【モバマス】まゆに呑まれた話 (7)

夜、書類を整えていると指先を切ってしまった。

紙による切り傷は深くはならないが存外に痛い。

内心毒づきながら絆創膏を取りに行こうと立ち上がると、プロデューサーさん、と柔らかい声がした。

振り向くと、いつからそこにいたのか、最初からそこにいたのか、まゆがいた。

プロデューサーさん、ともう一回まゆは言って、両手で優しく包むように私の手をとり、切れた指先を愛らしい口に躊躇なくはむっと入れた。

まゆの唇はふわりと柔らかく、痛みは淡雪のように消え、むしろ淡い快感を指先に感じるほどだった。

願わくばずっとこうしていたいとも思うがそうはいかず、まゆ、気持ちは有り難いが感染症の問題もあるし他人の傷口を口に入れるのは良くないよなどと言いつつ指を引き抜くとああああああ!

熱い!熱い!ああああづい!!

燃える!指が!あああづい!!

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あまりの熱さに硬直していると、まゆは私の指を根本まではむっと咥えた。

すると瞬く間に熱さは消え失せ、嗚呼、まゆの唇は柔らかく、口の中はふわふわと暖かく心地よいのだ。

思わずほうっと吐息を漏らすと、まゆは私の指を咥えたまま嬉しそうに目を細めた。

唇を窄めて指を咥えるまゆの顔は否が応でもアレを想起せしめてしまい、

まゆ、こういうのはやっぱりダメだよ。でも有難うねなどと言いつつ指を引き抜くとあああああ!

熱い!熱い!ああああづい!!

助けて!まゆ!助けて!!

舌の根も乾かぬうちに恥も外聞もなく叫ぶ私にまゆは嫌な顔ひとつせず、私の手を口に入れた。

まゆの口よりも私の拳の方が大きいはずなのになんですんなり入ったのだろうとぼんやり思ったが、得も言われぬ心地よさに包まれるうちにそんな疑問はどこかへ消えていった。

嗚呼、嗚呼、心地よい、心地よい…。

まゆの口の中を堪能している内に私は悟った。

わたしはこのまままゆに呑まれるのだ。

呑まれて消化されるのか、それともこの心地よさに包まれたままになるのかは知らない。

けどそんなことはどうでもよいのだ。

まゆに呑まれるということは、幸せなことに違いないからだ。

さあ、まゆ、わたしを呑んでくれ。

わたしのすべてを呑んでくれ。

 

 

翌日、千川ちひろが出社してきた時には、まゆの口からPの首ばかりが出ており、いくら呼びかけてもただニコニコとするのみであった。

地獄のような光景に千川ちひろは眉をひそめ、とある一室にまゆとPを押し込めた。

まゆの口から引っ張り出そうという声もあったが、アイドル達のプロデュース方針や企画などについてはちゃんと受け答えはするので特に困ることはないと、そのままにしおかれたという。

以上です。

元ネタは杉浦日向子さんの漫画「地獄に?まれた話」でした。

文字化け失礼、「地獄に呑まれた話」です。

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