憂「暑中お見舞い申し上げます」 (39)

憂「おはよう、純ちゃん」

純「憂……おはよ」

憂「疲れてる?」

純「……夏休みなのに夏期講習なんて嫌になっちゃうよ」

憂「あはは……。受験生なんだから仕方ないって」

純「まぁ、そうなんだけどね。……あれ、梓」

梓「……」カキカキ

純「なにやってるの?」

梓「あ、純。いたんだ」

純「うん。梓は気づかなかったみたいだけど」

梓「暑中見舞いを書いてるんだ」

純「暑中見舞い?」

梓「うん。先輩たちへ」

純「ちょっと見てもいい?」

梓「いいけど……」

純「これは律先輩宛で、こっちが澪先輩宛だね」

憂「こっちがお姉ちゃん宛だ」

純「あれ、一枚足りなくない」

梓「あ、うん」

憂「紬さんには送らなくていいの?」

梓「えっと、それは……」

純「あ、クリアフォルダの中にもう一枚入ってる」

憂「ほんとだ……これ」

梓「あ、見ちゃ駄目」

純「駄目と言われたら、見ないわけにはいかないよ! ……え」

憂「どんなの? ……え」

純「」

憂「」

梓「えっと……話せば長くなるんだけど」

純「あ、うん。どんな理由があって裸エプロン姿の写真をつけた
  暑中見舞いを送ることになったのか聞かせてもらおうか」

梓「///」

梓「実は、以前私がムギ先輩に頼んだんだ。ちょっとエッチな写真を送って欲しいって」

憂「そ、そうなんだ」

梓「そしたら裸エプロン姿の写真送ってくれたから、今度は私が送ったほうがいいかなーって」

純「はぁ……バカップルだ」

憂「そっか。でも梓ちゃん、そのハガキ送るつもり?」

梓「うん? そうだけど」

憂「郵便配達や仕分けの人に梓ちゃんの裸エプロン姿見られちゃうよ」

梓「えっ」

憂「その……紬さんはハガキで送ってきたの?」

梓「ううん、封筒だった」

憂「じゃあ梓ちゃんも……ね」

梓「うん……。封筒に入れて送ることにする」

純「結局送りはするんだ」

梓「そういう純は澪先輩に暑中見舞い送らないの?」

純「うーん。毎日メールしてるから、手書きで何か送ろうって発想がなかったんだけど」

梓「手書きはいいよ~」

憂「梓ちゃんは紬さんと文通してるんだよね?」

梓「うん。純もやってみなよ。絶対澪先輩喜ぶから」

純「そっかなぁ……でも裸の写真を載せるのは」

憂「純ちゃん、別に裸の写真載せなくてもいいから!」

純「そ、そうだよね」

梓「あ、そろそろはじまる」

純「1コマ目は……地理か。苦手なんだよね」

梓「純、得意な科目ってあったっけ?」

純「……」

憂「大丈夫だって。まだ受験まで時間はあるし」

純「そ、そうだよね!」


―夏期講習苦戦中―


純「終わった―」

憂「どうだった、純ちゃん?」

純「う~ん、疲れた」

梓「ちょっと部室に寄っていこっか」

憂・純「うん」

―部室―

梓「流石に菫と直はいないね」

純「まぁ、約束もしてないから」

憂「あ、私、お茶入れような?」

梓「ううん。私が入れてあげる。氷も持ってきてるから」

純「準備万端だね」

憂「梓ちゃん、なんだかムギ先輩みたい」

梓「……はい、アイスティー」

憂「う~ん」

純「おいしい」

憂「夏は冷たいお茶だね」

梓「そうだ。憂は唯先輩に何か送らないの?」

憂「夏はね……送ってもすぐに腐っちゃうから」

純「腐る?」

憂「あ、お姉ちゃんにはよくお菓子とか煮物とか作って送ってあげてるんだけど、夏はね」

梓「憂……なんだかお母さんみたい」

憂「お姉ちゃんの食生活はちょっぴり心配だから」

梓「なるほど」

憂「私も暑中見舞いぐらいは送ろうかな」

純「写真は?」

憂「載せないよー」

純「えー」

憂「なんで純ちゃんが不満そうなの」

梓「それより純は、大学決まったの?」

純「う~ん、それなんだけどねー」

梓「うん」

純「実はまだちゃんと決まってないんだ」

梓「何かやりたいこととかないの?」

純「うん。特には……」

梓「じゃあさ、私と同じN女子大を受けようよ」

純「あ、あずさ?」

梓「もしかして嫌だった?」

純「ううん。そんなことない。でも梓が誘ってくれるとは思わなくて」

梓「同じ大学のほうが楽しそうだし
  やりたいことがないなら一緒の大学に来て欲しいよ」

純「……でも私、C判定だよ」

梓「それは……私と憂でサポートするから」

憂「うん! 純ちゃんの受験をサポートするよ」

純「梓……憂……ありがとう」

純「そういえば憂は決まったの?」

梓「N女子大か製菓学校で迷ってるって言ってたよね」

憂「うん……実はまだ」

梓「そっかぁ」

憂「でも勉強は続けるつもりだよ。ギリギリまで考えてから決めるから」

純「でもその製菓学校ってN女子大の近くなんでしょ?」

憂「うん」

梓「どっちに行っても、憂とは遊べそうだね」

憂「うん」

純「私は受験失敗したらお別れだけど」

憂「あはは……」

憂「じゃあ純ちゃんの目指す大学も決まったことだし、さっきの復習しよっか」

純「えっ」

憂「何か勉強したら、早めに復習するのが知識を定着させるコツなんだよ」

純「言ってることはわかるけど、こう暑いとやる気が……」

梓「ほら、澪先輩と同じ大学に入るためだって」

梓「N女子大学に純が入学できたら澪先輩大喜びするはずだよ」

純「……キスとかしてくれるかな//」

梓「あ、それはどうだろ?」

純「無理かな……」

梓「うん。澪先輩恥ずかしがり屋さんだから、純のほうからしなきゃいけないかも」

純「じゃあ、合格したらご褒美にキスさせてもらおう」

梓「それがいいよ」

―澪の部屋―

澪「はっくしゅん!」

澪「さては純ちゃんが私の噂をしているな……」

澪「えへへ……」ニヤニヤ

幸「りっちゃん、なんであの子ニヤけてるの?」

律「さぁ? 純ちゃんのことでも考えてるんじゃないか」

幸「純ちゃん?」

律「話せば長くなるんだけど……」

―再び部室―

純「ふぅ……やっと終わった」

憂「頑張ったね、純ちゃん」

梓「やればできるじゃん、純」

純「うん。志望校も決まったし、ちょっと頑張ってみる」

梓「あ、そうだ。澪先輩に志望校が決まりましたって書いた暑中見舞い送ってみれば?」

純「え、でも……落ちたら」

憂「大丈夫。純ちゃんは落ちないよ。私が受からせるから」

純「な、なんで憂がそんなに燃えてんの」

憂「だって純ちゃんのためだもん」

純「憂……ありがとう」

憂「どういたしまして」ニコッ

梓「じゃあ、そろそろ帰ろうか。私封筒買わなきゃいけないし」

純「私もハガキを買わなきゃ」

憂「私は……どうしようかな」

―数日後、N女子大学生寮―

澪「どうしたんだ、唯。みんなを部屋に集めて」

唯「えへへ~、じゃ~ん!」

紬「あ、暑中見舞いかしら?」

唯「うん。みんなの分を寮長さんに渡されちゃって」

律「あ、これ憂ちゃんからだ」

紬「あ、私にもきてる、みんなに送ってくれてるんだね」

唯「憂……水着姿が眩しいよ」

紬「あ、唯ちゃんのだけ水着姿の写真が載ってるんだ」

唯「うん……憂かわいいなぁ、久しぶりに会いたいよぉ」

澪「受験で忙しいだろうから会いに行かないって決めたのは唯だろ」

唯「そ、そうだね。今年の夏が勝負だもん」

律「お、こっちは梓からだ」

澪「本当だ」

唯「あずにゃんからだ~、えへへ~」

紬「……」

唯「ムギちゃん??」

紬「私宛には送ってきてきてないの。もしかして、嫌われちゃったのかな?」

律・澪「え?」

唯「そ、そんなわけないよ……あ、この封筒」

紬「?」

唯「これあずにゃんからだ。ムギちゃんあてだよ~!」

紬「わっ、封筒!! 何が入ってるのかな~♪」

紬「……!!」

律「ムギ?」

澪「何が入ってたんだ?」

紬「///」

唯「ムギちゃん?」

紬「これはちょっと見せられないかも」

唯「気になるけど……まあ、いっかぁ」

唯「あ、純ちゃんからも来てるね、1枚だけだけど」

澪「わ、私宛かな?」

唯「そだよー。はい」

澪「純ちゃんわざわざ送ってくれたんだ。……!!」

律「どうした」

澪「純ちゃんがうちの大学受けることに決まったって!!」

律「おお、良かったな」

澪「うん! ……うんっ!!」

紬「そういえば、そのダンボールは? クール宅急便って書いてあるけど」

唯「これは私宛なんだ」

紬「中身はみたの?」

唯「ううん。今から開けるよ」ビリビリ

唯「うん。いつものやつだ」

紬「手作りのお菓子、パン、煮物、佃煮……これはカレーかしら」

唯「憂のご飯はとっても美味しいんだよー」

紬「うふふ、よかったわね」

唯「うんっ! あ、そうだ。ムギちゃんこの前くれたクッキーのレシピ教えてくれる?」

紬「いいけど……どうするの?」

唯「憂にお返しをあげたいなって……しばらく会いにいけないし」

紬「そういうことなら!」

律「は~ぁ」

澪「……ん? どうしたんだ、律」

律「いや、みんな特別な相手がいていいなと思いまして」

紬「りっちゃん……」

律「いや、いいんだ。別に……」

唯「りっちゃん……りっちゃんには私達がいるよ」ギュ

紬「わ、私もいるから」ギュ

澪「あぁ、私もだ」ギュ

律「み、みんな……………あついわッ」バシ

唯・紬・澪「ひ、酷い……」バタン

律「ふぅ……」

唯「あ、最後に一つだけ封筒が残ってた」

紬「これは外国からね。送り主は……和ちゃん?」

唯「じゃあきっと私宛だよ。封筒の中は……なになに?」

唯「『暑いので体調に気をつけて』え、これだけ?」

澪「和らしいといえばらしいけど、えらく簡潔だな」

紬「ちょっとまって、この封筒、唯ちゃん宛じゃなくて、りっちゃん宛だわ」

唯「え……」

律「ちょっと渡」

澪「あ、一番下に何か書いてある……『あなたの和より』だって!?」

律「えーっと……」

紬「え、りっちゃんと和ちゃん付き合ってたの!?」

律「とりあえず返せ!!」

唯「ねー、りっちゃん。私、りっちゃんと和ちゃんのこと聞きたいな」

澪「私にも聞かせてくれよ」

紬「私お茶をいれてくるね」

律「はぁ、仕方ないな。話せば長くなるんだけど。あれは高校生活最後の夏……」


おしまいっ!

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