広大な宇宙を自由に探索するスレです。
前スレはこちら。
【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語
【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語Part2
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1561299805
【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語Part2
リンクが出ていない人がいるかもなのでもう一度。
それと、現時点でのストックは99変換権:4、振り直し権:1です。
あらすじ
『第1部』 方舟との邂逅
火星へ物資を輸送していたが、宙賊の大艦隊と交戦。
↓
謎のARM『バルキリア』に搭乗し、斥候部隊を殲滅。月の『セレーネー』に撤退。
↓
冥王星周辺宙域まで戻ってきた外宇宙航行用小惑星型宇宙船『ノア』を目指し出発。
↓
轟沈直前の宙賊の艦から唯一の生き残り『レオ』を救出。
↓
アステロイドベルト通過直後の宙域で『アンタレス』と交戦、Mr.戦争大好き人間の『サーシェス・ビアッジ』を撃破。
↓
木星コロニー『グレナン』で改装中に、人攫いに遭いかけた少女『リーネ』を救助。
↓
冥王星付近まで到達したところで、ケンタ帝国のARM『デュラハン』を駆るテロリスト『ダフト』と交戦、一乙した。
↓
コンティニューして『ダフト』を撃破。『ノア』で色々な依頼を受け、月へと帰っていった。
『第1.5部』 束の間の休息
大図書館コロニー『アカシャ』で情報収集をして、月の『セレーネー』まで帰還。
↓
依頼人に付き添って地球に降下。
↓
また月に戻って、妹と約束をする。
↓
異星人の『ボグドンナザゼフフノヒタフ』と出会い、なんだかんだで仲良くなった。
↓
女社長『ヴィクトリア』の依頼を受領
↓
妹の手術開始。色々と行動をする。
↓
妹完治。『バルキリア』の改造と『ノア』の大規模改修を実施。
↓
リゾートコロニーでバカンスしたり、色々と行動をした。
↓
同僚である『クロエ』と勢い余ってドッキング。
↓
腐れ縁の同期『ラバンレイ』の依頼で、火星に向かって航行中。同時期に『バルキリア』改造終了。←今ここ!
他の設定は第二部開始時に貼り付けます。完成してないんですごめんなさい。
今日は誘導とかだけです。次回開始時まで質問、雑談を受け付けますので、ご自由にお使いください。
一応、100レスまでを使用可能範囲としておきます(そこまで進まないでしょうが…)。遅くなって申し訳ありません。
既存のキャラが主人公になることってあるのかな?
>>36、声が多い場合はあり得ますが、基本は新しく作る予定です。
大変長らくお待たせいたしました。それでは、再開です。
「………」
鬱屈とした裏通りを抜けるリヒト。視線をどこからか感じるが、大した脅威は感じられないので、無視をする。
ラバンレイ伝にリヒトのヤバさが伝わっているので、手を出そうという馬鹿はいないのだが。
「おっと」
ぶつかりそうになった子供をひょい、と避ける。怪我無く済んだというのに、子供は露骨に嫌な顔をしていた。
活気だけはあるものだ、と街並みを眺める。遠方では、ザムがビルを建築していた。
「もうそろそろ、クロエも『バルキリア』を完成させるだろうな」
「何か、お土産でも用意するべきかな?」
ふむ、と思慮を始めるリヒト。彼はまだ、気付いていない。
『アリアンロッド国際宇宙港』で、史上稀に見る大惨事が始まることを。
↓1~3 リベライオンで取る行動。今から帰投しても、間に合うかどうかはコンマ次第です(無駄な行動をしないほど確率上昇)。
今見返したら、リヒトの戦闘力(ARM)は78でした。なかなか強いぞ。
「ずっと働き詰めだったから、糖分とか補給出来るやつが良いよね」
あれこれと籠に入れていくリヒト。物価のことなどすっぽり抜け落ちているようだ。
「毎度あり。合計44444オームでさぁ」
「ぼったくりかよ。…まぁ、面倒事起こしたくないし払うけどさ。ラヴァが」
ラバンレイ宛の領収書を切らせ、そそくさと去っていく。やはり、良い場所ではないようだ。
「…さっさと帰るか。他の都市に行くにしても、入国審査で間違いなく引っかかるし」
『エクストリーム』を持って帰るための手配はされているが、他国に持ち込むための手配はされていない。
運送会社の社員とはいえ、ARM、それも、高性能機を持っているなど、怪しまれる未来しかない。
「…あー。何だか疲れた」
ずっと気を張っていたからか。座席に座った直後に、リヒトは深い眠りについた。
惨劇を回避出来るのか。それは、リヒトが間に合うかに懸かっている。かもしれない。
01~33:全てが終わった後に帰還。
34~66:騒動の真っ只中に帰還。
67~99:待たせたな!(イケヴォ)
00:突如流れるドリフのオチのテーマとこち亀のアレ
↓1
やだ・・・00に変換したい・・・!
>>46、他のスレでは、権利を複数消費して上位の奴に変えたり出来るんですよね。
そういうシステムも採用した方が良いんでしょうか。一応、三つ消費したら上位の権利一つ入手とか考えてるんですが(逆も然り)。
ちなみに、今回の00はギャグまっしぐらです。誰も死にません(敵味方含めて)。日が変わるまで意見募集をば。
では、グレードアップシステムだけ採用ということで。
「…かっけー。いいなぁリヒト」
キラキラ、とした眼差しを向けるレオ。その先には、生まれ変わった『バルキリア』が鎮座している。
『閃光』の名を冠する『戦乙女』。携えた蒼き双剣は、迫り来る脅威を悉く斬り伏せるだろう。
「そう言うなよレオ。これはリヒトのなんだから」
「分かってるよぉ。羨ましいだけだって」
「クロエ、俺のも改造してくれないかな…」
「負担を掛けちゃメッ、なのです」
「…だな。ジュースを買いに行ったクロエんとこ行ってくるよ。疲れてそうだったし」
「おう、頼む。…しっかし、リヒトも災難だな。この節目に立ち会えないとは」
「まぁリヒトってそういうとこあるし」
「黙れ無能」
「電撃マジでやめてよぉぉぉぉぉお!!!?!」
雷が迸るハンガー。そこに忍び寄る影に、誰が気付くのだろうか。
「ふぅ…。やっと仕事から解放されたわ」
壁に寄り添い、濃厚なチョコレートドリンクを口にするクロエ。隈の濃さは度を超しており、今にも倒れそうだ。
「…ったく。あんたのためにやったっていうのに、当の本人がいないと台無しじゃない」
クロエは愚痴を零しながら、糖分を補給する。疲れ切った脳に栄養が染み渡る。
「…あら?子供の声?」
どこからか聞こえる、子供の動揺する声。心配に思ったクロエは、聞こえてきた方向に向けて歩き出す。
程なくして、音源の子供に出会う。宇宙服を着ているということは、輸送船の人員のようだ。
「どうしたの?ここは関係者以外立ち入り禁止よ」
「ご、ごめんなさい…。ボク、トイレに行きたくて…」
「でも、ここ広くって。俺たち迷っちゃったんだよ」
「あぁ。それなら、あそこを曲がってずーっと真っすぐ行って、上に向かえばあるわよ」
「私が案内するわ。ついてきて」
「「ありがとう!」」
子供たちを先導するクロエ。二人は喜びを隠さないまま後を追う。
01~50:さらばメカニック!クロエ宵闇に死す!
51~99:さすがにスイセイ産まれは格が違った。
00:築かれるは狂信者の骸。
↓1
あ、忘れてました。ニートの白兵戦能力を↓1で判定します。
(…そういえば、この子たちは何でここにいるの。警備員が全ルートに立ってるのに)
不審に思ったクロエは翻る。その眼に映ったのは、空を斬る凶刃と凶弾だった。
「………ッ!?」
「外れた。じゃあ、パターンCで」
「おうっ!!」
「…ああ、そういう輩ね」
器用に身体を捻り、全ての攻撃を回避するクロエ。更なる追撃を加えんと、子供たちは接近する。それを。
「ごっ…!?」
「イティ!?」
「このケラウノス、貰うわよ」
袈裟斬りを壁を蹴って避け、上下反転した体勢からの膝蹴りで、子供を吹き飛ばす。
手放された『ケラウノス・ブレード』を掴み、一太刀でハンドガンの銃口を真っ二つにした。
「い゛…っ…。あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっっっ!!?!?」
「…何やってんだよ。クロエ」
「援護射撃ありがと、レオ」
「伊達に元宙賊じゃあないさ」
廊下の角から狙撃を実行したレオ。その弾丸は、寸分違わず少女の両足を貫いた。
クルクル、と拳銃を回しながらクロエの下に向かうレオ。クロエの傍についたところで、足を止める
「…で、貴様らは何者だ?答えろよ」
パシッ。
拳銃を構え、倒れ伏す少女のこめかみに当てる。対する少女は、忌々しげに言葉を漏らす。
「…言わない…!ボクは、仲間を売らっ」
「じゃあ死ねよ」
拒絶の意志を把握したレオは、言い切る前に脳天を撃ち抜く。恐怖に怯える暇も無く、少女は息絶えた。
「お次はお前に訊こうかな…ってありゃ。死んでる」
「毒でも仕込んでたのね」
もう一人は既に、自害していた。白目を剥き、歯を噛み締めたまま、固まっていた。
「ハンガーに戻るわよ。この調子じゃあ、そっちも襲撃されてるわ」
「おうよ。クロエは俺が背負うよ。ふらふらしてるからな」
「どうも。…髪、随分伸びたわねぇ。女の子らしいわ」
「えー。今度切りに行こうかな」
雑談を交えながら、二人は戦場となったハンガーに向かう。ハンガーでは、既に銃撃戦が繰り広げられていた。
行数が足りなかったので、判定だけ分割します。
01~25:命は等しく消えるもの。
26~45:負傷する。しばらく離脱。
46~99:無傷で生存。
↓1 リーネ
01~35:リヒト君が壊れちゃう。
36~60:負傷する。しばらく離脱。
61~99:無傷で生存。
↓2 リーゼ
01~25:エース、生身では力及ばず。
26~50:負傷する。しばらく離脱。
51~99:無傷で生存。
↓3 ボァブ
01~35:他人は救えど己は救えず。
36~60:負傷する。しばらく離脱。
61~99:無傷で生存。
↓4 ジョナサン
01~25:いいとこ無しで死ぬのかよお前。
26~45:負傷する。しばらく離脱。
46~99:無傷で生存。
↓5 ニート 全員の中で誰かが00出したら、敵全員死にます。
判定の多さが殺意に満ちてる…
>>61、一番ヤバい相手だとクロエ死亡確定の上、死亡率が更に倍でしたので、まだマシな方です。
99変換権が4に増えました。やったねたえちゃん。
「何なんだよ!この子供たちはぁ!?」
「パパの仇だ…!全員肉塊になりやがれ蛆虫どもが!!!」
開放されたハンガーの中で銃撃戦をする『ノア』乗員とテロリスト。
警備員も当初は『ノア』側にいたのだが、あえなく全滅してしまった。
「づっ…!?」
「リーネ!?クソッ!」
銃弾を肩に受け、衝撃で投げ出されるリーネ。それを庇いに行くボァブだが、彼も無数の銃弾に穿たれる。
「ボァブさん!にゃろー!」
アンカーを飛ばし、服を引っ掛けて二人を救出するカイン。ニートだってやる時はやるのだ。
「二人の治療は私がやるよ。これ以上踏み込ませないでくれ」
「了解」
「ゲームみたいにやれればなぁ…。全員キル取れるのに」
「馬鹿言わないで、カインさん」
ARMの陰から迎撃をするリーゼとカイン。的確な射撃が、戦力を漸減させる。
「…おい!これじゃあ、例のブツは奪えねえ!」
『みたいだなぁ。お前らは一回下がれ』
『…後は、全部灰にしちまえばいいんだよぉ!!!』
「…分かった!ちゃんと拾えよ!」
『アームは射出してる。勝手に乗りな』
「…逃げた?」
「…ううん、違う」
後退していくテロリストたち。カインらも手を止めるが、リーゼはすぐさま『バルキリア』の元に向かった。
「リーゼくん?君は行くべきじゃあないよ」
「でも、行かなきゃ。お兄ちゃんが戻ってくるまで、戦えるのは私だけ」
言葉を返しながらも、コックピットに乗り込むリーゼ。当然、部外者の操縦をAIが制止する。
『ちょっと!?資格が無い人が動かしたら駄目よ!』
「『ハルヴレーヴァ』」
『…はぁ!?』
「聞こえなかった?なら、もう一度言う」
『き、聞こえてるわよ!ええ分かったわ!コントロールシステム起動!後は勝手にやってよね!!』
「分かってる」
キュオン。
そんな音を立て、ツインアイに光が灯る。薄緑色の双眸は、彼方にある軍艦を捉えている。
「『ライトニング』。リーゼ、リフトオフ」
美麗な双剣を抜刀し、一人の戦士が、籠を破り飛び立った。
「…邪魔なんで、どいてください」
「駄目ですよ!今は入港出来ないんです!」
「もう一度だけ言います。そこをどけ」
「だから…!生身で行って、死ぬ気ですか!?」
格納庫の入り口で通せんぼを食らうリヒト。既に、怒りは沸点に達していた。
「俺のアームがあんだよ。どけって言ってんだ」
「それとも何か?来るかも知れない助けを待って、妹たちを死なせろってのか?あ!?」
「う…うぅ…!」
CA(キャビンアテンダント)の女性が、涙を浮かべながら助けを求める。機長は首を横に振り、扉を開いた。
「…自己責任でお願いします。我々は、皆様の命を守るため、最善を尽くしているだけですので」
「分かってます。さっさとハッチを開いてくださいね」
手すりを蹴り、ARMのコックピットまで一直線に移動する。外部操作で素早く開けると、流れるように中に入った。
「…誰だよ。こんな巫山戯たことをするのは」
その怒りの矛先は、モニターに映る軍艦へと向けられている。それをぶつけるために『極限』は今、目を覚ました。
「…ぶっ潰す。命乞いしても、絶対に殺すからな、あんたら」
呪詛を吐きながら、スロットルを全開にし、エクストリームは飛翔した。
本日はこれで終了です。山場は越えたので、後は蹂躙タイムが始まるだけです。
第二部までもう少し。これからも頑張っていきたいと思います。お疲れ様でした。
「リーゼが交戦を始めた…。けど…」
「…俺はどうすればいいんですかね」
宇宙(そら)を縫うように駆け抜ける蒼い光。それを追うように、色鮮やかな光が宙域を駆け巡る。
リヒトが駆る『エクストリーム』は、戦闘宙域からかなり外れた位置にいる。
一番近いのは、撤退する敵母艦の方だ。艦は『セイリュウ級』。目立った装備は無い。
しかし、無数の護衛機が守りを固めている。性能で勝っていても、数の差は如何ともし難い。
さらに遠くでは、バルキリアが二機のARMとじゃれ合っている。といっても、二機がかりで漸くトントン、といった具合だが。
「…映像を見る限り、白い方は冥王星で戦ったアームと同じような装備を付けてるな」
「あれより、完成度は段違いみたいだけど」
眼で見るだけでも、火力、機動力、拡張性の全てで上位互換なことは分かる。それだけに、心配だった。
いくら性能が上げられたとはいえ、二機を相手にして大丈夫なのか。
不安が胸中で蠢くリヒト。髪をガシガシ、と掻きながら、どうするべきか考える。
1:母艦を墜とす。
2:リーゼに加勢する。
01~20:エクストリーム被弾。戦闘継続に支障アリ。
21~45:戦闘膠着。
46~80:良い感じで進む。
81~99:これもう勝ちなんじゃね?(慢心)
00:俺に勝算がある!
↓1
「…リーゼを信じよう。俺は、足を潰すことに専念する」
逃がさないと決めている。全員殺すと決めている。ならば、逃げられない状況を作る他あるまい。
ハイパー・ジャマーを起動したエクストリームは、最大加速で突っ込む。
加速を続け、慣性移動に任せる。そして、スラスターの稼働を一時的に停止させる。
レーダーの索敵範囲に入った頃には、視認することは不可能だ。
確実な一撃を以て、奴らに死を。自分でも驚くほどに、心は冷静だった。
「わ…あぁっ!?何があった!?」
「さ、左舷に被弾!この信号…これは…『エクストリーム』です!」
「何ィッ!?何故気付かなかった!?」
「ジャミングです!電子的に隠蔽工作をされたら、我々では見つけられませんよ!」
通過する二秒前にジャマーを解除し、予め溜めておいたエネルギーを放出。
ビーム・ランチャーの一撃を受け、格納庫に大穴が開くセイリュウ級。
その下を通り過ぎたエクストリームは、再度エネルギーを充填。片手にビーム・サーベルを構えて突進する。
「ふざ…けるなよぉ…」
防衛のために踊り出る『ヴェンデッタMARK-2』だが、それを嘲笑うように、光刃で斬り伏せる。
コックピットや四肢を穿ち、抉り、斬り落とし。瞬く間に鉄屑を生み出した『極限』は、光溢れる銃口を、傷付いた龍へと向ける。
「じゃあな。全員、ここで終われ」
巨大なビームで、艦尾から丁寧に焼き尽くしていく。爆炎を上げながら、艦が原型を失っていく。
「り…リーダー…。ビアッジさん!」
火の手が上がるブリッジの中で、中年が叫ぶ。炎が舞い、身体を焼く。
「どうして…どうしてあんたは…俺たちを見捨てたんだぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
地球に残された者からすれば、切り捨てられたようなものだった。
彼らは最期まで、狂人(ビアッジ)の心を知ることが出来なかった。
「………ッ!?母艦が墜ちた!?使えねぇっ!」
毒を吐き捨て、計画を変更する。そもそも、敵が生きていることがおかしいのだ。
生温い環境にいた奴ら如きに、自分たちが苦戦するなど。まずそこからおかしかった。
「ナタル!いったん引くぞ!」
「どこに?」
「地球でもどこでもいい!まずは、落ち着ける場所に…!?」
後退するガーゴイルの背後に回り、メインブレードで貫こうとするバルキリア。テールスパイクで何とか往なすが、もう次は無い。
「こっちは終わったよ」
殲滅を終えたリヒトも戦線に加わる。これで、人数はイーブンになった。
「は…あぁっ…!あはぁ…ひっ…!」
汗が流れ、呼吸が早まる。自分は今、明確な死を感じている。
つまらない。蹂躙出来ないことが、ただただつまらない。
分からない。どうして、こんなことになっているのか分からない。
怖い。死ぬのが怖い。
「う…うわぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「何やってるの、お兄ちゃん」
半狂乱になった少年は、呆れる妹の前で特攻した。機体特性すら頭から抜け落ち、自ら死を選んでしまった。
01:まさかの被弾。
02~05:戦闘膠着。
06~99:ご臨終だ。
00:黒ひげ危機一髪。
↓1
「バスターモード、起動」
ショットガンにソードビットを装着し、前方に向ける。ガーゴイルから、無数のビットとミサイルが放出される。
だが、相手が悪すぎた。どれだけ弾を撃ち出そうと、それを容易に処理出来る武装を、敵は持っていた。
「ぎ…いぎぃっ…!?」
光の奔流に全てが消え失せ、ARMの装甲を削り取る。熱の許容量を超えた電子機器が破損し、コックピット内で火花が散る。
不幸にも、破損時に噴き出た残骸が、少年の喉を焼いてしまった。
声帯が傷付き、言葉を紡げない。声にすらならない叫びが、小さな揺り籠を満たす。
「お兄ちゃん…。はぁ、これでおしまいかぁ」
「じゃあ、皆も連れてかなきゃね♡」
兄の苦しむ声が耳を劈く。溜め息を吐いたナタルは、自爆プログラムを起動させる。
どうせ消える命なら、終わるその瞬間まで楽しみたかった。略奪を、背徳を。
幾度身体を重ねても、満たされなかった。こんな私を作ってくれた人は、既にいなかったから。
「お兄ちゃんじゃあ、パパの代わりは無理だったか。…うん、当たり前だよね」
「だって、パパの狂い様は、誰にも真似出来ないものね!」
「パパ…待っててね…。今、ナタルも逢いに行くから…♡」
そこで、ナタルの意識は完全に途絶える。痛みを知らず逝けただけ、幸せなのかもしれない。
『極限』が振るう右腕の光刃が、的確にコックピットだけを切り裂いた。
対消滅炉も稼働を終了し、自爆プログラムによって開かれた炉心から、反物質が漏れ出す。
それは、純白のARM『エリュシオン』を食み、ゼロに還した。
瞳に映るのは、脳が生み出した虚像。偽りの父親。
ゲラゲラ、と心底愉快そうに嗤い、自分を見ていた。
「よぉ、ハワード。お前も駄目みたいだな」
「…なあ、親父。俺を褒めてくれないか?」
「俺、頑張ったんだぜ。あんたみたいになろうと、必死で戦ったんだぜ?」
親に褒められようとするのは、子供であれば何もおかしくもないだろう。だが、投げ掛けてほしい、と願っていた言葉は来なかった。
「…は?俺みたいになろうとした?あれで?」
欠伸をしながら、そんなことを言うビアッジ。その眼は嗤っていた。
「馬鹿かお前?復讐なんてくだらねぇことに固執しといて、俺になる?」
「馬鹿じゃあねえのか!!戦いを、蹂躙を、混沌を愉しむのが俺たちだろうが!!!」
「鼻で嗤ってりゃ良かったんだよ。『他人の不幸は蜜の味』…そんな素晴らしい言葉があるってのによぉ」
「あ…あぁ…」
「…お前はよ、半端なんだ。そんなくだらないことで心が揺らぎ、死すらも愉しめなかったお前は、どうしようもねえ」
「お前には、その資格は無かった。俺になる資格なんて、端から持ってなかったんだ」
「…烏滸がましいぜ、お前。俺の子供(ガキ)ってだけで、良くもそんな考えが浮かんだなぁ!あ゛ぁ!?」
「う…あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
少年(ハワード)は、空想の中ですら、尊敬した父親(ビアッジ)に否定された。
「そっちも終わったか」
「うん」
メインブレードを引き抜き、腰部ラッチにマウントするバルキリア。
胴体だけのガーゴイルはふわりふわり、と浮かんだまま。バルキリアの翼も、役目を待つために閉じた。
「…港に戻るよ。ここにいたら、俺たちも犯人と間違われかねない」
「分かった」
エクストリームのマニピュレータを、バルキリアのマニピュレータが握る。まるで、私を連れていって、とねだっているようだった。
推力はそちらの方が上だろうに、と一瞬本音が漏れるが、一度咳払いをして港に戻る。
数千人の犠牲者を出した『アリアンロッド国際宇宙港テロ事件』は、これにて終結した。
本日はこれで終了です。次回コミュ終了時に、割と重要な判定を行います。これで、地球圏の治安が決まります。
実は子沢山なサーシェスさん。まだ子供は出てくるかもしれません。↓1コンマ一桁分、リヒトの戦闘力が上昇します。
では、お疲れ様でした。
乙
バルキリアが強化されて新しくなったって乙女座が知ったらめっちゃ興奮しそう
>>97、本人から「新しく生まれ変わった戦乙女も大変麗しい。が、私個人としては、本来の姿の方が好ましく思った。何故ならば、元の状態、即ち純白の装甲に金色の装飾が施された様が、あまりにも美しかったのだ。穢れを知らぬ可憐な存在でありながら、その手にある獲物は殺意を隠そうともしていない。そのアンバランスな姿が、見る者全てを圧倒する魅力を放っていたのだ!また…(以降原稿用紙五枚分の感想)」というお言葉を頂いています。
今日で終わるかなぁ。終わらせたいなぁ、と思っております。では、再開としましょう。
帰港したリヒトたちは、規制線をすり抜けてハンガーへと向かう。既にゲートは閉じられているので、宇宙服は必要無い。
待機するARMが見える位置に着くと、担架で運ばれるリーネとボァブが見えた。
「お帰り。火星旅行は楽しかったかしら?」
レオにもたれ掛かるクロエは、そんなことを言う。レオは軽く手を挙げて応対した。
「事情を説明してくれ。いったい、何があったんだ?」
「テロリストよ。それも、私たちだけを狙った、ね」
「思い当たる節が無い!」
「いや、あんだろうよ」
リヒトの否定に、普段と変わらない態度でレオの言葉が被さる。
「リヒトさ、人を殺してる自覚はあるだろ?アームに乗って、軍艦やアームを墜としてるんだからさ」
「何人死んでるか、それは分からないけど。恨みを持つ人だっているだろうさ」
「家族を殺した(奪った)アームのパイロットに、な」
むぐ、とリヒトは押し黙った。そう言われると、何も反論出来ない。
「ま、リヒトが気にすることはねぇよ。奴らは全滅…敗北したんだから。もう何も起きない」
「済んだことを気にしてもしょうがないでしょ。私は寝るわ」
お休みと言おうとしたところで、クロエが固まる。そして、レオから離れてふわり、と浮いた。
身動ぎするでもなく、受け身を取るでもなく。壁に激突する直前で、リヒトが抱き留めた。
「きゅ、救急車!救急車ーッ!」
めでたく、クロエとボァブ、リーネに、即日入院が言い渡されることになった。
ノア改装終了まで残り 三週間
↓2 自由安価。
時期的に先に判定をするべきだった。これの後に決戦の判定を行います。
↓1 宙賊側の戦力 +20の補正付き
↓2 討伐軍側の戦力 +30の補正付き
判定をするまでもなく討伐軍の勝利です。火星宙域までの間で、戦闘が一切発生しなくなりました。
少々お待ちください。
「…思えば、クロエずっと働いてたんだよな。過労死寸前だったのかよ…休めよ…」
「ボァブさんとリーネは、テロリストに撃たれて大怪我だし…。命に別状は無いらしいけど」
「…ボァブさん、背中に相当撃たれたって聞いたんだけど。化け物じゃあないのかな…」
病院に入ったリヒトだが、張り紙に視線を移すと、想定外のことが書かれていた。
『特別警戒中!患者のお見舞いは一日十分限定!』
「…一人しか行けないじゃん。何で、よりにもよって今日なんだよ…!」
先週大規模なテロが起きているのだから、当然の措置であるのだが。そこまで、リヒトの頭は回らなかった。
「…誰のとこに行こう。行かなかったら、絶対に何か言われるよなぁ。特にクロエ」
リヒトは運命の三択を突然突き付けられた。当然悩むが、答えは出ない。
こうなったらルーレットだ、とアプリを起動する。ええい、ままよ。
誰のお見舞いに行くかを記載してください。先に二票入ったキャラの元に向かいます。
ポチッ。
無心で画面をタップした結果、選ばれたのはリーネでした。
「…まぁ、まだ子供だもんね。今は13だっけ…14だっけ…。憶えてないや」
リーネのいる部屋に向かうと、何やら軍服を着た青年がうろうろしていた。
「何してんだ」
「いだだだだだだだだ!!!!」
一瞬で拘束し、腕挫十字固めを極めるリヒト。堪らず、青年は床をタップする。
「答えたら解放するんで」
「リーネのお見舞いですあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!!!痛い痛い痛い!本当に折れる!!!」
「何でここにいるって知ってんだお前ァ!」
「知り合いがここで働いてるんですよぉぉぉぉぁぁぁぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「プライバシー侵害じゃあねえか!!!」
「五月蝿いです…。せっかく、気持ち良く寝てたのに…」
「………」
扉を開け、床に転がっている二人を見たリーネ。青年の方に視線を向けた瞬間、パチパチと火花が散る音がした。
「あ、リーネ。これどうする?」
「捨ててください」
「かしこまりましたー」
「ちょっとぉ!!?!?!せめて話だけでもさせてくれよぉ!!」
「話すことなんて何もないです。目障りなので消えてください」
リーネのその態度を見て、リヒトも漸く納得した。コイツがあの、件の糞野郎か。
「あんたか!『リーネを置いて逃げたくせに、後になって『ずっと心配していた』とか嘯く糞野郎』ってのは!!!」
「滅茶苦茶酷い言われようだけど言い返せない!!!!!」
「…喧しいので、入ってください。そこの屑も」
「「はい」」
リーネの電撃が、二人の髪を散らした。ここは、従った方が吉だ。そう考えた二人は、赤べこのように首を振った。
↓3までに何を聞くか。
ベッドにリーネを横たわらせたリヒトは、青年の首根っこを掴んで問う。
「で、あんたはリーネの何なんですか?あんたの口から直接聞きたい」
「僕は『シャルル・ローラン』大尉。EUAS連合月軌道艦隊所属の、第1戦闘航宙隊『パラディン』の隊長を務めております」
「随分と出世しましたねぇ。チャーリー」
「リーネ、顔怖い」
怒気をふんだんに含んだ声で、わざとらしく褒めるリーネ。顔は無表情どころか、絶対零度に到達するほどに冷たいそれをしていた。
「え、えっと、その。出身は木星コロニーの『グレナン』なんですけどね。そこに住んでた時、リーネの面倒を見てました」
なるほど。彼はリーネの所謂『近所のお兄さん』といった立ち位置の人なのか。
彼が屑だとは、リーネから既に聞いている。なら、どこが屑たらしめているのか、はっきりさせようじゃないか。
そう思ったリヒトは、双方に質問をした。
「それで、シャルルさん。どうしてリーネがこんなにブチ切れてるか、心当たりはありますか?」
「ありますよね?それすらも分からないほどに、耄碌してるはずがないですよね?大尉???」
「…リーネを『グレナン』に置いて、僕は脱走しました」
「それだけですか?」
「脱走前に、リーネに希望を抱かせるようなことを言いました…」
それは、今から十年前のこと。まだ四歳だったリーネは、青少年だったチャーリーと二人で暮らしていた。
お互い、親のいない孤児同士。仲良くなるのに、時間はそう掛からなかった。
ある日、半壊した家屋にて。
『今日の晩御飯はこれだけ…。ごめんね、僕がもっと稼げれば…』
『チャーリーはわるくありません。わたしがだめだめだからいけないのです』
『…ねえ、リーネ。今はまだ、こんな暮らししか出来ないけどさ…』
『…でも、いつかお金が貯まったら。二人で地球に住もう。僕たち人類の故郷に行こう』
『それまで、この暮らしを我慢しよう。僕も頑張るから』
『わたしは、チャーリーがいればがんばれます。だから、だいじょうぶです』
モノクロの世界に、花のように可憐な笑顔が咲いた。それがあるから、頑張れた。はずだった。
しかし、それから暫く経過して。チャーリーは『グレナン』から逃亡、EUAS連合に亡命した。
「私、チャーリーのことを信じてたんですよ。『きっとどこかで生きてる』、『すぐに迎えに来てくれる』」
「そう思って、辛い仕事をやってきたんです。少ないご飯でも我慢したんです。でも」
キュッ。
リーネはシーツを握り締め、涙を流しながら言葉を絞り出す。
「でも…チャーリーは来てくれなかった…!攫われるその瞬間にも、あなたはいなかった…!」
「私は追われて、逃げて、助けられている間に、あなたは…。地球でのうのうと過ごしていたのですか…!?」
「だとしたら、私。馬鹿じゃあないですか…!何年もあなたみたいな大嘘吐きを信じて、頑張っていた私は…」
「うぅ…うわぁぁぁぁぁぁぁん………!」
ボロボロ、と大粒の涙を流し泣きじゃくるリーネ。もう、フォローする気すら失せた。
こんな男を、視界に入れることにすら嫌悪感を抱いてしまう。
リヒトは、リーネを慰めながら目の前の愚者へと警告をする。
「…あんた、リーネともう関わらない方が良い」
「次来た時は、容赦しないので。どうしても逢うっていうのなら、死ぬ覚悟をお願いしますね」
「………ッ。…ああ、分かって…いるよ…!」
事の重さを理解したのか、右目を押さえ、沈痛な面持ちで部屋を出ていくチャーリー。
静かになった病室で、リーネはぼそり、と呟いた。
「…私。昔は、チャーリーのことが好きだったんです」
「結婚しても良い。…いや、結婚するのはこの人じゃないと嫌っていう程に、大好きでした」
だけど、今は。現実を知ってしまった私は。あの人のことが。
大っ嫌い。
土星の第二衛星『エンケラドス』。その地表に、一隻の軍艦が着陸する。
「美しい光景だな。目的を忘れていれば、楽しめるのだろうが」
「少将。準備が完了しました」
パイロットスーツを着用した乙女座とクリスティアン、乙女座の配下が整列し、敬礼をする。
少将と呼ばれた男はゆっくりと頷き、ノーマルスーツを着込む。
「では、行こう。我々の受け入れを赦した方々を、待たせるわけにはいかぬ」
「はっ」
少将を除いた全員が再度敬礼。その後、小型の軍用機とARMに別れ、搭乗を開始する。
「宙賊討伐の任を任せ、こちらに赴いた。これで成果が無ければ、処刑ものだな」
『そうはなりません。アグニカ少将の貢献、軍にいる者であれば、誰もが知っております』
「ふっ…。嘗ては英雄と持て囃されても所詮は人間、年老いた老い耄れに過ぎんよ」
「未来を担うのは上級大尉。君たちのような若き者たちだ。私に出来るのは、次代のために事を為すこと以外に無い」
「さあ、行こうか。『原初の罪人』の名を持つ民と、わかり合うために」
武装解除したARMが、氷から突き出したパイプに近付く。すると、シャッターが開き、歪んだ空間が映し出される。
『少将、これは…』
「ああ…。旧時代の遺物、矛盾の象徴。『オーパーツ』だ」
「…この先に、彼らが待っている。刺激しないよう、細心の注意を払うようにな」
『了解。『グレアム・ルード』…先行します』
一機のヴェンデッタが突入し、他のヴェンデッタたちも後に続いた。
ノア改装終了まで残り 二週間
↓2 自由安価。
本日はこれで終了です。全然進んでねぇじゃねぇかよお前よ。
来週で絶対に第二部に進めます。…駄目だった時はお許しを。お疲れ様でした。
「ボァブさん、入っていいですか?」
コンコン。
軽いノックをし、返事を待つ。程なくして返事が来たので、リヒトは中に入る。
「大丈夫…そうですね。すげぇマッチョ」
「見てくれだけだよ。俺は、そんな腕っぷしは強くないんだ」
「…正直言って、喧嘩とか殴ったりってのは苦手だし嫌いなんだよ。俺が痛い目を見て済むなら、そうする程度にはな」
「だから、俺にとっては良かったことかもしれねえ。こうやって怪我したから、リーネも守れた。子供たちを傷付けないで済んだ…」
「…彼らは全員死にましたよ。俺が殺した」
「言わなくていいさ…。重荷を背負わせちまったな…すまん」
「謝ることはないですよ」
ボァブから視線を逸らすリヒト。逸らした先には、フルーツバスケットや花束があった。
レオらも見舞いに来てるらしいが、こういった洒落た物を差し入れる印象は薄い。失礼だが、正直な感想だ。
いったい、誰が。そんな疑問が浮かんだ。
↓3までにボァブと何をするか。または、何を話すか。
「どうして、ボァブさんはザ…じゃなかった。アームパイロットになろうとしたんですか?」
「今、ザムパイロット言おうとしただろ!?いや間違ってるわけじゃあないんだけどな!」
ゲフンゲフン。
わざとらしく咳をするリヒトを見て、ボァブははぁ、と溜め息を吐く。
「…昔、でっかい戦争があっただろ。あの…何だっけ、あれだよ」
「『天王星最終戦役』ですね」
十二年ほど前に、天王星宙域で勃発、終息した大規模な戦争。プラント艦の特攻すら行われた、凄惨な戦い。
複数のコロニーが巻き添えになり、数千万人もの民間人が犠牲となった。
当時は毎日のようにニュースが流れていたから、よく憶えている。
「それそれ。ニュースで戦闘している映像が流れてさ」
「…憧れちまったんだよ。『俺もこんなビッグな漢になれたら、大切なものを護れる』って。そう思って」
「そん時、俺は二十歳だったかな。いい年した大人が、情けないだろ」
自嘲気味に笑うボァブ。彼を嘲笑う資格も、意志も。リヒトには無かった。
立派だと、素直にそう思った。最前線で戦う都合上、死ぬ可能性が高いこと。それは、どんな人でも知っている。
彼だって、例外ではない。リスクがあることを解っていたはずなのに。
それなのに、選んだ。決断した。自身の命と護れる力。それらを秤に乗せ、力を選択したのだ。
そんな漢を批判出来る者など、誰一人いないだろう。寧ろ、讃辞を呈されるべき存在だ。
利己的ではなく、利他的に戦う漢。彼こそが、真のエースと言えるだろう。
「…何言ってんですか。あなたほど立派な人を、馬鹿にする気は無いですよ」
「やっぱり、あなたはエースです」
俺みたいな、穢れた奴とは違って。
そう、己を嘲笑いながら、リヒトは微笑みを浮かべ、言の葉を紡いだ。
「そういえば、あれ。誰が送って来た物なんですか?」
「あれ、か。俺の身内だよ」
「…てっきり、天涯孤独だと勝手に思ってました」
「言ってなかったからな。こんな仕事をしてりゃ、そう思ってもしょうがない」
「…ま、貧困層の出だ。どうなってるかは想像に任せるよ」
「と言われましても…」
自身も似たような身だが、何とも言えない。両親の残した遺産がある内に、今の仕事にありついた。
それからずっと、リーゼの治療を続けてきた。自分に充てられる資金はあまり無かったが、金で困るようなことは記憶の中には無い。
所持金が少ないという点でいえば、貧困層と言えるかもしれない。だが、総資産だけでいえば、富裕層のそれと変わらなかったのだ。
だから、イメージが出来ない。
「………」
「…そんな顔するなよ。何でそんな絶妙に気まずい表情なんだよ」
「いやぁ…」
想像に任せる、と言われ想像しても、何も思い浮かばない。気まずい表情になるに決まっている。
「…あの」
こんな空気を長引かせるわけにはいかない、と口を開くリヒト。流れを変えるついでになってしまうが、伝えておきたいことがある。
「いつも、ありがとうございます。一緒に戦ってくれて、気遣ってくれて」
「ボァブさんがいなかったら、俺が死んでいた時もありました。冥王星のあれとか特に」
何かある時、先陣を切ってくれるのは、いつもボァブだった。その献身に、どれだけ救われたことか。
「…リヒト。そういうの、もうちょい言うべきタイミングがあると思うんだよ…。俺が言うことじゃあないけど」
「ですよね…」
照れ隠しに、リヒトはそっぽを向いて頬を掻いた。
そんなリヒトを見たボァブは、温和な笑みを浮かべ、泣いた。
こんな俺でも、誰かの役には立てるんだな。
某日、イシュマエルは困惑していた。本当に、珍しく、困惑していた。
どうして、こんなことになっているのだろう。
「ふんっ…!」
「むぅ~~~~!!!」
恋人『イェレナ』の実家に連れられたイシュマエルは、チビチビ、とミルクを味わっていた。
その隣で、イェレナはお冠に、その父『ゴラン』は腕を組み、不機嫌な表情をしていた。
「いいでしょパパ!エノクと結婚しても!」
「駄目だ!こんな小さい子供に、お前をやるものか!!!」
「エノクは大人だって前から言ってるでしょうがぁぁぁぁぁあっ!!!!!!」
ギャーギャー騒ぐ親子をよそに、イシュマエルは義母と話をしている。
「このミルク、どこで買っているのですか」
「近所のスーパーよ。エノク君背が小さいから、いっぱい飲んでいいわよ~」
「母さん!何か言ってくれ!」
「ママ!結婚しても良いよね!」
「あらあら。あなた、今になってもぷりぷりしてるのね」
「結婚式場のパンフレット、端から端まで目を通してたのに」
「ブボッ!!!」
「きったな!」
「大丈夫か?」
「…ありがと、エノク」
珈琲を顔面にぶちまけられたイェレナの顔を即座に拭くイシュマエル。イェレナは感謝を伝え、手を握った。
「…パパ。私ももう大人なの。自分のことは自分で決めるわ」
「いくつになっても、お前は俺たちの娘だ!俺が認めない限り、勝手な結婚は許さん!」
「大体、PMCなど危険にも程がある!もし、イェレナに命の危機があったらどうするつもりだ!」
「俺が戦う」
「俺が戦い、護る。それが、俺の戦う理由だ」
「………!?」
「奪うためではなく、護るために。そのために、俺は武器を取る」
「あの時から、俺の戦う理由は変わらない。大切なものを護るために、戦うんだ」
真っすぐな視線を向けられたゴランは黙り、頭を掻きむしる。そして、諦めたように頷いた。
「…娘を泣かせたら、許さんぞ」
「分かっています」
「え、あ…えっ…!?」
「言ったそばから泣かせたな貴様ァ!」
「…これは、俺が悪いのか?」
「今夜はお赤飯ね」
今宵、一組の夫婦が誕生した。
ノア改装終了まで残り 一週間
↓2 自由安価。
「ふんふんっふん~♪」
鼻歌交じりで調整をするリヒト。調整は数分で終わり、コックピットを出る。
「腹減った…。ついでに飯食えば良かったよ」
「レオ、髪切ったんだ」
「おう」
ショートカットになったレオは、髪を軽く掻き上げる。身軽になって嬉しいようで、ご満悦な表情だ。
「…ヤバい。前のレオどんなだったっけ…。ビフォーアフターが劇的過ぎて、記憶が書き換わってる」
「俺もこの格好不満なんだよ。ちょっと髪伸びたからって、女物ばっかり用意しやがって店員の人」
普段は着込んでいるか、パイロットスーツを着用しているか、の二択だった。肌を露出した時など、殆ど無かった。
だが、今のレオの服装は大変よろしくない。黒のチューブトップにホットパンツ。これだけだ。
年齢に不相応な双丘が確認出来る。え、待って。大きくない?
「ぐぬぬ」
「リーネ、鷲掴みは痛いからやめろよ。痛いって!」
無言でリヒトは後ろを向き、頭を抱える。『リゾートコロニー』に行った時は普通の大きさだったのに、何故だ。何があった。
「何で見舞いに来ないのよオラァァァ!!!」
「う わ ら ば」
思考に呑まれる刹那、音速でかまされたクロエのドロップキックに、リヒトはコックピット内まで吹き飛ばされた。
1:依頼主は『チェント』。土星環内廃コロニー『ヤルレフ』の探索支援。所要期間一ヵ月。
2:依頼主は『ボリス=ジャルコフ』。バルキリア本体またはデータの取引。
3:依頼主は『ラバンレイ』。とあるコンテナの火星への輸送。備考:ラバンレイの保有する艦で移動。友軍機一機アリ。
4:やっぱり辞める。
↓2 4以外を選択時にコンマが95以上で特例α、00だと特例γに強制書き換えです。
あ、3番は無しです。無かったことにしてください。踏んでいたら安価下です。
持っていくARMを選択してください。
1:ライトニングバルキリア
2:エクストリーム
3:TA-85(ストイック)
↓2
また、今回に限り複数同行させられます(ARMも)。クルーから一レスにつき二名まで選べます。↓1から3までが範囲です。
お久しぶりです。今から再開していきます。
忘れない内に、現在保有している追加武装を記載しておきます。皆さんにも知ってもらっていた方が良さそうですし。
追加武装
儀礼槍
儀礼剣
ビーム・ライフル×2
ビーム・ザンバー
ビーム・ショットガン(キュウビ(レオ機)に装備中)
対艦ライフル(キュウビ(レオ機)に装備中)
それと、試作ARM稼働試験での補正を忘れていたので、最新のリヒト戦闘力を記載します。
リヒト 戦闘力 78→86
「にーさんありがとー!声を掛けたら来てくれて、ホンマ助かるわぁ」
「リヒト、あんたまた女誑かしてるの?」
「俺をそんなパリピみたいに言うなよ。仕事繋がりだから」
駐留しているハーバーグラム級の中で、人々が交流する。
バルキリア、エクストリーム、ストライクヴァンキッシュを積み込み、白い艦は月を発つ。
他に搭載されているのは、干将が二機と指揮官用のヴェンデッタMARK-2、俗称ヴェンデッタコマンドが一機。
ヴェンデッタ自体が傑作機として有名だからか、そのバリエーションも豊富で、性能も保証されている。
だからなのか、正規軍、PMC、反政府勢力や宙賊と、あらゆる勢力で利用されている。些か多い気がするが。
干将はそれぞれ違った装備をしており、一方は『シールドショット』と『スプレーミサイルポッド』を装備。
もう一方は『二連装ビーム・ガトリング』と『ビーム・ザンバー』、それに既存の装備を組み合わせている。
コマンドは装備面に変化は見られない。チューニングだけを施しているのだろうか。
「で、ちゃんと給金貰えるんですよね?」
「当たり前や。金のやり取りには、ウチは厳しいんでな」
「今回使う艦は、店と売り物を担保にしたんやけど」
「あらら。じゃあ、今回の仕事で失敗したら一文無しですね」
「そうならんでほしいんやけどなぁ…」
遠い目をしたチェントは、バルキリアを眺めていた。
土星到着まで残り 600
↓2 自由安価。
「ふっはっは…。俺はこの仕事を受けて良かった。何故なら!」
「この艦、美人がいっぱいだからだぁ!!!」
「馬鹿は放っといて、私たちは休もうか」
「…ボク、仕事間違えちゃったかな」
高笑いしている青年に冷ややかな視線を向ける、二人の女性。片方は軍服を着ていて、もう片方は迷彩柄のシャツとズボンを着用している。
軍服の方は、明らかに似合っていない。完全に軍服に着られていて、コスプレしているようにしか見えない。
「俺は射止めてみせるぜ、カワイ子ちゃんたちのハートをなぁ!」
「お前に撃ち抜ける人はいないよ…」
「わぁぁぁん…。この人ただの女好きだよぉ」
何というか、これから一緒に仕事をする相手として、不安しか感じられない面子だ。一人だけマトモそうな人がいるのは、救いなのかもしれない。
「…男、か。男!?取り分が減ってしまうじゃあないか!!!」
「娶れる前提で話するのやめません?」
「良いことを言うね、彼の意見と同じことを私も思っている」
「マトモな人いた!やったやったー!」
マトモなのは俺だけか。
↓3までにエリック(前々スレ>>660)、ネスリン(前スレ>>98)、グレイン・ファンセス(前スレ>>637)に訊きたいこととかあれば。
「驚いたよ。君がいれば、今回の任務は大丈夫そうだね」
「ネスリンさん…でしたっけ」
「ああ」
自販機で珈琲を購入するリヒトの隣に近付くネスリン。リヒトが場を空けると、ネスリンはミルクティーを購入した。
壁に寄りかかって珈琲を飲む。ネスリンはその前、自販機の横に立ち、ペットボトルのキャップを外す。
「…羨ましいよ。君ほどの力があれば、私も大切な人を喪わずに済んだだろうに」
「アームパイロットとしての話、ですか?」
「はは、違うね。私はこれでも、元YPJ(クルド女性防衛部隊)所属でね。と言っても、分からないか」
「いえ、俺は連合の国民なので。加盟国のことなら、ある程度は分かります」
「それで、羨ましいっていったい…ッ!?」
突如ナイフを抜いたネスリン。リヒトは左手で右手首を押さえ、蹴りを繰り出そうとしていた左足を踏みつける。
そのまま、力任せに振り回し、壁にネスリンの身体を打ち付ける。
ナイフが手放されたのを確認すると、左足をネスリンの右足に絡みつかせ、リヒトの後ろにある壁に押し付けた。
「が…あぁっ!!」
「流石…だね…!!こうもあっさり…組み伏せるとは…」
「…そういうことですか。急に手を出すのはやめてくださいよ」
喉元に右前腕を押し当て、拘束する。身動きを取らせないまま、リヒトは問い続ける。
「…何でこうしたかは、まぁいいでしょう。理由は何となく分かる」
「あなた、何でこんな仕事してるんですか?前に『ノア』にも応募してましたよね?」
数か月前のクルー募集。その時に、彼女の履歴書に目を通した記憶がある。
前々から、疑問に思っていた。経歴と仕事が噛み合っていないのだ。
もっと大手の企業に行けるはずなのに。相応しい場所があるはずなのに。こんな仕事を選んでいる理由。
何故。どうして。そんな疑問が浮かんでいた。
「…すまないけど、拘束を解いてほしい。こちらに抵抗の意志は無い」
「あ、そうですね」
足を解き、手を放す。首を擦りながら、ネスリンは呟いた。
「何でも良かったのさ。地球から離れることが出来るなら、何でも」
「あそこにいたら、また私は思い出す。喪失の痛みを、苦しみを」
「…あんなものをまた味わうくらいなら、忘れている方が良いよ。彼も、それを望んでいた」
「『俺の存在が苦しめるのなら、記憶から消して構わない。君の悲しい顔は見たくない』」
「…戦争で辛い思いをするのは、いつだって末端の者や無関係の人々さ。上の人たちは、甘い蜜を啜るだけ」
「分かっていたけど…それをはっきりと理解するには、犠牲を払うしかない。…何とも悲しい話だね…」
浮かんでいたナイフを愛おしそうに抱き締め、ネスリンは涙を零した。
「…責任者の姿が見えないな」
『アリアンロッド国際宇宙港』の第七工廠に降り立つ影が二つ。
一つは『アリックス』で、一つは『リン・タオファ』。どちらも『ノア』のARMパイロットとして採用されたエースだ。
「リヒトならいないぜ?お仕事中だ」
「子供はここに来たら駄目ですよ」
「子供…ああ。タオファのことか」
「はぁぁぁぁ!?!私が子供!?」
「あんたの方が子供でしょ!?」
「私は14です」
「私は26なんだけど!!??!」
「…えっ」
「チビでつるぺたとか…飯食べてたのか?」
レオの一言がきっかけで、大乱闘が開催される工廠だった。
↓2 自由安価。
>>170時点での土星との距離は以下のようになっています。
土星到着まで残り 500
『もう間もなくワープを実行するでー』
艦内放送で伝えられるワープのお知らせ。この艦そんなの積んでるのか。羨ましい。
そう愚痴りながら、リヒトは端末でウェブページを覗く。
しばらく前にあった宙賊討伐。それがどう進行したのか。興味があったのだ。
だが、アステロイドベルト宙域までの安全を確保した、という報から、一切の変化が無い。
「…討伐終わってるなこれ。そりゃそうか」
「なんせ、木星から先は管轄外だもんな。その辺りは民間で管理している領域だし…」
地球圏の指揮下に置かれているのは、駐屯艦隊が存在する火星宙域までだ。
そこから先は、開拓した人々が各々の采配で管理しているに過ぎない。
期待するのが間違っていた。そもそもの事態を招いたのは、彼らの腐敗が原因だったのだから。
土星到着まで残り 100
↓2 自由安価。
「そこ、ドライバーで締めて」
「ここね、了解」
クロエと共にバルキリアの整備を行うリヒト。リーゼやボァブ、カイルは、他の二機を整備している。
「…こんなもんでしょ。戦闘が無いから、定期点検とかだけで済んで助かるわ」
「そういや、もしバルキリアが大破したらどうなんの?」
「『トラペジア』の在庫は無い。だから、元のバルキリアに戻るだけね」
「気を付けなさいよ。ブレードもビットも、予備が無いから、壊れた時はもう補充不可能よ」
「キヲツケマス」
整備マニュアルをぼんやり、と眺めながら、リヒトは返事をする。
そうダメージを負うとは思えないが、慢心や油断はいけない、と昔から言われている。
「レオたちも無被弾で頑張ってるし、俺も頑張らないと」
(修理が面倒だから、マジで壊すのやめなさいよ)
意気込むリヒトだが、それがフラグにならないか、クロエは心配していた。
↓2までにクロエと話したいことがあれば。
ニートの整備スキルを判定します。
↓1
参考:他キャラの整備スキル
クロエ:120(トラペジアを軍事転用した初めての人物)
イェレナ:85(レヴィアタンというピーキーなARMの整備を担当)
「カイル?…あれは才能はあるんだけど、ね」
「あぁ…なるほど」
カイルは大体のものに適性を持つ。ARMパイロットとしての才能は、珍しく無かったが。
だが、才能があれどやる気の無い駄目人間なのが、カイルなのだ。
それを活かせば、悠々自適な生活が出来たろうに、労働から逃げてきたのがクソニートたる所以。
今回だって、トンズラこいていないのが不思議なくらいだ。
友人という繋がりがあるから、逃げようとしていないだけかもしれないが。
「…まぁ、ニートしてもらう気は無いから。徹底的に叩き込んでやるわよ」
「お願いします。あの駄目人間を更生させてやりたいんです」
採用されたのが運の尽き。カイルには、死ぬまで働いてもらおう。
「…クロエはさ。将来何をしたいとか決めてたりする?」
「急に何よ」
「いや、何となく訊きたいって思ったんだ」
「何それ…。…考えていないわけじゃないわ」
「私は、整備の仕事をして生きていければそれでいい。これ以外の生き方を知らないし」
クロエに出来るのは、ARMの整備をすることだけだ。それは勿論、彼女自身が分かっている。
なら、俺は。俺にはいったい何が出来るのか。
リヒトは、自分に出来ることを考える。操舵手、ARMパイロット。
それ以外で思い浮かぶものは無かった。得意なのは昔から、壊すこと、そして、奪うことばかりだ。
一度思考を切り替える。『何が出来るか』ではなく『何がしたいか』を考える。
向き不向きとかは関係なく、自分自身が望んでいるものを、探してみよう。
↓5までに、将来何がしたいのかを。全部を採用するのではなく、候補としての安価です。
本日はこれで終了です。第二部はどこ…ここ…?
安価を踏んでいると思いますので、全て範囲を1つ下げます。お疲れ様でした。
結局、日にちが変わってしまいました。申し訳ございません。というわけで再開です。
「…うん」
理想だけを脳から絞り出し、願望を見繕う。元々、妹の病気のことしか考えていなかったからか、大雑把なものしか出なかった。
宇宙の果て。誰も到達したことの無いその場所を目指し、旅に出てみたい。
科学的に考えれば、未だに膨張を続ける宇宙の果てに辿り着けるわけがないが、それは置いておいて。
運送業に携わっている都合上、外(太陽系外)からの情報も度々入ってくる。
例えば、地球へと護送した『ロリ・コーン』や紆余曲折あって出会った『ボグドンナザゼフフノヒタフ』のように。
想像もつかないからこそ、憧れる。この宇宙には何があるのか、知りたくなる。
自分でも、未知を見つけることが出来るのか、確かめたくなる。
悲しみばかりを生み出す戦争。それを減らすために、戦争に関わる悪しき者を叩きたい。
戦争。人が産まれてから、幾度となく繰り返された滅ぼし合い。
民間人の自分が、戦争の根幹を取り除こうとするなど、無謀だろう。だが、それが可能になる力が、ある。
『バルキリア』。歴史に埋もれた『戦乙女』が、自分の前に舞い降りたこと。
それに、意味がある筈だから。
そんな大きな願望も、マジレスにぶん殴られる。
たかが民間人一人に、そんな大それたことが出来るわけない、と冷静に真面目リヒトに返される。
自分に出来るのは、願うこと。無関係な人が戦争に巻き込まれるようなことが無くなるように、祈りを捧げること。
目を閉じれば、妹の顔が浮かんでくる。目を開ければ、暇そうに『ケラウノス・ブレード』の手入れをする仲間の姿が映る。
何でお前も持ってるんだ。何時買った。アレか、こっそり買ってたのか。
まあ、二人よりは長生きしたい、とは思う。この三人の中で最年長なのは自分なので、無理かもしれないが。
今の自分でも出来る、現実的なこと。それは、大切な人を護ること。
嘗て、自身の命を擲ち、輸送船を護ってみせた『アグル』。
彼のように、自分と大切な人を秤に乗せ、大切な人を取れるような、漢気のある人になりたい。
尤も、死ぬ気は無い。あくまで、選ぶことが出来るだけであって、死ぬ前提で行動するつもりは無い。
死んでしまえば、もう二度と会うことは出来ないのだから。
「…うん?」
いくら何でも、取っ散らかり過ぎやしないか。考えるだけなら無料(タダ)でも、これは高望みが過ぎる気がする。
改めて、何をしたいのか考えを纏めねばなるまい。
予告していた多数決を開始します。三票入った選択肢を、リヒト君は心の中に留めます。
これで決まったものがエンディングに関係します。
1:宇宙の果てを目指し、旅に出たい。願わくば、その最中で世紀の発見を成し遂げることを(俺たちの旅はこれからだ!ルート)
2:戦争を減らすために悪い奴らをぶっ潰す(ソレスタルビーイングルート?)
3:普通の人が戦争に巻き込まれるようなことが無くなってほしい(今は願うだけで良い)
4:リーゼやクロエより先に死なないように頑張る(平穏ルート?)
5:命を賭してでも、大切な人を護れるように…(守護者ルート?)
6:複合。二つを一緒に選べます。
「クロエ。俺が『戦争を無くすために決起します』…なんて言ったらどうする?」
「一発殴る」
「実力行使までが早いな」
「いや、無謀で馬鹿で意味不明でしょ。あんた、ただの会社員じゃない」
「…だよね」
割と酷い言われようだが、立場を考えればご尤もな意見である。
クロエの意見を聞き、リヒトは願望を一つに取り纏めた。
「…御大層な目標より、手の届く範囲のものを見据える方が良いよね」
「そりゃそうでしょ。あんたに出来ることを考えなさいな」
「なら、俺は大切な人を護れたら良いよ。…命を懸けてでも護り抜けるなら、それで」
「…はぁ。それで死んだら世話ないでしょうに」
「死ぬ気は無いよ。ただ、それくらいの心意気でやれたらな…って思ったんだ」
高望みなんて、しないでいい。俺は、皆と共にいられるなら、それだけでいいんだ。
それがどれだけ貴いものなのか。命懸けの仕事にばかり携わっていたから。
だから、分かるんだ。
01~30:クソデカ戦艦が出没。
31~50:宙賊のお出まし。
51~99:恙無く『ヤルレフ』に到着。
00:リヒトレーダーが何かを探知。リヒトレーダー強化&能力が一つ増えます。
↓1
『皆さーん!ゴールまであとちょっとやけど、お客さんが出たんでやっつけてや~!』
「…だって。行ってきなさい、リヒト」
「…え。このしょぼい奴らにバルキリア使うの?」
「しょぼい…?…あ、しょぼい。旧式ばかりの寄せ集めじゃない」
「っていうか、これなら艦砲射撃だけで終わるんじゃない?…ああ、コロニーにぶち当てたくないのね」
提示された戦力情報によると、敵機の数は10で、艦船の数は1。ARMはストイックで、艦船はセイリュウ級だ。
あまりにも弱っちいが、攻勢に出ているなら何か策があるのだろう。
対艦装備や、EMPを搭載している可能性もある。
「…載せておいて何だけど、あまりバルキリアを使いたくないんだよね」
「その気持ちはまぁ分かる。これ以上知れ渡ったら、私たちの立場が不味いもの」
ただでさえ、自衛用の戦力、ということで目を瞑ってもらっているのに、兵器としての有用性を示してしまったら、ヤバい。
接収だけで済めばラッキー。最悪、リヒトも軍人として強制徴用されるかもしれない。
ノアの魔改造が済んでいる時点で、今更なのかもしれない。
1:とりあえずボコってくる(勝ち確なのでキンクリします。後々響いてくるかもしれないし、何も問題ないかもしれない)
2:他の人に任せる(ほぼ勝てる。誰かが死ぬリスクがほんのちょっぴりあるくらい)
↓2
「…流石に、今回は辞退するよ。俺が出なくても過剰戦力なくらいだし」
「ってわけで、だ。行ってこいカイル」
「え!?俺!?」
「お前ちょくちょくシミュレータ使ってただろ?エクストリーム乗っていいから行けよオラ」
「使ってた(無理矢理やらされた)なんだよなぁ。俺には無理ですよ~」
「ほう?俺の記録塗り替えてた奴が何か言ってるなぁ?」
カイルの身体が跳ね、滝のように汗が流れ出す。お前化け物に片足突っ込んでるぞ。
「…大丈夫。他の人はもう出撃準備に入ってるから、お前は後ろから援護してりゃ良い」
「いざとなれば、シールドを展開したら問題無い。敵の火力じゃ、防御を抜けないからな」
「…もし駄目だったら、化けて出てやる」
「冗談言えるなら問題ないだろ。そう気負わないで行ってこいよ」
「…伝説残してやっかぁ」
腕をブンブン、と振り回し、意気揚々とエクストリームへと乗り込む。
あの野郎なら、大丈夫の筈だ。何せ『やる時はやる男』なのだから。
『ヤッベェー!めっちゃ速いんですけど!!!』
「………」
やっぱ駄目かもしれん。
01~05:防衛ライン突破。
06~99:普通に殲滅。
00:消息不明だった『YTA-150』三号機出土。
↓1
「…可哀想だったな。敵なのに同情せざるを得ないくらいに」
帰還したボァブの独り言に、リヒトは同調する。
餌を取りに行ったら、ライオンや豹、ハイエナの群れに囲まれた仔犬のような、そんな悲惨な光景だった。
尤も、宙賊であるのだから自業自得、という感情の方が多いのだが。
「本物の戦闘って物騒なんだな…。ポンポンアームが墜ちてビビったよ」
「俺が…俺が墜ちなかったなんて…やっぱ俺、出来るエースなんだな!」
「あの状況で墜ちたら、それこそエース失格だろう。私ですら充分に戦えたというのに」
「ぼ、ボクはすーぱーえーすだから、きっちり墜としてきたよ!一機だけだけど…!」
『今から土星の環に入るから、ちょっとだけ揺れるでー』
チェントのアナウンスと同時に、艦が微震する。壊れたりしないだろうな。
『蛇行してるだけやから、そうビビらなくてもええよ』
数時間後、ハーバーグラム級は『ヤルレフ』に到着した。
「じゃあ、行こか。今回は頼んますよにーさん」
「わざとらしく胸当てないでよ。色仕掛けとかこのヘタレには効かないから」
「私だって、まだ希望はある」
「四人乗りは無理があるだろ…!?」
ぎゅうぎゅう詰めになるバルキリアのコックピット。改修によってある程度広くなったとはいえ、流石に狭い。
「…データは取らせないですよ」
「アハハ、分かっちゃいますかぁ」
同乗者の身体の隙間を縫うように伸ばされた手。それには、チップが一つ握られていた。
"変なものがある"感覚がするのを、リヒトは感じていた。試しに探ってみたら、当たりだった。
「次は無いですよ。もしやったら、指を詰めます」
「…冗談とかじゃなくマジで言うとるね。にーさんには敵わんなぁ」
声色からか、表情からか。本気で言っていると理解したチェントは、パッ、とチップを手放した。
「ま、最初(はな)から無理とは分かっとったよ。だって、豪い高性能なAI積んどるもんね?」
『へぇ、分かる人じゃない』
「ヘレン、ちょっと黙って」
『…もぅ!』
「…おしゃべりはそこまでにして、早く中に入るで」
「港は閉まっとる筈やから…。外壁の穴から侵入するのがええかなぁ」
「了解。出力は絞らないとな…!」
桃色の閃光が、ビーム・ショットガンの銃口から放たれた。
01~10:成果無し。
11~50:喪失当時の物がそっくりそのまま残っていた。
51~90:宙賊が隠していたであろう物が…。
91~99:謎の機械、遺体が多数出土。
00:誰かが、いる。
↓1
本日はこれで終了です。次回で第二部に入れると思います。やらかさなければ。
なお、未だにまとめは終わっておりません。責任から逃げるな。お疲れ様でした。
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