はい?どうしてそうなるんですか…それが、質問ですか?」

広「…いや…」

p「…」

p「というか、意外ですね」

広「え?」

p「あなたにとって俺は、好きとか嫌いとか言う関係性上にあるんですね」

広「…どういう意味?」

p「あなたに必要なのは理解者でしょう?期待をして評価する人間ではない」

広「…評価されることは嫌いじゃないよ」

p「現状を把握し、叱咤激励を繰り返し、あなたの望む苦しい道を提供する者こそが、あなたの求める人間だ。違いますか?」

広「…違わ、ないけど」

p「それならむしろ好きでいられても、邪魔じゃないですか?」

広「そんなこと、ないよ?」

p「そうですか?しかし、それこそが、あなたが振り払った人たちだ」

広「…」

広「…わたしの能力が、好きな人たちでしょ?」

p「ええ。ですから、そう言っています」

広「そうでしょ?」

p「あなたは本質的に、自分が作り上げたものに興味がない。それをどれだけ愛する人がいたとしてもね」

広「…」

広「…それ、は、悪い、こと?」

p「あなたが気にすることでは、ありませんよ」

広「…プロデューサー」

p「なんですか?」

広「わたしのこと嫌い?」

広「…」

広「…あれ?」

広「…」

広「…プロデューサー、いない?」

広「夢…?」

広「夢だった」

広「…」

広「はーっ」

広「…それは、そう。プロデューサー、怖かったし」

広「すごい汗…」

広「…」

広「…夢?」

p「もしもし」

広「おはよう…プロデューサー…」

p「…何かありました?」

広「事故とかじゃないから、安心して」

p「…はあ。驚かさないでください。いいですか?段差に気をつけて歩いてくださいね?」

広「わたし、おばあちゃん?」

p「今日のレッスンのことで懸念事項でも?」

広「プロデューサー…」

p「…」

広「プロデューサーは…」

p「…はい」

広「…わたしのこと、好き?」

p「はあ?」

広「こわい」

p「す、すみません…いえ、ですが、何を言ってるんですか?」

広「…」

p「…寝ぼけてます?」

広「わたしのことが嫌いな人はね、たくさんいるよ」

p「…?」

広「お世話になった人とか、元同僚とか、ここにくることで縁を切った人たち」

p「…」

広「どうして怒ってるのか、よくわからなかったけど」

p「…」

広「わたしに問題があったのかもって、今になっては思う」

p「そうでしょうか」

広「わたしは、本当に、アイドルに向いてない」

p「…それはまあ、あなたほど向いてない人もいないでしょうが…だからこそ選んだのでは?」

広「そうじゃない」

p「なにが」

広「…どんどん怖くなる」

p「何がですか?」

広「…だから、ね」

広「…」

広「わたしの中で満足して、ある日ふっと、みんなと、あなたの前から消えてしまう」

広「そういうこと」

p「それでもいいですよ」

広「…今、それでもいいって言った?」

p「はい」

広「いいわけなくない?」

広「だって」

広「ファンの人たち、がっかりするよ?」

広「プロデューサーのことも、裏切ってる」

広「許せないよね?」

広「ずっと自分の夢よりも、わたしを、優先していたのに、勝手に飽きられて」

広「あの」

広「全部、無駄になった気分に、なるんじゃない?」

p「…」

p「ファンが惹かれたのは、あなたが道を歩んできたからだ。あなたが歩く姿をずっと見てきた」

p「結果だけが全てじゃない。俺は…」

p「…」

p「…だから、あなたが、いいんですよ」

広「………」

p「まあしかし…現実問題としては、ファンの間で騒ぎになるでしょうね。そういった面をサポートするのもプロデューサーの仕事です」

広「…」

p「くれぐれも消える前に声をかけてくださいね」

広「…」

p「わかってますか?」

広「…プロデューサーは、本当に、優しいね」

p「そうですか?」

広「…」

広「わたしみたいな脆弱な命にまで」

p「命は平等ですから」

広「ひどい」

p「他に吐き出したいことは?聞きますよ」

広「ううん。もう大丈夫」

p「そうですか」

広「プロデューサー」

p「なんですか?」

広「大好きだよ」

p「俺も嫌いじゃありませんよ。それでは」

広「ふふ…照れ屋さん」

広「…ふ」

広「…」

広「…」

広「…わたし、は」

広「好きでいられるかな?」

広「好きでいたいな」

広「あなたと一緒に、ずっと」

広「…」

広「大好きだよ、本当に」

終わり
光景のライブがクッソ好き

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