千香瑠(ん……もう朝なの───?)
千香瑠「はぁ……昨日もお薬を多めに飲んだのに、あまり眠れなかったわ……」 ムクリ
千香瑠(なんだか胸も張って気持ち悪い。シャワーでも浴びようかしら) シュル
千香瑠「……えっ!? うそ、どうして……!?」
瑤「千香瑠、おはよう。今日はゆっくりだね」
恋花「あたしより遅い千香瑠なんて珍しいな~、なんかあったの?」
藍「ふぁ……おはようちかる。今日はお寝坊さん?」
千香瑠「おはようございます皆さん。最近少し寝不足で……あら、一葉ちゃんは?」
瑤「一葉は朝早くから会議に呼び出されてる。だから午前の訓練は、自主練習だって」
恋花「つまり! これはもうサボって羽を伸ばすチャンスってことよ!」
千香瑠「うーん、少しぐらいは訓練したほうがいいと思うのだけれど……」
藍「らんね、ちかるのクッキー食べたい。また作ってー」
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千香瑠(今日は一葉ちゃんがいない分、いつもよりのんびりしてるわね。でも、たまにはこんな日も悪くはないかしら)
恋花「ところで千香瑠、あんたまた大きくなったんじゃない?」 ジーッ
千香瑠「えっ!? さ、さすがね恋花さん。実は下着の下にパッドを挟んでるの、あまり見ないでくれるかしら……」 サッ
恋花「はぁぁ~!? 元からデカいくせにパッドなんか付ける必要ある? あたしに対する当てつけか!」 ガバッ
千香瑠「だ、ダメッ!」 ブン
恋花「ぐへっ」 チーン
瑤「恋花……惜しい人を亡くした」
藍「ちかるー、クッキーまだー? あれ……なんかちかる、甘い匂いがするね」 スンスン
千香瑠「きゃっ!? 急に抱きついちゃダメよ藍ちゃん、お菓子ならあとで作ってあげるから……!」
恋花「隙あり! おっ、やっぱり前より大きくなってんじゃん!」 モギュゥ
千香瑠「ひぁっ!? 恋花さん、違うの……本当にダメっ……!」
恋花「なーにが違うって言うのよ~? こんな牛みたいなの見せつけちゃってさぁ、牛乳でも絞る……つも、り……」 ジワ
恋花「え、なにこの感触───へっ!?」
千香瑠「本当に……やめて下さい……」 ポロポロ
藍「れんか、ちかる泣かせたー。ごめんなさいしないとかずはに叱られるー」
瑤「恋花、少しやりすぎ」
恋花「ち、違う違う! ちょっとこれは一大事というか、ああもうヘルヴォル集合! いまから緊急会議よ!」
瑤「千香瑠、そんなことが……」
千香瑠「ごめんなさい、いままで黙ってて……」
恋花「その、母乳が出るようになったってのはわかったわ。千香瑠はなにか心当たりとかあったりする?」
千香瑠「心当たり……?」
恋花「いやその、千香瑠っていつのまに処っ……ゆ、ユニコーンに会えなくなっちゃうようなことしてたのかなーってさ! あっはっは!」
千香瑠「そっ……そんなことしたことありません! 不潔です恋花さん!」 カァァ
瑤「恋花、もう少し言葉を選んで」 スパァン
恋花「いやいやだってさ! 母乳が出るってことは妊娠してるってことじゃんか!」
千香瑠「───っ! 妊、娠……」 ドクン
藍「ちかる、お母さんになるの?」
瑤「千香瑠、わたし達の間に隠し事はいらない。相手は誰?」
千香瑠「そんな……わたし、殿方とそういうことなんてしたことありません。妊娠だなんてなにかの間違いよ……!」
恋花「うーん、男とそーいうことしたことがないってことはさー」
恋花「……一葉、実は生えてた?」
千香瑠「一葉ちゃんは女の子よ! 勝手に汚いモノを生やさないで頂戴!」
瑤「だけど、もし妊娠が本当ならこのままだといけないね。身重の千香瑠を出撃なんてさせるワケにはいかない」
恋花「それにエレンスゲの上層部にでも目を付けられたら、なにをされるかわかったもんじゃ───」
教導官「話は聞かせてもらったぞ。妊娠とはめでたいことだな、芹沢千香瑠」 ガチャ
千香瑠「きょ、教導官殿……!」
恋花「チッ、タイミングの悪い……! あんた、千香瑠になにをさせようっていうのよ!」
瑤「……返答次第では……」
教導官「人聞きの悪い。上官が部下の懐妊を祝うことがそんなに不服か?」
千香瑠「申し訳ございません。ご命令ならば、わたしは従いますから……」
藍「ダメだよちかる、お母さんになるんでしょ。らんが絶対守ってあげるから」
教導官「まったく、血の気の多い連中だ。聞けヘルヴォルども、上層部にはわたしが隠し通してやろう」
瑤「あなた個人が危険を犯してまで、そんなことをするメリットがない。目的を答えて」
恋花「へー、それはありがたいことで。で? 見返りはなに?」
教導官「ふん、見返りときたか。では無事に赤子が生まれた場合、その子に名前でも付けさせてもらおうか」 ニィ
恋花「へぇ、名前ねえ。ふーん、なるほど……」
恋花「んっ?」
教導官「ヘルヴォルどもよ、貴様らはエレンスゲの貴重な戦力だ。子育てに割く時間など与えん、出撃中でも赤ん坊はわたしが飼育してやろう」
瑤「……うん?」
教導官「ふっ……思い返せばマディックの頃からの投薬実験で我が子を抱くのは絶望的と言われてきたが、まさかこんな機会が訪れるとはな」
千香瑠「あ、あの……教導官殿?」
教導官「芹沢千香瑠。健康状態を保ち、元気な赤子を産むがいい。優秀なリリィの血が受け継がれば、我が校がヒュージを殲滅する日も間もなくだ」
恋花「」
千香瑠「教導官殿、行っちゃいましたね……」
恋花「あたし、散々あいつに怒られてきたけどさ~……今日が一番怖かったわ。誰あれ? あんな優しい表情見たことないわ!」
瑤「教導官殿も、やはり一人の女性だったということ」
藍「なんだかわからないけど、良かったねちかる」
千香瑠「なんだかどんどん大ごとになっていくような……」
瑤「千香瑠にとっては大ごと。もし妊娠していたとして……千香瑠はその赤ちゃん、産みたい?」
千香瑠「っ……それ、は……」
恋花「確かにねー。父親が誰かもわからないなんて嫌だろうし、というか本当にその子の父親って人間?」
千香瑠「ひっ……」
瑤「恋花、千香瑠の気持ちも少しは───」
恋花「あたしは最悪の可能性も考えろって言ってるだけよ。ヒュージなんて化け物がいるこのご時世、なにが起こるかなんてわからないでしょ?」
千香瑠(もし生まれてきた子が人間じゃなかったとして、それでもわたしは……) チラ
藍「?」
瑤「千香瑠。赤ちゃんに罪はないけど、産まないって選択肢が悪いだなんて言わない。だから千香瑠が一番幸せになれる方を選んでほしい」
千香瑠「わたしが、幸せになれる未来……」
─────────
千香瑠『ちはるーっ! そんなに走っちゃったら、転んで擦りむいちゃうわよーっ!』
千葉瑠『だいじょーぶだよ、ちかおかーさん! ねえ藍おねーちゃん、ちはると競争しよ!』
藍『うん。ちはるが相手でも、手加減しないから』
恋花『まーったく、いったい誰に似てあんなイノシシに育っちゃったんだか?』
千葉瑠『あいたっ、こけちゃった……あははっ、芝生の上気持ちいーね!』
瑤『千葉瑠、そんなにおへそを晒さない。風邪引くよ』
千葉瑠『みてみて! こんなに大きい茸見つけた!』
藍『らんが見つけた茸なんて金ピカ。すごい?』
千香瑠『うふふ、食べられそうなものは今日の晩御飯にしちゃいましょうか』
一葉『おや、それは期待が膨らみますね』
千葉瑠『かずおかーさん!』 ギュゥ
一葉『ですが無茶はいけませんよ千香瑠様。お腹にいる二人目の子になにかあれば大変ですからね』 ナデ
千香瑠『一葉ちゃん……あなたがわたしを選んでくれて本当に───』
─────────
千香瑠「……ます……」 ボソ
瑤「? 千香瑠、いまなんて───」
千香瑠「わたし、絶対にこの子を産みますっ……! 立派に育ててみせますからっ……!」 ポロポロ
恋花「いったいどういう心境の変化なの!?」
藍「やったー、かずはが帰ってきたらみんなでお祝いだー」
恋花「しっかしねえ……お母さんになるって大変なことよ?」
瑤「妊娠したら、酸っぱいものが食べたくなるって聞いたことがある。千香瑠、なにか欲しいものはない?」
藍「ちかる、らんのレモンジュース飲みたい?」 チュー
千香瑠「わからないわ、いまのところは特に……」
一葉「相澤一葉、ただいま戻りました! 皆さんお揃いのようですね!」 ガチャ
恋花「おっ! 一葉、丁度いいタイミングじゃん!」
一葉「はい? 恋花様、わたしが留守の間になにかあったのですか?」
瑤「一葉、落ち着いて聞いて。千香瑠がお母さんになるよ」
一葉「なるほど! そうなんですね!」
一葉「えっ」
藍「もうおっぱいからぼにゅーが出るんだってー」
千香瑠「わたし……この子を産むわ、一葉ちゃん!」
一葉「」
一葉「」
一葉「……なるほど、事情は把握できました」
恋花「あたしたちはもう覚悟できてる。あとは一葉、あんただけよ」
瑤「できれば一葉にも、千香瑠の意志を汲んでほしい」
藍「らんも赤ちゃんのお世話、お手伝いするね」
千香瑠「わたし……ヘルヴォルの皆さんや一葉ちゃん、それにお腹の子と一緒ならどんな困難でも乗り越えられそうなの!」
一葉「ええと……恋花様達の主張はわかりました。その前に千香瑠様、今朝のメディカルデータを見せてもらってもよろしいですか?」
千香瑠「? わかったわ一葉ちゃん。ふふっ、もうわたしだけの身体じゃないものね」 ピピッ
一葉「ふむ……ああ、やはりそういうことですか」 ホッ
恋花「なになに? なんかわかったの?」
一葉「ご安心ください! 千香瑠様は妊娠してません!」
千香瑠「」
千香瑠「」
瑤「千香瑠! 気をしっかり!」
恋花「に、妊娠してないってどういうことよ! 母乳が出るんだから、つまりそういうことでしょ!?」
一葉「いいですか皆さん。一般的に女性は妊娠すると、出産までに女性ホルモンと乳汁ホルモンがゆっくりと増えていきます」
一葉「ですが千香瑠様の女性ホルモンは正常値。なんらかの原因で乳汁ホルモンだけが増えてしまっている状態なんです」
恋花「それじゃあ、なんで千香瑠は突然母乳が出るようになったのよ?」
一葉「データと一緒に、千香瑠様の飲んでいるお薬も確認させていただきました。中には効きすぎると思わぬ副作用が現れるお薬も含まれていたようです」
千香瑠「そ、そういえば……」 ハッ
─────────
千香瑠『はぁ……昨日もお薬を多めに飲んだのに、あまり眠れなかったわ……』
─────────
一葉「そもそも妊娠初期に母乳が出るワケがないでしょう?」 フッ
恋花「言葉を選びなさいよリーダー!」
千香瑠「うふ……ふふふっ……そうよね一葉ちゃん、そんなことあるわけないわよね……」 ガク
瑤「恋花、この千香瑠はもうダメ。心に致命傷を負いすぎた」
一葉「とにかく、お薬が原因なら量を減らせば一月半ほどで元に戻りますよ。念のため一緒に精密検査も受けて下さいね?」
千香瑠「ありがとう一葉ちゃん、そうするわね……」 フラフラ
藍「ちかる、元気だして。らんも付いて行ってあげるから」 トテテ
恋花「まあ千香瑠の勘違いってだけで良かったわ。これで一件落着、めでたしめでたしってことで!」
瑤「恋花。この一件で、一人だけめでたくなかった人がいる」
恋花「え? 誰よそれ。もう全部解決したじゃん?」 クル
教導官「ほう、つまり貴様はなにか? つまらない誤報で上官の仕事を増やすのは問題ではないと?」 ゴゴゴ
恋花「げっ……!? いやいや、あたしらも勘違いしてたし? これ誰も悪くないから!」
瑤「恋花、これはもう予定調和。是非もなし」
恋花「そんな理不尽な……!」
教導官「そこになおれ貴様らッ! わたしがその腐った態度を叩きなおしてやる!!」
恋花「なんでこうなるのさぁぁぁ~!?」
おわり
以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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