小宮果穂「最近マメ丸の元気がないんです……」 (48)

恋するひとか、世界か。
ヒーローはときに、残酷な選択を迫られる。

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はづき「では今日のレッスンはここまでにしましょう」

智代子「ありがとうございました……ふー、疲れたぁ」

夏葉「智代子、終わった後はしっかりストレッチしなきゃ駄目よ」

凛世「凛世が……お手伝い、いたします……」

智代子「ありがとう凛世ちゃん」

樹里「んじゃ、アタシは果穂と組むか」

果穂「樹里ちゃんごめんなさい。あたし、すぐ出ないといけないんで、夏葉さんのお手伝いお願いします!」

夏葉「そういえば、今日は塾の日だったわね」

果穂「はいっ! ストレッチはお風呂の後しっかりやるんで! お先に失礼しまーす!」

はづき「おつかれ様でした~」

智代子「果穂が高校受験かぁ、なんか感慨深いね」

樹里「放クラ結成のときは小学生だったからな。もう三年になるのか」

凛世「白駒の隙を過ぐるが若し……」

夏葉「荘子ね。ええ、その通りだわ」

智代子「えっと……なんて?」

夏葉「白い馬が駆け抜けるのを壁の狭い隙間から一瞬見るように、月日の流れが早いことの例えよ」

樹里「確かに、アタシとちょこは今年成人だもんな」

夏葉「多感な時期にアイドル活動を続けて……心配していたけど真っ直ぐ成長してくれたわね」

凛世「今も学業との両立もこなし……大変立派です……」

はづき「いつのまにか身長も夏葉ちゃんを超えちゃいましたね」

樹里「デカくなっても果穂は果穂のままだよ」

智代子「うんうん! 我らがリーダーだね!

……


果穂「ただいまー! お母さん、お腹空いたー!」

マメ丸「くぅん……」

果穂「マメ丸、ただいま。あれ……またご飯全然食べてないの?」

樹里「最近マメ丸の元気がない?」

果穂「はい。ご飯も食べない日が増えましたし、散歩もあまり行きたがらないみたいで」

凛世「マメ丸さんは……どこか、具合が悪いのでしょうか……」

智代子「マメ丸と果穂って、小さい頃からずっと一緒だったんだよね?」

果穂「そうです。あたしもマメ丸も、今よりずっと小さかった頃から一緒でした」

樹里「なぁ、柴犬の寿命って……」

夏葉「12年から15年、だった筈よ」

智代子「それじゃあ、つまり……」

果穂「はい。いつも横になってる様子とかが、その、似てましたから」

夏葉「……カトレアと?」

凛世「カトレアさんは……病気ではなく、天寿を全うしましたね……」

果穂「あのときは悲しくていっぱい泣いて、いつかマメ丸もって、考えもしました。ずっとずっと一緒だと思っていても……」

夏葉「その日は、いつか必ず訪れるわ。それは避けようがない。でもね、果穂。私は一日だってカトレアのことを忘れた日なんてないわ。あの子と過ごした過去は、けして無くならない」

果穂「夏葉さん……」

夏葉「マメ丸の傍にいてあげなさい。それが、いまのあなたに出来る最上のことよ」

凛世「凛世に協力できることがあれば……何なりと申してください」

智代子「私もお仕事早くあがるためにリテイク出さないよう頑張るね!」

樹里「リテイク出さないようにするのはいつもだろ!」

果穂「……みなさん、ありがとうございますっ!」

夏葉「――というわけよ」

樹里「アンタからも、果穂の負担が少なくなるように色々調整してくれよ」

智代子「お願いします!」

凛世「何卒……」

シャニP(以下、P)「状況はわかった。ただし、果穂の仕事やレッスン予定に変更はない」

樹里「なんでだよ!」

P「果穂がそうしてほしいと頼んだのか。違うだろ?」

智代子「それは……そうですけど」

P「既に受験生だから無理のないよう調整してあるし、近く大きなライブも控えてる。これ以上減らすわけにはいかない」

P「それに、夏葉のときもそういった便宜は図らなかった」

夏葉「……そうね」

凛世「当時の、夏葉さんを見ているからこそ……」

P「この件で特別扱いされることは、きっと果穂も望んでいない。それ以外でのフォローという意味なら俺も力になるよ」

夏葉「……わかったわ。出過ぎた真似をして、ごめんなさい」

P「経験があるからこそ心配なんだろ? ユニットメンバーとして、みんなも果穂のことよろしく頼む」

……


凛世「失礼致します……」

果穂「凛世さん、夏葉さん、どうぞ上がって下さい!」

夏葉「はいこれ、焼き菓子だけど。ご実家まで来て手ぶらもどうかと思って」

果穂「えぇ! わざわざすみません、ありがとうございます!」

凛世「マメ丸さん、お久しぶりです……」

マメ丸「わふ」

果穂「あ、しっぽパタパタさせてます。凛世さんと夏葉さんに会えて嬉しいみたいです!」

夏葉「ふふ、ほらマメ丸。よしよし」

夏葉「最初は古文からでいい?」

果穂「はい、お願いしますっ!」

凛世「ではマメ丸さん……しばしお待ちを……」

果穂「家で勉強教えてもらうって、なんだか緊張しますね」

夏葉「いままでも事務所でやってきたことを、場所が変わっただけよ」

凛世「前回の復習から、始めましょう……」

……


智代子「マメ丸、こっちだよ~」

マメ丸「はっはっ……」

智代子「ゆっくりでいいよ。よーし到着!」

果穂「この公園も久しぶりです!」

樹里「懐かしいな。このベンチに集まって……マメ丸とカトレアもいたな」

智代子「あのときの樹里ちゃん、すっごいビビッてたよね」

樹里「はぁ、びびってなんかねーし! それに……」

果穂「それに?」

樹里「少なくとも、マメ丸とカトレアは怖くねぇ……な、マメ丸」

マメ丸「わふ」タシタシ

智代子「マメ丸どうしたの?」

果穂「あ、樹里ちゃんの膝の上に乗りたいみたいです。いいですか?」

樹里「……まぁ、マメ丸が乗りたがってるなら、仕方ねぇな」

果穂「ありがとうございますっ! よいしょっと」

マメ丸「わふぅ……」

智代子「あくびも可愛いねぇ」

果穂「すっごくリラックスしてます。よかったねマメ丸」

樹里「へへ……あったかいな」

……


果穂「――でね、今日もプロデューサーさんの車で送ってもらえんだよ」

マメ丸「……」

果穂「あとあと、これ! シニア犬についての資料だって、こんなに沢山!」

マメ丸「……わん!」

果穂「うん、一緒に頑張ろう!」

……


果穂「この問題は、まず方程式を――」カリカリ

果穂「あれ、この臭い……」

マメ丸「くぅん」

果穂「マメ丸、おしっこはここでしなきゃ駄目だよ……ベットのシーツ、交換しなきゃ」

……


マメ丸「アウゥゥン」

果穂「ん……まだ3時……」

マメ丸「アオーン……」

果穂「夜鳴き、増えたなぁ……お昼寝ばっかりしてるから、夜は眠れないのかな……」

……


果穂「マメ丸、ご飯だよ」

マメ丸「……」クンクン

果穂「これも欲しくない? 少しでいいから食べてみて、元気出ないよ?」

マメ丸「……」パクッ

果穂「わぁ、食べられたね! 偉いぞマメ丸!」

マメ丸「ケホォ」

果穂「あわわ! ゲーしちゃった! 大丈夫!?」

マメ丸「きゅぅん……」

果穂「ごめんね……」

……


果穂「お疲れ様でした。お先に失礼します」


樹里「果穂のやつ、ちょっと無理してないか?」

智代子「うん、やっぱりそう見えるよね」

夏葉「迷惑かけまいと考えてくれているのよ……私もそうだったから」

凛世「迷惑など……思いませんのに……」

智代子「でも、何て言ってあげるのが正解なんだろ……?」

樹里「……夏葉、頼む。アンタなら、いまの果穂の気持ち、一番わかってやれるんだ」

凛世「力及ばず……申し訳ございません……」

智代子「夏葉ちゃん、お願い。果穂の力になってあげて!」

夏葉「……まかせて。貴方たちの気持ち、まとめてこの有栖川夏葉が引き受けたわ!」

……


果穂「家に帰ったら、マメ丸の様子を見て、勉強して……」

果穂「い、いけない! 弱気になっちゃ駄目です! ヒーローはいつでも全力で立つんです!」


夏葉「果穂ッ!」

果穂「あれ、夏葉さん?」

夏葉「ヒールで走るのは骨が折れるわね……さ、果穂。ちょっと話しましょうか」

夏葉「そこのベンチに座りましょう」

果穂「夏葉さん、あたし家に帰らないと……」

夏葉「ご家族には連絡してるから、少しくらい大丈夫よ。この公園、前に樹里と智代子で来たらしいわね」

果穂「あ、はい。マメ丸も連れて」

夏葉「マメ丸か……果穂、単刀直入に訊くわ。マメ丸の世話、辛くない?」

果穂「そ、そんなこと……!」

夏葉「……私は、辛かったわ」

果穂「えっ?」

夏葉「カトレアもね、食事から排泄まで全てがもうめちゃくちゃで。学業と芸能活動の傍らで、大型犬の世話が負担にならないっていうのは嘘になるわね」

果穂「……」

夏葉「何より辛かったのは、それまで当たり前だったことが出来なくなっていくカトレアを見ていることだったわ。加えて、カトレアの事を嫌いになってしまうんじゃないかって」

果穂「……っ!」

夏葉「疲労もあって苛立ちが出たこともあったのも事実だけど。それでも、カトレアのことを嫌いになんて絶対になれなかったわ。だから果穂も、マメ丸のことを嫌いになんてなれないわよ」

果穂「そう、でしょうか……」

夏葉「もう一度訊くわね。果穂、マメ丸の世話は辛くない?」

果穂「……ほんとは、ちょっと辛い、です……マメ丸も……ぐずっ、なんにも出来ない自分も……」

夏葉「家族ひとりを介護しているようなものよ。それも、言葉の通じない相手と。大変に決まってるじゃない。大変なら大変と、辛いなら辛いと、認めるのも強さよ。それを認めても、何も悪くないの」

果穂「は、い……」

夏葉「今まで弱音を吐かずよく頑張ったわね。貴方がリーダーで、私は心から誇りに思うわ……でも、もういいのよ」

果穂「ズッ……うぅ……なつは、さん……あ、たし……あたし……」

夏葉「マメ丸とどんな時間を過ごしていたか、思い出してみて。それこそが、果穂とマメ丸の絆だから」

果穂「は、い……はい……」

……


果穂「マメ丸、ただいま」

マメ丸「わん……」

果穂「ね、一緒にアルバム見よう」

果穂「あたしもマメ丸もまだ小さいね。ふふ、並んで寝てる」

果穂「この大泣きしてるのは、散歩のときリード離しちゃって、マメ丸がすごい速さで走っていっちゃって。すぐ戻ってきたけど、ほんっとに心配したんだよ?」

果穂「ジャスティスファイブのヒーローショーのときの! 一緒に写真撮ってもらったね」

果穂「このページから放課後クライマックスガールズのみんながいる。ほら、カトレアもいるよ」


果穂「どこに行くにもいつも一緒で……ずっと、一緒だったのに。お仕事とか部活とか、だんだん構ってあげられなくて……ごめんね、マメ丸」

マメ丸「……」ペロッ

果穂「わ、くすぐったいよ。そんなの舐めたらしょっぱいよ」

マメ丸「くぅん」ペロペロ

果穂「……ありがとう。マメ丸」

………
……


【ライブ当日】


夏葉「マメ丸の調子はどう?」

果穂「食べられるご飯も見つかってから、少しずつ元気になってます!」

智代子「よかったね果穂!」

果穂「はいっ! 今日も朝、いってきますって言ってくれました!」

樹里「マメ丸と話せんのか!? いや、そういや凛世も話が通じてたな……」

果穂「言葉は通じなくても、気持ちで伝わるんです!」

凛世「また、マメ丸さんとお話しをしたいと……凛世は思っています……」

智代子「あ、じゃあさ! 今日のライブの後はちょっとお仕事も落ち着くし、またみんなで遊びに行かない?」

果穂「すぐお昼寝しちゃいますけど、いいんですか?」

夏葉「それなら、みんなでお昼寝すればいいじゃない」

樹里「あぁ、たまにはのんびりすんのもいいんじゃねーか」

果穂「ほんとですかっ! ありがとうございます!」

ピリリリリ

樹里「ん、誰かのスマホ鳴ってねーか?」

果穂「えっと……あ、あたしです! もしもし……うん、もうすぐ本番だから――えっ」

……


智代子「プロデューサーさん、はづきさん! はやく!」

P「おい、どうした!」

はづき「果穂ちゃん!」

果穂「あ……プロデューサーさ、はづきさん、マメ丸、マメ丸が……!」

はづき「果穂ちゃん、つかまって。まずは床じゃなくて椅子に座りましょう?」

果穂「あ、はい……」

P「いつからだ?」

夏葉「ついさっきよ。電話がかかってきて、すぐに」

果穂「容態が悪化して、いまはかかりつけの動物病院から掛けてるって……先生が、もう長くはもたないだろうって……」

凛世「そんな……」

樹里「なぁ、プロデューサー……」

P「駄目だ」

樹里「まだ何も言ってねぇだろ!」

P「何が言いたいかは分かる」

智代子「今から果穂だけでも行って、戻ってくるまで四人で繋げば……!」

P「曲のパート分けや編成も、全て五人なんだ。今までだって、五人全員でやってきた。急な変更はできない」

凛世「せめて……開演を、遅らせることは……叶いませんか……?」

はづき「既に開場もされて、観客席は満員です。ここまできてしまうと、数十分と遅らせることも……」

夏葉「……どうにもならないの?」

P「果穂抜きでは、放課後クライマックスガールズには成りえない。いや、果穂だけじゃなく誰であろうとだ。誰かひとりでも欠けたらいけない。それは他でもないお前たちが分かるだろう?」

樹里「……ちっくしょう!!」

果穂「……控室が静かだと、ここまで観客席の声が聞こえるんですね」

智代子「……ほんとだ」

果穂「はづきさん。今日はファンのみなさんで、いっぱいなんですよね?」

はづき「はい、満席です」


果穂「……」

果穂「……ヒーローは、名前を呼んで待ってる人の元に駆けつけます。背中を向けることは、絶対しません。それがあたしの憧れるヒーローで……そしてあたしは、アイドルです。放課後クライマックスガールズのリーダーです!」

果穂「ヒーローとして、アイドルとして……来てくれたファンのみなさんを悲しませることはできません! あたし、やれます!」

夏葉「……あなたの覚悟、受け取ったわ」

樹里「ああ、アタシ達全員な」

智代子「私も全力で応えるよ!」

凛世「胸に刻み……臨みます……」


果穂「ありがとうございます! はづきさん、メイク崩れちゃったんで直してもらえますか?」

はづき「もちろん。ばっちり直しますね」

智代子「私もぜったい目元崩れちゃってるから直さなきゃ!」

夏葉「樹里、あなたも崩れてるわよ」

樹里「仕方ねぇだろ! それに夏葉もだ!」

凛世「ふふ……全員……メイクを直す必要が、あるようですね……」

……


果穂「みなさーん!! 今日は、最初からクライマックスでいきましょー!!」


はづき「果穂ちゃん、凄いですね」

P「……これでよかったんでしょうか?」

はづき「少なくとも、プロデューサーとしては間違ってませんよ」

……


「「「「「ありがとうございました!!」」」」」

ワアアアアア ワアアアアア



果穂「はぁはぁ……プロデューサーさん!」

P「車はいつでも出せるようにしてる。着替えたらすぐに向かおう!」

果穂「お願いします!」

はづき「後のことは任せてください」

P「すみません、頼みます。お前たちはどうする?」

夏葉「気にせず果穂だけ送ってあげて」

智代子「みんな待ってたら出るの遅くなっちゃいますし」

凛世「大勢で、押し掛けるのも……ご迷惑となりましょう……」

樹里「果穂のこと頼むぞ!」

……


【動物病院】


果穂「先生! マメ丸は!」

獣医「……こちらにどうぞ」

獣医「ここに運び込まれたときには、吐しゃ物で気道が塞がれていて……除去と気道確保はすぐに済みましたが、マメ丸くんにはそこから回復するだけの体力が、もう……」



マメ丸「」

果穂「マメ丸……ふ……っ……マ、メ丸、ごめんね…うぁ…ごめ……うぁわあああああん!!」

…………
………
……


【数か月後】


P「戻りました」

はづき「おつかれ様です、あれ?」

P「どうしました?」

はづき「ふふ、肩に桜の花びらが付いてますよ」

P「おっと。桜か……もう春なんですね」

はづき「そうですねぇ。あ、桜で思い出しましたけど、たしか今日は果穂ちゃんの……」

P「ですね。放クラ全員休みにしてますし」

はづき「みんなで事務所に遊びに来てくれませんかねぇ」

P「どうでしょうね。ひとまず、あそこには行ってるかと。来るならもう少し先ですかね」

……


樹里「水汲んできたぞ」

凛世「お花はこちらに……」

智代子「樹里ちゃん、凛世ちゃん、ありがとう」

樹里「しっかし、相変わらず広い霊園だよなぁ」

智代子「ここって夏葉ちゃんが紹介したんだよね?」

夏葉「そうよ。マメ丸と一緒なら、あの子も喜ぶと思って」

凛世「ここは……静かで、とても良い場所ですね……」


「――みなさーんっ!」


樹里「お、賑やかなのが来たみたいだ」

果穂「すみません、入学式が終わったらあたしの周りに人がたっくさん来ちゃって!」

樹里「まぁそうだろな」

智代子「果穂、高校入学おめでとう! 今度はブレザーなんだね!」

凛世「果穂さん……とてもよくお似合いです……」

果穂「えへへ! 小宮果穂、ハイスクールフォームですっ!」

夏葉「掃除と献花の入れ替えは済んでるわ」

果穂「もう済んでるんですか、ありがとうございます!」

樹里「済んでるっつーか、済んでたんだけどな」

智代子「私たちが来たときには、誰かが手入れしたあとみたい。お供え物も新しいし」

凛世「ご家族の方でしょうか……?」

果穂「どうなんでしょう。特に聞いてませんけど、お兄ちゃんかなぁ?」

夏葉「とにかく、まずは挨拶してきなさい。私はカトレアの所に行ってくるわ」

智代子「夏葉ちゃん私も行くよ。挨拶と、お掃除もしなきゃだし」

樹里「果穂は気にしないでいいからな。報告とか、色々あるだろ?」

凛世「マメ丸さんと……どうぞ、ごゆるりと……」

果穂「はい、ありがとうございます。終わったらそっちに行きますね!」

マメ丸、あたしは元気です。マメ丸は、元気ですか? むこうで、カトレアと仲良く遊んでるといいな。
もう春だね。こんな大きな桜の樹のしたで、良い場所でよかったね。
高校の制服どうかな。似合ってる? 無事に第一志望の学校に合格して、今日は入学式だったんだよ。もう友達も、たくさんできました。

あの日、間に合わなくてごめんね。もう何回謝ったかわからないけど、最期に傍にいてあげられなくて。
あのとき、ステージに立つことを決めるとき、心の中でマメ丸が、それまではいっぱい一緒だったから。それでいいんだよって、言ってくれた気がしたんだ。


前に夏葉さんが「言葉の通じない相手に」と言ってた。言葉が通じなくても、気持ちは通じるんだよね。
夏葉さんとカトレアも、きっとそうだったんだ。あたしとマメ丸みたいに。

通じ合ってたから、どんなに離れていても。住む世界が変わっても。
あたしの……小宮果穂の中に、マメ丸は居続けるよ。
だからあたしは、これからも、

大好きな



【マメ丸と一緒!】小宮果穂


アルバム振り返りのコメントを見たら、考えずにはいられなかったです。
マメ丸、カトレア、ごめんよ……。

ここまで読んでくださった方に、花束を。

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