【ミリマスSS】朋花様はかしずきたい (10)
朋花のPドルSSです。
初投稿なので、不備があったらすいません。
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諸君、メイドさんは好きか?
ちなみに俺は大好きだ。
慎ましやかでありながら楚々としたあのメイド服も大層魅力的だが、一番の魅力は主人への献身性だと個人的には思っている。
身も心も捧げて、誠心誠意自分に尽くしてくれる存在。
ステレオタイプなメイドさんのイメージに囚われている感は否めないが、昔からそんな女性との生活に憧れてきた。
そんな俺が、メイド服を着た女の子に仕えられて、重圧を感じる日が来るとは・・・
「ご主人様、何か余計なことを考えていませんか~?」
「ひっ」
さて、アイドルのプロデューサーである俺がいるここは、765プロライブ劇場のレストスペースである。
椅子に座りコーヒーを啜る俺の傍らに控えるのは、クラシカルなメイド服に身を包んだ少女。
ちなみに、とびっきりの美少女である。
「このメイドめに、何かお申し付けはありませんか~?」
「いや、特には・・・」
「遠慮はしなくてもいいんですよ~?」
フリルが可愛らしいカチューシャで飾られた少女、天空橋朋花は華やかな笑顔を見せる。
こんなに柔らかな表情に対して圧迫感を感じるなんて、傍からは捻くれ者にしか見えないかもしれないが、普段の俺と朋花の関係を知っていればこの状況の異様さが分かるだろう。
愛に溢れた覇道を突き進むアイドル天空橋朋花と、それを陰ながら支えるプロデューサーである俺。
主人と従者、という表現がしっくりくる関係性だ。
そんな俺達がご主人様とメイドになる、なんてあべこべな状況にあるのは、複雑な・・・いや、単純であるが故に難解な事情によるのである。
「えっと、じゃあミルクをもう一つもらっていいか?」
「はい、かしこまりました~♪」
朋花が懐から差し出すパック入りのミルクを恐る恐る受け取る。
信じられないかもしれないが、今日はなんと朋花の誕生日なのである。
そんな日に給仕をさせるとはなんと極悪非道な暴君かと思われるかもしれないが、そもそもこれは朋花から言い出したことだ。
今日は誕生日だからしてほしいことはあるか、と尋ねたのが今朝のことで、それに対する回答がこれである。
貴方の世話をさせてほしい。
えっ、普通逆じゃね?
あまりに不可解で、了承するのに時間がかかってしまった。
結局、朋花のプレッシャーに押し切られてしまったが。
背後からの視線が気になりつつ、朋花が用意してくれたインスタントコーヒーにミルクを注ぎ込む。
「・・・インスタントコーヒーにはミルクを二つ入れるんですね」
今の状況では、小さなその呟きも意味深に聞こえる。
自意識過剰かもしれないが、いつもより見られているような気がする。
お、俺は何か試されているのか・・・?
「他に用事はありませんか~?」
「・・・特に無いよ」
「それでは、こちらに控えていますね~♪」
俺の困惑を余所に、当の朋花は随分と楽しそうだった。
こんなににこやかなメイドさんに丁寧な給仕をしてもらって、悪い気はしないのは確かなのだが。
「~♪」
いや、抜け目のない朋花のことだ、この笑顔の裏にどんな思惑があるかは分からないのだから、気を抜かないようにしないと。
「せっかくなので、コーヒーのお供にお菓子はいかがですか~?チョコレートのビターとミルク、どちらかをお選びください~♪」
「・・・じゃあ、ミルクで」
「分かりました~・・・・・・プロデューサーさんは、意外と甘党なんですね」
「う、うん」
ほらー!
なんか品定めされてる気がするし!
「もう特に用事も無いから、朋花も適当に休んでおいてくれ」
「はい、お気遣いありがとうございます~、ご主人様♪」
朋花の可愛らしい声で『ご主人様』と呼ばれて、嬉しいやら、むず痒いやら、怖いやらで、やたらと気疲れしてしまう。
「・・・んー!」
凝った肩を解していると、
「あら、ご主人様、肩が凝っているのですか~?」
目聡い朋花にあっさりと気付かれてしまった。
「メイドである私が、解して差し上げましょう~♪」
「い、いやさすがにそれは悪いよ」
「うふふっ♪聖母の申し出を無下にするんですか~?」
君は今メイドだったのでは・・・?
と、反論するとさらに話がややこしくなりそうだったので、ここは大人しく厚意に甘えるとするか。
「・・・じゃあ、お願いしようかな」
「はい、聖母手ずから、癒して差し上げます~♪」
朋花の柔らかい手が俺の肩に置かれる。
「痛ければ、遠慮なく言ってくださいね」
と言いながら朋花は俺の肩を揉んでくれたが、痛みは全く感じなかった。
というか、正直なところ全然効いていない。
この子らしいといえばこの子らしいのだが、揉み方がちょっと優しすぎる。
これだったら、俺がよくマッサージをしてもらっている、同じアイドルの佐竹美奈子の方が・・・
「ご主人様、何か無粋なことを考えていませんか~?」
「ひっ」
自分のすぐ後ろから、尋常でなく冷たいプレッシャーを感じる。
「・・・確かに、私のマッサージはあまり効いていないようですね。それなら・・・」
朋花はそう言いながら、手の位置を少し下にずらしていく。
「解す場所を変えてみましょうか~」
「うっ・・・!」
朋花の細い指が肩甲骨のすぐ横辺りに押し込まれた時、心地良い圧迫感で思わず声が漏れてしまった。
「あら、ここがご主人様には効くようですね~♪」
「おぅふ・・・」
朋花に心も体も解されながら、俺はどんどん危機感を募らせていく。
今の状況は、まずい。
朋花の手の平の上で踊らされているままでは、何だかすごくまずい気がする。
このままでは、取り返しのつかないところまで行ってしまうような・・・
「・・・プロデューサーさんは、何故私がわざわざ誕生日にメイドとして奉仕がしたい、と言い出したのか訝しんでいるようですね」
「そりゃ、まあな」
誕生日なんだから、むしろお世話される側だろう。
与える側ではなく、与えられる側であるべきなんだ。
「大丈夫ですよ。欲しいものは、たくさん頂いていますから」
欲しいもの・・・・・・あっ。
やっぱりこれはまずいかも。
「今日一日で、ご主人様の『ツボ』を余すところなく調べさせていただきます~」
「・・・なんのために?」
「それはもう、然るべき時のために、です~♪」
振り返って目の前にあった朋花の表情は、いつもの通りにこやかで。
華やかに、慈悲深く、堂々と、そして、不敵に微笑んでいた。
おわり
以上です。
HTML化依頼出してきます。
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