ベジータ「……」ｽﾀｯ

クリリン「ベジータ、どうして戦いをやめたんだ！？」

ベジータ「こいつが離さないらしいんでな」

19号「絶対離すもんか！」

ベジータ「どうしても俺を離したくないというなら、戦っても仕方ないだろう」

クリリン「そういうことか……」

悟飯「戦わずに済んでよかったです！」

ベジータ「しかし……」

19号「離さないぞ！」

ベジータ「こいつに捕まってると戦闘力がどんどん吸収されていきやがる」

19号「離すもんか！」

ベジータ「厄介なことになったぜ……このままじゃ死んじまう」

悟飯「だったら仙豆を食べればいいんですよ。気が回復します！」

クリリン「さすが悟飯、頭いいな。ほら、ベジータ」

ベジータ「ふん、貴様らも少しはやるようだな」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘｯ

ベジータ「おお、回復した」

19号「絶対に離さない……！」

ピッコロ「だが、問題が解決したわけではないぞ」

クリリン「え？」

ピッコロ「人造人間は未だにくっついてるのだから、気が吸収されることに変わりはない」

ベジータ「ああ、また疲れてきやがったぜ」

19号「離さないぞ！」

クリリン「じゃあ、もう一粒やるよ」

ベジータ「これを繰り返せば、問題ないわけだな」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

19号「絶対離さない！」

クリリン「手持ちの仙豆がなくなっちまった……」

ベジータ「ちっ、どうしたらいいんだ……。おい、仙豆ってのはどこにあるんだ？」

天津飯「仙豆なら、カリン様が作ってるが……」

ベジータ「カリン？　何者だそいつは」

クリリン「カリン塔に住んでる仙人様で、俺たちもお世話になった人だ。いや、猫かな」

ベジータ「よし、そいつのところに行って仙豆を補給するとしよう。19号、貴様もついてこい」

19号「離さないぞ……！」

バシュッ！

ベジータ「貴様がカリンか」

カリン「うむ、おぬし厄介なことになったのう」

ベジータ「ああ、こいつがくっついてる以上、俺は常に仙豆を食べ続けなければならなくなった」

19号「エネルギーを吸い尽くしてやる！」

カリン「とりあえず、ワシの手持ちの仙豆は全てくれてやろう」

ベジータ「話が分かる野郎だ」ﾆﾔｯ

19号「離さないぞ！」

カリン「しかし、いずれそれもなくなってしまうじゃろう。どうしたものか……」

ベジータ「だったら俺に仙豆の栽培方法を教えろ」

ベジータ「俺が自分で仙豆を増やして食べれば、なんの問題もないだろう」

カリン「うむ……自給自足というわけか。それが一番じゃろう」

カリン「では、さっそく栽培の方法を……」

ベジータ「なるほど……サイバイマンの育て方に近いな」

19号「ひゃはは、離さないぞ！」

カプセルコーポレーション――

ブルマ「ベジータ、なにやってるの？」

ベジータ「仙豆を栽培してるんだ」

ベジータ「お、実ってきやがったぜ」

19号「離さないぞ！」

ベジータ「さっそく一粒……」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

ベジータ「ほう、我ながら素晴らしい豆ができた！」ｼｬｷﾝ

19号「離すもんか！」

ブルマ「また一人、変な同居人が増えちゃったわ。ねー、トランクス」

トランクス「おぎゃあ、おぎゃあ……！」

しかし――

ベジータ「さて、寝るとするか。貴様は隣で寝ろ」

19号「離さないぞ！」

ベジータ「ぐぅ……」

19号「離すもんか！」

……

……

ベジータ「起きたら……エネルギーをほとんど吸われていた！」ｹﾞｯｿﾘ…

19号「絶対離さない！」

ベジータ「危うく永眠するとこだったぜ……！」

ベジータ（寝てる時は仙豆を食べられないからな……まずいことになった！）

ベジータ「おい、19号」

19号「なんだ、ベジータ」

ベジータ「寝てる時は……エネルギー吸収をやめてくれないか？」

19号「……」

ベジータ「手はくっつけたままでいいから」

19号「分かった。寝てる間は吸収しない。約束しよう」

ベジータ「意外と話せる奴で助かったぜ」

19号「絶対離さないぞ！」

こうして睡眠中のエネルギー問題も解決した。

そのうち、ベジータもこの状況に慣れていった。

ベジータ「特訓だ、トランクス！」

未来トランクス「はいっ！」

未来トランクス「しかし、人造人間をくっつけたままですか？」

ベジータ「ああ、離れないんでな」

19号「絶対離さないぞ！」

未来トランクス「はぁ、じゃあそのままでいいです」

ドカッ！　バキッ！　ガガガッ！

19号「離すもんか！」

その後、セルが現れても――

セル「貴様は……ベジータだろ？　違うのか！？」

ベジータ「俺は……超ベジータだ！」

19号「離すもんか！」

セル「ところで、なぜ19号がずっとくっついてるんだ？　理由を話してくれないか？」

ベジータ「いちいち説明するのも面倒だ……。てめえで勝手に想像しろ」

19号「絶対に離さないぞ！」

セル「ぬ……」

結局、完全体セルに敗れるも――

セル「しょせん私の敵ではなかったな。トドメを刺してやろう、ベジータ」ｻｯ

ベジータ「ぐ……！」

19号「離さないぞ！」

ベジータ「バカヤロウ、一緒に殺されたいのか！　とっとと離れやがれ！」

19号「絶対に離さない！」

セル「……」

セル「セルゲームを開催してやる」

なぜか見逃された。

その後、悟空は犠牲となり、悟飯がセルを倒した。

ベジータ「くそっ、カカロットと悟飯にやられた……！」

19号「……」

ベジータ「俺はもう……戦わん……」

19号「私はお前を離さないぞ」

ベジータ「ふん……好きにしやがれ」

それでも二人が離れることはなかった。

ある日――

ベジータ「さて、今日も仙豆を食うか」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

19号「離すもんか！」

ベジータ「ん？」

19号「どうした、ベジータ？」

ベジータ「貴様のお腹……大きくなってないか？」

19号「え？」

19号「本当だ……」

ベジータ「これはどういうことだ！？」

20号「実は……19号には隠された機能を設けていたのだ」

ベジータ「ドクター・ゲロ！　生きてやがったか！」

20号「まあ、何とかな」

ベジータ「で、どんな機能だ！？」

20号「一人の人間から一定以上のエネルギーを吸収すると……“妊娠する”という機能だ」

ベジータ「な、なんだと！？」

19号「私が……妊娠……」

ベジータ「ふざけるな！　俺にはブルマという妻も、トランクスという子供もいるんだぞ！」

ベジータ「人造人間との間にガキなんか作れるか！」

20号「となると……子供をおろすしかないな」

ベジータ「なにっ！？」

19号「そうですね、20号。今すぐお腹の子を……」

20号「仕方あるまい。手術の準備だ」

ベジータ「くっ……！」

ベジータ（せっかくの子供が……）

ベジータ（だが、産ませればブルマたちを裏切ることになる。これしかない……！）

ブルマ「産みなさいよ、19号！」

ベジータ「ブルマ！？」

ブルマ「せっかくお腹に宿った命……消すのはもったいないわ」

ベジータ「いいのか？」

ブルマ「別に不倫されたわけじゃないし、私は気にしないわ」

ベジータ「感謝するぞ、ブルマ」

ブルマ「ふふっ、あんたが感謝だなんて、明日は雪が降りそうね」

ベジータ「ふん……。というわけだ、19号……俺たちの子を産んでくれ！」

19号「ありがとう、ベジータ、ブルマ……」

20号「よかったな……19号！」

19号「はい！」

数ヶ月後――

19号「うっ、ううっ！」

ベジータ「おい、大丈夫か！？」

19号「痛い……！　う、産まれるっ……！」

ブルマ「陣痛が始まったわ！　すぐ病院まで運んで！」

ベジータ「もちろんだ！」

ブルマ「ドクター・ゲロ！　あんたも出産を手伝って！　おじいちゃんみたいなもんだし！」

20号「わ、分かった！」

ベジータ「しっかりしろ！」

19号「ああ、頑張る……！　ベジータのためにも、子供のためにも……！」

19号「ううう……！　あああっ……！」

赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……！」

ベジータ「やった！　産まれたぞ！」

ブルマ「よくやったわ、19号！」

20号「まるで孫ができた気分だ……」ｳﾙｯ

19号「みんな……ありがとう」

19号「それと、ベジータ……」

ベジータ「なんだ？」

19号「子供の名前をつけて欲しい……」

ベジータ「俺でいいのか？」

19号「お前につけて欲しいのだ」

ベジータ「……分かった。いい名前にしてやるぜ」

ベジータ「さて、どんな名前にするか……」

ベジータ（19号の子供なのだから、やはり“19”という要素は入れたい）

ベジータ（イチとキュウ……ジュウキュウ……）

ベジータ（イチ……ジュウク……。イチ……ジク……）

ベジータ「……」

ベジータ「よし、決まった！」

19号「なんという名前だ？」

ベジータ「こいつの名前は……イチジクだ！」

イチジク「ばぶぅ！」

ブルマ「いい名前じゃない！　この子も喜んでるわ！」

20号「幸せになるのだぞ、イチジク！」

ベジータと19号の息子の名前は“イチジク”となった。

数年後――

ブルマ「トランクス、勉強はー？」

トランクス「後で！」

ブルマ「まったくもう……」

トランクス「おーい、イチジクー！」

イチジク「なーに？」

トランクス「トレーニングしようぜ！」

イチジク「うん！」

ドカッ！　ガガガッ！　バキッ！　ドカッ！