天井「どうしてここまで来たのだろうな」 (252)



子供の頃は、家庭や教育機関の庇護があった。
もちろんこれらも一つの小社会だ、内部には矛盾も諍いもある。
それでも、家や学校という枠組みは、未成熟な子供を荒風から遠ざける隔壁だった。

都市の外で入った研究所には安定感があった。
自身に割り振られた領域での、責任は付いて回ったけれど。
組織の名を背負わされる代わり、構成員としてその恩恵を享受していた。

この場所で立ち上げた研究には充足があった。
野心と才能と需要を読む機転と、それらがあれば人は付いてくる。
自らの手で世界を切り拓くような、男を満たす成功の二文字が確かに見えていた。

転落し、必死に掴んだ手の中には金があった。
借金の労苦は裏返り、財産への信奉となっていく。
一度失敗したからこその保身は、数字として保障された安心を求めていた。


そして。
一瞬のうちに崩れ去る。


きっと、無邪気に安寧を信じていた幼児期でさえ、そこには裏付けなど無かった。

両親は離婚していたかもしれない。
研究所は倒産していたかもしれない。
主導していたプロジェクトは頓挫した。
次に身を寄せた計画も凍結された。

それでなくても、理不尽な思惑や圧倒的な暴力の前で、何が天井を守れるだろう。
どうすれば全ての危険を避けられただろう。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376207411



今は怯む気も無い。
定めた目標を押し通すには、少ない手持ちで差し引きしていくしかないのだから。

ゆっくりと目裏の暗幕に記憶を委ねれば、間近に映るのは幾つもの姿。

年少でありながら毅然と立つ同僚が居て、
情熱と抑圧の間で挑み続ける警備員が居て、
何があろうと道を見失わない医者が居て、
庇護される立場に甘んじない学生達が居て、

最後に、白衣を靡かせた背中が見える。


「どうしてここまで来たのだろうな」


未だ対面もしない生徒の治療と、自分自身に降りかかるリスクを天秤に掛けたことさえ不可解だ。
尚更、前者を取るなんて。
裏で追い詰められたとなればテロリズムを画策し、表で促されれば治療に尽力もする。
思うより、天井は流されやすい人間なのかもしれない。

白衣の幻が振り返る。
しかし彼女はこちらではなく、ずっと遠くを見詰めている。


「――ここまで、来れたんだろうな」


改めて問うまでもなく。
天井をここに引き摺り込んだのは、あのうっそりとした眼の研究者だった。



・タイムリープした天井亜雄が安価で幸せになりたい3スレ目
 現在2周目、本編三年前の夏

 1スレ目)天井亜雄「今は……いつなんだ?」

 2スレ目)天井亜雄「私は、何を為すのだろうか」
   天井亜雄「私は、何を為すのだろうか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343888765/)


・幸せの定義=目的は展開や心境によって変動します
 現在は「献身」木山と生徒達を助ける ……です

・死亡、廃人化、タイーホ等で目的達成不可になった場合、記憶を引き継いで過去に戻ります

・Q.こいつ芳川に撃たれてあぼんしたんじゃ?
 A.あぼんしたと思ったら過去に戻ってたのさ!(→1スレ目)


・連投、連続で安価取るの不可(詳細は下の方で)

・状況にそぐわない安価は
 「曲解・こじつけ」→「安価下」→「再安価」の順で適宜対応

・禁書目録小説、超電磁砲漫画の単行本刊行分は既読
 偽典超電磁砲もこの前入手
 DVD等の特典SS、ドラマCD、超電磁砲アニメ、ゲームの知識は基本wiki頼り

・遅筆により蝸牛の如き進行速度ですがよろしくお願いします


【安価の連続について】

・基本的に連続取得NG
 ただしコンマは安価に含めない

 >1 (自由安価)
 >5 (コンマ判定)
 >9 (コンマ判定)
 >13 (選択安価)
 ※各安価間の本文省略

 上記のような場合、>1 と>5 と>9 を同じ方が取るのはOK、
 >1 と>13 を同じ方が取るのはNG、という感じでいきます




【時系列】
2周目スタート時を1年目と表記
目安として、春:3-5月 夏:6-8月 秋:9-11月 冬:12-2月


    |1周目         |2周目
1年目春|クローン部門に異動  |クローン部門に異動、医療部門に重点

   夏|           |
   秋|           |
   冬|           |
2年目春|           |

   夏|           |
   秋|           |冥土帰しの治療協力
   冬|           |長点上機学園の付属施設に移籍
3年目春|           |

   夏|           |
   秋|           |開発の指導開始
   冬|           |木山と提携
4年目春|           |

   夏|(一方通行vs軍隊)  |能力者暴走事件のため避難
   秋|(美琴DNA提供)    |
   冬|           |接続部分の製作着手
5年目春|           |接続部分の完成、絶対能力進化実験への招聘

   夏|           |木山の要望により一方通行と接触
   秋|           |地震の頻発
   冬|           |春上と遭遇
6年目春|           |上条と接触

   夏|           |木山への本格的な協力
   秋|量産型能力者計画着手 |
   冬|量産型能力者計画頓挫 |
7年目春|絶対能力進化実験着手 |

   夏|           |
   秋|           |
   冬|           |
8年目春|           |

   夏|           |
   秋|           |
   冬|           |
9年目春|           |

   夏|絶対能力進化実験頓挫 |


【現在の天井】
仕事:医療クローニングの分野で筋ジストロフィー治療を研究中
   布束、木山、Sプロセッサ社と共同、提携
   協力者に青髪ピアス
   絶対能力進化実験の参加依頼を断る

木山の件(生徒達の治療):
   事情を知るメンバーは木山、冥土帰し、上条、結標、柳迫、名無し風紀委員子(長点、電撃使い)
   暴走を一時的に抑えておく方法を確立
   治療可能な施設に生徒達を移送する計画中
   天井は当日に掛けての囮役

身体:概ね健康
   体力は同年代男性の平均より若干勝る
   現在鎖骨骨折中(日常生活には支障無し)

精神:トラウマ(芳川→ある程度改善、一方通行→ほぼ完治、最終信号→現状維持)
   たまに無茶する
   木山に恋愛感情を抱く




【夏休みの出来事】

 夏休み前
  黄泉川とテレスティーナについて会話
  結標にコンタクト

 7/20
  結標と対面、実験依頼

 7/23
  結標交え実験後、布束、木山、結標、上条、青髪と昼食

 7/26
  黄泉川と食事、対能力装備について会話
  木山からメール、結標に依頼する意向

 7/27
  長点の風紀委員(電撃使い)と会話
  スキルアウトの乱闘現場にて負傷、冥土帰しの病院へ搬送される

 7/28
  検査後、風紀委員による事情聴取
  結標は考えて返事をするとのこと

 7/29
  柳迫に協力依頼、問答の末、青髪と引き合わせる約束

 7/30
  柳迫と青髪の面会、柳迫からの返答

 8/1
  風紀委員と面会

 8/2
  結標が承諾との連絡

 8/5
  木山に柳迫の件を伝える
  風紀委員にも協力要請すると決める

 8/7
  移送経路の簡単な下見

 8/9
  協力メンバーで会議、天井は囮役に決定

 8/10~
  地震発生地点の計測

 8/13
  MARにアポイントメントを取る
  黄泉川と呑み

 8/15
  MARにてテレスティーナと面会

 8/22
  子供達の移送(予定)


 現在15日午後




気掛かりというのは、奥歯にはさまったように主張して止むことがない。
それだけに拘泥しては大事なものを見落としてしまうが、この空いた時間の思考で除去できるならするべきだ。

テレスティーナが天井を過大評価する理由――。
思い当たる点を探るため、辿ってきた道や関わった人物に思いを馳せていたが。

天井「ん、そういえば」

起動したままのメールソフトを差出人で検索。
表示名は、今年やっと10歳になる少女のものだ。
少女ながら、強能力の評価を与えられた電撃使いの。

あの実験関連では参加要請を辞退したこと、必要に迫られて第一位と接触したことばかり気にしていたが、
少女――御坂美琴との繋がりも無視できない要素ではないか。
まるで超能力者になることを予期しているかのような実験計画。
彼女もまた不可解な立ち位置なのだ。

天井「しかし、最近忙しいこともあって時々のやりとりしかしていないからな……」

そも、御坂に対しては校外の開発協力者の一人でしかないのだ。
電撃使いの開発には実績のある天井だが、一、二ヶ月に一度プログラムを渡すだけの指導では限界も見えている。
能力向上に全く寄与していないとは思わないが別段大きな働きもしていないだろう。

天井「それでも丁寧に近況などを書いてきてはくれるのだがな。……大人よりしっかりしているのではないか?」

手紙を捲るように、一通一通に目を通す。
最後の日付は丁度骨折事件の数日前だった。

天井「記憶によればいずれ超能力者になるはずだが……大能力者認定も、まだされていないのか」

仮にも開発に関わっているのだから、そういった報告は届くはず。
そうでなければ時間割の厳選のために指導の継続を断られるか。
文面には、そのどちらのアクションの影も見えない。
定型的な能力測定値の概要に始まり、あとは学校行事だとか日常的な内容ばかりだ。
添付にはプログラムを実施してのレポートが別途。

天井「今のところ、彼女の開発に携わっているだけで目を付けられる要素は無いように見えるが……。
   それとも絶対能力進化実験の方で何か動きが?」

御坂の容姿に天井は一種の恐怖を抱いている。
ゆえに顔の造作などを普段は意識しないようにしており、彼女のイメージは丁寧な文章が大半を占めていた。
表面上、その印象にぶれは無いが。


>>+2
御坂についてどうするか
 a. 御坂にメールで色々聞いてみる
 b. 御坂に会ってみる
 c. 絶対能力進化実験について(無難な範囲で)今の状況を調べてみる
 d. ここまでにしておく


・ということで、遅くなりましたがよろしくお願いいたします
 しょっぱなから地味な感じですが




しばし黙考する。
一人の室内に話す相手もないのだが。
目を細め、それ自体に繊細な操作が要求されるように、天井はゆっくりと新規メールを開く。

天井「ふむ……。最後の連絡から半月以上経っているから、その間に状況が変わった可能性も考慮すべきか」

絶対能力進化実験関係や能力強度以外でも、最近の御坂に衆目を集めるような変化があったのかもしれない。
その過程で彼女の開発の一端に関わる天井の名がどこかに流れたというのも、無いとは言い切れない。

御坂については、ここで必ず決着をつけるような問題でもない。
だからこそ気軽に尋ねてみるのも悪くないだろう。
能力向上に熱心な学生とはいえ、向こうは夏休みなのだ。

天井「しかし夏期講習の誘いなどを装うことはできないな。
   会って時間を取る余裕も、あの姿を見て平静でいられる自信も無い」

必然と建前としての本題は限られてくる。
何度か画面の端を目線で行き来し、やがてキーを叩き始めた。
「来学期プログラムのための進度確認」
事務的な文字の並ぶ件名欄だが、まぁ、これまでの付き合いからして妥当なところだろう。

本文には、夏休みの間にプログラムの微調整をしたい旨、
そのために途中でも良いから前回分の実施結果のレポートが欲しいと。
それから若干フランクに、雑談などを挟んだ。

天井「さて、何を訊いたものか……」


>>+2
>>+4
美琴に何を訊くか
(各1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります)



・すみません、>>6 を訂正

 ×表示名は、今年やっと10歳になる少女のものだ。
 ○表示名は、去年やっと10歳になった少女のものだ。


天井「と言ってもな。実験や能力以外では、漠然としすぎていて質問に困る」

件の少女は現在小学五年だ。
友人関係に開発以外の成績、遊び、恋愛、ファッション、流行のスポット。
興味なんて何にでも尽きないだろうし、そのどこかで脚光を浴びたかなど想像も付かなかった。

子供向けのラジオ番組でカリスマ葉書職人になった……なんてオチなら笑うしかない。
(もっとも、それをテレスティーナが聞いていて、かつそこから天井に辿り着く可能性は限りなくゼロに近い。)

天井「……。疑問が漠然としているなら、まずは漠然とした質問をしてみるか」

天井と御坂は取り立てて親しいとは言えない。
しかし、仮に能力関係で心配事があったとして、こちらから水を向ければ口を開いてくれるかもしれない。
プライベートに関しても、礼儀正しく社交性もある彼女のことだ、当たり障りの無い雑談程度には応じるだろう。

他方、実験方面で切り込むなら、DNAマップの件くらいだろうか?
記憶に照らせば「超電磁砲」御坂美琴からの横槍は八月十五日、妹達の一人及び被験者との直接接触が最初だ。
それまでの彼女は事情を知らなかったはずである。

もっとも、既に記憶とのずれを見せている「今」の実験が、
どういったスケジュールで動いているかは把握できないのだが。
ただ計画が立案されていることから、全ての始まりであるDNAマップの取得は済んでいると見た方が良い。

天井「だがまぁ、いきなり切り出す内容ではないな。ざっくりと世間話から入って……、
   長々とメールでやりとりする仲でもない、数回の中でDNAの件まで会話を誘導できれば良いのだが」

思案しながらぱたぱたと文字を打ち、いくらか消去し、カーソルを行っては戻し。
少なくとも雑談の内は変な地雷を踏むこともないだろう。
テレスティーナの手の内を探るという大目的に準じていながら、気負わず取れる行動。

相手の外見に面倒なトラウマを抱えているくせ、その場の発想で始めたメール作成は、
一種のリフレッシュのようなプラスの作用をもたらしていた。


>>+1
うまいこと話を進められるか
※コンマ判定  ★修正+20
  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル


・ろくに進んでいないのですが(主にテンプレ修正と小ネタ書いてたせい)、
 眠い&明日があるので、今日はこれまでに
 また一週間以内に来ます
 ご参加と前スレ埋めありがとうございます


・スレタイに天井の下の名前を入れ忘れて非常に残念な気持ちですが、ぼちぼちやってきます
 新スレでもよろしくお願いいたしますー




・こんばんは、>>1 です
 明日から週末に掛けて予定が入ったため今週は来られなくなりました
 申し訳ないです

 新スレスタートダッシュができれば良かったのですが
 不甲斐ないです…

 何も無ければ来週は来れると思います
 気が向いたらご参加ください

 ではでは

超電磁砲、布束救済来そうだね。


・ちょ……寝……
 おはようございます

 前回安価分書いてきますマジですみません
 多分ちょっとしか進められませんすみません


・註)アレなことしか書いてない

 できればもう一回分続けます


御坂美琴とはどのような子供だったろう。
天井を知らず怯えさせる容姿以外に。
まばらに、用件を主にやりとりしてきたメールの、近況報告にあたるいくらかにぼんやりと思考を泳がせる。

天井「能力強度と……成熟した文面の割に、『子供』らしいイメージだな」

高位能力者の例に漏れず彼女の知性は頭二つ三つ飛び抜けている。
そのくせ捻くれた印象は無く、友達と遊んだことなどを綴った数行には年相応の感性が見て取れた。
そう思うのは未だ超能力者の段には足を掛けていないからかもしれないし、
レベルはさておき、似たような傾向を持つ布束を参考にしているのかもしれない。

話題を彷徨わせながらふらりと立ち上がり、足の先は自動販売機へ。
外気との混合が多い廊下の気温は少しだけ気だるい。
心身に鞭打ち目当ての野菜ジュースだけ購入すると、天井は再び自室の椅子に沈んだ。

天井「こんなものか……でっち上げた用件は火急ではないし、普段より緩んだ文章でも平気だろう」

取っ掛かりとして、過去の雑談に関係しそうな最近のイベントなどを引き合いにする。
かしゅ、と叩いたキーに弾かれ、電子メールはどこぞに飛び去っていった。

もしかしたら、その、引き合いにしたうちの一つがまずかったのかもしれなかった。


 From: 御坂美琴
 Sub: Re: 来学期プログラムのための進度確認

 お世話になっています、御坂です。

 二学期は新しい内容を組んでいただけるんですね、楽しみです。
 詳しくは経過記録を添付しましたが、課題は良く進められたと思います。

    :
    :
    :

 そうなんです、今度友達とセブンスミストに行くんです。
 というか先生がキャラクターグッズのフェアなんて知っていてびっくりしました。

 あ、大人の男の人がケロヨンとか持っているのが変ってことじゃないですよ!
 最近はワンポイントにこっそりあしらったシックなアイテムも多いですし、
 男性用にライターとかネクタイピンもあるんです。
 ぱっと見バレないようにシルエットだけ透かし彫りになっていたりとか……。

    :
    :
    :

 だから絶対ゲットしてきます!
 もしお好きなら天井先生の分も……と思ったのですが、ごめんなさい。
 お一人様一つ限りなので……。
 二時間も並ぶんだから、少しくらい融通してくれても良いと思うんですけど。

    :
    :
    :


天井「お、おぉう……?」

御坂とのやりとりどころか、人生に送受したメールの中で一番の長文メールだった。

しかも、反応が早い。
人の指で打ったにしては明らかにおかしいタイピング速度なのだが、もしや能力を使い直接文章を叩き込んだのか。

そこまで、乳児用絵本から大人向けアクセサリーなど広く展開している某キャラクターに思い入れがあるのだろうか。




天井「好みを同じにしている、という勘違いはある意味都合が良いが……、突っ込まれてボロが出るのも問題だからな。
   方向転換できないだろうか」

趣味に対する入れ込み方は千差万別だ。
口先で話を合わせ、それを看過されたとき、ただ残念がられるだけなら良いのだが。
この様子では過剰な失望や不審に繋がる可能性が無いとも言い切れないのが怖かった。

同時に、にべもなくあしらうのも気が引ける。
幸い控えめなデザインのストラップなどなら女子生徒が着けているのを目にしたことがあるため、
天井自身がグッズや知識を持っている訳ではないが、有名だし記憶に残っていた、という方針にする。

それが二度目の過ちだった。
「マニア」とは、専門分野の話を向けられた研究者と同義らしい。
少なくともその状態の研究者の扱い辛さを知っている天井は、心苦しかろうがばっさり話題を変えておくべきだったのだ。


 From: 御坂美琴
 Sub: ラヴリーミトン

 あ、そうだったんですね。
 興奮しちゃってごめんなさい……。

 ケロヨン、それにピョン子、ゲコ太……って子達はラヴリーミトンっていうシリーズのキャラクターなんです。
 子供向けなんですけど、12年前から展開しているので大人のファンも意外といたりして、

    :
    :
    :

 私が一番好きなのはゲコ太っていう子なんですけど。
 シリーズ全体の世界観もそうなんですけど、シンプルで可愛らしいデザインと対照的に凝った設定がウリで、
 ゲコ太は乗り物酔いが酷くていっつもゲコゲコしちゃうっていう(変な話でごめんなさい)子なんです。
 そのギャップにハマってしまって……。

    :
    :
    :

 それに可愛さをそのまま愛でるのはもちろん、背景設定を知っていると楽しめるポイントもいっぱいあるんです!
 例えば3年前から右頬に絆創膏を貼ったケロヨンのグッズがたまに出るんです。
 これはその時期に上映していた「劇場版ケロヨン&ピョン子 スターリソグラードの別離」っていう映画の中盤に、
 ピョン子を庇ってできた傷なんですけれど……ネタバレになりますが、この映画は悲恋で終わるんです。
 映画自体もそれで賛否が分かれているんですよ。

 そんな訳で、絆創膏ケロヨンは絶対にピョン子と同じパッケージでセット販売はされないんです。
 あの劇場版を知らなければただのバリエーションなんですが、そういうこだわりが見え隠れするのが、

    :
    :
    :


最長記録はあっさりと更新された。

天井は大きく首を逸らし宙を仰いだ。
その姿を誰かが見たら、PCの画面から顔を背けたようにも見えただろう。

天井「最初の目的は何だっただろう……あぁ、MARに目を付けられるような変化が無かったか、だな。
   思えば遠くに来たものだ……」

この僅かなメールの往来で、数日後にセブンスミストで開かれるフェアと、
カエルのキャラクターについて多量の知識を得ることができた。
そして他には何も手に入っていないのだった。

できればDNAマップを提供したかを聞き出したく、話題の流れを誘導するつもりだったのだが……。

天井「ここから急に開発の話に戻すのは至難の業だぞ。特にプライバシーに関わる問題だしな」

強引な話運びになるのは間違いなさそうだ。

ごくごく、と。
すっかり忘れてしまっていた紙パックを啜り、天井は示し合わせて襲い来る疲労に必死に耐えた。


>>+2
「DNAマップを提供したか」をこのままメールで聞くか




白いウィンドウにフォントが走り、思い直すように先から消える。
本題――ゲコ太以外の近況やDNAマップについて強引に聞き出すか決めかねているのだった。

メリットとしては、御坂こそが天井に目を付けられている原因であった場合、
それを把握しておけばMARに与える印象をコントロールしやすくなる。

デメリットとしては彼女からの警戒。
確か「前回」は強度の低い幼少時にDNAマップを提供していたはずで、
強能力者となった現在ではそのあたりのパーソナルデータ管理について指導済みの可能性が高い。

天井が筋ジストロフィーの治療研究をしているという事実から多少ハードルは下がるだろうが……、
自然な流れならともかく、取って付けたように水を向けても話してくれるかどうか。

天井「……ふぅ。ここで無理を通す必要は無いか。第一、御坂が原因の可能性は低いだろうしな」

絶対能力進化実験という括りなら無くはないのだが、そちらの面では第一位との接触などもっと目立つことをしている。
敢えて今御坂に踏み込み、藪蛇を出すこともないだろう。

方針を切り替えて一度返信画面をクリアにする。
語りに飢えているらしいマニア心を刺激しないように、無難かつ気楽な返答を打つことにした。

天井「グッズにアニメ、映画……ねぇ。『観てみる』とは言わない方が良いだろうな。
   あまり興味を見せすぎると今後ゲコ太の話しかできなくなりそうだ」

そちらの方が親しくはなれるだろうが。
実態として今はショップ巡りや映像作品に費やす時間は無く、メールの度に暗に感想を求められても困るのだった。

咥えたストローの先をがちりと噛む。

御坂美琴。

目論見とトラウマ、何よりあの記憶さえなければ、青髪達と同じく普通の学生相手のように接していただろう。
こんな実利しか見ないような意思疎通ではなく。
もっともその場合は関わりを持つ接点すら存在しなかったのだが。

天井「……世迷い事だな」

あの時のように、彼女のDNAを裏の研究に流用するのではない。
危険に誘導するでもない。
ならば、それ以上を自身に求めるのは酷というものだ。

空になったパックを放ると、不恰好に壁でバウンドしゴミ箱の中に納まった。




さて。

当初の予定ではAIMの測定などを進め、木山情報から得た病院に辿り着き、そこから目的――
移送当日に敵を引き付ける、本来の目的地とは全く別の場所に調査を絞り込んでいくつもりだった。
何もかもひっくるめて「振り」なのだが。

天井「しかし冷静に考えると……病院を経由するのは、
   短期間で真実に近付いているという実績をアピールするためだったな。
   テレスティーナとの面会の感触から言って、もう充分なのではないか。敵がMARなら、だが」

決行までの日数もあまり無い。
面倒な手順を踏まず、率直に誘導を目指した方が良いかもしれない。
病院に辿り着く手間を減らすことで、データ解析のため研究室に篭っていると見せ掛けて他の作業をしたり、
MARと連絡を取り当日に引っ張り出しやすくするなどの余地もできるだろう。

ぐるん。
軽く椅子を回した勢いで足を組み学園都市の地図をモニタに表示した。
都市では某外国企業の衛星撮影を許可していないため、内部の組織が用意している独自サイトである。
だらしない姿勢であるが、自室内では頓着しない。
こういった積み重ねが肉体疲労になっていくのかもしれないが。

天井「そろそろ、最終的にどこをダミーとするかを決めておかなければな。
   それによって明日からの動きも変わるのだから」

目的地は第七学区。
移動経路もほぼ同学区内である。
そこから目を引き離しつつ、もっともらしさも満たせる学区が良い。

天井「ふむ。単純に距離を稼ぐなら第十九学区や――」

ぽつ、ぽつ、とマーカーを置いていく。
ルートなどを試行錯誤し、画面内にはいくつかの候補地が残った。




第三学区、距離の遠さ重視。
また外交施設が集中しており、警備の厳しい学区でもある。
このような場所に地震の発信源があるとなれば、警備員の一部であるMARは動かざるを得ないだろう。

天井「あとは、警備の厳重さが不利に働かないように立ち回らねばな。実際には発信源など無い訳だし」

第十学区、それらしさ重視。
少年院、墓地、原子力関連施設など――言い方は悪いが、厄介者を押し込めた学区。
学園都市なら普遍的に裏の研究が行われているものだが、この学区は中でも別格であろう。

天井「それだけに、災害の原因となった何かがあるのにはふさわしい、か。
   第七学区と接しているのが気掛かりだが、端の方に誘導すれば何とかなるかな」

第十九学区、こちらも距離の遠さ重視。
一昔前の技術を最新科学に応用できないかを探る施設が多いが、再開発の不振のため寂れた学区である。
そのため表沙汰にできない研究を行うには丁度良い……という設定になるだろうか。

天井「いや、そこまでは言えないか。どんな学区だろうと構わずグレーな研究をする人間はいるものだ」

つらつらと要点を整理し、机に肘を付く。
ダミーの候補は絞り込んだものの、どれを選ぶべきか。

また決まれば勿論、木山達に事前に教えることにはなるが、現段階で判断を仰ぐべきだろうか。
囮としての行動をかなりの部分任されているとはいえ、別の役の視点は役に立つかもしれない。
反面、既にMARの注意を引き受けている状態で連絡回数を増やすこと、
メールの返信待ちなり直接訪れるなりの時間を要することといった問題もあった。

天井「どうしたものか。今の木山達の動向もそこまで把握していないしな……」


>>+3
決行当日、どこに誘導するか
 a. 第三学区
 b. 第十学区
 c. 第十九学区
 d. 木山に相談してから決める


・はいー……今日はこんなところで
 ゲコ太のことばっかり書いてましたね

 次回はまた多分来週までに
 残念な>>1 ですが、いつもお付き合いありがとうございます



>>31

※最近の超電磁砲アニメ(と新約ちょっと)のネタバレ注意
 gdgd



青髪「祝☆超電磁砲S出演やでーッ!!」ネコミミ ピクピク

天井(おい……おい!!)ヒソ

青髪(どしたん、変に小声なんて出して)

天井(空気嫁)ユビサシ

青髪(……へ?)キョロ


布束「…………」ズーーーン


青髪「!?」ビクゥ!

天井「最近すっとあんな感じなんだよ」

布束「So sorry... 自分がその立場に立って分かったわ。小物、辛い」

天井「あ……あれか。確かに周囲の連中は小物臭半端ないが、まだ設定が見えていないから何とも言えんのではないか。
   無理矢理協力させられているのかもしれない」

布束「そうね。However, 実験に参加した経験が、あの人達の思想に賛同させた、って可能性も……」

青髪「なーに言っとるん!
   たとえそうだとしても、訳アリ陰アリ美少女キャラなんや、最後はハッピーエンド確定やで!!」アセアセ

天井「それに超電磁砲では放映できないような深部に囚われている線は消えたじゃないか!
   仮に暗部落ちした上で連中の挙動を潜入監視しているのだとしても、あんな小物の担当ならまだ浅い方だ」

布束「……そうかしら」(´φωφ`)ショボン

青髪「そうやで!! つか出番を言ったらボクかて話の本筋には絡めんし。
   贅沢かもしれんけど、ピンチになっても重要な役割があるってのは羨ましいんやで」

布束「青髪君は……日常パートでは描写があるのだけれど。Example, 大覇星祭とか。
   一端覧祭でも祭の雰囲気に一役買っていたわね」

天井「おいおい、非日常パートでも御使堕し編があるじゃないか」

青髪「あれはボクとちゃうわ!!」


天井(いやぁ助かる! おかげで少し元気になったようだ)グッ

青髪(代わりにボクのグラスハートに罅入ったで!?)


〈とあるメタの研究者達4 ~布束の進退から目が離せない~・了〉



・ごめんなさい、今週も無理です
 月二ペースマジスイーツww と笑って流していただけると助かります
 (現在頭が回っていないので何を書いているやらよく分からない)


・安価下について補足です
 当スレでは「安価下」=「取れなかったら安価下」≒「ksk」、という扱いです

 安価のレス番に当たっており、安価内容と解釈できるものが書いてあれば、安価下が付いていても採用です
 (aかcか、など複数書いてある場合は安価指定時の条件に準じます
  「複数書いてあった場合最初のを採ります」、など)
 コンマの場合は必ず結果が出るのでそれをそのまま使います

 これまで明言していなかったのと、新スレ移行したばかりなので念のため書いておきます


・今書いているのですが、どうも間に合いそうにないです
 来週の3連休はどこかで来れると思います(その次の3連休は多分ムリ)

 待ってくださっている方には本当に申し訳ないです
 流石に秋中に一回も来ないなんてことはありません、はい

 あと>>1 の中身はひみつです
 すみません、来週にまた


・おそようございます、久々すぎてすみませぬ
 休日に三日目がある幸せを満喫しつつ

 どうも書けない期に入ったので、開き直って淡白な感じの文章でいきます
 具体的には心理描写薄めに
 (また休止するほどの断筆っぷりではないです)
 散々お待たせしてこれか、という量と開始時間ですが、今日もよろしくお願いいたします


しばし考え、天井は一度メール画面をしまい、ネットのブラウザを開いた。
あるサイトのカレンダーからページの指示に従って入力を進める。
確定のエンターキーを叩いて数瞬、「予約完了」のメールが届いた。

改めてぱたぱたとキーボードを弾き、いつも通り研究の伝達事項を装った簡潔な文を打っていく。
一人で思い悩むよりもさっさと連携を取るのだ。

内容は二つ。
適当な名目で「場所」――学区を問うのが一つめ、
それに、骨折した箇所に急に違和感が出てきたため、二日後に病院に行くと付け加える。
同じ接触するにしても、生徒達と直接の繋がりがある木山よりは通院を隠れ蓑にできる冥土帰しの方が自然だ。
必要に応じ、医者に言づてておくなり何とか同席するなり、代替案を返信するなりしてくるだろう。

できれば明日にでも予約したかったが……急患でもなしに、彼の診察を受けるにはこれでも早い方だ。

天井「今日はこんなものだろうか。流石にテレスティーナとの面会の疲れが出てきたしな……」

こういうとき内実の伴わない張りぼての調査は楽だ。
家に帰ってゆっくり休養を取りつつも、外面では仕事を持ち帰ったことにもできる。
本来の研究ではこんなショートカットはできないが。

念のためメールの設定を確認し、自宅への転送が有効になっていることを確かめると、天井はやっと重い腰を上げた。


ギプスのせいで風呂に浸かっても身体が休まりきらないのが難である。
防水は確かに効いているのだが、内部から発散する汗が蒸れるようで微妙に気持ちが悪い。
手足は洗えても胴の上部をしっかりと覆った外殻はどうにもならないのだ。

煮え切らないような気分で髪を拭っていると、点けっぱなしにしてたPCに目がいった。
画面右下に小さな点滅が見える。

天井「……返信か」

了解した、考えておく、怪我の件はお大事に。
要約すればそれだけの、むしろ要約する必要もないような短文である。
つまり明後日までに何らかの形で冥土帰しに返答を預けておいてくれるということだ。

タオルを放ってベッドに突っ伏す。
髪はまだ湿っているが風邪をひくような季節でもない。
素材に吸水性があるのだろうか、いつの間にか不快感の失せているギプスに何となく感心しながら、
天井は沈むように眠りに落ちていった。




冥土「では実際には怪我の経過に問題は無いんだね?」

天井「あぁ。本来患者のための時間を取らせてしまって済まない」

冥土「構わないよ。木山君の教え子達だって僕の患者さ。彼らを助けることに何も惜しむ気はないね?」

診察室の背もたれのない丸椅子に座り、件の作戦会議以来にとぼけたような医者と顔を合わせる。
いや。
愛嬌のある造作と飄々とした言動がそう感じさせるだけで、交わす内容はこの上なく真剣である。

そういえば、冥土帰しは臆すことなく機密事項を口にしている。
彼の私設研究所のように茶が出る訳ではないが、この場所も彼にとって一種の安全地帯なのだろう。
常時見られていることを想定する役割に力んでいた背から、少しだけ緊張が緩んだ。

冥土「とはいえ周りに怪しまれても困る。手短にいくよ? 君が挙げてくれたそれぞれの学区だが。
   やはり近いところは避けたいという意味で、第三か第十九にしたいとのことだ。
   その二択なら君のやり易い方にしてくれて構わないとのことだね?」

天井「あなたとしての意見はあるか?
   私もMARについて簡単に調べてはいるが、そう意味のあることは新たに判明していないんだ」

本日、あれから一日飛んで十七日。
勿論昨日も遊んでいた訳ではなく、偽装フィールドワークに精を出しつつ思い付く事項を調べてはいたのだが。
決めるべきことが保留になっている状況からか、どうにも考えが纏まらず目ぼしい成果は出ていない。

冥土「うむ……強いて言うなら、生徒達の中に第十九学区の施設に住んでいたことがある子が数人居る。
   あの実験の被験者になった理由は居住地によるものではないだろうから、関わりとしては薄いがね?」

天井「では第十九学区も避けるべきか」

冥土「念には念を入れる、ならね?」

ふむ。
特に推す理由が他に無いなら、第十九学区も除外して良いか。
すると必然的に第三学区が偽りの目的地になる訳だ。


>>+2
ついでに話しておくこと、聞いておくことがあれば
※1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります



・安価、複数なのですが時間的にすぐ済む内容だったので纏めました


天井「ありがとう。……そちらの進展はどうだ? 話せる範囲で構わないが」

時間を掛けすぎては診察の枠から外れてしまうため長居はできないのだが、
コンタクトの機会が限られているからこそ会えた時にできるだけ情報交換しておきたい。
行動の主体はあくまで木山達であるため、今は相手方の状況を取り入れることに専念する。

冥土「治療法については纏まっているよ?
   木山君と何度も試験を繰り返し、別の名目で学生相手のサンプリングも行った。
   勿論危険はないようにだ。現在は方法を一度寝かせて、抜けや漏れが無いか再度確認する予定だね?」

天井「気は抜けないが、手遊びの作業もないような状態か。もどかしいな」

一つの事、今回の場合は治療法を、突き詰め考え抜いて形にする。
そうして出来上がったものは必ずクールダウンしてから精査する必要があるのだ。
寝かせている間に直接的にできる作業がないうえ、チェックに割ける時間はむしろ少ない。
その上人命に関わる問題なのだから神経の磨り減り具合は計り知れないだろう。

冥土「そうでもないさ。
   君と同じく何か分かることはないか調べているし、木山君もルートの検証を重ねている。
   警備員の会議に合わせて日程を決めたが悪い日取りではないと思うよ?」

天井「ルート、か。確認になるが、こちらはどの程度敵を引き付けておけばいい?」

冥土「現時点でこちらのことがばれていないとするなら、時間自体は要らないね?
   単純に本隊より注目すべき動きが別のところであればいいから、移送時間全てをカバーする必要はない」

そうだ、厳密には囮といっても二つの役割がある。
まず本隊の動きを気取られないために派手なパフォーマンスをすること。
手品師がリップサービスと大仰な動作でタネを誤魔化すようなものだ。

そして、

天井「既にこちらに当たりを付けられているとするならば?」

冥土「単純な車の往復時間が三十分、それに座標移動による子供達の移動。それを三回だ。
   ……タイトに考えても三時間は確保できるとありがたい」

同じくらいの重要度のものを二つ用意し、敵の手を二つに分けさせること。
手とはすなわち調査の手であり捕獲の手であり、火の手でもあり得る。

天井「分かった、そのスケジュール感で考えておく。ひとまず、以上だな」

うん、と互いに頷く。

冥土「ふむ。では、今回は異常無かったがお大事にね? 君は怪我人なんだから」

天井「分かっているよ。ありがとう」

十分程度の短い対面。
視線を交わし、天井はささやかなセーフルームを後にした。


>>+2
誘導する場所は第三学区で良いか
 a. いい
 b. だめ(第十学区か第十九学区か併記してください)



・何故かsageが入ってる……
 安価は>>+2 でお願いします



その午後。
予定通りならまたも炎天下を歩き回るところだが、天井は快適な室内の椅子に腰掛けていた。

柳迫「わざわざゴメンね、センセ」

天井「いや……乱闘事件の追加調査だったか?
   先輩の彼女からでも声を掛けてくれれば、わざわざ場所を用意せずとも学内で何でも話したのだが」

ただのビルの一階にある、何の変哲もないチェーン店のコーヒーショップ。
だが、エントランスの横に目立つように設えられた掲示により、そのスペースは大きな意味を持つようになる。

天井が黄泉川相手に呑む、それも外部に漏らせない話題を持ち出すときに使うような、奥まった一席。
白を基調としたシンプルなテーブルセットを挟むのは、協力関係にある柳迫と、初対面の別の風紀委員だった。
彼女達にとってここは外部の人間に話しを聞くための舞台として機能しているのだろう。
それも、支部に「連行」する確証はないが、逃げ場を塞いでおきたい類の相手から。

柳迫「一応、調書は取らないといけないからさ。ま、内容は世間話と変わらないから気軽にしてよ」

そういう主張で、別の風紀委員も同席しているらしい。
しかし、あの事件に今更調べることなんてあるだろうか?

柳迫「センセってAIMとかも調査してるんだよね。あ、電撃使いだけだっけ。他の能力者のことも詳しい?」

天井「電撃使い以外はほとんど分からないな。
   勿論AIMとしての電磁波は他のAIM拡散力場の影響を受け、微弱に変化する。
   だが、その個々について論じられるほど造詣は深くない」

柳迫「うーん、そっかぁ……。実はあの時、ちょっとだけ能力にブレが生じたんだよね、私とセンパイ両方に。
   調子が悪かったのかなーって思ってたんだけど、乱闘してた側にも――」

そんなはずはない。

つまりこれは彼女達の立場からの、本番への布石なのだ。

天井「能力不調の原因がAIMにあると?
   確かに違う種類の能力に影響するとなるとAIMか……大型施設の中には能力抑制設備もあるというが。
   いずれにせよ私は大したことを話せないが」

柳迫「まぁまぁ、身近な専門家ってことで一つ。
   それにセンパイのプチ開発で、AIM測って歩いたりしたって聞いたし」

無口にメモを取るもう一人を置いて、親しげに話す柳迫。
腹芸のできるタイプではないと思うのだが中々に二重の仮面を上手く被っている。
対象と顔見知りであり、しかも裏で通じているという安心感もあるのだろう。

柳迫「何かあの場で疑問に思ったこととか……気が付いたこととかありません?」

奇しくも、やり口は天井のものと似通っている。




始めに調査対象をでっち上げる――事実としてのAIM異常と地震の関連性を追う天井と違い、
彼女達は乱闘時に能力不調が起こったという偽の証言を出す。
スキルアウト達も無能力という格付けながら開発を受けているから厳密には能力者であり、
あのような乱戦時であれば不調を催す者も当然いるだろう。
これで疑惑が一つ出来上がりだ。

天井「そう言われても……。私もあの時はパニックだったからな」

柳迫「では最近センパイのAIMを計測した中で、今までのデータと大きく異なっているとかは」

天井「あの事件以前と以後でか? 特に変化は無いと思うが」

そうして、事件当日と事件後、電撃使いの風紀委員を嗅ぎ回っているような研究者に「聴取」を行う訳だ。
敢えて協力を仰ぐような口調である程度の情報を開示してみせる様が、
まるきり数日前の自身に重なって少し愉快になる。

大人も子供も考えることは一緒か。

天井(ん……いや、もしかして私の手段が子供っぽいのか……?)

まぁ、彼女達は中高生とはいえきちんとした訓練を受け前線に立つ風紀委員だ。
似たような行動をしたところでイコール未熟とは限らない、
むしろしがない研究者にしてはよくやっているのではないか。
そう思うことにしておく。

柳迫「聞いてます、センセ?」

天井「あぁ、すまない。計測地点によるAIMの様子だったか。
   事件現場は流石に再訪していないが、似たような立地の路地裏では特に目立った波形は見られなかった」

さて、そんな状況で天井が取るべき行動は、

天井(普通に受け答えするべきなんだろうな……)

このやり取りは、「風紀委員がある研究者を怪しみマークする」という結論に至ることに意味がある。
そこには彼女らの勘繰りと訝しみがあればよく、下手な演技は周囲への望まぬ疑念を広げかねない。
例えば同席している別の風紀委員とか。

ともあれ、天井の仕事は柳迫の想定している聴取時間に付き合い、勝手に怪しまれることだ。
彼女が最初に世間話と言ったように、綱渡りのような駆け引きを強いられない会話で気分を解すことにした。


>>+2
テレスティーナの連絡先を貰っていますが、今後の方針として
 a. 移送当日に応援要請
 b. 移送2~3日前に連絡しておく
 c. 定時報告レベルで密に連絡
 d. こちらからは連絡しない


・今回分には出ていないですが、第三学区承りました

・きょ、今日はこれまでに……
 心情(というか状況とか動作とか)の描写をしなければ割合書けることが分かったので、
 調子戻るまでこれでいこうと思います
 お付き合いありがとうございました

 来週は多分これないので、次回はその次の週になるかと思います
 低気圧がうようよしていますが皆様お気をつけてお過ごしください
 ではでは



・こんばんは
 今日はSS書きにありがちなお知らせをしにまいりました


・パソがラーメン食った


・愛着ある子なので土曜まで修理に奔走します
 こちらには日曜に、携帯から来れるよう頑張ります
 修理不可で傷心していなければ

 本題ですが、そのような理由により修理完了まではまた携帯打ちになるため(輪を掛けて)遅筆になります
 努力とかでは如何ともしがたいのでご了承ください

 SS書きって何かのフラグなんでしょうか、ホント



>>1 です
 何と言い訳したらいいでしょう、取り敢えずラーメン事件からこっち上条さんばりのバッドラックに見舞われていたとだけ

 人間、階段滑り落ちると本当に「ごっ、がァァああああああああッ!?」とか言うんですね
 (頭打ったりはしてないです、むしろ奇跡レベルの軽傷)

 今現在は喉風邪で伏せっております

 PCは再見積もり中
 他、色々あって書けるコンディションにございませんでした

 明日や来週すぐ復活とはいかないですが、スレ落とさないようにぼちぼち保守しに来ます

 消える>>1 が定例化しつつあるこの頃、レスくださる方には申し訳ない限りです
 取り急ぎ、生存報告のみ失礼いたします



・ねんがんの ノートパソコンを てにいれたぞ!

 夕方からしてる設定作業etc.が終わらない>>1 です……
 (なので携帯からです)
 復帰はもう少し掛かりそうです、すみません

 というか休日の予定に隙間が無い今日このごろ
 とっとと戻ってこれるよう精進しますです



・こ、こんばんは、>>1 です

 予定では「この土日を過ぎたら余裕できます」とか書こうと思っていたのですが
 昨日別件が発生しました

 色々ありすぎて忙しいというより頭がついていかない状態です
 状況が落ち着くのとのーみそリカバリにどのくらい掛かるかまだちょっと不明です

 落ちないようにたまに書き込みはしに来ます
 というか前回生存報告から1ヶ月弱経ってるという……

 そんな焼き土下座系生存報告です
 ついでに買えたPCから書き込みテスト

 な なにをする きさまらー! とか言えるタイミングは完全に逃してしまったわけです



・あけましておめでとうございま保守
 >>1 です
 生きてます

 帰省&布団です
 ※病に伏せているとかではないので
 まだ気に掛けてくれる方がいることに涙しつつ
 また来ます


・こんにちは、>>1 です

 心理的に余裕ができてきたので、何も無ければ2月後半に再開します
 物理的には変わらずなので頻度は少なくなってしまうと思いますが……

 多分しばらくは今より暇にならないので、やり方若干変えるかもしれませんが
 とにかく早く山場に突入したいです

 開始時から今まで、少しでも読んで&参加してくれている全ての方に感謝しつつ
 展開整理しなおして準備してきます


・まさか今になって天井さんが原作で言及されるなんて、流石かまちー予測できない
 しかしアレ、逆に色々決定的になってしまった気もしますのう……

 ともあれ超電磁砲Sといい、登場キャラが原作で出てくるとテンション上がりますね!


天井(女)「どうしてここまで来たのだろうな」

テッラ(女)「この異教のクソ猿がッッ!」

博士(女)「私が芸術に絶望したのは12歳の冬だった」

冥土(女)「――僕を誰だと思っている?」


ってなるぞ?いいんだな?


>>119
博士(幼女)「私が芸術に絶望したのは7歳の冬だった」

垣根「今は?」

博士「9歳」


・ウワァァァァ!!ナオッタアァァァァァァ!!!!

 ……>>1 ですが、今からじゃなんなので来週こそ来ます
 え? 2月後半とか言ってたのはどうしたのか?
 やだー来週の土日は2月36-37日じゃないですかー


>>1 です
 昨日は丸一日寝てましたテヘペロ
 超久々ですがひっそり進めてまいります

 今北産業
  逆行天井が色々あって乱雑解放ルート
  一時的に暴走を抑える方法確立済み(冥土帰し達が)
  天井は治療のための生徒移送時の囮役


 主なメンバー

  木山せんせー:中心人物、移送班→治療班
  冥土帰し:治療班
  上条:治療班(暴走時の保険)
  結標:移送班
  天井:囮班
  柳迫:囮班
  モブ風紀:囮班

 他の知り合い

  布束:本業の同僚
  青髪:本業の研究協力者
  黄泉川:筋トレ&呑み仲間、MARについて調査中?


 >>4 に(デザイン崩れた)時系列があります

 あと最新版の夏休みの出来事張っときます



・参考:なつやすみのできごと

 夏休み前
  黄泉川とテレスティーナについて会話
  結標にコンタクト

 7/20
  結標と対面、実験依頼

 7/23
  結標交え実験後、布束、木山、結標、上条、青髪と昼食

 7/26
  黄泉川と食事、対能力装備について会話
  木山からメール、結標に依頼する意向

 7/27
  長点の風紀委員(電撃使い)と会話
  スキルアウトの乱闘現場にて負傷、冥土帰しの病院へ搬送される

 7/28
  検査後、風紀委員による事情聴取
  結標は考えて返事をするとのこと

 7/29
  柳迫に協力依頼、問答の末、青髪と引き合わせる約束

 7/30
  柳迫と青髪の面会、柳迫からの返答

 8/1
  風紀委員と面会

 8/2
  結標が承諾との連絡

 8/5
  木山に柳迫の件を伝える
  風紀委員にも協力要請すると決める

 8/7
  移送経路の簡単な下見

 8/9
  協力メンバーで会議、天井は囮役に決定

 8/10~
  地震発生地点の計測

 8/13
  MARにアポイントメントを取る
  黄泉川と呑み

 8/15
  MARにてテレスティーナと面会
  御坂とメール(ゲコ太)談義

 8/17
  冥土帰しと相談
  囮として引き付ける学区の決定
  風紀委員の聴取(偽)

 8/22
  子供達の移送(予定)




さて、何をするにも時間がないのだ。

風紀委員と籠る喫茶店から解放された天井だが、一度研究室に戻る間も惜しく機材を担いで街中を歩く。
決行日までには今日を含めても一週間ない。
少しでも、仮想敵=MARにこちらの思い通りに動いてもらえるようにするには。

「連絡をできるだけ密に……この間の面会の様子は不可解だが、
 相手方の想定以上に有能に見せかけるしかあるまい」

そうすると他のことにかまけている暇はなくなるが、この瞬間に一番必要とされているのは囮としての働きだろう。
大体、下手に木山達の想定外の動きをして本隊に支障を出してもことだ。
ここは割り振られた役割に徹するべきである。

(当日にMARを連れ回す際の、偽の目的地は第三学区。その日だけ急に同行を申し出るのはわざとらしいか。
 毎日の調査状況は逐一報告を……日報のようなレポートに纏めて提出するとして)

これまで生徒達の治療について天井は第三者的な立ち位置に居ることが多かった。
それは、始めは脅迫により否応無しに関わったためであり、最近も治療方法については門外漢だったためである。

計画の中に自ら取り込まれ、定められた範囲の仕事に集中するというのは新鮮だった。
全体を見失ったわけではない。
研究において、突然に訪れるような――極度に研ぎ澄まされていく感覚。

(そうだな。やはり過去に生徒が治療を受けていた病院を利用させてもらうとしよう。
 必要なのはそこに辿り着く、辿り着いたと見せかけるための根拠か。確か観測データに同学区の……)

目標地が決まり、自身の仕事で満たすべき条件が確定し。
例えば石膏像を叩き割る映像を逆再生したように、なすべきパーツが組みあがっていく。

(第三学区の最終誘導地点も、どこかそれらしい場所を用意せねば。これは計測データを参考に決めるべきか。
 ……と、あまり視野が狭くならないようにしないとな。咄嗟の事態に対処できなくては困る)

自戒しながらも、足取りは明確に。
陽炎を帯びた表通りはどこまでも真っ直ぐに続いている。


>>+1
立ち回りの上手さ
※コンマ判定  ★修正+10

>>+3
MARの食いつき
※コンマ判定  ★修正+??(上記の結果により増減)

  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル

「MARの食いつき」については成否は秘密
元値がファンブルかクリティカルの場合は一目瞭然ですが


・最近(生存報告のみ)の癖でsageてました
 ちょい風呂ってきます
 今日は寝るまで続けます



来てたのか
ksk



初めて訪れる病院というのは、やはり疎外感を感じるものだ。
まして、治療や診断という本来の目的に沿わない来訪であるならば、なお。

隊員「――というわけで、患者のAIM拡散力場の測定にご協力いただきたいのですが」

職員「少々お待ちください。院長に伝えてまいります」

慣れた様子の女性職員が席を立つ。

時は過ぎて十九日。
第十三学区の小規模な病院の応接室に天井は落ち着かず腰掛けている。
清潔さを前面に押し出した内装は、安心感よりよそよそしさを感じさせた。
それも全て、天井自身の心情によるものだろうが。

天井「……改めて、今回は同行させていただきありがとうございます」

隊員「いいえ、天井先生の調査によりここにこぎつけた訳ですから」

小さく言葉を交わせば防音が利いていると思われる壁に吸い込まれていく。
相手はMARの隊員で、先日テレスティーナの前に概要を説明した当人だった。
まさか盗聴、盗撮されているとも思わないが、踏み込んだ内容は話さない。
もっとも互いに警戒しているのはこの病院でなく、同じ側のはずの同席者かもしれなかったが。

言うまでもなく、ここはかつて生徒の一人が収容されていた施設である。
前々日からの調査報告を踏まえ、近隣で起こった微震の発生源の一つである可能性があると申し出たのだ。

天井(仮にも一研究者に過ぎない私では個人情報保護を理由に撥ね付けられてしまう。
   MARと連携する理由としては十分だろう)

ただ、測定許可が下りたとして、ここでの測定の主体はMARである。
同行は許されたものの、AIMのデータの処遇については病院側の意向による部分が大きい。
具体的には「外部協力者」として紹介された天井に対し、閲覧許可が出ない可能性があるということだ。
その場合は測定中は席を外し大まかな結果のみ隊員から聞くこととなる。

ここが当たりに近いだけの外れであると知っている天井にとってはどうでもいいことだが。
むしろ残念な振りをもっともらしく演じる方に注力すべきだろう。

キィ、と木製を模したドアが軋む。

院長「初めまして、当院の院長を務めさせていただいております。
   早速ですが、公的な調査とのこと、当院でも可能な限り協力させていただきます。ですが」

ほらきた。
ちらり、と寄越された目線にたじろいでみせる。

院長「申し訳ございません、患者の情報はどんなものでも非常に繊細なものです。外部の方には……」

隊員「かしこまりました。測定、データの閲覧は警備員内部だけに留めるようにいたします」

院長「ありがとうございます。また、公職の方でもこのような場合誓約書への署名をお願いしておりまして――」

予想通り、隊員の作業が終わるまでどこかで時間を潰すこととなりそうだ。




とはいえ優雅に喫茶店で過ごすのは色々な意味で緊張感に欠ける。
汗水を垂らし近隣の路地で測定を行っていた天井は、数時間後に先のMAR隊員と合流した。

人目のある場で話せることでもない、二人は涼しいMAR本部へと移動している。

天井「ふう、やっと人心地ですよ。
   ……お待ちしている間に外も測定しておりましたが、やはり現在は特異な波長が見られませんでした。
   過去の電磁波データには確かに指向性のようなものが見て取れるのですが……」

隊員「ふむ。結果だけ申し上げますと、現在入院および通院中の患者のAIMデータに、
   一連の……またはごく近くで起こった該当一軒の地震と結びつく点はありませんでした」

天井「過去に治療を受けていた能力者のデータはないのですか?」

むしろあったら困るのだが、流れとして聞いておく。
残念そうな隊員の口ぶりにから逆に安心を掴みながら。

隊員「基本的にカルテやその他のデータは一定期間保存しているそうなのですが……。
   こういう街ですからね。患者から申し出があった場合、能力関係を含めたあらゆる記録を破棄するそうです」

天井「つまり、過去のデータでも申し出がなく保管されていた分には地震との関連性はなかったと」

隊員「ええ。そうなると記録破棄済みの患者が気になるのですが、氏名連絡先なども完全に再現不可だそうで」

以前、何者かが病院のサーバを探った跡があったというが、
記録を破棄していたおかげで木山達まで辿られなかったということか。
事情が事情だけに転院の際は念を押しただろうし、不正アクセスがあった後も確認していることだろう。

天井「すっきりしませんね……。今回の仮説が合っているかどうか確かめられないとは。
   他にも発生源と思われる地点を絞り込めればよいのですが」

隊員「そうですね、また気になることがあれば是非お知らせください」

これは願ったり叶ったりである。
今回も、トップのテレスティーナ本人とはいかなかったがれっきとしたMARの一員が同行してくれている。
……というか本部内での面会はともかく、ぽっと出の研究者が提案した調査に隊長が出張ってくるのは考えづらい。
そういう意味で天井の意見はMAR内で一定の重みをもって受け入れられているようであるし、
彼の口ぶりからするに次回、移送当日も期待していいだろう。

天井「そういえば――差し支え無ければ、測定したAIMが地震の原因でないというのは、どこで判別するのでしょう。
   私の手持ちのデータでは、毎回の共通点は無かったように思いますが」

木山の眠る生徒達は十人居るが、発生源として全員が関わったのは、
一箇所に集めてから治療を試み大きい地震な地震を引き起こした一回のみ。
それ以前は一人か数人が発端となっているため、全ての地震に共通するAIMは無いはずなのだが。

隊員「共通点はありませんが、一定の法則性があるのではという見方が部内では立っています。
   具体的な特徴についてはセキュリティの観点から言及できないのですが……」

天井「いえ大丈夫です。
   逆に言えば、測定したAIMをこちらにお持ちすれば原因かどうかの判断はしていただけるということですね」

隊員「勿論です。データだけ持ち込まれる場合にはあらかじめご本人の了承をお願いしますね」

どうにも言葉を濁されてしまった。

生徒達に関して一番情報を確保しているのは木山率いるこちら側だと信じていたが、そうではないのだろうか。
原因となるAIMに法則性があるとは初耳である。
木山が話す必要性を感じなかっただけの可能性もあるが。

天井(だが、妙に思わせぶりと感じるのは穿ち過ぎか)

そもそも、以前病院に探りを入れたのがMARならば、今回の調査が無駄なのは相手も承知のことである。
であるのにわざわざ人員と時間を割いてみせるのは「天井の調査に期待している」ポーズであるとも考えられた。

天井(どうもうまくない。前提が仮定の上に推論など成り立つか)

もやついた納まりの悪さが肺の辺りにこびりつく。
餌をちらつかせているのはどちらなのか。
誘導しているのはこちらなのか。
探っているのはあちらなのか――。




カタカタ、とキーを叩く指は重い。
MARを出た足でそのまま長点の自室へと向かい、待機中にした測定結果を文書化する。

十人の子供達のAIMに規則性はあるのか。
それを木山に確認すべきかとも考えたが、移送の安全に直結するものでもなさそうなことから先送りとした。
今は連絡を取ることで関係性を疑われることを避けるべきだろう。
いくらただの共同研究者を装っているといっても。

「今日分の成果」として用意していた別のデータも纏めて一つの報告とし、
別の地点でも原因と思しき箇所がないか調査を進める旨、また絞り込んだ暁には再度同行してほしいと記載して締めとする。

そうして、調査地点を探すために地図機能を立ち上げる。
過去の測定データと重ね合わせる。
モノトーンの地形に等高線のような多色のラインが入り乱れる。

探すのは地震の発生源などではなく、それらしき誘導先だ。




ブラインドからは強い夏の陽射しが注いでいる。
自分のテリトリーである研究室で、その日、天井は不安げに右手の指を曲げ伸ばしている。
反対の手には真っ白な受話器。

天井「はい。前回と同じような指向性を洗い出しまして。第三学区の、ほぼ私塾のような小さな高校です。
   急なのですが、明日、調査に赴くことはできないでしょうか」

隊員『明日、ですか。……少々お待ちください』

流れ出る電子メロディに息を吐く。
今日電話をして明日にアポを取りたいとはなかなかに非常識だが、
前回も相手が乗り気で翌日の病院訪問が決まったため、その点については気負わない。

何より明日でなければならない理由があるのだ。
只今二十一日、午前十時半。
移送を控えた最後の日である。

念のため、昨日の報告でもそろそろ細かい場所が特定できそうだと伏線を張っておいたのだが。

隊員『お待たせいたしました。……申し訳ありません、明日はMAR全体に予定が入っておりまして……。
   明後日の午後でしたら可能なのですが』

事前の努力空しく、明日の調査は無理との言。
――額面通りに受け取るならば。

天井「明後日ですか。確認いたします」

決行日を二十二日としたこと自体、警備員と風紀委員の合同会議に合わせてのことである。
MARからも当然幾人かは参加するだろう。
また災害対策部隊であるからには、最低限の人数が常に待機している必要がある。
それにメンバー各々の予定があると考慮すれば、明日一日は都合が付かないというのも分からなくはない。

しかし。

天井(本当にそうだと言い切れるか。
   木山達の動向――生徒達を匿っていることや移送の日程もすでに割れていて、そちらに戦力を裂くためでは?
   私の行動で具体的な情報は漏らしていないと思うが、相手は公機関だぞ。
   いくらでも調査方法はあるんじゃないのか……!?)

先ほどとは対照的にデスク上の電話の保留ボタンを押しながら、震えている指を知覚する。
耳馴染んだ外国民謡の旋律が鼓膜を上滑りしていった。

天井「どうする? どうする? クソっ、落ち着け……! 何か判断のための情報は……!!」

そんなものあるわけがない。
空回りする自問に、嫌に冷徹な自答が突き刺さる。


>>+3
第三学区の調査について、どうするか
 a. 明後日以降の日程調整に応じる
 b. 明後日以降に調整しつつ、明日は単独で調査を試みる
 c. 何とか明日にできないか交渉する
 d. 一旦保留しMARの動向を報告しつつ木山達に相談


・さっき風呂に入り損ねたので風呂&夕飯
 そのため安価遠めですがよろしくお願いします



・おふぅ、すみません、当スレは連投無しで進めさせてもらっております……
 詳細は>>3

 人少ないですし、>>131-132 で(コンマだからいっか)と何も言わなかった>>1 が悪いのですが
 なんでもアリにしてしまうとルールの意味がなくなってしまうので、
 申し訳ないですが再安価>+3 でお願いいたします

 半年ぶりに再開してみれば不手際で大変ご迷惑お掛けします
 よろしくお願いします


すまん
ルールよく確認してなかったよ
次からは気をつけるわ


・オハヨウゴザイマス(寝落ちしましたすみませんの意)

 安価、>>142 の方も>>143の方もありがとうございます
 この度はお手数お掛けしました
 次回dから開始いたします

 次回は3連休のどこかで来ます
 よろしくお願いします



・あ、酉付け忘れ


・おそようございます
 ちょっと気を抜くとすぐ昼夜逆転する症状に病名を付けよう


結局、予定を調整し再度連絡する方向で一度通話を切った。

囮としての行動については天井にかなりの部分委ねられているが、
当日MARを引き付けられるかという可否、その肝の点を自己判断で済ますのはリスクが高い。
これまで面会、病院での調査とこちらの希望通りに対応が得られてきただけに、
移送当日になって思惑を外されるというのは作為を感じざるを得ない。

それが「本隊を追うのに人員を割くため」か「天井に対する鎌掛け」かは分からないが。
また、MARが生徒達を何らかの意図で追っているという仮定の上でも、
「単に会議などで予定が空かないから」という言葉通りの理由の可能性もある。

天井「それなら明日過剰に誘い出そうとして腹を探られるのも痛い、か」

考えを整理する、そういう名目で呟きを反復しながらも、キーボード上の指は淀みなくメール本文を埋めていく。
視界の隅にある時計のガジェットが秒を刻むのが急かされているようで、ちらと見やってから非表示にした。
木山達の返答によっては明日の同行を求めMARに食い下がる必要があるかもしれない。
元々前日に無理を言っている身、連絡は早めに返さねばなるまい。

共同研究を隠れ蓑にした偽装も既に慣れたもので、隠語のような置き換えに包まれたメールはほどなく回線を伝っていった。


木山『もしもし、今話せるかい』

天井「大丈夫だ。わざわざ申し訳ないな」

ほどなく鳴り響く着信音。
交わされる言葉は相変わらず固有名詞がすり替えられている。

木山『耐性実験の件だろう? 貴方だけでもスケジュール通り進めてしまって構わない』

天井「こちらの都合で実施してよいと? AIM周りの結果は私では判断できないが」

木山『それはデータを別途送付してくれればいい。必要なら後日同席して再実験しよう』

天井「そうか」

端的かつ迂遠という妙な会話だが、要は予定――明日に震源と疑われる地点を調査するという動きは崩すなということだった。
それにMARが喰い付いてこなくとも。
喰い付かせるためのアピールが、逆に不審に映る方を警戒しているのだろう。

決行前日に連絡を取るということで木山が神経質になっていることも予想していたものの、受け答えは落ち着いていた。
茫洋とした態度の奥で激しい感情を抱いているきらいのある彼女だが、今日に限ってはその様子も聞こえない。

一瞬生まれた間に、静かな息遣いだけが響いた。

落ち着いているのなら、いい。
警備員と風紀委員の合同会議に合わせ、予定より遅めに決行日を設定したのだから、
今はあらゆる準備を終え静かに時を待っているのかもしれない。

天井(そういえば……地震の原因となるAIMについて何かしらの特定方法があるらしいこと。
   木山に聞いてみるべきか)

「一定の法則性」だったか。
調査を装う段階で天井には分からなかった判別法をMARは掴んでいる、らしい。

木山や冥土帰しにとっても既知なのかもしれないが、確認しておくべきだろうか。


>>+2
「一定の法則性」について聞いてみるかどうか

>>+3
MARへの調査同行要請について、木山の言う通り
「明日は単独で調査を試み、必要があれば後日再調整する」でよいか




天井「それから、別件なのだが」

丁度用件も一段落、ではと切断ボタンを押される前に口を挟む。

AIMの、ある程度能力のある専門家なら気付く程度の法則なのかもしれない。
だがそうでなかった場合。
現状の仮想敵であるテレスティーナ達がその情報を手にしている事実は彼らの脅威度を測る指標となり得る。
ましてやそれが生徒の傍に居る木山さえ知らない情報だったとしたら――。

木山「何かあったのか」

天井「いや、確認だ。患者が開発を受けた学園都市の学生の場合、そのAIMの――」

双方合意の上の相談ならともかく、新たな話題を提示するのに隠喩を交えるのは困難だ。
気楽に会話を楽しめる段階でもない、天井は冗長になりそうな物言いに苦心しながら件の疑問を口にする。

天井「――つまり陽性か否かの判断だが、それは貴方の側でできるという認識でいいのだな。
   学会でもそういった研究が進み、判別ができるようになっているという話も聞くが」

木山「いや、特に判断材料は…………?」

するり、と沈黙が滑り込んだ。

先の一瞬の間と違い、明確な無言。
回りくどすぎただろうか、そもそもこういう言い回しは天井自身好きでも得意でもない。
だから木山が意味を取りかねているのではないか。
紙と電気の匂いが漂うこの研究室と、どこか木山の居る場所は、繋がっているようで遠すぎる。
この時間が困惑なのか呆れなのか苛立ちなのか、それすらも感じられない。

天井「…………、」

木山「……いや、そうか。そういうことなのか」

なぁ、と声を掛けようとした瞬間だった。




木山「黒、だ」

電話越しに囁かれた声は低く、ぞくりと背骨に沿って静電気が走る。

木山「あちらさんは――善意か悪意かはどうあれ、あの子達のことを、元凶であるあの実験を知っていると判断する。
   苗字が同じなのも必然だったわけだ。伏線にしてはおざなりだけどね」

天井「お、おい」

木山「分かるはずがないんだ、あの子達のAIMに目立った共通点はない。あらゆる角度から検証した私から見てもだ。
   だが、そもそもあの子達がああなった事情を彼らが知っているとしたら?
   こちらに欠けていたのは原因のデータだ。それを持ち、照合することができるなら?」

天井「落ち着いてくれ!」

まずいか。
木山はお得意の暗示的な話題運びすら忘れている。
いつか高度な演算装置があっても生徒達を救えないと打ちひしがれた時のように、胸の内の火を吐露する。

だが曲がりなりにも冷静だった彼女が激情に駆られるに値するのももっともだろう。
喉から手が出るほど欲しがった全ての発端がそこにあるというのだから。
そしてそれを知る者が、在りし日の再来のように生徒達に手を伸ばしているのだから。

天井「……今はすべきことを考えよう。予定に影響は?」

木山「なしだ。どちらにせよMARを敵と考えてきたわけだからね。ただお互い妨害には細心の注意を。
   貴方の動きもさっき言った通りで構わないが、万が一の際には柔軟に対応してほしい」

天井「分かった」

木山の激情を焚き付けた形になったのが、吉と出るか凶と出るか。
ただ限りなく黒に近い灰を黒と確定できたことは、気を引き締めるには十二分だっただろう。

隔たれた空間でもこれだけは分かる。
木山は間違いなく、あの決然とした顔をしている。

木山「あぁ、予定通りだ、明日は。そして――あの子達をひとまず目覚めさせたら。
   少し、大胆になる必要があるかもしれないね」


>>+2
何か木山に言っておくことがあれば
※字数制限はないですが鍵括弧1つ分くらいを目安に
 状況的に、長い場合は適宜カットするかもしれません


・多分これが今日最後の安価になります
 (本日は開始が遅いせいで短くて申し訳ないです)

 移送に入ってからはできれば細切れにしたくないので……



・毎度すみません……連続安価は無効になっております
 前回と同様、人が少ない中で進めてくれようとしているためだと思うので申し訳ないのですが……

 連投&連続を無しにしているのも一応意図はあるので、再安価とします
 実情と合っていないのも分かります、本当にいつもすみません

 >>+1 で



ざあざあと音がする。
雨だろうか、夕立ならともかく先の晴天から急に降り出すとも思えないが。
激流のようなそれは耳の奥、意識を洗いより研ぎ澄ませていくようで心地好い。

天井「先のことを話すと鬼が笑うぞ。まずは今、目の前だ。
   ――この共同実験が上手くいくといいな」

言葉を選び繋いでいた数分前とは違い、ごく自然に声が出た。

木山「共同実験、ね。当然だ。誰が笑おうと、私達は結論まで辿り着かなくちゃいけない。
   過程の一つでつまづいてはいられない。今もその先もやり遂げてみせるよ」

ふ、と息の音がする。
それはただの息継ぎや溜息ではなく、笑みだと感じた。

天井「あぁ。では、な」

細い回線分だけで通じた向こうで、木山は笑みを――不敵な笑みを浮かべているだろうか。
そのラインさえ断ち切った今、自身も同じ表情をしているのだろうか。


これまで連絡をできるだけ抑えてきた分、ここにきてコンタクトを取ることに抵抗がなかったといえば嘘になる。
だが結果として、木山の声が聞けて良かったと思う。

それは、彼女に抱くとある感情によるものではなく。
MARの位置付けが確定した……というのは確かに収穫だが、そのためだけでもなく。
木山の意志を再確認できた。
鉄さえ打てそうな熱を聞いた。

決意は人を奮い立たせる。
自身のものであれ、他人のものであれ。
知り合う口実こそ天井が作ったりもしたが、今回のメンバーも皆、木山の決意に集まったのだ。

天井「……なんだ、やっぱり雨など降っていないじゃないか」

窓の外にはぎらつく白と青。
音はいまだ止まない。
血液に電話越しの熱が燃え移ったように、全身を走り続けている。



・ということで本日分は終了です
 いつもながらご参加ありがとうございます

 次回は最初に短いムービー流した後に安価進行に入る予定です
 れっつ移送本番です


・その次回ですが、来週と再来週に予定があるので19~20日に来ます
 つくづくこの前の3連休が使えなかったのが悔しい
 今年はGWがしょぼいですし

 ともあれ、次回もよろしくお願いいたします



>>1 です
 すみません、ちょっとしか書けてないのと展開を決め切れてないです……
 もうすこし延期させてください
 来週は所用があるため再来週には

 というか
 ちょびっと進める→遠めの次回予告→延期→(以下無限ループ)
 ……を繰り返してますねいつも
 本当に何とお詫びすればよいか

 GWには来れるはずです
 今度こそ書きためてきます
 すみません


・すみません。身辺でいろいろあり今週末来れるか分からなくなりました
 最近まともに約束さえ守れないので次回予定を書くか保留します

 投下の有無に関わらず4連休中には顔を出しますが、不確実な予定はいらないというような声があれば
 4連休後からは不定期書ける時投下の形にしようと思います
 ご意見等なければ今まで通り、見通しだけでも投下予定を書きます

 レス乞食のようで恐縮ですが、特に何もなければスルーしてください

 取り急ぎ事務連絡のみ、申し訳ありません



・私事で徹夜してふらふらなど
 こんばんは>>1 です

 顔出しがこの日この時間になっている時点で結局GWも何も進まなかったわけで……お恥ずかしい限りです

 このような進行にお声いただき、いつも励まされております
 ありがとうございます

・一応次回予定アリがよいとのことでしたので、3週後を目安に

 再来週だと間に合わなくてまた伸びそうなので……
 10日の禁書新刊を読みつつ気が向いた際に見て頂けたら嬉しいです
 何だかんだ>>1 も新刊はスケジュールにねじ込んで読むと思います

 いつにも増して実のない報告ですが、本日はこれにて



・25日24時15分……! ギリギリセーフッ!!







 ……すみませんでした


・流石に何もなく2ヶ月停滞とか>>1 あほじゃないのと自分で思うので
 半端に書いたムービーの、ほんの最初をこっそり置いていきます
 これしか書けていないのです……

 そんな訳で今日はsageです、安価まで辿り着いていないので
 全面的に土下座




八月二十二日、十六時。

ペットボトルの口をきゅ、と締め、街路樹の陰から煉瓦敷きの歩道に踏み出した。
肩に掛けた機材が小さな金属音を立てる。
むわりとした空気を少し傾いだ日光が煮詰めていく。

不意にズボンのポケットで震える感触があって、天井はびくり、と震えた。

強張る身体を誤魔化しながら携帯を取り出す。


そろそろ移送は終わってもいい頃合だった。

あらかじめ決めていた、木山達から連絡を取る条件は二つ。

一つに、移送や後作業の全てが終わり、生徒達の安全が一旦確保されたと判断すること。
場合によっては翌日以降の可能性もあると言われていた。

そしてもう一つに、緊急の事態が起こり応援が必要になったこと――。

天井(まさか)

汗に滑る指で携帯を開く。
この暑さにも関わらず、指先は妙に冷えてぬるつく。

が、画面に表示された名前を見て天井の思考は停止した。


『黄泉川』


どうしてこのタイミングなのだ。
MARの件である種の協定関係のようなものを持っていたとはいえ、今回の作戦などは一切知らせていない彼女から。


------

半日ほど時間は戻る。

八月二十二日、六時。
第三学区大通り。

目標となる高校の敷地を見通す角に、天井は測定機材を固定していた。
電磁波を主とし、温度、風力……と、電撃使い以外のAIMもある程度測れるという代物である。
この日のため、今まで電撃使いの風紀委員と徘徊した際などに使ったものより値の張るこれを長点から借りてきたのだ。
それを、距離と方角を変えてあと二箇所分。

夏の朝はぬるく存在感のある湿気に沈み、水槽の底で揺れる蟹にでもなった気分だ。
自身の研究を考慮すれば、培養液に浮かぶクラゲのような神経束の方がそれらしいか。

天井「……微妙な喩えだ」

この時間に作業を始めた理由は、できるだけ涼しいうちにという願望だけではない。
学生の通学時間の前後を通して測定値を得るためだった。

天井(と、随所に気合が入っているように見えたらいいのだがな)

内心だけ一人ごちる。


本隊に対するこちらからの連絡は基本的にご法度である。
天井に求められるのは、地震とAIM拡散力場に目を付けた研究者として、それらしく振舞うことだけ。
ゆえにある意味単純により多くのデータを取ることを目標にこの場を訪れている。

定点の他に、以前から使用しているハンディ機器での各ポイント測定。
近隣の施設への多角的な聞き込み。
道路工事状況などによる地震の実被害調査。
……と用意したメニューはハードであり、
機材の設置をこの時間に済ませても結局水分を干上がらせながら歩き回ることに変わりはなかった。




天井「ふぅ。正午から二時までは資料閲覧にあてるとしても、なぁ……」

石段に腰掛け消耗前提で用意したスポーツドリンクの蓋を捻った。
どうせ温くなるうえその過程で大量の結露で覆われるのだと、最初から常温である。
温度により甘みが強調された液体が心地好く喉を滑っていく。
きっと鞄の中の二本目を含めすぐに飲み干しコンビニにでも縋ることになるだろう。

暇潰しのようにPDAを取り出す。

天井「『第二十一学区の多層多目的ダム着工』『緩衝用新素材を試用したエアバッグ発表』――面白いトピックもない、な」

測定と並行したデータ処理に使用するPDAには、
通信カードから常に最新のニュースサイトを引き込み、都市内の動向に気を配る。
少しでも裏を知る身からすれば、情報統制されたメディアに頼るのは心もとないが。

同時に検索系サイトのアラートを利用し、MARに関する新しい情報にせめてものアンテナを張っている。
どれも気休めのようなものだった。

天井(こちらと言えば、その気のある連中から見れば丸裸だろうに)

上京したての若者のように、見えない観察者を追って周囲を見回したくなるのを必死に堪える。


天井自身の情報管理は表の研究者として常識的な範囲しか制限していない。
例えばニュースを見るために接続したネットワークからハッキングを掛け、
天井が収集しているデータを現在進行形で閲覧することも不可能ではない。

――適度な距離で泳いでみせるのが擬似餌の仕事だ。

本隊の木山達はGPSで辿られることを防ぐため携帯の電源すら切っているはず。
天井をマークする位置付けの風紀委員達も、独断専行で動くという体の用心はしているだろう。

彼女たちともまた完全に連絡は絶たれており、既にこちらを尾けているのかさえ分からない。
当然、本命のMARが潜んでいても心得のない天井には気付く術もないのだ。

一時も、気を抜いて疑念を与えてはならない。

青から薄水色に開けた空の下。
天井は電波や、視線や、監視カメラのレンズで雁字搦めにされているようだった。


・はい
 まさかの1res/月

 しかも
 この後の土日も用事が入る可能性が高いので
 次に来るのはまたきっと3週後です


・すみませんちょう精進します


・精進できなかった結果がこの時間だよ!

・そろそろ開始から2年になるという恐怖
 頻度落ち過ぎて鼻血出そうなのでしばらくはsage進行でいきます
 安価スレにあるまじき失態で申し訳ありません……!


ポイント測定を一旦切り上げて、十時。
場所は第三学区、との境界にほど近い第二十学区のデータセンターである。

学園都市についての情報は公的に収集、管理されているものだが、用途や内容ごとに個別にデータを扱う私的機関も存在する。
天井が訪れたのも、まさにその一つだった。
とはいえ大理石をメインに品良く整えられたレセプションは高級ホテルと見紛うほどである。

機材を設置し終え軽くなったキャスター付のケースと肩掛けの鞄を降ろす。
体育系の学校が集まる立地から偶然見つけたシャワールームで汗を流し、
あらかじめ持参した学会用のスーツを纏いつつも、場違い感に別の汗が流れそうになった。

受付「いらっしゃいませ」

天井「すみません、昨日ご連絡した天井と申します。会員登録とデータの閲覧をお願いしたいのですが……」

受付「かしこまりました。身分証明書のご提示と、情報の入力をお願いいたします」

受付の女性がカウンターの溝に指を滑らせると、ごく薄いはめ込み型の端末が現れた。
ノートPCのように閉じた状態で土台と一体化しているらしい。
天井は財布から長点の所属証を手渡しつつ、画面に表示された必須項目を確認した。

第三学区外にありながら、この施設では第三学区の様々なデータを収集している。
その種類は毎日の天気に始まり、道路状況、各会議場で行われる催しの予定、あらゆるジャンルの飲食店、
果ては今回の目的である地震などの災害や、犯罪の分布にまで及ぶ。
第三学区の役割は外交――またそのために配置された展示施設や高級ホテルは、都市内でも高級志向の集まりに好まれる。
そしてこのデータセンターは、第三学区の施設を利用し客を遇する側のためのものであった。

受付「――ありがとうございます。只今情報を照会いたします。引き続き入力の上、お待ちください」

応答して、キーボードを叩く。
書庫と対照するのであればある程度の情報は分かり切っているものだろうが、手動でも所属や肩書などを打ち込む必要があるようだった。
ターゲット層や建物の作りが示唆するようにここは会員制、また登録には一定の地位を要件としている。
流石に直球で年収まで尋ねられることはなかったが。
ともあれ電話予約の時点で色よい対応だったあたり、長点上機様々である。

受付「照会が完了いたしました。身分証明書をお返しいたします」

天井「はい。……入力しました」

受付「ありがとうございます。では最後にこちらのカードにサインをお願いいたします」

ちなみに手渡されたのは何故か羽ペンだった。
流石にここまでくると高級感を通り越して冗談に見える。

普段は研究や何やらに打ち込んでいるため感じないが、ふと一歩引いた瞬間、『ごっこ遊び』のような――
学園都市全体が、どこか物事を単純化し誇張し演じているように思うときがあった。
箱庭的な閉鎖空間であるからかもしれないし、張りぼての大道具のごとく建て変わるビルのせいかもしれない。

実際問題、ドラマのセットだろうと舞台だろうと、ここで生活している天井達にとっては全て切実なリアルなのだが。

受付「ありがとうございます。当施設のシステムについてご説明いたします――」




当たり前だが、収穫はゼロだった。
地震の原因は第三学区にはないし、今後ここで同種の災害が起きる予定もない。
ともあれ情報収集にふさわしいだけの時間を居心地の良い個室で過ごし、少なくとも身体的には疲れが取れたようである。

天井「……こんな世界もあるんだな…………」

以前の記憶では車にこだわったりもしたし、贅沢に興味が無いとは言わないが、
研究環境については基本的に自室に籠りきりの天井である。
高級学習室ともいうべき痒いところに手が届く空間は半ばカルチャーショックであった。
提携施設を優先的に予約できるなど本来の機能としてもなかなかに有用なようだ。

天井(しかし値段も相応だからな。普段使いには厳しそうだ)

以前研究費に制限が掛かっていたとはいえ、天井個人が貧しさに喘いでいるわけではないのだが。
ともあれ。

現在十二時。
スーツを着替え第三学区に戻り、周辺の施設で地震や種々のAIMに関する聞き込みを行う。

先日携帯電話の基地局を訪れた際と概ねすることは変わらず、
審査などがありそうな施設にはデータセンターと同様に前日連絡を入れている。
根本的な調査対象である高校は流石に、一研究者の身で乗り込んでも成果は無いだろうと除外。
ほかにピックアップしたうち幾つかで提供拒否されることはあれ、そこまで難航することはないだろう。

天井「施設間の移動の……この、暑ささえ、無ければな……!」

シャワーを浴び快適な一室で過ごした身体が再び汗だくになっていく。
カラコロカラコロ、アスファルトを擦るキャスターの音さえ耳障りに思えて、容易に苛立ちに乗せられていることに溜息を吐いた。
施設を巡る順路はある程度決めてある。
ひとまず次の目的地に向かう冷房の効いたバスに、早く乗ってしまいたかった。




そうして予想より長く十五時まで掛けて計五箇所の施設を回り、内四箇所でデータ提供を受け、急いで最初の高校まで戻り。
衰えぬ、どころか斜めに傾いで抉るように射してくる日光に耐えながら、
ハンディタイプの測定器を持って歩き回っていた矢先だった。

件の『黄泉川』からの着信は。

一瞬ふ、と息を止めた後、静かに応答ボタンを押す。
思考はすっかり暑さなど忘れていたが、身体は律儀に街路樹の日陰を位置取っている。

天井「どうしたんだ。わざわざ掛けてくるとは珍しいな」

声は平静を装えただろうか。
彼女は信用できる相手だが、事情をさらけ出してよい立場ではない。

黄泉川『あぁ。取り急ぎ伝言じゃん』

天井「ジムで会うのを待たなかったということは本当に急ぎか。なんだ?」

改めて携帯を握り直す。
黄泉川との間での緊急の用件といえば、MAR絡みなのではないか?
よりによってこんな日に――

黄泉川『そんな怖い声出すことないじゃん。どっちかってーと朗報。こっちは今さっき一段落着いたじゃんよ』

天井「は? 一段落、だと……?」

黄泉川『ん。まあ、具体的な処罰までは漕ぎつけられなかったけどね。少なくとも、身内での不可侵な立場は崩せたはずじゃん。
    今後似たような事件があっても、奴らに独占はさせないよ』

黄泉川の背後でぶぅん、と車の音や、人の話し声がする。
向こうも移動中か何かで連絡をくれたのだろう。
その辺りに配慮してか代名詞ばかりが踊る報告だが、これはつまり――。

天井「ある程度大人しくさせられた、ということか」

黄泉川『そうなるじゃん。それなりに疑惑の目を集められたからな』

天井「そうか……そうか。連絡助かった」

黄泉川『ま、今度会った時に落ち着いて話すじゃん。ってもあんまり詳細は言えないけどね』

心地好い疲労感、だろうか。
どこか晴れがましい雰囲気と更なる監視への意気込みを感じさせる朗らかな調子で、黄泉川は電話を切った。




望ましい内容とはいえ、想定外の方向からの一撃は十分に虚を突く。
何秒かは分からない、その位呆けていた事に気付いて、天井は丁度街路樹の周りにあったレンガの柵に腰を下ろした。

蒸れた夏の湿気にはどろりとした停滞しか感じないが。

天井(こちらの方は進展したということ、か?)

思い至ってPDAを確認するものの該当のニュースは見当たらなかった。
いや、まず流れるはずはないだろう、生徒や保護者を不安にさせるだけの、警備員内のゴタゴタなど。
脳の表層だけ冷静に思考を修正。
ついでに軽量型とはいえ書類よりは重いPDAで、ばたばたと顔を扇いだ。

天井(結果を知ってしまえば『こんな日に』連絡があったのも必然か。
   そもそも移送の日取りは、警備員の大規模ミーティングに合わせている。黄泉川にしても好機だったんだな)

視線を上げる。
補習後の時間を過ごすために学区外へと歩く学生の、熱に当てられだらけた声。
目の前を通り過ぎる少年の一団。
微かに揺らぐAIM測定器の数値。
追うように肌に当たる波のような空気の対流。

風。
PDAを動かす度、人が通る度に、まるでわだかまっていた空気が少しづつ掻き回されていく。

天井(木山は治療が終わった後、敢えて攻勢に出る選択肢も考慮しているようだった。
   その面でも、MARの信用の低下に付け込んで、AIMの専門家として木山をねじ込める可能性が出てきた)

はは、と天井は一面に青く平らな空を仰いだ。

都合が良すぎだ。
黄泉川の言を信じるに、MARは今日の会議に出席しており移送の追跡や妨害はできそうにない。
更に立場の悪化から今後の動きも制限できるだろう。

考えられる限りでも上々の結果に、逆に気味悪く思ってしまう。
このタイミングでこういった連絡が来ること自体、罠なのではないか。
あるいは通話先の『黄泉川』は本当にあの女警備員なのか。

天井(……いや。流石に偽物の恐れは少ないか。後で直接会って話せば事の真偽はすぐに知れる。
   今この瞬間だけ私を騙して得られるメリットは……浮かれて木山達に迂闊な連絡を取った場合だけか?)

そうであれば、予定通りに動くだけで敵の狙いは封殺できる。
逆に本隊が現在危機的状況にあるのなら、
MARの立場で考えると天井に余計なコンタクトを取って予想外の動きをされるのは下策だろう。

天井「本当に……朗報なのか。少しでも危険は減ったと、思っても良いのか」

ふと周辺一帯が暗くなって、鯨のようにアドバルーンが流れていく。

空に立ち込めるあの浮遊物のように、かつての転落の契機である樹形図の設計者の宣託のように、
天井の意識には「失敗」がぼんやりと影を落としている。
何もかもが悪い方へと転がったかつての記憶も。
空回って暴力沙汰に首を突っ込むなどという直近の苦い経験も。
それらは、あるいは明確に攻め立ててくるトラウマよりも根が深いのかもしれない。
天井は何をするときも無意識に成功のビジョンを思い描き難くなっていた。

しかし、どんなに淀んだ状況であれ、人が動けば風は生まれるのではないか。
この移送に関わる面々の顔を確かめるように脳裏に描く。

電話一本に散々重ねた思索。
その上で、考えても考えても黄泉川の連絡に限っては落とし穴は無いように思えた。

天井(どちらにせよ――今は信じて役割を全うするしかない)

ここまできてやっと天井は動揺から立ち返り、じゃり、と音をさせて立ち上がる。
少しだけ肩が軽くなったのは錯覚ではないだろう。
それでも浮き足立たぬよう、影が通り過ぎるより先に、天井は自ら足を踏み出した。




この街で、とりわけ裏側の片鱗に踏み込んだ場所で、
努力と友情と、それによってもたらされる安直な勝利なんてあるはずもなかったのに。

後に天井は、皮肉にも始め抱いた疑念が正しかったことを知る。


人の行動は風を生み、凪に囚われた事態を動かす。

しかし、よく意識に留めねばならない。
寄る辺無い大海で、背を押す意思もあれば船を沈める意思もあるということを。




あれから一か月弱経つ。

その間、木山の生徒達の件はとんとん拍子に好転していた。
結果的に二十二日の夜、移送が終了し一旦の安全を確認した旨が簡潔に知らされた。
そこから連絡が途切れ気を揉んでいたが、後から聞いたところによると生徒一人づつへの治療がほぼ連続で行われ、
特に暴走を起こすこともなく覚醒に至ったとのことだ。
風紀委員の二人や上条少年は骨折り損になってしまった気もするが、
「彼等が居てくれたから安心してことを進められたんだ」という木山の言葉は、本心からのものだったと思う。

天井「覚醒したとはいえ根本的な治療ができたわけではないが――」

天井は研究室のソファの方にもたれ、気を抜いていられる夕方の時間をゆっくりと満喫する。

木山の生徒達に施された処置は、「正常な状態にあるAIMと相互干渉させ、暴走したAIMを安定状態に持ち込む」ものである。
安定状態になった後も、それを維持するために常に干渉元となったAIMが発生している必要があり、
それは小型の擬似AIM発生装置を全員に常備させることで成り立っている。
彼らはたとえ入浴中であろうと腰の脇に固定したその装置を外すことはできないし、
本人以外のAIMにさらされ続ける状況では学園都市で重視される能力の成長もしづらくなる。

とはいえ。
他人の思惑で実験に使われ、昏睡したまま浪費していた子供時代を、これからは取り戻していけるのだ。
冥土帰しはこれからも生徒達の状態を診察しながら根本的な治療法を探すという。
木山も同様に、

天井「そういえば、警備員側に対するアプローチもそろそろ考えると言っていたか」

黄泉川とはあの後直接会う機会を設け、電話で聞いた内容の裏付けを取った。
具体的には地震発生前の出動状況に始まり、
不正に消されていた駆動鎧の稼働ログやら何やらを並べて風紀委員との合同会議の場で追及したのだとか。
直情型に見えて相手の隙を的確に突いてくる黄泉川のことだ、それは鋭い舌鋒だっただろう。
気弱な同僚が隣席でおろおろしていたと、豪快に笑っていたことまでくっきり印象に残っている。

そして木山曰く、十中八九テレスティーナ率いるMARは木原幻生の実験記録の中核となるデータを有しているらしい。
特に暴走の原因が掴めれば、的確なワクチンが作成できるかもしれないということだった。
子供達の状態が安定ししばらく前に退院したこともあり、どのような方向で接触するべきか案を出し合っている。

生徒達自身は二学期からの復学とはいかなかったが、今は通いのリハビリに励んでいる。
天井はまだ接触を避けているが精神的にも元気と聞く。
転入する学校は信頼できる先を冥土帰しが伝手で探す予定だ。

天井「あぁ、さっきの開発の測定値を纏めないとな」

そして。
天井は授業や何やらで忙しない日々を送っている。

しばらくは木山の件の反動で研究が手につかなかったりもしたが共同研究者の容赦無い喝により無事社会復帰した。
それから目出度いことにギプスと別れ、制限されたメニューながらジムにもまた定期的に通えるようになった。

事件は一山越え天井が表立って動くことはほぼ無い。
MARとは、体面を取り繕うためあの後第三学区の調査に同行したが、
そこが外れだったと分かってからは消沈した様子を装って距離を取っている。
治療については専門分野と大きく外れるため、警備員への働きかけについて木山相談するくらいだ。
もちろんこれからも調査なりパイプ役なり協力を惜しむつもりはないが。

非常事態の夏休みからやっと戻ってきたのだ。

気怠げに立ち上がり、天井は授業のデータを転送してあるデスクのPCに向かう。
授業、研究、生徒達の件の相談、ジム。
繰り返しの日常に戻り、しかし治療や研究の完遂といった目標もあり。

天井「それに……いや。まだ全て解決した訳ではないからな。木山の方も余裕は無いか」

いつか。
いつかはこの感情に行き場を――と。

感傷染みた内心の先延ばしを、乱暴にドアを開ける音が遮った。




「This is serious! あなた地震について調べてわよね!? 衿衣――あの時の子が酷い悲鳴を感じたって……!!」

携帯を手に狼狽した様子で布束が駆け込んでくる。

それとほぼ同時、PCに場違いなエフェクトと共にメール着信のアラートが現れる。
Fromに木山の名を見、焦るように開封すれば。

『緊急だ。生徒の三人の消息が途絶えた。これを見たら連絡してほしい』


いつだってそうだったように、平穏が崩れ去るのは突然だ。




>>+2
取り急ぎどうするか
 a. 布束に詳細を聞く
 b. 木山にメールか電話で詳細を聞く
 c. 春上に会う(布束を連れて行くか併記してください)
 d. 木山に会う(布束を連れて行くか併記してください)


・ここから最終局面に入るため、目的が固定となります

 目的:「貢献」→「献身」木山と生徒達を助ける

 目的の固定が解除条件は2周目の終了
 ゴールオアフェイルです


・というところで本日はこれだけ……すみませんすみません……
 次回はまた3週間以内には

 こんな>>1 ですが見ていただける方には全力で感謝です



・おはようございます、携帯>>1 です
 呼ばれた気がしたので

 夏休みは抜けましたが、基本的に1回の安価で後の(他の)行動まで指定するのは無しでまいります
 安価の決定によっては必要に応じて追加安価をだすかもしれません


・……というか、↓明記しておけば良かった話ですね

※1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります

 混乱を招き失礼いたしました
 安価は>>+1 で



・書ける時に書き逃げてみるテスト
 とはいえ1レスだけです


天井(くそ……っ! どうして放っておいてくれないんだ!)

瞬時に頭が茹で上がったように、天井は心中できつく毒づいた。

移送も治療も成功したではないか。
MARは周りに睨まれて動きを鈍らせたと言っていたではないか。
木山の生徒達も、この件に協力してくれたメンバーも、あとは何事もない日々に戻れるのではなかったのか。

白熱し狭まる視界の中に、携帯を握り肩で息を吐くモノトーンの姿がぼんやりと映る。

天井(ああ! くそ、しっかりしろ! 時間を無駄にするな……!)

落ち着け。
呼吸と脈拍を思い出せ。

目の前に壁があれば頭を叩きつける勢いで奥歯を食いしばる。

体内を巡る血の音に意識を向けた瞬間、逆回しにするように視力が帰ってきた。


布束「In case, そっちも何かあったの。只事じゃない顔よ」

天井「……あぁ。しかしメールが気になる。今来たのか?」

布束「えぇ……。Slightly, 数分前」

こめかみに力が入る。
時間は無い、が。
考えなければ。


天井「見せてくれ」


 From: 春上 衿衣
 Sub: 無題

 どうしよう、すごい悲鳴が聞こえたの
 頭の中に
 怖がってた。どうすればいい?
 友達、なにかあったかもしれないの


絵文字も顔文字も無い、削ぎ落されたような文面だ。
それでいて要領を得ない内容からは混乱が滲んでいる。

メールだけでそれ以上は知りようがないが、しかし初対面の時のように夢遊病紛いの状態ではないようだ。
少なくとも、文字を打ち込み送信することができているのだから。

布束「For a while... 落ち着くように返信してみるわ」

天井「そうだな。それと打ちながらでいい、最近の様子や会話の流れを教えてくれないか」

こくり、と頷き一つ。
キーボードも携帯のダイヤルキーも普段自分の一部のように使いこなす布束だが、しきりに指を滑らせては顔をしかめた。
部屋に飛び込んできた時の血相に、「衿衣」と親しげに呼んでいたこと。
きっと、あの時交換した二人のアドレスにはメールが飛び交っていたのだろう。

天井(早く……早く何とかしなければ)

意識ばかりが急いていく。
伏せた目に画面上の白いウィンドウが再び飛び込み、天井は苦く唾を飲んだ。
こちらの送信者も、春上や布束以上に憔悴しているだろう。




>>+2
木山への対応はどうするか
 a. 一旦保留する
 b. 春上の件は伏せつつメールで事情を聞く
 c. 春上の件について伝えて相互に状況確認
 d. その他(具体的にお書きください)

※選択肢、dの自由記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


>>+3
春上にメールで伝えたいことがあれば

※複数可ですが、伝達手段が制限されているため全て伝えられる&実行してもらえるかは内容によります
 先に書いてあるものから優先して伝えます


連投不可(連投分は安価下)でお願いします


・前回分に誤字とか多過ぎて涙目
 選択に影響するようなクリティカルな間違いはしていないはずなので許してください


・今回は更新というよりは追加安価の前振りです
 次回改めて、3週間後までに
 変則的な投下でしたがよろしくお願いいたします



・こんばんは、>>1 です
 頭痛が痛くてしょうもなく今週は書けなさそうです、すみません
 ただの風邪で危険な病気とかではないので

 来週こそちゃんと来ます


・先週は風邪で頭痛がすると言ったな。あれは嘘だ
 夏なんてほろんでしまえ>>1 です

 頭痛が治っても食欲が出ないのでただの夏バテのようです
 と言いつつ今日の朝食はピザでしたが。食欲不振(笑)


考えることが多すぎる。

眉間にきつく寄ってしまっていた皺を拳で押し解す。
ソファに居る布束も焦りを隠さず、走りこんできた時のまま髪は乱れ、
普段から座る際には気を付けていると言っていたスカートもぐしゃりと皺になっている。

布束「――ここ最近、友達の声が聞こえるようになったって喜んでたわ。その子はずっと病気で意識不明だったらしくて。
   Vexed, ずっと寝たきりだった分のリハビリが進んだら、みんなで遊びに行こうって言っていたの……」

そうか。
以前彼女に木山の方の事情を話したのは春上の入院に付き添った時だ。
その時点では春上の能力が特異的に強化される相手が木山の生徒であることを天井も知らなかったし、
その後は治療の件について詳細な話をすることも無かった。

天井(布束は春上の聞く声と木山が繋がっていることは知らないのだったな。
   この状況だ、木山の側と情報は擦り合わせてしまいたいが、布束にどこまで聞かせて良いか……)

布束「Unrelated, 今日のメールはただのお喋りよ。さっきのだけ脈絡なく……っ、Wait a minute.
   悲鳴の前に困惑したような声が聞こえたって言ってる」

布束の携帯が何かの曲の頭の一音を再生した瞬間、ピ、と細い指が遮った。
唇を噛んで画面を凝視してはまた忙しなく操作し始める。

天井「今どこに居るかは分かるか?」

布束「聞いてみる。多分家にいるはずだけど……The worst, 今の状態じゃ外を歩くだけでも危ないわ」

天井「可能なら悲鳴の前後で他に分かることを聞いてみてくれ。こちらも情報を探す」

ちら、と視線を寄越して頷く布束を確認してPCへと向き直る。




 To: 木山 春生
 Sub: Re:

 たった今こちらも布束経由で知った。
 春上衿衣が悲鳴を聞いたらしい。

 布束は春上と生徒達が繋がっていると知らないが、
 現在メールで春上に事情を確認している。

 同席がまずければ移動する。


簡潔にそれだけ送信し書庫に接続、春上の情報を確認――、
する間も無く今度は天井の携帯が無機質な電子音を発した。

木山『――そちらに居るのは布束博士だけか』

天井「あぁ。私の研究室だ」

木山『伝言ゲームをしている暇はない、彼女にも事情を話す。スピーカーにできるかな』

天井「待ってくれ」

使い慣れない機能に手を焼くよりは、と布束に携帯ごと渡して設定を頼む。
その隙にデスクの椅子をソファの傍まで引き摺り、PCのモニタとキーボードを強引にこちらに向けた。
袖に引っ掛けた開発のデータがばさりと落ち、床に白く散らばった。

布束「Now, 良いわよ」

木山『……聞こえているかな』

スピーカーと同時にマイクの感度も極限まで上げられているらしい。
布束の発現に反応して木山が口を開いた。

天井「大丈夫だ」

ソファの前に置かれた携帯電話から聞こえる木山の声はエコーを掛け過ぎたように妙にざらついている。
学園都市の最新技術を使っているとはいえ小さな機体でカバーしづらい範囲に拡声しているのだから当然だが、
戦争やスパイ映画の通信機の音声のようでいやに耳に障る。

木山『布束博士、私が置き去りの治療と地震に関わっていることは知っていると聞いた。
   率直に言おう、貴方の友人が聞いた悲鳴は私の生徒のものだ。情報を共有したい』




布束「What you mean? 衿衣の能力の相手がたまたま木山博士の生徒だったっていうの?」

木山『そうだ。初対面の時、夢遊病のような状態になっていたのだろう。
   あれは能力が暴走、共鳴して苦しんでいた生徒の一人の声を聞いていたからだ』

天井「ん? 待て、生徒の三人が消息を絶ったと言っていたが、春上が悲鳴を聞いたのはついさっきのはずだ」

テーブルに頭を寄せるようにして言葉を交わす。
同時に書庫のサーチを継続してみるが、現在通学していない春上の住居は記載がない。
天井のセキュリティレベルで閲覧できないだけなのか、登録が無いのかは不明だが。

木山『っ! 先程メールした三人とは別だよ。状況を把握してから全員に注意喚起と指示を送っている。
   ……それも遅かったが……』

天井「指示というのは?」

木山『自室に居る者は外出せずに待機、人が来ても応じるなと。
   そうでなければ自室に戻るか、人の気が多く、かつ顔を隠せる場所――飲食店の角席などに身を隠すように言った。
   また十五分ごとに安否連絡を入れるように』

なるほど順当か――どうかも事の全容が見えないため不明だ。
犯人がMARか新たな勢力かも見えず、仮に警備員内で若干力を削がれたMARだったとしても、外から見れば公権力であることに変わりはない。
例えば住居の管理者などが良かれと思い生徒の情報を渡してしまう可能性もある。

布束「As for, その三人のことはどうして分かったのかしら」

木山『詳細は省くが、治療のため生徒達には毎日昼と夜にAIMのデータや体調を手動で送付してもらっている。
   今日の昼の連絡が無く電話やメールを試したが一切繋がらなかった。
   一緒にリハビリをしていた子が、その三人で遊びに行くと別れ際に聞いたのが最後の足取りだ』

布束は自分の端末から目を離さず、僅かにランプが点灯した瞬間カチ、とキーを爪で叩く。
そのままタタタタ、と連打しスクロールしていく様子そのままに苛立っているのだ。

布束「こっちもメールが来たわ。衿衣は家でじっとしてる。友達は……Be afraid, 今は、気を失ってる、みたい。
   元々衿衣は受信専門だけど、集中しても声が聞こえないらしいの」

言い淀んだ部分に嫌な想像が掻き立てられ、天井は頭を掻き毟った。
――本当に気を失っているだけなのか、犯人の目的によっては――。

布束「最近連絡したのは昨日の夜、電話で話したらしいわ。
   今日はリハビリの後に第七学区の店舗街に買い物に行くと言っていて、衿衣も誘われたけどたまたま断ってしまったって。
   Mercilessly, すごく自分を責めてる……ごめんなさい、ちょっと席を外すわ」

木山と情報共有するために布束と春上はメールで会話していたが、春上には酷だったのだろう。
携帯を手に部屋の隅に身を寄せ、小声で電話を始める。
心苦しくなりつつも、天井も何とかスピーカーを一旦解除し木山の方に集中する。




天井「他の六人の生徒と連絡は?」

木山『指示を送った後、それぞれ所在の返信が来た。春上君の友人――枝先以外は安否連絡も途切れていない』

天井「ではその枝先という子も、直前の所在は分かるのか」

木山『いや。彼女だけはまだ連絡を待っていた』

現状、この場に挙がる情報の中に消えた生徒達や犯人を追う手掛かりは無い。
生徒達の携帯だが、悪用を防ぐためGPSの利用をブロックする処置が掛けられているらしい。
冥土帰しにも連絡済みだが有用な情報は届いていないとのことである。

他の六人も心配だが電話やメールで位置情報を全て共有するのには不安が残る。
また彼らを保護したとして、どこに居れば安全なのか。
生徒達から木山への所在連絡はメールで行われたとのことであり、傍受を警戒するには遅いかもしれないが。

布束の方に意識をやれば、電話の先の春上は錯乱し大声を出したりはしていないようだが、
不安定な心理状態に変わりはないだろう。


>>+2
どう動くか
 a. 他の人に状況を伝え協力を仰ぐ(相手をお書きください、複数可)
 b. 木山と合流し六人の生徒を保護する
 c. 春上と合流する
 e. その他(具体的にお書きください)

※選択肢、dの自由記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります
 aの相手のみ複数可です


・情報整理は時間が掛かってしょうがない
 遅い開始ですが本日もよろしくお願いします




天井「……このまま話をしていても埒が明かないか。私は春上君に会いに行こうと思う。
   彼女の協力を得られれば、枝先君が目を覚ました時に居場所を突き止める助けになるかもしれない」

先のおぞましい想像ではないが、誘拐事件の場合時間が経つほど対象の生存確率は落ちるとまで言われる。
学園都市での誘拐に限るなら意味もなく生命が脅かされることはないだろうが、どれだけ過酷な境遇に置かれるかは計り知れない。
現状手掛かりが無い以上、彼女の能力が鍵になるだろう。

木山『分かった。私はひとまず他の子達の安全確保に向けて動く。連絡はいつでも取れるようにしておいてくれないか』

天井「あぁ。どうする気だ?」

木山『三人……いや、四人は十中八九、外で誘拐されたと考えられる。
   どういう方法かは知らないが顔が割れて網を張られていたんだろう。
   逆に考えれば各々の自宅は知られていないはずだ、現在外にいる子達を何とかして部屋に届ける』

確かに、四人ともどこかに行くと言ってから行方が分からなくなっているようだ。
窓を覗けばまだ陽は傾いでおらず、リハビリの後に出歩いての帰宅には早いのではないだろうか。
そうすると住居に張り込まれていたという線は薄いのかもしれない。


>>+1
生徒達六人の安全確保について、意見や言っておくことがあれば
※1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります




天井「――そうだ、風紀委員か警備員の知り合いに協力してもらった方が良いかもしれない。
   表立ってそういう立場の人間の妨害はしづらいだろう、MARだけが公的組織ではないのだからな」

そもそもMARが今回の黒幕とは限らないが、そうでないならなおさら治安維持組織の介入は犯人の選択肢を削げるだろう。

木山『ふむ。信用できる相手といえば、この間も助けてくれた風紀委員の二人かな。
   確かにこの現状、私達だけでは手が足りない』

ふと顔を上げると、布束がソファの背もたれに後ろから腰をあずけ、じっと天井を見ていた。
閉じた携帯を軽く揺らしている。
木山との通話をスピーカーに戻した方が良いかと思ったが、設定を頼む前に軽く手を振り否定を示された。
特に伝えるべき追加情報は無いということだろう。

天井「何らかの形で上から圧力を掛けてくる可能性もあるが……どんなタイミングで、
   何をしようとしたときにそれが起こるかは、逆に敵の狙いや危惧を推察する材料にもなるからな」

木山『参考にしよう。そろそろ私は目的地に着く。何か分かったら必ず連絡を頼むよ』

軽い電子音と共に濃密な通信は途切れた。
そろそろ着く、とは。
背後に雑音が無かったことから、彼女は私有車で移動しながら連絡してきていたようだ。
行動力の高い木山らしい。

こちらも急がなければならない、と席を立つ天井の前に、すっと小柄な影が立った。

布束「地震の調査だの実験被害者の治療だの聞いてはいたけど、あなた、危険なことは一切していないって言っていなかった?
   Considering, 随分判断に慣れがある気がするのだけれど」

天井「……黙っていて悪かった」

布束「I'm not caring. この緊急時にどうこう言う気はないし。今ならそういうのに首を突っ込むのも分からなくはないわ」

布束は携帯を、フリルが多すぎてどこにあるのかも分からないスカートのポケットにねじ込んだ。
ついでに裾を直しながらざっくりと髪を手で直し、

布束「早く行きましょう。私も彼女が心配なの」

迷いない視線で言い切った。

どうして周囲にはこう、強い女性が多いのだろうか。


>>+2
布束も同行してよいか



・すみません、安価の聞き方が微妙でした

 ここから>>+2 で
 布束の同行の申し出について、どうするか

 でお願いします




天井「……そうだな、急ごう」

胸を張って立つ布束は全身で、YESと言うまでここを通さない、と物語っていた。
だからこそ天井は軽く彼女の肩を叩き、脇をすり抜ける。

布束「Huh. 止めるかと思った」

振り向かずとも、天井の歩調についてくる足音が分かった。

天井「止めて大人しく引き下がる状況ではないだろう。君の立場ではなおさらだ」

布束「……そうね。To begin with, あなた衿衣の家知らないでしょう。頭の固いカーナビよりは役に立つわよ」

天井「期待しておく」

さらにカツコツと丸く艶のある黒靴を響かせ、少女は天井の横に並んだ。
廊下を辿り両開きのガラス戸をくぐり肌を灼く夏空の下へ。
前方を睨むような横顔は、倍以上も年の離れた同僚たちと議論する研究の場に輪を掛けて、本来の年齢を飛び越えていた。



・微妙に捏造入ります


膝の上でPDAを、右手では携帯をそれぞれ弄りながら指示を飛ばす布束に従ってハンドルを切ってみると、
本人が宣言した通り実に軽快に車が進む。
助手席を横目で見れば、訪問を伝えるためのメールを打ちつつ、
周辺一帯の交通状況や何やら複合的なデータを地図に被せてゆっくりと指先で辿っていた。
外にはビルや街路樹が白くぼけながら流れていく。

天井「本当にナビゲートが上手いな。車を運転する訳でもないのに」

布束「Could be. 助手席に乗るのだって同僚のお姉さんと一緒の学会の時くらいだけれどね」

本人はなんてことのないように話すが、回数をこなしたわけでもなく、
運転の勘もない布束がスムーズにそれを実行するというのは実際のところ大した才能ではないだろうか。
センスと言ってしまえばそれまでだが。

天井(いや、そもそも布束は『天才少女科学者』なのだったな)

漫画やドラマみたいなフレーズでも、この学園都市では荒唐無稽とは限らない。
『自分だけの現実』と対になり能力の根幹となる演算力、さらには記憶力や思考力、感受性などを含めた広い意味での脳力。
都市が主導する開発でこれらが発達した学生は、仮に無能力者でも特定の分野で飛び抜けた才能を発揮することがある。

天井「ん? そういえば……。今聞くことではないかもしれないし、ノーコメントでも良いんだが。
   布束の能力は何なんだ?」

今更な疑問だった。
視界はフロントガラスに戻しておきながらちらちらと布束の方を気にすると、曰く形容しがたい微妙な表情をしている。

布束「By Jove... あなた開発官なんだから書庫のデータ見れるでしょう」

天井「いや、あまり人の個人情報を探るものではないだろう。自分から言わないから知られたくないのかとも思ったし」

空間移動能力者を探したり上条のデータを調べたりもしたが、それはそれ、これはこれというべきか。
同僚という意識が強い布束のデータを検索するのは何となく気が引けてここまで来たのだった。

布束「私が言わなかったのはもう知っているかと思っていたからよ。Meanwhile, 能力ね……」

天井「寿命中断はいいからな」

何か知恵を捻り出そうとする素振りがあったため釘を刺してみると、ふて腐れたような気配が左側から漂ってくる。

布束「ま、良いわ。Nothing but, 無能力者よ無能力者。折角だから分類は秘密で。
   それこそ読心能力や透視能力の異能力でもあればこの状況で少しは役に立ったんでしょうけれど」

天井「悪い、そういうつもりで聞いた訳ではなかったが」

前置きがてら溜息を吐く。
天井は目的地を正確に把握していないが、布束のPDAを覗き込むととんとん、と一点を示された。

天井「まぁ、藁をも掴む心境なのは確かだ」

布束「Chording. それに関しては同意するわ。……あ、次の次で左折して。四つ目の交差点の左手前角の寮ね」

元々不安や焦りを誤魔化すためにしていたような会話だ。
区切りがつけば口の動きは止まり、ただ真っ直ぐにアスファルトを走っていく。

春上の住居は近い、だが誘拐の解決という大目標は、どれだけの距離にあるのかも見えてこない。



・本日は以上です
 最後に安価を出せなくて申し訳ないです

 次は二週間後くらいの予定です
 最近新たに読んでいただいた方もいるということで有り難い限りです
 今日もご参加ありがとうございました


・前レスで書いていた捏造は今のところ布束=無能力者だけです
 べ、別に布束が上条の生き別れの姉で、
 左手に幻想殺しと対になるトンデモ能力を秘めていたりはしないんだからねっ!



もしそうなら怖すぎだよ
天井って今もLFA乗ってんのか?


・すみません! 寝てました今の今まで!

 流しの排水溝詰まる
 →自力で試行錯誤
  →が、ダメ……!
   →不動産屋が盆休み
    →やっと水道屋が手配できる
     →……のに合わせて見せられる状態に掃除

 のコンボを決めた後水道屋が帰って速攻寝倒れましたすみません

・最近色々とネタ不幸が多いのでそろそろベランダにヒロインが引っ掛かるはず
 ※当スレは>>1 の言い訳をニヤニヤ眺めるスレではありません

・ら、来週は書けると思います……
 今後無理っぽい時はせめて分かった時点で書き込みます
 気を揉んでいた人がおられましたら全力で土下座



・暑い眠い……
 1レスだけですみませんです
 不定期更新になってしまったものでsageてましたテヘペロ


>>229
 天井のクルマは、アニメで都市外製のに乗ってたのがちょっと意外でしたり
 高級……というかプレミアム的な車種だというのもそうですが、
 わざわざ外から取り寄せるのは例えるならアンティーク趣味的なものでしょうか
 天井は結構車道楽なんでしょうね(もしくは成金趣味)

 >>1 はクルマについて詳しくないのですが、このスレの天井の愛車はちょっと良いセダンな感じかと
 研究所持ちの原作と違って実験器具の運搬や協力者の送迎などに使うにはスポーツカーは厳しいでしょうし、
 ワゴンとか軽は実用的ですが上記の趣味とは噛み合わないかなー、など


ハンドル上に両腕を組み、だらしなく顎を乗せる。
指先だけが忙しなくハンドルを叩き、落ち着かない心情を示していた。
車内特有の匂いを消しきれないエアコンの風を浴びながら、天井は数か所のミラーを順に目で辿る。

ここは寮――ではなく、少し離れた路肩である。
春上の寮、ひいては在籍する学校は、本人が置き去りかつ低能力者という境遇ゆえかあまり高いランクではない。
寮監などというものが存在しない代わりに学生証を用いた入退管理を行っていた。
それ自体は余計な人間の記憶に残らない分、都合がよいと言えなくもなかったが……。

「監視カメラだけはどうにもな」

無難な寮とはいえ最低限のセキュリティは存在している。
天井にも布束にも痕跡を残さず機械を騙しおおせるようなスキルはない以上、
テレスティーナ達に顔の割れた天井の姿を記録に残すのは上策ではないと判断した。
必然的に布束のみが先行し春上を連れ出すという形になった。

当然監視カメラなど目的の寮以外にも設置されているため、
コンビニなど駐車しやすい箇所を避けなければならなかった結果が路駐である。
生徒達の救出以前に警備員とお話合いする羽目にならないことを祈るばかりだ。
何故か間の悪い目に遭うツンツン頭の少年でもないから、この短時間で巡回に引っ掛かることはないと信じたい。

「早く帰ってきてくれ、布束……」

と、こつこつ窓ガラスをつつく音がする。
果たしてそれは同僚の小さな拳のもので、手元で鍵を操作すればするりと少女二人が後部座席に滑り込んだ。

「Thank you for waiting. とりあえず出ましょう」

「ああ」

シートベルトを掛けるのも待たずに車を発進させる。

「あ、あの! 絆理ちゃんは無事なの!? 天井さんが治療の手伝いをしてくれたってホント?」

「無事に助けるために力を貸してほしいんだ。
 治療に関しては私はほんの手伝いだけだったが、彼女らの先生や主治医も皆、枝先君達を探して動いている。
 勿論私達も全力で助けに行く」

「私もできることなら何でもする! でも、声が聞こえない……さっきからずっと聞こえないの……」

俯いてしまう少女の肩を、布束が静かにさする。
年の離れた二人はどちらも、痛みを堪えるように睫毛を伏せた。

「今は眠っているのだと思うわ。Afterward, 目覚めてからの声が一番の手掛かりなのよ。
 こちらから話しかけられなくとも、きっと唯一の連絡手段をお友達も頼ってくるはず」

「うん……。絆理ちゃん……!」

ぎゅっと祈るように両手を握る春上。
背を丸めた小さな姿に唇を噛みながら、天井はバックミラーから前景に意識を戻した。

(一旦保護はできたものの、どこに向かうか……。
 外出時を狙った手口や、そもそも春上はターゲットでないことを鑑みると私達が強硬手段を受ける可能性は低いが)

交差点の赤信号にタイヤを止める。
片道一車線の小道は、九十度づつ真っ直ぐに伸びている。




>>+2
どこに向かうか
 a. 長点の研究室
 b. 木山と合流する
 c. 冥土帰しの病院
 d. 自宅
 e. その他(具体的にお書きください)

※選択肢、eの自由記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


・今日(8/24 26:56)はこれだけですん……
 再来週までにまた来ます
 いつもお付き合いありがとうございます



・すみません……ちょっと書けないのでお休みします
 来週の三連休かその次の飛び石連休には、多分



・すみません時間と気力がなかったです……
 数日以内には別途予定を書きに来ます


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年02月23日 (火) 00:35:09   ID: eVMc5mnv

禁書ssの中でも珍しい、天井亜雄を主人公とした、禁書ssの中でも良作。
個人的な見所は、やはり安価が絡む場面。
天井はこの世界でも運が悪く、結構な頻度で安価が酷い物になっている。 
それでも懸命に生きようと様々な努力をする天井の姿。
この作品は途中で更新が止まっており、非常に面白かったので本当に残念
個人的に更新が再開して欲しい作品No.1の作品です。

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