伊織「何かできることはないかしら…」 (62)

律子「…というと?」

伊織「こんな事態になって、もう一年よ?もっと私たちにできることがあるはずよ」

律子「とは言っても事態が事態だからね…集まったり歌ったりっていうのは難しいわ」

伊織「…こういう時にみんなを勇気づけるのがアイドルの役目じゃないの?」

律子「…皮肉なものよね」

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亜美「んっふっふ~」

真美「お困りのようだね、いおりん!」

律子「亜美!?真美!?」

伊織「何か考えがあるっていうの?」

亜美「もちのろんっしょ!」

真美「真美たちは遊びの天才だよ?どんな状況でも、楽しむ方法は考えてるのさ!」

律子「うーん、まあ言わんとすることはわかるけど…」

亜美「実際765プロの何人かは亜美たちがアドバイスして活動に取り入れてるかんね?」

律子「え!?そ、そんなの聞いてないわよ!」

真美「りっちゃん通したら怒られそうだったので…」

亜美「全部兄ちゃんを通しました」

律子「ぐっ…何の相談も無く…」

伊織「既にろくでもない感じが出てきたわね…」

亜美「ほらほら、こっち来て来て!」

伊織「ちょ!?引っ張らないでよ!」

真美「りっちゃんはお仕事頑張ってね!」

律子「待ちなさい!逃げるってことは絶対ろくなアイデアじゃ…」

亜美真美「「ばいばーい!」」

律子「くっ…一体どんな活動してるの…」

亜美「ふぅ、危なかった…」

伊織「別に部屋を移さなくてもよかったじゃない」

真美「りっちゃんには内緒なの!」

伊織「そういうことするから信用が無くなるのよ!」

亜美「うおっほん!それではいおりんにこの状況でもできる活動をいくつか紹介しちゃうよん♪」

真美「まずはこれ!『クラウドファンディング』」

伊織「あぁ、なんか名前は聞いたことあるわね…なんかこう、新手の詐欺みたいなやつよね?」

亜美「全然違うYO!」

真美「クラウドファンディングっていうのは、やりたいことがある人を支援するためのシステムだYO!」

伊織「そうなの?」

亜美「例えばはるるんなんかは…」

『765プロのライブを地上波に流したい』

伊織「え?こんなことできるの?だって放送するためにはお金が…」

真美「それを集めるのがクラウドファンディングだYO!」

亜美「ほら、達成率を見て」

伊織「達成率?」

876%

伊織「えぇ!?な、何よこの数字!?」

真美「はるるんは『765プロのライブを地上波で流す』ために必要なお金を八回分集めたってことだYO!」

伊織「凄すぎるでしょ!?」

亜美「ね?凄いっしょ?」

伊織「どうしてこんなにお金が集まるのよ…この人たちに何の得があるっていうの?」

真美「そこがクラウドファンディングのミソなんだYO!支援する人はお金を出す代わりにいくつかある『リターン』を選べるんだ」

伊織「リターン?」

亜美「例えば今のはるるんのやつだと…」

3000円 無制限
天海春香生写真
レッスン中やラジオの収録中など普段では見ることのできない場面を厳選した生写真10枚セット

5000円 無制限
765プロ10周年ライブDVD(天海春香サイン付き)

10000円 残り0人
765プロ10周年ライブDVD(天海春香サイン付き)+天海春香からお礼のメッセージビデオ

100000円 残り0人
765プロ10周年ライブDVD(天海春香サイン付き)+ライブセットリストに入ってる全曲のシングルCD

亜美「こんな感じでお金を出す人は見返りをもらえるんだYO!」

伊織「なるほどね、それならこれだけお金が集まるのも納得だわ…」

真美「ただいくらリターンがあっても、ゴール設定次第では全然集まらないパターンもあるんだ」

伊織「例えば?」

亜美「まこちんと雪ぴょんは似たようなゴール設定してるんだけど…」

『菊地真プロデュースの菊地真写真集を作りたい』
達成率 3%

『萩原雪歩プロデュースの菊地真写真集を作りたい』
達成率 283%

伊織「全然違うじゃないの!?」

亜美「まあほら、まこちんは…」

『僕の本当の魅力を皆さんにお届けしたいです??フリフリでプリティな真ちゃんをどうぞナリよ♪まっこまっこりーん!』

亜美「こんなこと書いてるから」

伊織「完全に自分の欲望にむけて突っ走ってるわね…」

真美「一方のゆきぴょんは流石だよね」

『最高の菊地真をお見せいたします』

真美「この一言だもんね」

伊織「これだけで283%も集まるのはおかしいはずなのに、何故か納得ね…」

亜美「変わってるで言えば千早お姉ちゃんだよね」

伊織「は?千早が?めちゃくちゃ真面目にしてそうだけど…」

真美「うん、真面目が行きすぎちゃってね、こうなっちゃった」

『無観客無配信ライブを開催したい』

伊織「は?」

真美「無観客のみならず、なんと無配信だよ…」

伊織「ふざけてるでしょ!?なんでこんなことやってるのよ!」

亜美「いや、千早お姉ちゃんだからさ、理由はちゃんとしてるんだよ」

『この度の事態で開催を予定していたソロライブが開催できなくなってしまいました。一度は流行りの配信も考えましたが、配信では権利の関係で使えない曲や演出があると伺いました。全力で行えないライブに意味があるでしょうか?』

伊織「いや、知らないわよ。こっちに投げるな」

『しかし、せっかく仕上げたコンディション。用意してくださった音源。使わないのはもったいない。だから思ったんです。「そうだ、無配信でやってしまおう」と』

伊織「地球一周してアホか!」

真美「因みに達成率は720%だよ」

伊織「アホの変態ばっかりじゃない!世の中おかしいんじゃないの!?」

亜美「まあクラウドファンディングが嫌ならオンラインサロンもあるよ?」

伊織「それもなんかよく聞くけど、正直いいイメージないのよねぇ…なんか宗教っぽいというか…」

真美「それは誤解だYO!」

亜美「オンラインサロンっていうのは説明すると難しいんだけど、ファンの側からも積極的に交流することができるファンクラブだと思ってくれていいよ」

伊織「へぇ、そんなこともできるの?」

亜美「うん、ファン主催のイベントとか、ファン同士の交流もあるよ」

伊織「ファンがイベントを主催するの?」

真美「うん!例えばミキミキのオンラインサロンだと…」

『ミキミキとやるおにぎりコンテスト』

伊織「まあ美希らしいといえば美希らしいけど…」

真美「ファンの人たちが作ったおにぎりをミキミキが食べて評価するっぽいよ」

伊織「そんなことして大丈夫なの?」

亜美「…参加者をご覧ください」

伊織「ちょ!?全員有名和食店の料理長とか、ミシュランで星付きの寿司職人じゃないのよ!」

真美「これがオンラインサロンの凄みなんだよ。主役は主催者だけじゃない。集まったプロフェッショナルたちがそれぞれでも活躍することができるんだ」

亜美「みんながミキミキの魅力で集まってるんだね」

伊織「…こいつらが全員15歳の女子中学生に夢中だと考えたら日本は終わりね…」

真美「オンラインサロンはお姫ちんもやってるよ」

伊織「貴音が?どうせラーメン関係でしょ?」

『四条貴音と学ぶらぁめんの道』

伊織「ほら、見なさい。美希と一緒じゃない」

亜美「違うYO!」

真美「よく読んで!」

『私、四条貴音が手ずかららぁめんを振る舞い、らぁめんとは何なのか、その深淵にお連れいたします』

伊織「いや、あんたが作るんかい!?」

亜美「因みに参加者は一般の人も多いけど、半分以上が全国各地の二十朗とそのインスパイア系のラーメン屋さんの店長さんだYO!」

伊織「なんでそいつらに教える側になってんのよ!?」

真美「うーん、オンラインサロンも気に入らないってなると、後はYouTubeくらいしかないね…」

亜美「全く…いおりんはわがままなんだから…」

伊織「え?これ私が悪いの?」

亜美「まあYouTubeならいおりんもそこまで嫌じゃないっしょ?」

伊織「えぇ、流石にもうYouTubeは市民権を得たんじゃない?でもだからこそ、新規参入は厳しいと思うけど…」

真美「んっふっふ~♪それがあるんですなぁ、まだまだいける方法が…」

伊織「ふぅん、そのまだまだいける方法
とやらを教えなさいよ」

亜美「それはズバリ…『企業チャンネル』!」

伊織「『企業チャンネル』?」

真美「そう!今会社の社長や広報担当の人が自ら出演する企業チャンネルが増えてきてるんだYO!」

伊織「ふぅん、なるほど、考えるじゃない。企業からすれば広告費を代理店に払わなくてもPRができるってことでしょ?」

亜美「まさしくその通り!」

真美「流石はいおりん!オデコと頭が冴えてますなぁ!」

伊織「はっ倒すわよあんたら!」

亜美「765プロチャンネルを作って社長とピヨちゃんがメインで企画とかやっていけばいいっしょ!」

伊織「うーん…」

真美「どったのいおりん?」

伊織「いや、それはそれで面白そうなんだけど、それだと私の出番が無いのよねぇ…」

真美「いやいやいおりん!確かにメインはその二人だけど、せっかくの芸能事務所のチャンネルなんだからアイドルのみんなの企画をやるんだYO!」

伊織「え?そういうのもできるの?」

亜美「というより今の『765プロチャンネル』がそうじゃないかな?」

伊織「え?うちってもうチャンネルもってるの?初耳なんだけど?」

亜美「例えば亜美たちが主役の回だと…」

『765プロシアターの舞台でゲーム実況してみた』

伊織「くだらないわね!?」

真美「音響がガチだったからうるさかったよね~」

伊織「どこにお金かけてるのよ!」

亜美「ちかたないっしょ?ポプマスとの案件動画だよ?」

伊織「あれアンタたちがやってんの!?」

亜美「アイドルマスター!ポップリンクス!」

真美「ダウンロードちてね!」

伊織「案件みたいに言うな!」

亜美「因みに765プロチャンネルはほぼ亜美たちがプロデュースしてるよ」

伊織「だからこんなふざけた企画が通るのね…」

真美「社長はいっつも『面白いねえ』の一言で通してくれるよ?」

伊織「亜美真美に事務所潰されても知らないわよ、あのバカ社長」

亜美「他にもほら、ひびきんも出てるよ」

『帰ってきた響チャレンジ!』

伊織「あら、まともそうな企画もあるじゃないの」

響『はいさーい!今日のチャレンジはなんだ?』

本日のチャレンジは…
『全力ダッシュ』

響『え?それだけでいいのか?』

伊織「確かに企画としては弱いわね。」

亜美『え?ひびきんできないの?』

真美『ひびきんなら面白くしてくれると思ったのになぁ…』

響『な!?じ、自分面白くできるぞ!完璧だからな!』

伊織「ちょっと!あんたらがカメラ回してるの!?響を煽ってまで走らせてどうするつもりよ!」

亜美「まあ見てなって」

真美『ひびきんには、50mを4秒以内に走ってもらいます』

伊織「化けもんじゃない!?」

響『楽勝すぎるだろ!』

伊織「あんたもあんたでどうなってんのよ!」

亜美『そういうと思って…今回は!』

真美『この「坂」を走ってもらうよ!』

伊織「あっ…」

響『なるほどな…坂道なら傾斜がある分自分のスピードを殺せる…そう考えたわけか…』

亜美『そこに気づくとは…』

真美『流石ひびきん!』

伊織「ダメ!乗せられてるのよ!」

響『…舐めるのも大概にするさー…」

亜美『なっ…!?』

真美『ひびきんの纏う空気が…変わった!?』

伊織「白々しいわ!やめなさい!響!乗せられてるのよ!」

響『4秒?いらないさー、3秒でいいよ』

伊織「あんたはコンコルドかなんかか!?」

亜美『そこまで言うなら…』

真美『位置について…用意!』

パァン!

響『うぉぉぉぉぉお!!!』

伊織「あぁ…やっちゃった…」

響『りゃぁぁあ!!!』

亜美『記録…2秒82!』

伊織「あいつアイドルどころか人間辞めたの?」

真美『凄い!凄いよひびきん!』

響『はぁ…はぁ…んっ…はぁん…』

伊織「ほら見なさいよ!これでしょ!?これが目当てだったんでしょ!?」

亜美「えぇ?いおりん何言ってんの?」

真美「これはただただ全力疾走したひびきんが『息を整えてる』だけだよ?」

亜美「ん?何か問題があるのかな?ん?」

伊織「うるさいわ!エロ親父みたいなこと考えるんじゃないわよ!」

真美「え?いおりんにはこれがえっちぃ動画に見えるの?」

亜美「ちょっとどの辺がえっちなのか説明してもらってもいい?」

伊織「やかましいわ!」

真美「でもこの企画好評なんだよ。ほら、コメント欄見て!」

Harukacca 5日前
興奮した

雪の歩み 5日前
次は菊地真さんでお願いします

しじょうたかね 5日
まことかわいらしいひびきですね。とくにさかをのぼりきったあとのいきをきらしたときのひょうじょうがさいこうです。ごちそうさまでした。

伊織「ろくなコメントないじゃないの!」

Chi-chan 5日前
12:42

伊織「飛ばすな!せめて全部見ろ!誰か人類を超越した足の速さに言及しなさいよ!」

真美「そういうコメントもあるよ!」

961TKO 5日前
動画の本筋とは関係ないけど足速いな

伊織「関係大有りよ!バカばっかりか!」

真美「もう!いおりんはわがままばっかり言って!」

伊織「え?何?私がおかしいのこれ?」

亜美「そんないおりんには昨日アップしたてのあずさお姉ちゃんマッサージ動画をオススメするYO!」

あずさ『あっ?んっ?はぁん?』

伊織「案の定じゃないの!止めなさいよ!」

亜美「ぐへへへ…何のことかなぁ?」

真美「うっ…うぅ…」

伊織「いや、あんたは恥ずかしがるんかい!徹底しなさいよそこは!」

あずさ『あっ?そ、そんなところまで?』

??『大丈夫ですよ~、施術ですからね~』

伊織「そんでこの揉んでる女、誰かと思ったら小鳥じゃないのよ!」

亜美「顔が出てないのによくわかったね、いおりん」

伊織「声でモロバレじゃない!」

小鳥『ちょっとひんやりしますねー』

あずさ『ひぁ?』

小鳥『安心してください、みんなやってますから』

あずさ『そ、そんなとこ…あん?まで?』

小鳥『ここにリンパが溜まってるんですよー』

あずさ『や?そんなとこ?は、は恥ずかし?んっ?』

小鳥『えぇ?あずささん、うちはそういうお店じゃないんですけど…』

伊織「もうこいつ確信犯でしょ!」

真美「因みに出演料の話をしたら、何故かピヨちゃんから一万円もらったよ」

伊織「はいアウトー!」

亜美「くちゃくちゃになった一万円握らされたよ」

真美「『これで合法的にあずささんの身体に…ゴクリッ…』って言ってた」

伊織「誰かあいつを捕まえなさいよ」

小鳥『動いちゃうと危ないので拘束させてもらいますね~』

伊織「好き放題か!いい加減止めなさいよ!」

亜美「んっふっふ~♪楽しいっしょ?」

伊織「楽しくないわ!…ってあら?」

亜美「ん?」

真美「どったの?いおりん?」

伊織「いや、新しくコメントが…」

亜美「どれどれ?」

真美「どんなの?」

秋月律子 1分前

見 つ け た

亜美真美「「ひぇっ…」」

伊織「まあ…そうなるわよね…」

亜美「あ、亜美たち急用思い出したから!」

真美「あとはいおりんよろしくね!」

伊織「ちょっ!?結局何の役にも立ってないじゃない!」

亜美真美「「じゃあね~!」」

律子「コラ!亜美!真美!待ちなさい!」

亜美「うあうあー!?」

真美「早く逃げないと!」

伊織「…行っちゃった…結局どうしようかしら…何か私にできること…」

やよい「うっうー!おはようございますー!…ってあれ?今日は伊織ちゃん一人なの?」

伊織「おはようやよい。厳密にはさっきまで四人いたけど、今はそうね、私一人よ」

やよい「そうなんだ、みんな忙しいんだね」

伊織「忙しいというかアホというか…」

やよい「せっかく今日のもやし祭りに招待しようと思ったのになぁ…」

伊織「バカたちはほっといて行きましょ」

やよい「あとは響さんも誘ったら来てくれるかな?」

伊織「あいつなら来るでしょ、今日はヤキニクマンもやってないしね」

その後、伊織はクラウドファンディングで高槻家秘伝のもやし祭り用ソースを商品化。その収入は、高槻家の家計を安定して支えることになるのだが、それはまた別のお話。
終わり

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