甘奈「そうだよー☆ っていうか、入りたいって言い出したの甜花ちゃんじゃーん、ふふ!」
甜花「そう、だけど……甜花、やっぱりやめとこうかな……って」
甘奈「ダイジョブダイジョブ☆ ジェットコースターもバイキングも乗ってみたら楽しかったでしょ?」
甜花「あぅ……乗り物と、お化け屋敷は……また、話が、違うし」
甘奈「いいからいいから! ほら、入ろ!」
甜花「ひぃん……!」
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甜花「や、やっぱりちょっと待って……!」
甘奈「わわ、甜花ちゃん!?」
甜花「甜花……お、お手洗い、行ってくる……ね?」
甘奈「あっ、甘奈も行こっと」
甜花「うん、いっしょに行こ……あ、なーちゃん」
甘奈「わ! すごーい、お手洗いもファンシーだ☆」
甜花「にへへ……かわいい、ね」
甘奈「うん、チョーかわいい☆」
甘奈「じゃ、今度こそお化け屋敷入ろっか」
甜花「ちょ、ちょっと待ってなーちゃん……!」
甘奈「甜花ちゃーん!?」
甜花「甜花、お腹……空いちゃって……あっちの唐翌揚げ屋さん、行きたいなって……ダメ?」
甘奈「ダメじゃないよー! 甘奈もお腹空いてたし、行こ行こ!」
甜花「にへへ……」
甜花「おいしい、ね」
甘奈「チョーおいしー☆ あ、甜花ちゃん甜花ちゃん、こっちのレモン味食べてみる?」
甜花「うん……おいひい」
甘奈「甜花ちゃんの緩んだ顔かわいいよう!」
甜花「あ、なーちゃんも……チーズ味、食べる?」
甘奈「いいの? あーん」
甜花「ぅえっ」
甘奈「あーん☆」
甜花「……は、はい、あーん」
甘奈「はむ……んー! チーズ味もおいしー! ありがと甜花ちゃん!」
甜花「にへへ……」
甘奈「ご飯も食べたし、これでお化けが来てもヘッチャラだね☆」
甜花「ひぃん!」
甘奈「ほら、今度こそ入るよ甜花ちゃーん?」
甜花「や、やっぱり今度来た時に、取っておこうかな、って!」
甘奈「……じゃあ、今回はやめとく?」
甜花「う、うん……甜花、怖いのは……怖いし」
甘奈「そっかー、甜花ちゃんと入ってみたかったなー」
甜花「ご、ごめんねなーちゃん……」
甘奈「ううん、いいんだよ甜花ちゃん! 楽しい方が楽しいもんね☆ あっ、なら次は観覧車乗ろうよ!」
甜花「うんっ」
甘奈「楽しかったねー、特に観覧車はもう一回乗りたいくらい!」
甜花「うん、すごく綺麗だった……」
甘奈「遊園地なんて久しぶりだったけど、どれも面白かったー!」
甜花「甜花、遊園地コンプリート……!」
甘奈「甜花ちゃーん、コンプリートはしてないでしょ?」
甜花「?」
甘奈「お、ば、け、や、し、き☆」
甜花「あぅ……」
甘奈「なーんてね! お化け屋敷はノーカンノーカン」
甜花「……」
甘奈「甜花ちゃん?」
甜花「入って……みようかな」
甘奈「え、入るって、お化け屋敷?」
甜花「う、うん……ダメ?」
甘奈「ううん、ダメじゃないけど! 甜花ちゃん、大丈夫?」
甜花「あぅ、甜花……甜花、が、がんばる……!」
甘奈「甜花ちゃん……!」
甜花「な、なーちゃん……ま、まだゴールじゃないの……?」
甘奈「まだ入ったばっかりだよ甜花ちゃん!」
甜花「甜花……もう、だめ……」
甘奈「ギブアップ早いよ甜花ちゃーん!」
甜花「なーちゃん……手、手」
甘奈「うん、絶対離さないからね! 安心して甜花ちゃん!」
甜花「お化けさん、出ないで……出ないでぇ……」
甘奈「かわいいなー甜花ちゃん」
お化け「いひひひひひ!!」
甘奈「キャー!?」
甜花「びゃあああああ!?」
甘奈「って、甜花ちゃーん!? 走ったら危ないっていうか手離して大丈夫なの甜花ちゃーん!?」
甜花「ひぃん、はぐれちゃった……なーちゃん、どこぉ……?」
お化け「べろべろばぁ」
甜花「にゃあ!?」
お化け「ケタケタケタ」
甜花「ぴぃ!?」
お化け「う~ら~め~し~や~……」
甜花「あがががが」
お化け「ぎゃーっはははは!」
甜花「み゛い゛い゛い゛い゛い゛!?」
甜花「もうダメ……甜花、このまま……ここら一生出られないんだ……ひゃ!?」
甘奈「甜花ちゃん、ここにいたんだ」
甜花「な、なーちゃん……!」
甘奈「いたたた、苦しいよ甜花ちゃん」
甜花「なーちゃん、甜花、がんばったけど、もう無理で……」
甘奈「怖かったねー、えらいえらい☆ でもほら、あとちょっとだけだから、ね?」
甜花「う、うん……」
甘奈「手も繋ご?」
甜花「うん!」
甘奈「あ、見て見て甜花ちゃん!」
甜花「ひぃん!? はわわわ……」
甘奈「この生首よく出来てるよねー、でもほら? やっぱり作り物だし、怖くないよ甜花ちゃん!」
甜花「あ、本当だ……うん、作り物って分かってたら、怖くな」
お化け「がおー!」
甜花「やあああああ!?」
甘奈「キャー!」
甜花「わ、わかってても……こわいぃ……」
甘奈「あーびっくりしたー! 怖いね甜花ちゃん!」
甜花「なーちゃん、ゴールまだ……?」
甘奈「あとはまっすぐ行くだけだよ、もうちょっとだけがんばろ☆」
甘奈「ところで甜花ちゃん、このお化け屋敷のコンセプト知ってる? パンフレットに載ってたんだけど」
甜花「ううん……怖そうだから、読んでない……」
甘奈「それじゃ楽しみ半減だよ甜花ちゃーん☆」
甜花「あぅ、ごめんなさい……ど、どんな感じなの?」
甘奈「むかーしむかし、人形作りが盛んな村があったんだって。そこでは毎年、色んな村に色んな人形を作って運んでた」
甜花「にんぎょう……」
甘奈「お芝居に使う人形や、お祭りに使う人形、子供のおままごと用の人形、色んなのを作ってたんだって。でも、中には悲しい人形もあって……」
甜花「悲しい、人形?」
甘奈「うん。昔は泳ぎ方を知らない人も多くて、一度川に落ちると遺体も見つからないことが多かったんだってさ」
甜花「かわいそう……」
甘奈「でもお葬式はしてあげたい……そう考えて、いつ頃からか、棺の中に代わりの人形を入れるようになったんだって」
甘奈「昔は土葬にすることが多かったから、そのまま棺ごと土の中に……でもね、甜花ちゃん。昔から言うでしょ?」
甜花「……?」
甘奈「人形には魂が宿る、って」
甜花「ひっ……」
甘奈「夜になると聞こえてくるんだって、土の中から……『出して、狭いよ、ここから出して』って」
甜花「なーちゃん……その話、もうやめにしよ?」
甘奈「カリカリ、カリカリカリって棺を内側から引っ掻く音と……苦しそうに、悲しそうに、悔しそうに、恨めしそうに『出して、出してくれ、出せ、ここから出せ!』って!」
甜花「なーちゃん……!」
甘奈「っていう村の墓地があった場所に建ったのがこの屋敷って設定なんだって!」
甜花「……せ、設定?」
甘奈「うん☆ だから全部作り話なんだよ、大丈夫だよ甜花ちゃん!」
甜花「あぅ……こ、こわかった……」
甘奈「ごめんね? でもちゃんとお化け屋敷の設定も知ってた方が楽しめるかなって思って」
甜花「うん、パンフレットに書いてくれた人にも、悪いもんね」
甘奈「そうそう。あ、ほらゴールだよゴール!」
甜花「にへへ、これで、本当にコンプリート……!」
甘奈「人形には魂が宿る、って話、甜花ちゃんは本当にあると思う?」
甜花「分かんない、けど……あったらいいなって、思う、よ?」
甘奈「ふふ、そうだね……甘奈がいっちばーん!」
甜花「あ、抜け駆け、ずるい……! なーちゃん、待って!」
甘奈「おっさきー☆」
甜花「ひゃ、眩し……!」
甘奈「あ、甜花ちゃん! 良かったー、心配してたんだよ! 今係員さんに探しに行ってもらおうとしてて」
甜花「ふぇ、なーちゃん何言って……?」
甘奈「ごめんね、怖かったよね? 甜花ちゃんが走り出した後、探しながら進んだんだけど、全然見つけられなくて」
甜花「え、え? え?」
甘奈「甜花ちゃんが心配で心配で、甘奈はお化けよりそっちの方が怖かったよー!」
甜花「さっき、いっしょに……え? あれ? なん、で?」
甘奈「でも一人でゴールするなんてすごいよ甜花ちゃん! これで本当にコンプリートだね!」
甜花「ちが、甜花は……なーちゃんに助けてもらって、さっきまで手も繋いで……」
甘奈「手? あれ、甜花ちゃんそのお人形持って来てたの?」
甜花「え? あ、これ……」
甘奈「懐かしいねー、甜花ちゃん覚えてる? 甜花ちゃんだけ入院してた時のこと」
甜花「う、うん……なーちゃんたちが帰っちゃうの、寂しくて、やだやだって……」
甘奈「うんうん☆ 大人しい甜花ちゃんがあんな大騒ぎしたの、人生で一番だったんじゃない?」
甜花「かも……それで、この人形を買ってくれて」
甘奈「お父さんもお母さんもすごくホッとした顔してたんだよー? やっと泣き止んだーって」
甜花「にへへ、懐かしいなあ……久しぶりにこの鞄使ったから、入ってるのに気付かなかったのかな」
甘奈「その後、甜花ちゃんすぐ寝ちゃったよね。その人形抱きしめて『なーちゃ、なーちゃ』って寝言言いながら!」
甜花「そ、そうなの? 甜花、それは全然覚えてない……」
甘奈「あの時の甜花ちゃんも可愛かったなあ……」
甘奈「甜花ちゃーん、こっちの乗り場で乗った方が駅の出口近いよー」
甜花「待ってー、なーちゃーん」
甘奈「あ、お人形さんの顔、綺麗になったね!拭いてあげてたんだ」
甜花「うん、助けてくれたから」
甘奈「? ああ、入院の」
甜花「ううん、さっき」
甘奈「さっき?」
甜花「……にへへ、なーんでもない」
甘奈「えー、何それー? あははっ」
その晩、夢を見ました。
なーちゃんの夢でした。
なーちゃんが泣きながら何かを言っていました。
「違うよ甜花ちゃん! そいつじゃない! 甘奈はここだよ! 気付いて甜花ちゃん!」
でも、頭がぼんやりしていて、何を喋っていたのかよく分かりませんでした。
「甜花ちゃん! 助けて! お願い、気付いて! 甜花ちゃん!!」
その内、段々なーちゃんが薄くぼやけていって、消えてしまいました。
気がつくと朝でした。
夢のことをなーちゃんに話したら、笑われました。
私も変な夢だと思ったので、忘れることにしました。
忘れるといえば、遊園地に持っていったお人形が見当たりません。
電車の中に忘れてきちゃったのかも知れません。
残念です。
でも遊園地、楽しかったな。
今度はどこへ遊びに行こうかな。
なーちゃんと手を繋いでいれば、どこへだって行けそうです。
おわり
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