【ミリマスSS】田中琴葉はイケメンらしい (40)

アイドルマスターミリオンライブ!のSSです。
地の文があります。ギャグ時空ですのでキャラ崩壊にご注意下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1615129631

 
「プロデューサー、相談があるんですけどお時間ありますか?」

 事務所のPCで調べものをしていると、背筋の良く伸びた澄んだ声が聞こえてきた。
 琴葉は業務中に何か相談をしたいときは必ずこちらの都合を確認してくれる。アイドルと話すのも仕事のうちだから気にしなくて良いと伝えているのに、どうやら琴葉の気が済まないらしい。

「大丈夫だよ、どうしたんだい」

 ちょうど今、昼過ぎのメール処理が一段落して、アイドルの名前が付いた飲食店を検索していたところだ。今度「味処ななお」に行ってみようと思う。
 どうやら、仕事以外のことをしている時はいつも以上に真面目な顔をしているらしい。申し訳なさそうな顔をしている琴葉を促すために椅子を彼女に向けてクルリと回す。ブラウザを消してメールソフトを開くのを忘れずに。
 

 
「えっと……」
「外しましょうか?」
「いえ、大丈夫です」

 なかなか話し出さない琴葉に気を遣って美咲ちゃんが声を掛ける。
 話の内容が分からない以上、私が判断できることではないが、どうやら他人に聞かれても大丈夫な相談のようだ。
 言いにくそうに胸の前で指をクルクルさせながら「その……」と繰り返していた。
 言い出すことに時間がかかることはあれど、必要なことを言わない選択をする彼女ではない。プレッシャーをかけないように口角を上げながら待つ。
 

 
「最近、よくファンレターを頂くんです」
「そうだな。目立つ役を演る機会も増えてるし、良い調子だ」

 ファンレターをもらうこと自体は恥ずかしがることではない。むしろ誇るべきことだ。
 亜利沙なんてこの前、ファンレターをデータ化して保管したり、アルバムに整理して書棚に貯めていると報告してきた。流石にやり過ぎだと思う。
 ただ、こと琴葉に関してはそれは何ともむず痒いのだろう。いじらしいことだ。
 

 
「オペラセリア煌輝座や、ミリオン女学園が公開されてからは特に、女性の方から頂くことが増えて」

 うんうん、と頷きながら、自分の内容チェックに問題が無かったかどうか、頭をフル回転させる。
 様子のおかしなものや、不快に感じるものは琴葉に見せないように除外したはずだ。いや、確か「結婚してくれ」という内容のものがあったか。差出人が女性だったからそのまま渡してしまったが、アレが良くなかったのだろうか。

「それで私、思ったんです」

 いや、大丈夫だぞ琴葉。その「結婚してくれ」は女性ファンからの最上級の好意であって、深い意味は無いんだよ。琴葉が気を病むことは何も無いんだよ。
 そう告げようと口を開いた瞬間だった。
 

 
「わ、私ってもしかして、イケメンなのかなぁって……」
 
 あぁ違う。
 彼女は調子に乗っているだけだった。
 しかし、琴葉が調子に乗るなんて、入社以来見たことが無い。
 ここで彼女を調子の波に乗らせずに、何がプロデューサーか。
 

 
「あぁ、琴葉はイケメンだよ。間違いない。もしそうじゃなかったらこんなに女性からファンレターが来るわけ無いからな」
「そう、でしょうか。それなら、もっとそういった演技にも磨きをかけていった方が良いのかどうか悩んでいて、プロデューサーはどう思いますか?」
「なるほど、ふむ……」

 どうやらただ調子に乗っていただけではなく、アイドルの方向性について悩んでいたらしい。なんか悪ノリしちゃってごめん。
 慌てて思考を愉悦から業務に切り替える。思考を切り替える時はどうやら真面目そうな表情になるのが常らしい。琴葉が心配そうに俺の顔を覗き込む。

「演技の幅を広げることは良いことだ。でも、今の頑張り方でしっかり認められてるんだから、無理に偏重する必要は無いんじゃないかな」
「そうですか、そうですよね……」
 

 
  
「おぉっと、それは聞き捨てなりませんね!!!」

 
 

 
 バーン!と良い音を響かせながら事務室の扉が開いた。
 その青い編み込みが目立つ本を抱えた少女は、思ったより勢いが付いてしまったのか、自分が響かせた音に一瞬身を縮めた後、再びキリリと前を向き直った。

「私たちはイケメン琴葉さん大好き委員会の者です! 話は聞かせてもらいました!」
「百合子さん、もっとこう、良い名前は無かったんですか」
「いいのよ志保。百合子はいつもこうだから」

 いつも通りノリノリの百合子の横には、こういった悪ふざけをするイメージが無い志保と静香が立っていた。しかし彼女たちも立派なドヤ顔を放っていた。なんでだ。
 

 
「その顔はどうして私がイケメン琴葉さん好き好き委員会に所属しているのか分からない顔ですね」
「志保、名前が違うよ。イケメン琴葉さん大好き委員会」
「えっと、プロデューサー……?」
「ごめん、俺にも何も分からない」

 琴葉が俺に助け舟を求めている。
 普段人に頼ることが苦手な彼女から差し伸べられた手を握り返してあげたいが、何を隠そう俺自身が今まさにこの意味不明な大海原で転覆している最中だ。溺れている人は溺れている人を救うことが出来ない。

「仕方ないですね、私が説明してあげます」

 この中で一番無い胸を張って、ご丁寧に腰に手まで当てて、静香が一歩前に躍り出た。
 

 
「琴葉さ……お姉さまは、その端整な顔立ちだけでなく、凛とした佇まい、正義感溢れる振る舞いから間違いなくイケメンであると断言できます」

 あぁ、ようやく理解した。
 静香はミリオン女学園で琴葉と姉妹関係にあったんだった。確かにミス・ロータス役の琴葉とも触れ合う機会が沢山あったし、抱き締められたりもしてたっけ。
 だからと言ってこんなことになる?
 少々頭が回っていないようだ。とりあえず同意しておこう
 

 
「そうか、確かにミリ女の琴葉はかっこよかったよな」
「静香……」

 いや琴葉さん。作中の呼び方に戻ってますよ。
 切り替えが良過ぎるというのも考え物だな、と別の心配をしていると、目を輝かせている静香の方にポンと手が置かれた。
 振り向いた静香の目と鼻の先に、渾身のドヤ顔が花開いていた。

「ま、私は琴葉さんに求婚されたんですけどね」
「プロデューサーさん、聞いて下さいよ! 志保ったらさっきからコレばっかりなんですよ!」

 嘆いたのは百合子だった。
 百合子と静香も大概ひどい状態だと思うが、そんな彼女たちがここまで言うということは、さぞ目をつむりたくなるような惨状だったのだろう。頭が痛くなってきた。
 志保はまだ分かりやすい。オペラセリア煌輝座でハーヴェイを演じた琴葉のことを言っているのだろう。
 

 
「アシュリー……」

 はい琴葉さん早かった。正解です。
 即座に役に入らないと気が済まない癖とかあったっけ。メモしておこう。
 ん、そうなると百合子は……?

「百合子はそういうの無くない?」
「琴葉さんはデストルドー総帥を演じていたじゃないですか」
「敵組織だよね?」
「はぁ~。まったくプロデューサーさんは分かっていませんね。私は一度闇落ちしているんですよ?」

 闇落ちしたことを嬉々として話すヒロインは百合子くらいだと思う。
 目線を横に逸らしながら首を傾げながら肩を竦める姿はハリウッド女優さながらだ。妙に腹が立つこと以外は。

 たまらず琴葉の方に目線を向ける。琴葉は琴葉でどんなシーンがあったか思い出しているようだった。真剣に考えなくて良いから。
 助けを求めて静香と志保に目線を向ける。二人は軽快に話し出そうとして息を吸う百合子をチラリと見た後、お互いに目線を合わせて肩を竦めている。いつからこの事務所は西海岸に移転したんだ。ていうか息合いすぎだろ君たち。
 

 
「マイティセーラーである私はデストルドー総帥の琴葉さんに洗脳されてダークセーラーとなりました。あの正義感に溢れ、最強と謳われた私が破壊の衝動の魅力に抗いながらも、なすすべなくデストルドーの暴力による支配を崇高してしまうんです」
「うん……?」
「絶対に悪の力には屈しないと、捕獲されながらも洗脳に対抗し続けたマイティセーラーがですよ? 本編ではその過程は語られませんでしたが、幕間では何があったと思いますか!?」

 徐々に熱を上げていく百合子だったが、本気で何を言いたいのか分からない。
 でも何故か罪悪感は感じなかった。
 

 
「それは……愛ですよ、愛!」
「えっ……」
「百合子ちゃん……?」

 今この場にいる者の意見が1:4であることは明らかであった。
 あ、美咲ちゃんがポカンとしてる。1:5になりました。
 

 
「洗脳される直前のコトハ総帥のマイティセーラーを認めるような発言。洗脳後も私に注がれる確かな信頼感。そしてただの駒であるはずの私に対してどこか優しさを感じる対応。これを愛と呼ばずに何と呼びますか!?」
「洗脳かな……?」
「志保、百合子の頬を引っ張れ」
「いや私は……、静香がやりなさいよ」
「百合子、ごめんね」
「みひゃ!?」

----------------------

「と、とにかくですね。私たちはイケメン琴葉さんが大好きなんです。」
「それが言いたいだけにしては前置きが随分長かったな」

 わざとらしく頬に手を当てる百合子を冷ややかな目で見ながら、どうやら正気に戻ったらしい全員が事務室のソファに腰を落ち着けた。
 琴葉は事務机のチェアに腰掛けているため、全員が琴葉に向き合っているような形になる。その視線を感じたのか、琴葉は先ほどまでピチッと揃えていた脚をわざとらしく組んで見せた。
 歓声が上がった。全然正気じゃなかった。
 

 
「それで、琴葉さんのイケメンっぷりをどうやって磨いていくかという話ですけど、プロデューサーさんは何かプランがあるんですか」
「ちょい、ちょい待って、その話はまだ……」

 ん?
 待てよ、どうしても状況が状況なだけにツッコミに回らざるを得なかったが、彼女たちが場の流れをぶち壊すまで俺は何を考えていた?
 俺は琴葉を調子に乗らせることを考えていたはずだ。そして彼女は今椅子の上で慣れない脚を組んで胸を張っている。
 ならば、765興行、もとい765プロダクションのプロデューサーたる俺がすべきこととは。
 

 
「そうだな、今まで王子様のような役柄が多かったから別のタイプのイケメンも練習してみるのはどうかな」
「えっ……!?」
「ハイ! それなら私、琴葉さんにやって欲しいシチュエーションがあります!」

 困惑した琴葉が脚を正すよりも早く、百合子の手が上がった。
 何やら百合子が脳内でしたためていたであろう資料集を唇から展開し始めたが、余白が足りないのでここでは割愛する。
 

 
 要約すると、以下のようになる。

「なるほど。世話焼きの年上幼馴染お兄ちゃんといったところか」
「理解が早くて助かります!」
「どうして今の説明で分かったんですか?」

 静香は理解が追いつかなかったらしく、訝し気な視線を百合子と俺に向けている。年上やぞ。
 志保は何とも言えない表情をしている。
 絵本が好きな彼女のことだ。百合子の超速再生の設定説明にもきっと対応出来ているのだろう。ただ彼女が怖いくらい無表情だった。明らかに感情を隠している。
 

 
「えっと、百合子ちゃんが幼馴染っていうことで良いのかな……?」
「はい! 寝坊して家から飛び出した私を玄関前で待っていてください!」
「細かいな」

 思わず突っ込んでしまったが既に役作りに入っている琴葉と、最初から何も聞いていない百合子には届かなかった。
 まるでスキップをしているかのような軽い足取りで事務室から出ていく百合子。
 志保と二言三言交わしてからパーティションに寄りかかる琴葉。
 真面目な顔でアドバイスした志保。
 未知との遭遇に困惑と期待が半分ずつの静香。
 すごい空間だここ。

「いっけな~い! 寝坊しちゃった!」

 そんなベタな。
 

 
「よっ」

ソファに座っていた静香と美咲ちゃんの背筋がビクッと伸びた。美咲ちゃんはいつの間にかソファに移動していた。アイドルみたいなもんだからいっか。
 志保はというと「手を上げたりせずに、寄りかかっている壁から背中を浮かせるだけで待っていたことを表現しているのね。敢えて名前も呼ばないことで日常感や距離の近さも伝わってくる。流石琴葉さん……」と冷静に分析していた。どうした。
 

 
「琴葉くん、待ってなくて良いって言ってるのに!」
「百合子と一緒に行かないと親がうるさいんだよ。ホラ、行くぞ」
「あ゛ぁ゛っっ!!!」

 百合子が膝から崩れ落ちた。
 両の掌で顔を覆っている。どこか怪我をしたのだろうか。頭とか。
 

 
「百合子さん、堕ちるの早くないですか!?」
「だって、だって。本当は好意を持っているのに素直になれなくて親を言い訳に少しでも一緒にいたい、ちょっとぶっきらぼうな幼馴染なんて、そんな、そんなの……」

 理解が早い。学業でもその理解力を発揮してほしい。
 顔から耳まで真っ赤に染まってプルプルと震えながら蹲っている。
 美咲ちゃんがちょっと心配して救急箱の方に目線を向けている。手を広げて制しておく。美咲ちゃんに迷惑かけちゃだめでしょ百合子。
 

 
 琴葉に「静香ちゃん、どうだったかな」と聞かれた静香が「あっ、うっ」と狼狽えている。この流れでいくと次のターゲットは静香だろうか。
 心なしかいつもよりも顔が近いように見える。静香の顔がみるみる赤く染まっていく。
 その様子を見て琴葉に何かのスイッチが入ったらしい。
 ごく自然な所作で静香の方に手を乗せる琴葉。静香の細い肩が再びビクッと飛び上がる。
 普段は琴葉より背が高い静香だが、今は静香がソファに腰掛けているため琴葉が見下ろす形になっている。
 恐る恐る顔を上げる静香が妙に小さく見える。
 

 
「可愛いよ、静香」
「ひんっ」

 頭からポシュウと何かを吹き出しながら静香がソファにズルズルと沈んでいった。
 もしかすると弊事務所のアイドルは防御力が足りないのかもしれない。今度装備を見直してみよう。
 やり切ったであろう琴葉がこちらを向いた。その表情はいつもの田中琴葉だった。いつも通りの田中琴葉の顔を見てこんなに安心すると思わなかった。ありがとう田中琴葉。
 

 
 さて、そんな日常の平和を噛み締めたのも束の間。今度は志保から謎のオーラが燃え盛っていた。もう少し平穏を謳歌したいものだが、765プロというのはこういうものである。
 ちなみに百合子と静香はダラリと身体を床もしくはソファに投げ出してピクリともしていない。いくつもの犠牲が積みあがった先に平和があるのだ。

「私はギャルをやります」

 決意に満ちた聞きやすい良い声だったが意味は頭に入ってこなかった。
 ギャルを? 志保が? なんで?

 多分考えるよりも感じなければならないのだろう。どうやら俺が演技の道を志すのは難しいらしい。 
 

 
 なんかもう琴葉は「私はどうすれば良い?」とは聞かなかった。
 志保が先の言葉を吐いてからすぐにクルリと背を向けてしまったせいで反応出来なかったのかもしれない。
 ただ、素人である俺から見ても志保の背中は強い意志を放っていた。
 志保は事務机の椅子に手をかけて一つ深呼吸をした。
 戦いが、始まる。
 

 
 ドカッ、と粗雑な音を上げて志保が椅子に深く腰かけた。背もたれがギシッと軋むと同時に、志保の左足が持ち上がり、右ひざの上に組みあがった。一連の流れがあまりにもスムーズで、初めからそのポーズであったような錯覚すら覚えた。
 その姿勢のまま、志保は顎で琴葉を睨みつけた。視線は琴葉に一直線に向いているのに、俺と美咲ちゃんは蛇に睨まれたような感覚に包まれた。
 ただ一人、琴葉だけが怯まずにズンズンと志保の方に歩みを進めた。

「北沢さん、学園祭の準備、手伝ってもらわないと困るんだけど」
「はぁ? やりたいヤツでやれば?」
「そうはいかない。これはクラス全体の行事だ。一人でも欠かすことは出来ない」
 

 
 あぁ、これは反抗的なギャルと堅物な委員長だ。しかしハーヴェイ君のような苦労系愛され生徒会長ではない、毅然として男らしく、皆から頼られる委員長だ。
 二人は言葉を交わさない。
 しかし、その無音の空間すら二人に支配されていた。目線が、呼吸が、間が、二人だけの空間を作り出していく。

 ジッと睨み合っていた二人だったが、志保が「チッ」と悪態付きながら目線を外す。合図だ。
  またしても粗雑に志保が席を立ちその場を去ろうとするが、その腕を琴葉が掴む。振りほどこうとするが、解けない。もう一度力を入れようとするが、腕を睨みつけるだけで抵抗はしない。男性と女性、力の差は歴然だ。
 

 
「離せよ」
「離さない」
「うざい」
「構わない」

 身体的な力強さだけでなく、精神的な揺さぶりにも動じない。
 梃子でも動かないであろう委員長に捕まってしまい、ギャル沢志保は心底面倒くさそうな溜息をついた。
 その様子を見ていた委員長もまた溜息を一つ。しかし、どこか優しさと熱が感じられる溜息だ。
 その時だった。
 

 
「きゃっ」
「まったく、昔の志保はあんなに可愛かったのにな」
 
 琴葉が勢いよく腕を引き寄せ、志保を胸中に抱きしめた。
 志保が小さく悲鳴を上げて琴葉の胸に収まる。本来の身長差は逆なのに器用なものだ。
 美咲ちゃんが「あっ!」と声をあげた。何か分かったのか青羽。

 
「これはみんなに隠れて付き合っている幼馴染ギャルと堅物委員長ですよ!」

 名探偵美咲ちゃんの誕生だった。美咲ちゃん意外とそういうの詳しいんですね知りませんでした。
 それと同時に美咲ちゃんが「わぁ~!」と言いながらクネクネし始める。音無さんに近い動きだ。765プロ事務員の業務継承は滞りなく行われているらしい。
 再び志保と琴葉に眼を移すと、志保が小さく「バカ……」と呟きながら琴葉の背に弱々しく手を回していた。
 この様子を見たからか、更に大きくクネクネし始めた。確かに情熱的で、様々なカタルシスを感じる。
 

 
 美咲ちゃんの頭からピンク色の雲が飛び出し始めたころ、志保の「はい、ありがとうございました」という掛け声と共に琴葉は志保を解放した。
 気付けば志保の表情もいつもの北沢志保に戻っていた。しかし相変わらず感情は読み取れない。

 フラフラとソファに近づいていき、「ありがとう、ございました」と呟いたと思ったらそのままうつ伏せにソファに倒れ込んだ。
 ソファの上で溶けていた静香の身体が衝撃で浮き上がり、肺から空気が押し出されて「ふはっ」と音が鳴った。
 

 
 なんてことない昼下がりの劇場の事務室。床に倒れている死体が一体、ソファで液体と化している死体が二体、心がどこかに飛んで行ってしまった美咲ちゃんが一人。
 その全ての引導を、目の前の一人のイケメンが渡したのだ。

「プ、プロデューサー。ど、どうでしたでしょうか……?」
「あ、あぁ……」

 ここまで平静を保っていた俺だが、どうやらここまでのようだ。
 前後不覚に陥りながら、ソファに眼を向けるも既に累々とした死屍で満員だ。
 

 
 なんとか足に力を込めているが、既に膝が笑っている。
 きっと四人とも、こんな気持ちで逝っていったんだろうな。それも悪くないと思い始めてきてしまった。
 呼吸が浅くなり、膝の震えが徐々に大きくなっていく。

「イケメン琴葉、最高……」

 薄れゆく意識の中で最後に見た光景は、事務椅子からクッションを引っ手繰ってコチラに駆けよってくるイケメンの姿だった。


おわり
 

終わりました。HTML依頼出してきます。
イケメン琴葉の供給が多くて助かる。

>>1琴葉好きだねぇ、スタエレのやつからメイン5連続じゃない?

田中琴葉(18)Vo/Pr
http://i.imgur.com/dtMSwl7.png
http://i.imgur.com/GkOOI7n.png

>>3
青羽美咲(20) Ex
http://i.imgur.com/N78dpoq.png

>>9
七尾百合子(15)Vi/Pr
http://i.imgur.com/A6wziMV.jpg
http://i.imgur.com/oNaYKxk.jpg

北沢志保(14)Vi/Fa
http://i.imgur.com/KhfPetV.png
http://i.imgur.com/00gG7br.jpg

最上静香(14)Vo/Fa
http://i.imgur.com/ogWUjML.jpg
http://i.imgur.com/RTkZkBc.png


>>37
いつもありがとうございます。
琴葉は何をしても面白いのでギャグ時空に放り込みがちですね。他の子も色々書いていきたいです。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom