のそのそくまと小さいうさぎ (20)

昔々、あるところにうさぎとくまがおりました。

その年はとても寒く、木の実などもない厳しい冬でした。

こまったこまった。

このままでは飢え死にしてしまうとくまは悩んでいました。

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くまが淋しい森の中をのそのそと歩いていると、罠にかかったうさぎがおりました。

これは運が良い。

飢え死にせずにすんだ。

くまがそう思って手を伸ばしてみると、まだまだ小さいうさぎでした。

しばしくまは考えました。

そうだ。穴ぐらでで大きく育ったら食べよう。

くまは罠を壊してうさぎを冬眠用の穴ぐらに連れていきました。

満足すると動き回った疲れから眠ってしまいました。

すーすーと寝息をたてて大きな身体が揺れました。

しばらくしてうさぎが起きました。

うさぎはとてもびっくりしました。それはそれは大きなくまが目の前にいたからです。

あぁ、私は食べられてしまうのか。

そう考えてうさぎは逃げようとしましたが、怪我が痛い。あぁ、痛い。

なかば諦めてうさぎは眠ってしまいました。

それから二匹は穴ぐらの中で厳しい冬を越えました。

あぁ、よく寝た。

くまが起きるとうさぎはまだそこにいました。

死んだのかな、と思ったけど、小さな身体は上下しています。

うさぎは生きていました。

うさぎを食べてしまおうか。

でも、もう春だ。

魚達もいるだろう。草木も芽吹いただろう。

うさぎはそのうちどこかに逃げるだろう。

そう考えたくまは、大きな身体を起こすとのそのそと川に向かって行きました。

のそのそ、のそのそと川に向かう大きなくまの姿を猟師が見つけました。

ターン。

ターン。

ターン。

三回の大きな音が森に響きました。

うさぎは飛び起きました。

足はもう治っていました。

穴ぐらから飛び出て、足跡を辿るとそこには大きなくまが倒れておりました。

あぁ、くまさんどうして。

私を助けてくれたくまさんがどうして。

うさぎが駆け出します。

そして、くまに近づく猟師にうさぎは泣きながら噛みつきました。

痛い。痛い。

猟師はあまりの痛さに泣いて逃げ出しました。

小さい耳をぴょんと立ててもくまの吐息は聴こえない。

あぁ、くまさん。あなたのご恩は忘れません。

うさぎは必死に大きな穴を掘ろうとしました。

うんしょ。うんしょ。

でも身体の小さなうさぎにはとても大変なことでした。

そこに森の神様が現れました。

小うさぎや、墓を掘るのを手伝ってあげようか。

いいえ、私の恩人は私が弔います。

うんしょ。うんしょ。

ならば小うさぎや、お前の身体を大きくして楽に掘れるようにしてあげようか。

いいえ、小さい私が救われた身を削ってこそ、くまさんも安らかに眠ってくれるでしょう。

うんしょ。うんしょ。

森の神様はその健気さと意志の強さに心を打たれました。

ならば、くまを生き返らせてあげよう。

そういうとくまの身体が光輝きました。

うさぎがびっくりしながら見ていると、くまのがのそのそと起き上がりました。

はて?私は死んだはずじゃ?

きょとんとしたくまに、うさぎは良かった良かったと泣いて、心から喜びました。

それから、うさぎとくまは森の中でひっそり仲良く暮らしましたとさ。

おしまい

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