ダージリン「おままごとをしましょう」 (21)

ペコ「は?」

ダージリン「聞こえなかった? ならもう一度言うわね」

ダージリン「私とおままごとをしましょう」

ペコ「おっしゃっている意味が良く分からないのですが」

ダージリン「だからおままごとをしましょうと言っているのよ」

ペコ「えっと頭の方……大丈夫ですか?」

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ダージリン「随分な言い掛かりね。だけど聞きなさいこれは聖グロから伝わる昔ながらの戦車訓練方なのよ」

ペコ「戦車道とおままごとに何の関係が?」

ダージリン「戦車道とは乙女たちが良妻賢母になるために考案された武芸なのはペコも知っているでしょう?」

ダージリン「それは逆説に言えば真の良妻賢母になれば戦車道も上手くなるということ」

ダージリン「というわけで私たち聖グロリアーナはこの時期になるとみんなおままごとをするようにしているのよ」

ペコ「えぇ……」

ペコ「アッサム様……それって本当なのですか」

アッサム「驚く気持ちも分かりますが本当のことです」

アッサム「私も一年の頃は冗談だと思っていましたが」

アッサム「聖グロリアーナの調査ではおままごとをすることで戦車力がする前と比べて40%ほど上がったとのデータがあります」

ペコ「多分そのデータ間違ってますよ」

ダージリン「こぉんな言葉を知ってる? 伸びるときには必ず抵抗がある」

ペコ「本田宗一郎の言葉ですね」

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名前表記をペコから→オレンジペコに変更します


ダージリン「最初はおままごとをすることに抵抗があるかも知れないけれど」

ダージリン「その経験は無駄にはならないわ」

アッサム「実際私も最初は半信半疑で初めたのですが」

アッサム「おままごとをしてから戦車の扱いが格段に上手くなったのです」

アッサム「ですのでたかがおままごとと侮らず真剣にやってみて下さい」

オレンジペコ「お二人がそうおっしゃるのなら……」

ダージリン「今回ペコはおままごと初心者だから分かりやすく赤ん坊と妻、夫の三役にするわね」

アッサム「本当は配役はくじによって決めるものなのですがオレンジペコのことも配慮して簡単な配役からやっていこうかと」

オレンジペコ「簡単な配役?」

アッサム「ペコはこの三役の中でもっとも簡単な配役は何だと考えてますか?」

オレンジペコ「えっと……やっぱり赤ちゃんじゃないかと」

オレンジペコ「他二つの配役はやはりそれなりに役を演じたり台詞を考えたりする必要がありますが……赤ちゃんは基本話すことがないのでやはり楽なんじゃないかと」

アッサム「さすがはオレンジペコ……私のデータ通りの回答です」

オレンジペコ「はぁ……そうですか」

オレンジペコ「でもそんなことを仰られるということは簡単なのは赤ちゃんの役ではないんですね?」

ダージリン「その通りよ。赤ん坊の役は聖グロ式のおままごとにおいては一番難しい役になるわね」

ダージリン「まあそれは追々説明するとしてとりあえずペコには妻か夫……このどちらかの役をやってもらおうかしら」

オレンジペコ「えっと……じゃあ私は妻の方を演じさせてもらおうかと」

オレンジペコ「自分としても同じ女性の方が演じやすいのもありますし」

オレンジペコ「まだこの聖グロ式おままごとがどのようなものか分かっていないので」

アッサム「分かりました。では残りの配役はくじ引きで」サッサ

ダージリン「くじ引きの結果……私が赤ん坊でアッサムが夫役のようね」

アッサム「それではペコ……私がベルを鳴らせばおままごと開始の合図です」

アッサム「ダージリンのお世話頼みましたよ」

オレンジペコ「は、はい……緊張しますが頑張ります」

アッサム「では早速ベルを鳴らして」リンリン

ダージリン「おぎゃー! おぎゃー!」

オレンジペコ「!!??」

オレンジペコ「え……おままごとってこんな本格的にやるもんなんですか?」

アッサム「……さ、はやくダージリンをあやして下さい」

オレンジペコ「あ、あやすって言われてもまず何をすれば……」

アッサム「恐らくこの泣き方から考えてお腹が空いているのでしょう」

アッサム「テーブルに哺乳瓶が置いてありますからミルクを飲ませて下さい」

オレンジペコ「なんでこんなところに置いてあるのかと気になっていましたが……」

オレンジペコ「まさかこの為だったなんて……中身は紅茶だし」

アッサム「さ、早く飲ませて下さい! 貴方は赤ん坊が泣いているのに放っておくのですか?」

オレンジペコ「……本当にやらないとダメですか」

アッサム「何か分からない点でも?」

オレンジペコ「いえ……分からないわけではないのですが」

オレンジペコ「少なからず憧れていた先輩に哺乳瓶を飲ますとは思わなかったので複雑な心境があると言いますか……」ドンビキー

アッサム「安心して下さい。時期に慣れます」

オレンジペコ「慣れたくないです」

アッサム「これも戦車道を極めるためですよ。それにダージリンだって好きで赤ん坊になっているわけではないのです」

アッサム「これもオレンジペコが戦車道を極められるようにと無理をして」

ダージリン「おぎゃー! おぎゃー!」ブンブン

オレンジペコ「凄くノリノリに見えるんですけど!?」

ダージリン「それだけ真剣ということです。さあ早く哺乳瓶を飲ませてあげて?」

オレンジペコ「分かりました……ダージリン様……哺乳瓶の時間ですよー」

ダージリン「ばぁぶ!」チュパチュパ

アッサム「哺乳瓶を使って紅茶を飲むダージリン……とても可愛いですね!」

オレンジペコ「えぇ……」

アッサム「それじゃ私も本格的に夫役を演じさせてもらいますね」

アッサム「ごほん……」

アッサム「ごめんなさい……ペコ。今日もお金稼ぐことが出来なかったよ」

オレンジペコ「仕事が上手くいっていないという設定みたいですね」

アッサム「今日も玉が吸われてしまって……」

オレンジペコ「ギャンブルじゃないですか!」

アッサム「今日こそは大当たりしてペコを楽にさせようと思ったのですが」

アッサム「……すみません」

オレンジペコ(アッサム様の魂胆は分かってる)

オレンジペコ(多分だけど傷心の夫をどれだけ慰められるかを試されているはず)

オレンジペコ(それなら……)

オレンジペコ「落ち込む必要なんてありませんよ」

オレンジペコ「貴方が頑張っていることは私がちゃんと分かってますから」

アッサム「撫でて下さい」

オレンジペコ「……はい?」

アッサム「言葉だけでは夫は休まらないものです」

アッサム「声をかけるだけではなく行動を……具体的に言うと頭を撫でたりオムツを取り替えたり」

オレンジペコ「え……私の夫はオムツを履いているのですか?」

アッサム「私の調査だと昨今の殿方はオムツを履くのが常識だとか」

オレンジペコ「そのデータ間違ってますよ」 

オレンジペコ「えっとそれでオムツを変えると仰ってましたが」

オレンジペコ「まさか今オムツをしていたりなんて……」

アッサム「勿論しています。ダージリンも」

オレンジペコ「…………え?」

アッサム「赤ん坊役になった時のために用意したものですが」

アッサム「夫役でも使える機会が出来て良かったです」

ダージリン「おぎゃー! おぎゃー!」

アッサム「あらあら……ダージリンも粗相をしてしまったようですね」

アッサム「このままだと私もダージリンも下半身が濡れてしまうことになります」

アッサム「あとは分かりますね」

オレンジペコ「…………い、いやですよ。そんなオムツ替えなんて」

アッサム「これも戦車道のためなのですよ?」

ダージリン「大丈夫よ。私たちがしっかりと貴方を良いお母さんにしてあげるわ」

ダージリン「だから無駄な抵抗はせずに」グググ

アッサム「お母さんになってください」グググ

オレンジペコ「え……なんで近づいて」

オレンジペコ「い……いやぁぁぁぁぁ」ペコーン

一時間後

アッサム「おぎゃー! おぎゃー!」

ダージリン「おぎゃー! おぎゃー!」

オレンジペコ「二人とも泣いてどうかしたんですか?」虚ろな瞳

オレンジペコ「お腹が空いているんですね」

オレンジペコ「哺乳瓶……ちゃーんと用意してますからね」

オレンジペコ「大丈夫。慌てなくてもお腹一杯になるまで飲ませてあげますから」

ダージリン「ばーぶ」チュパチュパ

アッサム「ばぶばぶ」チュパチュパ

オレンジペコ「二人ともいい子……いい子」

三時間後

ダージリン「見事な母性だったわ。ペコ」

アッサム「これで良妻賢母が何たるか分かったようですね」

オレンジペコ「はい。お二人のおかげで私も母性に芽生えることが出来ました」

オレンジペコ「最初は戸惑いもありましたがお二人に哺乳瓶をあげているうちに何だか二人のことが愛らしく感じてしまって」

オレンジペコ「気がつけば私……ダージリン様やアッサム様に求められることが嬉しくて幸せになってしまいました」

ダージリン「これが聖グロ式おままごとの成果よ」

ダージリン「でも貴方はまだおままごとの全てを理解したわけではないわ」

ダージリン「戦車道は一人で戦うのではなくチームプレーが重要になる武芸よ」

ダージリン「共に支え合い弱点を補い合う……それこそが聖グロリアーナの戦車道」

アッサム「実際黒森峰では逸見エリカに対して生徒全員が赤ちゃんプレイをしているという調査報告が届いています」

アッサム「今はそれで均衡を保っていますが一人に負担が行きすぎるのはあまりよくありません」

アッサム「そこで私たちは赤ちゃんと母親必ず両方経験するようにカリキュラムが設定されているのです」

ダージリン「ようするに今度は私たちがママになる番だということよ」

オレンジペコ「わーいママだー!」虚ろな瞳

ダージリン「ええ……沢山甘えていいのよ」

アッサム「ほら哺乳瓶ですよ」

オレンジペコ「んぐんぐ」

ダージリン「次はオムツ代えの時間ね」シメシメ

オレンジペコ「きゃっきゃっ!」

アッサム「次は歯磨きをしますね。ほら口を開けて」

オレンジペコ「あーん」シャコシャコ

ダージリン「次はお風呂ね。大丈夫私が入らせてあげるわ」

オレンジペコ「ぶくぶく」チャプン

アッサム「それが終わったら服とオムツを着せて」シメシメ

ダージリン「眠る前に格言昔話も言ってあげる」

ダージリン「桃太郎は言いました」

ダージリン「こぉんな言葉を知ってる?  人生はどちらか。勇気をもって挑むか、棒にふるか」

ダージリン「それを聞いた犬はこう答えました」

ダージリン「ヘレン・ケラーですねと」

オレンジペコ「うう……」スヤスヤ

ダージリン「ふふ……心地よすぎて眠ってしまったようね」

アッサム「どちらかというと……うなされているような気が……」

オレンジペコ「……」スヤスヤ

ダージリン「でもこうして見るとやっぱりペコも子供ね」

アッサム「ローズヒップやルクリリが熱くなりやすい分……ペコには二人のまとめ役をしてもらうこともあります」

アッサム「ですが彼女はまだ一年生。やはり私たちに比べればまだまだ慣れない部分もあるでしょう」

ダージリン「そうね。そんな中で私たちに出来ることはこの三年の間に培った技術を次世代に伝えることだけ」

ダージリン「そして私たちの技術を次世代が更に上に昇華することが出来れば聖グロリアーナの戦車道は更に強くなるわ」

ダージリン「今度こそはきっと黒森峰だって倒すことが出来るでしょうね」

アッサム「私は倒せると信じています」

アッサム「ルクリリやローズヒップには今までの聖グロリアーナにはない勢いがありますし」

アッサム「オレンジペコならそんな二人をまとめてダージリン代わりを勤めることもできるでしょう」

アッサム「むしろそうでなくては困ります」

アッサム「特にペコに関してはそうなるようダージリンが積極的に面倒を見ていたわけですし」

アッサム「正直……ちょっとペコが羨ましいです」ボソッ

ダージリン「あらもしかして嫉妬してくれているのかしら」

アッサム「べ、別に私は嫉妬なんて……」

ダージリン「人は嫉妬するのを恥じるが、嫉妬したことがあるということや、嫉妬できることを誇りに思う」

アッサム「ロシュフーコーの言葉ですね」

ダージリン「正解」

ダージリン「私は嫉妬してくれてむしろ嬉しく感じているのよ?」

ダージリン「嫉妬をするということはそれだけその対象に真剣であるということ」

ダージリン「つまり私のことを大切に思ってくれてるってことだもの」

アッサム「……ええ認めますよ! 私は嫉妬していました」

アッサム「理由もそれだけダージリンのことが……その好きだからです」

アッサム「だ、大体昔はあんなに構ってくれたのに……三年生になってからは隊長としての責務や後輩の育成であまりプライベートで遊ぶこともなかったですし」

アッサム「学校は学校でダージリンはペコに構ってばかり私もローズヒップの面倒を見るのに忙しく」

ダージリン「ごめんなさい。すっかり寂しい思いをさせてしまったわね」

ダージリン「お詫びに今日は赤ん坊になって十分に甘えなさい」

ダージリン「久しぶりに貴方を甘やかしたい気分なの」

アッサム「……嫌です」

ダージリン「意外な返事が返ってきたわね」

アッサム「だって甘えるだけでは足りませんから」

アッサム「私はダージリンに甘えたいし同時に甘やかしたくもあるんです」

アッサム「だから赤ん坊だけではなくママ役もやらせてください」

ダージリン「困った友人ね。そしてとてもワガママ」

ダージリン「けれどそれで構わないわ」

ダージリン「私も貴方と同じように甘やかしたいし甘えたいって欲求が沸き上がっているもの」

アッサム「ダージリン……いえママ」

ダージリン「ふふ、今日は沢山甘えなさい相互赤ちゃんプレイ……おままごとの始まりよ」



オレンジペコ「ううっ……何だかとてつもない悪夢を見ていた気が……」

オレンジペコ「あれ……ダージリン様にアッサム様……」

オレンジペコ「お二人とも何をなさって……」コソコソ

バブーバブー! オギャーオギャー!

オレンジペコ「」ハイライトoff

これにてこの物語は終了です!
ここまで読んでくださりありがとうございました!
それではHTML依頼出しときますね!

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