朋「ほたるちゃん、明日からワンステップスでのライブに向けて練習だっけ？」

ほたる「はい……！　頑張ります……！」

智絵里「これからは朋さんとふたりで頑張っていくからねっ」

朋「脱退ではないからね」

ほたる「智絵里さんもよくキャンディーアイランドやピンキーキュートで活動してますが……」

智絵里「あれはビジネス上の関係だから……」

朋「怒られなさい」

ほたる「朋さんも、ソロの撮影のお仕事が長く入っているんですよね？」

朋「そうなの！　なんかおっきいお仕事みたいでね！」

智絵里「おめでとうございますっ」

朋「確か予定表には”SSR撮影！”って書いてあったんだけど……」

ほたる「SSR……？」

智絵里「(S)すっごく(S)素敵で(R)立派な朋さん……？」

ほたる「(S)素晴らしく(S)セクシーで(R)理想的な朋さん……？」

朋「ハードル高い……」

朋「と、ともあれ、頑張ってくるわよ！」

ほたる「智絵里さんは少しの間、お留守番ですね」

朋「そう考えると珍しいわね？　智絵里ちゃんが忙しくて……って感じの流れはけっこうあったけど」

智絵里「ふたりが人気になってきた証拠ですよっ」

ほたる「寂しいかもしれませんが、我慢してくださいね？」

智絵里「むっ！　ばかにされてる気がするっ」

朋「ま、まあまあ」

智絵里「ほたるちゃんこそ、寂しくて乃々ちゃんと裕美ちゃんに迷惑かけちゃダメだよっ、あ、どうせ不運で迷惑かけちゃうかもだけどねっ」ｸｽｯ

ほたる「……どうしてそういうことを言うんですか……？」ｸﾞｽｯ

智絵里「ぴうっ！？　い、いいいいまのはちょっとしたじょうだんというかなんというか……」ﾜﾀﾜﾀ

ほたる「まあウソですけれど……では、行ってきますね」ﾄｺﾄｺ

智絵里「もーっ！！！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

朋（強い……）

～数日後：事務所～


智絵里「……」

智絵里「……」

智絵里「……」

智絵里「……寂しい(寂しい) #寂しい」★寂しいーー！

智絵里「はっ！　寂しすぎてハッシュタグとよく漫画の最後のページにあるあおり文みたいなやつで表現しちゃいました……」

智絵里「電話しようかな……で、でも、ふたりも頑張ってるんだし……」

智絵里「いつ戻ってくるんだっけ……」

智絵里「かな子ちゃんとか美穂ちゃんとかに……でも、朋さん（とまあ、一応ほたるちゃんも）がいなくて寂しいのに他の娘に電話しても悪いよね……」

※よくわからないところでいい子

智絵里「これからもこんな状況はよくあるかもだし……」ｼｭﾝ

智絵里「……あ」

智絵里「……そうだ……！」

智絵里「こういう時のために、朋さんとほたるちゃんに近い人を探しておけば……！」

智絵里「名付けて”ジェネリック朋さんとジェネリックほたるちゃん大作戦”！」

智絵里「これはいいアイデアかもです……っ！」

智絵里「まずはジェネリック朋さん……！」

智絵里「わたしやほたるちゃんに優しく、でも時には厳しく叱ってくれて……」

智絵里「年上で……ツッコミも上手くて……困った時に頼りになる……」

智絵里「……！」ﾋﾟｰﾝ

智絵里「……」ﾄｺﾄｺ

～カフェ～


ほたるの元先輩で現在はカフェの店員さん「待て待て待て待て」

智絵里「？」

店員「よくそんな屈託のない目で見れるわねアンタ頭おかしいんじゃないの？？？」

智絵里「緒方智絵里ですっ☆」ｷｬﾙﾝｯ

店員「知ってるわよ！！！」

智絵里「もう先輩しかいないかなって思いまして……」

店員「そもそも事務所の中で探すのがセオリーでしょ！！　いきなり部外者のところに来るなってかアンタの先輩じゃない！！！」

智絵里（やっぱりツッコミは完璧……！）

店員「というか私、このシリーズ前作も出てるんだけど！　モブの立ち位置でいたいんだから連続起用しないでよ！！！」

智絵里（ちょっとメタい……！）

智絵里「いいんですか……？」

店員「は？」

智絵里「わたし、”お客さん”ですよ……？」ﾌﾌﾌ

店員「最低すぎるでしょ」

智絵里「食べ○グに書いてもいいんですよ……？」ﾌﾌﾌ

店員「何よ、悪評でも広めるつもり！？」

智絵里「”アイドル顔負けの可愛さとスタイルの美人店員さんがいる最高のお店です”って……」ﾌﾌﾌ

店員「アンタ本当に何なの？」

智絵里「では、交渉は決裂ということで……」

店員「交渉らしき選択肢は何一つ提示されなかったけど……」

智絵里「他をあたりますね……」ｼｭﾝ

店員「……」

智絵里「ごちそうさまでした……」ｼｭﾝ

店員「ああ、もう！　寂しかったら話ぐらいなら聞いてあげるから！　アイドルが俯いて歩くんじゃないわよ！」

智絵里「先輩……！」

店員「まったく……」

智絵里「ちょっとチョロいところも朋さんに近いですねっ！」

店員「帰れ！！！」

～事務所～


智絵里「次は、ジェネリックほたるちゃんを探さなきゃ……」

智絵里「年下で、背がわたしより高くて、何を言っても凹まなくて……」

智絵里「困難にも負けず、自分を持っていて、自己犠牲精神があって、なんだかんだ可愛くて……」

智絵里「って、べ、別にほたるちゃんのことなんてなんとも思ってないんだからっ！！！」ﾋﾞｼｯ

智絵里「……」

智絵里「……」

ｶﾞﾁｬ

智絵里「ひゃっ！？」

乙倉悠貴「あれ？　話し声が聞こえたんですけど、智絵里さんひとりですかっ？」ﾄｺﾄｺ

智絵里「う、うんっ！　お、おはよう……はっ！」

悠貴「？」

智絵里（年下で背が高い……！　へこたれなそうだし、可愛い……！）

悠貴「わ、私の顔、なにかついてますか？」

智絵里「悠貴ちゃん……！」

悠貴「は、はいっ！」

智絵里「お姉さんに甘えていいんだよ……」ﾄﾞﾔ

悠貴「？？？」

悠貴「え、えっと……？」

智絵里「はっ！　でも、ジェネリックほたるちゃんになるにはこの質問に答えてもらわなきゃっ」

悠貴「ジェネリックほたるちゃん……？？？」

智絵里「朋さんについて、どう思う？」

悠貴「えっと、朋さんですか？　すっごく素敵なお姉さんだと思いますっ！」

智絵里「うんうんっ」

悠貴「いつも気さくに話しかけてくれて、よく占ってくれますし、周りにいつも人がいますよねっ」

智絵里「うんうんっ」

悠貴「でも真剣な表情とかはかっこいいし、かわいい服も似合ってすごいですっ！　私もあんな風になりたいな……」

智絵里「悠貴ちゃん……！」

悠貴「は、はいっ！」

智絵里「合格だよ……！」ｷﾞｭｰ

悠貴「え、ええっ！？」

智絵里「もうほたるちゃんの代わりに悠貴ちゃんでもいいくらい……」ｷﾞｭｰ

悠貴「よ、よくわからないですけどっ……」

智絵里「逸材だね……！」

悠貴「でも、智絵里さんもすっごく可愛いと思いますっ！」

智絵里「……へ？」

悠貴「すっごく守ってあげたくなるというか、キュートってこういうことなんだなって、いつも思いますし！」ｷﾗｷﾗ

智絵里「ゆ、悠貴ちゃん……？」

悠貴「歌も踊りもとっても可愛くって、何回見ても見惚れちゃいますっ！」ｷﾗｷﾗ

智絵里「べ、別にわたしのことは……」ｶｧｧｧｧｧ

悠貴「可愛い智絵里さんは、私にとっても憧れのアイドルでーー」ｷﾗｷﾗ

智絵里「ほ、ほたるちゃんの目はもっと濁ってなきゃっ！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

悠貴「あっ！　ち、智絵里さーん！？」

～廊下～


智絵里「うう……あんな目が輝いたほたるちゃんはいないもん……」ﾄｺﾄｺ

智絵里「難しいなぁ……」ﾄｺﾄｺ

智絵里「やっぱり、2人同時に探した方がいいのかも……！」ﾄｺﾄｺ

智絵里「頼りになるけどたまにお茶目な年上と、ちょっと目が濁ってる系の年下……！」ﾄｺﾄｺ

智絵里「どこかに都合よくいないかな……？」ﾄｺﾄｺ

宮本フレデリカ「でねでね？　その時のネギちゃんが面白くって！」ﾄｺﾄｺ

橘ありす「颯さんと別行動にしちゃダメですって……あ」ﾄｺﾄｺ

フレデリカ「あ！　智絵里ちゃんだ！」

ありす「おひとりですか？　珍しいですね」

智絵里（お茶目だけどちゃんと周りを見ている年上……！）

フレデリカ「？」

智絵里（それと……）ﾁﾗｯ

ありす「？」

智絵里「ありすちゃん……もう少し、淀んだ目をしてくれるかな……？」

ありす「そんな物騒なオーダーされたのは生まれて初めてです」

フレデリカ「どうしたの？」

智絵里「やっぱり朋さんとほたるちゃんじゃなきゃ……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

ありす「質問には答えてくれない感じですね」

智絵里「はぁ……」

ありす「でも、朋さんとほたるさんならさっき……」

智絵里「おとなしく戻ろう……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

ありす「って、聞いてない……」

フレデリカ「今なら智絵里ちゃんの頭にフランス国旗とか立ててもバレないかな！？」ﾜｸﾜｸ

ありす「やめましょう」

～元の部屋～


ｶﾞﾁｬ

智絵里「はぁ……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

朋「あ！　智絵里ちゃんいた！」

ほたる「ちょうど席を外していただけでしたね」

智絵里「はぁ……とうとう幻覚まで……」

朋「？」

ほたる「智絵里さん？」

智絵里「ぎゅー」ｷﾞｭｰ

ほたる「ち、智絵里さん……！？」

智絵里「……最近の幻覚には質量があるんだね……じゃあ次は」

朋「？」

智絵里「ぎゅー」ｷﾞｭｰ

朋「あら、今日はあまえんぼうさんね？　よしよし」

智絵里「ふぅ……」

智絵里「……」

智絵里「……」

智絵里「……あれ？」

朋「あ、気づいた？」

智絵里「……」

智絵里「……」ｶｧｧｧｧｧｧ

ほたる「顔、真っ赤ですが……」

智絵里「……」

智絵里「……ふたりの頭を叩いて記憶を飛ばします」ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

朋「て、照れ隠しにしてももうちょい平和的にいきましょ！？」

～～～～～～～～～～～～～～～


智絵里「ええと……いつの間に戻っていたんですか……？」

ほたる「私はちょうど、イベントがひと段落ついたので……」

朋「あたしも撮影がいい感じに進んでね。もうちょっと残ってるけど」

ほたる「ちょうど、私の写真が上がってきたところなんです」

朋「これ見てよ智絵里ちゃん！　ほたるちゃんが乃々ちゃんにビーズを引っかけちゃって！」

ほたる「うう……恥ずかしいです……」

智絵里「ほたるちゃん……ちゃんと『エメラルドスプラッシュ！』って言った？」

朋「そこ？　ちゃんと謝ったとかじゃなくて？」

ほたる「緑色以外のビーズも混ざってたので……」

朋「真面目に答えなくていいから」

朋「こっちの写真は？」

智絵里「わぁ、美味しそうなケーキ……！」

朋「そうね！　……あれ？　ほたるちゃんのだけ、イチゴが乗ってるの？」

ほたる「あ……いえ……私のイチゴは、トリさんが持っていってしまって……」

智絵里「トリタニサン？」

朋「いきなり撮影現場に鳥谷選手来てイチゴ奪ってったら恐怖以外のなにものでもないわよ」

ほたる「トリさんは裕美ちゃんのオデコフラッシュで撃退したんですが……」

朋「待って普通に言ったけどその技知らない」

智絵里「イチゴは落ちちゃったから、ふたりがくれたんだね」

ほたる「はい……！」

朋「ま、まあ、いい話ね……？」

ほたる「乃々さんだけは終始びっくりしていましたね……」

朋（お疲れ様……！）

ほたる「朋さんも、撮影の写真がいくつかあるんですよね？」

朋「お？　見る？　見る？」ｶﾞｻｺﾞｿ

智絵里「ぜひっ！」

ほたる「見たいですっ！」

朋「これが、あたしの部屋で撮ったオフショットのやつ！」ﾊﾞｰﾝ

智絵里「おー！（えっこれ私服？）」

ほたる「わぁ！（えっこれ私服？）」

朋「ちょっと恥ずかしいけど、こういうのもファンは求めてるもんね！」

智絵里「そ、そうですねっ（えっこれ私服？）」

ほたる「わ、私もそう思いますっ（えっこれ私服？）」

朋「あ、もしかして、気になる感じ？　気になっちゃう？」

智絵里「は、はい（えっこれ私服？）」

ほたる「は、はい（えっこれ私服？）」

朋「そうなの！　この水晶！　あたしの私物なのよ～！」

智絵里「そ、そうなんですか～（えっこれ私服？）」

ほたる「す、すごいです～（えっこれ私服？）」

朋「この服も案外着やすくてお気に入りなのよ！　あとこっちのタロットとかも、あ、ラッキーアイテムはいっかいクローゼットに詰め込ん……片づけてあるの！」

智絵里（すごい軽く流しましたけど私服だったんですね……）

ほたる（すごい軽く流しましたけど私服だったんですね……）

朋「どうかした？」

智絵里「な、なんでも」

ほたる「な、なんでも」

智絵里「で、でも朋さん、まだ撮影は終わってないんですよね？」

朋「そうなのよ～、最後に野外撮影があるみたいなの」

ほたる「いいですね……ロケ地はどこなんですか……？」

朋「よくわかんないけど、なんか……山……だって？」

ほたる「山……」

朋「まあ山って言えばパワースポットの定番だものね！　あ、よければふたりも付いてくる？　ちょっとした旅行みたいなものになると思うし！」

智絵里「いいんですかっ！？」ﾊﾟｧｧｧｧｧ

ほたる「うれしいです……！」ﾊﾟｧｧｧｧｧ

朋「ま、きっと大丈夫よ！　じゃあ、山登りで開運しちゃいましょ！」

ほたる「おー！」

智絵里「おー！」

ほたる「保険には入っておきましょうね」

朋「そういうこと言う？」

～数日後：山～


朋「着いたー！！！」

ほたる「体を動かすのは、気持ちいいですね」

智絵里「うんっ」

ほたる「この辺りで撮影なんですか？」

朋「そうみたいね？　スタッフさーん？」

朋「……ふむふむ、え？」

智絵里「？」

朋「あ、あそこ！？　あんな崖のとこ座るの！？　無理無理無理！！！！！」

ほたる「結構な高さですね……」

智絵里「でも、衣装の下に命綱も繋ぐと思いますし……」

朋「だ、だけど、衣装から綱が出るからバレちゃうじゃない！」

ほたる「そのあたりは画像を加工して見えなくするかと……」

朋「なにそれ！！！　何でもかんでも技術で誤魔化して！！！（？）　これだから先進国は！！！（？）　そもそもそんなんじゃリアリティがないでしょ！？　それならその辺のベンチに座って撮影して後から背景をCGにしても同じよ同じ！！！！　あっいやだからと言って命綱なしでいいってことじゃないからね！！！！！」ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

智絵里「よ、よくしゃべりますね……」

ほたる「わかりました」

朋「へ？」

智絵里「ほたるちゃん？」

ほたる「それなら、私が安全を証明します」ﾄｺﾄｺ

朋「い、いや、危ないわよ！」

ほたる「大丈夫です。観光の方も多く来る場所と聞いていますし、私を信頼してください」ﾆｺｯ

朋「そ、そう言われると……」

ほたる「では、行ってきま」

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

ほたる「きゃあぁぁぁぁ……」ﾋｭｰｰｰ

朋「ほたるちゃん！！！　フラグ回収が！！！　早い！！！」

智絵里「しゃったーちゃんす！！！」ｶｼｬｶｼｬｶｼｬｶｼｬ

朋「撮ってる場合じゃないから！！！！！」

朋「た、助けに行かなきゃ！」

智絵里「ま、待ってください、朋さんまで落ちちゃったら」

朋「でもほたるちゃんが！」

智絵里「ほたるちゃんなら大丈夫ですから……！」

朋「だってこんな高い崖よ！？　いくらほたるちゃんでも……」

朋「ほたるちゃんでも……」

朋「……」

朋「……」

朋「……」

朋「……平気な気がしてきたわね」

智絵里（とうとう朋さんも慣れちゃいましたね……）

ほたる「うう……」ｶﾞｼｯ

朋「が、崖を登ってきた……！？」

智絵里「ヨーヨーで阻止しなきゃ……！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

朋「なんで思考回路がネスなの！？」

ほたる「伝わりにくい会話ですね……」

朋「でもまあ、覚悟は決まったわ……！」

智絵里「が、頑張ってくださいっ！」

朋「やってやろうじゃないの……！　こんな神秘的な場所なら開運待ったなしだわ……！」

智絵里「はいっ！」

朋「じゃあ、行ってくるわね……！」

智絵里「応援してますっ！」

朋「……」

智絵里「どうかしましたか？」

朋「いや、さっきからほたるちゃんの声がしないなって……」

智絵里「ほたるちゃんなら、さっき巨大なコンドルに連れ去られました」

朋「ほたるちゃん！！！」

智絵里「あっ！　あそこ飛んでますねっ」

朋「ほたるちゃん！！！！」

智絵里「あ、落下した」

朋「ほたるちゃん！！！！！」



おわり