【シャニマス】チョコしてもいいですか (68)

【シャニマス】普通の私は憧れの先に憧れる
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【シャニマス】私の輝きは智代子いろ
【シャニマス】私の輝きは智代子いろ - SSまとめ速報
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第三作目。地の文多め。
それでもいい方、是非読んでいってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1558702890

 恋の感情というものを、私は味わったことがなかった。どんな味がするんだろう、と疑問に思うことはあるけど私は分かろうとしなかった。

 私の持っている恋の知識は、少女漫画。

 可愛い女の子が自分を守ってくれるカッコいい男の子と出会って、波乱があったりすれ違いがあったり、その果てに付き合ってキス……とかをしちゃう。

 漫画だから都合が良くなってしまうのは分かっているけど、不思議とときめいてしまう。

 そういうものだと解釈している。

 少女漫画で得る浅い知識で満足している私は恋に臆病なのかもしれない。

 今までにも何回か告白されたことがある。

 中学、高校で告白された。

 でも普通の私のどこがいいんだろうって、告白されて思った。

 もしかして都合がいいと思われているのかもしれない。

 私を好き、という感情じゃなく私だからOKしてくれると思われているかもしれない。

 だから、味が分からない。

 妄想だけど、あま~いチョコの味をしているといいな。だけど、それを味わう勇気はまだ生まれてこない。

 久しぶりに恋の感情を味わってみたいな、と思ったのは感じたのはアイドルになってから、かな。

◆◆◆

「智代子」

 厳しいダンスレッスンの休憩中、私の呼ぶ声が聞こえた。

「最近調子がいいらしいじゃないか。スタッフさんの評判も良いって聞くよ」

 プロデューサーさん。

 私を見つけてくれた人。

「プロデューサーさん」

「最近レッスンの様子見に行けなくてごめんな。仕事も1人で行かせちゃってるし」

 プロデューサーさんは私に向かって近づいてくる。

 あ、そういえば私、今汗かいてる。何故だろう、今までは汗かいている姿を見られても恥ずかしくなかったのに、次第に羞恥心を育まれている。

「ぷ、プロデューサーさん! ちょっと待ってください汗を拭くので!」

 少し慌てて私は彼が接近するのを止める。そして自分のカバンの中からチョコ色のタオルを取り出して汗を拭く。

「ん? ああ、別に気にしないのに」

 ああもう! 私が気にするんです!

 心の中で彼に向かって叫ぶ。言葉にはできなかったけど。

 放クラの仲間に汗まみれの姿を見られてもそんなに気にしないというか、恥ずかしくも何ともないのに、なぜプロデューサーさんだけは見られたくないと意識しちゃうんだろう。

 不思議でたまらない。

 ちょっと口の中が甘くなった。まるでチョコの匂いを嗅いで、その甘い匂いが口の中で広がっていくような、不思議な甘さ。

「ああ、そうだ。汗を拭きながらでもいいから聞いてくれるか? 智代子に仕事の話が入ってるんだ」

「え! 私にですか?」

「そう。でも少し悩んでるんだよ。そこで少し智代子と相談できたらな、と思って来たんだ。レッスン後で疲れてると思うけど時間取れるか?」

 仕事の話……かぁ。何だかんだ私のお仕事も増えてきている。これもプロデューサーさんが営業を続けてきてくれたおかげだろう。

 アイドルという特殊なお仕事を、私はちゃんとやれている。前までは絶対に自信がなくて、勝手に落ち込んでいた。

 これもプロデューサーさんが背中をずっと押してくれたから。

 でも、今まではお仕事に関して相談したい、だなんてなかったのに、急にどうしたんだろう。私はお仕事を選別する立場じゃないからどんなお仕事でも受けたい、とは思っているけどなぁ。

「えっと……相談しなきゃならないほどのお仕事って何でしょうか?」

「さっき企画の打ち合わせしてたんだよ。でも智代子が少し嫌がるかなって思ったからさ」

「そんなに危険なんですか? 例えば……バ、バンジージャンプとか、虫を食べるとか!?」

「バッカ言え。大切なアイドルにそんなことさせないさ」

 むぅ……。恥ずかしいことを何の気もなしに言えるんだからずるいなぁ。

「企画内容としては『アイドルが恋を語る』というアイドル雑誌のコラムがあるんだ。それを智代子に書いてくれないか、というのが出版社から来たんだよ」

「雑誌のコラムを私が書くんですか?」

「うん、そうなんだけどな。アイドルが恋を語るっていうのもなぁ……と思ってね。あとさ」

 少し躊躇って彼は口を開く。

「出版社の方がな、やたら『普通』という言葉を使ってくるんだよ。世間が親近感を覚えるアイドルの園田智代子さんに、女子高生目線で書いてほしいってな」

「でも、あんだけ悩んでた智代子にとって『普通』って言葉は嫌なんじゃないかって。俺もさ、少しカチンとしちゃって。どうするか保留にしてきちゃった。今までは智代子の一面を磨くために一つ返事で受けてきたけどさ」

「そ、そうだったんですか……」

 私は普通という自覚はある。けど、それをお仕事関係の人たちに言われるのは……やっぱり深く刺さっちゃうなぁ。

「んで、どうする? 受けなくてもいい。君の判断に任せたい」

 どうしようかな。でもプロデューサーさんがせっかく見つけてくれたお仕事だから……。

 でも、世間が私に対して親近感を覚えてくれていることに少し感動している。

 世間が私を認知して、そんな風に思ってくれているんだ。

「私、やってみたいです」

「……ん、分かった」

 プロデューサーさんは私の目を見て軽く頷いた。何か圧倒された様子に見えた。

 私の目は一体どんな目だったのだろう。

「一応さ、聞いてみていい?」

「はい! 私は確かに普通だと思ってます。けど私のことを認知してくれて、親近感を覚えてくれて。それの期待に応えたいなって思ったんです」

 私がこの企画を聞いて思ったことをスラスラと述べると、納得したようにプロデューサーさんは頷いた。

「そうか。智代子がそう思うならいい」

 じゃあこれ企画書だから目を通しておいてくれ、とプロデューサーさんから書類を渡された。

「コラムは『恋』に関することを自分の解釈で書くんだ。智代子自身が、将来どんな人と結婚したいか、どんな恋愛をしたいか……とか。アイドルらしく、書いてみてくれ。そして出版社やファンのみんなを驚かせよう。『一味ちがうぞ』って思わせてやるんだ」

「はいっ! ……えっ、あっそっか」

 私、恋なんて分からないよ。


 自分の勢いよく飛び出した言葉と裏腹に、少しだけ自信がなくなっていくのが分かった。

◆◆◆

「あ~~もぉ~どうしよ~~!」

 したことのないことは、書けないなぁ。

 でも理想を書けばいいんだ。そうだ、そうだよね。

 理想かぁ……。少女漫画のような恋がしたい、なんて。

 でも、そんなの現実ではありえないから書きたくないなぁ。あ、でもそれがアイドルらしい『恋』なのかなぁ。

 一文を書く前から悩んじゃってる。

 私は何を書きたいんだろう。恋なのは分かってる、それを素直に書けばいいのも分かっている。

「……分からないなぁ」

 その疑問が何なのかも分からない。

 天井を仰いだ。頭がすっきりさせたくても、できなかった。

「プロデューサーさんはどんな恋をしてきたんだろう」

 ボソッと呟く。何故か自分のプロデューサーさんのことを考えてしまっていた。関係ないのに、ファンが欲しいのは私の『恋』なのに。

 そして胸が熱くなる。鼓動が震えている。

 これは何だろう。

 これは私の直感に過ぎない。この不思議な感覚はそのままにしておくべきだと思った。

 これは表に出せない感情、な気がする。だからこの気持ちを押し[ピーーー]しかないのかな。

「明日、みんなに聞いてみよ」

 『恋』は、私だけには解決できない課題だと思った。だから明日はユニットのみんなに聞いてみよう。

 うん、それがいい。私だけじゃ分からないもん。私だけでコラムを書いてくれなんて言われてないもん。

 あっ、そうだ。

『恋は甘いものだと思う。チョコレートのように甘いもの。だけど、本当かどうか分からない。私は知らないから』

 最初の一文はこうしよう。

 きっと甘いものだ。きっとチョコレートだ。

 その期待を込めて、ユニットのみんなと答えを探そう!

◆◆◆

「夏葉ちゃん!」

「あら智代子、おはよう。朝から元気ね」

 事務所に行ったら、ソファーに夏葉ちゃんが雑誌を読みながら座っていた。よおし、ちょうどいいから聞いてみよう。

「うん、おはよっ! あの~夏葉ちゃん……質問があるんだけど……答えてくれる?」

「いいわよ。私に答えられないものはないわよ!」

 自信満々に答えてくれる。これは、期待できそう!

「ありがとう! あのねあのね。夏葉ちゃんは……恋って分かる?」

「前言撤回するわ。私にも答えられないものがあるのよ」

「だ、だよねー」

 まあ分かってたこと。哲学的で難しい問いかけだもんね。

「まさかあなた……好きな人でもできたの!?」

「ち、違うよっ!」

「でも急に聞くからそうなのかしらって」

 不安そうに眉をひそめる夏葉ちゃん。ちょっと急に聞きすぎたかな。

「お仕事で『恋』に関する文章を書かなきゃいけないんだ」

 夏葉ちゃんにお仕事のことを伝える。……と、少し眉をあげ驚いたような表情を浮かべていた。

「へぇ意外ね」

「意外?」

「そう、意外だわって思ったの。智代子がそういうの積極的にやるなんて」

「そ、そうかな……」

「そうよ」

 夏葉ちゃんはきっぱりとハッキリとそう伝える。

「私は絶対その仕事、受けなかったかもしれないわ。だって分からないもの」

「夏葉ちゃんも分からないんだ」

「そうよ。だから智代子の疑問には答えられないわ。ごめんなさいね」

「夏葉ちゃんが謝ることじゃないよ! 私が急に聞いちゃったから……」

「ううん、いいのよ。けど、あなたも私も分からないことを知ろうとしてる。良いことよ」

 腕を組んで自信満々に鼻を鳴らす。

「この経験がいつか身を結ぶかもしれないわね。これから私たちは有名になるもの」

 夏葉ちゃんの宇宙の深淵のように輝く瞳に吸い込まれるぐらい、彼女に凝視されている。

「私たちはアイドルとして恋の歌を歌うかもしれない、私たちが女優として恋する少女の役をするかもしれない。その時、あなたはもう『恋』というものを知っている。あなたはそれを歌い、演じるのに有利になるのよ」

 ……改めて、夏葉ちゃんの考えは綺麗だなぁって思った。すべてをアイドルのために生かす考えができて、すごい。

 私はそんな考えができなかった。もしかしたら誰にでもできない、夏葉ちゃん特有の考えなのかな。曇っていた空に日差しが差し込んでその瞬間晴れの青が視界にぶわーっと現れるような、そんな感覚。

「智代子。私たちにはそのような未来が訪れる。だから、その時はあなたが私たちに『恋』をした時の感情を教えてほしいわ」

「……うん!」

 分かったことがある。

 夏葉ちゃんは、アイドルに恋をしている。だからここまでアイドルとして、自分を高める考えができるんだ。

 かっこいいな。素直な感想が出ちゃうほど。

「でも、その出版社の方はよく智代子を選んだわね」

「えっ? それはどうして?」

「だって智代子は感情豊かだもの」

 感情豊か、なのかな。夏葉ちゃんにそう言われて少し考えた。思い当たる節は……ない。どういう意味でそれを言ったのか、少し不思議に思った。

「私は智代子といると元気になるもの。あなたの感情を存分に出した声を聞くと私の声も呼応するように出ちゃうもの」

「そんな自覚ないけどなぁ……」

「自覚なんてなくていいのよ。あなたの魅力なんだもの。自覚なく出せるものは、正真正銘の魅力よ」

 自信満々だ。嘘なんかついていないって、本心でそう言ってるって分かってしまうほど、優しく心強い。だから、本当に嬉しい。

 気持ちがパーっと華やかになって心が温かくなる。じわーっと熱が広がる。

「自信を持って書いてみなさい! 感情豊かなあなたならきっと良い答えにたどり着けると思うわ! そう思ってあなたにオファーを出したのよ。私はそう思うわ」

「……うん、ありがとうっ! 夏葉ちゃん!」

 逆に自信もらっちゃったな。

 そしてイメージが沸き起こってくる。夏葉ちゃんと話したからかな。

 見てきた世界観が違くて、でも親近感が湧いて。

 文章の方向性を決められる気がする。

 あっ……、そうだ。だったら、みんなの『恋』にしよう。そしてそれを聞いて、私が『恋』がどんなものか、自分の『恋』を最終的に見つけ出す。

 いいんじゃないかな? 面白そう!

 じゃあ夏葉ちゃんの恋は。

「夏葉ちゃんは、今何に『恋』してるの? あっ、いや分からないなら異性以外で考えてほしいなって」

「……そうね、アイドルかしら」

「えへへ、やっぱり!」

「なによ、分かってたんじゃない。そうよ、私は今アイドルに恋しているわ。いま、自分自身を高められる存在だもの。でも、好きなのはそんな私だけじゃない」

 少しだけ目をそらす。ふよふよと視線の先が動いて動いて、ようやく私の目に合わせられる。

「アイドルとしてのあなた達にも『恋』をしてるわ」

「そ、そうなんだ……! えへへ……」

 夏葉ちゃんの頬がほんのりと赤くなってる。

「智代子。恥ずかしいから見ないでちょうだい」

「えぇと、ご、ごめんねっ!」

 そっか、そうなんだ。私も恥ずかしい。だけど嬉しいな。

「夏葉ちゃん、ありがとっ! えへへ……」

『アイドルに恋をしている子もいた。自分自身を高めてくれるアイドルに、恋をしているんだって。ここまで書いたら、分かるかもしれないね。でもその子は、アイドルの私たちも好きって言ってくれた。彼女にとっての恋はちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかった。

 恋はそんなものでもいいんだ、って驚いた。それなら私も見つけられそう! 大切なものを好きでいる感情が恋なら、私のは……』

◆◆◆

「おーっす。ってアレ、今日はチョコだけか?」

「ちょこ先輩! おはよーございますっ!」

 事務所の扉が開き、けだるそうな声とそれとは逆に元気に響く声がこだましていく。

「あっ、樹里ちゃん、果穂! おはよっ!」

 浮かび上がっていたアイデアをメモしていたが、2人がやってきたので一旦手を止める。この次は、ぜひとも2人の考えを付け加えたい。

「ちょこ先輩、今何を書いてたんですか?」

「またサインの練習か? よく飽きねーよな」

 2人の視線は私の手元にあるノートへと向かっていた。私は軽く首を振ると、あのね、と事情を説明する。

「恋?」

 樹里ちゃんは私の話を聞いて訝しげな表情を浮かべている。果穂はポカーンとした表情だ。

「そうなんだ。だから2人にも聞いておきたいなーって思って」

「そんなの、……分からないけどさぁ」

 樹里ちゃんは額に手を当て、唸っていた。

「でも、チョコは少女漫画を読んでるんだから分かるもんじゃねーの?」

「ああいうのは現実的じゃないから……」

「なんだ、結構冷めてるんだな」

 とりあえず2人の恋について聞いてみたいな。イメージでもいいから、純粋な気持ちを聞きたい。

「2人は、どんな人と恋したいとかある?」

「……急になんだよ」

 私が話を切り出すと声色を落として、少しだけ赤く頬を染める。

「私だけじゃ書けないなぁと思って。じゃあみんなに聞いてみようって思ったんだ」

「ちょこ先輩も分からないんですかっ?」

「わ、分からないよぉ~」

 果穂に詰め寄られてえへへ、と両人差し指を合わせてくるくると回す。

「だって……少女漫画の世界しか知らないんだもん」

「まあ……そうだよな」

「だからね、参考にしたい! と思って。絶対に恋の価値観って人によって違うし、違うからこそ素敵なんだなと思うんだ」

 私は息を吐いた。何だろう、すごく緊張してドキドキしてる。何でだろう。

 分からないけど、このドキドキよりもっとドキドキするのが恋なんだろうなって勝手に解釈した。

「樹里ちゃんのも、果穂のも。分からないなら分からないなりに、聞いてみたいな」

 そのドキドキに任せて出した言葉。ちょっとこういうセリフ、恥ずかしいな。

「なんか恥ずかしいけど……チョコの仕事のためだったら、協力してやってもいいけどさぁ……」

「あたしも、樹里ちゃんと一緒です! ちょこ先輩と一緒に考えますっ!」

「2人とも……ありがとう!」

 じゃあ聞いてみよっかな。2人ともどんな恋がしたいんだろう、どんな人と付き合ってみたいんだろう。ワクワクするしドキドキする。

「果穂はどんな人と話してて楽しいなぁって思ってる?」

「あ、あたしですかっ?! えぇと……あたしは……」

「ああ果穂にはちょっと難しかったかもね。でもそういう会話したことない?」

「あたし、クラスメイトの女子とあまり話が合わなくて。好きな男子誰って言われても、ピンとこなくて……えへへ」

 少し恥ずかしそうに声をひそめながら言う。

 果穂の好きなものと今時の小学生女子の好きなもの、全然違いそうだもん。仕方ないよね。好きな人って言われて『レッド!』と答えそう。果穂らしくていい答えだと思う。

「そーゆー話してるのは分かるんですけど……。あたし、クラスの男子は全然好きになれないというか、友達なので」

「果穂らしくていいじゃねーか。小学生なんてそれが普通だと思うぜ。というか、最近の小学生はませてるんだな」

 クラスメイトの男の子の中に絶対果穂のこと好きな子がいるよね……アイドルだし、それを抜きにしても純粋無垢な笑顔を向けられれば意識しちゃうよね。言わないけど。

「じゃあ、果穂はどんな人が好き?」

「え、えぇ~!」

 私より背の高い歳下の女の子は急にしおらしくなった。表情がいつもの果穂じゃないみたいに下がり眉で瞳が泳いでいる。

 やばいよ恋バナの効果。果穂の新しい一面が見られてすごい新鮮で楽しい。

「あ、あたしは……レッドみたいな人がいいです!」

 ジャスティスレッド。果穂が好きな特撮番組のリーダー。やっぱり果穂は果穂だ。微笑ましい。

「うんうん! そう思ったのはなんで?」

「えぇと……カッコよくて頼りになって優しいからですっ」

 カッコよくて頼りになる。だいたいの女の子はそう言う……のかもしれない。

 せっかく誰かに恋をするんだったらカッコいい人がいい、頼りになる人がいい、優しい人がいい。私だってそうだ。

「樹里ちゃんは?」

「えっ! あ、アタシはそうだな……」

 顎に指を当て目を若干逸らしながらぶつぶつ言いながら考えている。

「アタシは……何というか果穂とだいたい同じなんだけど、アタシのことをちゃんと分かってくれる人……かな」

 少し目を伏しながら続きを発する。

「アタシってさ、こんな風貌だから本当のアタシを分かってくれる人は少なくて。受け入れてくれて、自分の事をずっと見てくれる人……なんかなって」

 照れくささを誤魔化すように頬を指で掻きながら答える。

 樹里ちゃんの答えも素敵だな。自分の隠れている内面が不安要素で、でもそれを分かってくれる人だったら恋してもいいかな、なんて。

 奥手な樹里ちゃんだからこそ生まれる考え方なのかなと思ったりしちゃった。

「樹里ちゃん……すごいですっ! 大人っぽいですっ!」

「そ、そうでもないだろ! ただ、そうだったらよりいいだろうなって思っただけだ!」

 果穂に恥ずかしいところを突っ込まれ頬全体がさくらんぼのように薄紅色に染まっていく。

「そんなことより! アタシらの聞いといて自分のことは言わないはなしだからな~チョコォ?」

「え!? わ、私?」

「当たり前だろ。チョコ以外に誰がいるんだよ」

「あたしも! ちょこ先輩の好きな人、聞きたいですっ!」

 す、好きな人は……ちょっと語弊があるよ~!

 でも、そうだなぁ……。2人の話を聞いて、少しイメージが湧いたかな。私が付き合ってみたい人。

「私は」

 ここで言葉が出なくなり止まってしまった。あれ、なんでだろう。少しでも言えると思ったのにな。

「私は……チョコレート、なのかな」

 無意識のうちに飛び出した言葉。チョコレートに恋をしている……あながち間違ってないのかなって。

「はぁ? なんだそりゃ」

「あのねあのね、理由があってね」

 私がチョコアイドルやれてるのはみんなのおかげでもあって、プロデューサーさんのおかげでもある。でもチョコがこの世になかったら、アイドル園田智代子はいなかったから。

 なんだか夏葉ちゃんの言葉を借りるようだけどね。今は、しっくりくるかな。

「チョコらしいけどさ。普通こういう時は人を言うんじゃないのか」

「あま~い恋がしたいのかなって、私。甘い恋を私としてくれる人……だからチョコレートなんて言ったのかなぁ、なんて。えへへ……」

「なるほど……そういうことか……」

 不満そうに私を見ていた樹里ちゃんは納得したように頷いていた。言葉が無意識に飛び出したから頑張って説明した甲斐があった。

 チョコレート。無意識に飛び出した割には、すっと私の胸のうちに違和感なく入り込む。私にとってのチョコレートは誰なんだろう。漠然としなくて、でも固まりつつあるイメージ。

 不思議と、ある人を思い浮かべていた。

 あれ、樹里ちゃんも果穂ももしかして……その恋をしてみたい理想の人の裏には、私と同じ人を思い浮かべているのかな。

 果穂の頼りになって優しい人はあの人にも言えて、樹里ちゃんの「本当のアタシを受け入れてくれた人」はあの人にも言える。

 そうか、私と一緒だ。

 運命的な出会いは、いつのまにかその人を理想として見てしまう。否定しても頭の中は支配されていく。

 言わないでおこう。これは野暮なことだ。ステキなことは本人の胸の内に納めてくれた方が絶対にいいから。

 そして甘い何かが私の口の中で弾ける。

「ちょこ先輩! 素敵でしたすごいです!」

 果穂は夜空の星のようなキラキラを目に携えながら私の手を握る。果穂のあったかさで、口の中にあった不思議な甘さが中でとろけていく。

「えへへ、ありがとう果穂」

「大人っぽくてすごいですっ!」

 大人っぽい、か。どうだろ。そうかな。そうなのかも。

 ストレートにそう言われるとやっぱり自信が湧いてくる。果穂からの言葉だからかな。

「あんまり参考にならなかったと思うけど、頑張ってくれよ」

 樹里ちゃんの素直な応援も何だか嬉しかった。放クラ代表として『恋』に向き合っていくんだな、って。その意識がだんだん湧いて出てくる。

 恋に対する精一杯の一生懸命を表現しよう。

 夏葉ちゃんも言っていた。このお仕事が私だけじゃなく、ユニットを成長させるかもしれないって。

 私が代表して、みんなの答えをまとめ表現する。責任重大だけど楽しい。みんなの考えが私に集約していって、みんなのことを深く知れる。私を頼りにしてくれてる感覚が暖かくて私を溶かしていく。

 頑張るんだ、私は私らしく。私が特別へと昇華したいから。

◆◆◆

 凛世ちゃんはいつもの和服姿で、事務所のソファーに座って折り紙をしていた。細い指で丁寧に折り曲げられていく紙は、平面から立体的な生き物へと昇華していく。雅に作られた鶴の折り紙は、彼女によって生命を吹きかけられたようだ。

「智代子さん……おはようございます」

 私に気付いた凛世ちゃんは顔を上げ目元を緩ませ微笑んだ。

「おはよっ、凛世ちゃん」

「智代子さんは……今日も快活で元気がもらえます……」

「そ、そうかな……? えへへ」

 たわいのない言葉を交わすと少しだけ沈黙が訪れる。ただ、この沈黙が気まずいわけではない。凛世ちゃんといるとこの静けさも不思議と楽しめる。彼女の持つ独特の雰囲気がそうさせてるんだろうか。

「凛世ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」

「凛世に……答えられるものならお答えいたしましょう」

 表情はいつものように飄々としている。穏やかながらその瞳はまっすぐと私の瞳の奥へと潜り込んでくる。

「凛世ちゃんの『恋』を知りたいなぁって」

「……恋、ですか」

 瞳が逸らされ頬が急に若干の淡いピンク色に染まる。私の言葉だけでその飄々とした彼女が崩れていく。

「智代子さんなぜ凛世に」

 早口になってる。珍しい一瞬を見られて嬉しくもある。

「ええとね、こういう事情があって」

 私に恋についてのコラム執筆のお仕事が舞い込んできている、と説明する。すると凛世ちゃんは落ち着いたのか軽く息を吐いて、いつもの飄々とした彼女に戻る。

「そういうことが……あったのですね」

「うん、だからね、凛世ちゃんの恋も聴きたいなーなんて」
「お力になれるかは分かりませんが……智代子さんが聴きたいのなら、お答えいたしましょう」

「じゃあじゃあ、凛世ちゃんの思う恋したい人を教えてほしいなー」

 私がそう言うと凛世ちゃんは目を少し伏せた。なにやらモジモジしているように見える。何か言いにくいことでもありそう。

 でも私にはそれがわかる気がする。凛世ちゃんが恋に関して言いにくいことは。

「凛世には……お慕い申し上げているお方がいらっしゃいます……」

 ……だよね。分かっていた彼女の言葉。今改めて聞くと私の胸に深く突き刺さっていく……ような気がする。

「凛世は恋に関しては……あまりよく知らないのですが……あの方をお慕いしております」

 ですが、と凛世ちゃんは言葉を続ける。若干言葉の震えを感じた。彼女の言葉の吐息による空気の揺れが違うような気がしたから。

「これが本当の恋なのかは定かではありません」

 そして毅然と彼女は微笑んでいる。驚くほど堂々としていて普段とは違う空気が凛世ちゃんを包んでいる、そんな感じがした。

「近くにいたいだけなのかは、分かりかねます」

「……そっか」

 再び、ですが、と付け加える。彼女の表情から次にどんな言葉が飛び出してくるのか、想像がつかない。

「恋というのは素敵なものだと……凛世は思っております。どんなものでもどんな人でも恋をしてしまうのは仕方のない、事象でございます」

 凛世ちゃんは……すごい。ポーカーフェイスの裏には強い彼女らしい想いが隠されていたんだ。自分の感情を見失うことなんてしていない。

「智代子さんは……誰に恋をしていらっしゃるのでしょう」

「誰に……」

 凛世ちゃんの突然の問いかけに戸惑いながらも私は考える。
 私は誰が好きなんだろう。このお仕事を受けてから幾ばくも考えて聞いた自問。

 自分で押さえ込んでいる。気がする。表に出しちゃダメなんだって、なぜか自分で自制してた。

 その理由は、凛世ちゃんのためなのかもしれない。

 凛世ちゃんがお慕いしている人と、私の好きな人は……。

 すーっと息を整える。冷たい空気が私の唇を通って暖かくなっていく。体内に循環していく。いつもの呼吸のはずなのにいつもと違う。

「私の好きな人は」

 初めて口にした、好きな人、という言葉。ドキドキしている。心臓は跳ね上がってノックする。

「私を見つけてくれた人……かな。優しくて頼りになる人。私に真剣にアイドルに恋をさせてくれた人」

 ずるいだろうけど、みんなの答えを引用しちゃうね。でも、私の答えとほぼ一緒なんだから、いいよね。

 そして次からの言葉は、私自身の答え。

「私の背中を押してくれる人、チョコレートのように甘い恋を私と一緒にしてくれる人、かな」

「それは……素敵です」

 視線と視線が見合った私たち。不思議と笑みが込み上げてくる。

「智代子さんのお慕い申し上げてるお方は、凛世も……よく知っている方で、ございましょう」

 凛世ちゃんは、私の告白を聞いても表情は動いていないように見える。むしろ喜んでいるように見えた。瞳が先ほどより大きくなっていた。赤く夕焼けのように優しく瞬いている瞳は私の見ている景色さえも夕日のように赤く染めている気がした。

「凛世は……嬉しく思います」

「嬉しい、ってなんで?」

「凛世の感性は、恋は……間違っていなかった、凛世と彼の方との出会いは本物だと……認識できましたゆえ。智代子さんと同じであることに……とても安堵しているのです」

 凛世ちゃんは胸に手を当て、夕日を閉じた。どんな感情なんだろう、どんなことを考えているのだろう。わからないけど、知りたいと思っている私がいる。

 そして、分かったことがある。

 凛世ちゃんにとって恋は不安なものなんだ。今までは分からなくて、自分なりに手探りで、でも本当にそうなのか不安で。

 だから私と一緒で嬉しい。改めてそう考えると、すごい恥ずかしいな。

 私ももちろん嬉しかった。私が凛世ちゃんのお慕いしている人が好きって聞いたら嫌われるかと思ってた。だからずっと言えずにいた、そんなはずないと否定していた。

「智代子さんの恋……凛世は応援しております」

「……じゃあ私も! 凛世ちゃんの恋、応援するよっ!」

 私は一歩踏み出せずにいた。それは凛世ちゃんが私と同じ人を慕っていたから。じゃあ私はそれを知っているから、と何もできずにいた。

 ただ話しかけられて嬉しいだとか、私を気に留めてくれて嬉しいだとか。それ以上の感情を出すことはできないでいた。

 でも今凛世ちゃんの言葉を、感情を、優しさを。それらを聞いて私も好きでいいんだ、好きでいていいんだ、って思って心が晴れた。眩しい太陽が雲の切れ間から覗き始めたようにぽかぽかとチョコの牢獄を溶かす。

「凛世ちゃんありがとう」

 私は私自身の言葉で恋を紡げるような気がする。

 みんなの恋を聞いた。そして私だけがその答えを分からずにいた。だけど彼女たちのを聞いて、私は本気になれた。

「私、頑張るよっ! 凛世ちゃんも一緒に頑張ろっ!」

「ふふ……ぜひこれからもよろしくお願いいたします」

 この頑張るはどういう意味なんだろう。自分でも分からないけど、多分意味のある言葉。

 紡ごう。私の言葉で。唱えよう。私の恋を。

 チョコレートのように甘い恋をしてみたい。私の甘い欲望をみんなに、そしてーーに伝えたい。

 たとえ夏葉ちゃんみたく堂々とできなくとも。

 たとえ樹里ちゃんみたく素直なって言うことができなくても。

 たとえ果穂みたくストレートに言うことができなくても。

 たとえ凛世ちゃんみたくずっと慕うことができなくても。

 私には私の伝え方がある。

◆◆◆

 オーディションの日には、いつもプロデューサーさんがいてくれる。

「準備は大丈夫そうだな。智代子ならできるからな」

 オーディション会場の裏側でいっつも励ましの言葉をくれる。聞きなれた言い回しだけど、ずっと言っててほしい。

 W.I.N.Gまであともう少し。私にもファンが増えた。ラジオをやったりトークイベントをしたり、雑誌に載せる写真を撮ってもらったり。いろんな仕事をもらって、私をアイドルとしてちゃんと輝かせてくれた。

 そして今回の恋のコラムの執筆も。自分の心の内を見直すきっかけになった。すべてプロデューサーさんのおかげ。

 そして私は、30cmほど背の高いプロデューサーさんの前に立った。背が高くて、優しくて、頼りになって、背中を押してくれて。触れてきた時間は全て大切で。

「プロデューサーさん、少しお願いがあります」

「……? どうしたんだ、急に改まって」

 ドキドキが止まらない。顔が熱い。全身の血液が燃えたぎっているよう。

 そして思い立って決意して、私は腕を広げた。

「プロデューサーさん、抱きついてもいいですか?」

 私の言葉に、少し目が泳いだ気がする。表面上は動揺していないけど、少し驚いているみたい。

「……一応、理由を聞こうか」

「いやー、あのー……別に無理にとは言いませんけど……あ、そうだ! ルーティーンですよルーティーン! 一流のスポーツ選手はそういうの大事にしてるじゃないですか!」

「なんか今思いついたみたいだけど」

「そ、そんなことないですよ~!」

 プロデューサーさんは私の目を見てから、少しばかり息を吐いた。そして途端に周囲をキョロキョロとしだす。

「ま、いいよ。ほら、自由にしたらいい」

 プロデューサーさんは私と同じように両腕を前方へ広げた。思わぬ返答に私はドギマギした。

 でも本人がそういうなら……!

 私は近づいて、そしてその広げた腕の向こう側にある彼の胸へと飛び込んだ。ぎゅーっと顔を押し付け彼の背中に腕を回す。

 すーっと息を吸う。

 においがする。少し汗の匂いがした。でもそれを上回るぐらい私が好きになってしまった彼の匂いが脳を揺さぶってくる。そして不思議と心が穏やかになる。

 背の高いプロデューサーさんの全てが大きく感じた。私よりも当然大きくて、だから少し羨ましくて、だけどプロデューサーさんがいるから私の身体の小ささが補える気がして。

 ずっとこうしていたい。こうしていたくてたまらない。

 私の恋は、思った以上にワガママだ。

「オーディション、不安なんだよな」

 そうじゃないけど、そういうことにしておこう。それが一番都合がいいから。

 そして名残惜しいけど、私は彼からそっと離れる。パワーをもらえたから十分なんだけどね。

「ありがとうございました、プロデューサーさん!」

 伝えたいことを言うんだ。私らしく、ちゃんと伝えるんだ。じゃないとそもそも届いてくれないから。

 口を開き、空気を吸い、言葉を発する。この何でもない今までできた動作がいつもより重い。

「プロデューサーさんは、私のチョコレートですね!」

 不思議な力が私に宿ったように、魔法のように、言葉が出てきた。私は驚いて、でも自分の意思なんだろうなと納得した。

「え? それってどういう……」

「なんでもないです! そうだ、プロデューサーさん」

「今日の智代子はいつも以上に賑やかだな、どうしたんだ?」

「恋のコラム、完成したので楽しみにしててくださいね!」

 私は得意の笑顔を、褒めてくれた笑顔をとびっきりに彼への思いを表現して、背中を見せてステージへと駆けていく。

 心臓が飛び跳ねる。ドクンドクンと耳にまで届いて鼓膜を揺らす。多分プロデューサーさんは分かってない。だから安心した。けど、いつか私の恋が彼に伝わる時が来る。

 私のやり方で、私の言葉で伝えられたからこれでいいんだ!

『私にとって恋はチョコレートです。甘い恋をしたいし、チョコは私が一番好きなものだからそう例えたんだ』

 この一文に気付いてくれるかな。きっとプロデューサーさんなら気付いてくれる。

 私の何もかもを知ってくれているはずだから。そう信じている。

 アイドルになりたての頃、オーディションが怖かった。私より個性的な人がいた、私より可愛いと思う人がいた、私よりダンスが得意な人がいた、私より歌が上手い人がいた。

 だから私は埋もれるんじゃないかなって思った。でも、その不安をすぐに察知して、プロデューサーさんはただ黙ってチョコをくれた。お前はチョコアイドルだろう? チョコを食べて緊張をほぐせ、と言ってくれたような気がした。普通の市販のチョコだったけど、今まで食べたものよりすごくおいしかった。

 そうか、私は他の人を気にする必要なんてないんだって。

 そして、手渡されたチョコは私の自信になった。だからそのチョコは私の験担ぎになった。

 彼にもらったチョコと全く一緒のチョコ。オーディション前に買って食べる、験担ぎ。

 でも、今日のチョコはとてつもなく甘かった。いつもと一緒のはずなのに、なぜか……甘い。

 甘くて甘くてしょうがない。

 私はチョコとは違う甘さを知ったんだ。

 その甘さは、自分が悲しむ危険もあり、友達をも悲しませる危険のあるもの。

 でもそれ以上に刺激的で、楽しくて、嬉しいもの。だから止められない。

 いつもは一個で終わるのに、二個も食べちゃった。私は『甘さ』をいつも以上に求めているから、仕方ないよね。

 プロデューサーさん。

 私は私らしくこれからもチョコアイドルとして、あなたにずっと見てもらえるように頑張ります。私自身が見出した道、あなたが背中を押してくれたから。

 同じ目線じゃなくても、隣でおんなじ場所を眺めていたい。

 そんな願いがいつの日か叶う時が来るといいなぁ……!

 その時まで見守っていてくださいね! プロデューサーさん!

Fin

約15000文字ほどのSSでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。

朝コミュでのエピソード(サインの練習とか~)やオーディション前コミュ(チョコ食べる~)などを少し想像して膨らませて織り交ぜてみました。いかがでした?

僕の書くSSは地の文が多くて(なんか心理描写とか書きたくなっちゃう)、少し読みにくいかなーと思ってるけど、僕の個性ってことでご了承くださいw

次時間が空くと思いますが、またその時は読んでいってください。
ありがとうございました!

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