【モバマスSS】まゆ「大切な日を、大切な人と」 (96)

9月。

暦の上では既に秋だが、ここ最近はまだまだ夏ということが多い。
だが秋らしさを微塵も感じられないというわけでもない。
例えば高い青空、それに張り付いている薄い雲。
ビルの間を吹き抜ける熱風は秋の訪れを許さないが、すれ違う景色だけは僅かに秋を覗かせている。

俺の右手には通勤時にいつも抱えている鞄。左手には小さな包みを握っている。
真っ赤なリボンで華やかに彩られたそれは、ワイシャツ姿のくたびれたサラリーマンが持つにはあまりにも不相応だろう。

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でも通行人の皆さん、今日だけはこの違和感を許してください。
もうあと5分も歩けば事務所に到着するから、そこで左手はお役御免なんです。

包みが左手から解放された瞬間、俺の目に映るのはまゆのどんな表情だろうか。

9月7日は我が事務所が誇る人気アイドル、佐久間まゆの誕生日である。
人気アイドルの彼女は当然メディアへの露出も多く、したがってファンの数も途方もない。
俺のファンは恐らく親と祖父母くらいだろうから、比べるまでもない。切ない。
だからまゆの誕生日を祝ってくれる人も大勢いて、この2週間くらいはどこへ行ってもたくさんの祝福に囲まれていた。
それを彼女の次に近い場所で見てきた俺は、その幸せな日常を最も理解している自信がある。

そんな光景を目の当たりにしてきた俺が、しがない一般人の俺が、
世界中から愛されるまゆの誕生日を祝う意味はあるのか。

P「あるに決まっているじゃないか」

なぜなら俺が一番、まゆのことを祝えるから。
世界70億人の中で俺が一番だ、絶対に。

勘違いしないでほしいが、スタッフや共演者、ファンの方々からのお祝いを下げるつもりなんて毛頭ない。
彼ら彼女らの心からの祝福は全てまゆにも届いている。
俺の祝福が強すぎるだけだから、一番を奪ってしまうのは仕方のないこと。
他のみんなはどうか気にしないでほしい。本当に申し訳ない。まゆを祝う気持ちだけは誰にも譲れない。
これはプロデューサーとしての矜持だ。

俺の頭の中のまゆスケジュール帳によると、今日は朝から事務所に来ているはずだ。
そこで俺は朝の挨拶もそこそこに、持てる限りの全力を彼女への祝福に捧げよう。

ダメだ、のろのろ歩いていては身体を気持ちが追い抜いてしまうかもしれない。
待ち切れなくなった俺は走り出す。まゆの待つ事務所へ。

P「まゆ、待っててくれ....今行くぞ....!」ダッ

P「これを渡せばきっとまゆは

~事務所~

ちひろ「....」カタカタ

ガチャリ

まゆ「おはようございます」ペコ

ちひろ「まゆちゃん?早いですね~」

まゆ「....やっぱり寝付けなくて」

ちひろ「寝付けなかったというと聞こえは悪いですから」

ちひろ「早起きできた、にしてみましょう」ニコ

まゆ「....そうですね」

ちひろ「....」

ちひろ「まゆちゃんも、今日で17歳ですか」

ちひろ「時が経つのは本当にあっという間....」

まゆ「....」

ちひろ「もしかして今」

まゆ『ちひろさん、おばさんみたいなこと言いますねぇ』

ちひろ「って思いました?」プンスカ

まゆ「....ふふっ」クスリ

ちひろ「やっぱり!」

まゆ「そんなこと、思ってませんよ」クスクス

まゆ「だってまゆにとっても」

まゆ「この1年はあっという間でしたから」ニコ

ちひろ「....うん」

ちひろ「私、まゆちゃんが無事17歳を迎えられて嬉しい」

まゆ「....ありがとうございます」

ちひろ「....お誕

ガシャーーーン!!!!

まゆ「!?」

P「まゆううううううううう!!!!!!!!!」ダダダダダッ

P「誕生日おめでとおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」ドタドタ

まゆ「....」

まゆ「....あ」

ちひろ「なんで....」

P「まゆ、おはよう!」

P「打合せって言って呼び出したけどな!実は本当の集合時間は30分後なんだ!」

P「なぜかって?それはな!」

P「俺が一番にまゆの誕生日を祝うためさ!」

P「確かにまゆは散々祝われてたけど」

P「誕生日当日くらいは俺が一番に祝いたいじゃん?」

P「だから職権乱用してちょっと早めにまゆを....」

P「ってちひろさん!?早くないですか!?」

P「....はっ!?」

P「ももももももももももしかしてもう祝っちゃいました!?」

P「ちょっと勘弁してくださいよ~」

P「せっかく俺が一番に祝おうと思ったのになんでそういうことしちゃうんですか~」

P「....まあうだうだ言ってもしょうがない」

P「まゆ、一番じゃないかもしれないけど一番のつもりで言うよ」

P「すーはー....」スーハー

P「....」

P「16歳の誕生日おめでとう、まゆ」

P「今日からもまた一緒に頑張っていこう」

まゆ「....ぅ」

P「嬉しくて声も出ないか~?」

P「ああ忘れる所だった!」ガサゴソ

P「これはプレゼントだ、受け取ってくれ」スッ

まゆ「ぅっ、ぅぇっ....」

P「ん?」

まゆ「おぇぇぇ....」ビチャビチャ

P「」

P「ちょっまゆ、お前、大丈夫か!?」

P「朝から盛大に祝い過ぎたか?ごめんごめん」

P「背中さすってやるから

ちひろ「触らないでっ!!!」バシッ

P「ち、ちひろさん!?」

ちひろ「あなた、なんですか?」

ちひろ「どういう技術か知りませんけど」

ちひろ「まゆちゃんに何の恨みがあってそんな酷いことをするんですか?」

P「恨みて....そこまで言わなくても....」

P「俺はただまゆの誕生日を、プロデューサーとして恥ずかしくないように....」

ちひろ「....私たちが」

ちひろ「どんな思いでこの1年過ごしてきたと!!!」ブルブル

P「や、あの」

まゆ「ハァ、ハァッ、ハッ、ハッ」ゼェゼェ

ちひろ「まゆちゃん!?大丈夫ですか!?」

まゆ「ちひろっ、さんっ、すみっ、すみませんっ....」ゼェゼェ

ちひろ「落ち着いてゆっくり息を吐いて、ふーって吐いてください」

まゆ「ハァッ、フー....」

ちひろ「立てますか?医務室で休みましょう?」

まゆ「ハァッ....ハァッ....」

ちひろ「大丈夫ですよ、ゆっくりゆっくり」

P「ま、まゆ....」

ちひろ「....あなた」

ちひろ「そこにいてください、あとでゆっくり話を聞きます」

ちひろ「でもどんな理由があろうと」

ちひろ「絶対に許しませんよ」ジッ

P「ヒェ....」

スタ スタ スタ スタ

P「....」

P「....やっちまったなぁ」

P「怒りすぎて他人行儀になってたわ....」

P「こりゃ相当キツイお説教になるぞ....」ゲンナリ

スタスタスタスタスタスタ

P「あ、来た」

バンッ

ちひろ「....」ジロリ

P「....」

P「すみませんでしたあああああああああ!!!!!」

ちひろ「....」

ちひろ「....あなた、一体何なんですか」

ちひろ「そんな格好して、やっていいことと悪いことの違いもわかりませんか」

P「へ?」

ちひろ「精巧な被り物なのか特殊メイクなのか知りませんが」

ちひろ「今すぐそれを取ってください、極めて不快です」

P「被り物?帽子なんてしてませんけど?」

ちひろ「声まで似せて、嫌がらせでそこまでしますか!!!」

P「??????」

ちひろ「....警察を呼びます」

P「け、警察ぅ!?」

ちひろ「....今すぐ」

ちひろ「今すぐそのPさんのフリをやめなさい!!!」

P「えぇ?俺プロデューサー本人なんですけど」

ちひろ「....チッ」チッ

ちひろ「....警察を

P「....ちひろさんの」

ちひろ「....?」

P「ちひろさんの趣味はコスプレ!!!」

ちひろ「!?」

ちひろ「ど、どうしてそのことを....」

ちひろ「それは事務所の中でしか知られていないはずなのに....」

P「ちひろさんの好きなジャンルはオネショタリョナもの!!!」

ちひろ「!!?!?!?」

P「....なぜちひろさんが俺のことを偽物だと思ったのかは知りませんが」

P「これでわかったでしょう」

P「ちひろさんの秘密の暴露をできるのは」

P「正真正銘俺だけですから」ニコッ

ちひろ「ぁ....ぁ....」ガクガク

ちひろ「....でもそんなわけっ」

ちひろ「そんな、ありえませんっ!!!」

ちひろ「あなたはPさんを騙る悪趣味な最低の人間なんです....」

ちひろ「喪った未来を見せつけて」

ちひろ「そうしてまた、現実に苦しめられる私たちの顔を見て」

ちひろ「愉悦を感じる人間の屑なんです....」

P「なんでここまで信じてもらえないんだ....」

P「俺そんなに怪しいかなぁ....傷つく....」カキカキ

ちひろ「見た目も声も、喋り方も、そのしぐさだって何もかもそっくり」

ちひろ「....違う」

ちひろ「あなたは、完全にPさん」

P「だからそう言ってるじゃないですか」

ちひろ「何度も夢に見ました、何度も願いました、何度も祈りました」

ちひろ「それでもっ!」

ちひろ「Pさんはもういないんです」ワナワナ

P「....?」

ちひろ「1年かけてようやく乗り越えたのに」

ちひろ「今更っ、蒸し返すようなマネをして....」ボタボタ

P「ちひろさん、え?泣いてる!?」

ちひろ「もうわけが、わかりません....」ビシャビシャ

P「俺のセリフなんですが....」

ちひろ「Pさんは」

ちひろ「亡くなったのに....」ボロボロ

P「....」

P「....んん」

P「....」

P「....ん?」

9月7日は、私の一番大切な日でした。
毎年楽しい思い出ばかりがいくつも積み重なっていって、どんどん特別な日になっていきました。

その日も、素敵な日になると信じて疑いませんでした。
いえ、あえて信じることすら必要はなく、幸せが向こうから私を迎えに来てくれるものだと、
座って待っていれば、いつものようにやってきてくれるのだと、
そう思っていました。

9月7日は、私の一番大切な人が亡くなった日です。
おかしいですね、中身は全く変わっているのに、
一番大切な日であることは変わっていないなんて。

書きためていないのでペースは遅いですが、続く予定です。

まゆ「....」

ガチャッ

ちひろ「....どうですか?」

まゆ「....元々体調を崩していたわけではありませんでしたから」

ちひろ「....うん」

まゆ「....」

ちひろ「....」

ちひろ「....さっきのことなんですけど」

ちひろ「話しても大丈夫ですか?」

まゆ「....知りたいです」

ちひろ「....警察に通報しようと思って、電話を取るつもりでした」

ちひろ「でも」

ちひろ「あの人の表情も、仕草も、言葉も」

ちひろ「全てが....」グッ

まゆ「....」

ちひろ「私もう、わけがわからなくて」

まゆ「....はい」

ちひろ「....ありえないのはわかっているんです」

まゆ「....」

ちひろ「....一応、あの人と私でお互いに話しをした後」

ちひろ「事務所の一室で待ってもらっています」

まゆ「....まだいらっしゃるんですか」

ちひろ「真実がどうであれ」

ちひろ「Pさんを知っている人があの人と会ったら、大騒ぎになりますから」

ちひろ「今はとにかく、隔離という形で」

まゆ「....」

ちひろ「....どうしますか」

まゆ「....」

まゆ「まゆに聞くんですね」

ちひろ「だって....」

ちひろ「....」

ちひろ「....私が決めるわけにはいかないでしょう」

まゆ「....わかりました」

今日は今年の9月7日だと思っていたら、来年の9月7日だったらしい。
何を言っているかサッパリだが、俺が今世界で一番サッパリだ。
いや、俺からしたら今日は来年だが、世間的には今年だな....。この表現は間違っているのか?

そんなことは、ちひろさんから告げられた事実からすれば些細なことだ。
なんでも俺は昨年の9月7日の朝、事務所に到着する直前で車に轢かれて死んだらしい。
....随分荒い作りのドッキリ番組だが、俺も芸能事務所にそこそこ長く勤めている人間である。
あらゆる理不尽にさらされてきた経験で培ったでっかい包容力をもって、番組を成立させてやろうと意気込んだ。
のだが、まゆやちひろさんの様子は明らかに異様だった。演技経験のあるまゆはまだしも、
一般事務員のちひろさんの演技力はどこで培ったんだろうか。

なんてことを考えていたら、僅かに平静を取り戻したちひろさんから、
断片的な情報と俺が死んだという証拠をいくつか聞かされ、見せられた。
そして、そのまま待っていてください、とだけ言って部屋から出ていってしまったので、
俺の方でも考えをまとめてようと試みている最中だ。

窓の外ではまだ煩わしい蝉が、まだ見ぬ相手を求め必死で鳴いている。
朝から小走りで事務所へ向かっていた俺のワイシャツは、湿り気を帯びていて不快なフィット感を生み出していた。
どちらも、体感では数十分前からほとんど変わっていない。湿り気の程度以外は。
しかしちひろさんの話が真実であれば、実際の時間は数十分に加えて丸1年が経過していることになる。

どれくらいの時間が経っただろうか。体感では数十分といったところだが、
最早今の俺の体感など何の当てにもならない。

示された情報や自らの調査によって導き出した結論は、俺が死んだのは真実である、というものだった。
未だにその自覚はないが、逆に言えば俺以外の世界全てがその事実を肯定している、ように見える。
多数決原理に照らし合わせるなら、圧倒的大差での完敗だ。
別にドッキリならそれでもいい、最後のネタバラシでほっと胸を撫で下ろせば済むわけだし。

そりゃ、1年前に死んだやつがいきなり現れて、1人だけ日常生活を送り始めたら混乱するよな。
こっちは知らなかったとはいえ、あの2人に対して途方もない悪行を働いてしまったように思えてならない。

俺自身の方は、突如置かれた状況に頭が回らず、感情の波も脳まで到達していない。
並べられた情報を整理して現実を受け入れたつもりなのだが、まだ身体に反映されていないのだろうか。

コン....コン....

遠慮がちな、途切れ気味の小さなノック。
この身で返事をしてよいものなんだろうか。
対応に躊躇していると、

コンコンッ

俺が気づかなかったと勘違いしたのか、1度目とは違う軽快なノックに変わっていた。
こうも訴えかけられては返事をしないわけにもいくまい。

P「はい....?」

ガチャ

まゆ「....」

まゆ「....失礼します」

P「....お、おう」

まゆ「....」

P「....」

ついさっき(と言っても実際は1年以上前)までは、早くまゆに会いたい、なんて恋する乙女になっていたのが信じられない。
悪寒が走ったのは、気化熱と狭い部屋にしては効きすぎたエアコンの風によって、身体が冷えてしまったからなのか。
それとも、正面に座る彼女の表情が、否応なしに俺の死を自覚させてくれたからなのか。

まゆ「....」

P「....」

まゆ「....あの」

P「?」

まゆ「すみませんでした、取り乱してしまって」

P「ああ、いやいいんだ」

P「俺の方こそ驚かせてしまって申し訳ない」

まゆ「....」

P「....よかったのか、ここに来て」

まゆ「....あのまま逃げていても」

まゆ「まゆの心のざわめきは治まりません」

P「....」

まゆ「....直接話してみてわかりました」

まゆ「あなたはやっぱり、プロデューサーさんなんですね」

P「....そのつもりだ」

まゆ「....」

まゆ「....お話、しませんか」

まゆ「いつもと同じように」

P「....」

P「ああ」

私たちは、現実から目を逸らすように他愛もない話を続けました。
1年という長い離別は、お互いの心を遠ざけてしまっていたんでしょうか。
プロデューサーさんはどこか遠慮がちに、私の内側を探るような語り口。
私は言葉を紡ごうとしても、どこかで引っかかってしまって、滑らかに口から出ていきません。

この人を愛し、恋をしていた頃も、言葉を発するのに時間をかけてしまうことがたびたびありました。
でもそれは幸せの迷路に迷い、微笑みながら苦しんでいたからで、今のそれは正反対。
2人きりで話しているのにこんなに哀しくなるなんて、考えたこともなかったんです。

それでも30分、1時間と話し続けていると、幾らか私の心も落ち着いてきて、
以前のようにとはならなくとも、周りから見ればそう変わらないくらいの和やかさを取り戻せたような気がします。
プロデューサーさんも私の心が溶けていくのを察したのか、ゆっくりといつもの調子に戻していって。

P「そうか、もう立派な売れっ子アイドルだな....」

まゆ「プロデューサーさんがそう言ってくれて、嬉しいです」

P「....まゆも俺が見ないうちに、もっと成長したんだな」

P「もちろんいた頃からすんごい子だったけどさ」アハハ

まゆ「....」

まゆ「....まゆ、この後お仕事があるんです」

P「そうなのか、だったら早く行って来た方がいいんじゃないか?」

まゆ「....」

まゆ「終わったら帰ってくるので、ここで待っていてもらえますか」ジッ

P「?」

P「俺の予定は空白だから構わないが....」

まゆ「約束ですよ」

P「おう」

ガチャリ

P「....」

P「....これでよかったんだろうか」

ちひろ「どうでしょうね」

P「うわっ!?」

ちひろ「お化けが出たみたいな驚き方はやめてくださいよ」

ちひろ「Pさんの方がよっぽどお化けなんですから」

P「それは確かに」

P「あれ、もういいんですか」

ちひろ「何がです?」

P「俺をプロデューサー認定しても」

ちひろ「....ある程度会話を交わせばわかります」

ちひろ「あなたがPさんであることを疑う理由は」

ちひろ「世界の摂理に反しているという一点のみですから」

P「....ありがとうございます」

ちひろ「それに」

ちひろ「まゆちゃんがあなたをPさんだと認めたんです」

ちひろ「何よりの証拠ですよ」フフッ

P「まゆへの信頼度抜群だなあ」

ちひろ「ちょっと違います」

ちひろ「まゆちゃんのPさんへの想い、これに対する信頼度です」

P「そりゃそうだ」アハハ

ちひろ「....」

ちひろ「....ただ、どうして今なんだろうって」

ちひろ「怒りもあります」

P「それは....」

P「....すみません」

ちひろ「....Pさんにぶつけるのもお門違いでした」

ちひろ「私の方こそすみません」

P「いや....」

ちひろ「....」

ちひろ「よく『時間が悲しみを癒してくれる』なんて言いますが」

ちひろ「あれは半分嘘なんです」

P「嘘?」

ちひろ「癒してくれるのではなく」

ちひろ「時間の経過でその人の記憶を失い」

ちひろ「忘れていくだけ」

ちひろ「もしも世界が、それを『癒し』に含めるのだとしても」

ちひろ「癒しが終わる前に人の寿命は尽きていると思います」

ちひろ「気が遠くなるほど、長い道のりなんですよ」

ちひろ「別れは」

P「....」

ちひろ「....この事務所にいる人たちはみんな、Pさんが亡くなってから」

ちひろ「必死で前を向いて、仕事に取り組んできました」

ちひろ「いえ、無理やり前を向くしかありませんでした」

P「....」

ちひろ「特にアイドルの子たちは、立ち止まっている暇なんてありません」

ちひろ「裏方の人間が1人いなくなっても、芸能界は止まりませんから」

P「ですよね....」

ちひろ「まゆちゃんもその1人です」

P「....」

ちひろ「Pさんがどこかで見ていると信じて」

ちひろ「あなたがいた頃の彼女を、遥かに超える輝きを」

ちひろ「放っています」

P「一目見て驚かされましたよ」

P「まゆの成長には」

ちひろ「....」フッ

ちひろ「....」スッ

ジャラ

P「これは?」

ちひろ「1年も見ていないと忘れてしまいましたか?」

ちひろ「社用車の鍵です」

P「?」

ちひろ「今日1日、使えるようにしておきました」

P「....でも俺はここから出ない方がいいって」

ちひろ「幸い今日は、たまたま事務所にいる人も少ないですし」

ちひろ「マスクに帽子に眼鏡、変装道具も持ってきました」

ちひろ「騒ぎにならないようにしてください」

P「....」

P「それは有り難いですけど、色々ありすぎて心ここに在らずというか」

P「正直、どこかへ行く気分じゃないんですよ」

ちひろ「....」

ちひろ「....わかってますか」

ちひろ「今日はまゆちゃんの誕生日ですよ」

P「知ってますよ、丸1年経ってるんですから」

ちひろ「待っていてくださいって言われたんですよね?」

ちひろ「だったら、有事に備えて車くらい持っていてください!」

P「使うかなあ....」

ちひろ「知りませんよそんなこと」

P「....いいんですかね、こんなことしちゃって」

ちひろ「....」

ちひろ「....そんなこと、私が聞きたいです」グッ

P「....?」

ちひろ「....なんでPさんが戻ってきたとかなんとか」

ちひろ「難しいことは明日に回しましょう!」

ちひろ「とにかく今日は、わかっていますよね?」

P「....はい」

ちひろ「お願いしますよ」

ガチャリ

ちひろ「....」

ちひろ「....はぁ」

常識では考えられない、理解できない事象が起こっているのだから、
私の選択が正しいのかは、誰にもわかるはずがない。
それでも彼女の、佐久間まゆの1年間を見てきた私による、
これくらいの肩入れならば、神様は許してくれないだろうか。

ただのエゴなのだろうか。エゴならばそれでもかまわない。
明日、私がどれだけの責任を問われても、甘んじて受け入れよう。
だからどうか、17歳になった彼女を、救って欲しい。

ガチャリ

まゆ「お待たせしました」

P「お疲れ、どうだった?」

まゆ「特に問題なく、先方の期待に応えられたと思います」

P「さっすが」

まゆ「ありがとうございます」

P「で、どうする?」

P「ちひろさんから社用車を使っていいって言われたんだけど」

まゆ「....?」

まゆ「それは大丈夫なんですか?」

P「うーん、俺もそう思ったんだけどな」

P「あった方が便利だから持ってけって」

まゆ「....」

P「ま、ちひろさんもこう言ってるわけだし」

P「この後は付き合うぞ」

P「まゆの行きたいとこやりたいことがあるなら」

P「なんでもするよ」

まゆ「....」

まゆ「....それなら」

まゆ「ご飯、食べませんか」

P「飯?そういやもうそんな時間か」

P「どこ行く?」

まゆ「....まゆのお家で」

P「まゆの!?」

P「さ、さすがにそれはマズくないか....?」

まゆ「でも、外で食べるわけにはいきませんし....?」

まゆ「まゆの家なら誰にも見られず、気兼ねなく過ごせると思います」

P「それはそうかもしれないが

まゆ「お願いします」

P「ああ....」

P「....」

まゆ「....」

まゆ「....こうしてプロデューサーさんに運転をしてもらうの」

まゆ「凄く久しぶりで、不思議な感覚です」

P「そうか、まゆにとっては久しぶりなんだよな」

P「俺はつい昨日もまゆを乗せた感覚なんだが....」

P「このギャップにはしばらく慣れそうにないな」ハハハ

まゆ「....そうですね」

プロデューサーさんの背中を見ながら会話をするのは、1年ぶり。
こうすれば前のように話せていたので、お仕事に行く前、正面に座って顔を見つめながら話したのは失敗でした。
時間が経つにつれて緊張は解け、今までのように戻れたつもりでいましたが、
どうしても身体のどこかは強張っていて、気が付いたら手をぎゅっと握りしめているんです。

プロデューサーさんが亡くなってから、私は脇目も振らず、周囲の雑音が紛れ込まないように、
アイドル活動を続けました。気力の源はもちろん、プロデューサーさん。
死後の世界があるかはわかりませんが、それでもあの人なら絶対に見てくれている。
むしろ身体を失ってしまった分、どの現場もどのお仕事も見られているような気になってしまって....。
成長したと言ってくれたのは、以前よりもさらに努力を重ねたからなのかもしれません。

そうして私はこれまで以上に、プロデューサーさんのために頑張りました。
瞼を閉じるたびに、二度と会えないあなたを思い浮かべて。
瞼を開けるたびに、どこかで見ているあなたを探して。
1日が過ぎれば、心の中のあなたに語りかける。

だからこの1年、忘れた日なんてありませんでした。
でもこれは未練ではなく、別れを受け入れるために必要なこと。
私は今、あなたが亡くなったことをゆっくりゆっくり消化していっているんだと、信じて。

そのはずだったんです。だけど実際に再会してしまうと、どこも違わないはずなのに、
何かが違うような、気持ちの悪い感情を抱きました。それで気づいてしまったんです。
私は、思い出の中のプロデューサーさんと時を重ねているつもりだったのに、
いつの間にか、私の中にしかいない新たなプロデューサーさんを生み出していたことに。

忘れていないと思っていた本物のあなたは、もう私の中にはいないのかもしれない。
そう思うと、一切相違のない本物として帰ってきたあなたの言葉に、私は応える資格があるのかがわからなくなってしまって。

やり場のない虚しさを抱えたまま、お家に誘ってしまったのはなぜなんでしょう。
こんなことをしても、罪悪感が深まっていくばかりで、幸せになれるとは思えません。
けれどもどこかで、プロデューサーさんと一緒なら答えを見つけられるかもしれないなんて、
無責任な夢物語も浮かんでいました。

『成長した』と言ってくれた私は、結局あなたに助けてもらおうとしているんです。

まゆ「あと15分くらいでできますから」

P「はーい」

まゆ「....」ショリショリ

まゆ「....」サッサッ

P「....」

P「....運転中とは逆になっちゃったな」

まゆ「え?」

P「俺がまゆの背中を見て話してる」

まゆ「....ふふ」

P「なんだよ」

まゆ「いえいえ」

P「....」パク

P「....」モグモグ

まゆ「....」ジー

P「....」ゴクン

P「そんなに見られると食べづらいな」

まゆ「すみません、気になってしまって....」

P「や、でも本当に美味いよ」

P「1年ぶりの食事には贅沢過ぎるくらいだ」

まゆ「プロデューサーさんにとっては昨日ぶりなんですよね?」

P「なんとなく言ってみたかっただけ」

まゆ「もう....」

P「なんかまゆの誕生日だってのに、俺が祝われてるみたいで悪いな」

まゆ「昔から復活祭というものがありますし」

P「それはまた違うが」

まゆ「それに、毎年来るまゆの誕生日よりも」

まゆ「プロデューサーさんが帰って来てくれたことを祝いたいです」

P「それは嬉しいな」

まゆ「....」

P「....」

P「....表情はお祝いって感じじゃないな」

まゆ「!」

まゆ「これは、違いますよ....」エヘ

P「....大丈夫か?」

まゆ「....大丈夫です」

P「....」

P「まゆから誘ってくれたから、もういいのかなって思ってたけど」

P「....やっぱり怖いかな」

P「それとも気持ち悪いとか」

まゆ「それは違います!」

まゆ「プロデューサーさんだとわかってからは、絶対に思っていません....」

P「....悪い」

まゆ「....いえ」

P「もし俺が聞けることがあるなら、話してくれないか」

P「今は違うかもしれないが、一応俺の中ではまだ」

P「まゆのプロデューサーなんだ」

まゆ「....」

まゆ「....」

まゆ「....」

まゆ「....プロデューサーさんが帰ってきたとわかった時」

まゆ「....すごくうれしかった」

まゆ「....でも、能天気に喜べたのは最初のうちだけでした」

P「....」

まゆ「帰ってきたプロデューサーさんが怖いわけではないんです」

まゆ「幽霊でもゾンビでも、そんなこと問題ではありませんから....」

まゆ「....まゆは」

まゆ「亡くなったことを静かに受け入れて」

まゆ「自覚のないまま、あなたを」

まゆ「思い出の中だけの存在にしてしまっていたこと」

まゆ「そして」

まゆ「そんな悍ましいことを平気でやっていた自分自身が」

まゆ「....たまらなく、恐ろしい」

P「....」

まゆ「なのに、まゆはこうして」

まゆ「プロデューサーさんに、縋ろうとしているんです」

まゆ「....本当にごめんなさい」

P「....」

P「....まゆが苦しんでるのは、結局俺のせいでもあるよ」

まゆ「....違います」

P「違わない」

P「お前が抱いてる気持ちは、人の死と対峙した時」

P「誰もが持つものだ」

P「だから問題は、理由もなく帰ってきてしまった俺の方にあるわけさ」

P「俺、イレギュラー、まゆ、レギュラー、OK?」

まゆ「....」

まゆ「....プロデューサーさんはそうやって、まゆの欲しい言葉しかかけてくれません」

P「別に媚びへつらってるわけじゃない」

P「俺が伝えたい言葉を、自分で選んで発してるだけだ」

まゆ「あなたのことを忘れようとしていたんですよ!」

P「それでいいんだよ」

P「あえて辛いことや苦しいことを直視し続ける必要なんてない」

まゆ「他の人にとってはそうかもしれません....」

まゆ「でもまゆにとってのプロデューサーさんはっ!」ウルウル

まゆ「プロデューサーさんは....」ポロ

P「....」

歳の割には大人びていて、露骨に顔を歪めたり、感情を昂らせたりすることは極めて稀なまゆが、
目の前で涙を流している。

ならば、すべきことは決まっている。
何年この世界でやってきたと思っているんだ。
どれだけまゆと共に歩いてきたかわかっているのか。

俺がまゆの担当プロデューサーだぞ。覚えとけ。

P「....」ガサゴソ

P「まゆ!これを見てくれ!」スッ

まゆ「....?」

P「誕生日プレゼントだ!」

まゆ「プレゼント....?」

まゆ「いつの間に用意してくれたんですか....?」

P「まあそれはいいじゃないか」

P「(1年前一緒に轢かれたはずなのに、なぜかポケットに入ったままだったってのは伏せておこう)」

まゆ「....開けてもいいですか」

P「どんどん開けてくれ」

まゆ「....」ハラ

まゆ「....」ヒラ

まゆ「....これ」

まゆ「リボン....?」

P「そうそう、リボンとシュシュなんだ」

P「シュシュで結んで、その上からリボンについたフックを差すだけで簡単に....らしい」

P「めちゃくちゃ受け売りなんだが」

まゆ「....」

P「....俺もいろいろ考えたんだが」

P「まゆに渡すとなるとこれしか思いつかなくてな....」

まゆ「....これ」

まゆ「中身はリボンなのに、入っていた箱もリボンで包んであったんですね」クスリ

P「しょ、しょうがないだろ!?

P「プレゼント用のラッピング頼んだらこうなったんだ!」

まゆ「....ありがとうございます」

まゆ「本当に、何よりも嬉しいです....」ニコ

P「....よかった」

P「....」

P「....なあ、まゆ」

まゆ「....?」

P「忘れることは悪じゃないと思うんだ、俺は」

まゆ「....それがどんなに大切な人であっても、ですか」

P「そうだ」

P「今まであったことも、今まで出会った人も」

P「その全てを1つとして忘れないで生きていたら」

P「いつかパンクしちゃうだろ?」

P「なのに、忘れることを悪だなんて言ってたら、辛いじゃないか」

まゆ「....プロデューサーさんのことを忘れたくはありませんでした」

P「別に全部忘れたわけじゃないだろ?」

P「記憶ってのは時と共に薄れゆくものさ」

P「1年も会わなかったら尚更さ」

まゆ「....」

P「まゆはそれでも自分を責めるんだろうけど」

P「俺は逆に、まゆがどれだけ俺のことを想っていてくれたかが伝わったよ」

まゆ「....」

まゆ「どういう、ことですか....?」

P「忘れるっていうのは、人間の持つ防衛本能の1つなんだ」

P「強いストレスを感じると、脳が勝手にその体験を忘れようとするんだよ」

まゆ「勝手に....」

P「だからさ」

P「まゆの中で、俺がほんの少し薄れてしまったのは」

P「それだけまゆが、俺を大切に想ってくれていた証明」

P「こう考えてみたらどうだ?」

まゆ「....愛の証明になるんですか?」

P「愛....」

P「捉えようによってはそう言えるかもしれないな」

まゆ「....」

P「忘れたいくらい辛いことなのに」

P「忘れたくないって想ってくれてわけだしな」

まゆ「....」コクリ

P「ま、まゆを悩ませた諸悪の根源である俺は帰ってきたわけだから」

P「色々と思うところはあるだろうけど」

P「悩み事はこっからゆっくり考えていけばいいんじゃないか?」

まゆ「....そうですね」

P「まゆより俺の方が大変だけどな....」

P「死んだ人間が生き返るとか政府の研究機関に拉致されないか心配だ....」

P「戸籍も貯金も家も車もないし....」

P「俺はどうなるんだ....」

まゆ「....」

まゆ「....プロデューサーさん」ツンツン

P「?」

まゆ「....その時は」

まゆ「まゆが助けます!」

P「まゆが?」

まゆ「だって、今日だけでたくさん助けてもらいましたから」ニッコリ

P「....」

P「自分の担当アイドルに頼るのはちょっと....」

まゆ「....」ジー

P「わかったわかった、にっちもさっちも行かなくなったらな!」

まゆ「はい♪」

P「それじゃあそろそろ」

まゆ「....プロデューサーさん」

P「どした?」

まゆ「....去年の誕生日、あんなことがあってから」

まゆ「1日ずつ誕生日が近づいてくるのが、すごく怖くて....」

P「....」

まゆ「そしたら、あなたが助けに来てくれました」

P「....」

まゆ「大切な日に、大切な人と」

まゆ「同じ時を過ごせたこと」

まゆ「一生忘れません、絶対に」

P「....来年は」

P「もっとすげえことやって上書きしてやるよ!」

まゆ「!!!」

まゆ「約束ですよ....?」ジィッ

P「任せとけ」

P「じゃ、また」

まゆ「はい」ニコニコ

そう言ってお別れした後、鏡の前で貰ったプレゼントを髪につけてみました。
今の私の髪には少し大きすぎるリボンだったので、これが似合う長さまで伸ばしてみましょう。
そしてとっておきの日に、プロデューサーさんに見せるんです。
きっと、喜んでくれるはずです。

ちひろ「....」カタカタ

ちひろ「....」カタカタ

ガチャリ

P「ふぃ~」

P「あ、ちひろさん、遅くまでご苦労様です」

ちひろ「....なんで帰ってきてるんですか?」ジッ

ちひろ「まゆちゃんはどうしたんですか!!」

P「え?もう時間も遅いので解散ですよ解散」

P「当たり前じゃないですか、未成年ですよ?」

ちひろ「....」

P「社用車、助かりました」スッ

ちひろ「....どういたしまして」

P「俺、家も金もないんで事務所に泊まりますね」

ちひろ「ホテル代くらい貸しますよ?」

P「いいですよ、事務所泊もなんだかんだ落ち着くんで」

ちひろ「末期ですねー」

P「ちひろさんに言われたくないです」

ちひろ「はいはい、失礼しました」

P「明日からが忙しそうですね」

ちひろ「前代未聞過ぎてどうなることやらです....」

P「大騒ぎに備えて早く寝ます」

ちひろ「....あの」

P「はい?」

ちひろ「....まゆちゃんとは、どうでしたか」

P「....」

P「....本当にかわいいやつですよ、あいつは」

ちひろ「それだけですか!?」

P「それくらいです」スタスタ

ちひろ「もう!」

ちひろ「....」

ちひろ「....おやすみなさい」ニコ

P「早く帰ってくださいよ、寝づらいですから」

ガチャリ

ちひろ「....」

ちひろ「....本当にまゆちゃんを救ってくれたんですかね」クスクス

翌朝、事務所のどこにもプロデューサーさんはいなくなっていました。
昨日のことなんてなかったみたいに、きれいさっぱりと。

ちひろ「....」

ちひろ「....なんだったんですかね」

まゆ「....誰にもわかりませんよ」フフ

ちひろ「....幽霊、だったんでしょうか」

ちひろ「それとも私たちだけが見た幻覚....?」

まゆ「プロデューサーさんですよ」ニコ

ちひろ「....うん」

ちひろ「....まゆちゃんは大丈夫?」

まゆ「え?」

ちひろ「....Pさんがまたいなくなってしまったこと」

まゆ「....悲しいです」

まゆ「でも」

まゆ「たくさんの時間をかけて、乗り越えてみせます」

ちひろ「まゆちゃん....」ウルッ

まゆ「これがまゆの、愛の証明ですから」

ちひろ「まゆちゃん....?」

まゆ「....それに」

ちひろ「?」

まゆ「プロデューサーさんとは」

まゆ「来年もまゆの誕生日を祝うって約束をしちゃいました♪」

ちひろ「な、なるほど....」

まゆ「2人の約束を反故に出来る人なんていません」ニッコリ

ちひろ「....そうかもしれません」ニコ

まゆ「はい」

目を覚ますと、そこはふかふかのベッド....ではなく、
事務所の応接室に鎮座している、堅いソファだった。
若いころなら多少は効いたであろう無茶が、年を重ねるごとに難しくなっているのを痛感させられる。
いや、今の俺に歳というものはあるんだろうか。生き返った場合の年齢ってどうなるんだ?
享年で固定されるのか?前例がなさそうだし想像ができないな。

妙に長く眠ってしまった感覚があり、環境も合わさって全身が痺れている。
寝起きの気怠さから回復する時間を稼ぐように、スマホを取りだす。
だが今の俺はスマホを持っていない。それどころか、時間を稼ぐ術を一切持ち合わせていない。
仕方なく、ひたすらに天井でも眺めてみようか。

まゆ「おはようございます」

P「....?」

まゆ「おはようございます」

P「....なんで?」

まゆ「こちらにいらっしゃると思ったので」

まゆ「待っていました」ニッコリ

P「えぇ....?」

P「ってあれ?」

P「それ昨日あげたやつじゃ~ん!」

まゆ「はい、どうでしょうか....////」

P「めっちゃいい!」

P「....ん?」

P「なんか、一晩で髪伸びてない?」

まゆ「気合で伸ばしました」

P「やっば....」

まゆ「冗談です♪」

P「冗談か....」ホッ

まゆ「行きましょうか」

P「どこに!?」

まゆ「まゆ、今日がお誕生日なんです」

P「2日連続!?」

まゆ「説明は後にしますね」グイグイ

P「」

まゆ「....約束、楽しみです」ニッコリ

【完】

最後までお付き合いいただきありがとうございました
真面目な話は久しぶりに書きました
次はまたギャグSSにしたいです

過去作次回作共によろしくお願いします

このSSが読者の方の人生の糧に少しでもなれば幸いです

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