風影奪回編IF カカシVSサソリ  (87)

ナルトの風影奪回編のIFです 

暁の一員のサソリの両親を殺したのは、カカシの父親サクモでした

原作ではサソリの相手ははサクラがしましたが、因縁のあるカカシとサソリが戦ったらどうなるのだろうと思い書いてみました

注意 オリジナル設定あり



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1571814391


デイダラ「ふう..ようやく一息つけるな..うん」

サソリ「やれやれ..3日も封印に付き合わされた挙句、人柱力をもう一匹狩るハメになるとはな..」

暁のアジトの洞窟の中でサソリとデイダラはリーダーのペインの命令を受け、木の葉からの追手を待ち受けていた
洞窟の地面には一尾を抜き取られて絶命した我愛羅の亡骸が横たわっている

デイダラ「リーダーも人使いが荒いぜ..よっこらせっと!!」

デイダラは我愛羅の亡骸の上に腰を下ろすと封印の儀式で疲れた体を休ませた

サソリ「おいおい..人柱力の亡骸は大切に扱え..ソイツは俺の新しいコレクションになるんだからな」

デイダラ「コイツには腕を潰されたからな..このぐらいいいんすよダンナ」

デイダラは憎々しげに我愛羅の亡骸を睨みつけると我愛羅の顔にペッ..と唾を吐き捨てた

サソリ「角都と合流するまで我慢するんだな..その腕じゃ戦闘はムリだろう..お前は俺のバックアップに回れ」

デイダラ「旦那..これ言ったら旦那はきっと怒るかもしんねーけど..木の葉の人柱力はオイラが狩る..」

サソリ「ノルマは一人一匹だろーが..調子に乗るなよ?デイダラ..」

サソリは人傀儡ヒルコの血走った凶悪な瞳でデイダラを睨みつけた

デイダラ「木の葉の人柱力はなかなかに強いってウワサだからな..オイラの芸術の肥やしにしてやりてーんだ」

サソリ「芸術?お前のあの爆発が芸術だってのか?芸術ってのは後々まで残ってゆく永久の美を芸術というんだよ..」

デイダラ「へ..旦那も儚く散ってゆく一瞬の美って奴に目覚めるんだな..オイラの爆発は芸術そのものだ..旦那のびっくり人形喜劇とはワケが違うぜ!!うん!」

サソリ「.....」

ブオン..と空を鋭く切り裂くように、ヒルコの尾がデイダラ目がけて襲い掛かる..

デイダラ「うお!」

デイダラは我愛羅の遺体から急いで飛び退き、ヒルコの尾を紙一重で回避した

デイダラ「そう怒らねーでくれよダンナ..その代わりと言ったらなんだが..コピー忍者のはたけカカシは旦那に譲るからさ..」

サソリ「はたけ..カカシ..」

デイダラを追撃しようとしていたサソリだが、「はたけカカシ」という名を聞いて攻撃の手を止めた

サソリ(俺の親を殺した木の葉の白い牙..はたけサクモの息子か..)

サソリの脳裏に幼き日の光景が一瞬だけフ..とよぎる

デイダラ(ダンナ?)

第二撃に備えて身構えていたデイダラは呆けたように動きを止めた相棒を訝しむように見つめた

サソリ「いいだろう..そこまでいうなら木の葉の人柱力はお前が狩れ..写輪眼のカカシと砂隠れのババアは俺が相手をする」

デイダラ「おっし!!恩に着るぜサソリの旦那!!」

サソリ「自分で言い出したんだからな..責任を持って狩れよ?手負いだからって失敗したらぶっ殺すぞ!!」

デイダラ「オイラを..アートを舐めんじゃねーぞ!!うん..と..外が騒がしくなってきたな..そろそろ歓迎の準備をしないとな」

サソリ(チヨバア..と..白い牙の息子か..俺の親を殺したヤツの息子とチヨバアが手を組んで俺を殺しに来るとはな..こういうのを皮肉っていうんだろうな..)

デイダラ「来るぞ!」

ドゴオオオオオオオ!!!!

デイダラが声を上げた直後..入口の封印の役割を担っていた大岩が轟音を立てて砕け散り、闇が支配していた洞窟の中に、眩しいほどの太陽の光が差し込んだ

光が差し込むと同時に、洞窟の中に4人の忍が飛び込んで来て..サソリとデイダラは侵入者たちと相見えた

デイダラ「さて..どいつが人柱力かな...うん..」

我愛羅の亡骸の上に再び腰を下ろしたデイダラは挑戦的な瞳で侵入者を覗き込む..

ナルト「てめーら!!ぶっ潰す!!!」

我愛羅の亡骸を目にしたナルトの激昂した怒鳴り声がアジトの中に響き渡る

サソリ「アイツか..」

デイダラ「イタチの奴..特徴を伝えるのがうまいな..うん」

イタチに人柱力の特徴を訪ねた際に獲物を取られるのが面白くないのか一番最初に大声で怒鳴ってくる奴がそうだ..

と..曖昧な言葉を残して消えたときはイタチの野郎をぶっ殺してやろうと思ったサソリとデイダラもたった一言で人柱力の特徴を言い当てたイタチの洞察力に感嘆の声を上げた

チヨ(サソリ..)

サソリの祖母のチヨは悪党に身を落とした愛孫を複雑な視線で見つめる..

サソリ(チヨバア..と..あれが..はたけカカシか..)

サソリは侵入者の中に祖母と仇敵の息子の姿を確認すると、殺気を醸し出し、ヒルコの血走った目で敵を睨みつけた

ナルト「我愛羅!!そんなところで何寝てるんだよ!!立てよ!!我愛羅!!」

カカシ「よせ!ナルト!...わかってるはずだ」

叫び声を上げるナルトを諌めるようにカカシが声を掛ける..

デイダラ「そうそう..わかってんだろ?とっくに死んでるってな...うん..」

デイダラが挑発するように我愛羅の亡骸を手でペシペシと叩くと..

ナルト「!!!!」

ザワ..

サクラ「!」

九尾のチャクラがナルトから漏れ出し、サクラは戦慄の面持ちでナルトを見据えた

ナルト「てめえーーーー!!!」

ナルトは巻物の中から風魔手裏剣を取り出すと暁のメンバーに目がけて力いっぱい投げつけた

ヒュンヒュンと風車のように風魔手裏剣は回転し暁2人に襲い掛かるも..

サソリ「その程度か?」

ヒルコの尾が宙を舞いキン..と甲高い音を立てて風魔手裏剣は叩き落とされてしまった

サソリ「せっかちな人柱力だな..俺は人を待たすのも待たされるのも嫌いだからな..そんなに死にてーのなら..」

風魔手裏剣を叩き落としたサソリは、殺気を込めてナルトを睨みつける..

ナルト「てめえ..」

ナルトとサソリは血走った目で睨み合い、洞窟の中に一触即発の空気が漂った

デイダラ「おいおい旦那..人柱力の相手はオイラがするって言ってんだろ?どうやらあの人柱力はコイツを取り戻してーみたいだからな..」

デイダラは我愛羅の亡骸を見据えると、ポケットから起爆粘土を取り出し、右手の口の中に押し込んでチャクラを練り込んだ..

直後大型の鳥がボン!と大きな音を立てて出現し、我愛羅の亡骸を口の中に咥えてしまった

ナルト「我愛羅!!」

デイダラ「それじゃあ旦那..手筈通りに..」

サソリ「ああ..わかってる..さっさと行け!!」

デイダラは大鳥の上に飛び乗ると、洞窟の出口目がけて大鳥は飛び上がった

ナルト「待ちやがれ!!」

デイダラ「お前の相手はオイラがしてやる..ついて来い!!」

アジトの外に飛び出したデイダラを追い、ナルトは洞窟の外へと飛び出していった

カカシ「ナルト!!待て!!チイ..止まらないか..」

サクラ「カカシ先生!ナルトが!」

カカシ「わかってる!俺とナルトで外の奴をやる!サクラとチヨバア様は中の奴を..」

サソリ「おっと..そうは行かねえ..お前の相手は俺だ!!..はたけカカシ!!」

カカシ「な!!」

サソリはヒルコの口を大きく開け放つと、ナルトとデイダラの後を追おうとしたカカシと隣に立っていたサクラ目がけてヒルコの口から無数の毒針を勢いよく撃ち出した

カカカカカカカカ!!!!!

傀儡人形から射出された猛毒を帯びた千本が無機質な音を立てて、カカシとサクラ目がけて襲い掛かる..

カカシ「土遁・土流壁!!」

カカシは素早く印を結ぶと地面に両手を突き、地面から分厚い土壁が勢いよく2人の前に生えてきた

ドッ!!

サソリ「ほお..やるな..さすがコピー忍者のカカシと呼ばれるだけある..術のスピードが早い..」

土流壁に毒針が蜂の巣のように突き刺さり..毒針から漏れ出した紫色の猛毒が土流壁を伝って地面へと流れ落ちてゆく

カカシ(土流壁に付いているのは毒か..カンクロウくんを倒したのはアイツか..ちょっとでも攻撃がカスっただけでも動けなくなる..恐ろしい相手だ)

サクラ(カカシ先生が庇ってくれなかったら..私..きっと今ので..)

カカシとサクラは暁の実力の一部を垣間見て背筋に冷たい悪寒を感じた

チヨ「サソリ..お前..まさか..」

サソリ「チヨバアよ..そこのはたけカカシと一緒に俺のコレクションにしてやる..」

チヨ「サソリ..」

チヨは僅かに憐れみを込めた目でサソリを見つめる..

チヨ「悪党に身を落としたお前を放っておくわけにはいかん...せめてワシの手で殺してやることが..ワシからお前にできるせめてものことじゃ..」

サソリ「隠居したババアが..わざわざご苦労なこったな..」

一流の傀儡使い同士が睨みあい..洞窟の中に殺伐とした空気が漂う..

カカシ「サクラ..すまない..どうやらアイツの相手は俺がしなければならないようだ..お前はナルトと共に外の奴を..ただし、ガイ班が追いつくまで絶対に無茶はするな!」

サクラ「はい!!先生..これを..」

サクラはポケットの中から注射器を取り出してカカシに手渡した

カカシ「これは..なるほど..ありがとう..有効に使わせてもらう!」

サクラ「カカシ先生..無事でね!!」

サクラはカカシに注射器を手渡すとナルトを追うために洞窟の外へと飛び出した

サソリ(ガキには逃げられたか..まあいい..ガキ一匹が増えたところでデイダラなら問題ないだろう..)

チヨ「ワシとお主でアヤツを仕留めるぞ..サソリの傀儡はワシが詳しい..カカシ..お主はワシのバックアップに回れ」

カカシ「わかりました..」

サソリ「そろそろいいか?俺は待つのも待たせるのも嫌いなんだ..」

チヨ「案ずるな..すぐに殺してやる」

サソリ「フン..」

カカシ「来ます!!」

サソリはヒルコの口を開くと、再び毒を帯びた無数の千本をカカシとチヨ目がけて撃ちだした

カカカカカカカカカ!!!

洞窟の中に傀儡から撃ちだされた千本の金属音が響き渡る

チヨ「少しでも掠ったらいかん!!すべての攻撃を躱すのじゃ!!」

カカシ「わかっています!!」

カカシは写輪眼を発動させると、攻撃の隙間を見極め無数の千本の攻撃を巧みに掻い潜った

キン..キン..

カカシは避け切れない千本をクナイを用いて巧みに弾き飛ばし、洞窟の中に金属と金属がぶつかり合う高い音が鳴り響く

サソリ「これくらいは避けられて当然か..だったらこれはどうだ?」

サソリはヒルコの左腕を前に突き出すとボシュッ!という大きな音を立てて、ヒルコの左腕がカカシとチヨ目がけて射出された

チヨ(サソリめ..ヒルコをさらに改良したようじゃの..この左腕は初めてみるぞ..!)

ヒルコの左手は空中で高速回転を行い、傀儡の仕込が発動しカカシとチヨの周囲の空間に無数の猛毒の千本がまき散らされた

カカシ「くっ!」

カカシとチヨは襲い来る無数の毒針をギリギリの隙間を掻い潜り避け続けた

シュカカカカカカカカカカカカ!!

凶刃の金属音が洞窟の中にキン..キン..と反響する..

チヨ「カカシよ!!攻撃を躱しながら聞くのじゃ!!」

カカシ「なんでしょう!?チヨバア様!!」

襲い来る毒針を躱しながら、カカシは喘ぐようにチヨに返事を返す

チヨ「今ワシらに攻撃を仕掛けてきているのはサソリ本体ではない..サソリの傀儡人形ヒルコじゃ!!」

カカシ「アレが本体ではないのはわかります..この写輪眼で見切っていますから..奴の本体はあの傀儡の中にいるのでしょう?」

チヨ「さすが話が早いの..サソリを倒すには、まずはヒルコを破壊してサソリ本体を引きずりださねばならん..ヒルコの装甲は頑丈じゃ!ワシの持つ術ではあの装甲を破壊するほどの破壊力は持ち合わせておらん!」

チヨ「ワシがサポートして隙を作る..お主はアヤツの懐に潜り込んで、お主の持つ術の中で一番破壊力のある技でヒルコを粉砕するのじゃ!!」

サソリ「それができると思ってんのか?攻撃中におしゃべりとはずいぶん余裕じゃねーか..」

サソリはヒルコの毒針を再度装填すると、ヒルコの口を3度大きく開け放ち毒針を撃ちだした

カカカカカカカカカ!!!

ヒルコから射出された無数の千本がカカシ目がけて襲い掛かる..

カカシ(クソ..!!これは避けるスペースがもうない!!)

左手の千本に加え、口から撃ちだされた千本が加わったことでカカシは退路を断たれてしまった

チヨ「させん!!」

チヨが巻物を取り出すとボン!という音を立てて二体の傀儡人形が姿を現した

チヨは傀儡を指で操ると一体を自分の前に..そしてもう一体をカカシの前に差し出した

ズガガガガガガガガガ!!!!

毒針が鈍い音を立てて傀儡目がけて突き刺さる..

攻撃が終わり..洞窟の地面には無数の千本が転がっていた..

カカシ「これは..」

サソリ「ふん..それか..くだらねえ..」

チヨ「お前の..父と..母じゃ..せめてもの手向けじゃ..この傀儡で..殺してやる..」

チヨの傀儡..サソリの父と母が無数の千本を弾き落とし、カカシとチヨの身を守っていた

チヨ「今じゃカカシ!!次の千本が装填されるまえにヒルコを破壊するのじゃ!!」

カカシ「ええ!!わかってます..雷切!!」

カカシの十八番忍術..雷切が発動し、バチバチという音を立てて、カカシの左手に青白いチャクラが流れ出す..

サソリ「ほお..それが写輪眼のカカシの得意忍術雷切か..この目で見れて光栄だ..お前はいいコレクションになりそうだな..」

チヨ「行け!カカシ!!」

カカシ「うおおおお!!」

雷切が放つチチチチ..という鳥の鳴き声のような音を轟かせてカカシはヒルコ目がけて突進した

サソリ「バカ正直に真正面から突っ込んでくるとは..舐められたモノだな..」

サソリはヒルコの尾をヒュンヒュンと振り回すと、カカシ目がけて尾で襲いかかる..

カカシ「グオ!!」

グサッ!!という肉を突き刺す音が洞窟の中に鳴り響き..カカシはヒルコの尾に串刺しにされてしまった

サソリ「おいおい..せめて躱すなりしてほしいモノだな..写輪眼の英雄ともあろうヤツが..こんなマヌケな死に方をするなよ..」

サソリは串刺しになったカカシを眺め、呆れたように溜息を吐いた..

そこに..

カカシ「マヌケはお前だよ..」

サソリ「なに!?」

殺したはずのカカシが土中から姿を現した

サソリ「するとこれは..しまった!」

カカシ「分身大爆破の術!!」

カカシが術を発動するとヒルコに串刺しにされたカカシの分身が大爆発を起こし、爆風がヒルコを包み込んだ

サソリ「グオオオオオオオ!!!!」

ヒルコは粉々に粉砕され、ガランガランという音を立てて、バラバラになった傀儡のパーツが洞窟内に四散する..

爆炎がヒルコを飲み込む直前..崩れゆくヒルコの中から黒い物体が飛び出していった..

チヨ(ワシがサポートするまでもなくヒルコを倒してしまいおった..写輪眼のカカシ..これほどとは..)

ヒルコの攻撃からチヨの傀儡がカカシを守った際..サソリから姿が見えなくなった一瞬の隙をついて、カカシは影分身を発動し、土遁の術を用いて土中に身を隠し、影分身と入れ替わっていたのだ

カカシ(2年前..イタチと闘った時にコピーした術がこんな形で役に立つとはね..)

サソリ「やるじゃねえか..油断したぜ..さすが..木の葉の白い牙..はたけサクモの息子なだけはある..」

カカシ「!! 親父を知っているのか?」

敵の口から思いがけぬ名前が出たことで、カカシの心は僅かに動揺し、動揺を悟られぬよう、カカシは暁の装束に身を包んだ赤毛の男を睨みつけた

サソリ「ああ..俺の父と母は 忍界大戦の時にお前の親父に殺されて帰らぬ人となった..」

カカシ「!!」

チヨ「......」

カカシは砂隠れの里を訪れたときに、チヨが自分に襲い掛かってきたときのことを思いだした..

サソリ「さっきヒルコの攻撃からお前を守った傀儡は俺の父と母だ..仇の息子を守ることになるとは..皮肉な運命だな」

カカシ「そうか..そういうことか..俺を..恨んでいるのか?」

サソリ「恨む?勘違いするなよカカシ...俺は人形だ..人形に感情なんかないのさ..」

カカシ「どういうことだ?」

チヨ「砂隠れの悪しき風習じゃ..我々砂隠れはかつて、忍の感情を殺すために数々の非道なしきたりを行っていた..サソリもその犠牲者なのじゃ..」

サソリ「感情を殺し..己を殺し..人形になることが永遠の美だと俺は悟ったのさ..カカシ..お前は俺のお気に入りのコレクションにしてやる..」

チヨ「永久の美..サソリ..おぬしまさか..」

チヨは砂隠れの里を抜けた当時とまったく変わらない容姿のサソリを、戦慄の面持ちで睨みつけた

サソリ「クク..今日は気分がいい..素晴らしい素体に巡り合えたことを感謝するぜ..本気で戦ってやる..」

サソリは背中から巻物を広げると、ボン!と大きな音をたてて一体の傀儡人形が姿を現した

チヨ「その傀儡は..三代目風影..」

チヨはサソリが繰り出した三代目風影の傀儡を見て呆けたような表情で固まった

サソリ「殺した時苦労したが..俺のコレクションの中で一番のお気に入りだ..」

カカシ「お前が..三代目風影を..なんて奴だ..」

影の名を冠した忍を仕留めたサソリの強さに、カカシは改めて背筋に悪寒が走るのを感じた

チヨ「サソリ..貴様よくも三代目を..許さんぞ!!」

サソリ「御託はいい..言ったろ?俺は待つのも待たせるのも嫌いなんだ..さっさと殺してやるよ..いくぞババア!!」

サソリは戦闘態勢を取ると、三代目風影の傀儡を繰り出した

三代目風影の傀儡は右手から無数の刃物を剥き出しにすると、カカシ目がけて切りかかってきた

カカシ「くっ!!」

傀儡の繰り出す斬撃を紙一重のところで躱しつづけるカカシ..

チヨ「その刃物にも毒が塗られておる!掠るだけで動けなくなる!絶対に食らうでないぞ!!」

カカシ「わかってます!」

サソリ「ババアにはこれをお見舞いしてやる!!潰れろ!!」

サソリは指を動かして三代目風影の左腕がチヨ目がけて向けられ、左腕に仕込まれた札から50本はあるであろう無数の腕が伸びてきた

チヨ「千手操武の術か..その程度の術でワシを殺そうなど..千年早いわ!!」

チヨはサソリの父と母の傀儡を繰り出し、伸びてきた無数の腕を仕込みの傀儡糸で輪切りにスライスしていった

サソリ「さすがババアだ..!!まずはその型落ちの傀儡をバラシテからのようだな!!」

サソリは標的をカカシからチヨの傀儡に狙いを変えると、三代目風影の左腕から回転刃を取り出し、父と母の傀儡に襲い掛かった

チヨ「ぬっ!!」

チヨは2体の傀儡から武装の仕込を取り出し、刀と棘鞭で3代目風影の傀儡を迎え撃った

ガギン! ガギン!と傀儡同士の仕込がぶつかり合う鍔迫り合いの金属音が洞窟の中に響き渡る

サソリとチヨは高速で傀儡を動かし、目にも止まらぬ速さで傀儡同士をぶつけ合った

母の刀と三代目風影の回転刃がぶつかり火花を散らし..父の棘鞭を風影の傀儡が躱して棘鞭の一部を切断し..
母の刀が追撃をくわえ、回転刃とぶつかり合い..

カカシが肉眼で追い切れたのはそこまでだった

3体の傀儡人形は写輪眼でも追うのがやっとの速さで高速で鍔迫り合いを行い、数十数百にも及ぶ剣撃の音が洞窟内に反響した

カカシ(なんて闘いだ..割って入る余地がない..)

一流の傀儡使い同士の戦闘にカカシは為すすべもなく呆然と立っていることしかできないでいた

サソリ「やるな..さすがババアだ..」

チヨ「お主も中々よ..腕を上げたな..サソリよ..」

お互いの傀儡の刃物がボロボロに刃こぼれしてしまい、サソリとチヨは肩で息をしながら、肉親の強さを心から賞賛する

カカシ(さすが暁といったところか..あのうちはイタチに引けをとらない実力者だ..ナルトとサクラの様子も気になる..あまりモタモタしていられない..仕方ない..アレをやるしかない..)

カカシはサソリの実力の前に、写輪眼の力を繰り出す決意を固めると静かに左目を閉じた

サソリ「おっと..写輪眼でなにかしようったってそうは行かねえ..写輪眼の厄介さはイタチで身に染みているからな..」

カカシ「!!」

サソリ「イタチから聞いてるぜ?お前はうちは一族じゃないから、写輪眼を使うのに適した体じゃない..だからすぐにバテるし技の発動には時間が掛かるんだってな..つまり..技を発動させる暇を与えなければいいだけの話だろうが!!!」

サソリが印を結ぶと三代目風影の傀儡の口が開き、口の中から黒い砂が多量に溢れ出した

カカシ「なんです?あれは..」

チヨ「砂鉄じゃ..まさか三代目の術まで使えるとはの..気を付けろカカシ..砂鉄はあらゆる形状に形を変え、その場その場に応じた武器に姿を変えるのじゃ!」

サソリ「くく..久しぶりだろ..三代目風影はこの術で歴代最強と謳われたんだからな..カカシ..コレクションに加えるまえにお前の力を全部見ておきたかったが..こっちもあんまりチンタラしていられないんでな..これで終わらせてやる!!」

サソリ「砂鉄時雨!!」

砂鉄が宙を舞い無数の粒状に姿を変えると、勢いよくカカシとチヨめがけて襲い掛かってきた

カカシ「クソ!万華鏡..」

サソリ「遅い!!」

カカシが術を発動する前に、砂鉄がカカシの体を撃ちぬこうとしていた

カカシ(ダメだ!やはり術が間に合わない!やられる..!)

チヨ「カカシ!!」

窮地に陥ったカカシを助けるためにチヨは母の傀儡を差し向けると、傀儡でカカシを抱え上げ攻撃範囲から脱出した

サソリ「先にババアから始末してやらあ!!ソオラァ!!」

チヨ「ぬッ!」

無数の砂鉄時雨がチヨの体目がけて、叩きつけるように襲い掛かった

ドドドドドドドド...と地響きを立てるほどの轟音が鳴り響き..
土煙が洞窟の中に濛々と舞い上がる..

カカシ「チヨ様!!」

チヨに命を助けられたカカシは叫び声を上げた..

サソリ「チッ..」

チヨ「ハァ..ハァ..」

土煙が晴れると..そこにはチヨを守るように父の傀儡が両手にチャクラを纏い..盾のように立ちはだかっていた..

サソリ「俺が遊んでいた頃よりはグレードアップしてるようだな..チャクラの盾とはな..だが..」

チヨ(傀儡が..動かぬ..)

チヨがチャクラ糸で傀儡を操ろうにも..父の傀儡はぜんまいの切れたオモチャのように僅かに身じろぎするだけで、動かなくなってしまった

サソリ「この術は防ぐんじゃなくて躱さないとダメだって..知ってんだろ?カカシを逃がすので精いっぱいだったか?」

サソリ「三代目の砂鉄が入り込んだ....この傀儡の磁力がある限り..その傀儡はもう動かないぜ」

チヨ(サソリめ..やりおる..これは少々まずいの..さて..どうしたものか..)

カカシ「チヨさま..私から提案があります..」

チヨ「なんじゃ?アヤツを倒す妙案を思いついたのか?」

カカシ「はい..私の目には写輪眼を超える能力..万華鏡写輪眼の力が宿っています」

チヨ「万華鏡を..もしやさっき発動しようとしていた術は..」

カカシ「はい..万華鏡写輪眼です..しかし、私はうちは一族のモノではないので..技の発動に時間が掛かるんです..万華鏡写輪眼の能力を発動することができれば、三代目風影の傀儡を一瞬で破壊することができます」

チヨ「それまで..ワシに時間を稼げと言いたいのじゃな?」

カカシ「お察しの通りです..それで..これを..」

カカシはサソリに見えないようにそっと..チヨに注射器を手渡した

サソリ(カカシとチヨバアの奴..何か話しているようだが、ここからじゃ内容が聞き取れねえ..だが、大体の予想はつくぜ..写輪眼の力を発動させるまでチヨバアに時間を稼いでくれ..大体こんなところだろ..木の葉の黄色い閃光が聞いて呆れるぜ..)

サソリ(俺は待つのも待たせるのも嫌いだからな..お話中悪いが..2人一緒にくたばりな!!)

サソリは三代目風影の傀儡を操ると磁力を使い、砂鉄を数本の槍状に変化させ、カカシとチヨバア目がけて襲い掛かった

サソリ「砂鉄結襲!!」

チヨ「せっかちなのは相変らずじゃな..!」

カカシ「土遁・土流壁!!」

カカシは印を結ぶと、砂鉄を防ぐべく土壁を出現させ、カカシとチヨに襲い掛かる砂鉄の槍を弾き飛ばした

サソリ「やるな..だったらこれはどうだ!!」

サソリは砂鉄を集結させると巨大な円柱状の物体に変化させ、土流壁目がけて叩きつけた

カカシ「まずい!!チヨバア様!逃げてください!」

チヨ「フン!!」

カカシとチヨが土流壁から飛び退いた直後、ドゴッ!!という地響きを伴う轟音が洞窟内に響き渡り..砂鉄の塊は土流壁を粉々に打ち砕いてしまった

カカシ「なんて奴だ..」

サソリ「ソラソラァ!!さっさと逃げないとペシャンコになっちまうぜ!!」

砂鉄は形状を変えながら、カカシとチヨ目がけて間髪入れずに次々と襲い掛かった

カカシはギリギリのところで攻撃を躱しつづけ反撃の隙を伺っていたが砂鉄を躱すのが精いっぱいで、三代目風影の傀儡に近づくことすらママならなかった

カカシ(万華鏡写輪眼の発動は..まだ時間が掛かるか..他の術であの傀儡を倒そうにも近づくことができないんじゃどうしようもない..なにか手はないモノか..)

サソリ「逃げてばかりか..木の葉の黄色い閃光の名が泣くぜ..逃げ足だけは早いみたいだがな..」

カカシ「安い挑発には乗らないよ..俺はナルトと違ってクールな性質なんでね..」

あれ?黄色い閃光って四代目火影の呼び名だったっけ? 気にしないでくださいね

サソリ「お前の親父のことは知っている..命が惜しくて任務を放棄して逃げ帰った臆病者だったな..」

カカシ「!!」

カカシの父サクモは仲間の命を優先して任務を放棄した
任務放棄の件でサクモは国中から非難を浴び..さらには助けたハズの仲間さえもサクモのことを罵った

それが原因でサクモは精神を病み..自害してしまったのだ..
サソリの言葉を聞いてカカシは胸中に暗くてどす黒いモノが渦巻くのを感じた

カカシ「お前が親父を語るな..」

サソリ「仲間を優先して任務を放棄..忍としてお前の親父はカス同然だ」

カカシ「黙れ..」

カカシの胸に熱いモノが込み上げてくる..カカシは拳を握りしめて必死に熱くなりそうな自分を諌め、冷静を保とうと努力した

サソリ「一つ面白いことを教えてやる..お前の親父が任務を放棄したのは..それは俺と..チヨバアが原因だ」

カカシ「なんだと!?」

チヨ「.....」

サソリの口から驚愕の事実を告げられたカカシは、とっさにチヨの顔を覗き込む..

チヨは表情を変えず..口元を僅かにキュッと結ぶと正面からカカシの視線と対峙した


カカシ「どういうことだ..説明しろ..」

サソリ「長話は嫌いだ..細かいことはあの世でお前のオヤジに聞くんだな..じゃあな..」

サソリがチャクラ糸を操ると、三代目風影の傀儡の左胸に空いた穴から大量のチャクラが溢れ出す..

サソリ「砂鉄界法!」

すると砂鉄が毛細血管のごとく枝分かれを始め、洞窟内を埋め尽くすかのごとく浸食を始めた

そして..空間を埋め尽くすような砂鉄の棘がカカシ目がけて襲いかかってきた

カカシ(クッ..逃げ場がない..まずい!)

小柄なサクラならいざ知らず..成人男性のカカシの体格では縦横無尽に埋め尽くすように襲い掛かる砂鉄界法を避けるスペースはなかった

砂鉄が刺さる寸前..黒い影がカカシの前に立ちふさがった

ガギッ!

チヨ「カカシは死なせん!!」

チヨがサソリの母の傀儡を使ってカカシを砂鉄から庇ったのだった

カカシ「グオッ!!」

母の傀儡が発するチャクラの盾に砂鉄は刺さるようにぶつかり、砂鉄の圧力で傀儡人形は背後にいるカカシごと洞窟の壁に叩きつけられた

サソリ「仇の息子を庇うために、自分を守る最後の道具を棄てるとはな!!串刺しにしてやる!死ねババア!」

毛細血管のような砂鉄の刃がチヨめがけて襲い掛かる..

チヨ「グッ!」

ズギャッ!!という鈍い音と共にチヨは砂鉄の群れに飲み込まれて見えなくなった

カカシ「チヨ様!!」

カカシの叫び声が洞窟の中に響き渡る..

土煙がもうもうと舞い上がり..カカシとサソリの視界が塞がれる..

刹那の時が流れ、土煙が晴れたサソリとカカシの目に写ったモノは..

サソリ「死んだか..チヨバア..」

糸の切れた傀儡人形のように地面にうつ伏せに横たわるチヨの体だった

カカシ(万華鏡が発動できるようになった..今なら..)

サソリ「無駄だカカシ..お前の瞳術は俺には効かない..」

神威を発動させ、三代目風影の傀儡とサソリを葬り去ろうと試みたカカシに、サソリは容赦ない言葉を浴びせた

カカシ「なに?」

サソリ「万華鏡写輪眼の脅威はイタチでよく知っているんだ..何を繰り出す気かは知らないが..月読だったら眼球のない俺には幻術は効かないし..天照は焦点を合わせたところに着火する能力だ..つまり..動き回って着火点に合わないようにすれば恐るに足らないんだよ!!」

サソリと三代目風影の傀儡は縦横無尽に洞窟内を動き回り、カカシの焦点が合わないようにかく乱を始めた

カカシ「クソッ!!」

サソリ「臆病者のお前のオヤジの元に送ってやる..死ね!!」

サソリが砂鉄を使ってカカシにトドメを刺そうとしたその時..

シュルシュルシュル...ギュ!!

サソリ「何!?」

傀儡糸が三代目風影の体に巻きついて動きを封じた

チヨ「なーんちゃってな~!!死んだフリ~!!ギャハッ!ギャハッ!」

砂鉄に刺されて死んだはずのチヨが茶目っ気のある笑みを浮かべ、傀儡糸で風影の傀儡を縛り付けていた

サソリ「ババアッ!生きてたのか!」

チヨ「今じゃカカシ!!ヤレ!!」

カカシ「万華鏡写輪眼!!」

カカシは万華鏡を発動し、三代目風影の傀儡の胸を凝視した..

三代目風影の傀儡の胸の中心に時空間へとつながる歪みが発生し..傀儡の胸に大穴が空くと、傀儡はバラバラに砕け散ってしまった
ガランガランという軽い音を立てて傀儡の残骸が地面に転がってゆく..

サソリ「三代目..風影が..バラされた..」

サソリは目の前で起こったことを呆けたように見つめていた

ザザァァ...!!

風影の傀儡がバラされたことで、チャクラを失った砂鉄は形を崩して地面へと崩れ落ちて行った

カカシ「グ..!!」

カカシは左目を手で押さえて激痛に必死で耐えていた

チヨ「カカシよ..大丈夫か?」

カカシ「ええ..いいタイミングです..助かりました」

万華鏡の激痛に耐えているカカシの元にチヨが駆け寄ってきた

サソリ(ババア..なぜ動ける..たとえ致命傷じゃなかったとしても..俺の砂鉄には猛毒が仕込まれている..掠りでもしたら身動きができなくなるくらいの猛毒だぞ?まさか、解毒したとでもいうのか..ありえない..もしや..)

サソリはアジトに来る道中の事を思い起こした

サソリ(カンクロウを倒した時にトドメを刺さなかった..あの時の毒で解毒薬を作ってきたとでもいうのか?俺でも調合比率表がないと解毒薬は作れないというのに..ババアが?それとも他の誰かが...?)

サソリ(まあいい..とにかく今重要な情報は..奴らの手のうちに俺の毒を解毒するスベがあるってことだ..三代目をばらされた以上..他の傀儡を使っても時間の無駄だ..仕方がない..)

サソリは暁のコートを脱ぎ捨てて自分の真の姿を剥き出しにした

カカシ「!! あれがヤツの..」

チヨ「そう..アレが奴の真の姿..自分を傀儡人形にしてしまうとはの..」

両肩に飛行を備えたプロペラのような羽を生やし、腹部から腸を思わせるような尖ったワイヤーを剥き出しにしたサソリの真の姿にカカシは絶句した

サソリ「人の事言えんのかババア..さっきの攻撃..生身では絶対に防御不可だった..ババアにはもう傀儡はなかったハズ..となるとあの攻撃を防ぐ手段は一つだけ..」

チヨ「察しがいいの..ワシも体の一部を傀儡化しておるのじゃ..お主とは違って腕だけじゃがの..」

チヨは傀儡化した腕を前に突き出すと、チャクラを発生させ盾を作って見せた

サソリ「その傀儡化した腕でチャクラの盾を作り、攻撃を防いだわけか..」

カカシ(ヤツがチヨ様と話し込んでいる今のうちに..!)

カカシがサソリに神威の狙いを定めて時空間にサソリを葬り去ろうとした時..

サソリ「無駄だカカシ..写輪眼は俺には通用しないって言っただろ?さっきは不覚を取ったがもう二度と食らわねえ..」

サソリは背中から巻物を取り出すと勢いよく広げ宙へと放り投げる
同時にサソリの右胸がパカッと開き、巻物と右胸から大量の傀儡が沸きだしてきた

サソリ「これが俺の最後の傀儡だ..赤秘技・百機の操演」

カカシ「な..こ、これは..」

チヨ「ここまでとはの..」

洞窟内を埋め尽くすように大量の傀儡人形が溢れ..サソリは不敵な笑みでカカシとチヨを見下ろした

カカシ(ク..こう数が多くては奴に狙いを定められない..万華鏡はここまでか..)

カカシは体への負担が大きい万華鏡車輪を普通の写輪眼へと変化させた

カカシ「グ..ハァ..ハァ..」

チヨ「カカシ..大丈夫か?」

カカシ「はい..あの技は二回使うと体がまったく動かせなくなるのですが..使用したのは一回なのでまだ動けます」

サソリ「ずいぶんお疲れのようだな..すぐに楽にしてやる..死ね!!」

サソリは腕を上に挙げると、百機を超える傀儡人形がカカシとチヨ目がけて一斉に襲い掛かった

チヨ「カカシ!後はワシがやる..お主は休んでおれ!!」

チヨバアが巻物を取り出し開け放つと、巻物の封印から10体の傀儡人形が姿を現した

サソリ「出たな..チヨバア極意の傀儡白秘技"「十機近松の集」か..それで一つの城を攻め落としたことがあるらしいが..おれはこの赤秘技・百機の操演で一国を攻め落としたことがある..どっちの傀儡が優秀か、白黒つけようじゃねえか!!」

チヨ「行け!!」

チヨは10体の傀儡を迫りくるサソリの傀儡を迎え撃つべく差し向けた

サソリ「カカシ..お前の相手は俺だ!」

傀儡の9割をチヨの傀儡の相手に割き、残りの1割を自分の護衛につけてサソリの本体がカカシ目がけて襲い掛かってきた

カカシ「休ませてもらえないってわけね..当然か!!」

チヨ「気を抜くなカカシ!サソリの本体にも凶悪な仕込が施されているに違いない!ワシが援護に向かうまで持ちこたえるのじゃ!!」

チヨの操る傀儡人形は手に持つ鋭利な刃物で次々とサソリの傀儡を切り裂いてゆく
傀儡同士の剣撃の音が洞窟内に響き渡り、戦闘は最終局面へと突入した

サソリ「死ね!!」

プロペラのようなブレードを用いて空中を高速に飛び回るサソリ..

カカシ「ウッ!!」

高速回転するブレードの刃がカカシ目がけて襲い掛かる..
カカシは写輪眼の観察力でサソリの動きを見極めるとギリギリで刃を回避した

サソリ「まだだ!」

追い打ちをかけるように傀儡人形達がカタカタカタカタと音を立てて、カカシに切りかかってくる

カカシ(くそ!間に合ってくれよ...巳未申亥午寅!!)

カカシは素早く火遁の印を結ぶと..

カカシ「火遁・業火球の術!!」

サソリの傀儡に向けて大きな炎を口から噴き出した

ジュウウウウウ!!

サソリ「ちぃ..」

炎を避けそこなった傀儡が5体ほど炎に飲み込まれて、地面にドロドロと融け落ちて行った

カカシ「そこだ!!」

空中で動きの停止したサソリめがけてカカシはさらに火遁・業火球を撃ち放った

サソリ「フン..!」

サソリは背中の巻物を解き放つと、両の掌を前に突き出し、業火球めがけて高圧の水撃を撃ち放った

ブシュウウウウウ!!!

空中で業火と水流がぶつかり合い、炎と水はお互いに譲らぬ勢いで攻め合うと..

ドオオオオオンン!!

カカシ「グッ!」

サソリ「チィ..」

空中で水蒸気爆発が起こり、カカシは爆風で吹き飛ばされ地面に叩きつけられる..
近くを浮いていたサソリの傀儡が巻沿いをくらい護衛の傀儡は全滅した。

チヨ「ハッ..ハッ..!」

ザシュ..ザシュ..!

チヨの傀儡がサソリの傀儡を豪快に切り裂いてゆき、90はいた傀儡も約半分にまでその数を減らしており..チヨの傀儡の損耗はたったの1機だけだった

サソリ「やるな..さすがババアと写輪眼のカカシだ..だが..傀儡が減れば操作の性能が上がるんだ..勝負はまだここからだぜ!!」

サソリは腸のワイヤーを解き放つと空中高く舞い上がり、触手のようなワイヤーでチヨの傀儡の腹を貫いた

カカシ(なんて速さだ..まずは動きを止めないと攻撃を当てられない..)

サソリ「ソォラァ!!いっけえ!!」

操作の性能が増した傀儡が20機ほど高速でカカシ目がけて襲い掛かってきた

カカシ「雷切!!」

カカシは左手に雷切を発動させると、体の動きを高速化させることで傀儡を迎え撃った

バチチチ!!ガランガラン!

カカシの雷切で腹を貫かれた傀儡はバラバラに砕け散り、地面に崩れ落ちてゆく..

サソリ(知ってるぜ?その術はチャクラの消耗が大きいんだろ?土遁に火遁に写輪眼..カカシの残りのチャクラは少ないとみていい..もう万華鏡写輪眼を使ってくる心配はしなくてもいいな..一気にカタを付けてやる!!)

バチチチ!!バチチチ!!

2機3機と雷切で次々とサソリの傀儡を撃墜してゆくカカシ..カカシの奮戦によってサソリの傀儡は半分以下にまで数を減らしていった..だが..

カカシ「グウ!!」

傀儡の斬撃がカカシの肩を切り裂き、空中にカカシの血液が舞い上がった

チヨ「カカシ!!」

サソリ「油断したな..それとも疲れが祟ったのか?まあいい..当然この傀儡の刀にも毒を帯びている..放っておけば3日は持つが..そのつもりはない!!」

残りの傀儡がカカシにトドメを刺すべく襲い掛かったその時..

チヨ「三宝吸潰!!」

3機のチヨの傀儡が陣を為すと術が発動し、洞窟内に強力な吸引力が発生し、サソリの残りの傀儡をその強力な吸引力で吸い寄せて行った

ギュウウウウウウウウ...!!!

カタカタカタカタ..バラン..バラン...!!

サソリ「チィ..!」

カカシに襲い掛かろうとしていた傀儡も含め、サソリの残りの傀儡は次々と吸い寄せられてゆき、強力な吸引力を持って押しつぶし粉砕していった

サソリ「まだだ!!」

傀儡が全滅してもサソリの強さはまだまだ衰えず、腸のワイヤーを高速で操ると三宝吸潰で身動きの取れなくなっていたチヨの傀儡3機を一度に破壊してしまった。

チヨ「観念せい!サソリ!」

チヨは残った傀儡5機を操り、空中を縦横自在に飛び回るサソリに襲い掛かった

サソリ「オラァ!!」

サソリは背中から最後の巻物を解き放つと、両の掌から高温の炎を噴き出した

チヨ「ヌッ!」

チヨの傀儡の一体が炎を避けそこない、業火に飲み込まれドロドロと地面へと融け落ちてゆく..

サソリ「先にババアから始末してやるよ..灰に成れ!!」

サソリの掌からゴオオオオ..!!と高温の炎が噴き出し、チヨ目がけて襲い掛かる..

チヨ(大技を使いすぎた..避ける体力がもうない..しょうがない..)

チヨは残りの傀儡を手元に引き寄せると自分の前に配置し、チャクラの盾を作ることで炎をガードした

サソリ「俺の炎はしつこいぜ..防ぎきれるかな..ババア..」

サソリの炎は勢いを増してゆき、チヨの傀儡をチャクラの盾ごと飲み込んでしまいドロドロに溶かしてしまった

チヨ「しもうた..傀儡が..!!」

チヨの傀儡は一機残らず溶かされてしまい、チヨは無防備になってしまう

サソリ「とうとう年貢の納め時だな..死ねババア..!!」

サソリは空中高く舞い上がり、掌から刀を取り出すとチヨ目がけて一直線に切りかかっていった

そこに..

バチチチチ..と鳥の鳴き声のような閃光音を響かせながら、木の葉の黄色い閃光はたけカカシが、サソリの正面から跳びかかってきた

サソリ(なに?カカシ..毒で動けないハズ..そうか..解毒したか..あるいはあらかじめ解毒薬を飲んでいたんだな?)

サソリ「俺と刺し違えるつもりか?はたけカカシ..!」

カカシ「お前と心中する気なんてさらさらないよ..死ぬのはお前一人だ!」

ガッ!!

バチチチチチチ!!!

刀が肉を突き刺す音と、雷切が傀儡を貫く音が同時に洞窟内に響き渡った

チヨ「カカシ!!」

サソリの傀儡がバラバラに砕け散り、ガランガランという音を立てて地面へと崩れ落ちて行った

カカシ「グウ..」

それと同時にカカシが脇腹を抑えながら地面にドゥ!という音を立てて叩きつけられた

カカシ「グウウ..」

腹を抑えながら苦しげにうめき声をあげるカカシ..

チヨ「待っておれ..今この刀を抜いて..」

カカシの脇腹に刺さった刀はジュウウウ..という毒々しい音を立ててカカシの脇腹の肉を溶かしていった

チヨ(イヤ..刀を抜いても..これでは助からん...サソリめ..我々に解毒剤があるのを見越して、解毒が効かない強力なモノに切り替えたな..)

チヨがカカシの傷を見て絶望の顔を浮かべた直後..カチャ..カチャ..と傀儡のパーツが擦れあう音が響いてきた..

サソリ「くくく..惜しかったな..生身の人間の割にはイイ線いってたぜ..あいにく俺は永久の美を追求するために永遠に生き続けるつもりなんでな..俺もお前と心中する気なんてさらさらないんだよ..」

チヨ「サソリ..貴様..なぜ..」

カカシの雷切を身に受けてバラバラに砕け散ったはずのサソリが刀を握りしめ、チヨとカカシの元へとゆっくり歩いてきた

サソリ「俺は傀儡人形だ..そういうことさ」

チヨ「そうか..あの大量の傀儡の中にお前の体の予備を紛れ込ませていたのか..」

サソリ「目ざといな..さすがババアだ..死ぬ前に教えてくれ..」

サソリは一呼吸を置くと静かにチヨに問いかけた

サソリ「白い牙の息子と手を組んで..孫の俺を殺そうなんて..悪趣味なことをわざわざ考えたのか?」

チヨ「まさか..成り行きでそうなってしまったのだ...ワシだって白い牙は憎い..だが、カカシは白い牙ではない..カカシに憎しみを向けるのはお門違いなんでな」

サソリ「もし..白い牙に父と母を殺されていなかったら..俺は里を抜けることもなく..俺とアンタにはもっと別の未来が...イヤ、よそう..らしくねえことを言い出しちまった..くだらねえ...もういい.死ね..」

チヨ「....」

サソリはチヨにトドメを刺そうと刀を振り上げるも..その刃はいつまで待っても振り降ろされることはなかった..

そこに...


バチチチチチチ

サソリ「ガッ!!」

カカシ「雷切!!」

サソリの背後からカカシがサソリの蛾と描かれたコアを貫いた

チヨ「カカシ..!」

カカシ「油断したね..アンタほどの使い手が俺に気が付かないなんて..」

サソリ「なぜだ..なぜ生きてる..お前は殺したハズ..」

カカシ「お前が刺したのは..俺の影分身さ..」

サソリ「そういう..ことか..」

サソリが傍らに倒れるカカシの体を見つめると..ぼん!という音を立ててカカシの影分身は消え去った

サソリ「あの時..水蒸気爆発で視界が見えなくなった時だな..お前はあの時、影分身をして..本体のお前は土遁で地中に姿を隠していた..そうだろ?」

カカシ「ご名答..さすがに鋭いね..土の中に隠れてアンタの隙を伺っていたのさ..」

サソリ「俺の..弱点を見抜くとは..写輪眼を侮っていたか..いつ気づいた..俺の弱点に..」

カカシ「三代目風影の傀儡を万華鏡写輪眼で葬ろうとした時さ..アンタはあの時こういった..眼球のない俺には月読は効かないと..」

カカシ「アンタの術にはチャクラが必要だ..生身の部分が必要だと見抜いた俺は地中から写輪眼でアンタの体を観察していたのさ..その胸のコア..そこからチャクラが溢れ出しているのを見極めた..用心深いアンタのコアを確実に刺せる気を土の中から伺っていたんだよ」

サソリ「失言だった..敵に塩を送っちまったな..クソ..ゴフッ..!」

サソリは口から血を吐きだすと力なく顔をうなだれた

サソリ「お前はオヤジの任務失敗の真相を知りたがっていたな..俺を倒した褒美だ..教えてやる」

カカシ「!!」

チヨ「....」


サソリ「白い牙は砂隠れに仲間を率いて潜入任務にやってきた..当時傀儡部隊を率いていた俺は、傀儡を使って白い牙たちが砂隠れに侵入したことを突き止めた」

サソリ「息子夫婦の仇が砂隠れに潜入したことを知ったチヨバアは怒り狂い、白い牙を抹殺するべく直々に奴らの暗殺に赴いた..」

サソリ「チヨバアと白い牙は壮絶な死闘を行い..一進一退の攻防戦を繰り広げた..白い牙は仲間を逃がすためにチヨバアとの一騎打ちに臨んだんだ」

チヨ「白い牙とワシは一晩中戦闘を繰り広げたが..結局決着はつかなかった..ワシは奴を仕留め損ね、逃げられてしまったんじゃ..」

サソリ「俺は白い牙の仲間を追撃するようにとチヨバアに命令を受けて追いかけた..白い牙に比べると拍子抜けするほど弱い奴らだった..奴らは命だけは助けてくれと俺に必死に命乞いをしてきたんだ..」

サソリ「そして..俺は面白いことを思いついた..クク..」

サソリは口元に虚ろな笑みを浮かべると..

サソリ「お前には披露する機会がなかったが..俺には潜脳操砂の術という対象者の記憶を操る術があるんだ..その術を使って仲間の記憶を操作してやったのさ..」

サソリ「白い牙は臆病風に吹かれて任務を放棄したんだ..とな..」

カカシ「なんだと!!」

サソリ「本当にあったかのように記憶を操る術だからな..術を掛けられた連中は臆面もなく、各地で俺が植えつけたウソを言いふらしていった..白い牙は自分たちを見捨てて真っ先に逃げ出していったとな..」

カカシ「親父は最後まで..仲間を守るため..逃がすために行ったことだったんだって..俺にはそう言い続けて..」

サソリ「事実はそうさ..だが、俺の術に操られた奴らがあちこちで言いふらしたウソによって白い牙は心を病み..自害した..お前のオヤジの本当の仇はこの俺だ」

サソリ「俺は両親の仇である白い牙を間接的にこの手で討ち..そして..その息子のお前の手によって俺は白い牙の仇を討たれたことになる..皮肉な巡り合わせだよな..本当に..」

カカシ「くっ..!」

サソリ「俺が憎いか?カカシ..俺も本当はお前が憎かったのかもしれない..感情を棄て..人形になることを夢見て..こんな体になったが..俺は結局..人形になれなかった人間だったんだな..」

サソリ「俺たちのリーダーが言っていた..争いのない平和の世界を作るってな..俺は芸術を作ることにしか興味はないつもりだったが..本当はヤツの言う平和な世界が欲しかった..のかも..な..」

チヨ「忍の世は憎しみに支配されている....いつの世も..戦いと..憎しみの連鎖よ..白い牙と我々を巡った今回の争いが..ソレを象徴しているのかもしれんの..」

カカシ「平和な世を作るために尾獣を集めて何をするつもりなのかは知らないが..お前たち暁の行おうとしていることは間違っている!!」

サソリ「そんなことは俺は知らない..もうそろそろ..俺も動かなくなる..暁と..お前たちの行く末を..一足先に..地獄から見ているぜ..」

最後にそう言い残すと、サソリはそれっきり動かなくなった

チヨ「サソリ..」

カカシ「死んだ..」

サソリが死亡し、洞窟の中には陰鬱な空気が漂ってきた

カカシ「チヨバア様..行きましょう..」

チヨ「カカシ..お主..」

カカシ「こんなことはもうたくさんだ..憎んで殺し合って..こんなことは俺たちで終わりにしないといけない..暁がしようとしていることは憎しみを際限なく広げようとしいます..止めなくては..」

チヨ「そうだな..ナルト達を追いかけなくては..」

ウオオオオオオオオオオーーーーーーーーー!!!!!!!

カカシとチヨが腰を上げたとき..遠くの方から獣のような雄叫びと地響きが鳴り響いてきた

チヨ「これは..」

カカシ「ナルト..まさか九尾が!!」

ナルト..我愛羅くんを失い、お前も憎しみに囚われているのか?

お前だけは..俺たちのようにはならないでくれ..

今行くぞ..ナルト..


カカシとチヨは洞窟を後にし、争いを止めるためにナルト達の元へと駆けて行った


おしまい

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