【バンドリ】白鷺千聖「百合度を測定する機械」【コンマとか】 (267)


――芸能事務所――

白鷺千聖(8月某日。事務所に赴くと、私宛の小包が届いていると事務所のスタッフに言われた)

千聖(ファンの方からのプレゼントかしら、とも思ったけれど、小包の差出人の名前を見れば、そこには【弦巻技術研究所】という文字があった)

千聖「確か次のライブのスポンサーが弦巻財閥のグループ会社のひとつ、だったわね。何かそれに関係することかしら……」

千聖「とにかく箱の中身を見てみましょう」ゴソゴソ

千聖「ええと……なにかしら、これ。ストップウォッチみたいな機械に……手紙と冊子?」

千聖「とりあえず、手紙を読んでみましょうか」ペラ


“拝啓 猛暑到来となりましたが、白鷺千聖様には変わらずお元気にお過ごしのことと存じます。”


千聖(とか、そんな時候の挨拶に始まった手紙)

千聖(その文面を要約すると、弦巻技研が新しい機械を発明したので、そのモニターをお願いしたい、ということだった)

千聖「まぁ、大事なスポンサー様からのお願いだもの。無下には出来ないわね。それでこれは……『百合度を測定する機械』……?」

千聖「百合度……百合って花の? ……ああ、じゃなくてアレね。いわゆる女性同士の恋愛、ガールズラブとかって言われる。で、それを私に測定してまわれと……」


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千聖「…………」

千聖「……えぇ」

千聖「…………」

千聖「えぇ……」

千聖(なんでそんなものを作ろうと思ったのか。どうしてそんなものを作ってしまったのか)

千聖(そしてなにより、何故私にそのモニターを依頼したのか)

千聖(ただでさえ最近は『パスパレ内で誰と誰がデキている』なんていう根も葉もない憶測がファンの間で飛び交っているのに……)

千聖「けど……スポンサーからの直々のお願い、なのよね……」

千聖「やらないとダメ……よね……。はぁ……」

千聖(ええと、この冊子が説明書かしら……)ペラ



“使い方は簡単で、対象に機械の背を向けてボタンを押せば、それだけで測定は済みます。”


千聖「なんなのよその無駄な謎技術は……そういうのはもっとこう、世界平和のためにでも使いなさいよ……」


“数値は01~100までで表示されます。測定された数値によって、概ね以下のように分類することが出来ます。

01~30
一般女子レベル

31~50
やや素質があるレベル

51~70
雰囲気に流されるレベル

70~76、78~80
同性と手を繋ぐ、一緒にお風呂に入ったりお布団に入るなどのスキンシップを積極的にしたがるレベル

77
男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思うレベル

81~90
愛に性別という概念はないレベル”


千聖「……いやダメでしょうこれ」

千聖「イヴちゃんの純粋無垢なハグは……これに入らないわよね……」

千聖「しかも90まででこれって……この先を見るのが怖いんだけど……」

千聖(……けど、スポンサーからの依頼という言葉が胸中に重く響く。ああ、読まないとダメだ。白鷺千聖はそういう風に出来てしまっているから)ペラ


“91~95
ガチ

96~99
ノンケだって構わず襲っちゃう系女子

100
【検閲済み】”


千聖「…………」パタン

千聖(冊子を閉じて、天を仰いだ。事務所の見慣れた天井がいつもより高く見えた。煌々としたLED蛍光灯の光がやたらと目に刺さる)

千聖「まさか、いないわよね。身近にこんなに数値の高い女の子は……」

千聖(正直、やりたくない。やりたくなくて仕方がない。実は日菜ちゃんとかその辺りに送るつもりのものが間違って私に届いてしまったんじゃないかと思いたかった)


“拝啓 猛暑到来となりましたが、白鷺千聖様には変わらずお元気にお過ごしのことと存じます。”


千聖(けれど何度見ても手紙の時候の挨拶には私の名前があって、つまりそれはスポンサー様から直々に名指しで指名を受けているのは間違いがないことで、そうなってしまっている以上私がやらないとダメな訳で……)

千聖「はぁ……仕方ない……やらないといけないわね……でも……」

千聖「…………」

千聖(個人としての白鷺千聖の正直な気持ちと、芸能人としての白鷺千聖の責任感が秤にかけられる)

千聖(けど、言うまでもなくすぐにそれはプロとしての白鷺千聖の方に傾いた)

千聖(こうなったらプラス思考だ。純粋なイヴちゃんとか花音にこんなふざけたものが送られなかっただけ幾分かマシだ)

千聖「……でもやっぱり動きたくないわね……もうしばらくこのまま――」

――ガチャ

丸山彩「おはようございまーす!」

千聖「…………」

彩「あ、千聖ちゃん! おはよー!」

千聖「……ええ、おはよう……彩ちゃん……」

千聖(どうしてあなたはこう、そういう空気をこれ以上なく読んだ場面でいつも姿を現すのかしら。実は扉の裏で待機していたんじゃないかしら)

千聖(なんて悪態を心の中でつくけれど、こうなってしまった以上は仕方なかった)

千聖(これもきっとさっさと前へススメ! という神様の思し召しなんでしょう。神様なんてそんなに信じていないけれど)ポチ


丸山彩の百合度
↓1


丸山彩の百合度 【01】


千聖(そうよね、普通こんなものよね)ホッ

彩「どうしたの、千聖ちゃん? なんだかすごい安心した顔してるけど」

千聖「いいえ、なんでもないわ。こっちの話よ」

彩「そう?」

千聖「ええ」

千聖(……よし、彩ちゃんにはちょっと申し訳ないけれど、私のこの変な依頼に付き合ってもらおう)

千聖(花音も彩ちゃんも「ひとりじゃないんだから」って歌っていたし、ちょっとくらいいいわよね)

千聖「ねぇ彩ちゃん」

彩「うん?」

千聖「ちょっと申し訳ないんだけど、今日のレッスンが終わったら少し付き合ってくれないかしら」

彩「うん、特に予定もないからいいよ。なにかお買い物とか?」

千聖「ええっとね、ちょっとモニターのお仕事を頼まれて……ひとりで回るのも(精神的に)大変だから、一緒に来てほしいのよ」

彩「分かったよ!」

千聖「ありがとう、彩ちゃん」

彩「ううん、どういたしまして! えへへ、千聖ちゃんに頼られるとなんだか嬉しいなっ」

千聖(よかった……彩ちゃんはイメージ通りの普通の女の子だったわ。その言葉も純粋な気持ちからでしょうし)

彩「あ、そろそろレッスンの時間だね。一緒に行こっか」

千聖「ええ、そうね」ニッコリ

彩(さっきはなんだか疲れた顔してた気がしたけど、千聖ちゃん、元気そうで良かったなぁ)


……………………


――レッスンルーム――

――ジャーン...♪

千聖「ふぅ、今日はこんなところかしらね」

若宮イヴ「はい! 今日も精一杯精進しました!」

氷川日菜「ブシドーだね!」

イヴ「はい! ブシドーです!」

日菜&イヴ「ブシドー!」

彩「うぅー……結構リズム外しちゃったなぁ……」

大和麻弥「大丈夫ですよ、彩さん。あれくらいの走りだったらジブンたちでカバー出来ますから」

千聖「そうよ。麻弥ちゃんほどには上手く出来ないけど、私も出来る範囲でカバーはするから」

彩「うん……ありがとね、麻弥ちゃん、千聖ちゃん」

麻弥「いえいえ」

千聖「どういたしまして」

千聖(……さて、レッスンが終わってしまったということは、これから本気であの機械のモニターをしないといけない訳だけど……)

千聖(とにかく数をこなしてしまおう。この場にパスパレのみんながいるのだから、パパっとボタンを押してパパっと数値を記録してしまおう)

千聖(正直気が乗らないけど……)ポチ、ポチ、ポチ


若宮イヴの百合度↓1

氷川日菜の百合度↓2

大和麻弥の百合度↓3


若宮イヴ 【08】

千聖(よかった、イヴちゃんはやっぱり純粋だった)

氷川日菜 【03】

千聖(日菜ちゃんも信じていたわ。紗夜ちゃんにべったりなのは甘えん坊な妹さんだからよね。やっぱりパスパレは清いアイドルバン)

大和麻弥 【89】

千聖「」


日菜「あれ? なんか千聖ちゃん固まってるけど、どーかしたの?」

イヴ「大丈夫ですか?」

千聖「え、ええ、ええ……だいじょうぶ、よ……」

千聖(何かの間違いよね……)チラ

【89】

千聖(そんなまさか……)チラ

【89】

千聖(さ、三度目の正直……)チラ

【大和麻弥さんは愛に性別という概念はないレベルです】

千聖「」


麻弥「あの、千聖さん? さっきから自分の手元とジブンを見比べてますけど……どうかしましたか?」

千聖「え!? え、いえ、べ、別に……コホン」

千聖「えーっと、麻弥ちゃん?」

麻弥「はい?」

千聖「つかぬことを聞くけど……あのね? 最近、特に仲良くしてる女の子って誰がいるかしら……?」

千聖(なんでこんなことを聞いてしまったのか)

千聖(怖いもの見たさか、はたまたまだ現実を受け入れられないのか、それとも実は機械が故障しているという可能性に賭けたのか……)

麻弥「仲良く、ですか? そうですね……↓1ですかね」

※バンドリ内のキャラクターでお願いします


麻弥「薫さんですかね」

千聖「え、薫?」

麻弥「はい。薫さんとは演劇部での付き合いも長いですし、あれで面倒見もすごくいいですし」

千聖「そ、そう……」

千聖(……薫は演劇に限ればまともだし、同じ部活なら仲良くするのは普通よね)

麻弥「この前もジブンの相談に乗ってもらいました。なんでしょうね、薫さんの不思議な包容力と言いますか……あんまりこっちの話を聞いてる風には思えないのに、どうしてか心を的確に突く言葉をくれますよね」

千聖「…………」

麻弥「あ、この人の前でなら強がらなくてもいいんだ……なんて思わせてくれる不思議な魅力があって、それでいて容姿は端麗ですし、ジブンも舞台袖からよく薫さんを見つめてますよ」

千聖「…………」

麻弥「ステージライトに照らされた薫さんの輝く横顔……たまにそれを思い起こすと、こう、得も言われぬ高揚感が身体を駆け巡って……フ、フヘ、フヘヘヘヘ……」

千聖(あ、これ多分ダメなやつだわ)

麻弥「……でも、薫さんってやっぱり人気ですよね。世界から祝福された天性の主役といいますか……いつでも女の子にキャーキャー言われてますし。いえ、別に気になんてしてないですよ? でもたまに思いますよね。黄色い声援を浴びせていますけど、じゃあみんなはどれだけ薫さんのことを分かってるんですかって。ジブンはずっと、演劇部に入ってからずーっと一緒でしたよって言いたくなりますよ」

千聖(……確実にダメなやつだわ)


麻弥「でもジブンも本当は分かっているんです。一応アイドルですし、ジブンのことを好きでいてくれるファンは本当にありがたい存在で、きっと薫さんのことを追いかける人たちもそうなんだなぁって。だけどどうしても割り切れない想いがあるといいますか、正直薫さんと幼馴染の千聖さ――」

千聖「あーっともうこんな時間ね! ごめんなさい麻弥ちゃん変なこと聞いてしまって!」

麻弥「あ、本当ですね。もうそろそろ次の仕事の準備をしないといけません」

千聖「ええ! それじゃあお仕事頑張ってね、麻弥ちゃん! さ、彩ちゃんは私と一緒に行きましょうか!」グイ

彩「え? ちょ、ち、千聖ちゃん!? そんなに急に引っ張らないでぇぇ――……」

日菜「あはは、変な千聖ちゃん」

イヴ「千聖さん、元気そうで良かったです!」

麻弥「……そうですね」

麻弥(危なかった……思わず千聖さんにちょっと嫉妬してる、なんて口を滑らせるところだった……ギリギリセーフ……)


……………………


――会議室――

千聖「この機械、本物なのね……音楽以外であんな饒舌な麻弥ちゃん、初めて見たわ……」

彩「はー、さっぱりしたぁ。レッスン後のシャワーってなんでこんなに気持ちいいんだろうね」

千聖「……今の私には彩ちゃんだけが救いだわ」

彩「え、なにが?」

千聖「こっちの話よ。ところで彩ちゃん」

彩「どうしたの?」

千聖「さっき言ったモニターのお仕事の関係で、他のバンドのみんなに会わないといけないんだけど……誰がどこにいるかって何か心当たりあるかしら?」

彩「うーん……あ、↓1ちゃんなら」


彩「燐子ちゃんなら、昨日メッセージのやり取りしてたから知ってるよ」

千聖「本当? 教えてもらってもいいかしら」

彩「うん。近々ロゼリアの衣装を改良するから、今日は図書館に服飾の本を読みに行くって言ってたよ」

千聖「図書館……商店街の外れのところかしら」

彩「そこだね」

千聖「分かったわ。それじゃあ図書館に行きましょうか」

彩「オッケー!」


――図書館――

白金燐子「…………」ペラ、ペラ

彩「あ、いたいた。おーい、燐子ちゃーん!」

燐子「きゃ……!」ビク

千聖「彩ちゃん、図書館で大きな声を出しちゃダメでしょう?」

彩「っとと、そうだった。ごめんね、燐子ちゃん」

燐子「い、いえ……えっと、丸山さんに白鷺さん……?」

千聖「本を読んでるところ悪いわね。ちょっと手伝って貰いたいことがあって……」

燐子「お手伝い……ですか……? え、えと……わたしに出来ることなら……」

千聖「ありがとう。時間は取らせないわ。私もこんなことはすぐに終わらせたいし」ポチ

燐子「は、はぁ……?」


白金燐子の百合度↓1


白金燐子 【88】

千聖「えっ」

燐子「あの……どうかしましたか……?」

千聖「え、いえ、えーっと……」

彩「どうしたの、千聖ちゃん? やっぱり疲れてたりとか……」

千聖「だ、大丈夫よ。ちょっと思わぬ数値だったから……」

燐子「数値……?」

彩(なんの数値なんだろ?)

千聖「り、燐子ちゃん? その、ちょっと聞きたいんだけど、最近……特によくお話したりする女の子って誰がいるかしら……?」

燐子「特によくお話……↓1……かな……」


燐子「氷川さん……かな……」

千聖「あ、ああ、紗夜ちゃん……そうよね、同じバンドだし、生徒会と風紀委員でよく一緒だし……」

彩「そういえば夏休み前、一緒に学校の中庭のベンチでお弁当食べてたよね」

燐子「あ……はい……見てたんですね……」

彩「うん。結構目立つところに座ってたから、ちょっと目に付いたんだ」

燐子「そうですか……ふふ、よかった……」

千聖「……よかった?」

燐子「いえ……なんでもないです……」

彩「珍しいね、ふたりが中庭でお弁当食べるなんて」

燐子「うん……たまには外もいいかな、って……わたしがお弁当を作って来て、氷川さんを誘ったんです……」

千聖「え、燐子ちゃんが紗夜ちゃんのお弁当も作ったの?」

燐子「いつも氷川さんは……クッキーを作って来てくれますから……ちゃんとお返しをしないとって……ずっと思ってたんです……」

燐子「やっぱりわたしたちの関係は……互い互いに与え合い、支え合う……そういう方が素敵ですから……」

千聖「…………」

千聖(なんだろう、普通のセリフのハズなのに……何か違う意味が込められているような気が……)


彩「へ~! いいなぁ、紗夜ちゃん。私も燐子ちゃんのお弁当、食べてみたいなぁ」

燐子「ごめんなさい……あれは氷川さんのためだけに、わたしが作ったものなので……あれを目にしていいのは……食べていいのは……氷川さんだけなので……」

彩「そっかぁ。それじゃあ、今度私もお弁当作ってくるから、みんなでおかずの交換とかしようよ!」

燐子「そう……ですね……時間が合えば……是非……」

千聖「…………」

千聖(……燐子ちゃんからこう、妙なプレッシャーを感じるのは何故なのかしら)

彩「わーい、楽しみだなぁ。花音ちゃんも誘って、3年生5人で一緒にお弁当パーティー!」

千聖「……ああ、もう私も頭数に入っているのね」

燐子「ええ……楽しみです……」

燐子(学校のいろんな人に……氷川さんの隣はわたしのだって……もっとアピール出来るから……)

燐子「ふふ……既成事実……氷川さんは誰にも渡さない……」

千聖「え、燐子ちゃん……?」

燐子「……なんでもないですよ……?」

千聖「そ、そう? そうよね」

千聖(やたら物騒な響きの声は……あれよね、きっと冷房の音がなにか変に響いたんでしょう)

燐子「はい……。ところで……お手伝いって何をすれば……?」

千聖「あー、それはもう済んだから大丈夫よ」


燐子「あ……そうなんですね……」

千聖「ごめんなさいね、忙しいのに時間を取らせて」

燐子「いえ……わたしもいい機会を頂いたので……」

千聖「そ、そう」

燐子「はい……」

千聖(いい機会……なんのいい機会なのかしら……知りたいけど知りたくないような……)

燐子(氷川さんのことを考えたら……また会いたくなってきちゃったな……。氷川さんのスリーサイズ……「ロゼリアの衣装を新調する」って言って……また計らせてもらおう……えへへ……)

彩(みんなでお弁当、楽しみだなぁ~)


……………………


――商店街――

彩「外は暑いね~。涼しいところから出ると余計に暑いよ」

千聖「そうね。図書館はいろんな意味で寒々としていたから」

彩「いろんな意味?」

千聖「お願い、彩ちゃんは知らないでいて。そのままでいて」

彩「うーん?」

↓1「あれ……」


氷川紗夜「丸山さんに白鷺さん」

彩「あ、紗夜ちゃん! こんにちは!」

紗夜「ええ、こんにちは」

千聖「……こんにちは」

千聖(あの燐子ちゃんの後に紗夜ちゃん……?)

千聖(え、なんなのこの巡り合わせは)

彩「紗夜ちゃんはお買い物?」

紗夜「ええ、そんなところです」

彩「そっか。それじゃあ、ちょっとだけ時間もらっても平気?」

紗夜「急ぎではないから構いませんが……何かあったんですか?」

彩「うん。千聖ちゃんがちょっと仕事で。ね、千聖ちゃん」

千聖「え、ええ。すぐに終わるから時間は取らせないわ」

紗夜「分かりました。それで、私は何をすれば?」

千聖「……そこに立っているだけで済んでくれれば一番助かるわね」

紗夜「はい?」

千聖(どんな結果になるのか……正直ちょっと怖いけど……)ポチ


氷川紗夜の百合度↓1


氷川紗夜 【52】

千聖(52……まぁ普通の数値かしらね。よかっ――あれ?)

千聖(52……52の説明って確か……)

【雰囲気に流されるレベル】

千聖(…………)

千聖「一番ダメじゃないかしらこれ!?」

彩「きゃっ」

紗夜「わっ」

彩「ど、どうしたの、千聖ちゃん!?」

千聖「あ、えーっと……なんでもないわ、よ……?」

紗夜「大丈夫ですか? もし日菜が迷惑をかけているようなら遠慮なく言ってください」

千聖「ええ、大丈夫……日菜ちゃんとイヴちゃんと彩ちゃんだけが今のところ私の支えだから……」

紗夜「そ、そうですか……」


千聖「えぇーっと、それより紗夜ちゃん」

紗夜「はい?」

千聖「あの……さっきね、燐子ちゃんと会って……お弁当を一緒に食べたって」

紗夜「ああ。いつも私と今井さんがロゼリアにクッキーを差し入れるので、お返しだと言ってわざわざ作って来てくれたのよ」

千聖「……何か、こう、変わったものとか入ってなかった?」

紗夜「変わったもの……あ」

千聖「えっ!?」

千聖(心当たりが……!?)

紗夜「白金さん、ハンバーグに私が苦手なニンジンをすり下ろして入れていたようで……少し驚いたわね」

彩(ニンジン嫌いなんだ。かわいいなぁ)

千聖「そ、そう、ニンジン……それくらいなら……」

紗夜「どうして入れたのか聞いたら、」



燐子『駄目ですよ……好き嫌いしたら……ちゃんと栄養バランスよくものを食べないと……将来早死にしてしまいますから……』


燐子『そうしたら……わたしと一緒にいられる時間も……少なくなっちゃいますからね……?』


燐子『一秒でも……一瞬でも長く……一緒にいたいですから……ね?』


紗夜「なんて言われたわね」

千聖「」

紗夜「白金さんもたまには変な冗談を言うのね、と思ったわ」

千聖(お願い、その言葉には冗談のひとかけらも入っていないことに早く気付いて……)

彩「あ、お弁当といえば、二学期になったらみんなでお弁当パーティーするって決めたんだ! 紗夜ちゃんも参加してね!」

紗夜「ええ、分かりました。あんなに手の込んだものを作って来てくれた白金さんにもお返しをしないといけませんし、羽沢さんに料理を教えてもらおうかしら」

千聖(その料理教室の開催には燐子ちゃんが気付きませんように……)


ピロン♪

紗夜「おや? 噂をすれば白金さんから……」

千聖「え」

紗夜「……なるほど」

千聖「り、燐子ちゃんはなんて?」

紗夜「新しいロゼリアの衣装を考えるために図書館にいるので、よかったら相談相手になってくれませんか……とのことです」

千聖「…………」

紗夜「私の買い物はいつでもいいものだし、白金さんを手伝いに行こうかしらね。……あ、その前に白鷺さんの手伝いがまだ」

千聖「ううん、いいのよ。もう終わったから」

紗夜「え?」

千聖「大丈夫。平気。紗夜ちゃん、燐子ちゃんのところに行ってあげて?」

紗夜「は、はぁ……」

千聖「私から言えることはひとつだけしかないわ。頑張って。気を確かに持ってね、紗夜ちゃん」

紗夜「えーと、ありがとうございます……?」

彩「それじゃあまたね、紗夜ちゃん!」

紗夜「え、ええ。それでは」スタスタ


千聖「……いってしまったわね」

千聖(これでよかったんだろうか。何かこう、紗夜ちゃんを見捨ててしまったような罪悪感が……)


↓1「おや」

↓2「こんにちは」


青葉モカ「彩さんに千聖さ~ん、やっほ~」

今井リサ「やっほー☆」

彩「やっほー!」

千聖「……やっほー?」

彩「ふたりとも、お出かけ?」

モカ「そうですよ~、デートですデート~。デートコースはやまぶきベーカリーのあと、コンビニに4時間~」

リサ「このあと一緒にバイトなんだ。せっかくだし、一緒にどこかブラついてから行こうよって感じ」

彩「そうなんだ。じゃあちょっとだけ時間、あるかな?」

リサ「うん、大丈夫だよ」

モカ「何かあったんですか~?」

千聖「えぇと、少し手伝ってほしいことがあるのよ」

リサ「手伝い?」

モカ「おー? まさかパスパレの手伝いですか?」

千聖「まぁ……そんなところかしら、ね……」

モカ「おー、ついにモカちゃんもアイドルデビューかぁ。ビッグになってもアフターグロウのみんなのことは忘れないからね……」

リサ「こらこら、そんな大きなことじゃないでしょ」

千聖「……そうね。そんな大きなことじゃないといいんだけれど……」

モカ「?」

リサ「なんだか疲れた顔してるね? 大丈夫、千聖?」

千聖「ええ、ありがとう。大丈夫よ、たぶん」ポチ、ポチ


青葉モカの百合度↓1

今井リサの百合度↓2


青葉モカ 【86】

千聖(ま、またこんなに数値の高い子が……)

今井リサ 【61】

千聖(リサちゃんも雰囲気に流されるレベル……)

彩「千聖ちゃん? なんだかすごいげんなりしてるけど平気?」

リサ「大丈夫? どこか涼しいところでも行こうか?」

モカ「あ、それなら図書館がおすすめですよー。静かで涼しくて、ボーっとするのに最適~」

千聖「ごめんなさい、今だけは図書館に行きたくないわ……」

彩「さっき行ったばっかりだもんね」

千聖「……ええ。今あそこに行くのは真夜中の樹海に自ら足を踏み入れるようなものよ」

リサ「樹海?」

千聖「こっちの話。それより、ええと、モカちゃん?」

モカ「はい~?」

千聖「……あなたたちって、幼馴染同士仲が良いわよね?」

モカ「そりゃあもう~。長い付き合いですからなぁ」

千聖「つかぬことを聞くけど……モカちゃんは誰と一番仲がいいのかしら? あ、別にアフターグロウ以外でもいいんだけど……」

モカ「あたしですか? そーですねぇ、↓1ですかねぇ」


モカ「はぐですかねぇ~」

千聖「はぐって、はぐみちゃん?」

モカ「ですです~」

彩「へー、そうなんだ。なんだか意外」

モカ「はぐも商店街組ですからね~。アフターグロウと商店街は切っても切り離せないのですよ~」

リサ「あー、そういえば最近はパンと一緒にコロッケもたくさん買ってくるもんね。アタシにもくれるし」

モカ「やー、パンならいくつでも食べられるんですけど、流石にコロッケはうら若き美少女の身体には重たくて重たくて」

千聖「それなら買う量を減らしたらいいんじゃないかしら」

モカ「モカちゃんもそう思うんです。毎度毎度、そう思って買いに行くんです。でも……」

北沢はぐみ『あ、モカちゃん! えへへ、いらっしゃーい! コロッケ揚げたてだよっ!』

モカ「って満面の笑みで言われるとどーにも弱くて……」

彩「はぐみちゃん、いつでも元気いっぱいで可愛いもんね」

モカ「そうなのですよ~。あの笑顔を見てしまうと、菩薩のように優しいモカちゃんはついついコロッケを買い占めてしまうのです……」

千聖「……そうね。私も近くを通りがかると、いっつも元気よく挨拶してくるし……つい買ってしまうこともあるわね」

モカ「でしょ~? それにはぐってば甘えんぼだから、一緒の布団で寝るといっつも抱き着いてきてー」

千聖「ちょっと待って」


モカ「はいー?」

千聖「え、ちょっと待って。モカちゃん、今なんて?」

モカ「一緒の布団で寝るといっつも抱き着いてきてー」

千聖「え、いや……え?」

モカ「子供の頃からの付き合いですからなぁ、お互いのお家に泊まることもそりゃあたーっくさんありますよ~」

千聖「そ、そう……よね?」

モカ「はい~。それで、あたしはおさるじゃないよ~って言っても離してくれなくて、でもやっぱり何かを抱っこしてないとなかなか寝付けないみたいで……じゃあしょーがないから、モカちゃん抱き枕の出番じゃないですか」

千聖「え、ええ……」

モカ「でもでも、最初は意地を張るんですよ、はぐも。ひとりだって眠れるよ! はぐみ、もう子供じゃないもん! なんて。けどですね、10分もしないうちに『モカちゃん……やっぱりそっちに行っていい?』ってちっちゃな声で聞いてきて……やー、モカちゃんの母性本能がヤバいです。ヤバ谷園のヤバすぎ茶漬けですよ」

千聖「…………」

モカ「普段ならモカちゃんもからかったりするんですけどー、やっぱりそんな反応された優しく受け止めるのが男の子ってもんでしょう?」

彩「モカちゃんは女の子じゃない?」

モカ「まー、そこは言葉の綾です。彩さんだけに」

彩「そっかー」

モカ「だからその時ばかりはあたしも真面目に『いいよ、おいで』だけ言って、あとは流れで朝までコース……な訳ですよ」

モカ「はぐの純粋無垢な寝顔とか、ふわふわしてる髪の毛とか、ちょっと高めの体温とか、なんかすごい絶妙に柔らかい腰回りとか、幸せそ~に緩んだ口元から漏れる寝言とか……えへへ、これを幸福って言うんですよね~。ずっとこうしてお昼寝したいですよね~」

モカ「はぁ~……幸せだなぁ。はぐ、将来あたしのとこに嫁に来てほしい。あたしが嫁入りでもいいけど」

千聖「…………」

千聖(最後、確実に本気のトーンで呟いたわね……)


リサ「……ちょっと分かる」

千聖「リサちゃん!?」

リサ「あ、いやっ、別に変な意味じゃないよっ?」

モカ「いくらリサさんでもはぐは渡しませんよ」

リサ「違うってば! まぁ、ほら、やっぱ幼馴染ってさ、色々特別じゃん? ね? それは分かるなぁって」

千聖「そ、そうよね。リサちゃんも友希那ちゃんがいるものね」

リサ「そ、そうそう! そんな感じそんな感じ!」

モカ「あ、リサさん、そろそろ行かないと……」

リサ「え? あ、ホントだ。やまぶきベーカリー寄ってく時間なくなっちゃうね。千聖の手伝いは……」

千聖「ええと、もう平気よ、ありがとう」

リサ「あれ、まだ何もしてないけど……?」

千聖「いえもう十分よ。どうかお幸せにとしか言えないわ」

リサ「そう? それじゃあ悪いけど、ここら辺でアタシたちは行くね」

モカ「彩さん、千聖さん、また今度~」

彩「またね!」

リサ「うん、またね~☆」


千聖「はぁ……最初の低い平和な数値は一体何だったのかしら……」

彩「千聖ちゃん、大丈夫? 少し休憩する?」

千聖「……そうね、歩き詰めだったし……羽沢珈琲店で少し休もうかしら」

彩「その方がいいよ。レッスン終わってから全然休んでなかったんだし」

千聖「ええ。ありがとう、彩ちゃん」

彩「ううん、どういたしまして!」


……………………


――羽沢珈琲店――

――カランコロン

千聖「はぁ……涼しいわね」

彩「外が暑かったからすごくに涼しく感じるね~」

↓1「おや」


美竹蘭「こんにちは、彩さん、千聖さん」

千聖「あら、蘭ちゃん」

彩「こんにちは。蘭ちゃんも休みに来たの?」

蘭「ええ、少し」

彩「それじゃあ、よかったら一緒にお茶しない?」

蘭「あたしは……そうですね。お邪魔します」

千聖「どうぞお構いなく」


―しばらくして―

千聖「はぁ……アイスティーが美味しいわ」

彩「外の猛暑を歩き回ったあとだとすごく美味しいね」

蘭「ふたりとも、何かしてたんですか?」

千聖「ええ、ちょっと……パスパレのお仕事よ」

蘭「へぇ。大変ですね、こんな暑い中。熱中症には気を付けてくださいよ」

千聖「ありがとう。でもどちらかというと、そういう身体の疲れより精神的な疲れの方が多いかしらね……」

蘭「は?」

彩「あ、そうだ。蘭ちゃんもちょっと手伝ってくれないかな?」

蘭「手伝うって、パスパレの仕事を? あたし、そんな難しいことは出来ませんよ」

千聖「そんなに気負わなくてもいいものよ。むしろ気負わないで。サクッと流せるレベルで終わってちょうだいという感じだから」

蘭「はぁ……? よく分からないけど、分かりました。それで、どうすればいいんですか?」

千聖「そこに座ってるだけでいいの」

蘭「え?」

千聖「本当に、お願いだからそこに座っているだけであってほしい」ポチ


美竹蘭の百合度↓1


美竹蘭 【44】

千聖(確か少し素質があるレベル……だったかしら)

千聖「…………」

千聖(まぁこれくらいが普通の数値よね。うん、蘭ちゃんは普通の女の子ね)

千聖「ふふ……」

蘭「……? いきなりどうしたんですか、千聖さん」

千聖「いえ。平和って素晴らしいなって、ちょっとね」

蘭(なに言ってるのか全然分からない……)

彩「蘭ちゃんのケーキ、美味しそうだなぁ」

蘭「これですか? あんまり甘くないビターのチョコケーキですけど」

彩「そういうのを挟んでから食べるショートケーキは絶品の甘さなんだよ」

蘭「そういうもんですか」

彩「そういうものなんだ」

千聖(平和ね……癒される……)


蘭「ひと口食べますか?」

彩「いいの?」

蘭「はい」

彩「わーい、ありがとー! それじゃあちょっと貰うね」

蘭「どうぞ」

彩「いただきまーす。あむ……わー、口の中がほろ苦い……」

彩「ここでショートケーキを……あーん。んー、甘くて美味しい!」

蘭「本当に美味しそうに食べますね」

彩「蘭ちゃんも食べてみなよ」

蘭「……それじゃあ……」

彩「はい、あーん」つケーキ

蘭「……いや、彩さん?」

彩「?」

蘭「自分で食べますから」

彩「え、そう?」

蘭「はい。そういうのは妹さんとかにやってくださいよ」

彩「そっかぁー、残念だなぁ」

蘭「なんで残念なんですか……」

彩「こうね? やっぱり年下の女の子にはお姉さんしたいなーって」

蘭「はぁ……」

彩「あはは、ごめんね?」

蘭「……まぁ、いいですよ、別に。彩さんのフォークから食べても」

千聖「……うん?」


彩「え、本当?」

蘭「先輩の言うことは無下に出来ませんから」

彩「わーいっ。それじゃあはい、あーん」

蘭「あーん……むぐ……」

彩「どう? 美味しい?」

蘭「まぁ……甘いのもたまにはいいかなって感じです」

彩「そっか、よかったぁ」

千聖「…………」

千聖(まぁ、これくらいなら……普通よね?)


―しばらくして―

蘭「それじゃああたしはこの辺りで」

千聖「ええ。手伝ってくれてありがとうね、蘭ちゃん」

蘭「いえ。なんか普通に一緒にお茶してただけですし」

彩「また食べさせてもらいたくなったらいつでも言ってね!」

蘭「それはほぼないですから」

彩「えぇーっ、さっきはあんなに美味しそうに食べてくれたのにぃ」

千聖「こーら、彩ちゃん。そんなわがままを言っちゃダメよ」

彩「はーい」

蘭(……やっぱり彩さんって年上に見えない。ひまりみたい)

蘭「それじゃあ、失礼します」

千聖「ええ」

彩「またね!」

蘭「はい」


彩「私たちはどうしよっか?」

千聖「もう少し休んでいきたいわね」

彩「それじゃあもう少しゆっくりしてよっか」

――カランコロン

↓1「あれ?」

↓2「どうしたの?」


ミッシェル「どうもーこんにちはー」

弦巻こころ「あら、彩に千聖じゃない!」

彩「こんにちは、こころちゃん。それと……」

千聖「こんにちは、ミッシェル……でいいのかしら」

ミッシェル(ご理解いただいてありがとうございます)コクコク

彩「こころちゃんがミッシェルと一緒にここに来るなんて珍しいね」

こころ「ええ! 今日はミッシェルと一緒に、商店街に笑顔を届けているのよ!」

千聖「……大変ね、美咲ちゃんも」

ミッシェル「いつものことですから……はぁ、あっついなぁ……」

彩「笑顔を届けるって、どんなことをやってるの?」

こころ「これよ!」つミッシェル型キャンディー

ミッシェル「商店街のお菓子工房で、キャンディーの手作り体験があるんだー」

ミッシェル「こーんなにかわいいお菓子も作れちゃうし、みなさん是非遊びに来てねー」

こころ「ここにいるみんなにも、このキャンディをあげるわね!」タタタ...

ミッシェル「……って感じで、商店街の宣伝とかをして回ってるって訳です……」

彩「そうなんだ。わぁ、ミッシェルキャンディー、かわいいっ」

千聖「そうね。よく出来ているわ」

ミッシェル「先週、頑張ってハロハピのみんなで作りましたからね……」


こころ「さてと! これでここにいる人みーんなに笑顔を配れたかしらね?」

ミッシェル「そうだねー」

こころ「それじゃあ早速次のお店に……」

ミッシェル「わー待った待った! こころ、ミッシェルは少し休んだ方がいいなぁって思うな! ほら、こころもちょっと疲れたでしょう!?」

こころ「いいえ、全然よ? だってみんなの笑顔に力をもらってるもの!」

ミッシェル「あーうん! こころはそうでもミッシェルはそろそろ休憩しないと倒れちゃうんだ! 笑顔じゃなくなっちゃうなぁ!」

こころ「あら! それは大変ね。それじゃあ少し休憩しましょうか」

ミッシェル「そうしようそうしよう! ……はぁー……やっと休める……」

千聖「美咲ちゃん、プロ根性がすごいわね」

ミッシェル「そんなことないですよぉ……」

彩「あ、こころちゃん。よかったらこっち座る?」

こころ「ええ、お邪魔するわね。ミッシェルー! ミッシェルもこっちに座りましょう!」

ミッシェル「いや、あたしは出来れば裏の方でこれ脱ぎたい……ああいや、言っても聞いてくれないしいいや……よいしょっと」

千聖(ミッシェルが隣の席に腰かけてると圧迫感がすごいわね……)


こころ「彩と千聖はどうしてここにいるのかしら?」

千聖「私たちは、ミッシェルが言ったみたいに、仕事の合間に少し休憩してたのよ。」

こころ「そうなのね!」

彩「うん。気付かないうちに疲れてたり、熱中症になることもあるからね。休憩は大切だよ。こころちゃんとミッシェルも気をつけてね?」

千聖「そうね。ミッシェルの休憩しようって言葉にはちゃんと頷いた方がいいわよ」

こころ「分かったわ! ミッシェル、疲れたらいつでも言ってちょうだい!」

ミッシェル「分かったよ~」

ミッシェル(フォローしてくれてありがとうございます、本当にありがとうございます、千聖先輩、彩先輩)ペコリペコリ

千聖(いいのよ、夏場の仕事の辛さは私も彩ちゃんも分かるから)フリフリ

彩(頭下げてるミッシェルに千聖ちゃんが手を振ってる……。千聖ちゃん、意外と着ぐるみとか好きなのかな?)

こころ「千聖はどんな仕事をして回っているのかしら?」

千聖「……そうね。多分、こころちゃんと同じような感じのハズよ」

こころ「わぁ、それは素敵ね! あたしたちに手伝えることがあればなんでも言ってちょうだい!」

千聖「じゃあ早速……」

千聖(そういえばこの機械、こころちゃんに使われることを弦巻技研は見越しているのかしら?)

千聖(……まぁ、細かいことを気にするのはこの際やめましょう)ポチ、ポチ


ミッシェル(奥沢美咲)の百合度↓1

弦巻こころの百合度↓2


ミッシェル(奥沢美咲) 【31】

千聖(ぎりぎり素質ありレベル)

弦巻こころ 【10】

千聖(一般女子レベル)

千聖(よかった……ハロハピの仲良しは後ろに(意味深)とかがつかない仲良しだった……)

こころ「千聖? どうしたのかしら?」

千聖「いいえ、なんでもないわ。やっぱりロゼリアとアフターグロウがちょっとアレなだけであって、パスパレとハロハピは平和……ええ、一部に目を逸らせば平和で安心したのよ」

こころ「? よく分からないけれど、千聖が安心したならよかったわ!」

ミッシェル「暑い……何か飲み物が欲しい……」

彩「あー、ミッシェルはそのままだと大変だもんね……」

黒服「ミッシェル様、こちらを」シュバ

千聖「わっ」

彩「きゃっ」

ミッシェル「あれ、黒服さん」


黒服「こちら、口元の部分の小さな穴に通せる特製ストローです。衛生面にもしっかり配慮しておりますので、こちらをご利用ください」

ミッシェル「ああ、どうもです……」

黒服「それでは」

黒服「…………」チラリ

千聖「えっと、なにかしら……?」

黒服「機械の件、よろしくお願いします」

千聖「え、ええ……」

黒服「失礼いたします」シュバ

ミッシェル「口元の穴……あ、ここか。わーすごい、本当に通った。これで飲み物が飲めるよ……」

彩「……お水、いる?」

ミッシェル「いただきます」

こころ「あら、ミッシェルは不思議なところから水を飲むのね!」

ミッシェル「……そうだよー、今ミッシェルの故郷ではこういう飲み方が流行してるんだー」

こころ「すごいわね!」

千聖「……あの黒服の人たち、どこから出てきたのかしら……」

彩「跡形もなく姿を消しちゃったね……」

ミッシェル「細かいことは気にしたら負けだよー」


―しばらくして―

こころ「それじゃあミッシェル、そろそろ次のお店に行きましょうか!」

ミッシェル「はーい」

彩「頑張ってね、こころちゃん、ミッシェル」

こころ「ええ!」

千聖「……無理はしないでね、美咲ちゃん」

ミッシェル「あはは……さっきも言った通り、もう慣れてますから」

千聖「ならいいけど……」

ミッシェル「それに」

千聖「うん?」

ミッシェル「……破天荒なこころに振り回されるの、あたし自身結構気に入ってますから」

千聖「そう。美咲ちゃんはこころちゃんが好きなのね」


ミッシェル「えっ!? え、い、いやまぁ、好きか嫌いかで言ったら、そういう風にふたつに分けたらそりゃあ好きですよっ? けどそれはあくまで友人というかそういう親愛の類の好きで、そんな、変な意味でこころを気に入ってる訳じゃあないですからね!? ね!?」

千聖「……私、何も言っていないけれど」

ミッシェル「え……あ、う……」

千聖(やや素質ありってこういうツンデレ? みたいなタイプのことを指すのかしら……蘭ちゃんもそんな感じだったような気がするし……)

千聖(……でもまぁ、これくらいは普通よね?)

こころ「さぁ、行くわよミッシェル!」グイッ

美咲「わぁ、ちょ、こころ、急にそんな引っ張らないでってば!」

こころ「ヨーソロー!」

美咲「だから自分で動けるって! あんまり引っ張らな――……」

――カランコロン...

彩「嵐みたいだったね」

千聖「そうね。私たちもそろそろ行きましょうか」

彩「うんっ」


……………………


――商店街――

千聖(ええと、ここまでで計ったのは……彩ちゃん、イヴちゃん、日菜ちゃん、麻弥ちゃん……)

千聖(それと燐子ちゃん、紗夜ちゃん、モカちゃん、リサちゃん、蘭ちゃん、美咲ちゃん、こころちゃん……)

千聖(結構計ったような気がするけど、まだ11人なのね)

千聖「これ、何人分のデータを集めればいいのかしら……」

彩「どうしたの、千聖ちゃん?」

千聖「……いえ、なんでもないわ」

千聖(とりあえず……四捨五入して30くらいになればいい……のかしらね)

↓1「こんにちは」


(※独自設定バリバリです)

真次凛々子「あーやっぱり、あなたたちパステルパレットの……」

彩「あ、もしかしてファンの方……あれ、でもお姉さん、どこかで見たことがあるような……」

千聖「確か……SPACE……のスタッフさんですよね」

凛々子「あ、覚えててくれたんですね。そうです、真次凛々子って言います。わぁ、嬉しいなぁ」

千聖「あの時はお世話になりました」

彩(……そうだ。SPACEにいた優しそうなスタッフさんだ)

凛々子「ごめんなさいね、つい声をかけてしまって……」

千聖「いえいえ。結成時のあの騒動のあと、私たちにライブをさせてくれる場所を頂けたことは感謝してもし足りないですから」

凛々子「それはオーナーの意向ですから。バンド結成の背景とか、そういうのは関係なくて、SPACEは本気でライブをしたいっていうバンドならどこだって受け入れますよ」

千聖「閉店の件は残念でしたね……私たちも顔くらいは出したかったのですが……」

凛々子「いえいえそんな、お気になさらず。SPACEのことを覚えていてくれただけで十分ですから」

凛々子「こちらこそすいません、プライベートに声をかけてしまって……」

千聖「それこそ気にしないでください。お世話になった方に覚えていてもらえることは、私たちも嬉しいですから」

凛々子「そう言って頂けると助かります。これからも頑張って下さいね」ニコ

千聖「はい、ありがとうございます」

彩「ありがとうございます!」

凛々子「それでは、失礼しますね」ペコリ

千聖「ええ」

彩「はーい!」

千聖「……懐かしいわね」

彩「ね。なんだか頑張ろうって気持ちになれた」

千聖(流石にお世話になった人の百合度を計るのはちょっと……申し訳ないかしらね……)


という訳でごめんなさい安価↓で他に誰かお願いします


戸山香澄「彩せんぱーい、千聖せんぱーい!」

彩「あ、香澄ちゃん!」

千聖「こんにちは、香澄ちゃん」

香澄「こんにちはー! いま一緒にいた人って……」

千聖「SPACEのスタッフさんよ。真次凛々子さんね」

香澄「わーやっぱり! 懐かしいなぁ、私も挨拶くらい……」キョロキョロ

彩「……人混みに紛れてもう行っちゃったね」

香澄「残念……」シュン

彩「きっとまた会えるよ。同じ街に住んでるんだから」

香澄「はい……」


千聖「香澄ちゃんはお出かけかしら?」

香澄「はいっ、今日は予定がなかったので、とりあえず商店街に行こうかなぁ~って思ってました!」

香澄「そしたら彩先輩と千聖先輩がいたので、突撃~って感じです!」

千聖(香澄ちゃんは表情がコロコロ変わるわね……無邪気なワンちゃんみたい)

彩「そうなんだ~」

香澄「彩先輩たちはお仕事ですか?」

千聖「ええ、まぁそうね」

彩「よかったら香澄ちゃんも手伝ってくれないかな? って言っても、私は未だに千聖ちゃんが何をしてるのか分かんないんだけど……」

香澄「いいですよ!」

千聖「即答するのね……」

香澄「困ってる人は助けないと! でもこうやってると有咲によく怒られちゃうんですけどね……」

千聖「そうね、悪いことを考えている人間もいるだろうから、安請負はあまりよくないわ」

千聖(……なんて、私が言えた義理じゃないけれど)ポチ


戸山香澄の百合度↓1


戸山香澄 【02】

千聖(流石香澄ちゃん、私は信じていたわ)

香澄「はい……気をつけます……」

千聖「でも、そういう優しいところは香澄ちゃんの長所よ。ひとりの時はちょっと考えてからの方がいいけれど、周りに友達がいる時ならどんどんやっていいと思うわ」

香澄「そうですか?」

彩「うん、私もそう思うな。香澄ちゃんが引っ張ってくれるおかげでいい方に動けたって人もたくさんいるんだし」

香澄「わぁっ、ありがとうございます! えへへ、それじゃあこれからもどんどん突っ込んでいきますね!」

千聖「それでこそ香澄ちゃんよ」


香澄「あっ、そうだ!」

彩「どうしたの?」

香澄「突っ込むといえば、最近有咲が『ポピパにツッコミが足りねぇ……』って言ってて……」

香澄「じゃあ私がツッコミになるよ! って言っても『お前にゃ無理だ、無理無理』って言うんですよ。どうすればツッコミって出来るようになりますかね?」

彩「ツッコミ……うーん、私たちアイドルだからなぁ……そういうのはあんまり役には立てないような……」

千聖「ああ、それなら彩ちゃんが出演するバラエティ番組を見るといいわよ」

彩「えっ」

香澄「彩先輩が出てる番組ですか?」

千聖「ええ。彩ちゃんは絶妙な間でボケを繰り出すから、大抵共演してる芸人さんたちがとても大きなリアクションをしてくれるの」

千聖「それを参考にするといいわ」

彩「え、私ボケなんてやった覚えないけど……」

香澄「わっかりました! 彩先輩……いやっ、彩師匠!」ガシ

彩「は、はいっ」

香澄「師匠の技、盗ませてもらいます……!」

彩「だ、だからボケた覚えなんてないのに……」

彩「……でも師匠って呼ばれるのはちょっといいかも」

香澄「彩師匠! 共に精進しましょう!」

彩「うん! 一緒に頑張ろ!」

香澄「師匠~!」

彩「香澄ちゃ~ん!」


千聖「…………」

千聖(ボケ倒す香澄ちゃんに天然のたえちゃん、りみちゃんはツッコミなんて出来ない性格でしょうし、沙綾ちゃんもたしなめるくらいだろうから……)

千聖(……本当にポピパのツッコミって有咲ちゃんしかいないのね)

香澄「なんでやねん!」ビシ

彩「なんでやねん!」ビシ

香澄「いい感じのキレですね! 今年のかくし芸は漫才やりましょう!」

彩「う、うん! 自信はあんまりないけど……!」

千聖「…………」

彩「よーし、やるからには徹底的にやろう! 会場をどっかんどっかん言わせるぞー!」

香澄「あっ! 確かりみりんがコントとか漫才のDVD持ってたから、今度一緒に見ましょう!」

彩「分かったよ! そうしたら彩ドリルの出番だね! 大変だけど頑張って髪セットしてくる!」

香澄「楽しみですね、彩師匠、千聖先輩!」

彩「そうだね、香澄ちゃん、千聖ちゃん!」

千聖「お願いだからそのボケ空間に私を巻き込まないでくれるかしら?」


……………………


香澄「それじゃあまたー!」

彩「香澄ちゃん、またねー!」

千聖「…………」

彩「あれ、どうしたの千聖ちゃん? なんだか小難しい顔になってるよ?」

千聖「彩ちゃんと香澄ちゃんは魂の波長が合うのかしらねって思っただけだから気にしないで」

彩「魂の波長?」

千聖「気にしないで」

↓1「どうも」

↓2「こんにちは」


市ヶ谷有咲「ど、どうも……」

花園たえ「こんにちは」

千聖「有咲ちゃんにたえちゃん」

彩「こんにちはっ。さっきまで香澄ちゃんとお喋りしてたよ!」

たえ「あ、そうなんですね。私も混ざりたかったなぁ」

有咲「お前と香澄と彩先輩ってぜってー話こんがらがるからやめてくれ……」

千聖「ふたりは遊びに出かけてたの?」

有咲「いえ、ちょっと買い物に出たらそこでばったり出くわしたんですよ」

たえ「私は名古屋に行きたくなって、しゃちほこを探してたら有咲を見つけました」

千聖(どうして名古屋……それにしゃちほこって、もっと別に何かあるでしょう……)

たえ「す〇きや食べたい~♪」

有咲「急に変な歌うな」

たえ「沙綾はトーストラングドシャ食べたいって言ってたよ」

有咲「知るかっ、そもそもなんで名古屋なんだよ」

たえ「……なんとなく?」

有咲「なんだよそれ、なんとなくでボケるなよ……いつものことだけどさ」

彩(ツッコミってこうやるんだ。勉強になるなぁ)フムフム

有咲(どうして彩先輩は私のことを興味深そうに見てるんだ……?)

千聖(まだボケ倒すつもりなのかしら、彩ちゃんは……)

たえ(あ、味噌カツ食べたくなってきた)


有咲「彩先輩たちは何してたんですか?」

彩「私たちはパスパレの……っていうか、千聖ちゃんのお仕事だよ」

千聖「ええ、まぁ……普通の仕事なら大歓迎なんだけどね」

たえ「お仕事……夏休みにも働くなんて大変だ」

有咲「え、えーっと、月並みですけど、お疲れさまです」

千聖「ありがとう。悪いんだけど、ふたりにも少し手伝ってもらっていいかしら?」

たえ「いいですよ」

有咲「ちょ、おたえ! 話も聞かないで頷くなって! すげー難しいことかもしんねーだろ!」

彩「たえちゃん、香澄ちゃんと同じ反応だね」

有咲「ああ、やっぱあいつも即答したんですね……」

千聖「簡単な……そうね、私は簡単に終わってくれればいいなと思うけど、あなたたちには難しいことはお願いしないわ」

有咲「あ、そ、そうですか? それなら……りみとかおたえとか香澄が世話になってますし……」

千聖「ふふ、ありがとう」

千聖(香澄ちゃんがあれだけ低い数値だったんだし、有咲ちゃんとたえちゃんもきっと同じくらいよね。そう思うと幾分か気が楽だわ)

千聖(信じているわ、ふたりとも)ポチ、ポチ


市ヶ谷有咲の百合度↓1

花園たえの百合度↓2


市ヶ谷有咲 【19】

花園たえ 【15】


千聖「流石だわ、ふたりとも」ギュ

有咲「わ、わぁ!」

たえ「どうしたんですか、急に私たちの肩を抱いて」

千聖「あ、ごめんなさい。嬉しくってつい」パッ

有咲「い、いえ、別に……そんな嫌な気はしませんし……」

たえ「大丈夫ですよ」

有咲(やべ、嫌な気はしないってなに口走ってんだ私……)

たえ「千聖先輩ってやっぱりいい匂いがするなぁ」

千聖「あら、そうかしら?」

彩「あ、分かる。なんだかちょっと優しい香りがするよね」

千聖「優しい香り?」

彩「うん。なんだろうね、傍にいると安心するっていうか……お母さんみたいな香り?」

千聖「……それを褒め言葉として受け取っていいのか少し悩むわね。お母さんみたいって、私と彩ちゃんは同い年じゃない」

たえ「私もなんとなく分かりますよ、彩さんの言ってること」

千聖「え?」


たえ「千聖先輩、厳しそうに見えてすごく優しいですし、頼りになりますし。千聖先輩の匂いがするとそういうところが思い浮かびます。ね、有咲」

有咲「そこで私に振んのかよ!? あー、あー……まぁ、確かにおたえと彩先輩の言うところにも頷けなくはないかなって思いますけど……」

有咲「私はどっちかってーとお母さんっていうより、頼りになるお姉ちゃんって感じ……ですかね」

千聖「……そう。ふふ、有咲ちゃんとたえちゃんみたいな可愛い後輩にお姉ちゃんと思われるなら、あまり悪い気はしないわね」

たえ「千聖おねーちゃーん♪」

有咲「おまっ」

千聖「はいはい。どうしたの、たえちゃん」

たえ「えへ、呼んでみただけ」

千聖「ふふ、そうなのね」

千聖(ウチの妹がまだ小さかったころを思い出すわね)

千聖(あの頃のあの子はあんなに無邪気で可愛かったのに――いや、今でも十分可愛いけど、どうして大きくなるとどんどん生意気になっていくのかしらね……)

有咲「すげー遠い目になってる……」


彩「……私も呼んでみようかな?」

千聖「彩ちゃんは駄目ね」

彩「え、なんで!?」

千聖「ふたりより年上なのに私をお母さんみたいって言うんだから……あなたはもっとしっかりしないと」

彩「はーい、分かりました……」

有咲(……いや、その言葉、まんま娘を注意するお母さんのものじゃん……)

有咲(後輩には一見厳しそうだけど面倒見が良くて優しいって印象があるからお姉ちゃんっぽくて、彩先輩みたいな同い年の同僚にはしっかり者のイメージがつくからお母さんっぽいのかな……)

千聖「有咲ちゃん、ジッと私を見つめてるけど、どうかしたかしら?」

有咲「あ、いえ……なんでもないです」

たえ「有咲、本当は千聖先輩をおねーちゃんって呼んでみたいのに、素直じゃないから我慢してるんですよ」

有咲「なっ、ち、ちげーよ!」

千聖「そうなの? ふふ、有咲ちゃんならいつでも歓迎するわよ?」

有咲「だから違いますって! そりゃ、私もちょっとお姉ちゃんっぽいなって思いますけど……そ、それとこれとは別ですから!」

千聖「あら、残念ね」

有咲「どうして残念がるんですか……まったく……」

千聖(生意気は生意気でも、有咲ちゃんくらい分かりやい意地を張ってくれるなら可愛いのに)

彩(なんだろう……こうやって千聖ちゃんたちを見てると、お母さんが妹ばっかり構ってるところを見てる気持ちになる……)



有咲「それじゃあ、私たちはここで」

たえ「千聖おねーちゃんのお手伝いが出来てよかった」

千聖「ええ、ありがとうね、ふたりとも。家まで気をつけて帰るのよ」

彩「またね、ふたりとも」

有咲「失礼します」

たえ「また今度」

千聖「……ポピパの子たちはみんな純粋で可愛いわね」

彩「……そうだね」

千聖「彩ちゃん? 何かちょっとむくれてないかしら?」

彩「むくれてないもん」

千聖「…………」


彩「なぁに、千聖ちゃん。別に私、拗ねたり怒ったりなんてしてないからね」

千聖「いいえ、なんでも。やっぱり彩ちゃんがいてくれてよかったって思っただけよ」

彩「え?」

千聖「私ひとりじゃこの仕事も全然進まなかっただろうし、彩ちゃんにはすごく助けてもらってるわ」

彩「……ま、まぁ? 私だってやれば出来る系のアイドルだし?」

千聖「ええ、そうね。ありがとう、彩ちゃん」

彩「まったく、千聖ちゃんはしょうがないなぁ~っ」

千聖(彩ちゃん、最近分かりやすすぎるしチョロ過ぎないかしら……将来悪い人に騙されないか心配だわ……)

彩(えへへ、褒められた。よーし、頑張って千聖ちゃんをもっと助けるぞー!)

↓1「あれ……」

↓2「あ……」


瀬田薫「やぁ、千聖に彩じゃないか」

はぐみ「こんにちはー!」

彩「こんにちは~」

千聖「…………」

千聖(薫にはぐみちゃん……このふたりは麻弥ちゃんとモカちゃんに色々とアレな気持ちを持たれているのよね……)

千聖(せっかくポピパの3人で平和な気持ちになれたのに、また地雷原を歩くことに……)

薫「どうしたんだい、千聖? 少し難しい顔をしているが……」

はぐみ「大丈夫? お腹減ってるならコロッケあげるよ?」

千聖「え、ええ、大丈夫よ」


彩「ふたりはあれかな? 商店街に笑顔を配ってるの?」

はぐみ「わっ、すごい! 彩先輩、よく分かったね!」

彩「さっきミッシェルとこころちゃんに会ったんだ。だから、はぐみちゃんたちもそうなのかなって」

薫「フッ……人が通ったところに、道は出来る。つまり、そういうことだね」

彩「そういうこと……なのかな?」

千聖「彩ちゃん、薫の言葉は適当に聞き流しておいて平気よ」

薫「おや……随分つれないことを言うんだね、千聖」

千聖「今日はあなたのせいで出鼻を挫かれたから」

薫「……なんのことだい?」

千聖「こっちの話よ」

彩「はぐみちゃんたち、少し時間ある?」

はぐみ「うん、あるよー! あ、彩先輩と千聖先輩にもミッシェルキャンディーあげるね! はい!」つミッシェルキャンディー

千聖「ええ、ありがとう」

彩「わぁ、ありがとー! やっぱりかわいいね、このキャンディー」

薫「ああ。食べてしまうのがもったいないくらいだ。儚い……」


はぐみ「それで、はぐみたちに何か用事があるの?」

彩「あ、そうそう。ちょっと千聖ちゃんのお仕事があって……それを手伝ってもらいたいんだ」

はぐみ「うん、分かったよ! 薫くんもいいよね?」

薫「ああ、もちろん。他ならぬ千聖の頼みとあっては聞かない訳にはいかないさ」

はぐみ「そしたら、何をすればいいの?」

千聖「えーっと、そこに立っているだけでいいわよ、はぐみちゃん」

薫「では私は……そうだね、ロミオの儚いポーズを」

千聖「あなたはそこに気をつけしていなさい」

薫「いや、しかし」

千聖「かおちゃん? 私の言うことが聞けないのかしら?」

薫「わ、分かったよ、千聖……だからその名を往来で呼ぶのはやめてくれないか……」

千聖「最初からそうしていればいいのよ」

千聖(……さて、鬼が出るか蛇が出るか)

千聖(鬼でも蛇でもなく、かわいい子犬くらいが出て来てくれるなら助かるんだけど……)ポチ、ポチ


瀬田薫の百合度↓1

北沢はぐみの百合度↓2


瀬田薫 【55】

千聖(……雰囲気に流されるレベル……)

千聖(麻弥ちゃんのことだから強引なことはしないでしょうし、薫も薫でそういう恋愛感情には鈍ちんだろうから……しばらく静観していて大丈夫かしら)

北沢はぐみ 【79】

千聖(問題はこっちよね)

千聖(積極的にスキンシップをしたがるレベル……モカちゃんがしょっちゅう抱き着いてくるって言ってたし、はぐみちゃん、意外と寂しがりな部分があるのかしらね……)

千聖「……ねぇ、薫、はぐみちゃん」

薫「なんだい?」

はぐみ「どうしたの?」

千聖「唐突なんだけど……最近、特に仲良くしてるなぁって女の子……いるかしらね?」

薫「本当に唐突だね。私にとって子猫ちゃんはみんな平等だが……そうだね、強いて言えば↓1だろう」

はぐみ「はぐみは↓2だね!」


薫「強いて言えばミッシェルだろう」

千聖(ミッシェルは一応女の子としてカウントしてるのね)

彩(ミッシェルが好きな薫さん……ギャップがあってかわいい)

はぐみ「はぐみは紗夜先輩だね!」

千聖「えっ」

はぐみ「……? どうかしたの、千聖先輩?」

千聖「え、いや……え? さ、紗夜ちゃん?」

はぐみ「そーだよ! えへへ、紗夜先輩、いつも優しくしてくれるんだ」

千聖「へ、へぇ……例えばどんな風に?」

はぐみ「えっとね、はぐみ、よく廊下を走っちゃうんだけど……いつでも注意してくれるんだ」

千聖「そうね、紗夜ちゃんは風紀委員だし……それくらいはするわよね」

はぐみ「何回走っちゃっても毎回はぐみのことを注意してくれて……『あ、紗夜先輩ってはぐみのことをちゃんと見てくれてるんだ』って思うとすっごく嬉しくなるんだ」

千聖「……真面目だものね、紗夜ちゃん」

はぐみ「だからついつい抱き着いたりしちゃうんだけどね、それでも紗夜先輩は『まったく、仕方ないわね』ってね絶対に受け止めてくれるから、もっともっと嬉しくなっちゃって……」

千聖(ああ、きっと日菜ちゃんみたいだなぁって思ってるわね、それは……)

はぐみ「えへへ、不思議だなぁ。紗夜先輩にぎゅーってされるとすっごくポカポカするんだ。はぐみのことを注意してくれる声を聞くとね、なんだかお腹の底がきゅーってして、もっともっと紗夜先輩にくっつきたくなるんだよ!」

千聖(確かにそんな場面を学校で何度か見かけたような気がするわね……というか)


千聖「え、えぇと、はぐみちゃん? そういう紗夜ちゃんに構ってもらってるところって……燐子ちゃんとか、モカちゃんには見られてないわよね……?」

千聖(今、目の間にあるのはとてもヤバい関係じゃないの? 燐子ちゃんは紗夜ちゃんで、モカちゃんははぐみちゃんなのに、はぐみちゃんは紗夜ちゃんって……一触即発じゃないかしら……?)

はぐみ「え、何回も見られてるよ?」

千聖「!?」

はぐみ「紗夜先輩は燐子先輩とよく一緒にいるし、モカちゃんもよくウチのお店に来てくれて、紗夜先輩と一緒になることもあるからね!」

千聖「え、だ、大丈夫なの、それ……?」

はぐみ「だいじょうぶ……? んー、何が大丈夫かは分からないけど、燐子先輩ははぐみのことを見ると、」

燐子『ふふ……ふふふふ……』

はぐみ「っていつも笑ってるし、モカちゃんははぐみと紗夜先輩と一緒にいるところを見ると、」

モカ『……ねぇーはぐ。今日さ、はぐの部屋泊ってもいーい? いやむしろもう泊まるね?』

はぐみ「って言って絶対にお泊りするよ」

千聖「」


千聖(お、恐るべき無自覚、無邪気……燐子ちゃんが目の光を消して笑う姿とモカちゃんがマジトーンマジ顔でお泊り提案をする姿が目に浮かぶ……)

千聖(しかも紗夜ちゃんも燐子ちゃんの気持ちに気付いてないし、雰囲気に流されるレベルだからはぐみちゃんにくっつかれてコロッと落ちる可能性だってあるし……)

千聖(え、もしもそうなったら……花咲川女子学園の生徒会室が……)



紗夜『さて、私の今日の仕事はこれで終わりね。北沢さんが待っているし、早く行きましょう』

紗夜『お疲れさまでした、白金さん、市ヶ谷さん』

有咲『えっ、あっ、はいっ……お疲れさま、です……』

燐子『……おつかれさまです』

――ガチャ、バタン

有咲『…………』

燐子『……して』

有咲『』ビクッ

燐子『どうして、どうして、どうして、どうして……』

有咲『』ビクビク...

燐子『おかしいよね、こんなのまちがってるよね、氷川さんのとなりはわたしのものなのにへんだよねなんで氷川さんはどこかにいっちゃうんだろうねふふおかしいなぁふふふふふ……』

有咲『』ガタガタ...


千聖(なんてことになって有咲ちゃんの胃に穴が空いてしまうし、北沢精肉店でも……)



はぐみ『よーし、今日のお仕事終わり! 紗夜先輩が来るし、お泊りの準備しなくっちゃ』

モカ『…………』

はぐみ『あ、モカちゃん! ごめんね、今日はもうコロッケ売り切れちゃったんだ』

モカ『…………』

はぐみ『でも代わりに今日は牛さんのお肉が安いよ! どう、今晩のおかずに――』

モカ『あたしは、はぐがいいな』

はぐみ『え?』

モカ『はぐがいい。はぐはいい。はぐじゃなきゃいやだ』

はぐみ『どうしたの? どこか調子でも悪い?』

モカ『……はぐのせいだよ』

はぐみ『はぐみのせい?』

モカ『はぐが悪いんだよ。だから……責任、とってもらわなくちゃ』ガバッ

はぐみ『え――きゃっ』



千聖(……なんてことに……!?)

はぐみ「あれ? 千聖先輩、どうしたの? 顔真っ青だけど、大丈夫?」

千聖「っ、だ、大丈夫よ……ちょっと胃が痛くなっただけで……」

はぐみ「お腹痛いの? うーん、はぐみ、お薬は持ってないからなぁ」

千聖「へ、平気よ? はぐみちゃんの行動次第だけど……たぶん、へいき……」

はぐみ「あ、そーだ! それじゃあ……えいっ」

千聖「きゃっ。ど、どうしたの、いきなり私のお腹に触れて?」

はぐみ「痛いの痛いの、とんでけーっ!」

千聖「…………」

はぐみ「どう? よくなった?」

千聖「……ええ、少しマシになった……かしらね」

はぐみ「えへへ、よかった」ニコリ

千聖(まぁ、うん。これだけ純粋なはぐみちゃんなんだし、さっきみたいな修羅場が起こることなんてない……ないハズよね……?)


薫「ふふ、ミッシェルは素晴らしい。いつだって私たちに何ものにも変えられない薫陶を与えてくれるんだ」

彩「へぇ~。ミッシェルってすごいんだね!」

薫「ああ、もちろんさ。あの儚いフォルム、儚い手触り、儚い動き……そのどれもが私の心を掴んで離さない……ふふ、罪な子猫ちゃんだ、ミッシェルは」

彩「うーん、私から見たら子猫ちゃんっていうよりクマさんかなぁ」

薫「ミッシェルに抱く印象は人それぞれさ。誰もしもがみんな、ミッシェルに対する正解を心に秘めている。それぞれにその形は違うけれど、間違っているということはないのさ」

薫「ちなみにだが、ミッシェルが一番儚いモフモフをしているところは……脇腹だよ」

彩「え、そうなの?」

薫「ああ。普段は洋服を着ているからなかなか触らせてもらえないが、あそこの手触りは……ふふ、筆舌に尽くしがたい」

彩「へぇー! 今度お願いして触ってみるね!」

薫「是非とも堪能してくれたまえ。あれはみんなで共有するべき儚さだからね……」

千聖(……あっちは平和そのものね。薫も変わり者ではあるけど悪い人間ではないし……麻弥ちゃんがそんな薫を好きだっていうなら、私からとやかく言うことはない……わよね)



薫「ふふ、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものだね」

はぐみ「はぐみたちはそろそろ次のお店に行くね!」

彩「頑張ってね、ふたりとも!」

千聖「気をつけてね。……特に、はぐみちゃん」

はぐみ「はーい! 怪我しないように気をつけるね!」

千聖「……そうね」

千聖(色々な意味で怪我をしないよう、本当に気をつけて。おねがい)

薫「それじゃあ、千聖、彩」

はぐみ「じゃーねー!」ブンブン

彩「ばいばーい!」

千聖「ええ、また」


千聖「ふぅ……なんだかドッと疲れたわね……」

彩「大丈夫? また休憩する?」

千聖「いえ、まだ平――」

――グゥゥ...

彩「…………」

千聖「……彩ちゃん、さっき一緒にケーキ食べたばかりよね?」

彩「……歩いてたらお腹減っちゃって……えへへ」

千聖「ふふ、仕方ないわね。食いしん坊な彩ちゃんのためにファストフード店にでも行きましょうか」

彩「く、食いしん坊じゃないよ~!」


……………………


――ファーストフード店――

――ピロリロリン...

彩「夕方前のこのくらいの時間なら空いてるね」

千聖「ええ。混んでいると私たちだってバレてしまう可能性も高いし、空いていてよかったわ」

彩(……でも、私としてはパステルパレットの丸山彩ってバレて欲しいなぁ)

千聖「ダメよ、彩ちゃん?」

彩「えっ!?」

千聖「今、周りの人にバレたいって思ったでしょう?」

彩「あ、あはは~」

千聖「まったく……気持ちは分かるけど、そういうところはしっかりしなくちゃダメよ?」

彩「はーい……」

↓1「あの」

↓2「もしもし?」


彩「はいっ!」

山吹沙綾「あ、やっぱり彩先輩と千聖先輩だ」

宇田川巴「こんちはっす」

千聖「ええ、こんにちは」

彩「……うん、こんにちは」

彩(ファンの人かと思ったけど普通に後輩でした……)シュン

沙綾「えっと……彩先輩はどうしてそんなに落ち込んでるんですか?」

千聖「いつものことだから気にしないで」

巴「はぁ……」


千聖「ふたりは一緒にお出かけかしら?」

巴「はい。沙綾が和太鼓を叩きたいっていうんで、一緒に叩いてきたんですよ」

沙綾「……いや、巴にごり押しされたっていう方が正しい気がするけど……」

巴「まぁ細かいことは気にすんなって! 楽しかったろ?」

沙綾「そうだね。ドラムとはまた違ったリズム感があって、なんだか新鮮だったよ」

千聖「ふふ、仲が良いのね」

千聖(ポピパのみんなは純粋だし、アフターグロウは……まぁ、ちょっとモカちゃんが危ないけど……これも友情の範囲よね)

彩「あ、そうだ。沙綾ちゃんと巴ちゃんも一緒の席に座ろうよ」

沙綾「はい、お邪魔しますね」


―注文後―

巴「彩さんたちは何をしてたんですか?」

彩「パスパレのお仕事だよ。千聖ちゃんがメインで、私はそのお手伝い」

沙綾「夏休みなのに大変ですね」

千聖「芸能人にとっては忙しいうちが華だもの。ありがたいことよ」

千聖(……内容がこんなことじゃなければ)

彩「ふたりにも手伝ってもらっていいかな?」

巴「いいっすよ。アタシたちに出来ることだったなんでも言ってください」

沙綾「頑張ってお手伝いしますよ」

千聖「ありがとう、ふたりとも」

千聖(でも出来ればそんなに気負わないでいてくれる方が私は助かるわ)

千聖(もうさっきみたいなことが起こりませんように……)ポチ、ポチ


山吹沙綾の百合度 ↓1

宇田川巴の百合度 ↓2


山吹沙綾 【31】

千聖(ポピパにしてはちょっと高め……だけど、まぁきっと女の子の平均値ってこれくらいなんでしょう。愛だ恋だってことにはみんな興味があるもの、だからこれくらいは普通よ)

千聖(ふふ、この分なら巴ちゃんもきっと)

宇田川巴 【100】

千聖( ゚д゚)

千聖(つд⊂)ゴシゴシ

千聖(;一_ ゚)チラ

宇田川巴 【100】

千聖(;゚ Д゚)!?!?


千聖「えっ、いやっ……えぇ!?」

千聖(う、嘘でしょう……まさか最大値が出るだなんて……)

千聖(【検閲済み】って書いてあったけど……そんな、巴ちゃんがって……えぇ……!?)

彩「千聖ちゃん?」

沙綾「どうしたんですか? なんだか百面相っていうか、すごい顔してますけど……」

巴「どこか調子でも悪いんですか?」

千聖「……い、いえ、大丈夫、よ……コホン」

千聖「え、えぇーっとぉ……あの、巴……ちゃん?」

巴「はい?」

千聖「その、唐突にこんなことを聞いてしまうことにものすごい後ろめたさとかそんな感じのものが付き纏ってしまうのだけど、その、ね?」

巴「はい、なんですか?」

千聖「あの……よく遊んだり、お話したり、一緒にいることが多い女の子って……誰がいるかしら……?」

巴「え、うーん……↓1ですかね」


巴「あこですかね」

千聖「あこちゃん!?!?」ガタッ

沙綾「わっ」

彩「ど、どうしたの、千聖ちゃん?」

千聖「あっ……と、取り乱してごめんなさい」

巴「姉のアタシが言うのもなんですけど、あこは可愛いんですよ」

沙綾「そうだね。無邪気で可愛いよね」

巴「だろー? へへ、自慢の妹だよ」

千聖(あああ……絶対に沙綾ちゃんと巴ちゃんの「可愛い」に食い違いがある……)

巴「でもなぁ、やっぱりあんなに天使だとちょっと困っちまうんだよ」

彩「そうなの?」

巴「ええ。ほら、やっぱり世の中には悪い人だってたくさんいるじゃないですか。やたらと人を傷つけたり、誰かを騙して得をしようって人とか、そういうのが」

彩「あー……私もよく千聖ちゃんから『世間には良い人ばっかりじゃないのよ』って言われるなぁ」


巴「だから心配なんすよね。あこはひとつの穢れも知らない可愛い可愛い女の子な訳ですから、アタシの知らないところで傷つけられたり泣いたりしてないかって」

沙綾「巴は相変わらずあこにべったりだね」

巴「仕方ない、あこが可愛すぎるのが悪いんだ。沙綾だって妹がいるんだから分かるだろ? 彩さんと千聖さんも分かりますよね?」

千聖「……そう、ね……」

沙綾「確かに紗南はまだ小さいし、ちょっと心配になることも多いかなぁ」

彩「んー……私はあんまり……。妹の方がしっかりしてるって言われることもあるし」

沙綾「あー、なんだかすごく想像できますね」

彩「ちょ、沙綾ちゃん!」

沙綾「すいません、つい」

巴「まぁそんな訳でだ。やっぱりな、あこには何一つとして悲しい思いはしてほしくないし、いつまでも穢れを知らない天使でいてほしいし、いつまでもいつまでも幸せに笑っててほしいんだよなぁ」

千聖「…………」

千聖(……あれ、意外と普通のこと……よね。これくらいなら姉が妹を可愛がる範疇だし……)

千聖(そ、そうよね。まさか肉親にそんな感情を抱くだなんて……そんな……)

巴「だからあこは将来アタシが娶ります」

千聖「」


彩「めとる?」

千聖「え、えーっと……」

沙綾「ああ、気にしないで平気ですよ、ふたりとも。巴は昔からこうですから」

千聖「昔からなの……?」

沙綾「はい。話半分に聞き流してください」

巴「おいおい沙綾、アタシはいつだって本気だぞ?」

巴「あこのためならなんだって出来る。あこが将来働きたくないっていうならアタシが一生涯面倒を見続けるし、もしもあこを傷付ける人間がいるならアタシはソイツに生まれてきたことを後悔させるくらいのことはやってやるし、あこに良くしてくれる人がいるならアタシの全身全霊を懸けて報いるぞ」

沙綾「はいはい、そうだね」

千聖(それで流せるレベルじゃないんじゃないでしょう……沙綾ちゃん、心臓強すぎないかしら……)

彩「へぇ~。それじゃあ将来、あこちゃんに好きな人が出来たら大変だね」

沙綾「あっ」

巴「あぁ?」ズイ

彩「えっ」

千聖(……なんだか急に巴ちゃんの雰囲気が……)

沙綾(あちゃー……彩先輩、地雷ふんじゃった)


巴「あこに将来好きな人? ははっ、彩さんは面白いこと言いますね。アタシが未来永劫あこのことを愛し続けるのと同じで、あこはずっとずーっとずーっっっとアタシのことを好きでいてくれるに決まってるじゃないですか。ねえ? ねぇ? ね え ?」

彩「えっ、あ、う、うん」

巴「あこがアタシ以上に好きになる人間なんてこの世界に存在する訳がない。生まれた時からそう決まってるんですよ。仮に、もしも、何億万分の1の確率でアタシとあこの間に割り込もうだなんて人間がいるなら、そいつは絶対に良からぬ人間ですよ。純粋無垢で純潔で疑うことを知らない大天使の良心につけこんで悪い方へ悪い方へ引っ張ろうとする人間の屑ですよ。そんな奴にあこを誑かされてたまるか。あこを世界で一番分かってあげてて宇宙で一番幸せに出来るのはアタシ以外にいない。アタシとあこの間に入るってことは、あこの幸せを奪おうとしてるのと同じだ。本当の本当にあこが好きならあこの幸せを一番に願って身を引くのが正しい在り方だ。きちんとそういうところを弁えられないやつにはあこに近付く権利すらない。邪な思いをあこに抱くこと自体が重罪ですね、万死に値します。そんな輩が生きているだけでアタシは我慢ならない。もしもあこを汚そうとする人間がいるならその前にアタシが刈り取りますよ。あこの為だったら、あこがいつまでもいつまでも綺麗でいる為だったら、アタシはどれだけ汚れたってかまわない。それがあこの姉としてこの世に生まれたアタシの意義だ。このレゾンデートルは誰にも侵させはしない。神様だとかそんな眉唾な奴がもしも駄目だっていうなら、駄目じゃないって心の底から思わせられるまでぶん殴ってやるよ。何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも」


彩「……ぐすっ、ご、ごめんね、巴ちゃん」

千聖(半べそかいてる……後で慰めないと……)

巴「はは、なにに謝ってるんですか。アタシたちの仲なんですから、た ま に は そういう冗談もいいじゃないですか」

彩「うん……ごめんなざい……」グス

沙綾(巴、あこのことになると鬼気迫るからなぁ……慣れてないと怖いよね……)

千聖(隣に悪鬼羅刹じみた巴ちゃんがいるのに、どうして沙綾ちゃんは普通の顔をしていられるのかしら……)


―しばらくして―

巴「それじゃあ、アタシたちはこれからもう一度和太鼓を叩きに行くんで」

千聖「ええ」

彩「う、うん……」ビクビク

沙綾「え、また叩きに行くの?」

巴「ああ。沙綾だって後半ノリノリだったし、まだ叩き足りないだろ? 我慢なんてしなくていいんだぜ?」

沙綾「いやいや、叩き足りないのは巴でしょ? って言っても聞かないか……。分かったよ、付き合うよ」

巴「ははっ、そうこなくっちゃな! それじゃ、彩さん、千聖さん、失礼しますね!」

彩「ひゃ、ひゃいっ……」

千聖「気をつけてね」


沙綾「……あの、彩先輩?」

彩「どっ、どうしたの、沙綾ちゃん?」

沙綾「ごめんなさい、巴も悪気がある訳じゃないんで……昔からあこが絡むとちょっとだけ暴走しちゃう癖があって」

千聖(あれで『ちょっとだけ』?)

彩「う、うん……」

沙綾「地雷さえ踏まなければ、その、普通のお姉ちゃんだから……今日のあの姿は気にしないでくれると……」

彩「だ、大丈夫……私の方が年上なんだし……大丈夫だよ……うん……」ブルブル

沙綾「……いや、本当になんていうか、ごめんなさい。幼馴染として代わりに謝ります。怖い思いをさせてごめんなさい」

巴「さーやぁー? どうかしたのかぁ?」

彩「ひっ」ビク

沙綾「あー、今行くよー! ……それじゃあ彩先輩、千聖先輩、また」

千聖「ええ……」

彩「う、うん……」


千聖「…………」

彩「…………」

千聖「……彩ちゃん?」

彩「な、なに……?」

千聖「……今ならお客さんも少ないし、周りに知り合いもいないから……ね?」オイデオイデ

彩「…………」ヒシッ

彩「こ……怖かった……」

千聖「ええ」ナデナデ

彩「怖かったよぉ、千聖ちゃん……」グスグス

千聖「そうよね。びっくりしちゃったわよね」ナデナデ

彩「うぇぇ~ん……!」

千聖(彩ちゃんが泣き止むまではこうしてないとダメね……怖い思いをさせた原因、私なんだし……)


……………………


――商店街――

彩「お、お恥ずかしいところをお見せしました……」

千聖「気にしないで。気持ちは分かるし、こんなことに巻き込んでしまったのは私なんだから」

彩「う、うん……」

千聖(それに彩ちゃんが泣いてるところってなんだかんだ見慣れてるし)

彩(やっぱりお母さんみたいだなぁ、千聖ちゃんって)

千聖「あら、あれは……↓1ちゃんと↓2ちゃん」

つぐみ

(5バンド内でまだ出てないのはりみ、ひまり、つぐみ、友希那、あこ、花音の6人?)

>>133
そうです。分かりづらくて申し訳ないです。現在下の図のような感じです。
https://i.imgur.com/PnCuTm9.png

安価下


彩「つぐみちゃんとひまりちゃんだね。こんにちはーっ!」

羽沢つぐみ「あ、彩さんに千聖さん。こんにちは」

上原ひまり「こんにちはー!」

千聖「ええ、こんにちは」

彩「ふたりとも、どこかに遊びに行ってたの?」

ひまり「はい! 一緒にショッピングしてました!」

彩「へー、そうなんだ! 可愛いお洋服とか見つかった?」

ひまり「ばっちりですよ! ただ……お値段はちょっと可愛くなくて……」

彩「あはは、よくあるよね。私も欲しいお洋服に限って立派なお値段してることが多いなぁ」

つぐみ「……あれ? 彩さん、ちょっと目が赤くないですか?」

彩「えっ!? あ、え、ええーっと、ちょっとさっき目にゴミが入っちゃって……」

つぐみ「そうなんですね。私、目薬持ってますけど……使いますか?」

彩「う、ううん、大丈夫だよ。ありがとね、つぐみちゃん」


千聖「…………」

千聖(つぐみちゃんもひまりちゃんも、あの巴ちゃんには慣れているのかしら……)

ひまり「千聖さん? なんだか眉間に皺が寄ってますけど、どうかしました?」

千聖「……いいえ、なんでもないわ。それよりふたりとも、ちょっと申し訳ないんだけど、私の仕事を手伝ってくれないかしら?」

つぐみ「千聖さんのお仕事を?」

ひまり「いいですよ! 千聖さんにはフリマの時にもお世話になりましたからね!」

ひまり「私たちに出来ることだったらなんでもやりますよー! ね、つぐ!」

つぐみ「そうだね。ウチのお店も千聖さんにはお世話になってますから」

千聖「ありがとう、ふたりとも」

千聖(……出来れば、その気持ちをこの機械の数値にも出してくれますように)

千聖(もう最大値なんて出ませんように……)ポチ、ポチ


羽沢つぐみの百合度 ↓1

上原ひまりの百合度 ↓2


羽沢つぐみ 【25】

千聖「ほっ……」

千聖(よかった、アフターグロウの子たちはみんな高めだったけれど、ちょっと偏りというかそういうのが出ていただけよね)

千聖(つぐみちゃんもひまりちゃんも、とっても純粋な女の)

上原ひまり 【100】

千聖( ゚д゚)


ひまり「あれ、千聖さん? 今度はなんだか魂が抜けたような顔になってますよ?」

つぐみ「大丈夫ですか?」

千聖「……大丈夫。ちょっと、なんていうか……アフターグロウの在り方について疑問を抱いただけだから……」

ひまり「私たちはいつでも“いつも通り”ですよ?」

千聖(平均百合度【71】の“いつも通り”ってなんなのかしらね……)

彩「そういえば、ひまりちゃんって色んな女の子とお買い物に行ったりお出かけするよね」

ひまり「はい! 一緒にお出かけするのは楽しいですからね!」

彩「最近は誰と一緒によくいるなぁとか、そういうのってある?」

ひまり「最近ですか? 最近だと↓1と一緒が多いですね!」


ひまり「日菜先輩と一緒が多いですね!」

千聖「え、ひ、日菜ちゃんと?」

ひまり「はい! 日菜先輩、ちょっとだけよく分からないところがありますけど、お話してると結構気が合うんですよ!」

千聖「そ、そう……珍しいわね、日菜ちゃんと波長が合うのは……」

彩「日菜ちゃん、未だに私たちでも何を考えてるのか分からない部分があるもんね。私なんて振り回されてばっかりだよ」

ひまり「もーっ、そこがいいんじゃないですか、彩さん!」

彩「え、そうなの?」

ひまり「はい! 掴みどころがなくて、猫みたいで、こっちに来たなーって思ったら他のことに興味を引かれてサッと離れてく姿! 心がくすぐられるなぁ」

千聖「……そうね、日菜ちゃんのそういうところが好きっていうファンの人も多いわね」

ひまり「ですよね!」


ひまり「それに日菜先輩、やっぱりアイドルなだけあってとっても可愛いじゃないですか!」

ひまり「いつも好奇心にキラキラ輝いてるぱっちりした瞳……ショートカットの緩くウェーブの入った髪がですね、よく動き回ってるからぴょんぴょん跳ねて、ちらりちらりとのぞく白いうなじが……うぇへへへ……」

千聖「……!?」

ひまり「それとそれと! 身長は普通ですけど、あれで意外とスタイルもいいですよね! スキンシップが多いですから、抱き着かれたりすると特に分かります! 健康的で、柔らかくて、とっても形のいい身体つき……ステージ衣装の丈だってあーんなに短いのに、いつも激しく動き回るから……眩しい太ももが……えへっ」

千聖「あ、あの、ひまりちゃん……?」

ひまり「でもでも本人にはそんな自覚がいーっさいなくて! よくギターソロとかの前にする舌なめずりをして、『あれ~? ひまりちゃん、どうしたの? あたしのどこを見てるのかなぁ~?』なーんて意地悪く言われるんだけど、中身はピュアっピュアで!」

ひまり「一緒にお出かけするたびにそんな風だから……もう辛抱堪らないですよね……もしも私からアクションをかけたらって思うだけで……ふへ、ふへへ……」ウットリ

千聖(まずい、日菜ちゃんが、百合度たったの3の日菜ちゃんが、カンストしている猛獣にロックオンされている)

彩「へぇ~、ひまりちゃんって私たちのライブ、よく見てくれてるんだね!」

ひまり「そりゃあもう……毎晩毎夜、穴が開くくらいに……えへっ」

彩「ありがと! ひまりちゃんの期待に応えられるようにもっともっと頑張るね!」

千聖(止めないと……え、でもどうやって……?)

ひまり「あ、それからですね! 最近は日菜先輩だけじゃなくて↓1とも仲良しです!」

千聖「え」


ひまり「香澄とも仲良しです!」

千聖「え……え!?」

つぐみ「あ、そういえば最近よく香澄ちゃんと一緒に遊びに行くよね、ひまりちゃん」

ひまり「うん! 香澄とも気が合うっていうか、一緒にいるのが楽しいっていうか、そそられるというか……」

彩「そそられる?」

千聖「彩ちゃんは聞かないで。お願い」

ひまり「香澄の“ザ・女の子”っていう部分、いいよね~」

ひまり「いつでも明るくてさ、一緒にいると笑いが絶えないし、スキンシップもどんどん取ってくれるし?」

ひまり「元々人懐っこいけど、踏み込んでいくともっともっと懐いてくれて、商店街でばったり会うとその度その度抱き着いてきたりじゃれついてきたり……」

ひまり「香澄ってば本当に無用心だしガードが緩いし、もしかして誘ってるのかな? ってよく思うなぁ!」

つぐみ「誘う? いつも遊びにはひまりちゃんから誘ってない?」

千聖「つぐみちゃんも耳を塞いでいて。おねがい」

ひまり「ふふふっ。つぐのそういうところ、好きだよっ」

千聖「…………」


ひまり「日菜先輩も香澄も無邪気ですよね~。あんなに魅力的な女の子なのに、すっごい無防備で。そんな可愛くて明るい女の子が攻められたらどうなるんだろうなぁ」

ひまり「きっと私のこともいい友達とか可愛い後輩とかって思ってくれてるんだろうけど、そんな私がちょっと迫ったらどんな顔するのかなぁ」

ひまり「人気の少ない路地とかで壁ドンとかしちゃって……顔を近づけたら、照れるかな? それとも……怖がってくれるかな?」

ひまり「いつもの明るい瞳に、好奇心でキラキラしてる瞳に、ちょっと涙なんて貯めて……ふふ、そんなシーンを想像するだけで……えへへへへ……」

彩「さっきからひまりちゃんの言ってることがよく分かんない……」

つぐみ「あ、彩さんもですか? アフターグロウの中ではこういう話がたまにあるんですけど、実は私もあんまりよく分かってないんですよ」

千聖「ふたりはそのままでいて。いつまでも純粋でいて。おねがいだから」

ひまり「もー! それじゃあまるで私が不純な女の子みたいじゃないですか、千聖さん!」

千聖「今の話を聞いてどこをどう純粋だと捉えろと……?」


つぐみ「あ、ひまりちゃん。そろそろ行かないと……」

ひまり「あっ、そうだね!」

彩「これからどこかに行くの?」

つぐみ「はい。隣駅に猫カフェがオープンしたみたいで……ふたりで行ってみようって話をしてたんです」

彩「へー! いいよね、猫ちゃん。癒されるだろうなぁ」

ひまり「えへへ、可愛いですよね、ネコって!」

彩「うん!」

千聖(……どうしてかしら、ひまりちゃんだけ何か違う言葉を使っているような気が……)

つぐみ「ちょっと行くまでに時間がかかっちゃうので……千聖さんのお手伝いはどうすればいいですか?」

千聖「……もう大丈夫よ」

つぐみ「え、まだ何もしてませんけど……」

千聖「いえ、もう大丈夫。本当、お腹いっぱいだから」

つぐみ「そ、そうですか? それじゃあここで失礼しますね」

ひまり「それでは!」

彩「うん、またねっ!」

千聖「ええ、また……」


彩「日菜ちゃんとひまりちゃんが仲良しって意外だったね」

千聖「……ええ。日菜ちゃんと香澄ちゃんにはもっとガードを固くするように強く言っておかないと」

彩「ガード?」

千聖「彩ちゃんもあんまり無防備でいちゃダメよ?」

彩「うーん……分かったよ?」

千聖(絶対に分かってないわね。……でも分かってもらうのもちょっと嫌だわ……)

↓1「あれ……?」


月島まりな「彩ちゃんに千聖ちゃん」

彩「あ、まりなさん! こんにちは!」

千聖「こんにちは、まりなさん」

まりな「うん、こんにちは。……千聖ちゃん?」

千聖「はい?」

まりな「少し顔色が悪いみたいだけど……大丈夫?」

千聖「……ええ、大丈夫です。少し心労のようなものが重なっただけで……」

まりな「本当? もし辛いならCiRCLEで休んでいく?」

彩「千聖ちゃん、あんまり無理したら駄目だよ。せっかくだし少し寄って行こうよ」

千聖「そう……ね。少しお邪魔しますね、まりさなん」

まりな「うん。千聖ちゃんたちならいつでも歓迎だよ」


……………………


――CiRCLE ラウンジ――

まりな「ここなら使ってくれて大丈夫だからね」

千聖「ありがとうございます、まりなさん」

彩「ありがとうございます!」

まりな「それにしても珍しいね、千聖ちゃんが疲れた顔してるなんて」

千聖「ええ、ちょっと……仕事に精を出し過ぎたみたいで」

まりな「あぁ……千聖ちゃん、いつでもお仕事に一生懸命だもんね。もし私に手伝えることがあったらなんでも言ってね?」

千聖「いえ、それは流石に悪いですから……」

まりな「気にしないでいいよ。ウチを使ってくれる子はみんな妹みたいなものなんだから。辛い時くらい、お姉さんをどんどん頼って?」

千聖「……ありがとうございます」

千聖(正直に言えば、そのセリフだけで私は随分助けられている訳だけど……)

千聖(まりなさんもお世話になってる人と言えるし、こんなふざけた機械の餌食にする訳にはいかない……)

千聖(けれど、そんな意思とは裏腹に、早く終わらせたいという私の願望が勝手に指を動かしていた)ポチ


月島まりなの百合度↓1


月島まりな 【64】

千聖「…………」

千聖(なんて反応すればいいのかしら……)

千聖(アフターグロウに比べれば全然普通の数値だけど、一般的に見たら少し高め)

千聖(……アレよね、きっと大人の人ってみんなこれくらいなんでしょうね)

彩「あ、ラウンジに私たちの写真飾ってあるんですね」

まりな「うん。ウチでライブしてくれた時の写真だよ」

彩「わー、懐かしいなぁ……この時は結構音外したりしてたような……うぅ、なんだか恥ずかしいな」

まりな「ふふ、そういうのもライブの醍醐味だよ。その場その場でしか聞けない音楽を聞けることに価値があるんだから」

まりな「きっと彩ちゃんのファンの人も、そういうのが聞けて喜んでるよ」

彩「そ、そうですか? えへへ、ありがとうございます」

千聖「まりなさんの言うことはもっともだけど、彩ちゃんはもう少しリズムに気をつけるべきじゃないかしら? 今日のレッスンでも走りがちだったし」

彩「うっ……」

千聖「なんて、ごめんなさいね。ちょっと意地悪な言い方になってしまったわ」

千聖「彩ちゃんのそういうところは持ち味だから、のびのび歌っていてくれる方がきっとファンのみなさんも喜ぶはずよ」

彩「うん、ありがと。でもやっぱりもう少し気をつけて歌うよ……」


まりな「……ふふ」

千聖「まりなさん? どうかしましたか?」

まりな「ううん。やっぱりウチを使ってくれる子たちのやり取り、いいなぁって」

彩「そ、そうですか?」

まりな「うん。セイシュンしてるなぁ、若いなぁーって。なんだか眩しいよ」

まりな「このライブの写真に映ってる姿もキラキラしてるし……お肌だってすごく綺麗で髪もツヤツヤ、弾ける汗すらいい匂いがしそうで……」

千聖「……まりなさん?」

まりな「……はっ!? ご、ごめん、なんでもないよ!」

まりな「え、えーっと、とにかく若いっていいなぁって! それだけだから!」

彩「まりなさんだってすごく綺麗ですよ! 近くにいると安心する匂いがするし、わぁー、大人の女の人だーって思いますから!」

まりな「彩ちゃん……ありがとね。あーもう、本当にウチを使ってくれる子はみんな可愛くてすごくイイ子なんだから。お姉さん、なんだか嬉しくなっちゃうなっ」


「まりなさーん! どこですかー!」

まりな「あれ、スタッフくんの声……あ、そっか。もう音響メーカーの人が来る時間だ」

まりな「私は仕事に戻るけど、千聖ちゃんと彩ちゃんは好きなだけここにいていいからね」

彩「ありがとうございます!」

千聖「お言葉に甘えます」

まりな「うん、ゆっくりしていってね。それじゃ!」


彩「千聖ちゃん、お水飲む?」

千聖「ええ、そうね。頂こうかしら」

彩「それじゃあサーバーで入れてくるね」

千聖「ありがとう、彩ちゃん」

↓1「こんにちは」

↓2「お邪魔します」


湊友希那「こんにちは」

宇田川あこ「お邪魔しまーす!」

千聖「あら、友希那ちゃんに……あこ、ちゃん……」

あこ「こんにちはー!」

千聖「ええ、こんにちは……」

彩「はい、お水だよ……あ、友希那ちゃんとあこちゃん!」

友希那「こんにちは、丸山さん。白鷺さんと練習に来たのかしら?」

彩「ううん、千聖ちゃんのお仕事を手伝ってて、今は休憩中なんだ」

友希那「そうなのね。暑い中、お疲れさま」

彩「うん、ありがと」


千聖「ふたりは練習……に来たのかしら?」

あこ「ううん。あこたちはねー、新曲のヒントを探して回ってるんだ!」

彩「新曲のヒント?」

友希那「ええ。私たちが普段何気なく触れているものにこそ、誰かに感動を与えるような何かが宿っている。そんな気がするのよ」

友希那「音楽は感性が生み出す旋律。日常の中で、何てことない顔をしている見慣れたものたちに改めて顔を突き合わせてみれば、新しい発見があると思ったの」

彩「へぇ……。友希那ちゃんたちってやっぱりすごいなぁ。それで、今はCiRCLEに来たんだ?」

友希那「ええ。ここにも私たちの日常が、これまで積み重ねてきた旅路の軌跡がたくさんあるから」

千聖「ここに来るまで、何かいい発見はあったのかしら?」

友希那「たくさんあったわ。ありすぎて、ここに来る時間が遅れてしまうほど……私は……いえ、私たちロゼリアは、たくさんの大切なものに出会っていたんだと改めて認識させられたわ」フッ

彩「わー、カッコいいなぁ」

あこ「友希那さん、野良猫のたまり場から1時間くらい離れようとしませんでしたもんね!」

友希那「……あこ。それは今言わなくてもいいことよ」

千聖(友希那ちゃん……せっかく決まってたのに……)

彩(ちょっと顔が赤くなってる。かわいい)


友希那「……コホン。外を歩き詰めだったし、私たちも少し休憩していきましょうか」

あこ「はーい、賛成です!」

友希那「ソファーにお邪魔するわね」

千聖「どうぞお構いなく」

あこ「あやさんたちはどんなお仕事をしてたんですか?」

彩「あーうん、実は私もどんな仕事なのか知らなくて……」

友希那「そうなの?」

彩「うん。パスパレのお仕事じゃなくて千聖ちゃんのお仕事だから、詳しい内容は知らないんだ」

千聖「……まぁ、これは説明するようなものでもないから」

千聖(というか、おおっぴらに説明したくない)

あこ「へー、そうなんだ」

千聖「よかったら友希那ちゃんとあこちゃんも手伝ってくれないかしら?」

あこ「あこはいいですよ! 友希那さんはどうしますか?」

友希那「そうね。何事も経験だし……そんなに難しいことじゃなければ」

彩「やることは特にないみたいだよ。千聖ちゃん、そこにいるだけでいいってみんなに言ってたから」

友希那「そうなのね。それなら私も手伝うことはやぶさかではないわ」

千聖「ええ、ありがとう」

千聖(……ロゼリア、燐子ちゃんがかなり危なかったわよね)

千聖(それでもアフターグロウよりはマシだけど……あこちゃんは巴ちゃんの愛――あれを愛と表現していいのか分からないけど、とにかく愛を一身に受けている訳だし、果たしてどうなるのか)

千聖(……考えていても仕方ないわね。もうどうにでもなれ)ポチ、ポチ


湊友希那の百合度 ↓1

宇田川あこの百合度 ↓2


湊友希那 【18】

宇田川あこ 【93】

千聖「…………」

千聖(宇田川姉妹ェ……)

千聖(商店街組とアフターグロウに関わる人たちには何かそういう風になってしまう呪いでもかかっているのかしら……)ゲンナリ

友希那「……? どうしたのかしら、白鷺さん。急に疲れた顔になったわよ?」

千聖「気にしないで……友希那ちゃんもあこちゃんも、なんとなく分かってたことだから……」

友希那「?」

あこ「はー……暑い中を歩いた後だと、お水でもすっごく美味しく感じるなぁー」

彩「うん。美味しいよね、冷たいお水」

千聖「……ねぇ、あこちゃん?」

あこ「ん、なぁに?」

千聖「あのね? ちょっと聞きたいんだけど……こう、あこちゃんが一番仲良くしてる女の子って、誰が一番に思い浮かぶかしら……」

あこ「んーっと……↓1かな!」


あこ「紗夜さんかな!」

千聖「!?」

千聖「えっ……と、巴ちゃんじゃなくて?」

あこ「紗夜さん!」

千聖「…………」

千聖「……?」

千聖(…………)

千聖「!?!?」

友希那「そういえば、最近のあこはよく紗夜と一緒にいるわね」

あこ「紗夜さんはNFO仲間でもありますからね!」

彩「NFO?」

友希那「そういうパソコンのゲームがあるのよ。元々はあこと燐子しかやっていなかったんだけど、ちょっとロゼリアの全員でやることがあって、それからは紗夜もちょこちょこやってるみたいなの」

彩「へぇ~」


千聖「え、えっと……あこちゃん?」

あこ「なんですか?」

千聖「その、あこちゃんって燐子ちゃんとも仲が良い……わよね?」

あこ「はい! りんりんはあこの大親友です!」

千聖「え、でも紗夜ちゃんと仲良くすることの方が多いの……?」

あこ「んーっとね、りんりんと紗夜さんはちょっと違うっていうか……あのね?」

あこ「紗夜さんがギターを弾いてる時とかね、すっごい速さで左手が動くんだ。コードを押さえたり、ギターソロでひとつひとつの弦を押さえたりとか」

千聖「……そうよね、ベースよりもギターの方が細かく速く動かすことが多いわよね」


あこ「でね、紗夜さんの指ってすっごく細くて綺麗で……もしもあの指であこの髪を撫でたりしてくれたらなぁって思うと……」

千聖「お、思うと……?」

あこ「なんかね、背中の辺りがぞくぞく~って!」

千聖「……え」

あこ「えへへっ。それにね、髪の毛だけじゃなくて、もしも背中とか首筋とかふとももとか……いろんな場所に紗夜さんのあの綺麗な指が触ってくれたらなって思うと……えへへへ……」ウットリ

千聖「」

あこ「ギターソロを弾くとこを見てて、もしもあこが紗夜さんのギターだったら、あの綺麗な指で身体中を撫でまわされて、時には激しくストロークされたり、時には切ないアルペジオを奏でられたりしたらって思うだけで……もうあこは……あこは……!」

友希那「ふふ、あこは音楽そのものを身体で感じ取っているのね」

あこ「はい! カラダでカンジてます!」

彩「わー、すごいなぁあこちゃん」

あこ「えへ、褒められちゃった」

千聖「……えぇ」

千聖(宇田川家の教育方針は一体どうなっているの……?)


友希那「けど、あまり紗夜にばかり懐いているから、最近燐子が寂しげな顔をしていたわよ」

千聖(そうよ、それも問題よ。燐子ちゃんは紗夜ちゃんのことが……あれ、でもあこちゃんと燐子ちゃんは親友で……?)

あこ「あ、それは大丈夫ですよ! ちゃーんとりんりんとは話し合って決めてますから!」

千聖「え、話……えっ!?」

あこ「りんりんは『あこちゃんとなら……うん、ちょっとだけ嫉妬しちゃうかもしれないけど……いいよ……?』って言ってくれてますし、あこも『りんりんと紗夜さんとあこが一緒って素敵だよね!』って思いますから!」

千聖「」

友希那「よく分からないけど、3人の間で何か決まりがあるのね」

彩「仲が良いっていいことだよね!」

あこ「うんっ!」


千聖「…………」

千聖(ちょっと整理しましょう)

千聖(えぇっと、まず燐子ちゃんは紗夜ちゃんが好き。恋愛的な意味で)

千聖(で、はぐみちゃんも紗夜ちゃんが好き。恋愛的な意味で)

千聖(そしてあこちゃんも紗夜ちゃんが好き。ガチ的な意味で)

千聖「…………」

千聖(それで、そんなはぐみちゃんをモカちゃんが好き。恋愛的な意味で)

千聖(……で、悪鬼羅刹な巴ちゃんもあこちゃんを愛してる。ガチ的な意味で)

千聖(最後に、その渦中にいる紗夜ちゃんは特に誰がどうってこともなく、ただ、【雰囲気に流されるレベル】の女の子……)


友希那「かーなーしーみのー むこーうーへとー たどりーつけーるならぁー♪」

彩「何の歌?」

友希那「よく知らないけれど、最近、燐子がよく口ずさんでいるのよ。なんでもある学校の日々を題材にしたアニメの名曲らしいわ」

彩「へぇ~」


千聖「…………」

千聖(巴ちゃんなんて確実に愧死機構がないし……もしも紗夜ちゃんに危害が及ぶなら、あの燐子ちゃんがただ手をこまねいてる訳がない……)

千聖(モカちゃんだってあの様子じゃ何をしでかすか分からないし……花女の生徒会室や商店街、CiRCLEがいつ劫火に見舞われても不思議じゃないわ……)


友希那「~♪」ポロンポロン♪

彩「友希那ちゃん、ピアノでなにを弾いてるの?」

友希那「ドヴォルザークの交響曲第9番、『新世界より』の第2楽章よ。最近燐子がよく弾いているから耳に残っているのよね」

彩「クラシック? そういうのが弾けるってカッコいいなぁ」

千聖(ああ……考えれば考えるほど、今日の業をなし終えても心かろく安らえない……安寧の家路が遠い……)


あこ「あ、友希那さん。そろそろCiRCLEの違う場所も見て回りませんか?」

友希那「そうね。ひと口にCiRCLEと言っても、色々な場所に想い出が落ちているものだわ。ラウンジ、ロビー、スタジオ、ライブステージ……」

友希那「そこにいる人たちの表情や仕草からも感じ取れるものがあるはずだわ」

あこ「よーっし、それじゃあ行きましょうーっ!」

友希那「ええ。休憩中のところに騒がしくしてしまってごめんなさい、丸山さん、白鷺さん」

彩「ううん。全然大丈夫だよ」

千聖「…………」

千聖(どうしよう、彩ちゃんの言葉に素直に頷けないわ……)

あこ「それじゃあまたね、あやさん、ちさとさん!」

友希那「また」

彩「じゃあね、友希那ちゃん、あこちゃん!」

千聖「ええ、また……無事に会えることを祈っているわ……」

千聖(ロゼリア――というか、紗夜ちゃんをめぐる色恋沙汰と呼ぶにはあまりに煮詰まり過ぎた人間関係には、何もない平和な時間に会えますように……)


―しばらくして―

彩「なんだか千聖ちゃん、ここに来る前より疲れてない?」

千聖「ええ、そうね……ちょっと色々と参ってしまいそうだわ……」

彩「大丈夫? お水以外にも、何か元気が出るようなもの買ってこようか?」

千聖「いえ、大丈夫よ……しばらくゆっくりしてれば……多分……」

彩「そう? 無理そうなら早めに言ってね?」

千聖「ええ、ありがとう」

千聖(正直もうギブアップしたい。誰か、こう、癒しを振りまいてくれる人でも来ないかしら……)

↓1「こ、こんにちは……」


松原花音「こ、こんにちは……」

彩「あ、花音ちゃん!」

千聖「花音! よく来たわね、さぁさぁ、ここに座っていいわよ」

花音「え、あ、うん……それじゃあ、お邪魔するね」トテトテ、ポス

千聖(花音のふわふわぽやぽやした空気がすぐ隣に……)

花音「どうしたの、千聖ちゃん? なんだか疲れた顔になってない?」

千聖「ええ、ちょっとね。色々と心労じみたものが溜まる仕事をしていたから」

花音「そうなんだ……。大変だね、千聖ちゃん。お疲れさま」

千聖「ありがとう、花音」

千聖(癒されるわ……)


彩「花音ちゃんはあれかな、みんなに笑顔を届けに来たの?」

花音「うん、そうだよ。こころちゃんたちに聞いたの?」

彩「うん! ミッシェルキャンディーもたくさんもらったよ!」

花音「そっか。私も持ってるんだけど……もういらないかな?」

千聖「いいえ、もらうわ。ちょうど甘いものが欲しかったのよ」

彩「キャンディー、可愛いからいくつでももらうよ!」

花音「それじゃあはい、どうぞ」つキャンディー

千聖「ありがとう」

彩「花音ちゃん、ありがと!」

花音「どういたしまして。えへへ、ふたりが喜んでくれたならよかった」ホニャ

千聖(ああ……ほにゃっとした笑顔が素晴らしいわね……花音は心の清涼剤よ)


彩「花音ちゃんはひとりで回ってるの?」

花音「うん。私だってハロハピの中ならお姉さんだし……ひとりで出来るよって」

千聖「大丈夫? 迷子にならなかった?」

花音「大丈夫……って言いたいけど、ちょっとだけ……」

彩「お外暑いし、無理しちゃダメだよ?」

花音「ありがと、彩ちゃん」ニコ

千聖「ふふ、花音がこんなに頑張ってるんだもの……私も頑張らなくちゃね」

彩「あ、千聖ちゃん。元気出てきた?」

千聖「ええ。こんなことでめげてちゃいけないわね」

彩「元気が出たみたいでよかったっ」

花音「私でも笑顔を届けられたかな……?」

千聖「もちろんよ。花音は人を笑顔にさせる天才ね」

花音「そ、それはほめ過ぎだよ……えへへ」

千聖(照れてるけど満更でもなさそうな顔だわ)

千聖(ふふっ、やっぱり花音は癒し系ね。これならきっと、このヘンテコな機械の数値もパスパレやポピパの平均値くらいしかないはずよ)

千聖(信じてるわよ、花音)ポチ


松原花音の百合度↓1



松原花音の百合度 【35】


千聖(思っていたよりは高かったけれど……でも、あの愛憎をぎっとぎとに煮詰めた相関関係からしたら、全然普通ね)

千聖(それに花音がそういうことにちょっと素質があるって思うと……こう、なんだか、言葉に出来ない感情が胸に宿るわ)

千聖(だからセーフ。誰がなんと言おうとセーフなのよ)

花音「……? なんだか嬉しそうだね、千聖ちゃん」

千聖「ええ、そうね。やっぱり花音は花音なんだなって思って、少し嬉しくなっちゃったのよ」

花音「うーん、よく分からないけど……千聖ちゃんが嬉しいなら私も嬉しいよ」ニコ

彩「千聖ちゃんが嬉しくて花音ちゃんが嬉しいなら、なんだか私も嬉しいなっ」

千聖「ふふ、そうね。幸せの連鎖って素敵よね」

花音「うん」

彩「そうだね!」

千聖「うふふ」

花音「えへへ」

彩「あはは」


千聖「花音はまだまだみんなに笑顔を配りに行くのかしら?」

花音「えっと、私の担当はCiRCLEだけで終わりだから……あとでまりなさんたちにも挨拶しに行くくらいかな」

彩「あれ、そうなんだ? こころちゃんと美咲ちゃんはすっごくたくさんの場所に行ってるみたいだったけど」

花音「美咲ちゃんがね、私が迷子になっても大丈夫なようにって、担当する場所を減らしてくれたんだ」

千聖「そうなのね」

花音「でもね……気付いたら電車に乗ってたり、隣町にいたりして……」

彩「あー……迷子になっちゃったんだ」

花音「うん……。でも、せっかくだからそこで会った人たちにも笑顔を配ってきたんだ。だから、迷子になって逆によかったのかなぁって思えたよ」

花音「きっと美咲ちゃんもそれを見越して担当場所をCiRCLEだけにしてくれたんだと思うな」

千聖「ふふ、花音のそういうところ、とても素敵だと思うわよ」

花音「そ、そう? えへへ、ありがとね」


彩「こっちに戻ってくる時は迷わずにこれた?」

花音「うん。ちょうど隣駅でひまりちゃんとつぐみちゃんに会って……こっちの駅まで案内してもらったんだ」

彩「あ、そういえば隣駅の猫カフェに行くって言ってたね、ひまりちゃんたち」

千聖「……ええ、そうだったわね」

花音「ふたりともすっごく親切でね、特にひまりちゃんなんて……」

ひまり『それじゃあ駅まで案内しますよ! 私が花音さんの手を引いてあげますから、遠慮せずに頼ってください!』

花音「って笑顔で言ってくれてね?」

千聖「……そ、そう……」

花音「私ってけっこう、あっちにふらふらこっちにふらふら~ってしやすいんだけど、道から逸れそうになるたびにひまりちゃんは……」

ひまり『花音さん、こっちですよこっち! もうっ、手だけじゃ危ないんで、腰にも手を回しちゃいますねっ、えへへ!』

花音「って、嬉しそうに私を案内してくれたんだ。つぐみちゃんも私が迷わないように先導してくれたし……」

彩「へぇ~。ひまりちゃんとつぐみちゃんってやっぱりとってもいい子だね!」

花音「うん」

千聖「…………」


千聖「ね、ねぇ、花音?」

花音「どうしたの?」

千聖「その……ひまりちゃん、何か変なこととか言ってなかったわよね……?」

花音「へんなこと……? うーん……あ」

千聖(やっぱり心当たりが……?)

花音「えっとね、変なことかは分からないけど……道案内をしてくれたお礼を言った時に、」

ひまり『気にしないでください! 私と花音さんの仲じゃないですか!』

ひまり『それに私、花音さんみたいな女の子、だいだいだーい好きですからっ!』

花音「って。それから……」

千聖「そ、それから?」

ひまり『やっぱり花音さんって何気にスタイルいいですよね。腰回りのぽわぽわ感なんてまさに女の子って感じですし……これでスキンシップが多いタイプだったら、私、花音さんを誘拐――じゃなくて、花音さんに恋しちゃってましたよ!』

花音「なんて言われちゃって……」

千聖「…………」

花音「女の子同士だけど、そういう風に褒められると……嬉しいけどちょっと照れちゃうよね。えへへ」

千聖「……花音」ガシッ

花音「ひゃっ。ど、どうしたの、急に私の肩を掴んで……」

千聖「お願い、お願いだからもっとガードを硬くして」

花音「え、ど、どういう意味……?」

千聖「お願い。どうか、あなただけはいつまでもいつまでもあの手のガチな人たちとは無縁でいて欲しいの。おねがい」

花音「よ、よく分からないけど……頑張るね……?」


―しばらくして―

花音「それじゃあ、そろそろCiRCLEにいる他の人のところにも行ってくるね」

彩「うん。キャンディありがとね、花音ちゃん」

千聖「もう迷子になることはないとは思うけど、気をつけてね」

花音「うん」

千聖「特に紗夜ちゃんを取り巻く世界の人々に出くわしたら、無理せずすぐに逃げるのよ」

花音「う、うん……?」

千聖「辛いことや困ったことがあったらすぐに連絡してちょうだいね。出来るだけ早く花音を助けに行くから」

千聖「それと、彩ちゃんがさっき言った通り、外はまだまだ暑いわ。熱中症になって倒れないように……それと、危ない人についていかないようにするのよ。特にひまりちゃんみたいなタイプには気をつけなさい」

花音「え、えっと……」

千聖「水分はちゃんと摂った? 摂れるうちに摂っておかないと後で苦労するかもしれないからね、もし不安ならここのサーバーのお水を飲んでおきなさいね。それから――」

花音「だ、大丈夫だよ、千聖ちゃん」


千聖「そ、そう? ごめんなさい、ちょっと口うるさくなってしまったわね」

花音「ううん。私のことを心配してくれるんだなって思うと嬉しいし、その……」

彩「なんだかお母さんみたいだよね、千聖ちゃんって」

花音「……うん。お母さんとお話してるみたいで、ちょっとホッとしたから」

千聖「花音にまでお母さんっぽいって思われてしまったわ……」

花音「あ、ご、ごめんね? 同い年なのに……」

千聖「……いいえ。それで花音がホッとするなら構わないわ」

彩「あれ、私の時と対応が違うような……」

千聖「気のせいよ。とにかく、花音。無理はしないようにね?」

花音「うん、ありがとう。千聖ちゃんと彩ちゃんも、お仕事頑張ってね」

千聖「ええ、ありがとう」

彩「花音ちゃんも頑張ってね!」

花音「うん。それじゃあね、ふたりとも」


彩「花音ちゃんも頑張ってるんだね」

千聖「そうね。私たちももうひと頑張りしないといけないわ」

彩「うんっ! って言っても、未だに私、千聖ちゃんがどんなお仕事してるのか分かってないんだけどね」

千聖「彩ちゃんは気にしなくていいの。あなたも花音と同じ側の人間なんだから」

彩「花音ちゃんと同じ側……?」

千聖「気にしないで。さ、休憩も終わりにして、そろそろ行きましょうか」

彩「あ、待ってよー千聖ちゃーん!」


――駅前――

千聖(CiRCLEで休憩しつつ、まりなさん、友希那ちゃん、あこちゃん、花音の百合度をなんてものを測定して……これで合計が24人)

千聖(あとひとり計れば四捨五入で30人。そしてちょうどあとひとり、よく顔を合わせる女の子がいる訳だけど……)

千聖「そう簡単に出会えないわよね……」

彩「あ、りみちゃんだ」

千聖「え」

彩「おーい、りみちゃーん!」

牛込りみ「あ、彩先輩に千聖先輩。こんにちは」

彩「こんにちはっ」

千聖「……こんにちは、りみちゃん」

千聖(渡りに船……あまりにもご都合主義的な邂逅だけれど……気にしたら負けね)


彩「どこかにお出かけしてきたの?」

りみ「はい。ショッピングモールの映画館で、新作のホラー映画を見てきたんですよ」

千聖「りみちゃんからホラー映画って聞くと、あの時のことを思い出すわね」

りみ「あの時……あっ、美咲ちゃんと一緒にドッキリを仕掛けられた時のことですか?」

千聖「ええ」

彩「あー、あったね。ふふ、あの時はちょっと楽しかったな」

りみ「私も楽しかったです。ああいうドッキリならまた体験してみたいなぁ」

千聖「驚かせてしまっただけかと思っていたけれど、楽しんでもらえたのなら何よりよ」


りみ「ふたりはこれからどこかへ行くんですか?」

彩「ううん、私たちはお仕事中なんだ」

りみ「お仕事……こんなに暑い中、大変ですね。お疲れさまです」

千聖「ええ、ありがとう。よければりみちゃんにも手伝ってほしいんだけど……」

りみ「えっ、でも私、そんなに難しいことは……」

彩「大丈夫だよ。ポピパの他のみんなにも手伝ってもらったし、みんな私たちとお話するだけだったから」

りみ「そ、それなら……が、頑張ります……!」

千聖「ありがとう、りみちゃん」

千聖(これで最後……のハズよね)

千聖(みんな純粋だったポピパ、その中でも大人しくて小動物みたいなりみちゃん。……ふふ、これで高い数値が出る訳がないわ)

千聖(りみちゃん、信じているわよ)ポチ


牛込りみの百合度 ↓1



牛込りみの百合度 【94】


千聖「」

千聖(【94】)

千聖(【94】ってなんなのよ)

千聖(どうして各バンドにひとりはガチ側の人間がいるのよ)

千聖(りみちゃん、信じていたのに……)



「おねえちゃん、信じるってどういうことか、わかる?」

 私の頭の中に響いた言葉。それがある夏の情景を想起させ、妹の澄ました声が浮かび上がらせる。あれはいつのことだったか……確か、妹が中二病を絶賛拗らせ中の、何年か前の夏の日だったと思う。

 私は自分の部屋でドラマの台本を読んでいて、彼女が言葉を吐き出しつつ扉を開いた拍子に部屋の空気が規則的に揺れ動いて、生まれた時からそういう風に仕組まれていたかのように、白いカーテンも揺れ動いた。その隙間から射した夏の陽光だとか、それが作るカーテンの影だとか、そういったものに何か感傷的な気持ちも揺れ動いたような気がしたけれど、言葉の通り気のせいだろう。雨の匂いに懐かしくなるような、夕焼け空に泣きたくなるようなことと一緒だ。子供のころによく遊んだ公園の大きな遊具たちが、気付いたら自分の身体よりずっと小さくなっていた時に覚える感傷と一緒だ。人間はそういう風に出来ている。何でもないことに何か意味をこじつけ、綺麗な自分を演出したがるものだ。それはからっぽの空き瓶を指して、「ここには何も入ってない? 何を言っている、空気が入っているじゃないか」と得意気に鼻を鳴らすのと同じことで、他人に言葉を尽くして伝えたところで何の意味もない。ただ鼻で笑われて一蹴されるだけのことだろう。

 だから私は妹の言葉に対して鼻で笑って返した。ああ、また何かに影響されたのね、生意気だけどやっぱり可愛いところがあるのね……とは言葉にせずに。

 妹の右手に手をやれば、そこには彼女のお気に入りの幾何学模様の刺繍が施されたブックカバーを纏った分厚い文庫本があった。ああ、なるほど、今日は何かの小説に啓蒙されたのね。ふふ、あなたはいつまでも純粋ね……と思いながら、私は女優の笑みを作って見せる。その笑顔の構成要素は愛想が八割、慈しみが一割、億劫が一割。最近は億劫を割増しにして見せているけれど、可愛い可愛い愚妹は今日も今日とてその色だけには気付かない。本当に能天気で微笑ましい性格だ。

「さぁ……信じる、よね?」

「ええ、そうよ。分からないかしら?」

 仰々しく畏まった口調に息が漏れそうになるのを堪える。まだ変声期を迎えて間もない少女が、まるで死刑囚に対して「今日はお前の執行日だ」と伝えるような、世界を征服せしめんとする魔王が「世界の半分をお前にやろう」とそそのかすような、カリスマに溢れた指導者が「立てよ国民!」と雄弁を振るうかのような、そんな声を精一杯出そうとしている。それが滑稽で可愛らしくて、私の仮面に混ぜた億劫はいつも途中で消えてしまう。

「ええ、分からないわね。よかったら教えてくれるかしら?」

 その言葉を待ってました、と言わんばかりに妹が鼻を鳴らす。今にも空瓶を指して、「そこには空気が入っているわ!」と言いそうだった。

「ふふ、いいわよ。信じるということはね」

 もったいつける口振りだ。きっとその焦らしが大切なんだろう。勝利を確信したあとの余韻を噛みしめるような、そんな得意げな顔をして、「まったく、おねえちゃんは仕方ないんだから」と言いたげに口角を上げて、かけてもいないエア眼鏡を掌で押し上げるような仕草をして、私が噴き出しそうになるのを堪えているのに気付きもしないで、とうとう彼女は答えを口にする。

「裏切られてもいいと思うこと。裏切られても後悔しないということ。そういうことよ」

「そうなのね。またひとつ勉強になったわ」

 妹は目を細める。それから得意気に瞳を閉じて、胸を張る。そうして、私の笑顔が慈しみ十割になっていることに気付かないまま、恐らくその小説の主人公か何かの決め台詞だろう言葉をクールに、すごくカッコつけて吐き出した。

「まぁ、戯言だけどね」

 私は堪えきれずにとうとう噴き出した。



彩「――ちゃん、千聖ちゃん?」

千聖「はっ!?」

りみ「大丈夫ですか? なんだかすごいボーっとしてましたけど……」

千聖「え、ええ、大丈夫……ちょっとね、現実逃避というか、妹とのハートフルな思い出が脳裏に蘇っただけだから……」

彩「え、それって本当に大丈夫なの……?」

千聖「大丈夫、問題ないわ。あの頃のあの子は可愛らしかったし、あの後ずっと相手をしてあげたし」

りみ「え……?」

千聖「……ごめんなさい、なんでもないわ」

りみ「そ、そうですか……」


千聖「それより、りみちゃん……ちょっと聞きたいんだけど」

りみ「は、はいっ」

千聖「他意はないんだけど……あの、あのね? 最近……こう、特別に仲良くしてるなぁーって女の子……誰かいるかしら……?」

りみ「特別に仲良く……あ、↓1ですね」


りみ「巴ちゃんですね」

千聖「聞き間違いよね」

りみ「えっ」

千聖「私の聞き間違いよね。ふふ、やっぱり少し疲れてるのかもしれないわ」

千聖(そんな、りみちゃんが悪鬼羅刹な巴ちゃんにガチ恋勢だなんて、ふふ、悪い冗談だわ。今日は帰りに妹へお土産でも買っていってあげましょう。何かこう、幾何学的なものでも)

千聖「ふふ、ふふふ……」

彩「へぇー、りみちゃんって巴ちゃんと仲が良いんだ?」

りみ「はい」

彩「なんだか意外だなぁ」

りみ「ちょっと前から蘭ちゃんとひまりちゃんとも交流があって……アフターグロウのみんなとも仲良しになりました」

彩「なるほどね! いいよね、そうやって友達の輪が広がってくの!」サークリングノポーズ

千聖「…………」


千聖(彩ちゃんがどんどん事実を確定させていく……)

千聖(……私の聞き間違いじゃなかったのね……)

彩「でも、なんだろう……」

りみ「はい?」

彩「なんていうか、りみちゃんが巴ちゃんと並んで歩いてると……身長差がすごくて、兄妹みたいに見えそうだなぁって」

千聖「兄妹って、巴ちゃんは一応女の子――」

りみ「そうっ、それなんです!」

千聖「え」

りみ「巴ちゃんと一緒にいて、スラリとした長身から見下ろされると……すっごくきゅんってするんですよ! 彩先輩は分かりませんかっ?」

彩「あー……分かるような、分からないような?」

りみ「千聖先輩はっ?」

千聖「えーっと……ごめんなさい、薫と並ぶことが多いけど、全然まったくそんなことは感じないわ」

りみ「そっかぁ……」


千聖「見下ろされるのが好きなの?」

千聖(……あれ、なんでこんなことを聞いてしまったんだろう)

りみ「はい、好きです!」

りみ「薫さんもそうなんですけど、背の高い人って素敵じゃないですか。すごくしっかりしてて、私の全部に覆いかぶさってくれそうで……」

彩「りみちゃん、薫さんのファンだもんね」

りみ「はい。でも、薫さんはやっぱり王子様なんです」

彩「王子様……みんなに平等に優しい的な?」

りみ「それですね。すごくカッコイイですけど、やっぱり高嶺の花っていうか……棘が足りないっていうか……」

彩「棘?」

りみ「その点、巴ちゃんはすごいんですよっ。見るからにワイルドなオラオラ系で、ちょっとだけぶっきらぼうなところがあるんだけどでも実は優しくて……」

千聖「……けど巴ちゃん、その……本気になるとすごく怖いわよ」

彩「…………」コクコク

千聖(あ、彩ちゃん、多分さっきの悪鬼羅刹を思い出してるわね……また慰めないといえけないわ……)

りみ「そこです!!」

千聖「わっ」


りみ「ああ見えて優しい、でも怒るとすごく怖い……それがいいんです!!」

りみ「機嫌が悪い時とかに近くにて、最初はきっと優しく諭してくれるんですよ。『わりぃ、今は相手できねぇや。ごめんな』って。それでもしつこく傍にいようとすると、段々言葉が荒くなっていって……」

巴『あのなぁ、分かるだろ? お前もアタシとの付き合いがなげーんだし』

巴『今な、イラついてんだよ。分かったら離れろ。どうなっても知らねぇぞ』

りみ「……って、怒るんですよ。相手を傷付けないようにって!」

千聖「え、ええ……」

りみ「それでもなお傍にいようとすると、とうとう巴ちゃんの堪忍袋の緒も切れて……」

<壁ドーンッ

巴『お前さ、いい加減にしろよ? あんだけ言ってアタシの傍にいるってことは、そういうことだよな? あぁ?』

巴『いいよ、お前がその気なら。もう後悔してもおせーぞ。どうなっても知らないからな』

りみ「……そして壁ドンとか床ドンとか股ドンで逃げ場を塞がれて、あの大きな身体が私に覆いかぶさって……荒ぶった巴ちゃんの気の向くままに……えへへへへ……」ウットリ

彩「千聖ちゃん、どうして私の耳を塞いでるの?」

千聖「気にしないで。彩ちゃんにはちょっと……まだ早いことだから」

彩「なに言ってるのか全然聞こえないよ~」


りみ「そういうのって……素敵ですよねっ」

千聖「流石に頷けないわ、りみちゃん……」

りみ「そうですか……やっと誰かに話せたって思ったのに……」

千聖「出来ればその想いは誰にも打ち明けない方がよかったと思うわよ……というか、それより、りみちゃん」

りみ「はい?」

千聖「その、こう言っては何だけど……巴ちゃんはあこちゃんのことを溺愛――いえもういっそパラノイアってくらいにアレしてるけど」

りみ「知ってますよ?」

千聖「え」

千聖「…………」

千聖「えっ!?」


りみ「決してこちらに向くことがない羅針盤の針……だけど、何かの間違いや、一時の気の迷いでフラフラとこちらを向くこともあるかもしれません」

りみ「その一瞬だけでいいんです。気まぐれな風に回り続ける風見鶏が、一瞬だけ私の方を向いてくれた。ただその一瞬でいいんです」

りみ「“The course of true love never did run smooth.”」

りみ「つまり……そういうことです」

千聖(『真の恋の道は、茨の道である』……だったかしら)

千聖(薫がしたり顔で言うよりよっぽど真に迫っているわね……)

千聖「えぇと、りみちゃん? そんな、まるでDVから逃れられない被虐者の呪いじみた考えはよくないわよ……?」

りみ「被虐者の呪い……えへへ、ホラー映画のタイトルみたいでいいですね!」

千聖(なんでそんな反応になるのよ……!?)

りみ「……心配してくれるんですか?」

千聖「え、ええ、それはもちろん。巴ちゃん周りの修羅場はもうこれ以上ないくらいに危ういバランスの上だし……」

りみ「ありがとうございます。でも、平気ですよ。巴ちゃん、本当の本当は、心の根っこの部分は誰も傷付けようとしない優しい性格だって知ってますから」

りみ「じゃなかったら好きになりませんもん」ニコリ

千聖「…………」


千聖(そのセリフはまさにDV男に引っかかる女性そのものだけど……今まで見た中で一番純粋な笑顔を浮かべているわね)

千聖(はぁ……どうしてこう、私たちの周りのガチな女の子は一癖も二癖も……)

千聖「……りみちゃん」

りみ「はい」

千聖「もう止めはしないけれど、ひとつだけ言葉を送るわ」

千聖「愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである。……とあるフランスの作家の言葉よ」

りみ「…………」

千聖「私は人の恋路にとやかく言えるような人間ではないけれど……頭の片隅にでも置いておいてくれると嬉しいわ」

りみ「……なるほど、分かりました。アドバイスありがとうございます、千聖先輩」

千聖「いえ……偉そうなことを言ったりしてごめんな――」

りみ「私も巴ちゃんと一緒にあこちゃんを愛せば解決ってことですね!」

千聖「だからどうしてそうなるのっ!?」

彩「千聖ちゃーん、そろそろ耳が痛いよー私ー……」


……………………


――芸能事務所――

千聖「はぁ……なんとか終わったわね……」

彩「お疲れさまでした、千聖ちゃん」

千聖「ええ。今日は一日中付き合ってくれてありがとうね、彩ちゃん」

彩「ううん。何をやってるのか最後まで分からなかったけど……千聖ちゃんの役に立てたなら何よりだよ!」

千聖「正直なことを言ってしまうと、彩ちゃんがいなかったら今日は確実にめげていたと思うの。あなたが手伝ってくれてすごく助かったわ」

彩「そ、そう? えへへ……そんなに褒められたら照れちゃうよ」

千聖「今度一緒に甘いものでも食べに行きましょうか。ご馳走するわよ」

彩「え、いいの? わーいっ!」

千聖「ドラマのお仕事で知り合った方が教えてくれたお店があるの。知る人ぞ知る隠れた名店らしいから、楽しみにしていてね」

彩「うんっ、楽しみにしてる!」

千聖「今日は本当にありがとう、彩ちゃん」

彩「どういたしまして!」


――レッスンルーム――

千聖「さて、と……」ペラ

千聖(彩ちゃんもお家に帰って、今は私ひとり)

千聖(この機械の説明書を読み進めていくと、今回のモニターについての説明がある)

千聖(数値は25人のものを測定した。これが何の役に立つのかは微塵も分からないけれど、とりあえず測定結果は自動で弦巻技研に送信されている……らしい)

千聖(個人情報は一切表示されないので安心してくれ、という旨の但し書きもあって、だけどこの機械のおかげで私は今日からとんでもないストレスを抱えることになってしまうというのは確定的に明らかな訳であって……)

千聖(……今から行うことは、そのストレスがうっかり私にそうさせたのだ、ということにしておこう。気になってしまったものは仕方がないのだ)

千聖(レッスンルームの壁一面に備えられた鏡には白鷺千聖の立ち姿)

千聖「…………」

千聖(私はそれに向かって、機械のボタンを押した)


白鷺千聖の百合度 ↓1



白鷺千聖の百合度 【23】


千聖「ほっ……としたような、してないような……」

千聖(というのが一番最初の印象だった)

千聖(私は一般女子レベル)

千聖(つまり、私が思う百合というものに対しての印象は、この世界の女の子のほとんどが抱えているものだということになる)

千聖「私は普通の一般的女子、なのよね」


千聖(……この機械でこのおかしな度数を計って回るうちに、ひとつだけ引っかかっていたことがあった)

千聖(例えば、私が彩ちゃんやイヴちゃん、日菜ちゃん、麻弥ちゃんに抱える気持ち)

千聖(大切な親友であり仲間であるけれど、色々と危なっかしくて心配で、どこかで転んだりして怪我をしていないかとか気になってしまうこと)

千聖(例えば、有咲ちゃんやたえちゃんのような可愛い後輩に対しての気持ち)

千聖(ウチの妹のように純粋で、多少の悪さなら可愛いものだと受け止めてあげられるし、もし何か困っているならなんとかしてあげたいと思ってしまうこと)

千聖(例えば、蘭ちゃんや美咲ちゃん、リサちゃんのように、なんだか素直じゃなさそうな感じの女の子に対しての感想)

千聖(臆面もなくあーんしたり、『好き』という言葉を異様に意識してしまうけれど……それも普通のことだと思うこと)

千聖(例えば、紗夜ちゃんをめぐるヤバい相関図に対する印象)

千聖(いやに心臓が跳ねて冷や汗が滲んで、一歩間違えたら辺り一面が焼け野原と化す可能性を秘めた爆弾。出来るだけ彼女たちとは関わり合いになりたくないと思うこと)

千聖(それらは別にいい。きっと誰しもが抱くだろうまっとうな気持ちだ)


千聖「…………」

千聖(だけど、花音の数字を見て胸に抱いた言葉に出来ない感情は……なんだろう)

千聖(花音もそういうことに興味があるんだ、素質があるんだ……と分かった時に抱いた気持ちは……)

千聖「……なんて、親友相手に何をおかしなことを考えているのかしらね」

千聖(フッと息を吐き出して、頭を振る。それから見据えた鏡の中の白鷺千聖の顔が少しだけ赤らんでいたから、私は苦笑を投げかけてみせた)

千聖(なんともないように鏡に背を向ける。なんとはなしに天を仰げば、音を逃がすために高く作られたレッスンルームの天井。そこに備え付けられたLEDの蛍光灯はやんわりと白んだ明かりを灯しているから、私も白々しい顔で口を開く)

千聖「……彩ちゃんとのスイーツ、花音も誘おうかしら」

千聖(彩ちゃんと花音と、私。3人でテーブルを囲む場面を想像して、小さく笑みをこぼす)

千聖「――――」

千聖(防振、防音。その後に続けた言葉は誰に聞かれることもなく、レッスンルームの高い天井へそっと吸い込まれていった)


おわり


数値一覧表
https://i.imgur.com/BPlvkC7.png

この話の主成分は「チュチュと一緒にBanG Dream! FILM LIVE」(ミニトークショー付き)のチケット一般販売開始時間をバンドリ公式に謀られたと知った瞬間の辛みと不戦敗の悔しさです。

そんな見切り発車感満載の色々ぶれっぶれのアレな話でしたが、お付き合い頂きまして誠にありがとうございます。

そしてオチをまったく思いつきませんでしたのでどなたか卑しい私めに才能かアイデアをください

おつ。この人物関係がこの先どうなるか気になる。

おつ

もう一度百合度でやっても面白いと思うけど、同じ安価・コンマでやるなら清純度とか?


後日の話


☆スイーツ日和


――都内某所 喫茶店――

彩「ん~っ! ここのスイーツ、とっても美味しいよ!」

千聖「ええ、そうね。隠れた名店だと言われたけれど、その評価に恥じない美味しさだわ」

花音「うん、すごく美味しいね。……けど、私もお呼ばれしちゃってよかったのかな。今日はこの前の千聖ちゃんのお仕事のお疲れさま会、なんだよね?」

千聖「そんなこと気にしないでいいのよ。彩ちゃんに助けられたのはもちろんだし、花音のおかげで最後のショックをどうにか乗り切れたんだから」

花音「ショック……?」

彩「そうだよ、花音ちゃん。一緒にお茶会を楽しもうよ!」

花音「う、うん……ありがとね、千聖ちゃん、彩ちゃん」

千聖「ええ」

彩「……ところで、花音ちゃんのレモンケーキ……なんだかすっごく美味しそうに見えるなぁ」

花音「うん。甘さ控えめで、すごくさっぱりしてて、とっても美味しいよ。少し食べてみる?」

彩「いいのっ?」

花音「いいよ。はい、あーん」

彩「ありがとー! あーん……ああ、これも美味しいなぁ~」

花音「えへへ、そうでしょ?」

彩「私のチーズケーキも食べる?」

花音「いいの?」

彩「もちろん! はい、あーん!」

花音「それじゃあ……あーん」

彩「どう? 美味しい?」

花音「うん。チーズがすごい濃厚で……紅茶によく合うね」

彩「でしょ~!」


千聖「ふふっ……」

千聖(やっぱり花音も誘って正解だったわね)

千聖(彩ちゃんと花音のふたりがぽやぽやしてるだけで癒されるわ)

彩「んー……」ジーッ

千聖「あら、彩ちゃん……もしかして私のガトーショコラも食べたいのかしら?」

彩「あ、バレちゃった?」

千聖「そんな物欲しげな目をされたら誰だって分かるわよ」

花音「くすっ、そうだね」

彩「あ、あはは……ここのケーキ、本当に美味しいからさ……ついついいろんなのを食べたくなっちゃうんだ」

千聖「仕方ないわね。はい、ひと口どうぞ」

彩「ありがと、千聖ちゃん。……あーんは?」

千聖「しないわよ?」

彩「そっかぁ」

千聖「花音も食べるかしら?」

花音「うん、ちょっとだけもらおうかな」

千聖「あーん、しましょうか?」

彩「ちょ、千聖ちゃんっ! どうして花音ちゃんにはそう言うの!」

千聖「日頃の行いの差ね」

彩「そ、それどういうこと~っ!?」

花音「ふふふ……」

千聖「うふふ……」

彩「も~……あはは」


千聖(平和だ)

千聖(平和そのものの、のんびりした空気だ)

千聖(ふふ、こうしていると……ついこの間の百合度がどうとか紗夜ちゃんがどうとかそんなアレは遠い別の世界の出来事のように)

彩「あ、そうだ! 花音ちゃん、二学期になったらお弁当パーティーやるんだ!」

花音「お弁当パーティー?」

彩「うん! 燐子ちゃんが紗夜ちゃんにお弁当作ってあげててね? みんなでお弁当作っていっておかず交換とかしたら楽しそうだなって!」

彩「私と千聖ちゃん、それに燐子ちゃんと紗夜ちゃんが参加するから、花音ちゃんも一緒にどう?」

花音「ふふ、楽しそうだね。私も参加するよ」

彩「やった! それじゃあ、日にちは決まり次第また教えるね!」

花音「うん」

千聖「…………」

千聖(そう、よね……アレは夢じゃなかったのよね……)

千聖(いろんな因果が重なり合った今となっては、辺り一面地雷原の中で開かれるパーティーなのよね……)

彩「あれ、千聖ちゃん……どうかした?」

花音「なんだか暗い顔になってるよ?」

千聖「……いいえ、なんでもないわ」

千聖(まぁ、それもまだまだ先のこと)

千聖(それにその場には燐子ちゃんしか起爆剤がないし……うん、そうよね。彩ちゃんと花音もいるんだし、きっと何事もなく平穏に終わるはずよ)

千聖(今はこの癒し空間を存分に堪能していましょう)


☆白金会長の暗躍


――白金家 燐子の部屋――

燐子(……お弁当パーティー)

燐子(ふふ……丸山さんにはいい機会を提案してもらったな……)

燐子(目立つ場所で、目立つ人たちと一緒に、氷川さんの隣に座ってお弁当を食べる……)

燐子(これ以上の既成事実は……ないよね……?)

燐子(そうして氷川さんとわたしが花咲川女子学園公認ベストカップルって風評が立てば……)

燐子「……えへへ」

燐子(っと、いけないいけない……いずれ必ず確定する定めの未来だけど……まだまだ不安要素はあるんだった……)

燐子(少しでも不安要素を除いて……明るい未来を創るために……出来ることは全部やらなくちゃ……)

燐子(そのための、この……)

【秘密の作戦ノート】

燐子(ここに……当日までに解決しなければいけない問題……氷川さんとの既成事実を作るためのミッションを書き記します……)

燐子(それから……今時点で分かっていることも……書き記します……)

燐子(千里の道も一歩から……デイリーミッションを重ねて、石を貯めることが大切……)


燐子「まず最初に……氷川さんにわたしの好物を伝えること、氷川さんの好物をわたしが知ること……これはクリア……」カキカキ

燐子(これで必ず氷川さんは……わたしの好物を作って来てくれる……)

燐子「互いの好きなものを知り合い、作り合う関係……素敵だなぁ……ふふっ」ニヘラ

燐子(っとと、いけないいけない……まだこんなことで笑ってちゃダメだ……)キリッ

燐子(氷川さんは魅力的過ぎて……周りにはわたしから彼女を掠め取ろうとする泥棒猫さんが……たくさんいるんだから……)

燐子(あこちゃんなら許せるけど……それ以外の人が氷川さんに触れるのは……我慢できない……)

燐子(少しでも不確定要素を削って、確実に……明るい未来を築かなくちゃ……)

燐子「氷川さんの隣はわたしのもの……氷川さんの隣はわたしのもの……」カキカキカキカキ...

燐子「氷川さ……いや……」ピタ

燐子(……いずれ夫婦になるなら……やっぱり今からでも下の名前で呼んだ方が……いいかな……?)

燐子(ちょっと練習しようかな……氷川さんの写真にそう呼びかけてみよう……えぇと、今日は……)

燐子(わたあめを頬張ってる無邪気なところ……うーん、これの気分じゃないかな……)

燐子(雨に打たれて憔悴してるところ……だめ、そういう顔はわたしの前で出来ればして欲しくない……)

燐子(廊下の掲示物を貼り代えてるところ……ああ、これがいいかな……)


燐子「それじゃあ……コホン」

燐子「…………」ジッ

燐子「ひ、氷川さ……じゃなくて、さ、さ……あの、さ……」

燐子「……うぅ、えぇと、その……」

燐子「すー、はー……よ、よしっ」

燐子「さ、っ、さ、さ……紗夜、さん……っ!」

燐子「……っ、はぁー……な、なんとか言えた……」

燐子(こ、これでひとつステップアップ……)

燐子(……写真相手だけど……初めて名前で呼んじゃった……)

燐子「えへ……えへへ……しあわせ……」


☆モカちゃんやっちゃうよー


――商店街――

モカ(あたしの心の中にはひとつの懸念があったぁー)

モカ(あたしははぐが大好きで、好きで好きで堪らないワケだけど、どーにもはぐには好きな人がいるらしいー)

モカ(そのお相手とは……なんと、氷川紗夜さん)

モカ(まぁ、確かに? あの人は何気にめちゃ優しいし、面倒見もよくて、しっかりしてる人だから? はぐが好きになるのも違和感ないけどー?)

モカ(……けど、だからと言って大人しく身を退けるほど、モカちゃんは諦めがよくないのだった)

モカ(だってそうでしょ~? アフターグロウと商店街組は切っても切り離せない縁で繋がっているんだから)

モカ(小さな頃からいろんな想い出を積み重ねてきて、一緒のお布団で寝た回数も一緒にお風呂に入った回数も、紗夜さんとは比べることすら出来ないほど多いのだー)

モカ(なのに、いきなり横から出てきた人に、はぐを盗られちゃうなんて……そんなのヤだよ)

モカ(そうなるくらいなら、いっそ無理矢理にでも……あ、やっぱダメ、ソレダメ。はぐの傷付いた顔とか泣き顔なんて見たくもないや)

モカ(……でも、このままじゃなぁ……)

「……という風に……スキルを使うんです……」

「なるほど……無価値に見えても他のものと合わせれば、有用性が見えてくるという訳ね……」

モカ(あれぇ、前からやってくるのは……ロゼリアのギターさんとキーボードさん)サッ

モカ(……おや? どうしてモカちゃんは咄嗟に身を隠してしまったのでしょう?)


燐子「…………」

紗夜「どうかしましたか、白金さん?」

燐子「いえ……気まぐれな猫さんが……隠れたなぁって……」

紗夜「……はい?」

モカ(あー……これ、燐子さんにはバレてるっぽいなぁ……)

モカ(ここからなんて言って登場しようかなぁ……)

燐子「……けど、猫ってそういうものですよね……気にしないでいいと思います……」

モカ(……おや?)

紗夜「そうですね。湊さんならそうはいかないと思うけれど」

燐子「そう……ですね……」

モカ(燐子さん……一体どういうつもりなんだろー?)

燐子「…………」ウーン

紗夜「白金さん? 何か考え込んでいますが……どうしました?」

燐子「いえ……何か利用できないかな、って……」

紗夜「利用……さっきのNFOの話ですか?」

燐子「似たような……ものです……」

紗夜「そうですか。本当に好きなんですね」

燐子「はい、愛してます」

紗夜(そこまで言い切るなんて、よっぽどゲームが好きなのね)

燐子(確か……青葉さんは北沢さんが……それなら……)


燐子「……よし、決めました……」

紗夜「ああ、NFOといえば、この前今井さんが……」

燐子「氷川さん……」

紗夜「はい?」

燐子「……出来ればいいので……わたしの前で……他の女(ひと)の名前を出さないでください……」

紗夜「……はい?」

燐子「ずっと見てて欲しいんです……こういう時くらいは……」

紗夜「あの、言ってる意味がよく分からないのですが……」

燐子「いずれ……分かりますよ……例えば、そう……二学期のお弁当パーティーの時とかに……」

燐子「そのために……わたしは頑張っていますから……」

紗夜「ああ、お弁当パーティー。丸山さんに言われてから、私も少し料理の腕を磨いているわよ」

燐子「ふふ、そうなんですね……楽しみです……氷川さんの手料理を食べられるのが……」

紗夜「あまり期待されても、それに応えられるかどうか……」

燐子「氷川さんが……わたしのために作ってくれたというだけで……いいんですよ……」

紗夜「そういうものなのかしら」

燐子「そういうものなんです……」

紗夜「そうなのね。あ、料理と言えば羽沢さんに――」スタスタ

燐子「……氷川さん……また他の女(ひと)の名前を――」スタスタ


モカ「…………」

モカ「なるほど、なるほどなるほどぉー」

モカ(そういうことですね、燐子さん)

モカ(どうやってモカちゃんとはぐのことを知ったのかは分からないけど……分かりましたよ)

モカ(それが一番世界を丸く収める方法だって言うなら、あたしもちょーっとだけ悪い子になりますよ)

モカ「……よーし、モカちゃんやっちゃうよー」


☆千聖さんの心配事


――芸能事務所――

千聖「……ねぇ、日菜ちゃん。ちょっといいかしら」

日菜「うん、いいよー。どしたの?」

千聖「ええ、少し聞きたいことがあってね……その……」

日菜「珍しく歯切れが悪いね。いつもみたいになんでもズバッと聞いていーよ!」

千聖「……それじゃあ、あのね?」

日菜「うん」

千聖「最近の日菜ちゃんの交友関係なんだけど……ひまりちゃんとよく遊ぶって本当?」

日菜「ホントだよー。ひまりちゃんってば彩ちゃんみたいで面白いんだよ、なんか頑張ってるのに空回っててさ」

千聖「そ、そう……本当なのね……」

日菜「それがどうかしたの?」

千聖「いえ、ちょっと……どんなことをして遊んでいるのかちょっと気になったっていうか……」

日菜「んー、別に普通だよ? 一緒にご飯いったり、プリクラ撮ったり」

千聖「……それくらいなら普通ね」

日菜「あ、あとね、最近ダイエット始めたんだって、ひまりちゃん」

日菜「えー、またすぐ終わっちゃうんじゃないの~? って言ったら、」

ひまり『そんなことないですー! 今度の今度は本気ですから! だから日菜先輩、少し運動に付き合ってください!』

日菜「って言われて、よく運動に付き合うよ」


千聖「運動って……例えば?」

千聖(運動(意味深)とかじゃない……わよね?)

日菜「一緒にお散歩したり、テニスしたり、ラウンド〇ンのス〇ッチャ行ったりとか?」

千聖「……健全ね、よかった……」

日菜「あと、パスパレの曲のダンスを教えてあげてるよ。ひまりちゃん、最近毎日パスパレのライブ動画見てくれてるって言ってたし」

千聖「え」

日菜「意外と勉強熱心なんだよね、ひまりちゃん。この前学校で踊ってあげたけど、すっごい顔で食い入るようにあたしのこと見るんだ」

千聖「学校でって……もしかして、制服で?」

日菜「うん。学校なんだから当たり前じゃん」

千聖「…………」

千聖(そのひまりちゃん……絶対に恍惚とした顔で日菜ちゃんを見てるわよね……)

日菜「どしたの、千聖ちゃん? なんか難しい顔になってるよ」

千聖「……日菜ちゃん、一応……ね? 制服で激しい踊りを踊るのは、はしたないじゃない?」

日菜「あはは、女子校なんだからそんなの気にする人なんていないよー。変な千聖ちゃんだなぁ」

千聖(いるのよ、そのあなたのすぐそばに……ものすごい獰猛な獣が……)

千聖(なんて言っても中身が純粋そのものの日菜ちゃんには伝わらないでしょうし……)

千聖「折を見て紗夜ちゃんに相談しようかしらね……あんまりあそこの地雷原には近づきたくないけれど……」


☆トモちんの劫火の火種的な心配事


――羽沢珈琲店――

巴「わりぃな、りみ。急に相談に乗ってくれないか、なんて言って」

りみ「ううん、全然気にしないでいいよ。巴ちゃんのお話ならいつだって聞くから」

巴「はは、ありがとな。そう言ってもらえると気が楽だよ」

りみ「それで、どうしたの?」

巴「ん、ああ……あこのことなんだけどな」

りみ「あこちゃん? あこちゃんのことなら、私よりもアフターグロウのみんなとか、ロゼリアの人に聞いた方が……」

巴「いや、それじゃダメなんだ。あこから近すぎる人じゃなくって、ほどほどに付き合いがある人から話が聞きたかったんだ」

りみ「そういうことなら、私に出来ることはなんでもするよ」ニコ

巴「さんきゅ。んで、あこなんだけどな……最近、どうにもアタシのことをあんま見てくれねーんだ」

りみ「あこちゃんが巴ちゃんを?」

巴「ああ。そんな馬鹿なことがある訳ない、とは思うだろうけど、それでもな。あこは頭もいいし可愛いからどんどん成長していくし、アタシの想像以上の可愛さで立派になっていくし、普通に可愛いからさ……」

りみ(わぁ、可愛いばっかりだぁ)

巴「心配なんだよな。なんだかひまりみたいな表情をすることも多くなったし……どっかアタシの知らないとこで悪い虫にたかられてるんじゃないかって」

巴「蘭たちにこう言ったって『気にしすぎでしょ』の一言で終わるし、沙綾とはぐみに言っても『はいはい、そうだね』とか『うーん、よく分かんないや!』で終わるし、湊さんたちにこんなことを聞くのもおかしい気がしてさ」

巴「だからさ、りみから見てどう思う? つか、アタシはどうしたらいいと思う?」

りみ「…………」


りみ(確か……燐子先輩が言ってたっけ。あこちゃんは紗夜先輩のことが好きで、なんて)

巴「もしあこに近付く不届き者がいるなら東京湾に沈めないといけないしさ、そうなるとアタシも予定詰めないといけないし」

りみ(……これを正直に巴ちゃんに言ったら……どうなるのかな?)

巴「夏は和太鼓をたくさん叩けるから、そういう野暮用はさっさと終わらせちまいたいんだ」

りみ(私も……東京湾に沈められちゃうかな?)

りみ(そこまでは行かなくても、怒った巴ちゃんに乱暴されたりして……)

巴「……りみ? なんか、ひまりみたいな顔してるぞ。大丈夫か?」

りみ「大丈夫だよ。ちょっとどう伝えるべきか考えてて……あのね、巴ちゃん」

巴「うん」

りみ「私、燐子先輩に聞いたんだ」

巴「何を?」

りみ「……あこちゃん、紗夜先輩のことが好きなんだって」

りみ(言っちゃった。巴ちゃん、どうなるのかな……?)

巴「…………」ギロリ

りみ(ああ……すごい怖い顔して私のこと睨んでる……。ただでさえ鋭い双眸がもっと鋭くなって、瞳に暗い炎が灯ってるよ……スプラッターホラーの悪鬼みたい)ゾクゾク

巴「りみも変な冗談言うんだな。でも笑えねぇぜ、その冗談は?」

りみ「冗談じゃないよ。ほんとのことだよ」

りみ「あこちゃんはね、紗夜先輩のことが好きなんだ。ひとりの人間として、きっと――」

巴「…………」キッ

りみ(あかん、あかんよ……『それ以上言ってみろ、どうなっても知らねぇぞ』的な目で睨みつけられてる……すごいゾクゾクしてまう……)


りみ「……本当のことだよ。巴ちゃんがどう思っても、あこちゃんは紗夜先輩が好き」

りみ「それが現実なんだよ、巴ちゃん」

巴「…………」ガタッ

りみ「どこに行くの?」

巴「りみには関係ない」

りみ「あるよ。もしも巴ちゃんが今、紗夜先輩のところに行こうとしてるなら……原因は私だもん。巴ちゃんを止めるのが今の私の責任だよ」

巴「関係ない。止めんな」

りみ「あるよ。止めるよ」

巴「ない」

りみ「ある」

巴「いい加減にっ」

りみ「ここで騒いだら、つぐみちゃんに迷惑がかかっちゃうね」

巴「……チッ」

りみ「続きは外でお話しよっか?」

巴「…………」バンッ、スタスタ

――カランコロン

りみ(……千円札だけテーブルに叩きつけて行っちゃった)

りみ(あこちゃんのことで激昂してても、幼馴染の迷惑を考えられる……。それに多分、外で私を待っててくれるんだろうな)

りみ(……巴ちゃんのそういうところ、やっぱりだいすき)


☆幕間 その1


――猫カフェ――

友希那「にゃーん、にゃー」

猫1「にゃー、にゃー」

友希那「ふふ、そう。あなたもそう思うのね」

猫2「にゃ……」

友希那「あら、あなたは不服そうね。仕方ないわね……店員さん、猫さん用のおやつを頂けるかしら」

店員さん「はーい」

猫2「にゃーっ!」

友希那「分かってもらえたようで何よりだわ」

猫1「にゃーん!」

友希那「ええ、あなたの分もあるから……」

猫3「にゃにゃ……」

猫4「にゃおー」

猫5「みゃー」

友希那「あら、いつの間にか囲まれてしまっているわね……」

友希那「仕方のない子たちね。おやつを追加しないといけないわ」

猫たち「にゃーっ!」

友希那「そう。喜んでもらえたならなによりよ……ふふふ」


―ちょっと離れたところ―

リサ(ふ、ふふ……猫と会話する友希那、めっちゃかわいい……)カシャ、カシャ


☆幕間 その2


――有咲の蔵――

香澄「なんでやねん!」ビシッ

彩「なんでやねん!」ビシッ

香澄「どう、有咲! 彩先輩と一緒にツッコミの練習したんだ!」

有咲「…………」

彩「ふっふっふ……私たちのツッコミの鋭さを前に、声も出ないみたいだね!」

香澄「やりましたね、彩さん!」

彩「うん!」

香澄「いぇーいっ!」ハイタッチ

彩「イェーイ!」ハイタッチ

有咲「…………」

香澄「次は有咲にどのツッコミを見せてあげましょうか?」

彩「次は……うーん、関東風味のツッコミとか?」

香澄「わっかりました! それじゃあ……」

彩「なんなんですか!」ビシッ

香澄「どうしてですか!」ビシッ

彩「おかしいでしょう!」ビシッ

香澄「一緒に悩ませてください!」ビシッ

有咲「…………」

有咲(……ぜってーツッコまねーぞ、私は)


☆ホカホカ


――路地裏――

巴「…………」スタスタ

りみ「…………」スタスタ

巴「…………」ピタ

りみ「ここが目的地なの?」

巴「……どこまで着いてくるつもりだよ」

りみ「巴ちゃんになら、どこまでも着いていくよ」

巴「……チッ」

りみ「……ねぇ、巴ちゃん」

巴「んだよ」

りみ「巴ちゃんがあこちゃんのことを愛してるのは知ってるよ。でもね、やっぱりその愛は違うんじゃないかな」

巴「あぁっ?」

りみ「おかしいよ。だって、あこちゃんが好きな人を、巴ちゃんは傷つけようって考えてるんだよね?」

りみ「それで一番悲しむのはあこちゃんじゃ――」

巴「うるせぇ!」ドン!

りみ「きゃっ」

巴「…………」

りみ(ひゃぁ~……とうとう壁ドンされてもうた……あかん、キュンキュンするわぁ……)

巴「……わりぃ」パッ

りみ「あ……もう終わり……?」

巴「あん?」

りみ「う、ううん、なんでも」


巴「…………」

りみ「…………」

巴「なぁ、りみ」

りみ「うん?」

巴「……やっぱさ、間違ってんのかな」

りみ「あこちゃんのこと?」

巴「…………」

りみ「正しいか間違ってるかで言えば……きっと間違ってるよ」

巴「っ!」

りみ「でもね、おかしくはないと思うんだ」

巴「…………」

りみ「愛と恋は違うもん。巴ちゃんのあこちゃんに抱く気持ちは愛でしょ?」

りみ「実の妹に恋をした……それなら世間的にも法律的にもほんのちょっとだけ間違っちゃってるけど、実の妹を愛しているっていうのは、おかしいことじゃないよ」

巴「…………」

りみ「おかしくはない。おかしくなんてない。ちょっとだけ間違えちゃっただけなんだから」


巴「……でも、でもな?」

りみ「うん」

巴「駄目なんだ。あこが、アタシの知らないところで誰かと仲良くしてる……そう思うだけでむしゃくしゃして、全部が憎く見えてきて、もうどうしようもないんだ」

りみ「うん」

巴「アタシだってあこには幸せになってもらいたいよ。でも、その幸せにするのがアタシでありたいってずっとずっと思ってるんだ」

りみ「うん」

巴「分かってんだよ、間違ってるしおかしいって。だけど、間違ってねぇだろ……おかしくなんてねぇだろって……そう思っちまうんだよ、アタシは」

巴「話を聞くだけならギリギリ抑えられるけどさ、もし実際にあこが紗夜さんとイチャイチャしたり膝枕したりされたりお昼ご飯あーんさせあったり添い寝して子守歌歌ってあげたり一緒にゲームしたりなんだりってしてたらさ、きっとアタシはつぐの店で暴れちまったよ」

巴「……駄目なんだ。駄目なんだよ。アタシの中の悪い鬼みたいのが、いつだってアタシを支配するんだ」

巴「今日だって相談に乗ってもらったりみにあんな風に怒鳴って、ビビらせて」

りみ「大丈夫だよ、興奮したから」

巴「え?」


りみ(あ、間違えてもうた)

りみ「……大丈夫だよ、怖くなかったから」

巴「んな強がり……」

りみ「強がりじゃないよ。巴ちゃんが本当は優しい人だって、私、知ってるもん」

巴「……優しくなんかねぇよ」

りみ「ううん、優しい。私が知ってる人の中で一番優しいよ」

巴「…………」

りみ「あこちゃんのことが大事で大事でたまらなく愛しているから心配なんだよね?」

りみ「もしもあこちゃんが傷付けられたらって思うだけで、どうしようもないくらいに焦っちゃうんだよね?」

りみ「それは巴ちゃんが優しいからだよ」

巴「けど、アタシは……」

りみ「つい我慢できなくなっちゃうんだよね。それで誰かを傷付けることになっちゃうかも、って思うんだよね」

巴「…………」

りみ「大丈夫だよ。巴ちゃんはひとりじゃないよ」ダキッ

巴「え、ちょ、りみ!?」

りみ「燐子先輩に聞いたんだ。ピグミーチンパンジーっていうお猿さんがいて、その種族は他の同族と比べてずっと穏やかなんだって」

巴「そ、それとこれとにどういう関係が……」

りみ「その穏やかな性格はね、こうやって仲間と肌と肌を重ねることで保つんだ」

巴「…………」


りみ「巴ちゃんはひとりじゃないよ。私がずっと傍にいるよ」

りみ「もしも暴れそうになったら、こうやって巴ちゃんの気持ちを鎮めるから」

巴「でも、それだといつかりみまで……」

りみ「平気だよ。巴ちゃんになら何されたって興ふ――ちゃう、そうやなくて……えぇと、後悔せんから」

巴「りみ……」

りみ「巴ちゃんはひとりじゃあらへんよ。うちと一緒におって、暴れちゃうことがおかしいって、間違ってるって今日そう思えたんや。いつか絶対その悪鬼やら言うんも抑えられる」

巴「……そう、かな」

りみ「そうや。巴ちゃん自身が自信持たんでどうするんや」

巴「…………」

りみ(あ、つまらんダジャレ言うてもうた……)

巴「そっか、そうだよな……」

りみ(……巴ちゃん、気付いてへんみたいやし……だまっとこ)

巴「これもあこのため……だもんな」

りみ「うん」

巴「……やっぱ、りみに相談してよかったよ。いつもの面子じゃこんなところまで踏み込んでくれなかっただろうし……」

りみ「お役に立てたならよかった」

巴「ああ。ありがとう、りみ」

りみ「どういたしまして」

巴「迷惑かけるかもしれないけど……アタシを助けてくれるか?」

りみ「うんっ」フルフル

巴(りみ、震えてるのか……やっぱ怖がらせちまったよな……)

りみ(巴ちゃんにくっつくの……堪らんわぁ……)スリスリ


☆幕間 その3


香澄「…………」

彩「…………」

有咲「なんで正座させられてるか、分かってるか?」

香澄「はい……」

彩「はい……」

有咲「じゃあ何が悪かったか言ってみろ」

香澄「…………」チラ

彩「…………」コク

香澄「ツッコミのキレが……甘かったから……?」

有咲「ちっげーよ! ぜんっぜん分かってねーじゃねーか!!」

彩「で、でも……」

有咲「口答えすんな!」

彩「はい、すいません……」


香澄「有咲、今日は先輩にも……猫被らないんだね……?」

有咲「2時間ぶっ続けで変なツッコミっぽい何かを目の前で見せ続けられたことあんのかお前は? あーん? それだけじゃ飽き足らず私の大事な大事なヨネスケをふざけた小芝居の小道具にしたよな? ああ? これでキレんなって方がおかしいわ!!」

彩「あの盆栽……ヨネスケっていうんだ……」

香澄「だから言ったじゃないですか、名前はポチにしようって! エリーゼは流石にヤバいですよ彩先輩!」ガタッ

有咲「誰が正座崩していいって言ったぁ!」

香澄「はい、すいません……」

有咲「いいか、そもそもお前らがやってるのはなぁ、ツッコミなんかじゃなくて――」クドクド

香澄(なんだかすごく長くなりそうな予感がする……)

彩(有咲ちゃん、実はポピパのツッコミ役ノリノリでやってたんじゃないのかな……)


☆共同戦線


――商店街――

はぐみ「モカちゃーん! こんにちはっ!」ギュ

モカ「おっとっと~……誰かと思ったらはぐじゃないですか~。急に抱き着いてきたら危ないよ~?」

はぐみ「えへへ、モカちゃんが歩いてるの見たらつい」

モカ「おーおー、キュンとするようなことを言ってくれますなぁ」

モカ「でもね、はぐ~……世界にはそれをやっていい人と悪い人がいるんだよ」

はぐみ「やっていい人と悪い人?」

モカ「そーそー。特にね、ひーちゃんみたいな人にはやっちゃダメ」

はぐみ「えっ、なんで?」

モカ「ひーちゃんはああ見えて牛さんみたいだけど、その実中身は野生のオオカミだからね~。油断してるとはぐが食べられちゃうもん」

はぐみ「んー、でもひーちゃん、はぐみが抱き着くとすごい喜ぶよ?」

モカ「あーダメダメ。もう絶対抱き着いちゃダメ。はぐの貞操が危ない。それはあたしのものだから」

はぐみ「んーっと……つまりどういうこと?」

モカ「急に抱き着くと危ないから、そーいうのはモカちゃん以外にやっちゃダメってこと」

はぐみ「分かった!」

モカ「よしよーし、はぐは良い子だねぇ~」ナデナデ

はぐみ「えへへ~」


モカ「あ、そうだ」

はぐみ「どうしたの?」

モカ「あれさ、燐子さんから聞いたんだけどね、二学期になったら花女でお弁当パーティーをやるんだって~」

はぐみ「へーそうなんだ!」

モカ「それでねー、羽丘の人も参加できるような日程でやるから、あたしも参加するんだ。それに、彩さん、千聖さん、花音さん、紗夜さん以外には伝えて誘っていいよって言われてるんだ~」

モカ「だから、はぐもどう?」

はぐみ「わぁ、みんなでお弁当パーティー、すっごく楽しそう! こころんたちも誘って参加するよ!」

モカ「そうこなくっちゃ~。詳しいことはまた燐子さんが教えてくれるって~」

はぐみ「了解だよ! えへへ、楽しみだなぁっ」

モカ「…………」

モカ(燐子さんとは共同戦線……お互いの利害が一致してるのだ……)

モカ(先に謝っておくね~。もしもはぐが悲しむことになったらごめんよ)

モカ「……その時は、あたしがずっと傍にいるから」

はぐみ「なにか言った?」

モカ「ううん、なんでも~」


☆二学期初めの生徒会

――花咲川女子学園 生徒会室――

――ガラガラ

有咲「お疲れさまでーす」

燐子「あ……お疲れさまです、市ヶ谷さん……」チクチク

有咲「どうも。今日はまだ燐子先輩だけですか?」

燐子「はい……みんな、まだ来ないですね……。多分……ホームルームが長引いているんだと……」チクチク

有咲「そうですか。ところで燐子先輩、さっきから何を作ってるんですか、それ?」

燐子「これは……ぬいぐるみです……」チクチク

有咲「へぇ~。衣装とかだけじゃなく、ぬいぐるみまで作れるんですね」

燐子「要領は……大体一緒なので……」チクチク

有咲「……あれ、それのモデルって、もしかして紗夜先輩ですか?」

燐子「はい……よく分かりましたね……」チクチク

有咲「ええ、なんとなくそんな感じの特徴が目についたんで。流石、(同じバンドとして)付き合いが長いだけあってよく見てますね、紗夜先輩のこと」

燐子「そんな……(花女ベストカップル最有力候補として)付き合いが長いだなんて……」テレテレ

有咲(なんか照れるとこあったか、今?)


燐子「ふふ……これが完成すれば……氷川さん人形がわたしの部屋に……そして白金会長人形が……氷川さんの部屋に……」チクチク

有咲「燐子先輩のもあるんですか?」

燐子「人間の造形を知れる……一番手近なモデルが……わたしだったので……」チクチク

燐子「それはもう作り終えて……家にあります……」チクチク

有咲「へぇ~……。あ、そういえば燐子先輩」

燐子「はい……?」チクチク

有咲「髪、少し切りました?」

燐子「……ええ、ちょっと」チクチク

有咲「まだ暑いですもんね。おたえもよく自分の髪を鬱陶しそうに払ってますよ」

燐子「ええ、本当に……暑いですよね……ふふっ」チクチク


燐子「あ、そうだ……市ヶ谷さん」

有咲「はい?」

燐子「9月の3周目の土曜に……お弁当パーティーがあるんです……」

有咲「お弁当パーティー……ってなんですか、それ」

燐子「みんなでお弁当を持ち寄って……おかず交換したりする会です……」

有咲「はぁ。あれ、でもそこって確か公開授業の日じゃないですか?」

燐子「ええ……公開授業で、午前だけで授業は終わるので……その日にみんなでゆっくり食べようって……決めてあるんです……」

燐子「市ヶ谷さんも……ポッピンパーティーのみなさんを誘って……一緒にどうですか……?」

有咲「あー……そういうのはほぼ100%食いつくだろうなぁ、あいつらなら……」

有咲「分かりました、ちょっと香澄たちにも言ってみます」

燐子「そうしてみてください……やっぱり、人が多い方が……いいですからね……」

燐子「それと……元々の参加者の……氷川さんと丸山さん、白鷺さん、松原さんには……人が増えると伝えてないので……サプライズの協力をお願いしますね……」

有咲「マジっすか。うわー、香澄とかおたえだとポロっと言っちまいそうだなぁ」

燐子「頑張って口止めしてくださいね……」

有咲「わ、分かりました。出来るだけ頑張ります……」

燐子「よろしくお願いしますね……。ふふ……ふふふ……」


☆紗夜さんの日記


 8月11日


 今日は買い物に行く途中、白鷺さんと丸山さんに出会った。

 なんでもパステルパレットの仕事をして回ってるらしく、やはり彼女たちは大変なのだなと改めて思いつつ、日菜が白鷺さんの支えになっているということを聞いて少しだけ誇らしくなった。

 それと、二学期にはお弁当パーティーなるものが開かれるらしい。私もそれに参加するので、今日から少し料理の練習をしようと思った。もう羽沢さんに連絡はつけてあるから、後日彼女に料理を教わりに行こう。

 白鷺さんたちと別れてからは、白金さんの誘いに乗り、ロゼリアの新しい衣装について話し合った。

 白金さんは本当に手先が器用だ。彼女の手にかかるとただの布が魔法のように衣装になっていくのだからすごい。

 しかし、私のスリーサイズを測り直す時、どうしてか白金さんの息が荒かったような気がする。今思い返してみれば顔も赤かったような気がするし……夏風邪かしら。

 一応身体には気をつける様にあとでメッセージを送っておこう。


 8月17日

 今日も白金さんと約束があり、ふたりで洋服を見に行った。

 もちろんロゼリアの新しい衣装の参考のための約束だったけれど、なんだかんだ白金さんとのんびり遊んでいただけのような気もする。……まぁ、湊さんが「内面の充実」の大切さをよく説いているし、こういうのもたまにはいいのだろう。

 それにしても、最近の白金さんはよく冗談を口にするようになったな、と思う。

 今日だって一緒に歩きながら会話を交わす中で、「他の人の名前は出さないで」といったような旨の発言をしていたし、彼女も少しずつ明るい性格に変わっていっているのだろう。

 生徒会長になってからは堂々と胸を張ることも出来ているようだし、もしかすると私の補佐はじきに必要なくなるのかもしれない。

 それはそれでとてもいいことだけれど、少しだけ寂しいと思わなくもない今日この頃だった。


 8月19日


 羽沢さんのお宅を目指していると、途中で白鷺さんと出会った。

 少し世間話をしてから、やたらと真に迫った顔で「日菜ちゃんにもう少しガードを固くするように言ってあげて。おねがい」と言われた。

 ガードを固くするように。それはつまりどういうことだろうか。NFOのようにバフをかけろということだろうか。

 確かにあの子は自由奔放で物怖じしない性格だけれど、うっかり転べばすぐに泣きだしてしまうような女の子だ。……まぁ、それは私の記憶の中の幼い日菜のことだから、今は違うのかもしれないけれど。

 とにかく、もう少し地に足をつけてしっかりしろということだろう。私はそう思って、「分かったわ」と頷きを返した。白鷺さんは肩の荷がおりたような顔をしていた。

 それから羽沢さんの家に向かって、簡単に料理を教わった。テキパキと調理をこなす彼女の姿に「羽沢さんは将来いいお嫁さんになりますね」と言うと、彼女は「よく言われますけど、そんなことないですよ」と照れくさそうにはにかんだ。

 初々しさに溢れた表情で、きっと男性はこういう仕草と言葉に弱いんだろうな、と思った。

 それから彼女の髪に何か糸くずが付いているのが目に付いたから、さっと撫でるように取り除いた。羽沢さんはとてもびっくりしていたけれど、なんだかその様子が小動物みたいで少し可愛かった。


 8月22日


 母にお使いを頼まれて商店街へ足を向けると、北沢さんに出会った。

 いつもは元気よく声をかけて走り寄ってきて抱き着いてくるのだけれど、今日は大人しく距離を保ったまま挨拶をされた。

「危ないから、あまりやってはいけないわよ」とは私も何度か言ったことがあるけれど、こう大人しく普通に挨拶をされると少し調子が狂ってしまう。

 北沢さんにそのことを聞いてみると、どうやら青葉さんにも釘を刺されたようで、「はぐみのせいで紗夜先輩が怪我したらやだもん」と言われた。

 しかし身体はどうにもそわそわしていて、まるでじゃれつきたいのに“待て”されている犬のように見えた。だから、という訳でもないけれど、私は気付けば「別に死角からいきなり飛びついてくるとかでなければ平気よ」なんて言っていた。

 それを聞くが早いか、北沢さんはいつものように私に抱き着いて、無邪気に笑った。

 ……やっぱり北沢さんの相手にしていると、幼い頃の日菜を思い出してどうにも甘くなってしまう。促されるまま彼女の髪を撫でつつ、そんなことを思った。

 それと、しばらく世間話をしていたら、お弁当パーティーが楽しみとかの話題になった。そしてどうしてか北沢さんが「あっ!」と口を押さえていた。

 詳しく話を聞いてみると、白金さんが色々な人に声をかけていることは当初の参加者である私たちには内緒にしてあるそうだ。

 きっと白金さんなりにみんなを楽しませようと考えてくれているのだろう。だから私は、申し訳なさそうな顔をしている北沢さんに「私は何も聞いていませんよ」と言っておいた。


 8月23日


 CiRCLEへ練習に行く途中、ミッシェルと出会った。

 中身は奥沢さんだろうと思って挨拶をしたら、なんとその日は大和さんがミッシェルに入っていた。

 彼女曰く、「体力トレーニングの為です」とのことで、「それ以外の理由はまったくありません。薫さんがモフモフとかそういうのは関係ないです」とも言っていた。

 確かに夏場にあのキグルミを来て動けば相当な運動になるだろう。私たちロゼリアもフェスに向けてそういうトレーニングを提案してみようか、と少しだけ考えた。

 大和さんはミッシェルのまま羽丘女子学園の演劇部室に行くと言っていた。どうやら今日は瀬田さんも部活に来るようで、今日一日はキグルミを脱ぐつもりがないらしい。

 ああやって自分を追い込む姿はまさにプロそのものだ。パステルパレットは仕事でバンドをやっている訳だし、それだけ責任を全うしようという強い気持ちがあるのだろう。私たちも見習わなくてはいけない。

 そんなことをCiRCLEで湊さんに話したら、意外と乗り気で聞いてくれた。

「私も今日は猫のキグルミを着て歌おうかしら」と半ば本気の顔で言っていたけれど、流石にそれでは声がくぐもってしまうだろうから、どうしてか今井さんが持っていたネコミミだけで我慢してもらった。

 鏡を見てちょっと嬉しそうな湊さんと、その姿をずっとスマートフォンで……恐らく録画し続ける今井さん。

 見慣れた光景ね、と思ってから、はたしてロゼリアというバンドの中でこんな風景を見慣れてしまっていいのだろうか、とちょっと自問した。


 8月25日

 今日は宇田川さんと約束をして、駅前のネットカフェに行った。

「たまには顔を突き合わせてNFOをやりましょう! 楽しいですよ!」という誘いに頷いた訳だけれど、確かにボイスチャット越しではなく隣り合わせでやるゲームというのもなかなかに楽しかった。

 しかしいくらペアシート(部屋の扉にはカップルシートと書かれていたけれど、きっと宇田川さんはそれがどういうものか分かっていないのだろう。微笑ましいものだ)であっても、ふたりで並べば肩がぶつかり合うような距離だ。ゲームに熱が入ってくると、どうにも宇田川さんの手と私の手が触れ合ってしまう。

 私は別に気にしないのだけど、宇田川さんはどうだろうか。そう思って、何度目かに手が触れ合った時に彼女の顔を見ると、少し嬉しそうな顔をしていた。

 やはり宇田川さんは私たちに比べれば子供だ。ゲームをしていて、そしてこういう風にちょっと身体が触れ合ったりするのが楽しくて仕方ないのだろう。

 日菜が小さな頃、用もないのに私の袖を引っ張って笑っていたのと同じ。そう思うと微笑ましい気持ちで胸中がいっぱいになった。

 きっと内面の充実というのはこういうことを言うのだろう。


 8月27日


 羽沢さんのお宅から帰る途中、商店街で牛込さんと宇田川さん――巴さんの方だ――に出会った。

 ふたりが一緒にいるのは珍しいわね、と思いながら声をかけると、どうしてか巴さんがまるで仇を睨むような目で私を見てきて、ちょっとだけびっくりした。

 そんな彼女の顔を見て、「大丈夫だよ、巴ちゃん」と牛込さんが巴さんに抱き着いたのがやたら印象に残っている。

 牛込さんと巴さんが一緒にいるのは珍しいと思っていたけれど、そもそも私は彼女たちのことをそこまで深く踏み込んで知っている訳でもないのだ。ふたりの様子を見るに、私がただ単に知らなかっただけで、前から懇意にしているのだろう。

 彼女たちとは少し世間話をしてから別れた。

 夕焼けに染まる家路を辿りながら、ぼんやりと考えていたことは、私が出会った人たちのこと。

 ロゼリアのみんなのことは当然よく分かっている。今なにを考えているだとか、どうしてほしいだとか、どんなものが好きでどんなものが苦手だとか……そういうのは、考えなくたってすぐに分かる。

 けれど、最近よくじゃれついてくる北沢さん、生徒会室でよく話をする市ヶ谷さんや料理を教えてくれる羽沢さんのことはそれなりに知っていても、深い深い本当の気持ちというのは不透明だ。

 せっかく何かの縁で知り合えて、少しずつ仲良くなれているのだ。私ももっと色々な人に踏み込んでいって、打ち解ける努力をした方がいいのかもしれない。

 ……なんて、こんなことを考える自分を昔の自分が見たらどう言うだろうか。

 頭の中にかつての氷のような自分を思い浮かべてみると、彼女は何も言わなかった。代わりに心底蔑んだような目をしながら問答無用のビンタを繰り出してきたから、私は思わず笑ってしまった。

 一年とちょっとで人はこんなにも変われるものなのね。


 9月5日


 最近、白金さんがよく笑う。特にお弁当パーティーの話になるとそれが顕著だ。

 それもそうか。彼女は私たちに黙って参加者を増やすというサプライズまで用意しているのだ。きっと誰よりもお弁当パーティーを楽しみにしているに違いない。

 私はそのサプライズをうっかり知ってしまったけれど、流石にそれを口にして白金さんの努力を水泡に帰すようなことはしない。例え分かっていても騙された振りをする。それがマナーだろうし、きっと私自身も楽しい。

 そういえば、今日の帰りに白金さんにぬいぐるみを手渡された。

 彼女曰く「白金会長人形」は、白金さん自身をモデルにした、デフォルメの入ったぬいぐるみだ。

 しかし、外見は可愛く作られているのに、ディティールは非常に凝っている。これも彼女の性格なんだろう。

 ぬいぐるみが着ているのはロゼリアの衣装で、その手触りからして私たちが実際に着用しているものと同じ材質を使っているだろうことがうかがえた。

 しかし一番驚いたのは髪の毛だ。

 どんな素材を使ったのか、白金さんの見事な黒髪を忠実に再現している。手触りも非常にさらさらしていて、シャンプーの香りまで漂うのだからすごい。なんという凝り性。

 彼女に手渡されてから一番にそれが目についたから、髪を撫でながら思わずどんな素材を使っているのか聞いてしまった。

 しかし白金さんはどこか恍惚とした表情で、「企業秘密……です」と言っていた。これもサプライズを楽しむ彼女の悪戯心なんだろう。

 だから私もお礼を言って、それ以上は深く聞かずにそのぬいぐるみを貰うことにした。


 九月九日


 通りすがる風景に、秋の陽はなんだかやけに鋭利だ。

 この陽射しがさすのは私の肌か、いつかの雨にまみれた野晒しの古傷か。

 止まない雨はないとは人は言うけれど、雨に打たれた過去がなくなる訳はない。

 自分の首を絞めて、自分を追い詰めて。

 引くに引けない場所にまで来て、ようやく私は本音を言えた。

 とうとう本音を言ってしまった。

 秋時雨が地を打つ。

 古傷に雨粒の爆ぜた音が染み入って、思い出と呼ぶには汚れすぎた、腐ったドブ川みたいな感傷がのたうち回る。

 それはいつしか雨避けからも転げ出て、痛みの雨に曝される。

 悩み多き私の音に結実を。

 声なき声には抵抗の扇動を。

 悩み多き私の過去に終止符を。

 陽が沈む。いつ終わるともしれないけれど、今日が確かに終わる宵。

 耳鳴りみたいな感じで、

 私の音が鳴って

 私の音、がなって

 頭痛みたいにわずらって、古傷みたいにはびこって、今日はずっと眠れない。

 そういう夜を言葉と呼びたい。


 ……さめざめと降りしきる雨音にやけにアンニュイな気持ちになってしまった。こんな長い夜に詩集なんて読み耽るんじゃなかった。

 けど、まぁ、こういう日もあるわよね。

 ただ明日以降の私がこれを見たら確実にベッドをのたうち回ることになるから、眠りにつく前に上から塗りつぶしてしまおう。


 9月14日


 お弁当パーティーも一週間後に差し迫った。

 陽射しもだんだんと夏から遠ざかって、もうだいぶ柔らかくなってきた。これなら来週は心地のいい陽気の下でお弁当パーティーが開催されるだろう。そう思うと少し足取りが軽くなる。

 しかし、どうにも白鷺さんは憂鬱そうだ。教室の自分の机に頬杖をついて、窓の外を眺めてため息を吐き出していた。

 少し心配になったから彼女に声をかけてみた。すると、来週のパーティーが近づいてくるとどんどん不安になる、というようなことを言われた。

 私は彼女を安心させようと「大丈夫よ。みんなそこまで手の込んだものや、闇鍋のようにとても食べられないようなものを作ってくる訳でもないんだから」と励ましたけれど、その言葉を聞いて白鷺さんはさらに深いため息を吐き出してしまった。

 どうしたものか、と思っていると、

「紗夜ちゃんのそういうところに苦しめられているのか助けられているのか……」

 なんてぼやいていた。なんのことだろうか?

 分らなかったけれど、「まぁ、そうね。気分的には闇鍋そのものだけれど……花女の3年生5人だけなんだし、きっと何事もないわよね」と言って、白鷺さんはふっと肩の力を抜いてくれた。

 だからきっとこれでよかったのだろう。あと、サプライズのことはちゃんと黙っていよう。

 そう思って微笑んでいると、白鷺さんに不思議そうな顔で「どうしたの?」と言われた。

 私は正直に、「白鷺さんの悩みが軽くなったことが嬉しいんですよ」と答えた。

 するとどうしてか彼女は心底呆れ果てた顔になってしまった。

 そして「気持ちは嬉しいけれど、そういうところよ、紗夜ちゃん」なんて言われたけれど、何のことだかさっぱり分からなかった。


 9月27日


 いよいよ明日はお弁当パーティーだ。

 天気予報も快晴で、気温は少しだけ高いけれど湿度は低いから、木陰に座ればとても気持ちのいい陽気だろう。

 私もこの日の為に、羽沢さんのもとで6回ほど修行に励んだ。その成果を出す時だ。

 ……それにしても、料理教室の回数を重ねるごとに、だんだん羽沢さんの距離が近くなっているような気がする。

 最初の料理教室では成人男性一人分くらいの距離を保っていたのに、一昨日の教室では拳ふたつ分くらいの距離をずっとキープしていたような覚えがあった。

 けど、「そっちの方が教えやすいので……」と羽沢さんも言っていたし、そういうものなのだろう。

 羽沢さんといえば、アフターグロウのみなさんもお弁当パーティーに参加するらしい。

 さらに北沢さんはハローハッピーワールドのみなさんを誘ったというし、市ヶ谷さんも私とふたりきりになるとやたらソワソワしていたらか、ポッピンパーティーのみなさんに声をかけていそうだ。

 それから日菜も「モカちゃんに聞いたよー! あたしとイヴちゃんと麻弥ちゃんも参加するよ!」と言っていたし、恐らく巴さん経由で宇田川さんや今井さんたちにも伝わっているだろうから、なんだかんだガールズバンドパーティーに参加した全員が集まるのかもしれない。

 白金さんのサプライズでこんなにも多くの人を集めることが出来るというのは、間違いなく彼女の成長の証だろう。

 私もそれに負けないように、羽沢さんに教わった、羽沢家一子相伝、社外秘の料理を振る舞うことにしよう。これは言ってみれば女子による女子の為のお弁当の勝負なのだから、出し惜しみなんてせずに全力で挑もう。みんなそうするはずだ。

 ……まぁ、日菜はケンタッ〇ーフライドチキンのクーポンを握りしめていたから、きっと出来合いのものを持ってくるでしょうけど。

 ともあれ、もう明日のお弁当の下準備も全て終わっている。あとはしっかり眠って英気を養うだけだ。

 気持ちのいい秋の空の下での、大人数でのお弁当パーティー。

 こうして字にするだけでも楽しそうな響きをしている。明日が楽しみだ。




 おわり


オチに納得がいかなかったので、>>221の期待に沿えているかは分かりませんが、後日談っぽいことでお茶を濁すことにしました。
これで正真正銘の終わりです。その先のことは僕は知りません。

こんなところにまでお付き合いいただきありがとうございました。
HTML化依頼出してきます。

>>222
自分はぽんこつ度を計ってぽんこつ可愛い沙綾ちゃんが見たいです。誰か書いてくださいおねがいします。

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