大和「提督、お疲れ様です。お茶を淹れてきたので少し休憩しませんか?」
提督「あぁ、ありがとう大和。助かるよ」スッ
提督「……」ズズッ
提督「うん、美味しい。いつもながら大和の淹れてくれるお茶は息抜きにはもってこいだ」
大和「ありがとうございます♪」
提督「……ところで、大和はこの鎮守府にはもう慣れてきたかな?」
大和「え? あぁ、はい。そうですね、まだ3週間程度ですが、皆さん良い人ばかりですごく助かっています♪」
提督「なら良かった。皆となるべく早く親しませることと、艦隊についてよく知ってもらって即戦力になってもらう為にこうも早く秘書艦を頼むのは中々挑戦的だったが、その様子なら心配ないようだな」
大和「はい……これも全て、提督のおかげです。本当に、ありがとうございます」ペコリ
提督「お礼なんてやめてくれ。当然のことをしているだけなんだから。それより君がこの鎮守府に来てくれた事にこそ俺はお礼を言いたい。ありがとう。よく来てくれた、大和」ニコッ
大和「提督……///」
大和(ああ……やっぱり、お優しくて格好いい……本当に素敵な方です///)
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大和「~♪」
長門「おや、大和じゃないか。随分とご機嫌なようだな」
大和「あ、こんにちは長門さん。そう見えました?」
長門「ああ、頬が緩みきってたぞ」
大和「えへへ、ごめんなさい。先程、提督とのお話に華が咲きまして……」
長門「そうか……それは別にいいが、あまり気を抜きすぎないようにな」
大和「はーい」
「……て……なのよ!」
「……もそうで……じゃない!」
長門「? 騒がしいな……どうしたのだろう?」
大和「ちょっと行ってみますか」
暁「だから! 雷が余計な事ばかりするから提督の軍艦模型を壊しちゃったんじゃない!」
雷「暁が背伸びして普段慣れない掃除をしようとして散らかしていったのが原因よ!」
暁・雷「むむ~っ!」
提督「どうした、2人とも」
暁「! 司令官!」
雷「ご、ごめんなさい司令官! 私たち2人で提督のお部屋を掃除してたら、提督が飾っていた軍艦模型を暁が壊しちゃって……」
暁「私じゃないでしょ!」
雷「あれはどう見ても暁じゃない!」
提督「まあまあ、落ち着けって。えーと、部屋を掃除してくれたんだな?」
暁「う、うん……」
提督「で、俺の軍艦模型を壊したって……今飾ってあるやつだと……あぁ、あの限定モデルの……」
暁・雷「げん、てい……!?」ガガーン
提督「あーマジか……うーん、直せそうもないか?」
暁「……最初は、それも考えたんだけど」ゴニョゴニョ
雷「……破片、結構細かく飛び散っちゃって……」
提督「そうか……駄目、だったか……」
暁「ぐすっ、ごめん……なさい……!」ポロッ
雷「うぅ……私たち、取り返しのつかないことしちゃった……」ポロポロ
提督「おいおい、泣くなよ。ほら、2人とも手を出してくれ」
暁・雷「……?」スッ
提督「……怪我はしてないみたいだな、良かった。あれ結構尖ってる部分もあって片付け大変だっただろ?」
暁「……怒って、ないの?」
提督「いや、怒ってるよ。但しそれは物を壊したことに対してじゃない、2人が喧嘩していることに対してだ」
雷「喧嘩していることに……?」
提督「ああ、俺としてはどっちが壊したなんてことはどうでもいいが、それを擦りつけあうのは仲間同士、ましてや姉妹同士でやることじゃない」
提督「今回は俺の私物で済んだが、この先もしかしたらもっと大きな損失が出ることもあるだろう? しかしそんな時はお互いを責めず、寧ろ相手を庇ってやれる器の大きさを持ってほしい」
提督「正直に言ってくれてありがとう、2人とも。もう怒ってないぞ。あとは気にするな」ナデナデ
暁「司令官……!」ギュゥ
雷「うぅ、ありがとぉ……!」ギュッ
提督「よしよし。ほら、それで? 喧嘩をした後は……どうするんだ?」
暁「……ごめんなさい、雷。貴女の言う通りだったわ……」
雷「こちらこそごめんなさい、暁……もう、人のせいにはしないから……」
提督「よし! それじゃあ仲直りに間宮さんのとこでアイスでも食べに行くか」
暁・雷「うん!」
ワイワイガヤガヤ
長門「私たちの出る幕はなかったな」
大和「相変わらずなんて素晴らしい人なんでしょうか……!」キラキラ
甘味処
大和「私、この鎮守府に来れて良かったです」
長門「なんだ、いきなり」
大和「だって、あんなに凛々しく人徳のある提督に、個性豊かで賑やかな皆さん、アットホームな雰囲気の鎮守府と、本当に過ごしやすくてたまりませんから」
長門「そうか、そう言ってくれるのは古くからいる私としても嬉しいな」
大和「あぁ、私ももっと早く着隊したかったです……そしたら提督とも更に親密に……」
長門「……いや、それはどうだろう」
大和「えっ?」
長門「私は大和が今ぐらいに着隊して、ちょうど良かったと思うぞ」
大和「それはまたどうしてですか……?」
大和(あっ、もしかして長門さん、提督を私に取られないか心配だったり……)フフッ
大和「心配せずとも提督を独り占めしようだなんて……」
長門「提督にも反抗期があったからな」
大和「えっ」
長門「あれはもうすごかったな……本当に、駆逐艦の子たちを相手しているようだった」
大和「え、いや……提督が、反抗期……?」
長門「ああ」
大和「反抗期って……あの、人間が思春期に迎えるものですよね」
長門「そうだな。思えばあの若さでよく提督になったものだ。あれからすっかり大人になってしまって寂しい気持ちもあるが……」
大和「はは、そんな……提督が反抗だなんて……まさか~」
長門「我が儘さで言えば島風……めんどくささなら卯月レベルだな。いや逆ギレしてくるところを含めるとそれ以上か」
大和「嘘!?」
長門「本当だ」
大和「あの提督が!?」チラッ
提督「暁、口にアイスがついてるぞ」スッ
暁「あっ、もう司令官、子供扱いしないでって言ってるのに!」
提督「レディは身嗜みもしっかりしないとな」ニコッ
暁「わ、分かってるわよ///」
雷「司令官、一口あげるわ!」
提督「んっ……ありがとう雷。お礼に俺のもあげよう」
雷「いいの!?」
大和「ちょっと危険な感じもするけど、それでもあんな大人の対応が出来てる提督がですか!?」
長門「ああ、あの頃は実に大変だった」
大和「……その話、詳しくお願いします」
提督(思春期)『……おぉ』ペラッペラッ
コンコンガチャッ
長門『提督、入るぞ』
ドンガラガッシャーン??
長門『! どうした提督! なぜズッコケている!』
提督『おまっ、長門!? 誰が入ってきていいと言った!』サササッ
長門『あぁ、書類がバラバラになってしまっているではないか。それにそんなに慌てて本当にどうしたというんだ?』
提督『お前がノックしてから秒で扉を開けてくるからだろ!? お前は俺の母さんか!』
長門『秘書艦だが』
提督『例えだよ畜生! で、なんだよ用件は。終わったら早く出てけよな!』
長門『遠征から帰隊した子たちからの戦果報告だ』スッ
提督『あぁ、机に置いといてくれ。あとは俺がやっとくからもう出てけ』
提督『……それから、何度もいうが俺に秘書艦は必要ない。用があったら電話しろ、俺から何かあったらすぐ呼ぶから緊急時以外入ってくるな』
長門『そうはいっても秘書艦は規則で制定されているものだぞ?』
提督『うるさい! ここの鎮守府の提督は俺だ! 俺に従え! 秘書艦は肩書きだけで何もしなくていいって言ってんだよ!』
長門『全く、うちの提督には困ったものだ』スタスタ
提督『ふんっ、やる時ゃやってんだ。文句は言わせねぇぞ』
長門『……しかしいくら休憩中とはいえ、そのような本を執務室に持ち込んで読むのは感心しないな』
提督『~っ! いいから早く出てけ~!///』ゴミポイポイ
大和「……」ポカーン
長門「どうした?」
大和「いえ……提督にも、そんなに荒れてる時期があったんだなぁと思って」
長門「うむ。あれはまだマシな方だがな」
大和「マシ!? それで!?」
長門「ああ、仕事を放棄することもあったしな」
大和「ええ!? 早く仕事が終わった日には私たちの相談に乗ってくれたり、演習を研修しにきてくれるあの真面目な提督がですか!?」
長門「それはもう駄々っ子のようにな」
陸奥『提督、そろそろお仕事終わらせましょう? まだまだ書類片付いてないんでしょ?』
提督『……あのな陸奥、俺はそうやって人から言われるのが1番嫌いなんだ。この動画一本見終えたら絶対仕事するって決めてたのに……あーあ、なんかこのまま動いたらお前の言うことを聞くみたいでやる気なくなったわ』グデー
陸奥『何言ってるのよ、子供じゃないんだか……まだ子供だったわね……』
提督『うるさい! 俺はもう立派な大人なんだ!』ガルル
陸奥『あら、立派な大人なら早くやりましょう。ほら、私も手伝うから……』スッ
提督(うっ、陸奥が前のめりになると胸元が寄せられて……///)カァァ
提督『うがああ!! いつも1人でやるからいいっつってんだろうが! 大人だからこそ自分の計画でやってんのに邪魔すんじゃねぇ!///』ブンブン
陸奥『あらあら、顔真っ赤にしてこわいこわい……♪』フフッ
提督『もう絶対やらん! やらんったらやらん! 今日はマジで何もしねぇ! 寝る!』ガバッ
陸奥『もう、頑固なんだから……』
大和「……それ、陸奥さんも十分悪いんじゃ……」
長門「あの提督は本当に面倒くさかったな……いかんせんプライドが高いもので、こちらから関わろうものなら物凄く高圧的な態度を取ってしまい、何回重巡軽巡の子たちと喧嘩になったことやら」
摩耶「おっ、提督~! 良いもん食べてんじゃん!」
提督「お疲れ様、摩耶。良かったら一緒に食べないか? 折角だから奢るぞ?」
摩耶「よっしゃー! 提督太っ腹~!」
提督「いつも世話になってるからな」ニコリ
大和「あれを見る限り想像できないんですけど……」
長門「まあ艦娘の私たちに肉体的に勝てることもなく、負けた後の数日は自室に引きこもり始めるし」
大和「引きこもり」
長門「そもそも口喧嘩の時点で弱いし」
大和「口喧嘩」
長門「挙句の果てには関係のない子たちに当たり始めて自分の威厳を保とうとし」
大和「八つ当たり」
長門「その子たちにも泣かされて」
大和「豆腐メンタル」
長門「間宮に慰めてもらうっていうのが提督のルーティーンだったな」
大和「聞きたくありませんでしたそんなルーティーン!」
長門「聞きたくないも何も、詳しくと言ってきたのは大和だろう?」
大和「そうですけどぉ……」
大和「あ、いやそれよりも! どうしてその慰めてもらうっていうので間宮さんが出てくるんですか? その時の提督なら間宮さんにも当たりが強そうで慰めるどころじゃなかったと思うんですけど……」
長門「まあ、そう思うのも無理はない」
大和「じゃあどうして……」
長門「簡単に言うと、彼は間宮に恋をしていたからな」
大和「ブーッ!」ガシャンッ
提督「うおっ! 大和!? どうした!?」ガタッ
摩耶「何だ!? 何の騒ぎだ!?」
長門「気にするな、何でもない」
大和「だ、大丈夫です……」ボタボタ
間宮「あら……待っててくださいね、今拭くものを……」
提督「間宮さん、貴女はお構いなく厨房の方を。あっちには俺が行きますから」
間宮「え? でも……」
提督「いつも皆がお世話になってるんです。俺からも、何か役に立たせてください」
間宮「……では、お言葉に甘えさせていただきます♪」ニコッ
提督「ええ」ニコッ
大和「すみません、提督……じ、自分で出来ますから///」
提督「気にするな。それより大和の方は大丈夫か? いきなり吹き出すなんて……まさか、間宮さんのフルーツジュースが不味かった訳でもあるまい……」ゴゴゴ
大和(怖っ!)
大和「ほ、本当に大丈夫ですから! ちょっと気管に入っちゃっただけで……もう十分ですから!」
提督「? そうか、それじゃあ気をつけてな」スタスタ
大和「……え、何ですか今の。長門さん今の見ました? あんな提督初めて見たんですけど。いや、表情はいつも通りでしたけど後ろに鬼神が見えて」ブツブツ
長門「落ち着け大和。深呼吸」
大和「……すぅ、はぁ……すぅ、はぁ……」
長門「どうだ?」
大和「……はい、落ち着きました……」
大和「それで、提督と間宮さんのことですが……」
長門「ああ、間違いなく彼は間宮に恋をしていたんだ。だから間宮に慰めてもらった次の日にはいつも通り仕事をしていたし、皆に対し強く当たるって言っても間宮には絶対に頭が上がらなかったんだ」
大和「へぇ~……」
長門「一時期、間宮を秘書艦にすると言って喚いてた日もあってな……間宮の仕事の都合上無理だと言った日には甘味処で仕事をする彼の姿が度々散見された」
大和「うわぁ……」
間宮『あら提督さん、いらっしゃいませ』
提督『……ああ』
間宮『今日もこちらでお仕事をなされるんですね、どうぞゆっくりしていってください♪』ニコッ
提督『っ……ふん///』プイッ
間宮『? どうしました提督さん、顔が赤いですけど……もしかして』ピトッ
提督『!? う、うわあああ!!!』ビクッ
間宮『ひゃっ』
提督『馬鹿! ばっ……あの、間宮……さん! ち、ちょっとは距離感考えろよ!///』アタフタ
間宮『距離感……?』
提督『俺、男! 間宮……さん、女! だからもっと……ほら、考えろ!///』
間宮『? あ、それよりもご注文の方を……』
提督『はぁ、いつものでいい』
間宮『分かりました! いつもの間宮特製ホットケーキですね! 今日は何を描いてあげましょうか♪』
提督『うわあああああ!!! でかい声で言うな馬鹿ああああ!!///』プシュー
間宮『そんなに恥ずかしがる事でもないですのに……それで、何がいいですか?』
提督『……間宮、さんの……好きなやつでいい……///』ボソッ
間宮『お待たせしました♪』コトッ
提督『ああ……』カキカキ
間宮『それじゃあ描かせていただきますね』ススッ
提督『……』カキ……
間宮『それで、今日はどうなさったんですか?』
提督『……何がだ』
間宮『いつもよりお顔が優れないようでしたので。提督さんがそのような表情を見せるのは何かあったっていうことですよね?』
提督『……実は、摩耶と、喧嘩しちゃって』
間宮『摩耶さんと……それはまたどうしてですか?』
提督『だってあいつが悪いんだ! あいつが、俺にもっと言い方変えて命令しろって……おかしいよな!? あいつだって口悪いくせにそんなこと指図しやがって! 大体俺上司だっつーの! 命令に言い方なんて……』
間宮『こーら』ピトッ
提督『っ!?///』ドキッ
間宮『ダメですよ? 提督さんのそういうところ』
提督『……間宮、さん。俺、どうしたらいい?』
間宮『もっと素直になったらいいじゃないですか、提督さんが元々お優しい方だって言うのは摩耶さんも知っているはずですから』
提督『でも、素直にっつったって……』
間宮『じゃあ、私を摩耶さんだと思って練習してみましょう!』
提督『え!?』
間宮『ほら、喧嘩した後は……どうするんか?』ジーッ
提督『うっ……///』キョロキョロ
間宮『ちゃんと私の目を見てください』
提督『……ご、ごめん。次から気をつけるよ……///』チラッチラッ
間宮『よく出来ました♪ 提督さん、偉いですね♪』ナデナデ
提督『うわぁ! き、急に頭撫でんなこら!///』バッ
間宮『あ、ごめんなさい、つい……。嫌、でしたよね……』シュンッ
提督『あ、いや……嫌、じゃ……ない、けど……///』
提督『……あ、ありがとう。ちょっとは、元気……出た……///』
間宮『ふふっ、なら良かったです♪』
間宮『……はい、出来ました。提督さんの似顔絵ホットケーキです♪』スッ
提督『はぁ!? いやだって、俺がリクエストしたのは……その、間宮さんの……///』マッカ
間宮『? 要望通りに描いたつもりだったのですけれど……』
提督『……そ、そうか……///』プシュー
大和「完全に恋してるじゃないですかやだー! 間宮さんも間宮さんで無自覚に提督を惚れさせすぎぃ!///」ブンブン
長門「だからそう言ってるだろう。あの頃の提督には兎に角、包容力のある間宮に依存してる所があったんだ」
大和「……でも、どうして間宮さんなんですかね? 他にも愛宕さんや鳳翔さん、香取さんなどがおられたと思うんですけど……」
長門「あー、まあ確かにその3人にもべったりだったな。間宮ほどではないが」
大和「いやそれでもべったりだったんかい!」ブォン
長門「大丈夫か大和。さっきから頭振りまくって……様子がおかしいぞ?」
大和「そりゃそうなりますよ! 提督がお姉さん大好きっ子だったなんて!」
長門「そういえば彼のコレクションの数々も全て姉属性系の……」
大和「提督ううぅぅ……!」ガタンッ
間宮「賑やかそうですねぇ」
提督「……なんだか、悪寒がするんですが」
暁「食べ過ぎじゃない?」
大和「……はっ! 姉属性!」ガバッ
長門「今度はなんだ?」
大和「私、1番艦。武蔵、妹。私、姉。姉属性、私」
長門「何の暗号だ……」
大和「つまり私にも姉属性があるっていうことです! こう言ってはなんですが、私もお姉ちゃんとして駆逐艦の子達から慕われてる部分があり、包容力もあると思うんです! だから提督にも……」
長門「うーん、どうだろうな」
大和「どうしてですか!?」
長門「確かにあの時の提督が包容力のある女性を求めていたのは間違いない。だが私は言ったぞ」
長門「間宮に、恋を『していた』とな……」
大和「!! 過去……系!」
長門「あの頃の提督は間宮に恋をしていた」
長門「しかし今はと言われると正直言ってどうなのか、それはさっぱり分からない。提督の反抗期が終わり、その黒歴史に悶える時期も終わって今は落ち着いてすっかり安定期に達しているおかげでな」
大和(やばい、悶える提督の話も訊きたい)
長門「要するに、艦娘への態度が平等になってしまっただけに特別な感情を抱いているのか分からないのだ」
長門「彼が今も間宮に恋を……いや、それどころか包容力を求めているかどうか……」
大和(確かに、私の知っている提督は大人びていて、とても人に包容力を求めているようには見えない……寧ろあの人自体が包容力の塊でもあるし)
大和(そんな彼が今求めているとしたら……真逆の妹属性? それなら先程の暁さんや雷さんに対する態度も納得できる……?)グルグル
大和(いやいやでも、でもぉ! さっきの間宮さんのジュースを思わず吹き出しちゃった時の提督の凄み! あんな風になるのはどう考えても好きな人の作った飲み物を粗末にされた時だけでは!?)プシュー
長門「大和、大丈夫か? 今にもオーバーヒートしそうな煙が出ているが……」
提督「なあ、さっきから何の話をしているんだ?」
大和「! て、てて提督!!」
長門「いや、まあ……単なる世間話だ」
提督「俺の名前も上がってたような気がするんだが……」
提督「まあいい、本題はそっちじゃない。さっきからやはり大和の様子がおかしいように思えてな」クイッ
大和「え……?」
提督「……大和、本当は無理をしていないか?」ジッ
大和(う、嘘!? 近い近い! 顔が近すぎます! 反則、提督の顎クイは反則ですぅ!///)カァァ
提督「……顔が赤い。熱だろうか?」ピトッ
長門「あ」
大和「ひゃあぁぁぁあ……!///」ボフンッ
提督「うおっ! 大丈夫か大和!? は、早く医療室に……」スッ
タッタッタ
長門「……全く、あの天然たらしなところ、誰に似たんだか」
間宮「へっくちゅん」
大和「……ん、んん」ムクリ
提督「お、気がついたか」
大和「提督? あれ、私……」
提督「……すまなかったな」
大和「えっ?」
提督「まさか大和が倒れてしまうくらい無理をさせてしまっていたとは。それに気づかないだなんて俺は提督失格だな」
大和「そ、そんなこと! あの時倒れてしまったのはそういう理由じゃありません!」
提督「? ではなぜだ?」
大和「……それは、その……」
大和「提督……間宮さん……うぅ」モジモジ
提督「……あー、そういえば差し入れに林檎を持ってきたんだった。それでも食べながら少しずつゆっくりと話してくれるといい」
大和「あ、はい……ありがとう、ございます……」
提督「すぐに剥いてやるからな。少し待ってくれ」
大和「はい……」
提督「……」スルスル
大和(わっ、剥くの早い……きっと手慣れているんだ。きっと他の子が倒れた時もこうやって看病して……)
提督「……よし、出来たぞ。はい、あーん」スッ
大和「え? いやあの、私自分で食べられますから……///」
提督「まだ顔が赤いんだから遠慮はするな。もし恥ずかしがっているのであれば気にすることはない。先程まで一緒にいた長門や君より先に着隊した妹の武蔵にだって、戦闘などで無茶をして看病が必要になった時はいつもこうしていたさ」
大和「なっ!?」
大和(武蔵……そんなこと、一言も言ってなかったのに……なんてうらやま……こほん)
大和「……では、お言葉に甘えて。あ、あーん///」パクッ
提督「どうだ?」
大和「んん……」シャリシャリ
大和「っ! 美味しい、です……!」キラキラ
提督「なら良かった」ニコッ
大和(あぁ……大和、今すごく幸せです……///)
提督「……落ち着いてきたか?」
大和「はい、おかげさまで」
提督「じゃあ少しずつでいいから話してもらおうかな」
大和「……私、提督の昔の話を聞いてしまったんです」
提督「俺の昔の話?」
大和「はい、とは言っても数年前の話なんですけれど……なんでも、提督にも反抗期があったということを聞いて」
提督「あぁ~……確かに、皆に迷惑をかけていた時期があったな……」
大和「あ、じゃあ本当だったんですね……」
提督「恥ずかしながらな……」
提督「まあ、なんだ。あの頃の俺は本当に子供みたいなやつで、艦娘とはいえ異性ばかりがいるこの職場に居づらさを感じたり、その……目のやり場に困ったりと、色々と多感な時期だったんだろう」
大和「思春期の男の子は素直じゃないと聞いたことがありますが、そういう年頃だったんですね」
提督「ああ、そうだな。ま、そういう時期があって、その上に今の俺が成り立っているわけだ」
大和「……はぁ、なんだか安心しました。最初はあの提督が、ってびっくりしちゃいましたけど、そう考えると男性として順調に成長していた証拠だったんですね」
提督「あはは、やめてくれよ。恥ずかしいじゃないか」
大和「ふふっ、たまには良いじゃないですか♪」
大和「あ、そしたら間宮さんのことが好きだったっていう話もその頃特有の一時的な感情だったりして」フフッ
提督「おいちょっと待て大和お前その話一体誰から聞いた」
大和「えっ」
提督「だから間宮さんの話をいったい誰から聞いたと問うているんだ返答次第によってはこれから鎮守府全体に非常呼集をかけて遠征組も即刻帰投させて一人一人順番に順番に俺と尋問を」ペラペラ
大和「ストップストップ! 落ち着いてください提督!」
提督「落ち着いているわ!」バンッ
大和「ヒェッ」
提督「青葉か!? また青葉なのか!? あいつは俺が掘り返してほしくない記憶を皆が忘れかけた頃に新聞に載せてくるようなやつだからな!」
大和「青葉さんとの間に何があったんですか! 一人で暴走しないでください! ほら深呼吸して落ち着きましょう!」
提督「これが落ち着いてられるかよ!」
大和「開き直らないでください!」
undefined
undefined
undefined
ん? 書き込みができない……
提督「……で、誰からだ?」フーッフーッ
大和「長門さんからです。というかその荒々しい鼻息怖いのでやめてください」
提督「あいつか! ったく、一番秘書艦歴が長くて付き合いも深いやつが一体何を変なこと吹き込んで……」
大和「え、じゃあ違うんですか……?」
提督「ん?」
大和「提督は、間宮さんのこと……好きではなかったんですか?」
提督「……」
提督「…………は」
提督「はああああああああ!?」ガタガタガッシャーン
大和「ひゃっ」
提督「べべっべべ、別に普通ですぅぅぅ!? ま、間宮さんとか!? 好きとかじゃなく全然普通だし! 超普通だし! 大人になったら間宮さんとケッコンするとかそういう約束なんて一度もしたことないし!」
大和「ケッコン!?」
提督「でもすっかり大人になってからやっぱりあれ時効かなとか、間宮さん冗談だったのかなとか気になってその話題に触れられずに書類一式を抱えながら一人で悩んで寝れない夜とか過ごしてなんかいませんけどぉ!?」
大和「そうだったんですか!? 道理で練度が99止まりの子たちが一人も指輪をつけてないわけですよ!」
提督「何言ってんのこのラムネ!? はー意味分かんねぇ!」
大和「いやラムネて!」
提督「べ、別にそういうんじゃないし! ケッコンカッコカリをしたら燃費が良くなったり耐久が上がって更なる戦力向上に繋がるから戦艦や空母の艦娘とするのが通とか他の提督に言われて凹んでた時期なんてないし! ましてや間宮さんとか出撃しないから練度という概念すらないのでケッコンはできませんよって大淀に優しく諭された日には丸1週間以上寝込んでたとかそういう話は絶対ありえないから!」
大和「もうこれ以上はやめてください! 動揺しすぎて自爆してますから! 聞いてもないことどんどん自分で吐き出しちゃってますからぁ!」
ガチャッ
長門「騒がしいな。お、大和は目が覚めたようだな」
大和「あ、長門さ」
提督「長門ぉ! お前ちょっと執務室に来い! 話がある!」グイッ
長門「! おぉ、これはこれは……ついに私も身を固める時期が来たというわけだな……しかし提督、こういうのにはムードというものも……」
提督「いいから来いっての!」スタスタ
大和「……行っちゃった」ポツーン
大和(それにしても提督があんなに取り乱すなんて。なんだか過去の片鱗を見ちゃった気分……)
コンコン ガチャッ
間宮「こんばんは~」
大和「間宮さん!」
大和(来た、提督の性癖を形成させた張本人!)
間宮「あ、林檎食べてくれたんですね。お味はいかがでしたか?」
大和「え、えぇ……とても美味しかったですけれど、もしかして間宮さんからの……?」
間宮「いえ、私はただ仕入れているだけですよ。艦娘の子達を看病する為にいつも果物を買ってくださっているのは提督さんです」
大和「あ、そうだったんですか」
間宮「本当に、お優しい方ですよね。そこはお口が悪かった昔の頃から全く変わりません」
大和「……提督の昔のことは聞きました。なんでも、間宮さんにだけは頭が上がらなくて……その、好意を抱かれていたとか」
間宮「そうやって直接言われると、ちょっと照れくさいですね」
大和「それにケッコンの約束もしてたとか」
間宮「そ、そこまで知ってたんですか///」カァァ
大和「ええ、先程本人が自爆されていたので」
大和「そ、それで……提督は本気だったみたいですけど、間宮さんの方はどうだったんですか?」
間宮「……えと、それはまあ、その……」
大和「その?」
間宮「……ほ、本気でもないとそんな約束できませんって///」テレテレ
大和「つまり両想いだったわけですね!?」
間宮「そうですが、なんだかテンションが高くなってきましたね……」
大和「それはそうなりますよ羨ましい……!」グッ
間宮「えぇ~……」
大和「でも、どうして好きになられたんですか? 今の提督ならまだしも、話を聞く限りあの頃の提督はその、荒れてたというか……」
間宮「そうですね。実際、あの時の提督にはまだ早いって私は断っていましたし」
大和「あ、それで大人になったらっていう約束にしたんですね……」
間宮「はい。それに……」
大和「それに?」
間宮「理想の殿方は、見つけるよりも育てた方がより安全で確実だと思いませんか♪」ニコッ
大和「」ゾワッ
間宮「その点、彼は本当に真っ直ぐ育ってくださって……それはもう大和さんも感じてくれてると思うのですが」
大和「ええ、とても」
大和(実際あの人に落とされかけてましたし)
間宮「でも、ケッコンのお話まで覚えていてくださったなんて! こう上手く事が進むと本当に嬉しいですね♪」
間宮「私はもう良い頃合いだと思うのですが、果たして彼はこの私をどうしてくださるのでしょうか……///」モジモジ
大和「……」
間宮「あ、いけない。もう仕事場に戻らないと……大和さんがお元気そうで何よりでした。それではまた♪」フリフリ
スタスタ
ガチャッ バタン
大和「……すぅ……ふぅ~……」
大和「……間宮さんには敵いませんね……」ガクッ
完
途中おかしくなっちゃってすみません。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました~。
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