竈門炭治郎「俺も……兄ちゃんも、お前が大好きだぞ」竈門禰?豆子「むー」 (19)

鬼滅の刃第二期、遊廓編放送決定おめでとうございます! いよいよですね。楽しみです。
ちなみに本作品は遊廓編に関連するSSではないのでどうぞご安心してお楽しみください。

それでは以下、本編です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1631540724

「なあ、炭治郎」
「ん? どうした、善逸」

遠方の任務地に向かう道すがら、日が暮れる前に中継地点である藤の花の家紋の家を訪れた俺たちはそこで休ませて貰っていた。

先程美味しい夕食を提供して貰い、お風呂をお借りしたのであとはぐっすり寝て英気を養うつもりだった俺の隣の布団では既に満腹の伊之助がイビキをかいて寝ている。

「禰?豆子ちゃんのことなんだけど」
「禰?豆子がどうかしたか?」
「教えて欲しいことがあるんだ」

普段情けない善逸が真面目な顔をしている。
見ればなんと布団の上で正座までしている。
それに気づいた俺は布団から身を起こして居住まいを正し、同じく正座をして本題を促した。

「禰?豆子の何が知りたいんだ?」
「禰?豆子ちゃんはどんな男が好きなんだ?」

禰?豆子が好きな男の傾向。なんだそれは。
ちょっと意味不明だが、善逸は真剣らしい。
ならば俺は友人としてきちんと答えよう。

すみません
禰?豆子の名前が文字化けしてましたね
もちろん、「ねずこ」と読みます
禰豆子と書けば読めますでしょうか?
以下、本編です

「禰豆子は基本的に働き者だ」

鬼となる前、禰豆子は弟や妹たちの面倒をよくみてくれて、母さんの手伝いをよくしてくれる子だった。父さんが病死してから炭焼きの仕事を継いだ俺の分も禰豆子は働いた。

「だから同じように働き者が好きだろう」
「わかった」

そう話すと善逸はおもむろに立ち上がって刀を手に取り、部屋から出ようとした。

「善逸? どこに行くんだ?」
「ちょっと鬼を切ってくる」
「鬼? 近くに鬼の気配がするのか?」
「そうじゃないけど、働かないと」

急に勤労意欲が増した様子の善逸に困惑する。昼間移動している時は任務地に行きたくないだとか早く藤の花の家紋の家で休もうだとか騒いでいたのに、どんな心境の変化だろう。

「今日はもう遅いから休もう、善逸」
「禰豆子ちゃんに嫌われないか?」

禰豆子? なんで禰豆子が出てくるんだ?

「よくわからないけど、たぶん禰豆子は善逸のこと嫌いじゃないと思うぞ」
「じゃあ、好きってことか?」

再び正座した善逸と向き合う。真剣な目だ。

「善逸。俺はたしかに禰豆子の兄ちゃんだけど、禰豆子の気持ちは禰豆子にしかわからない。だから好きかどうかまではわからない」
「そうか……複雑なんだな」

善逸は何やら考える素振りをして、ふと。

「じゃあ、禰豆子ちゃんに訊いてくれ」
「え?」
「お願いだ、炭治郎」

善逸が頭を下げてきた。金色の珍しく髪がチカチカして眩しい。禰豆子の気持ち。
しかし、鬼となった禰豆子がきちんと答えられるだろうか。ともあれ、試してみよう。

「禰豆子」

背負い籠に声を掛けると、禰豆子は自分で蓋を開いてのそのそ這い出てきた。

「禰豆子。善逸こと、好きか?」
「む?」

やはり、今の禰豆子には難しいらしい。
キョトンと首を傾げた。我が妹ながらとても可愛らしい仕草だ。善逸の鼻息が荒くなる。

「炭治郎」
「なんだ、善逸」
「禰豆子ちゃんは可愛いな」
「ああ。本当にうちの禰豆子は可愛い」

しみじみ禰豆子を愛でても、話は進まない。

「禰豆子。善逸のこと、わかるな?」
「む」

こくんと頷く仕草。認識している。可愛い。

「た、炭治郎。俺もう死んでもいい」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ」
「だ、だって禰豆子ちゃんがが俺のことをわかってる。これはつまり彼女の目には俺しか見えてないってことだよね!?」

善逸がわけのわからない理屈を展開し始めたので隣でイビキをかいている伊之助のことを指差して、同じ質問をしてみた。

「禰豆子。伊之助のことはわかるか?」
「む」
「チキショー! この裸猪! お前さえ居なきゃ禰豆子ちゃんは俺だけを見てくれるのに!」
「お、落ちつけ、善逸!」

禰豆子が伊之助のことも認識していると知った善逸が刀を抜いて亡き者にしようとしたので慌てて俺は羽交締めにして止めた。

「止めるな、炭治郎! 男にはなあ! やらないといけない時があるんだ!!」
「いいからひとまず刀を仕舞え善逸!!」

暫く説得して、ようやく刀を納めてくれた。

「命拾いしたな……裸猪」
「ぐふっふっ……ピカピカのどんぐり」

伊之助は夢の中でどんぐり拾いをしているらしく、起きなかった。人一倍敵意に敏感な伊之助が起きなかったのは善逸を脅威と看做していないのか、はたまた俺たちの信頼関係の表れなのか。判断はつかない。

「炭治郎、白黒つけよう」
「え? 白黒って?」
「禰豆子ちゃんが俺とこの裸猪、どっちのほうが好きなのか、はっきりさせるんだよ」

善逸の目が据わっている。危険な匂いだ。

「ひ、ひとまず今日はもう寝ないか?」
「こんなモヤモヤした気分で寝れるわけないだろ!? 朝まで一睡出来なくて鬼の前で居眠りしたらどうするんだよ!?」

善逸は寝ていたほうが強いから、むしろそのほうが心強くすらあるのだが、本人にはそんな自覚がないので言っても無駄だろう。

「わかった。どっちが好きなのか禰豆子に訊けばいいんだな?」
「ああ」
「しかし、善逸」
「なんだよ、炭治郎」
「それを知ってどうするんだ?」
「答えが俺だったらぐっすり眠れる」
「もしも答えが伊之助だったら?」

善逸は血走った目をして己の覚悟を告げた。

「そんときはこの裸猪と決着をつけるだけだ」

バチバチと紫電を身に纏う善逸は、本気だ。

「善逸、刀は無しだからな」
「ああ。善処する」
「柄に手をかけるな。刀を寄越せ」

ひとまず刀を取り上げてから、改めて禰豆子に質問をすることに。緊張の瞬間だ。
何があってもいいように身構えつつ訪ねた。

「禰豆子は誰が1番好きなんだ?」
「む!」

びしっと指差したのは、竈門炭治郎だった。

「お、俺……?」
「むー!」
「っ……禰豆子。ありがとな、禰豆子」

力強く頷く禰豆子に、思わず、涙が溢れた。

「俺も……兄ちゃんも、お前が大好きだぞ」
「むー」

優しく禰豆子を抱きしめて、俺は泣いた。
家長になってから俺は弟や妹たちの前で泣かなくなった。母さんにも涙は見せなかった。

ずっと、俺が……しっかりしないとって。

でも、俺は守れなかった。禰豆子しか、守れなかった。禰豆子だけは、喪わなかった。
唯一遺った家族が自分を好いてくれている。
こんなに嬉しいことはない。愛しさが募る。

「ありがとう禰豆子。ありがとな、禰豆子」
「うー」

みっともなく泣きじゃくる情けない兄の頭を禰豆子は鬼の爪で傷つけないように優しく、優しく撫でてくれた。優しい子だ。優しい妹だ。兄ちゃんは、そんなお前が、誇らしい。

「炭治郎……」
「ああ……すまない、善逸。つい感極まってしまって。禰豆子は本当に出来た妹だよ」
「ああ。よかったな……炭治郎」

ゴトンッと、目の前に俺の刀が転がった。

「え?」
「抜け、炭治郎」
「え? え?」

いつの間にか、禰豆子を抱きしめていた俺の手から取り上げていた善逸の刀がなくなっていて、持ち主の腰に戻っていた。まずい。

「ま、待て、善逸! 話し合おう!!」
「炭治郎……白黒つけるぞ。いざ、尋常に」

バチバチと紫電を纏う善逸は止められない。

「む?」
「禰豆子、下がれ!」

善逸のただならぬ雰囲気に困惑する禰豆子を下がらせて、俺は仕方なく刀を拾った。
しかし、抜けるのか。正当防衛だとしても。
俺が、善逸を、仲間を。本当に斬れるのか?

「善逸……頼む。考え直してくれ」
「炭治郎」

シューッと雷の呼吸を吐き出しながら、善逸は壱ノ型の構えを取り、言葉を紡いだ。

「躊躇うな」
「そんな……」
「俺は……鬼だ」

鬼と化した善逸。だからと言って、俺が。

「そして炭治郎。俺にとってはお前も鬼だ。憎たらしい鬼いちゃんだ」
「善逸……頭と、もう善悪の区別も……」
「禰豆子ちゃんを返せ、炭治郎」

返せ? 返せだと? 俺の唯一の家族を?

「禰豆子は渡さない! たとえ仲間であるお前を斬ろうとも! 俺は! 俺は禰豆子を絶対に渡さない!! そのためなら俺は……善逸、お前を斬る!!」

2人同時に刀を抜く。もう後には引けない。

「雷の呼吸……壱ノ型」
「ヒノカミ、神楽……」

速さでは敵わない。返す刀で、仕留める。

「霹靂……!」

刹那。激しく明滅した善逸が神速へと達した。

「一閃……!」

人間はかくも速く動けるものなのか。
これまで見た善逸の壱ノ型も速かったが、これは次元が違う。音を置き去りに鬼を滅する刃が迫り来る。

「幻日虹!」

ギリギリで回避する。しかし、善逸は惑わされない。眼ではなく耳で敵を知覚している善逸に視覚的な幻惑を通用しない。刃が閃く。

「二連!」
「ぐっ!」

反復横跳びのように機動転換する善逸の重い刃を受け止めて衝撃で弾け飛ぶ。すかさず。

「三連!」
「がっ!」

一撃一撃が重い。壁を、屋根を、障子を突き破り、縦横無尽に善逸の刃が四方八方から襲いかかる。防御を。致命傷を防がないと。

「四連! 五連!」
「ぎっ! うっ!」

駄目だ。もう防げない。次は、斬られる。

「炭治郎!!」
「善逸ッ!!」

涙が止まらない。なんで、どうして。
何故俺たちはこんな無意味な死闘を。
もう嫌だ。俺は善逸を斬りたくない。

「善逸……もういい」
「炭、治郎……?」

俺は刀を捨てた。そして善逸に全て任せた。

「禰豆子のこと、頼んだぞ」
「炭治郎!!」

俺はもういい。充分幸せだった。潔く死ぬ。

「らっしゃー!! ちげぇだろ、炭治郎!!」
「い、伊之助!?」
「バリ覚醒! 待たせたな、子分そのいち!」

俺は生かされた。嘴平伊之助に、叱られた。

「なに簡単に諦めてやがる!! ギョロギョロ目ん玉に言われたことを思い出せ!!」

心を燃やせ。

「っ……煉獄、さん……!」

煉獄さん。畜生。俺はなんて、馬鹿なんだ。

「つまらねえ死に方すんじゃねぇ!!」
「すまない……俺が全部間違っていた」

胸を張って生きよう。最期のその瞬間まで。

「ふん。ようやく起きたか……裸猪」
「門逸……てめぇ、鬼になりやがったな」
「鬼にだってなるさ! あんな仲睦まじい兄妹仲を見せられたらな! 心はズタボロで穴だらけだ!!」

伊之助はきっと、善逸の気配が鬼に変わったから飛び起きたのだろう。さすがというべきか瞬時に状況を把握してくれた。

「なるほどな、だいたいわかった!」
「伊之助、どうするつもりだ?」
「俺は躊躇なくあの鬼を斬るぜ!!」
「ま、待ってくれ! 善逸は乱心しただけで、どうにか正気に戻せないか?」

斬る以外の道を求める俺に、あっさりと。

「方法ならあるぜ」
「へ? ほ、本当か伊之助!?」
「どうしても門逸のことを斬りたくないってんなら、俺に任せろ。おい、子分そのさん!」

自信満々な伊之助に不安を隠せないでいると、禰豆子が駆け寄って何やら手渡した。

「おう、ご苦労」
「むー!」

まるで頑張ってとでも言うように唸って、禰豆子はまた後方に避難した。

「伊之助、それは……?」
「お前は門逸の相手をしてろ」

詳しく打ち合わせをしている暇はない。
霹靂一閃の回避でヒノカミ神楽を連発しすぎた反動が間もなくやってくる。そうしたら俺は暫く動けなくなるだろう。だから、今。

今、やらないと。走れ! 相打ちになっても!

「善逸!!」
「炭治郎!!」

助走をつけた居合抜きをされる前に距離を詰めて鍔迫り合いに持っていくのが俺の役目だ。
後は伊之助がなんとかしてくれると信じる。

「善逸! どうして鬼なんかになった!?」
「お前に! 俺の気持ちはわからない!!」
「ああ、わからない! だから教えてくれ!」

バチバチ紫電が伝わり痺れる。痛い。辛い。

「俺はこれまでずっと独りだった!」
「善逸……」
「そんな俺にやっと大切なものが……守りたいと思える大切な人が出来たんだ!!」
「善逸……それはまさか」
「だから禰豆子ちゃんを俺に寄越せ!!」

別に取り上げるつもりはない。だけど俺は。

「鬼になったお前に禰豆子はやれない!」
「炭治郎ぉおおおおおおおおっ!!!!」
「人間に戻るまで禰豆子は渡さない!!」

善逸。正気に戻れ。お前に鬼は似合わない。

「よくやった子分そのいち!」
「伊之助! あとは頼んだ!」

時間稼ぎはした。あとは全部伊之助に託す。

「頼まれてやるよ! 俺は親分だからな!」

いつの間にか背後に回っていた伊之助に気づいた善逸振り向く前に、伊之助は姿勢を低く落とし、まるでツバメのように掬い上げる。

ずぼっ!

「ぐあっ!?」
「要するに穴を塞げばいいんだろ?」
「なに、を……? 何をした裸猪!?」
「フハッ! つやつやのどんぐりを門逸の肛門にくれてやったぜぇえええええっ!!!!」

さすが親分。獣の掟に反した罪は、重い。

「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「んあっ!? なにこれ!? なんで俺、起きたら尻穴にどんぐり埋め込まれてんの!?」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

善逸は人間に戻った。だって、尻穴で戯れるのは人間だけだから。人間の証だから。
あとは冬眠前のクマが尻穴に栓するくらい。

ともあれ善逸の心の穴は物理的に埋まった。

「ひぐっ……ひぐっ」
「善逸……」
「炭治郎……俺もうお嫁にいけないよぉ」

尻を押さえて泣きじゃくる善逸は情けなくてまさに生き恥を晒していて、なんとも不憫だったので俺は禰豆子に判断して貰うことにした。

「禰豆子……善逸のこと貰ってくれるか?」
「む?」

禰豆子は首を傾げて暫し考えてから不意に。

「禰?豆子……?」
「ん? なんだ、子分そのさん」
「ね、禰?豆子ちゃん……?」
「むー!」

俺たちみんなの手をひとつに重ねて、満足そうに唸った。我が妹ながら、欲張りだな。
俺たちはみんな纏めて禰豆子の家族らしい。
禰豆子。お前は俺たちにとって、太陽だよ。
鬼でも。禰豆子は俺たちを照らしてくれる。

その優しさが温かさが、俺は誇らしかった。


【鬼滅のやいフハッ! 糞の呼吸 伍ノ型】


FIN

最後も禰豆子が文字化けしてましたね
読みづらくしてしまってすみませんでした
最後までお読みくださりありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 19:13:20   ID: S:9is2S6

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