カイジ「放課後さいころ賭博・・・・?」 (57)
宵闇迫る繁華街の一角 毅然と佇立する男が一人
カイジ(鴨川の川べりのベンチで解放され・・)
カイジ(三条大橋を渡って三条通りを直進・・・・)
カイジ(河原町通りとの交差点を左折し・・・・その後右折して六角通りへ・・・・)
カイジ(最寄りの鉄板焼き屋で・・京風お好み焼き『べた焼き』とビールを堪能・・・・)
カイジ(現在に至る)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1575691564
カイジ(いったいどこで解放されるのか・・・・選択権ゼロ・・・・とはいえ)
カイジ(まさか関西・・京都で解放されるとは想定外・・・・土地勘もゼロっ・・・・)
カイジ(だが、そこに文句を言ったところで時間の無駄・・・・)
カイジ(どっちにしろ、探さなきゃいけない・・・・異常レートの裏カジノっ・・・・!)
カイジ(20日間で80万円を6000万に膨らませる・・・・闇の賭場を・・・・!)
カイジ(あるはずだ・・・・この周辺・・路地裏の繁華街・・・・そして新京極界隈)
カイジ(必ずある・・・・いかがわしい店・・・・・・)
カイジ(世間サマに顔向けできない・・・・イカサマで博徒から金をむしり取る悪魔どもの巣窟・・・・!)
カイジ(とはいえ・・日も落ちたわけだし、そろそろ今日の寝床を探す必要があるな)
カイジ(格安のカプセルホテルにでも泊まる手もあるが・・・・できる限り無駄な出費は避けたいところ)
カイジ(この季節だ・・・・その辺の雑居ビルの中に入って・・・・ダンボールやゴミ箱であさった新聞や雑誌でも敷いてやり過ごす)
カイジ(とりあえずそこのビルに入ってみるか・・・・)
カイジ(エレベーターの階数表示・・・・ん?)
カイジ(このビルの3階にはいっている施設・・・・『さいころ倶楽部』?)
カイジ(さいころ・・・・サイコロと言えば・・・・ギャンブル!)
カイジ(丁半、クラップス、マカオダイス、地下で散々やり続けたチンチロ・・・・・・)
カイジ(そういうダイスゲームを中心にした賭場・・・・!)
カイジ(どうする? 寄ってみるか?)
カイジ(とはいえ、こんな何の変哲もない雑居ビルでちゃんとした賭場が開帳されるものなのか・・・・)
カイジ(否・・! 逆だ。こんなところだからこそ・・・・意外性を突いて平然と行われているに違いない・・・・脱法行為・・・・違法営業っ・・・・!)
カイジ(ちょっと様子を見てみて期待外れだったら立ち去ればいいだけのこと・・・・無駄足にはならない)
カイジ(行こうっ・・・・!)
【さいころ倶楽部】
がらっ・・
カイジ「・・・・・・! これは・・・・」
カイジ(陳列棚に並ぶ大量の箱・・・・これ、ゲームのパッケージ・・・・?)
カイジ(海外製・・・・? これを使ってやるのか・・・・闇のギャンブル・・・・)ごそ・・ごそ・・
店長「いらっしゃい。よく来たね」
カイジ「・・・・!」
カイジ(出たよ・・・・! 見るからに反社会勢力でございってツラしてやがる・・・・十中八九、この賭場の元締め・・・・!)
店長「ふふ、この店に来たってことは兄ちゃん、こういったゲームに興味があるってことかい?」
カイジ「ああ、当然っ・・・・!」
店長「じゃ、さっそくご所望のゲームをお探しいただこうか」
カイジ「俺が選ぶのか?」
店長「お客様のご希望に合わせて、とくと堪能してもらうよ。レトロゲームの世界を」
カイジ「え・・? レトロゲーム・・・・?」
がらっ・・
「あ、お客さんがいるよー!」
カイジ「え・・?」
綾「珍しい~! 私達以外のお客さんが来てるの初めて見たよー」
美姫「ちょっとアヤちゃん、そんなん言うたらあかんよ。それってまるで」
翠「うちが閑古鳥鳴いてて儲かってないみたいじゃないの」
カイジ(え・・? 女の子・・・・? 制服・・見た感じ、女子高生・・・・?)
カイジ(こいつらも闇の賭場でギャンブルを・・・・? いや、まさか・・・・)
綾「違うの?」
翠「あなたたちがいつもここにいるわけじゃないでしょ。来るときは来るのよ、お客さん」
綾「へ~そうなんだ」
翠「じゃ、私ちょっと用意してくるから。店長、お客さんのことお願いするわね」
店長「勿論」
翠「二人も、よかったらお客さんのお相手してあげて。あなたたち上得意客なんだから、いろいろ案内してあげられるだろうし」
美姫「うん、ええよ」
綾「私も私もー!」
カイジ(ちょっと待て・・・・何かがおかしい・・・・)
カイジ(俺は裏カジノのギャンブルをするつもりでこの店に入った・・・・だが)
カイジ(どうやらこの店・・・・俺が思っていたような不健全な店ではないらしい)
カイジ(ギャンブルができないなら・・この場に留まる理由は・・・・皆無っ・・・・!)
カイジ「あ、あのー・・すいません。俺、ちょっと用事思い出しちゃって今日のところは・・・・」
店長「おやおや、兄ちゃん何を言うんだ。さっきまであんなに乗り気だったじゃないか?」
店長「ここに入ったからにはゲームの一つや二つやってもらわないと、兄ちゃん勿体ないよ」
カイジ「いや・・でも・・・・」
綾「そうだよー。一緒にゲームやろうよ。ここのお店、いろんなアナログゲームが置いてあるし、自由に遊んでいいから楽しいよ」
カイジ「あ・・そうなの・・・・」
美姫「ほんま、よかったらでええんで。せっかく、ここにきてくれはったんやし」
カイジ「あ・・・・うん・・・・」
カイジ「け、けど・・! 俺、金がないし。いや、あるけど・・・・あまり無駄遣いできないっていうか・・・・」
カイジ「スペースを借りてゲームするなら・・・・座席料とか結構かかるだろうし・・・・だから」
店長「金は取らないよ」
カイジ「え・・?」
店長「兄ちゃん、うちに来るのは初めてだろう。今日は無料体験ってことで、好きに遊んでくれてかまわないさ」
店長「兄ちゃんがレトロゲームに興味持ってくれてるだけで嬉しいんでね。これも何かの縁だ、楽しんでいってくれ」
カイジ「店長さん・・・・じゃあ、お言葉に・・甘えて・・」
カイジ(ぐっ・・・・なんとなくこういう流れ。断り切れない・・・・)
カイジ(こんなことで貴重な時間を無駄にするなんて・・・・バカだろ・・・・俺っ)
~~~~~
~~~
綾「あ、これこれ。マラケシュっていうの! 私達が最初にここで会ってやったゲームなの」
カイジ「へぇ・・。にしてもここのゲームのパッケージ、日本語表記の物もあれば、横文字の物も多いんだな」
美姫「ボードゲームの歴史は古くって、特にドイツでは世界的に有名なボードゲームが作られてるそうです」
カイジ「ドイツ・・・・俺はここにあるゲームのタイトルはほとんど知らないな」
店長「ドイツやフランスのようなユーロ圏では一大市場を築いているんだけどね。確かに日本ではまdまだマイナーだね」
綾「でも面白いんだよー! ルールも分かりやすいのが多いし。とっても盛り上がるし!」
美姫「せやね。ひとりでやるゲームより……みんなでやるから面白いってとこもあるよね」
カイジ「みんなでやって・・・・面白いゲーム、ね・・・・」
美姫「……お兄さん?」
カイジ「あ、いや・・何でもない」
カイジ(思えばここ最近・・・・楽しんでゲームをやったことなんてまるで無し)
カイジ(限定ジャンケンにせよ、鉄骨渡りにせよ、Eカードにせよ・・・・)
カイジ(すべては汚い金が絡み・・・・阿鼻叫喚の生き地獄の中、死にもの狂いのギャンブルだった・・・・)
カイジ(エスポワールに乗るまでも、気が向けばパチンコ、パチスロ、しょーもない連中との花札・・・・)
カイジ(ロクにありゃあしない・・・・楽しんでゲームをした記憶なんて)
美姫(この人、何なんやろう。うまく言えへんけど……まだ若そうやのに、とても重いものを背負ってるみたいに見える)
美姫(部屋の中にいるのに手袋を外そうとしないのも、ちょっと気になるし)
翠「おまたせ」
綾「ミドリちゃん遅かったね。どうしたのー?」
翠「あるカードゲームを探しててね。最近入荷したばかりだから、まだまっさらな状態なんだけど」
美姫「カードゲームって、どんなのを?」
翠「お客さんを交えて一緒に遊ぶのに、もってこいのカードゲームがあるの」
カイジ「え・・? 俺も、やるのか・・・・。あんたたちとゲームを・・・・?」
翠「勿論、ゲームは大勢でやるほうが面白いし。このゲームは初対面の人を交えてやったほうがむしろ面白いくらいなの」
美姫「初対面の方が……面白いん?」
綾「えー!? どんなカードゲームなの? ミドリちゃんもったいぶらないで早く教えてよー」
翠「カルテットってカードゲームを知っているかしら。ドイツではとてもポピュラーなんだけど」
店長「……ほう」
綾「カルテット?」
美姫「どういうゲームかはわからへんけど、カルテット言うたら」
カイジ「四人組・・・・音楽だと四重奏とか・・・・そういう意味だよな」
翠「ご名答。今からやるゲームは、本場ドイツのカルテットのルールに則って」
翠「日本の現役女子中学生がオリジナルの要素を加えて作り出したものなの。その名は――」
店長「nickname(ニックネーム)だね、翠ちゃん」
翠「そう」
綾「ニックネーム……って、あのニックネーム? あだ名の?」
店長「相手をあだ名呼びするキッカケ作りになって、普通よりもすぐに慣れない人とも打ち解けられる――そういうことを目指したゲームさ」
美姫「あだ名呼びの……」
カイジ「きっかけ作り・・・・」
翠「簡単に言えば、名前を呼んでカードを集めて、楽しみながら相手との距離を縮めましょうって趣旨のゲームよ」
翠「ルールは適宜説明するわ。さっそく始めましょう――」
シャッシャッシャッシャッ
翠「nicknameには、<ニックネームカード>が13種類あって」
翠「それぞれのニックネームカードに対応する<もちものカード>が4枚ずつ、合計で13×4の52枚あるの」
綾「ふむふむ」
翠「例えばこれ」
<ニックネームカード>
フルーツ大好きガール【ちゃん】(4種類の「もちもの」の絵入り)
<もちものカード>
りんご【ちゃん】
メロン【ちゃん】
バナナ【ちゃん】
ブドウ【ちゃん】
翠「フルーツ大好きガールという女の子の絵が描かれている<ニックネームカード>に対応する<もちものカード>は、りんごなどの果物4種類」
翠「プレーヤーはこの<もちものカード>4種類を手に入れることができれば、<ニックネームカード>1枚をゲットできるというシステムよ」
翠「そして、最終的に<ニックネームカード>をたくさん手に入れた人が勝ちとなるわ」
美姫「えっと、つまり……みんなには最初の段階で<もちものカード>がランダムに配られるってことやね」
翠「そう。そこはババ抜きなんかと同じね。最初にいろんな種類の<もちものカード>を全員に均等に配るの」
翠「52枚すべてを4人に配るなら、1人13枚になるわね」
翠「<ニックネームカード>は伏せる必要もないから、場の中央にすべて表を向けて置いておけばいいわ」
翠「<ニックネームカード>に4種類のもちものの絵が入っているから、自分がもっていない種類のもちものを、それを見て確認できる」
カイジ「各人が手にした13枚は、基本ランダム。いきなり同種の<もちものカード>4枚が揃っている確率は低い」
カイジ「だからババ抜きのように他の3人と手持ちのカードを『やり取り』することで、同種4枚を揃えることが目的なんだな」
翠「その通り」
綾「そのやり取りってどうやるの? ババ抜きみたいに引いてくの?」
翠「いいえ、そこはカルテット独自のルールがあるのよ」
翠「自分の順番が来たら、自分が『欲しいカード』を持っている人を『推理』して、その人に対しておねだりをするのよ」
美姫「推理するん……」
カイジ「ほう・・」
綾「おねだりって、ようするに『あのカード持ってたら頂戴~♪』って言うってこと?」
翠「そういうことだけど、ここでnickname独自のルールが加わってくる」
翠「おねだりをするとき、<ニックネームカード>や<もちものカード>に書いてある『呼び方』で相手を呼ぶ必要があるの」
綾「呼び方ってことは……あ、もしかして!」
綾「フルーツ大好きガールの<もちものカード>が欲しいときは、相手を【ちゃん】づけするってこと!?」
翠「その通りよ」
カイジ「ちょっと待て・・・・それって、俺も・・・・?」
翠「そう、例えばアヤが貴方にりんごの<もちものカード>をおねだりしたいときは、アヤは貴方のことを【○○ちゃん】と呼ばなきゃない」
カイジ「えぇ・・(困惑)」
綾「え~~~!? それなんか呼ぶ方も凄い恥ずかしいよぉ~!」
翠「でも、それがルールなのよ。ルールには従わなきゃいけないでしょう? ゲームなんだから」
美姫「それは……そうやね。決まりなんやし」
綾「で、でも~~~~」
カイジ(ぐっ・・・・ここまで女子高生に嫌がられるのか・・・・・・俺はっ・・!)ウルウル
翠「さらに、その場合貴方はフルーツ大好きガールのような女の子になりきって返答しないといけないの」
カイジ「なっ・・・・!」
翠「返答としては、実際におねだりされたカードを持っていたら素直に持っていると答えて渡すこと。持っていなかったら持っていないと言えばいい」
翠「推理に成功した人は続けて更にカードをおねだりできるわ。この場合、対象は他の2人でも構わない。推理に成功し続ける限り、その人のターンは終わらないわ」
綾「おおっ! 凄い! 当たりまくったら『ずっと俺のターン!』ってできるね!」
美姫「推理が外れて失敗した場合は、推理する人は次の人に交代するってことやね」
翠「そう。そしてもう一つ。このルールが、ゲームのミソになるんだけど――」
翠「自分が1枚も持っていないニックネームグループの<もちものカード>はおねだりできないわ」
綾「え、てことはつまり」
美姫「例えば、フルーツ大好きガールの<もちものカード>を集めたいなら」
美姫「りんご・メロン・バナナ・ブドウのうちの最低1枚は、自分が持ってないとあかんってこと?」
翠「そういうこと。ルールはだいたいこれくらいよ。理解できたかしら?」
綾「うん、たぶん大丈夫っ」
美姫「私も」
カイジ「・・・・・・・・」
カイジ(【ちゃん】以外のニックネームのパターン・・・・)
カイジ(【くん】【さん】【よびすて】【先輩】【せんせい】【社長】【博士】【さま】【どの】【にゃん】【隊長】【マン】・・・・・・)
カイジ(にゃん・・・・・・?)
カイジ(カイジにゃん・・・・・・?)
カイジ(<ニックネームカード>空前絶後の萌えアイドル・・・・ふざけるなっ・・・・!)
カイジ(こんな呼び方をされてしまう可能性があるとか・・・・恥ずかしすぎる・・・・!)
カイジ(一方で俺がもし・・・・このアイドルの<もちものカード>を誰かに要求したら・・・・!)
カイジ(「きもい」だの「引くわー」だの「きっしょ」だの罵詈雑言・・罵倒の嵐っ・・・・!)
カイジ(一方で、他の3人はもとから友達同士・・・・しかも全員結構可愛い女子高生・・・・)
カイジ(お互いにゃん呼びでもセーフ・・・圧倒的セーフ! むしろウェルカムかも~ん・・!)
カイジ(明らかに孤立している・・・・むさ苦しくて冴えない男の俺を狙い撃ちする非道なルール設定・・・・!)
カイジ(うわあああああああああ)ぐにゃ~
翠「あの、……大丈夫ですか? ルール説明」
カイジ「あ、いや・・・・ちょっと考え事をしていただけで・・・・たぶんOK」
美姫「あの、お兄さん」
カイジ「何だ・・・・?」
美姫「そんなに思いつめないでええんやないかな。これはあくまでゲームなんやし。そない肩肘張らなくても」
カイジ「お、おう・・」
綾「そうだよ! 全然恥ずかしいことなんてないって! だってルールなんだもん」
翠「そうですよ。要は役者になったつもりで自分の好きなようにキャラを演じたらいいんです。やってみたら意外と面白いですよ」
カイジ「そうなのか・・・・」
翠「さあ、始めましょうか。でもその前に、改めてみんな自己紹介をしましょうか」
翠「ニックネームで呼ぶ以前に、貴方の名前を知らないと話にならないもの」
カイジ「ああ、そうだな・・・・」
カイジ「ゴクリッ・・」
カイジ「俺はカイジだ。伊藤、カイジ・・・・!」
綾「私は高屋敷綾だよー。ヨロシクぅ!」
美姫「武笠美姫です。どうぞよろしゅう」
翠「大野翠です。よろしくお願いします」
店長(カイジくんか。どれ、お手並み拝見といくかね)
なりゆきで女子高生とのカードゲームに参戦することになったカイジ・・・・!
開始当初は遠慮もあって口ごもるシーンもあったものの・・・・
興が乗るにつれて・・カイジの心境も一変・・・・・・!
翠「カイジ先輩……私、先輩の『第二ボタン』が欲しいんです。先輩……だめですか?」
カイジ「悪いな翠・・・・お前には俺の第二ボタンはやれない」
カイジ「俺はもう第二ボタンを持っていないんだ。綾に渡してしまったからな・・・・」
綾「へ? 私カイジくんから第二ボタンもらったわけじゃないよ? 最初から私が持って……あっ」
カイジ「ククク・・・・」
翠「なるほどね。【先輩】の第二ボタンはアヤが持っていたのね」にやり
綾「ず、ずるーい! 2人で私をはめたんだね~! 誘導尋問だよー!」
美姫(カイジさん、ミドリちゃんの質問にただ答えただけやない)
美姫(あえてアヤちゃんを話題に挙げることで、アヤちゃんが口を滑らすのを狙ったんやね)
美姫(【先輩】の第二ボタンは、要求したミドリちゃんの元にもなければ、否定したカイジさんの手元にもない)
美姫(だったら残る2人……私かアヤちゃんのどちらかが持っていることになる)
美姫(2人のうち、あえて私じゃなくてアヤちゃんの名前を挙げたんは……アヤちゃんのほうが失言を狙えると思ったからやろか)
美姫(もしかして……!)
美姫(ミドリちゃんもカイジさんのこういうテクニックを見込んで、【先輩】の第二ボタンを要求したんやない?)
美姫(ミドリちゃんは、ここまでのカードのやり取りから、カイジさんも【先輩】の<もちものカード>を何枚か持っていると推理して)
美姫(でも、仮にカードの種類の推理が外れたとして、カイジさんの言動次第で【先輩】の第二ボタンの在処が分かれば……二人とも得することになるし)
美姫(う、でもこれって……私の考えすぎやろか? このゲーム、思った以上に)
カイジ(思った以上に・・奥が深いっ・・・・。考えさせられる・・・・神経を使わせるゲーム・・・・!)
翠「ほら、次はアヤの番よ。私は結局、カイジさんへのおねだりに失敗したのだから」
綾「むむぅ~! ちょっと納得いかないけど……ここからは私のターンだよ!」
綾「ミキにゃん!」
美姫「! は、はい……な、なんだ……にゃん?」//////
綾「アイドルにゃんの持ち物の、『ネコ耳』が欲しいにゃ~♪」
美姫「ネ、ネコ耳は持ってへん……持ってない、にゃんっ」//////
綾「あれー? 違ったのー?」
翠「あらら、ミキはまだ恥じらいが抜けてないわね~」
美姫「だ、だって……」
カイジ(・・・・時は来たっ・・・・!)ニヤリ
翠「次はカイジさんの番ね」
カイジ「ふっ・・いくぜ、俺のターンっ・・・・」
カイジ「綾にゃんっ・・・・!」
綾「お……おう、何だにゃ! カイジくん!」
カイジ「俺、ずっと前から綾にゃんのファンでした・・・・! 『サイン』ください・・・・・・!」
綾「へ、サイン? でも私書いたことないし……ってあっ! サインの<もちものカード>だぁ!」
カイジ「クク・・」
翠「当たりなのっ?」
綾「うぅぅ……当たりです。カイジくんに私のサインをあげますぅ……でも何で分かったの?」
カイジ「それはだな・・」
美姫「持ってたんやね」
カイジ「美姫」
美姫「私はアイドルにゃんのもちものを1枚も持ってへん。だから推測できるんよ」
美姫「カイジさんはアイドルにゃんのもちものを2枚持ってるんとちゃう?」
カイジ「・・・・・・」
綾「何で2枚……?」
翠「…………」
美姫「アイドルにゃんのもちものは『ネコ耳』『ドレス』『サイン』『マイク』の4枚」
美姫「そのうちの2つ、『ドレス』と『マイク』をカイジさんが持っていたとするなら」
綾「『ドレス』と『マイク』をカイジくんが持ってたら……、……ああぁ、そっかぁ!!」
美姫「そう。アヤちゃんは『ネコ耳』が欲しいけど、『ネコ耳』以外のどれか1枚は必ず持っていなきゃいけない」
美姫「だって、自分が1枚も持っていないニックネームグループの<もちものカード>はおねだりできないんやもん」
カイジ「正解だっ・・・・!」
カイジ「俺は『ドレス』と『マイク』をもともと持っていた・・・・!」
カイジ「だから必然的に綾が持っている1枚は『サイン』だと分かった。そして、もう1枚の在処もすでに分かっている」
カイジ「更に俺のターン・・! 翠にゃんっ・・!」
翠「ッ」
カイジ「『ネコ耳』を頂戴にゃ~~~」
翠「やられたわね……どうぞ、私の『ネコ耳』よ。……だにゃん」
カイジ「これで空前絶後の萌えアイドルのもちものは4種類全て揃った」
カイジ「アイドルにゃんの<ニックネームカード>は俺の物だっ・・・・!」パシィ
美姫(凄い、カイジさん。ゲームに対する集中力とか、駆け引きとか……カイジさんはきっといろいろと経験してるんやね)
美姫「カイジさん」
カイジ「おう、何だ?」
美姫「カイジさんはとっても強いんやね。私は弱いけど……カイジさんに負けないように頑張ります」
カイジ「強い・・・・? 俺が・・・・? 馬鹿な・・そんなことはねぇよ。俺は最高に弱虫さ」
美姫「弱虫?」
カイジ「ただ、これだけは言える」
カイジ「今、とても楽しいんだ・・・・もう何だってできる気がする・・・・!」
カイジ「何ていうの、ちょっとした全能感みたいな・・・・?」
カイジ「だから・・・・俺はこのゲーム、勝ちに行くっ・・・・!」
カイジ「本気(ガチ)でっ・・・・!」
翠「生憎だけど」
翠「このお店の玄人店員として、アナログゲームで一見さんに簡単に負けるわけにはいかないわ」メガネクイッ
翠「負けないわよ、カイジさん」
カイジ「望むところだ」
綾「ちょっとちょっと~!? 何か私だけ置いてけぼりになってない? ここから私逆転するからねー!」グッ
美姫(やっぱりええな……みんなでゲームで遊ぶのは。本当に、面白いわ)
店長「……フッ」
カイジ、年下の女子高生相手に本気(ガチ)バトル・・・・!
ただのゲームに全力・・・・!
圧倒的大人げなさ・・・・・・!
が・・・・! この勝負っ・・・・!
当初の予想を遥かに超えて・・・・白熱っ・・・・!
そして迎えることになる・・・・・! 物語(ゲーム)の佳境・・・・・・!
ざわ・・ ざわ・・
翠「…………ふぅ」チラ
綾「…………むぅ~」
美姫「…………私の番やね」スッ
カイジ(俺の手に残るは・・・・誰よりも少ない・・3枚のカードっ・・・・!)
カイジ(これらはすべて【社長】のもちもの・・・・『名刺』、『高級外車』、『高級腕時計』の三つ)
カイジ(残るは・・・・『秘書』のみ・・・・!)
カイジ(『秘書』を手に入れれば・・・・【社長】のもちものをコンプリート・・・・!)
カイジ(念願の【社長】の<ニックネームカード>を獲得できる・・・・・・!)
カイジ(その時点で確定する・・・・! 俺の単独優勝・・・・・・!)
カイジ(ようやくここまで来た・・・・長い道のり・・・・)
カイジ(勝てるっ・・・・!)
カイジ(いや、勝つんだ・・カイジっ・・・・!)
カイジ(社長の座を・・この手でつかみ取れっ・・・・!)
美姫「……カイジさん。ごめんな」
カイジ「あ・・・・?」
美姫「私……見えてしもうた。この勝負の結末……」
翠「ミキ……!」
綾「え、あっ……もしかしてミキちゃん!」
カイジ「え・・・・? え・・・・?」
美姫「カイジさん……ううん、カイジ社長」
美姫「私はカイジ社長の『秘書』にはなれへん……本当にごめんなさい」
カイジ「あっ・・・・・・!」
美姫「カイジ社長、『名刺』を見せてくれませんか?」
カイジ「ああっ・・・・・・!」ハラリ
美姫「カイジ社長の『高級腕時計』……私に譲ってください」
カイジ「あああっ・・・・・・・・!」ハラリ
美姫「それと……最後に……カイジ社長の『高級外車』も……私……欲しいなあ」にっ
カイジ「ああああああああああああっ・・・・・・・・・・!」ぐにゃあ~~~~~
カイジ、陥落っ・・・・・・!
追い落とされる・・・・・・・・!
あとひとつ・・目の前に見えていた・・・・社長の座椅子・・・・・・!
勝利という美酒に酔いしれるはずだった・・・・輝かしい栄冠っ・・・・・・!
全ては一瞬のうちに・・・・うたかたの夢のごとく・・・・崩れ去るっ・・・・・・!
そして・・・・もちものを全て失い、身ぐるみを剥がされ、都落ちしたカイジを尻目に・・・・!
残る面々で勝負を続行っ・・・・・・!
物語は・・・・終焉を迎える・・・・・・!
綾「おめでとう、ミキちゃんっ……!」
翠「終盤での追い上げ……ここ一番での三倍返し。見事だったわ、ミキ」
美姫「あ……ありがとぉ」//////
カイジ「・・・・・・・・っ」
カイジ「うっ・・・・ううっ・・・・・・」ぽろ・・ぽろ・・
美姫「カ、カイジさん!?」
翠「ちょっと……いくらなんでも泣くことはないじゃない!?」
綾「そうだよ~! カイジくん1位にはなれなかったけど、ミドリちゃんと同率の2位だよ! カイジくん凄かったもん!」
カイジ「違う・・そうじゃない・・・・! 勝敗の問題じゃないんだ・・・・!」ぽろ・・ぽろ・・
美姫「じゃあ、どないして……?」
カイジ「嬉しいんだ・・・・。こんなに純粋にゲームを楽しんだの・・・・いつ以来っていうか」
カイジ「ひょっとしたら生まれて初めてなんじゃないかってくらい・・・・楽しかったっ・・・・!」
美姫「カイジさん……」
カイジ「俺、借金背負って・・・・命懸けのギャンブルとか・・そういう世界に入り浸って・・・・」
カイジ「今も・・!」
カイジ「地の獄と言われる・・・・帝愛の地下の強制労働施設から・・・・何とか抜け出してきて・・・・!」
翠「命懸けの……ギャンブル?」
綾「強制労働施設~~!?」
カイジ「でも・・・・! まだ借金がいっぱいあって・・! 返せなかったら地下に強制送還・・・・」
カイジ「それと、地下に残ってる大切な仲間の分の借金も返済しなきゃいけねぇ・・・・!」
カイジ「俺、あいつらに信頼されてるから・・」
カイジ「期待・・されちゃってるから・・・・。6人で、都合・・60000万円っ・・・・!」
美姫「ろ……、――……え……え?」
綾「ろくせんまんえーん~~っ!?」ドヒャア
>>44
訂正:×60000万円→○6000万円
カイジ「地下での博打で返済するための元手は手に入れた・・・・」
カイジ「80万円・・虎の子の軍資金・・・・これを20日間で、6000万に化けさせる・・・・!」
翠「そ、そんなこと……どうやって……?」
カイジ「ギャンブルだ・・・・! それもレートが異常に高い・・・・超高額の金が飛び交う違法賭博で・・・・!」
カイジ「そのために探していたんだ・・・・賭場を・・。それで、たまたま行き着いたのがこの『さいころ倶楽部』だった」
カイジ「ネーミングで・・ギャンブルができる場所だと思って・・まあ、想定外だったけど」
美姫「そんな事情が……あったんやね」
翠「悪いけど……ちょっとあまりに話が突飛過ぎて」
綾「信じられないよぉ~~!」
カイジ「ああ、ごもっとも。信じられねぇよな・・・・」
カイジ「俺の生きてる世界って・・・・はっきり言って異常・・・・!」
カイジ「超常的現実離れ・・・・!」
カイジ「ていうか、ぶっちゃけ信じてもらえなくたって構わない・・・・」
カイジ「何言ってんだコイツ?・・・・もういっそ・・キ○ガイだと思われたって仕方ねぇ・・・・でも」
カイジ「でも、つい・・・・喋りたくなってしまった。あんたたちには・・」
美姫「カイジさん……」
カイジ「だから、余計に思うんだ・・・・」
カイジ「この『さいころ倶楽部』の遊戯空間・・・・。一見怖そうに見えて・・・・気さくで面倒見のいい店長さんや」
カイジ「あんたたちのような素敵な女の子達と出会えたこと・・・・」
カイジ「夢のような楽しいゲームができたこと・・・・」
カイジ「こんな世界を味わえたことが・・・・最っ高で・・・・極上の時間・・・・!」
カイジ「優しすぎるんだ・・・・この世界っ・・・・・・」
カイジ「だから・・・・! 涙が・・・・止まらないっ!・・・・ああああっ・・・・」ぼろぼろぼろ・・
美姫「カイジさん」なで
カイジ「美姫・・・・」
美姫「ええんよ……辛かったら好きだけ泣いたら」ぽろ・・
美姫「私も……カイジさんと比べたら……っ……全然ちっぽけなことばかりやけど」ぽろ・・
美姫「よく……泣いてたんよ……たったひとりで」
カイジ「美姫ぃ・・・・」ぼろぼろ・・
美姫「でも、私、いろんな人に出逢って・・・・変わったんよ。アヤちゃんやミドリちゃと友達になって」
綾「…………」
翠「…………」
美姫「ここには今おらへんけど、エミーちゃんって留学生の子とも仲良うなって」
美姫「学校の人たちとも、親戚の人ともいろんな関わりが増えて」
美姫「それで……変われたんよ」
カイジ「・・・・・・・」ぼろぼろ・・
美姫「カイジさんもさっき言うたよね。大切な仲間がいるって。仲間がいたら……きっと大丈夫」
美姫「こんなん、私が言うても無責任かも知れへんけど……カイジさんならきっと大丈夫だと思うから……だから」
美姫「今は思いっきり泣いて……ため込んでたもの全部……吐き出そう?」にこっ
カイジ「美姫・・美姫・・・・うわああああああああっ」ぼろぼろ・・
綾「カイジくん……ひっく……」ぽろ・・
翠「ちょっと……アヤ……あなたまで……っ……」
店長「カイジくん」
カイジ「店長・・・・」
店長「とりあえず、今日はもう遅いから、俺の家に泊めてやるよ」
店長「泣きたいだけ泣いて、スッキリしてから。明日のことは……明日考えてもいい時だってあるはずだ」
店長「俺にできることはほとんどないが、どこか目指す場所があれば……車ぐらい出すからね」
カイジ「店長・・・・。優しいおじさん・・・・・・!」
美姫「カイジさん、大丈夫……大丈夫やから」
綾「安心して……私たちに甘えたらいいんだよ」
翠「そう。私たち……こんなにいっぱい遊んだのよ。……もう、カイジさんも『さいころ倶楽部』の仲間なんだから」
カイジ「みんな・・・・ありがとう・・・・・・」
カイジ「ありがとう・・・・ございますっ・・・・・・・!」
カイジは店長の善意で一晩を京都で過ごし、翌朝、裏カジノを探すため土地勘のある東京へ移動
店長は車で送ることを再三申し出たが、これをカイジは固辞
それは、これ以上ギャンブルとは無縁の優しい人たちに迷惑をかけられないとの、カイジの強い意志によるものだった
出発前、カイジのことを心配して再び集まった美姫達に別れを告げ、再び常軌を逸したギャンブルの闇世界に戻ったカイジ
またいつか、京都に寄ったら「さいころ倶楽部」の扉をたたくと約束し、カイジにとっての「大切な仲間」を救う戦いの渦中へ――
これからも波乱に満ちた逆境無頼の人生を送ることになるカイジだったが
京都でのたった一夜の夢のごとき体験は、カイジの記憶の片隅で、静かに、しかし確かに生き続けた
どんなにつらい世界でも、前を向いて生きていけ・・・・カイジっ・・・・・・!
(おしまい)
昨日は戸愚呂SS書いたんで、今日はカイジで
nicknameは実在するカードゲームです。
実際これ面白いから興味があったらググってみて
それでは
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