ゆうぎり「誰もが持っている」 (31)

ゆうぎり「サキはん」

サキ「姐さん?」

ゆうぎり「ちょっと訊きたいことがあるんどすが」

サキ「なんね?」

ゆうぎり「わっちは、そない貫禄がある女なんどすか?」

サキ「急にどがんしたと?」

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ゆうぎり「チェキ会とかで度々ファンのお人が」

 
「5号さんの貫禄すげー」

「あら間違いなく、修羅場を潜ってきとる風格たい」

「なんか、持っとるもん持っとらすね」

 
ゆうぎり「って、言わはったんどすわ」

サキ「まぁ、確かに姐さんは持っとるもん、持っとるけぇなぁ」

ゆうぎり「ほんまに?」

サキ「いやまぁ、時代劇とかだと花魁って『姐さん』と呼び慕われとるし」

ゆうぎり「確かにお仲間の娘達からも、そない呼ばれてましたわ」

サキ「それにグラサンもゆっとったけど、明治維新の裏にこの人ありの『伝説の花魁』ってことは、そりゃもうすごか人なんやろなぁって想像出来るたい」

ゆうぎり「サキはんも『伝説の特攻隊長』でありんすが」

サキ「あたしはあくまで特攻隊長。総長……つまりリーダーである麗子には敵わんばい」

ゆうぎり「やけども、今はリーダーやってはります」

サキ「んまぁ、まとめ役として適任やかなかとかねぇ」

ゆうぎり「ふふっ」

サキ「?」

ゆうぎり「サキはんも貫禄がありすんなぁ、って」

サキ「いやいやぁ」

ガチャ

純子「あっ、いらしてたのですか」

ゆうぎり「あら、純子はん」

サキ「よっ」

純子「お二人が珍しいですね」

サキ「そうか?」

純子「何の話をしていたのですか?」

サキ「貫禄、かな?」

純子「貫禄?」

ゆうぎり「純子はんから見て、わっちは貫禄ある方に見えはります?」

純子「えっ、あっ、はい」

ゆうぎり「どの辺りが」

純子「その、なんと言いますか……ダイナマイトというかミサイルというか」

ゆうぎり「言ってる意味がよく分かりまへんけど」

純子「いえ、こっちのことです。はい……」

サキ(なんとなく気持ちは分かるばい)

純子「あぁでも、踊ってるゆうぎりさんは貫禄がありますね」

ゆうぎり「ほぉ」

純子「練習の時もそうですが、動きがとても綺麗で堂々としていて」

サキ「花魁だからやなかと?」

ゆうぎり「舞はありんしたが」

純子「舞とダンスでは動きが違いますが、それでも気品と迫力があります」

ゆうぎり「芸事も花魁の勤めどす」

サキ「姐さんは位的にはどの辺りで?」

ゆうぎり「太夫でありんしたかなぁ」

サキ「すごかと?」

純子「確か花魁の位でもトップだったかと」

サキ「姐さんもトップスターやんけ! さすがの貫禄や」

ゆうぎり「とっぷすたー?」

純子「なんと言いますか、頂点にいる人のことを指します」

ゆうぎり「でしたら、純子はんも愛はんもリリィはんも、そのとっぷすたーどすなぁ」

純子「いやいや、私はまだそんな」

サキ「謙遜するんやなか」

ゆうぎり「そうどす。幸太郎はんも言ってたました」

純子「えっ、なんてですか?」

 

 
ゆうぎり「純子はんのイケボは貫禄がある、と」

純子「イ、イケボ?」

サキ「姐さん、それ何?」

ゆうぎり「知りまへん」

純子「えぇ……」

ゆうぎり「この前、幸太郎はんが箱を見ながら」

サキ「箱?」

ゆうぎり「愛はんが調べものしてたあの」

純子「もしかしてパソコンですか?」

ゆうぎり「その『ぱそこん』や思はるんどすけどな。それを見ながら」

 
幸太郎「4号の歌声はイケボだなぁ、って書き込みが多いなぁ……」

 
ゆうぎり「そない、言うてはりましたわ」

純子「は、はぁ」

サキ「純子。イケボってなんね?」

純子「し、知りませんよ。最近の言葉なら私はあまり詳しくありませんし」

サキ「んー、言葉のニュアンスからしてアレだな」

純子「アレ、とは?」

 

 
サキ「池の草がボーボー」

純子「ちょっ、それのどこがイケボなんですか!?」

サキ「『池』の草が『ボ』ーボー」

純子「意味が分かりません!」

サキ「言ってるあたしも分からん」

純子「もぉ!」

ゆうぎり「難しいことは愛はんに調べてもらいましょ」

サキ「そういや愛の奴、朝から見とらんけど」

純子「愛さんなら日の出前に出掛けましたよ」

サキ「何処に?」

純子「猪狩りに」

サキ「なんで?」

純子「さぁ」

サキ「あいつも何考えてっか分かんねぇなぁ」

ゆうぎり「それもまた、愛はんの面白いとこどす」

サキ「話を戻すとして、あたしらみんな伝説なんやし、そら貫禄の一つや二つは持っとらすよ」

純子「それが大きいか小さいかは別ですけどね」

ゆうぎり「わっちは大きいんどす?」

純子「確実に一番です」

サキ「純子。多分おめぇの考えだと、ちんちく除いたあたしは一番小さくなるんやなかと?」

純子「な、何を言ってるんですか!?」

サキ「やっぱそっち方面か!」

純子「そっち方面でなくとも、ゆうぎりさんには母親のような貫禄があります」

ゆうぎり「母親?」

純子「みんなが争っていても、それを鎮めてまとめるような貫禄が」

ゆうぎり「わっちに母親は早いでありんす」

純子「母親や生まれた時代順に」

サキ「それやと、たえが分からん」

純子「では享年順に」

サキ「たえが母親やぞ」

ゆうぎり「なら、たえはんはみんなの母親どすな」

サキ「あんなオカンおったら怖い」

ゆうぎり「では、わっちの次の純子はんが母親に」

サキ「純子がオカンやったら、小言うるさそうでグレるな」

純子「はいぃぃぃ!?」

サキ(かと言って姐さんやとビンタ一発ジ・エンドやけぇ、逆らわれへんなぁ)

ガチャ

さくら「ここにおったんや」

サキ「おぅ、さくら」

さくら「何話しとるん?」

純子「まぁ、ちょっと」

ゆうぎり「貫禄やら母親やら」

さくら「??」

サキ「あたしら伝説持ちやから、貫禄とかそこら辺云々を」

さくら「へぇー」

 

 

 

 
さくら「でも私には伝説ついとらんよ」

サキ「あっ」

ゆうぎり「あっ」

純子「あっ」

さくら「私には伝説や貫禄……なかとね?」

サキ「いや、ある! あるぞ!」

さくら「なら、ゆーてみてよ!」

純子(どうするのでしょうか?)

サキ「あのよ、グラサンが言っとったとよ」

さくら「幸太郎さんが?」

サキ「あぁ」

さくら「な、なんて?」

 

 
サキ「さくらの後ろ姿、貫禄あるとね」

さくら「えっ?」

純子「えっ?」

ゆうぎり「えっ?」

サキ「……」

サキ「グラサンがパソコン見ながら言っとったと」

 
幸太郎「ここのさくらの後ろ姿、よかよかよかったいんじゃい」

 
サキ「てな」

さくら「はぁ」

純子(本当なんでしょうか?)

ゆうぎり(よー、分からしまへんけど)

サキ(適当に誤魔化したんだが……ダメか?)

さくら「ま、まぁ、私にも持っとらすもんの一つや二つはあるっちゃね」

サキ(マジか!? 食い付いた!)

さくら「幸太郎さんはステージ裏からでも、私達のことよー見とるんやなぁ」

ゆうぎり「後ろ姿がお好きとは、幸太郎はんも変わってるでありんすなぁ」

純子「隠してるか否かの違いですけど、世の中に変な人間は沢山います」

さくら「ちょっと幸太郎さんとこ行ってくるね!」

サキ「お、おぅ」

純子「良かったのでしょうか?」

サキ「あっ、うん。まぁ、本人が納得したんなら」

ゆうぎり「ほな、わっちは水浴びして来るでありんす」

サキ「ほーい」

シュボッ、スパッ
 
ゆうぎり「ふぅー」

貫禄、風格、個性……

それらは誰もが持っている。

いや――

仮に持っていても、

気付いてないか表に出さないだけかも知れまへん。

小さな発見、大きな発見、

探せば色々と見つかる宝物、

わっちも探して行きたいどす。

以上、ゆうぎりでありんした――

 
ぱそこんの練習もやってみましょ

さくら「♪」

幸太郎(さくらはさっきから何をしたいのか分からん)

さくら「♪」

幸太郎(何をそんな嬉しそうに後ろ姿を見せるのか?)

さくら「どうですか!!」

幸太郎「えっ、まぁ、よかったいのぉ……」

さくら「やったぁ」

幸太郎(さくら……何がしたいのか俺には本気で分からん)

さくら「どやどやどやんすっす♪」

幸太郎(だが、それもさくらを含めたフランシュシュの良い所なのかもしれない)

 

 
おしまい

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