【天華百剣】('A`) 大事なことは全部春画が教えてくれたようです【ブーン系】 (44)

御華見衆の参羽鴉シリーズ

(´・ω・`) 信じられねぇくらいギチギチに三人同時に落とし穴にハマったようです
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より本家の天華百剣らしくエッチなラブコメハーレムを意識しました
意識しただけです。よろしくお願いします

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人生を振り返る瞬間なんて、そんなに多くは無いだろう
死の淵に立たされて初めて、人は記憶という著書の頁を開く
その現象に、年齢は関係は無いらしい。寧ろ若い分、脳裏に過ぎる記憶はどれも新鮮で色鮮やかだ

閻魔様に『人生は幸福だったか?』と聞かれたのならば、『他人よりかは』と答えるだろう
良家に産まれ、才気に溢れ、街を歩けば嫉妬と羨望の眼を向けられるほどには、器量良しだった
そして、俺の将来の為に両親が築いた政界への道をキッパリと断るほど、跳ねっ返りだった

文明開化を迎えた日本は、急速に『未来』が配備された。その名は、『機械』というものだった
かの国『英吉利』でいち早く迎えたと言う産業革命。開国した日本は、ようやくその恩恵に預かれ始めたのだ
大量生産、大量消費。富国が更に富む為に必要な生産能力を発揮する鋼鉄の労働力
俺はそれに強く惹かれ、気づいた時には単身、英吉利へと渡った。機械技師という夢を追って

留学を終えた俺は、あるツテを頼って製糸工場の専属技師として抱えられた
日本にある工業機器は殆ど輸入品という現状。それを調整、修理が出来る存在は貴重だった
それに、指導員として若輩……つっても、俺もそうなんだが、後輩に教鞭を振るう事もあった
華々しいとは言えなかったが、充実した日々だった。油と傷で汚れ、ごわついた掌を見る度に何度も誇らしさを感じた
未来に携わり、人々の生活を、引いては日の本を豊かにする。そんな使命感さえ抱いていた




だが俺は、そんな『夢』に浮かれていたのだろう。根本的な社会の『仕組み』から目を背けていた
いくら機械を導入し、生産や輸出を行ったところで




富める者と貧する者の差は、縮まらないと言う事を
強者は弱者を食い物に、のさばり続けると言う事を

最初の違和感は出稼ぎにやってきた子供たちの頭数だった
悪い条件で働かせていたワケじゃない。逆に、他よりも待遇は良かったと言える
顔色も良く、飯は三食出て、毎日風呂に入れて貰える。貧しい村からやって来た子ならば、願ったり叶ったりの労働環境だろう
子供は特別好きでも無かったが、寄ってくりゃ声を掛けてやるくらいはしてやった。簡単な英語も教えてやったな
その幼い労働力が、ある日を境に不自然な増減を見せた。経営上層部の羽振りが良くなると共に

工場に関わる誰もが訝しむ事態であったが、誰一人として疑問の声は挙げなかった
恩恵を受けていたからだ。黒い噂が陰にあろうとも、懐が温まれば文句を言う気も失くす
寧ろ、余計な口出しをすれば今の手取りが無くなるという不安にも駆られたのだろう
それに居なくなっているのは関係の無い余所の子供。多少の心配はすれど、危険を冒してまで身元を追う必要も無い
こうして、誰が示し合わせたわけでもなく、工場内の不自然な動きに対して横やりを入れることはご法度となった

俺も正義感に厚い人間じゃなかった。ただ、他の者よりも不自然に対する『興味』があっただけだ
幸いにも技師として優秀だった俺は、経営幹部の一人にえらく気に入られていた。時を跨がずして、『その話』は酒の席で向こうから振ってきた


「貴様も我が社を担う人材の一人。どうだ、新しい『びじねす』を始めて見る気はないか?」


使い慣れていないハイカラな外来語。デカい下っ腹を今にもはち切れそうなベルトで支え
ある意味では様になっている洋装……言うならば今風の悪代官か。そんな恰好の中年に、件の『びじねす』とやらに勧誘されたのだ


「需要に伴い『糖業』を興してな。その工業機械の製造責任者に貴様を任命したい」


分厚いお札束と共に言い渡された願っても無い話に、二つ返事で食い付いた
何も無ければ俺は『整備』から『製造』という次の段階へと進められる
もしも危ない仕事ならば、その時はその時。高跳びでもすりゃいいかとタカを括った


「期待してるぞ。貴様は私の息子も同然だからな」


とてもじゃないが、手前のガキを見るような眼ではなかった

結論から言うと、俺が想像した以上に『真っ黒』だった


甘ったるい匂いの現場では、確かに『砂糖』と呼べる物の生産は行われていた
ただし俺を誘った幹部は『魔法の』と付け加えて。早い話が、摂取すれば気持ち良くなる代物だということだ
従業員は皆、幸福に満ちた表情で仕事をしていた。早朝から深夜まで、不休で働き詰めにも関わらず
生産ラインの一人が突然バタリと倒れても、誰も気にかけぬほどに
見学という名目で訪れた俺は、異様な光景に愕然としながらも駆け寄る余裕はまだあった

齢十代半ばの、見覚えのある女の子だった。製糸工場で何度か言葉を交わしたことがあったのだ
確か、貧しい家庭を支える為に出稼ぎに来ていると言っていた。仕事に不満はないが、両親宛に出した手紙の返事がまだ来ないのが悩みだとも
後からわかったことだが、呼び込まれた子供の殆どは孤児か、ろくでなしのバカ親に高い金を払って買い取った人材だったらしい
売られたこともつゆ知らず、健気に両親を想い続けた彼女の最後は

薬物の工場で、仮初めの極楽浄土に身を浸しながら
地獄のような労働を続けたことによる、過労死であった


俺は正義感に厚い人間じゃない。その子に特別思い入れがあったわけでもないし
悪事に手を染める雇い主の胸倉を掴んで「こんなの間違っている!!」と激昂するほど、熱い人間でもない

土嚢のように運ばれていく彼女を見ながら、冷静に、冷静に
飲み込むように、自分を納得させた。「俺に何が出来る?」と
悪を裁く義務も無ければ、叩きのめす力もない自分自身を守る為に、冷静に、自らを偽りながら

だが相反して、腹の奥から湧き上がった『火』は、俺の思考をじわりじわりと焦がしていった
それが情けない自身に対する怒りなのか、良心の呵責なのかは今もわからない
ただ、これまで上手く運ばれてきた『幸福な人生』を、一瞬で台無しにし得るものというのだけは理解できた

新たな職場は、巨悪に対する破壊工作を仕込む現場に
受け取った賃金は、足りない材料を買い込む資金に
上層部からの信頼を、疑惑の目を避ける隠れ蓑に
夢を追って手に入れた技術を、破滅の為に使って

薬ではなく、自らを焦がす『火』によって得た狂気に身を任せた

狂気。そう、狂気だ。誰かが言った。「天才と狂気は紙一重」と
ただ潰すだけでは面白くない。どうせなら、俺の人生の爪痕を、悪夢という形で残してやりたかった
『技師』を志した理由の一つに、からくり人形という存在があった
実家に飾られていた骨董品に『茶汲み人形』があった。ガキの頃はどんなオモチャにも目を向けず、それに夢中になっていたもんだ
好きこそ物の上手なれ。恵まれた環境と資金によって出来上がった叛逆の代物は、俺の『好き』を体現した巨大からくり人形だった

そこからはもう笑っちまうような光景の連続だ。単純な『上げ、降ろす』を繰り返すからくりは
悪夢を作り出す工場や、人々を根こそぎ潰して回った。『火』が『大炎』と成った瞬間だったいい
いつまでも眺めていたかったが、仕事が残っていた。どうせなら閻魔様に言い訳できるくらいの善行は積んでおきたかったからだ
まだ『無事』な子供達を、秘密裏に逃がしたのだ。手元に残った資金は、当面の生活費としてそれぞれに渡した
親がいない、もしくは親に売られた不幸な生い立ちだが、全員を抱えて面倒は見られない
それに、あいつらの為に起こした行動では無かったからだ。俺自身が『納得』という境地に至る行程に、可哀想な子供の無事は含まれない
ただ、『生きてみせろ』とだけ言い残して、俺は行方をくらませた

事件はすぐに世間へと広がった。各社の新聞には大々的に俺の名と人相が載り、晴れて指名手配犯として知れ渡った
実家には悪いことしたなと思ったが、半ば絶縁したような間柄。その後どうなったかは深く調べなかった
親不孝者にツテやコネなど無い。ましてや、『その後』を考えてない犯行
一月も経たずに、恨みを買った『悪の組織』からの追っ手は俺の尻尾を掴んだ


それが、『今夜』。人気のない波止場で、俺は大の男に押さえつけられ土の味を堪能している最中だ


「間違いない。こいつだ」

「クハ、稀代の大悪党にしては、大したことがない」

「○○○○、我らの雇い主は寛大だ。その手腕を再び役立てる気があるなら、命だけは取らないんだとよ」


小物根性が染みついていらっしゃる。予想した言葉と大した差はなかった
『手腕を役立てる』?冗談じゃなかった。俺は、俺の為だけにしか、磨き上げた腕を使う気はない


「殺せよ」


よく知りもしねえ悪の親玉の為に一生を費やすなど、死んでも御免だった


「ハハハ、かっこいいねえ。だが、殺しはしない。今はな」


右腕を掴まれ、押さえつけられた。何をする気かは、月明かりに照らされ鈍く光る『斧』を見て察しがついた


「お前の『生き甲斐』を一つ奪うだけだ」


口元は覆面で隠れて見えなかったが、目元はさぞ楽しそうに歪んでいる
奪取という行為に心底溺れているようだ。強者のみが得られる悪趣味な娯楽だ


「やれよ」


泣き叫んで許しを乞うと思ったのだろうか?今度は驚きで目を見開かせた
加虐心を持ち合わせているつもりは無かったが、元より俺は一足先にその『悦び』を味わった

「なぁ、算数出来るか?連中が被った損害が、俺の腕一本、いや、俺の命で賄えると思ってるのか?ハハ、ハハハハハ!!」

「だったら随分安い買い物だ!!ああ、最高のショーだった!!俺が造り上げた人形が、火を巻き、銭を食い潰し、悪人共を恐怖へと貶めた!!」

「やれよ!!ハハハハハ!!さぁ斬れ!!痛みが苦しみが、ましてや辱めが!!俺の悦びを塗りつぶせると思うな!!」


心の底から笑ったのは随分と久しぶりだった。それも、このような沙汰の最中だと余計に笑えてくる
反対に悪漢共から下品な笑みが消えた。大の男が三人がかり、バカを仕出かして全てを失ったみすぼらしい野郎に
まるで鬼か物の怪でも見るかのように『怯えていた』のだ。腹は更に捩れ、痛みを伴った。吐き出す息は吸い込む量と比較にならなかった


「ハハハッ……!!」


そのバカ笑いも、斧によって齎された右手との永遠の別れと共に終わりを迎えた


「ッッッ~~~~~~~~~……!!!!!」


激痛は、笑いによって大きく分かたれた上下の奥歯を固く閉ざし、声にならない呻きが喉奥から漏れる
ようやく人らしき様を見た野郎共は、ヒクヒクと小物相応な嘲笑を溢した


「なんだよ、お前みたいな外道でも血は赤いじゃねえか!!」

「もう一本斬り落としゃあ、今度は悲鳴をあげるよなぁ!!」


左腕が押さえつけられ、斧より滴った自身の血の斑点が手首へと滴り落ちた
ここでもう一度、大きく笑えば恰好も付いたろうが、生憎とそこまで狂ってはいないらしい


「せぇ、のぉ!!」


ただ、叫び声を上げないことだけが、俺に残された唯一の『意地』であった

「……っ?」


『カラン』と、間の抜けた金属音が響く。左手首は繋がったままだった
身体を抑えつける力は一息に抜け、男共もまた、地へと崩れ落ちる
『何事だ』。ようやく脳裏にその言葉が過ぎったのは、闇夜の中に不思議な紫の光を伴うお札が、ヒラリヒラリと舞ったのを見てからだった


「大したものですね」


足音もなくぬるりと現れた女の姿に、俺はまた面食らう事となる
大きな振袖に見合わず、腹や腰を恥ずかしげもなく露出した奇妙な衣装を身に纏い
側頭部には龍の角を模った髪飾り。臀部からは丸で意思を持つかのように、しなやかな『尾』が揺れていた
地獄の使者にしては煌びやかであり、仏の使いにしては『はしたない』。そんな印象を受けた


「腕を断たれて叫び声をあげぬなど……余程の胆力の持ち主か、それともただ鈍いだけなのか。どちらにせよ、感嘆を隠せそうにありません」


そして何より、熟した桃のような色合いをした柄の『日本刀』
痛みによって起こった幻覚にしては、奇怪極まりない光景であった


「傷を。接合は絶望的でしょうが、止血と消毒をすれば生きながらえることもできましょう」


有無を言わせぬ力強さで俺の右腕を掴み上げると、どこからか取り出したお札を傷口に貼り付ける
不思議なことにその札は、独りでに切断面をきつく締め、優しい温もりで痛みを和らげていった


「っ……あんた、何者だ?」

「とある方のご依頼で貴方を探していました。○○○○」

「はっ、何だよ……こいつらと同類かい?」

「ある意味ではそうですし、違うとも言えます」

「要領を得ない解答だな……」


応急処置こそ受けたが、単に俺を助けただけではなさそうだ
投げかけられる視線には厳しいものがある。俺は『犯罪者』だ。悪に追われるだけの身分ではない

「もしも貴方が我欲の赴くままに動く悪人の類ならば、相応の罰を与えろと命じられました」

「……間違っちゃいねえんじゃねえか?」

「わらわもそう思います。民草に与えた不安は小規模ではございません。あの件で路頭を迷った方も多くいらっしゃるでしょう」

「なら、アンタがすべきは俺の首をそいつで刎ねることだろう」


彼女はゴミのように転がる俺の『右手』を取ると、クスリと微笑んだ
奇怪な女ではあったが、笑うと一層美しく、柄にもなく『どくり』と鼓動が跳ねた


「道どりを辿る中で、貴方に救われたと仰る子供達と出会いました。『私達を逃しただけではなく、当面の生活費まで渡してくれた』と」

「っ……違う、そんなつもりはなかった。責任を放棄しただけだ」

「放棄したと言うのなら、あの子達諸共巻き込んでしまっても良かったのでは?」

「……ガキなんざ殺してたまるか。胸糞悪ぃ」

「フフ、わらわにはそれだけで十分、貴方を救う価値があるのですよ。そして、あの子達も同じく」


俺の右手が、一回り小さな彼女の両手によって包み込まれる
気色の悪いそれを、まるで宝物のように、大事に大事に


「貴方がどうあれ、子供達の笑顔を救った『英雄』であることに間違いはありません」

「……」


気恥ずかしい言葉を、ペラペラと並べなさる女だ。寝物語の登場人物じゃあるまいし


「柄じゃねえよ……」

「あら、わらわは様になっていると思いますが?貴方ほどの器量の持ち主ならば、美談を演劇にして一稼ぎも出来ましょう」

「それこそ、柄じゃねえ」

互いに一頻り笑いあった後、膝に力を込めて立ち上がった


「何方へ?」

「さぁな。また、死に場所でも探すか」

「それは叶いませんねぇ」

「あ?」


彼女は右手を、割れ物でも扱うかのように地面へと置くと
無事な方の左腕に、自身の両腕を絡ませた。風でも纏ったかのように、その身体に重さを感じさせない


「わらわの依頼は貴方を『助ける』。このままのたれ死なれてしまったら、あの子達に合わす顔がありません」

「……では、どうするつもりだ?稀代の大犯罪者を匿う気か?」

「ええ、そうしましょう。名を、身分を、顔を変えて、新しい人生を過ごすというのも、また一興とは思いませぬか?」

「出来るのか?」


『雑作もない』と言わんばかりに肩を竦めた。どうやら、俺はとてつもなく強大な『何某』に気に入られたようだ
観念して短くなった右腕を上げる。『新しい人生』。それもまた、面白そうだ


「どうにでもしてくれ」

「はい、仰せの通りに♪」


せめてその何某が、悪いものではない事を祈ろう

「アンタ、名前は?」

「小竜景光と申します。以後、お見知り置きを」

「刀の名とは……益々持ってわからねえな」

「それで、これからは貴方をどう呼びましょうか?」

「は……ああ、そうだったな」


俺はこれより『俺』を捨てなければならない。当然、慣れ親しんだ名も変えねばならないだろう
自分の子供より先に、テメーの名前を考えなきゃならないとは皮肉な物だ


「そうだな……」


俺は彼女に、延いては子供達に救われた。『情けは人の為ならず』。そんな言葉が頭に浮かんだ
積んだ『徳』によって得た第二の人生。ならば、これからはこう名乗ろう


「『徳男』とでも呼べよ」

「おや、当たり障りのない名ですね」

「悪いか?」

「いえいえ、木を隠すなら森の中。派手さが無い方が身元も隠せるでしょう」

「派手さね……一つ、注文いいか?」

「ご要望に寄りますが、聞くだけなら」


どうせ変えるなら、とことんまで。跳ねっ返りな俺らしく行こうじゃねえか


「このツラを、飛び切りのブサイクにしてくれ」

「宜しいので?」

「ああ。人に指さされて笑われる生き方も、悪くねえだろ」

「フフ……良い傾向です。では、後悔してしまうほどの醜男に仕立てて貰いましょうか」

「手柔らかにな……」

「いーえ、もう後戻りはできませぬよ?」


生の女は怖い。だが、こそばゆい笑いが込み上げてくる
彼女に左腕を引かれ、俺たちは歩み始めた。最後に、長年付き添った『相棒』へと振り返る

「……もう一つ聞かせてくれ。助けようと思えば、もっと早く参上できたんじゃ無いか?」

「遺体の一つでもあれば、捜査の手も緩みましょう。それに、少しは罰も与えませんと♪」


などと、一つの悪気もなく答えるもんだから、俺は改めてこう思った
『生の女は怖い』。言葉も意思もなく愛でられるだけの人形の方が、よっぽど心安らぐ


これが『○○○○』として生きた俺の、最後の夜だった―――――


























名古屋、『参羽鴉』


('A`)「……」


キリ、キリ、キリ

と、鋼鉄の皮膚と鋼線の筋肉で構成された指を一本一本丁寧に折り畳む
彼にとって第二の右手であり、そして武器である『義手』のメンテナンスは、目覚めてから最初に行うルーチンであった
上腕筋の機微な動きと連動して細やかに動くそれは、御華見衆へ加入して彼が最初に作った発明品である
その精密さと操作の難解さは、かの天才発明家『八宵』ですら舌を巻く代物だった


('A`)「よっ」


全ての指を畳み拳の形を作ると、手甲から諸刃の剣が勢いよく飛び出す
巫剣使いに各々支給される、稜威と巫魂を結ぶ特殊武具『菊華刀』
このように特殊な形状の物は極めて稀であるが、剣術よりも『拳術』に覚えがある彼はこの形をえらく気に入っていた


('A`)「よーしよしよし」


満足気にうなづいて、彼は目の前の鏡を見た
想像以上に『醜く仕上がった』顔面が、また彼を見返す
少々自虐気味に笑い返すと、なお一層醜く歪む。そこに、『石鹸の泡』が塗り込まれた


('A`)「フンフーン♪」


これも、極めて希……彼以外には居ないが
『菊華刀』を剃刀替わりに髭を剃るのも、ルーチンの一つであった




天華百剣 ‐参‐ 御華見衆の参羽鴉



('A`) 大事なことは全部春画が教えてくれたようです



【参羽鴉:工房】



(;A;)「できねえええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!!!!!!」ガッシャンパリンドボボボボ!!!!!!

(;´゚ω゚`)そ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおなんか燃えとるがーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

(;A;)「こんなもの!!!!!!こんなもの!!!!!!!!」ドッポヌルヌルンメッチャホリディ!!!!!!!!!!

(;´゚ω゚`)「ちょ、おまっ……落ち着けって!!!!!ブーン!!!!!!水ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


<お茶くらい自分で淹れて


(;´゚ω゚`)「飲み物の範囲じゃなくていっぱい持ってきてーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

( ^ω^)そ「何だおもううるせえ中年だな死nうおおなんか燃えとるが」

(;´゚ω゚`)「お前この状況下でそんな落ち着いてられんの!?」

( ^ω^)「腹と一緒で肝も太い」

(´^ω^`)「こいつぁ一本取られたなガハハ!!!!豚の丸焼きにされたくなかったらその豚足動かしてサッサと消火にあたれ」

( ^ω^)「うわヤクザこわ……笑いながらキレてる……キモ……」


火<ジュン…… ※濡れ場


( ^ω^)「そんなに大っきな火じゃなくて良かったお」

(´・ω・`)「良かねえ店ごと燃やす気か」

(;'A`)「すまねえ……取り乱しちまった……」

( ^ω^)「お前取り乱すと放火すんの?キチガイじゃん」

(´・ω・`)「そんで、なんで発狂してたんだよ。ケツから酒でも飲んだのか?」

( ^ω^)「入れる所じゃなくて出す所なんだよなぁ……」

(;'A`)「いや……そろそろ御華見衆へ研究成果送らなきゃならねえんだが」

(´・ω・`)「ああ、戦闘、もしくは訓練用の試作発明品を提出しなきゃならねえんだっけ」

(;'A`)「非人道兵器しか出来ない」

( ^ω^)「やべえよ……」

(´・ω・`)「やべえよ……」

(;'A`)「的確に股間を噛みちぎる芋虫みたいなからくりとか……」

(´・ω・`)「その発想に至ったお前が一番やべえよ……」

('A`)「ほらこれ」ビチチチチチチ!!!!!!!

( ^ω^)そ「うおお活きが良い」

(´・ω・`)「形状がもうオチンコじゃん」

('A`)「なんか春画でそういう虫みたいなのがあったから」

( ^ω^)「なんでお前変態向けの春画なんて見てんだお?」

('A`)「参考になるかと思って……」

( ^ω^)「なんの?」

(´・ω・`)「後で貸して?」

('A`)「いいよ」

( ^ω^)「引く」

小竜景光「ショボンー?お客様がお見えに……」


('A`)「あ」ビチチチチチチ!!!!!!!!


小竜景光「……」

小竜景光「きゅう」バターーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

( ^ω^)「一 撃 必 殺」

('A`)「戦わずして勝ったからもうこれ送ればいいか……」

(´・ω・`)「俺の首が物理的に飛ぶ」

小竜景光「それで」

(メ)A(メ)「はい……悪ふざけで作りました……すいません……生きててごめんなさい……殴らないで……許して……」

小竜景光「よろしい」

( ^ω^)「悪ふざけの仕置きに男前に整形するなんて竜さんは人が出来てる」

(メ)A(メ)「前が見えねえ」

(´・ω・`)「視力と引き換えにいい男になれたんだからもっと喜べ」

(メ)A(メ)「死ね」

小竜景光「ハァ……では、開発が滞っているという事でよろしいでしょうか?」

(メ)A(メ)「捗ってるよ。非人道兵器の開発は」

小竜景光「真っ当な頭脳と心が滞っているようですね」

(メ)A(メ)「ふええん」

( ^ω^)「きっしょ……生きるゴミ……」

小竜景光「全く……我が駐在所の数少ない汚名返上の機会でありますのに、あるじがその体たらくでどうするのですか?」

(´^ω^`)「言われてやんのーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

小竜景光「所長がこれなのですから、もっとあるじやブーンがしっかりして戴かないと」

(´^ω^`)「ンダテメスッゾオラ」

(メ)A(メ)「凄まじい重荷を感じる」

( ^ω^)「俺完全に飛び火では?」

小竜景光「そもそも、わらわ達巫剣はただの相方だけではなく、過去の所業や人間性に問題があるお三方のお目付け役を言い渡されているのです」

( ^ω^)「俺も……?」

小竜景光「何か?」

( ^ω^)「いや俺……なんでもないです柄から手を放して」

小竜景光「皆様が起こした問題で司令や副司令からお小言を頂戴するのはわらわ達なのですよ。少しは大人として、御華見衆の一員として自覚を持って行動を……」クドクドクドクド

('A`)「はい」

(´・ω・`)そ「うわっ、一瞬でブサイクに戻った」

( ^ω^)「形状記憶ブサイク」

('A`)「このすっごいよく効く薬を霧散させて傷口の広範囲に染み渡らせる、名付けて『シュッとするやつ』の効果だけど?」

小竜景光「それを送ればいいじゃないですか!!!!!!!!!!!!!!!!」ドンッ!!!!!

('A`)「え????????????????????」

小竜景光「え?じゃありません!!!!!!!十分胸を張れる発明品を作っているではありませんか!!!!!!!」

(´・ω・`)「まぁ問題があるならクソ頭の悪い名前だけだよな」

( ^ω^)「掌に収まる大きさだし、携行品としてはかなり優秀だお」

(*'A`)「へへっ……」

( ^ω^)「うわっ……照れ顔ブッサ……」

('A`)「いやこれ本来は猛毒を入れてこうやって顔、特に眼球目掛けてシュッてする奴だからさぁ」シュッ

(; ゚ω゜)そ「目目目目ェェェェェェェンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

小竜景光「み、水場へ!!早く洗い流して!!」

(´・ω・`)「護身目的で使うのもありじゃねえか?」

('A`)「射程がクソ短い。少なくとも二尺は欲しい」※60㎝

(´・ω・`)「出来ねえのか?」

('A`)「圧力を利用した代物だから飛距離伸ばそうと思ったらそれなりに指の力がいるんだ。巫剣ならともかく女子供には今んとこ無理だな」

(; ゚ω゜)「沁みるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」

小竜景光「分析は後にしてくださーーーーーーーい!!!!!!」

―――――
―――



鬼切安綱「んー、とりま切羽詰まってるのはわかったけど、ドックンはどうしてそんなボロボロなの?」

(メ)A(メ)「スモトリの張り手がぶっ刺さった」

( ^ω^)「お前を下敷きにして四股踏んでも良かったんやぞ」

天光丸「まぁまぁ、大事が無くて良かったではないか」

( ^ω^)「心なしか視界が明るいお」

(´・ω・`)「傷薬だよな?」

(メ)A(メ)「信頼と実績の牛王特製」

( ^ω^)「いい思い出がないんだよなぁ……」

天光丸「して、徳男殿の発明品で比較的マシな物を見繕って欲しいと」

小竜景光「はい。本来の用途は兎も角、この『シュッとするやつ』の様に役立つ発明品があると思いまして」シュッ


('A`)「この通りさ!!!!!!!」バァーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!


鬼切安綱「うわっ……それ送ればいいじゃん」

('A`)「地味じゃん。それと今うわっつっただろてめえ」

天光丸「……派手さを競っているワケではないのだろう?」

('A`)「馬鹿野郎お前こんなもん八宵に知れてみろ。半年は煽られるわ」

天光丸「切磋琢磨という言葉もあるが、君達の場合は逆の意味合いを持つな……」

(´・ω・`)「八宵の嬢ちゃんも相当ぶっ飛んでやがるからなぁ」

('A`)「で、今から爆発とか起こしても比較的問題にならない空き地とかで披露するからなんか上手い使い方を考えて欲しい」

天光丸「爆発を起こす時点で既に駄目だと気づけ」

('A`)「え???????????????????」

天光丸「君達と会話をすると毎度頭が痛む……」

鬼切安綱「駄目だよ天ちゃん、アレらをまともな人間と同じ扱いにしたら」

( ^ω^)「飛び火では?」

(´・ω・`)「前回は何を送ったんだっけか?」

小竜景光「確か……巫魂を伝達させる特殊な管、でした」

('A`)「石炭や油と同じように巫魂を動力源へと流し込んで機械を動かせねえかって思ったんだ。問題は動力源、つまり『エンジン』部が完成しなかったんだが……」

(#'A`)「同時期に八宵がそれを完成させて提出しやがった!!!!!クソッ!!クソッ!!あの小娘はいつも俺の一歩先を行きやがる!!!!!」

鬼切安綱「それってもしかして……」

小竜景光「ええ。ご察しの通り、八宵の方は肝心の伝達方法が未解決でして、同じように悔しがったと聞きます」

天光丸「噛み合ってはいるのだな……」

( ^ω^)「仲良いなあいつら」

(´・ω・`)「十代女子と親密なブサイクって犯罪臭しかしねえ」

小竜景光「とにかく、爆発物は無しの方向で見つけていきましょう」

('A`)「じゃあもう半分以上はボツじゃん」

( ^ω^)「何がそんなにお前を爆発へと駆り立てるの?」

('A`)「面白いじゃん……」

( ^ω^)「え?ごめんお前のツボが全然わかんないお」

('A`)「お脳に脂肪詰まってるやつはこれだから」

( ^ω^)「地面と一体化させてやろうか?お?」

鬼切安綱「はいはい喧嘩しないのー。さっさと済ませるよー」



【参羽鴉移動中……】


※現存する銘治当時の参羽鴉の三名と友好のあった警官の集合写真



  ∩∩                            V∩
  (7ヌ)                          (/ /
 / /                             ||
/ /                   ('∀`)           ||
\ \(´^ω^`)-- (^ω^ ) ̄      ⌒ヽ ( ゚∋゚)// ←警官

  \       /⌒   ⌒ ̄ヽ、    /~⌒    ⌒ /
   |      |ー、      / ̄|    //`i     /
    |     | |     / (ミ   ミ)  |    |
   |    | |     | /      \ |    |
   |    |  )    /   /\   \|       ヽ      
   /   ノ | /  ヽ ヽ、_/)  (\    ) ゝ  |       
   |  |  | /   /|   / レ   \`ー ' |  |  /



【参羽鴉移動中……】

【空き地】


('A`)「そんじゃあどれから行くか……」

(´・ω・`)「よっこら……この丸太は?」

('A`)「おっ、それはいいな。木人樁だ」

( ^ω^)「服掛けみたいな形状だお」

('A`)「清の武術、『詠春拳』の鍛錬に使われる柱みてーなもんだな。こうやって突起部に腕や蹴りを絡ませて、型を覚えると共に筋肉と骨を叩いて鍛える」カンッ カンッ

天光丸「ふむ……かなり丈夫な作りだな。最初はさぞ痛みを伴う鍛錬となるのだろう」

(´^ω^`)「s 鬼切安綱「死んで?」まだなんも言ってねえだろ」

( ^ω^)「顔から既にゲスみが溢れてるんだよなぁ……」

天光丸「何がだ?拙者の発言に問題でも?」

( ^ω^)「そのままの天さんでいて」

天光丸「?」

小竜景光「これはどういう仕組みなのですか?」

('A`)「いやぁ、簡単なもんだよ。ただ動きを加えただけだ。試しにそこのゲス中年、前に立て」

(´・ω・`)「やだもん」

('A`)「アンさん」

鬼切安綱「確実に痛い目に遭う方と低確率で無事に済む方どっちか選んで?今すぐ」

(´^ω^`)「ガーーーーーーッハッハッハ!!!!!」

(´・ω・`)「死じゃん」

鬼切安綱「ショーボーンー?」

(#´゚ω゚`)「クソが!!!!!度胸見せたろやないかい!!!!!!!」

(#´゚ω゚`)「ンダコラァ!!!!!ヤンノカオラァ!!!!!」

( ^ω^)「うわ、丸太に凄むヤクザ」

鬼切安綱「ブフッwwww」

('A`)「そんじゃあ、構えて」

(#´゚ω゚`)「アンコラ!!!!?????」

('A`)「始めぃッ!!!!!」※推奨BGM https://www.youtube.com/watch?v=nTeicpbCNEQ&list=PLDrNSo2cZ8oGRfWdZDriHRlbvZKFOS9Gc


(;´゚ω゚`)・'.。゜「ゴファッ!!!!!?????」ドゴォ!!!!!!!!!


天光丸「回転した!?」

('A`)「と、木人樁から『攻撃』されることでより実戦的な訓練を積めるって代物だ」


(;´゚ω゚`)・'.。゜「ちょっブッ、これっガッ、止めアフュッ!!!!!!」ドット!!!!!カラクサ!!!!!!!ペイズリー!!!!!!!


小竜景光「あ、あるじ!!ショボンがどんどんボロボロに!!」

('A`)「楽しいな!!!!!!!」

小竜景光「鬼ですか!?」

鬼切安綱「あっはっはっはっはっは!!ヒィーwwwwww」

小竜景光「アンも笑ってないで!!」

(´メ)ω(メ`) 「」


小竜景光「ショボンしっかり!!ショボン!!」

( ^ω^)「息してる?」

('A`)「完全に止めるか」

( ^ω^)「天才では……?」

(´メ)ω(メ`)「お前ら後で覚えとけよ」

( ^ω^)「チッ」

('A`)「出力が足りなかったか」

天光丸「人でなし共めが……」

鬼切安綱「ハァー……ちょー笑った。ほら、あのシュッとするやつ使ったげて?」

('A`)「こんな優しい愛刀でオッサンは果報者だなぁ」シュッ

(#´゚ω゚`)「優しい奴ぁボコボコにされる相棒を見て爆笑しねーーーーーーーーーーーーんだよ!!!!!!!!!」

('A`)「そこに気づけるとは……」

( ^ω^)「見た目によらず頭賢いのでは……?」

小竜景光「やれやれ……ボツの理由は、聞かずとも察せますね」

('A`)「調整が出来ないってのが一番だな。入門には向かない」

天光丸「それ以前に色々と問題はあると思うが……」

鬼切安綱「ちゃんと試したのー?」

('A`)「エライ目に遭った」

( ^ω^)「自らを犠牲にする開発者の鑑」

(#´゚ω゚`)「だったら俺で実践する必要なかったよなぁ!?」

('A`)「すっごーい!!キミはちゃんとそれに気づける中年なんだね!!」

(´^ω^`)「よせやいよせやい!!ガハハハハハ!!!!!!乳首千切るぞ」

('A`)「えっ、こわ……変態性癖……」

鬼切安綱「で、肝心なのはここからなんだよねー?使い道考えなくちゃダメなんでしょ?」

小竜景光「はい。遠慮ないご意見を頂ければと」

(´・ω・`)「薪」

( ^ω^)「服掛け」

('A`)「お前らの頭は飾りか?」

小竜景光「気持ちは痛いほどわかるのですが……できればもう少し手心を……」

天光丸「お主も苦労するな……」

鬼切安綱「うーん……玄関先に立てといて、防犯……」

('A`)「一定の効力はありそうだが、一々動かせられる軽さじゃねえからな」

( ^ω^)「ここまでガラクタ載せた台車引っ張ってきた俺を労うべきでは?」

('A`) シュッ

( ^ω^)「シュッてせんでいい」

鬼切安綱「やーっぱ現実的じゃないかー。天ちゃん、どう?」

天光丸「うむむ……すまない、このような発案には疎くてな……小竜殿、助言を頂けぬだろうか?」

小竜景光「無理に出さなくても宜しいのですが……そうですね、コツは『視点を切り替える』でしょうか」

天光丸「視点?」

小竜景光「この『シュッとするやつ』は本来は目潰しとして使用する物でしたが、傷薬を効果的に散布するのにも使えます。この木人?の場合ですと、鍛錬以外の目的に使えないか。そこから考えるべきかと」

天光丸「なるほどな……」

(´・ω・`)「つーかこれ何で動いてんだ?」

('A`)「ゼンマイ。丸太の裏に四角い穴があるからそこにハンドルぶち込んで回す」

(´・ω・`)「精密に作ったか?」

('A`)「割と」

(´・ω・`)「耐久度の試験は?」

('A`)「なんでそんなこと聞くんだ?」

(´・ω・`)「打たれてる最中、中から変な音した気がするから……」

('A`)「あっ……」

( ^ω^)「ダメじゃん……」

('A`)「あーあー……内部の歯車が欠けちまってるよ……オッサンが丈夫だから……」

(´^ω^`)「だーーーーーーーーーーれが美丈夫だってぇ!!!!!!!!????????」

('A`)「ハァー……チッ……」

(´^ω^`)「空気悪くすんな」

( ^ω^)「さぁ、ギスって参りました!!」

鬼切安綱「どっちにしろムリ系じゃなーいのー?次いこ、次」

小竜景光「あ、はい……天光丸?」

天光丸「別視点……別視点……」

( ^ω^)「ダメだ竜さんこうなった天さんはしばらく動かないお」

小竜景光「そ、そうですね……気にせずいきましょうか……」

(´・ω・`)「早々にグダってきたな」

鬼切安綱「もうちょっと工夫しやすい発明品はないのー?」

('A`)「あるぞ。服が溶ける粘液から着想を得た発明品なんだが……この桶だな」

( ^ω^)「ま た 変 態 向 け 春 画 か」

小竜景光「あるじ?」

('A`)「俺を信じろ。エッチな展開には絶対にならない」

小竜景光「そのような事を申し上げたいのでは無くてですね」

(´^ω^`)「オイオイご機嫌な発明品があるじゃあねえか~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

('A`)「服が固まる液体だ」

(´・ω・`)「お前にはガッカリだよ」

( ^ω^)「手の平大回転」

鬼切安綱「溶けるから固まるに変換するのもちょーっとイミわかんないんだけどー?」

('A`)「魔が差した」

鬼切安綱「まー、溶けるよりはまだマシだけど。使ってみてよ。ウチのオッサンで試していいから」

(´・ω・`)「お前こそ本物の鬼だよ」

鬼切安綱「今なんて?」

(´・ω・`)「お前こそ本物の鬼だよ」

鬼切安綱「辞世の句を詠みなー?」スラァ

( ^ω^)「アンさん、真剣はマズい」

('A`)「そぉれ☆」ビシャッ!!

(;´゚ω゚`)そ「バッお前まだ了承してな……」


(;´゚ω゚`)そ「うおおなんかピキピキ言っとるがーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」ピキピキピキ


('A`)「身体動くか?」

(;´゚ω゚`)「動か……ねぇ!!!!!!!!!」ギチギチ

('A`)「ブーン、オッサンの服触ってみろ。どうだ?」

( ^ω^)「すっごくかたぁい……」ネットリ

('A`)「オヴェッ!!と、このように普段着を即席の拘束具にしちまうってワケだ」

( ^ω^)「今のは俺が悪かった。すまんお」

('A`)「いいんだ。誰にでも魔が差す時がある」

鬼切安綱「フツーに役立つ発明品じゃん。何が問題なの?」

小竜景光「牛王が絡んでいるのでしょう。それと、量ですね?」

('A`)「その通り。共同開発だし、全身を拘束しようと思ったらかなり量がいる」

鬼切安綱「あー、現場を桶持って駆け回る羽目になるってワケ?」

( ^ω^)「きっついお……」

(;´゚ω゚`)「超強力な糊ってこったろ!!どうやったら元に戻んだよ!!」

('A`)「尿素で中和される」

(;´゚ω゚`)「は!!!!!!!!!!?????????」


('A`)「ブーン」モゾモゾ

( ^ω^)「よっしゃ」モゾモゾ


(;´゚ω゚`)「サオを出そうとすんじゃねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」

('A`)「冗談だよ……ほれ、中和液」バッシャ!!!!!

(;´・ω・`)「おお動く……お前これ小便から作ったとかねえよな?」

('A`)「口を開けばおしっこおしっこと……最年長の自覚がねえのか?」

(´・ω・`)「お前が言い出したんやろがい」

( ^ω^)「そこのお姉様方に比べたら俺らなんてケツの青いガキだお」

鬼切安綱「死にたいの?」

( ^ω^)「老婆とは言ってないのに」

('A`)「この下り前も見たな」

小竜景光「あるじ、遊びにきたのではありません。そろそろ真剣に取り組みませぬと」

('A`)「へいへい……そんじゃ、自信作のお披露目と……」ガサゴソ

天光丸「おや、これは……刀?」


(#゚A゚)そ「んんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ケガするんじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」ッカーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!


天光丸「!?」ビクッ

( ^ω^)「こえーよ」

鬼切安綱「ウチら巫剣だよー?子供じゃないんだし、そんな目くじら立てなくてもよくない?」

(#'A`)「見とけ!!!!!ここに拾った棒がある!!!!!!これで柄を叩くと!!!!!!」


棒<バチコォン!!!!!!!!!!


(#'A`)「柄に仕込まれたバネによって四方向に刃が飛び出す!!!!!!握ったら指が跳ぶぞ!!!!!!!!」

天光丸「な……何故そんなものを……?」

(#'A`)「菊華刀の盗難対策やろがい!!!!!!!!!!」

小竜景光「ここに来てとんでもなく悪質な罠を作りましたね……」

(´・ω・`)「いや……つーかこれ『無礼道』のやつだろ?」

( ^ω^)「完成度たけーなオイ」

鬼切安綱「なんで知ってんのさ……」

(´・ω・`)「え?知らないの?漆黒の吸血鬼狩人侍『無礼道』」

( ^ω^)「現代版源氏物語外伝『まじかるしゅーたーひかりん』と並ぶ今話題の大人気小説なのに……?」

鬼切安綱「知らないよ……」

('A`)「舞台化までされたんだけど主演俳優が脱税で捕まったこともご存じない……?」

鬼切安綱「知らないって言ってんじゃんか……」

( ^ω^)「めっっっっっっちゃ良かったよな……」

(´・ω・`)「ああ……男は黒に染まるべきだ……」

鬼切安綱「これだからオタクくんは……」

天光丸「再現度はどうあれ、何故危険度の高い物を率先して作るのだろうか……」

小竜景光「至らぬあるじで申し訳ございません……あるじ!!」

('A`)「あ、このバネの仕組み改変したら奇術にも応用が利くぞ」

小竜景光「ほんとっ……た、誑かされませんからね!!」

鬼切安綱「落ちてる落ちてる半分落ちてる」

天光丸「災い転じて……と、捉えてしまった方が良いな……」

('A`)「ほんじゃ、お次はこいつだ」ガッシャンコ

天光丸「背嚢……にしては、物々しいな」

('A`)「背負ったら飛ぶやつ、その名も『背負ったら飛ぶやつ』だ」

( ^ω^)「名前付ける必要ある?」

('A`)「じゃあなんて呼べばええんじゃい」

( ^ω^)「だかっ……もういいやめんどくせえお」

('A`)「諦めが早いなそんなんだからいつまで経ってもデブなんだよ」

( ^ω^)「本気で人を殺したいと思ったのは久々だ」

天光丸「しかし、翼も無く飛べるのか?小竜殿のように巫魂を持つ巫剣ならまだしも」

('A`)「銘治だぜ天さん?今や鉄の箱が人を乗せて走る時代だ。翼が無くても人は飛べるんだよ」

(´・ω・`)「なんか唄の歌詞になりそうなセリフだな」

('A`)「もう百十年も経てば十万馬力の鉄人形が空を飛んでケツから機関銃撃つさ」

鬼切安綱「なんでお尻?」

小竜景光「しかし……実現するなら夢のある発明品になりますね」

(´・ω・`)「でも爆発するんだろ?」

('A`)「なんでもかんでも爆発させっかよ八宵じゃあるまいし。巫魂を使うんだよ」

鬼切安綱「ってことはー……巫剣専用?」

天光丸「拙者は御免だぞ」

('A`)「いや、巫魂さえ供給してくれたら誰でも……食い気味になるほど嫌?」

鬼切安綱「さっき連続で酷い目に遭った実験台見て挙手する人なんていなくない?」

天光丸「そうでなくとも嫌に決まっている」

('A`)「とほほ~い……じゃあ俺が実演するか。よっこら景光」ヨッコラ

小竜景光「あるじ」

(´・ω・`)「おいそれ絶対危険度少ないだろ」

('A`)「何を当たり前の事を言ってんだ。そうじゃなきゃ俺が使うワケないだろ」

(´^ω^`)「人間クズ!!!!!!!!」

('A`)「最高の賞賛をどうもありがとう。小竜、ちょっと巫魂を貰っても良いか?」

小竜景光「全く……はい、これで如何ですか?」

('A`)「良い感じだ。よっしゃ!!無限の彼方へ、さぁ行くぞ!!」

( ^ω^)「そのまま帰って来なけりゃいいのに」

(´・ω・`)「早く汚ねえ花火になっちまえ」


('A`)「……」


小竜景光「……」

天光丸「……」

鬼切安綱「……」

( ^ω^)「ビビってんのかオェーーーーーーーーーーーーイ!!!!!!!!!」

(´^ω^`)「ヘイヘイヘイヘ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~イ!!!!!!!!!」

('A`)「もう飛んでる」

小竜景光「微動だにしてませんが……」

鬼切安綱「あ、見て!!」


('A`) フワブサァ……


鬼切安綱「ちょっと浮いてる!!」

天光丸「小指の先ほどの高さだが、確かに……」

('A`)「ふぅ……燃料切れだ。終了」

( ^ω^)「え?終わり?」

('A`)「え?何を期待してたの?」

(´・ω・`)「爆発四散」

( ^ω^)「お星様」

('A`)「率直に死って言えば?」

鬼切安綱「もっと竜ちゃんみたくバビューンって飛ぶものかと思ったけど?」

('A`)「数秒間ちょっと浮いただけでも凄え発明なんだぞ。そりゃ、傍目には地味極まりねえけども」

小竜景光「つかぬ事をお聞きしますが、成人男性を長時間飛行させる為にはどれほどの巫魂が必要となりますか?」

('A`)「天下五剣が三日三晩足腰立たなくなるまで注ぎ込めば五分くらいは浮ける」

天光丸「史上かつてないほどの巫魂の無駄使いだな……」

('A`)「試作ってそんなもんだぞ?こっから性能向上や燃費削減をつき詰めて行くんだよ」

(´・ω・`)「で、何の役に立つ?」

('A`)「悪路や水上での移動。小竜みたく飛行出来る巫剣との連携も考えたな」

小竜景光「わらわとしては地に足を着けて支援をしてもらいたいのですが……」

鬼切安綱「あーあー、振られちゃったー」

('A`)「いじけそう」

小竜景光「い、いえいえ!!お気持ちは嬉しく思いますよ!!と、所で、浮いたままの移動も可能なのですか?」

('A`)「え?無理。浮くだけ」

小竜景光「その体たらくでよく連携などと嘯きましたね……!!」

(;'A`)「なんで怒ってんの……?」

( ^ω^)「ブサイクに女心はわからない」

天光丸「うむ……だが、悪くないのではないか?戦略の幅が広がるという意味では、今までの中で最もマシな発明だ」

(´・ω・`)「問題は現状使い物にならねえ玩具で本部が納得するかどうかだな」

('A`)「八宵なら確実に白目剥いて土下座して敗北宣言するぞ?」

( ^ω^)「八宵ちゃんに親でも殺されたんか?」

(´・ω・`)「技術屋はそうかも知れねえけどよ、七星剣始めとした頭ガチガチの連中が良しとするかどうかだろうが」

鬼切安綱「試作でもすぐさま実戦投入出来る方が良いもんね」

('A`)「ったくこれだから待つだけの連中は……皆殺しにしてやろうか……」

( ^ω^)「過去に何があったら顔面と同じくらい性根が歪むんだよ」

小竜景光「ハァ……一先ず、保留という事に致しましょう。発展途上でも無視できる発明では無いのは事実ですし」

('A`)「祝杯をあげるぞ!!今夜は飲み放題だ!!」

(´^ω^`)「よっしゃ!!」

( ^ω^)「よっしゃ!!」

鬼切安綱「モチ奢りだよね!!ごっちそーさん☆」

小竜景光「一先ず保留!!終わりではありませんよ!!」

天光丸「アン殿まで乗るんじゃない……」

鬼切安綱「じょーだんだって。お楽しみは後に取っとかないとねー」

( ^ω^)「人の金で飲む酒ほど美味いものはないお」

('A`)「えっ、奢り確定?」

鬼切安綱「ウチらの貴重な時間を使ってあげてるんだから、当然じゃん?」

('A`)「泣けるぜ……」

('A`)「あー……他になんかあったっけな……爆発物ダメ?」

小竜景光「以前に送ったではありませんか。芸がないと思われますよ?」

('A`)「皆殺s……そっか……」

( ^ω^)「お前マジ禍魂に目ぇつけられたら一瞬で堕ちるお?」

('A`)「エッチな話すんじゃねえよ」

( ^ω^)「お脳に支障をきたすんなら春画読むのやめたら?」

('A`)「春画……あっ!!あったあった!!そこそこ使えそうなの!!」

天光丸「待て、嫌な予感しかしない」

('A`)「俺を信じろ。絶対にエッチな展開にならない。これだ」バッ

(´・ω・`)「春画だ……」

天光丸「帰りたい……」

鬼切安綱「ちょっとドックン!!天ちゃん泣く一歩手前じゃん!!」

('A`)「マジかよ涙腺ゆるゆるだな。肝心なのは中身だぜ?」

(´・ω・`)「そんなドスケベな内容が……?」

('A`)「その目で確かめろ」

(´^ω^`)「ゲヘヘヘヘーーーーーーーー!!!!そんじゃ、お言葉に甘えて!!!!!!!!!」

( ^ω^)「学べよ……」

小竜景光「ここは止めずに傍観と行きましょう」

(´^ω^`)「御開帳ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」パラッ


(´^=^`)そ ガッシャコンッ!!!!!!!


('A`)「本に挟める飛び出す薄型猿轡だ。無礼道のバネの仕組みを応用した」

小竜景光「これは……天晴れですね」

('A`)「だろ?」

天光丸「本を開く時、両手は塞がっているものだからな……巫剣でも予測と回避は難しいだろう」


(´^=^`)「」


( ^ω^)「すげーおオッサン。バカのお手本になってるよ」


:(´^=^`):「」


鬼切安綱「一番うるさいのも黙らせて一石二鳥じゃん。やるねードックン」

(*'A`)「へへっ、よせやい」

鬼切安綱「キm……顔キモ」

('A`)「言い淀んだのなら諦めないで欲しかった」


:(´^=^`):「ッ!! ンッ!!」


小竜景光「あの、あるじ?様子が可笑しいのですが……」

('A`)「ああ、気管を塞いで窒息させる系の猿轡だからな」

天光丸「それを先に言わないか!!」

小竜景光「ショボンしっかり!!ショボン!!」

( ^ω^)「ようドク」

('A`)「うむ」


( ^ω^)bd('A` ) グッ


鬼切安綱「グッじゃなくて」

(メ)A(メ)「ヤクザってすぐ手が出るよな」

( メ)ω(メ)「今までの人生で暴力なしで物事解決したことある?」

(#´゚ω゚`)「両手の指切り落としても良かったんやぞ……」

天光丸「そこまで痛めつけられてまだ軽口が言える根性だけは大したものだな……」

小竜景光「くだらない喧嘩で良薬を使わせないでください」シュッ

( ^ω^)「一瞬で痛みと腫れ引いたこっわこの薬」

('A`)「なんか徐々に気が狂うよな」

小竜景光「……頻繁に使っていいものなのですか?」

('A`)「牛王だぜ?」

小竜景光「あ、はい……」

鬼切安綱「ウチらは絶対使わないようにしよっか」

( ^ω^)「さっきから思ってたけど普通に送っても大丈夫そうな発明ばっかじゃねえかお?応用もクソもねえ気がするが」

小竜景光「それを言われると本末転倒ですね……」

天光丸「そうだな。命に関わる代物で無ければ、今の罠も胸を張れる出来だと思う」

('A`)「天さんが優しい」

天光丸「拙者とて手放しで褒めてやりたいのだぞ?」

鬼切安綱「ねーもーいいじゃんこれでさー。飽きてきちゃったんだけどー」

('A`)「不可視の虎バサミとか突き刺した瞬間穂先が広がって筋肉と血管をズタズタにする槍とかが残ってんだけど……ダメ?」

(´・ω・`)「ダメに決まってんだろなんだよ不可視の虎バサミって」

('A`)「えーと……多分この辺に入れといた筈……」ガサゴソ


('A`)そ ガッシャッ!!


('A`)「……ヒュー、義手で助かったぜ」

( ^ω^)「マジでシャレにならない事態になる前に切り上げた方がいい気がしてきた」

小竜景光「返す言葉もありません……」

―――――
―――



その夜、参羽鴉工房にて


(;'A`)「ハァ……結局、良い感じの提出物は見つからなかったか……ただ飯と酒代で懐が寒くなっただけじゃん……」

小竜景光「シュッとするやつで十分だと仰ったではありませんか……」


納得のいく提出物は見つからず、『シュッとするやつ』『飛ぶやつ』『本に仕込むやつ』の三つを提出する事に決まった
本部への郵送時間を鑑みた結果、成果報告書を早急に書き上げる必要があった為、酒の抜けきらない頭で筆を奔らせていた


小竜景光「せめて少しは格好のつく名にしては如何でしょうか」

('A`)「前回の管も『巫魂送るやつ』で通ったからいけるいける」

小竜景光「それは了承されたのではなくて諦められているのですよ。全く……」

('A`)「物に小難しい名前付けるのは大人の悪癖だ。こんなもんガキでもわかるようにすんのが普通なんだよ」

小竜景光「おや、相変わらず子供にはお優しいのですね」

('A`)「そういう意味じゃねえ。簡潔に理解できれば無駄を省けるってだけだ」

小竜景光「フフ、そういう事にしておきましょうか」

('A`)「ご自由に……ほれ、確認しろ」


徳男に手渡された紙束を素早く捲って読み進め、小竜は首を縦に振った


小竜景光「はい、文句なしです。いつも通り優秀ですね。素行を除いては」

('A`)「一言多い」

小竜景光「悪友が出来てはしゃぐ気持ちもわかりますが、わらわ達の心労にも気を配ってもらいたいものです」

('A`)「アンさんはどちらかと言えばこっち側じゃねーか」

小竜景光「本人は頑なに否定するでしょうけれども」

('A`)「丑三つ時か……付き合わせて悪いな」

小竜景光「お気になさらず。これも巫剣の務めですので」

('A`)「真面目な相方で助かるぜ。こんな時間だ、先に休んでくれ」

小竜景光「宜しいのですか?」

('A`)「簡単な手直しだけだ。直ぐに終わる」

小竜景光「それでは、お言葉に甘えましょう。ではあるじ、お休みなさいませ」

('A`)「ああ、おやすみ」


小竜を自室へと帰らせた後、徳男は大きく伸びをして肩の骨を鳴らし、報告書を一まとめにして封筒へと納める
そこに封蝋を垂らし、御華見衆の印璽を押し当て型を付け、冷めて固まるまでしばし待った


('A`)「……」


手持無沙汰になった彼は、ランタンに灯される自身の仕事場をぼんやりと眺める
他支部に負けずとも劣らない賑やかさを誇るこの場所では、静謐の中で孤独に過ごす時間は貴重だ
右手を失い、名と顔を変えて始まった第二の人生も数年が経つ。巫剣使いとしては参羽鴉の中でも最古参だ


('A`)「……」


癖の強い同僚や、超常の力を持つ巫剣との共同生活に、禍憑という異形との命がけの戦い
安寧とは程遠い日々だった。誰しも寝物語のような世界に突如として放り込まれてしまえば、気が休まる暇も無いだろう
それでも彼の生活はこれ以上なく充実していた。好きなものを好きなだけ開発し、愛すべき人形たちとの茶会を楽しみ
技師としての腕を競い合う相手に恵まれ、気を一切使う必要のない悪友も出来た
もしも第三者に『人生は幸せか』と問われたならば、自信を持ってこう答えるだろう


「当然。面白い人生だ」と


('A`)「……偶には孝行しとくか」


不意に溢れ出た第二の人生を齎した『立役者』への感謝の気持ちは、眠気と酔いを醒まし、彼の創作心に火を付けた
封筒を脇へと退かすと、鋼の右手で工具を掴み、眠りに就く『家族』達を起こさぬよう

ただ一人に『喜び』を贈る為に、静かに作業を開始したのであった

―――――
―――



小竜景光「ふわぁ……」


('A`)「……」


小竜景光「あるじ、おはようご……」


小竜の寝惚け眼は、大きな隈により更に醜さに磨きがかかった主人の顔を見て丸くなる
グッスリと眠ったようには見えない表情を見て、呆れたように溜息を吐いた


小竜景光「もしや、お休みになられていないので?」

('A`)「ゔぁ」

小竜景光「返事すらまともに……あれから何をして遊んでらしたのですか?」

('A`)「ゔぃ」

小竜景光「これは……?」


徳男が取り出したのは一冊の本であった
題名どころか絵の一つも描かれていないそれを、小竜の目の前でパラパラと捲って見せつける
中も悉く白紙であり、只の変哲もない筆記帳のように見えた


('A`)「ゔぅ」


しかし、頁の中程で捲る手を止め息を吹きかけると


小竜景光「まぁ!!」


何も描かれていない筈の紙上から折り紙の鶴が飛び出した
奇術を得手とする小竜も、感嘆の声を上げずにはいられないほど見事なバネ仕掛けであった


('A`)「ゔぇ」

小竜景光「え、あ、わらわに、ですか?」

('A`)「ゔぉ」


鶴の折り紙と仕掛け本を手渡すと、大した説明もなくフラフラと自室へと向かっていく
もうすぐ茶屋の仕事が始まるが、その気力は残っていないのだろうと察せられた

小竜景光「どういう風の吹きまわしなのでしょうか……」

(´^ω^`)「おはござーーーーーーーーーーー!!!!!!」

小竜景光「ひゃわっ!?しょ、ショボン!!驚かせないでください!!」

(´^ω^`)「いやぁ、今朝から良いクソが捻り出たから気分が良くてな!!ガハハ!!」

小竜景光「もう!!」

(´・ω・`)「所で、あのブサイクどうした?まさかこれから一眠りしようってんじゃねえだろうな」


誰よりも茶屋の仕事に真摯な所長には、寝不足だろうと関係ないらしい
今にも首根っこを掴み、仕事場へと引きずり出そうと息巻いている彼に対し、小竜景光は優しい口調で宥めかけた


小竜景光「わらわに免じてお目溢しください。ここ数日、工房の務め続きでお疲れのようなので」

(´・ω・`)「……っかー、甲斐甲斐しいねえ。爪の垢をウチのにも飲ませてやりてぇや」

小竜景光「あら、優しくされるのがお好みでしょうか?」

(´・ω・`)「うわっ、想像しただけで鳥肌が立つぜ。わーったよ、開店まで見逃してやらぁ」

小竜景光「フフッ、感謝致します」

(´・ω・`)「揶揄うネタを提供して貰えたことだしな」

小竜景光「あら、あるじは兎も角、わらわには通じませぬよ?」

(´・ω・`)「そいつぁ残念だ。さて、折角の機会だ。上等な朝飯を作ってあのブサイクの面を悔しさで歪ませてやるか」

小竜景光「ええ、罰はしっかりと与えませぬと」

(´・ω・`)「アンに負けず劣らず良い性格してるぜ……」

小竜景光「……」


『驚きとは良いものだ』。奇術も不意の贈り物も、人々を笑顔にする巫魂にも劣らぬ魔法だ
常人よりも長く生きた『剣生』の中で、今までのどの主人よりも気苦労は多いものの
初めて『産み出す者』を選んだ日々は、今までのどの主人よりも驚きと楽しさに満ちていた


小竜景光「今日も良き日になりそうですね」


その一言は『あるじ』の疲弊した表情とは正反対の、眩いばかりの笑顔と共に零れ出たのであった




おしまい

投下し終えて致命的なミスに気づきました。乳首が一度も虐められていません

お疲れさまでした

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