勇者「魔王を倒しに行く」 (6)
私は勇者。
何の変哲もない村で生まれ育ったが、幼い頃から魔王についての話をよく聞かされ、植え付けられるようにいつも私の心のなかで魔王に対する嫌悪感を抱いていた。魔王は悪いやつなのだ、とか、魔王は倒さなければならないのだ、とか、そんなふうに。食事をするときも、外に出て話をするときも、皆私にする話は魔王のことだったが、それが当たり前だと思っていた私は魔王を倒すこと一筋に考えて生き、気がつけば勇敢に魔物と戦い、村を立派に守れるほどの騎士になっていた。私も立派になったのだな。
ある日、村長は私に言った。「魔王を倒してこい」と。それは突然のことだった。私は拳を握った。やっときたのだな。幼い頃からの努力が実ったようだ、このために生きてきたのだ。
「はい、必ずや。魔王を倒して参ります」
周りから歓声が上がる。村人たちも私を応援してくれているようだった。
「嬢ちゃん、よく言ったぜ!」
「幼い頃から見てきたが、ここまで大きくなったんだなぁ。オラ感激するよ」
「あたい、とびっきりのご馳走用意しとくからね。ガツンと一発かましてきい」
みなさん、ありがとうございます。と私は一礼する。今、私は出発するのだ。
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