彼女の痛みになれたなら【デレマス】 (15)


神谷奈緒さんのプロデューサーのお話です

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俺はいまメイド服を着ている。次はビキニに着替える予定だ。さっきまではスク水だった。


プロデューサーとして、俺はこれまで神谷奈緒という担当アイドルと活動をしてきた。するとやはりというか、俺の中で納得出来ないものがわき出てきた

彼女はまだ未成年だぞ。

アイドルという職業である以上、特殊な服装に也、顧客に性的なそれをお見せすることは避けては通れない。しかし、それでも、俺は彼女の事を想うと胸が痛くなった

高校時代というかけがえのない青い時間を、アイドルに費やしている。人生にとって西城かも知れない時間を、アイドルとして浪費させているのだ

彼女が、神谷奈緒という少女がそれに対してどう思っているかはわからない。しかし、どうか良い方向に思っていてはくれないだろうか、と自分の事を棚に上げながら思った

同時に、彼女が何を考えているのか知りたくなった。もちろん、他人の考えなんか分かるはずもない。でも、分かろうとしたかった

だから俺は、彼女がこれまでに来た衣装を着ることにした。これまでに彼女が使った衣装に似たものを数着買い紙袋に詰めた

「ということで、ちひろさん、更衣室を借ります」

「ヒィッ……」

ちひろさんは俺の方を見て顔を青ざめさせていた。ゴキブリでもいたのだろうか


スク水では股間の『アレ』がはみ出ながら締め付けられ、とても痛かった。二度と嫌だ。奈緒もこんな気持ちだったのだろうか

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さあ次はメイド服だ、彼女が着用していたものと同じ、短めの丈のスカートのメイド服だ。袖を通し、ニーハイを履き、鏡を眺めた。爆笑した

だって絶対領域の所が毛でもっさりだし、ニーハイからすね毛がはみ出しててこの世の存在とは思えないほど気持ち悪い。

それになんといっても、この短髪な男の髪型がメイド服と全然似合ってない。笑った顔を見て更に笑ってしまう。地獄の循環だ

ひとしきり笑った後、呼吸を整え、ニヤケながら鏡と向き合う

全然似合ってねぇ。

この着こなしを恥じらいながらも完璧にしていた奈緒へ、より一層尊敬の念を向けた。すげえなぁ、衣装に着られてねえんだもん、すげえなあ

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あのときもっと似合っているって言えば良かったなぁ、また明日にでも言うか。

そう思いながら、メイド服を脱いでいく。

次はビキニだ。あのプール掃除の時に着ていたやつの色違い。

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買うとき店員さんと
「プレゼント用のラッピングしますか?」
「ああいえ自分用なのでいいです」
「え、自分よ……え?」
「あ、えっと自分用の、ええ、自分で衣食住、衣食、食う、食うためのもんです!」
「は?」
という会話をしたっけな。上手くごまかせて良かった。プロデューサーとしてやって来た処世術は伊達じゃないと言うことだ

誰もいないしビキニだしで、俺は一旦全裸になる。下か上か、どちらから着るのか不明だったが、さっきみたいに『アレ』が痛くなる時間を短くするべく、上のほうを先にした

背中の方で紐を結び、上の方(ブラっぽいの。正式な名前を知らない。今度スタイリストさんに聞く)の装着を完了させた。やはりレディースとメンズではサイズが違うのか、鎖骨~脇の下のラインまでしかカバー出来てない。乳首がはみ出てる

こんな恥ずかしいものだったのか、ビキニとは。

やはり、これを奈緒に着用させようとした自分は間違っていたのでは?

……心の中で黒いもやが発生するのを感じながら、俺は下の方(パンツっぽいの)へ手を伸ばした

そのときだった

「プロデューサー、ちひろさんに更衣室にいるって聞、いた………け……ど…………」

奈緒がやって来た

とりあえず乳首を先に隠した。

今日はここまでです、つづきはまた

実を言うとスク水を着たことがないので誰かください

「最上」の間違いです。申し訳ございません。感激ィ!


なぜ乳首を先に隠したか? それは腕を曲げればすぐに隠れるからである。股間は膝を落とせば隠れる、が、股間を腕で隠すと乳首は隠れないのだ。だから俺は真っ先に乳首を隠した

「奈緒、お前は可愛いんだ、自信を持て」

膝を落としながら俺は奈緒にそう言う。とにかく明るいポーズになっているし奈緒からは股間など一切見えないだろう

「メイド服も似合っているし、水着だって最高だ。……でも、そう思うのは俺の勝手な気持ちだ」

とにかく明るいポーズを一切崩さないまま、スライドを利用した等速直線運動で奈緒へ近づく。ビキニと一緒にノリで買ったローションが役に立った。

「俺がスカウトしてアイドルになったけど……奈緒は、アイドルになった事をどう思っているんだ?」

こうして奈緒みたいな衣装を身に纏っても(今は不完全な纏い方)、やっぱり奈緒の考えていることは分からなかった

だから、直接聞きたい。奈緒は、アイドルをやって『良かった』って思ってくれているのかを。

「え、ちょ、あの……状況が全然、何言って……プロデューサー……? なんで止まらないの……?」

等速直線運動をしながら奈緒に近づいて、通り過ぎた。足裏のローションが多すぎたようだ。

そのまま扉を通過し、廊下の壁にぶつかり転倒する。仰向けの形になった。股間の上にビキニの下が落ちて上手く隠せた。

「ユニットとかさ」

「話続けんの!?」


「イジられキャラって感じだけど、嫌に思ってるところとか……言いにくいだろうけど、担当の俺には言って欲しいんだ」

「今一番言いたいことは『服着ろ』だよ」

「話がしたいんだ……まあ恥ずかしいかもしれないけど」

「今のプロデューサー以上に恥ずかしい人間いないよ」

「出来たら……話を聞かせてほしい」

「全然話聞かねぇなコイツ……」


「らちが明かないし、もう……」

奈緒が小声で何かボソボソ言っている。頭を掻きながら、俺の方に歩み寄ってきた。

「その……アイドルは楽しいし……やって来て、よかったとは思ってるよ」

彼女はすんなりと、俺の欲しい言葉を言ってくれた

「こんな状況だけどさ……これは、本心だから……」

「奈緒……」

嬉しかった。報われたような気がした。

俺は乳首を隠しながら立ち上がる。ローションで立ち上がれずにまた転んだ。滑らないように、足裏のローションを両手で拭った。手までヌルヌルになって余計に立ち上がれなくなった

四つん這いで体を持ち上げていく。生まれたての子羊よりプルプルしながら、俺は奈緒へ向かって顔を上げた

「ありがとう、奈緒」

「こんな状況で言われたくないなぁ……」


俺は今四つん這いの状態で耐えている。少しでも気が緩むとヌルンと滑って転びそうだ。奈緒に洗い流す用の水を取りに行ってもらっている。帰ってくるまで耐えねば

……しかし、やって良かったと思う。彼女の衣装を俺が着ることで、一層奈緒の容姿や可愛さ、これまでしてきたことの理解が深まったような気がする

もっと早くすれば良かった、と心のどこかで思った。けれど、もうそういう小さなことは気にかからなくなっていた

奈緒の事が知れただけで、今はもう満足だ。彼女の気持ちになることも、彼女の痛みを抱えることも出来ない。けど、知ることが出来た

そう思うと気が緩んでしまった。

ぬるんっ、と滑って後頭部を思いっきり打った。

気がつくと病院だった。脳震盪を起こしていたらしい。

「なんで股間を出していたんですか?」

主治医に問われた

「ある人の気持ちになろうとしていたんです」

正直に応えた

今度ははぐらかすことはなかった。だってもう、俺は俺がすることに恥ずかしいことなんかなかったから

「わかった……うん……とりあえずね、乳首隠さなくて良いから先に下を履いてね」

「はい」

外を眺めると雨が降っていた。いつか奈緒が傘を持って迎えに来てくれたことを思いだした。

空に虹が架かるのを待ちわびながら、俺はビキニの上(ブラの方)を外し、包み込む形で股間を隠した

『終わり』

ここまでです、ありがとうございました

みなさまに夏らしいお話をお届け出来ていたら幸いです

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