三峰結華「こがたんと二人きりのお誕生日会」 (20)

昨日はこがたんの誕生日、アンティーカのみんなでこがたんを祝った。

今日はこがたんと三峰の二人きりの誕生日会、二十歳になったからお酒とか買って飲もうって会!


「結華ー、お酒いっぱいあるけど、どれにしたらいいと?」

「ちょっとこがたん、お酒買えるようになったからってはしゃぎすぎだよ」

「だってお酒初体験たい、どれもこれも魅力的に見えるけん」


少し発言に食い違いがある気がする。えっ、こがたん。本当にお酒初めてなの?

三峰の家では大学生になるからお酒を覚えとけって兄さんに飲まされたし、実際大学での飲み会もいくつかあった。

このピュアなこがたんが普通なのか、三峰が汚れきってしまっているのか……。

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「えっとね、とりあえず初めてならここらへんかなー」


お酒が弱いかもしれないからほろよい、大学生御用達の氷結とスミノフをいくつか選んでほいほいとカゴにいれる。

こがたんがビールを飲みたいと言ったためビールを二本、飲めなかったときに割れるようにジンジャエールも買う。

三峰もあまり強いとは言えないけど、これだったら大惨事になることはないだろう。


「結華はずいぶんと詳しいたい。さすっが一ヶ月先輩はすごかね」

「あははー、そうだねー」


ごめん、もう二年近く先輩なんです……。

レジを通す段階で三峰が入れたものではないお酒が複数発見された。

焼酎とウィスキーとストロングゼロ……、いつの間に!?


「こ、このお酒はどうしたの?」

「焼酎はおとんがいつも飲んでたやつたい、あとウィスキーはクール系ボーカルユニットのウチ達にピッタリばい!」

「ストロングゼロは?」

「前にプロデューサーがこれが明日への活力って言ってたけん」


Pたん……、苦労しているんだね。今度からもう少しだけやさしくしてあげよう。

場所は変わってこがたんの部屋。当の本人は上機嫌でおつまみを作っている。

私はお酒を飲んだ訳ではないのに少し胃が痛い。これから始まる飲み会が地獄になる可能性を孕んでいるからだ。

九州の人はお酒に強いと聞いたことがある。こがたんが異常に強くて初めてでも焼酎とウィスキーを問題なく飲める、そんな薄い希望にすがるしかない。

「おまたせー、そんなにお酒見つめてどうしたと、結華はお酒大好きと?」

「うーん、まあ楽しい飲み会は好きかなー。まずはどれからいく?」

「最初はビール!」

「了解!」


グラスに並々と注ぎたいところだが後々に割るかもしれないことを考えると七割りくらいでいいかな。


「それじゃグラス持ってください」

「はい!」

「乾杯!」

「かんぱーい!」


コチンとグラスを合わせたら飲み会開始だ。



「うへ、にがーい!」


想像通りの反応に少し笑みがこぼれる。


「慣れると美味しいけどね」

「よく結華は飲めるたい、先輩は流石やね」

「三峰も最初は苦手だったけど前から大学の飲み会の一発目に飲むことが多かったからね」

「ん?前から大学で飲んでたと?」


ありゃりゃ、墓穴掘ってしまった。観念して話すとしますか。


事情を説明しているとこがたんの顔がどんどん難しくなっていく。表情豊かだね。


「結華はずるい!お酒飲めることを隠してたなんて」

「隠してた訳ではないけどね」


嘘です、隠していました。


「摩美々より悪い子たい」

「三峰に言わせればまみみんはなんちゃて悪い子だからね」

「あー!今度摩美々に言いつけよ」

「嘘です、やめてください」


そんなことになったら機嫌を損ねたまみみんになにをされるかわかったものではない。


「でもまあ、お酒に詳しい結華がいるなら安心たい」

「そうだねー」


そうなればいいけど。

お酒を飲みながら二人で色々な話をした。アイドルのこと、アンティーカのこと、それから二人の好みの男性像は似たようなものだった。特定の誰かを連想させるものだったけど……。

アルコールが入ったからという理由で舌がよく回る。普段話せないようなことを話した。


「あー、身体が熱くなってきたかね」

「おっ!こがたんも少し酔ってきたね」


ほんのりと頬が赤く染まったこがたんは色っぽくて少しドキドキした。眼福、眼福。


そして恐れていた時間はやってくる。


「次はー、ふっふっふ、ウィスキーを飲むたい」

「こ、こがたん。別に今日飲まなくてもよくない?」

「いーや、今日飲むと決めたたばい。せっかくだし全部体験したいけん」


こうなったこがたんは誰にも止めることはできないだろう。短くない付き合いでそんなことは全てわかっている。

しかし、わかった上で止めなくてはならない。

なにをしでかすか予想がつかないからではない。こがたんならなにをするか予想がつくから三峰は全力で阻止しなくてはならないのだ。


「こがたん、ウィスキーは少しでいいからね、小さいグラスでちょびちょび飲むのがかっこいいからね」

「え、そうなんー?」


見るとグラス並々のウィスキーが……、遅かったか。

ふにゃふにゃとこがたんの言動はすでに怪しくなっている。


「せめてなにかで割ろうね、そのままだと飲むのがつらいよ」

「うちだって長崎の女ばい、こんぐらい余裕ねー」


そのままビールでも飲むかのごとく一気にぐびっとグラスを傾ける。

ブーッと吐き出した。見事な毒霧、こがたんはプロレスラーにもなれるんじゃないの?

半分以上三峰にかかったけどこれはご褒美だと思って我慢しよう。


アルコールの気化熱が強制的に三峰を冷却し、否が応でも思考を冷静にさせる。


「あ“-!喉が痛かー!水、みずぅ!」

「こがたん、それ焼酎だから!」


本日二回目の毒霧。もうどうにでもなれ。


「うへぇ、うへへぇー」

「ついにこがたんが壊れた!」

「そんなことなかー、結華―、ちょっとこっち来てー」

「それどころじゃないよ、今水持ってくるから待ってて」

「むー、結華が来てくれないならこっちから行くたい」


こがたんの行動は速かった。パッと舞って、ガッとやって、チュッとはしてないけど。


「はぁーん!」

「結華、変な声出さんといてー」

「いや、すみません。三峰の中の血が暴走しました」


近い近い、スキンシップが激しいよこがたん。

もはや暴力的なそれも当たっているから。当てつけなのかい?

あ、でもお酒臭いけどいい匂いもする。でもやっぱりお酒臭い。




「結華ー、お酒臭かー」

「こがたんのせいだからね!」


三峰の言葉が届いているのかいないのか、こがたんはふにゃふにゃと笑っている。

いつにもましてゆるいな、このまま溶けてしまうのではないのかと少し不安になる。


「結華ー、結華ー」

「はいはい、どうしたの?」

「結華はうちのこと愛してる?」

「ど、どうしたの急に?!」

「前に愛してるゲームやったときに結華だけうちに言ってくれなかったと」

「よ、よく覚えてるね」

「だから結華も言ってくれないかなーって」

「それはちょっと……恥ずかしいかなって」

「なんね!言ってくれるまで結華を褒めるけん。うちは結華が素直に褒められるのに弱いことを知ってると!」



こがたんにばれている!これから三峰の取る選択肢は二つ。

愛してると言うと、こがたんからのお褒めの言葉を耐え切るか。

と、とりあえずお酒を入れよう!

残ってるものは……、ウィスキー、焼酎、ストロングゼロ!ろくなものがない!

消去法でストロングゼロを選ぼう……。

うげぇ、Pたん。これは身体に毒だよ。


「結華はー、かわいくてー、みんなのことが大好きだから良く見ていて、いつもフォローしてくれるたい。結華、いつもありがとね」

「うぅ……」

「アンティーカは誰が欠けてもダメばい、ばってん、結華の存在はうちにとってもみんなにとっても大きな存在たい」

「そんなことないよぉ」

「そんなことあるたい!結華、うちは結華を愛しとーよ!」

「三峰もこがたんのこと愛してるよぉ」

「うん、満足ばい!」


それだけ言うと、本当に満足したようでかわいい寝息を立てながら寝てしまった。

はぁ、こがたんめ。軽く鼻をつまむと変な声を出した。面白い。

……いかんいかん、三峰たちはアイドルだ!そんなことをしていてはダメだ。

ふわふわとしながらも指通りのいい髪を撫でると、どこか微笑んだ気がした。

これだからこがたんは、天性の愛されキャラなんだから。


「恋鐘、私も愛してるよ」

「うちもー……」


……寝てるよね?本当に寝ているよね?

タイミングの良すぎる寝言に思わず疑ってしまう。

……はぁ、騒いだら喉渇いた。なにか飲もう。

おっ、ちょうどよく飲みかけのあるじゃん。

喉が渇いていたのでぐびっと勢いよく飲む。


「これ……、ストロングゼロじゃん!」


不意に訪れた強烈な睡魔に身を委ね、三峰も意識を手放した。


次の日の目覚めは最悪だった。

床で寝たため身体が悲鳴を上げている、そしてなにより頭が痛い。

今日の予定はレッスン……、どうにかして動かなければ。

そして三峰に抱きつくようにして寝ているこの子はどうなのだろうか。

初のお酒なのにあんなに飲んで……、まず大丈夫なのだろうか。


「こがたん、起きられる?」

「うぅ、ゆいかー……」

「こがたん、こがたん」

「そんなに揺すらんといて、頭がばり痛かー……」

「それが二日酔いだよ」


二人して満身創痍、特にこがたんは顔色が悪いのが見てすぐにわかるくらいには重症だ。

さて、どうするか。


「こがたん、動けそう?」

「ちょっと今はきつかー……」


あのこがたんの貴重な消え入りそうな声。百点満点の笑顔は今日はお休みらしい。

三峰はともかく、今日のこがたんは確実にレッスンは出来ないだろう。


「うーん……、今日は二人でサボっちゃおうか」

「そ、そんなことはダメたい!……いたた」

「三峰も今日は辛いから二人して悪い子になっちゃおう」

「みんなに迷惑がかかっちゃう……」

「今度二人でごめんなさいをしようか」

「うーん……」


無理やり動こうとするこがたんをどうにか押さえつける。


「連絡は三峰から入れとくからね」

「みんな、ごめんなさい……」

「ちょっと待っててね」


『もしもし』

「もしもし、三峰です」

『どうしたかしこまって』

「体調が悪いので今日のレッスン、三峰とこがたんはお休みにしてください」

『……恋鐘は今どうしてる?』

「少し横になってます」

『……二人共なんだな』

「二人共です」

『……はぁ、大体の事情は察した』

「ありがとうございます」

『はづきさんには俺から伝えておく、一応アンティーカのみんなにも、自分達からは言いづらいだろ。今回は見逃すが次はないからな。恋鐘にも言っておくように』

「すみません」

『じゃあ、お大事にな』



「こがたん、お休みの連絡してきたよ。全ての連絡はPたんがしてくれるって」

「うぅ……、申し訳なかー……」

「過ぎたことはしょうがないよ、二人で二度寝でもしよ。貴重な二度寝だよ」

「……うん!」


相変わらず辛そうだがこがたんの顔にも少しだけ笑顔が戻った。

怒られるときは二人一緒だから大丈夫だよ。

このあとこがたんと三峰は一緒に二度寝をした。

お見舞いに来たアンティーカのメンバーに散乱したお酒を見られるのはまた別の話。

以上で終わりです。

こがたんの誕生日用に書き始めたはずがなぜか今の時期に完成となりました。

今回のイベントの結華がかわいすぎて恋に落ちそうです。



酔っ払って、全裸になって、いちゃいちゃするこがたんはまだですか?

乙乙
アンティーカの大学生感すき

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