渋谷凛「はい、チョコ」モバP「もうちょっとこう……なんかないの」 (11)


凛「なんかって?」

P「ほら、心を込めて作りました。これからもずっと私のチョコもらってください! みたいな」

凛「ない」

P「最初はあったのに」

凛「それはまぁ、うん。そうだけど」

P「もうない、と」

凛「うん」

P「寂しい」

凛「だってさ、毎年毎年渡してるとほら、慣れるっていうか。そんなに特別感もなくなっちゃって」

P「その割には欠かさず手作りだけど」

凛「……そうやってさ」

P「うん」

凛「察してるなら聞かなくてもよくないかな」

P「だって凛がすごい雑に渡すから」

凛「あれ以外にやりようないでしょ。こんな人目につく場所でさ」

P「じゃあどっか呼び出すとか、二人の時渡すとかさぁ」

凛「……そこまでするのはなんか全力っぽいし」

P「実際全力じゃん」

凛「…………」

P「かわいい」


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凛「……それで、いるの? いらないの?」

P「いる。めっちゃいる」

凛「じゃあ、はい」

P「ありがとな」

凛「ん」

P「いつもの?」

凛「たぶん」

P「開けていい?」

凛「うん」

P「チョコだ」

凛「最初にチョコって言ったでしょ」

P「まぁそうなんだけど。食べていい?」

凛「え、今?」

P「今。だめ?」

凛「別にだめじゃないよ、どうぞ」

P「あーん、とかそういうサービスは」

凛「ないよ」

P「ないかー」

凛「……で、感想は?」

P「超おいしい」

凛「そっか」




P「あとは家で大事に食べるよ」

凛「ん。そんな大したものじゃないけど」

P「あ、そういえばさ」

凛「?」

P「凛に聞いてみたかったんだけど、なんで毎年ビター系のチョコなの?」

凛「あー」

P「特に深い理由はない?」

凛「んーん、あるよ。……みっつくらい」

P「結構あるな」

凛「うん」




P「いっこめは?」

凛「いっこめは単純でさ」

P「うん」

凛「私がそれくらい甘さ控えめのチョコレートが好きってだけなんだよね」

P「あー、そういう?」

凛「うん」

P「そういえば冷蔵庫に隠す良いチョコ、ビター系多めだもんなぁ」

凛「だからまぁ、いっこめはただ単に私の好みってだけ」

P「なるほど」




P「ふたつめは?」

凛「ふたつめも割と普通の理由なんだよね」

P「というと?」

凛「ほら、プロデューサーってさ、仕事柄女性の知り合いとか多いでしょ?」

P「そうだなぁ」

凛「ってことは、やっぱりバレンタインはそれなりにチョコレートもらうわけだよね」

P「んー、どうなんだろなぁ。一般的な量がわかんないけど」

凛「一般的な量はこの際置いといて、結構もらってるでしょ?」

P「まぁ、そうなるのか」

凛「それが義理にしても、本命にしても」

P「うん」

凛「だから、あんまり甘いとくどいだろうし、甘さは控えめの方が食べやすいかな、って思って」

P「え」

凛「?」

P「つまり、だ」

凛「うん」

P「俺への配慮、ってこと?」

凛「そうなるのかな」

P「めちゃくちゃ嬉しい」

凛「……ならいいんだけど」




P「はい、最後。みっつめは?」

凛「みっつめは秘密」

P「え、なんで」

凛「ちょっと恥ずかしい理由だから」

P「えー」

凛「はい。この話おわり」

P「そんなんアリ?」

凛「アリじゃないかな。はい、お仕事に戻って」

P「えー」

凛「まぁ、また気が向いたらね」

P「んー。絶対またあとで問い詰めるからな……」

凛「あとって? どこか行くの?」

P「ちょっとこのあと神谷さんとこのプロデューサーと打ち合わせあるから、資料整理してくる」

凛「そっか、じゃあお邪魔だったかな」

P「全然。チョコおいしかった。ありがとな」

凛「どういたしまして。お仕事頑張ってね」

P「んー」




凛「…………」

ちひろ「あの、凛ちゃん。ちょっといいかしら」

凛「あ、ちひろさん。お疲れ様です」

ちひろ「お疲れ様。盗み聞きしたみたいで申し訳ないんだけど」

凛「?」

ちひろ「みっつめの理由、私にだけ教えてくれないですか?」

凛「……ちひろさんも気になるんですか?」

ちひろ「ええ。あそこまで聞いちゃったら」

凛「んー、誰にも言わないでくださいね」

ちひろ「もちろん、誰にも言わないから安心して」

凛「プロデューサーにとってバレンタインの味が、私のチョコの味になったらいいな、って思って」

ちひろ「……あー!」

凛「だからちょっと恥ずかしい理由、って言ったんです」

ちひろ「じゃあプロデューサーさんが『いつもの?』って聞いてくれたとき、嬉しかったんじゃない?」

凛「それは、まぁ、少し」

ちひろ「もー! 凛ちゃん、かわいすぎてずるいわ……」

凛「ホントにこれは内緒で」

ちひろ「はい、絶対誰にも言わないから安心してね」

凛「じゃあ、その、お先に失礼します」

ちひろ「はーい、気を付けてね。お疲れ様」

凛「お疲れ様でした」








ちひろ「………………凛ちゃんかわいいなぁ」





おわり

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