P「メガネを失くした?」高山紗代子「はい……」 (30)


ミリマスSSです。
プロデューサーはP表記。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1577604611


レッスン場にて


P「これだけ探しても見つからないってのも、おかしな話だなあ......。レッスン中に失くしたの?」

紗代子「そうみたいです。すみません、プロデューサーにも探してもらって......」

P「それは大丈夫だけど。普段は眼鏡付けてレッスンしてるんじゃないのか?」

紗代子「より本番に近い形で練習しようと思って。それで、外してレッスンしてたら、いつの間にか」

紗代子「プロデューサーが来る前も、しばらく探してたけど、見つからなくて......」

P(紗代子は近眼だし、失くしたとなるとかなり難儀するよな......)


P「でも、そんなに目が見えなくてよくあんなに踊れるよな?」

紗代子「たくさん練習してますからね」フンス

P「みんなと踊りを合わせてもぶつからないし、何かコツがあるの?」

紗代子「それは......気合いです」

P「気合い」

紗代子「サビの前のステップでこの場所にいるとか、そういうことを徹底的に叩き込むんです。体が覚えるまで」

P「......紗代子は本当に頑張ってるんだなあ」ナデナデ

紗代子「ひゃっ。......あ、ありがとうございます。えへへ......」テレテレ


P「ひとまず、事務所に戻ろうか」

紗代子「はい......」

紗代子「......」ソワソワ

P「紗代子、どうした?」

紗代子「いや、その......普段がこの視力だと思うと、急に不安が」

P「ステージだと眼鏡外してるけど、日常でも周りがぼやけて見えると確かに怖いよな」


P「そうだ。紗代子、手を出して」

紗代子「へっ?」

P「眼鏡がないと流石に事務所までの帰り道も大変だろ? だから、手を繋いで戻るぞ」

紗代子「へえっ!?」

P「だって、裸眼だと人も樹木も見分けられない紗代子が、その状態で一人で歩いたらどうなるか分からないだろ?」

紗代子「ううっ、そう言われると......」

P「だから、ほらっ」


ギュッ

紗代子「ひゃっ」

P「仕方ないけど、しばらく我慢してくれ」

紗代子「は、はい......」


紗代子「あ、あの、プロデューサー」

P「どうした?」

紗代子「手、離さないでくださいね......?」

P「」

紗代子「? プロデューサー?」

P「あ、ああ、うん。離さないから」

P(普段は眼鏡外したら熱血度が増すから、そのギャップが......)

P(......かわいい)

P(手がすっごくやわらかい。ふにふにしてる)


事務所


P(結局、事務所まで紗代子の手を引いて戻ってきた)

P(紗代子もしおらしいし、何だかドキドキした)

P「とはいえ、このまま眼鏡が無いまま過ごすのは大変じゃないか?」

紗代子「はい。全然周りが見えないですし、今もプロデューサーがそこにいるって判るのがやっとで......」

P「うん。それはウチのアイドル達が写ってるポスターだな」

紗代子「はうっ」

P「どうする? 不便なら眼鏡屋に行って新調してもらう?」

紗代子「い、いえ! 大丈夫です!」

P「で、でも......」

紗代子「大丈夫ですから! もしかしたら見つかるかもしれないですし、家にスペアは一応持ってますし。それに、眼鏡を選ぶってなると、すっごく時間かかりますから!」アタフタ

P「?」

P「確かに、眼鏡って選ぶときにこだわっちゃうからなあ。俺もそうだったし」


P「そうだ。俺の眼鏡かけてみるか?」

紗代子「ええっ!?」

P「そんなに驚くことか?」

紗代子「下手すれば裁判沙汰ですよ!」

P「そこまで言う!?」

紗代子「自分の眼鏡を他人に掛けさせるんですよ? そんなことして、責任とれるんですか!?」

P「ええ......」


紗代子「まったく、もう......。私だったから良かったですけど、他の人にそんなこと言ったら、一大事になりますからね?」

P「あ、ああ。気を付けるよ......。でも、そこまでビックリされるとは思わなかったよ」

紗代子「驚きますよ! だって、自分の眼鏡を他人に渡すんですよ?」

P「うん」

紗代子「朝から晩まで肌身離さず身に着けているものを、他人に付けさせるわけですよ?」

P「言われてみたら、そうだけど」

紗代子「それって......え、えっちじゃないですか!」///

P「なるほどわからん」


P「でも、なんだかちょっと不思議だな」

紗代子「何がですか?」

P「紗代子は、髪を二つ結びにしてるときは眼鏡をかけてるだろ? いつもと違って眼鏡が無いのはちょっと新鮮だなって」

紗代子「確かに、眼鏡を外すときは髪の毛も解いてますからね」

P「そうそう。......ん?」

紗代子「どうしました?」

P「結ってる位置が左右でズレてる」

紗代子「あっ」


紗代子「目がよく見えないまま結ったから、それでズレちゃったのかもしれませんね」アハハ

紗代子「......」ソワソワ

P「気になる?」

紗代子「は、はい。自分じゃ見えないですけど、でも......」

P「人に一度言われたら、気になりだすよな。ごめんごめん」

P「お詫びに俺が直そうか?」

紗代子「ええっ?」

P「なーんて」

紗代子「あ、あのっ、......お願いしても、良いですか?」

P「えっ」

紗代子「だ、だって見えないですからっ。また結ぶ場所がズレちゃうかもしれないですしっ」



紗代子「ということで、お願いします」ペコリ

P「あ、ああ、分かった」

P「そうだ、直す前にちゃんと正面から見てみようか」ジッ

紗代子「?」

P「......うん、紗代子から見て右のおさげの方がちょっとズレてるな。左はいつもの場所で結われてる」

紗代子「よく分かりましたね?」

P「そりゃあ勿論、普段から紗代子のことよく見てるからな」

紗代子「......そういうのは、ちょっとズルいと思います」プイッ

P「?」


P「それじゃあ早速、直すぞ。後ろ向いて」

紗代子「お、お願いします。ヘアゴム外したので、どうぞ」スッ

P「うん」

サワッ

紗代子「ひゃっ」

P「ごめん。痛かったか?」

紗代子「い、いえっ! 何でもないですから、続けてくださいっ」

P「わ、分かった」


P「まず、ブラシで髪を整えて......」サッサッ

紗代子「あ......」

P「それからヘアゴムに髪を通して」

紗代子「ひゃう......」

P「クロスさせてもう一度通して」

紗代子「ふあっ......」

P「......痛い?」

紗代子「だ、大丈夫ですっ!」

紗代子(スタイリストさんならまだしも、プロデューサーに髪をセットしてもらってるって思うと、何だかドキドキする......!)//////

P(さっきから紗代子の声がむっちゃドキドキする)


P「最後に髪の根元の方にヘヤゴムを送って絞れば......」キュッ

紗代子「ひゃっ」

P「よし、完成だ」

紗代子「......」

P「紗代子、終わったぞ?」

紗代子「......へっ? あ、ありがとうございます」

P「......うん、高さもちゃんと揃ってる。可愛く仕上がったぞ」

紗代子「か、かわっ......あぅ」カアァ

P(しおらしくなったり顔赤くしたり、今日の紗代子はコロコロ表情が変わるなあ。......かわいい)


P「そうだ、言い忘れてた。紗代子の仕事が取れたぞ」

紗代子「本当ですか?」

P「ああ。しかも、たい焼きの食レポだ」

紗代子「わあ!」パアァ

P「もし良かったら、その打ち合わせをしておきたいなーって思ったんだけど......紗代子?」

紗代子「たい焼き......」キラキラ

P「......おーい?」

紗代子「ハッ! す、すみません! つい、嬉しくって......」

P「そんなに喜んでくれたら、この仕事取ってきた甲斐があったよ」アハハ


P「今から打ち合わせしても、大丈夫? 資料とか見えないんじゃないか?」

紗代子「大丈夫です! プロデューサーが言う一字一句を記憶しますから!」

P「お、おう」

P「一応、今回は『東京・下町のたい焼き屋特集』ってことなんだけど......」

紗代子「はいっ」フムフム

P「取材する店は5つだそうだ」

紗代子「5つも......!」パアァ

P(あ、普段以上に感情が豊かなのは、眼鏡無くて周りがあまり見えてないからだ)

P(かわいい)


紗代子「ちなみに、取材するお店って決まってますか?」

P「ああ、決まってるみたいだぞ」

P「えっと、柳橋屋に浅草難波屋、谷根千の鯛焼きと......」

紗代子「わあ、行ったことあります! どれも美味しいですよね!」

P「流石に良く知ってるな。あとは桜屋と雪達磨だって」

紗代子「雪達磨はまだ行ったことないですね。でも、羽根つきでパリパリして美味しいって聞いたことあります!」


紗代子「あの、雪達磨ってどこにお店あるんですか?」

P「ちょっとスマホで調べてみようか。えっと......神保町にあるみたいだな」

紗代子「んー、どこなんだろう......」

P「地図見た感じだと、駅から出てすぐみたいだぞ?」

紗代子「そうなんですか? ちょっと、見せてもらえますか?」

ズイッ

P「......見える?」

紗代子「こ、この距離なら、なんとか......!」グヌヌ

P(紗代子は気付いてないけど、すごく距離が近い)

P(......いいにおいする)


紗代子「あっ、ここにあるんだ。知らなかったなぁ......」

P「場所は把握できた?」

紗代子「はいっ、バッチリです! ありがとうございますっ、プロデュー......」クルッ

紗代子「! す、すみませんっ! こんな近づいてるって気付かなくて......!」カアァ

P「いや、大丈夫。むしろ俺が紗代子にスマホを渡せばよかっただけなのに、悪かった」

紗代子「そんな、私が夢中になってたのが悪いので......」

紗代子「......はぅ」

P(横でまつ毛長くて綺麗だなって思いながら眺めてたなんて言えない)


紗代子(うう、すごく顔が熱い......。プロデューサーをドキドキさせたいのに、これじゃあ私がドキドキしてばっかだよ......!)

紗代子「すみませんっ、ちょっと外出て風に当たってきます!」ガタッ

P「外って屋上? メガネ掛けてないから、やめておいた方が良くないか?」

紗代子「ほ、本当に大丈夫ですから! ほらっ、こうやって何もぶつからずに歩くことだって......!」

P「お、おい、危ないって!」

紗代子「あっ!」ゴンッ

ドンガラガッシャーン


紗代子「な、何か蹴った?」

P「紗代子のバッグだよ。だから危ないって言っただろ?」

紗代子「うう、すみません......」

P「げっ、中身も派手に散らばってるよ」

紗代子(あれ? 中身も......ってことは!)

P「ん、あれ? これって、紗代子の眼鏡じゃないか?」

紗代子「あっ」

P「それと、この雑誌は......『週刊 MEGANE』?」

P(付箋もいっぱい貼られてる......)

紗代子「わわっ! み、見ないでくださいー!」アタフタ


・・・・・・

P「なるほど、わざと眼鏡を無くしたフリをしてたってことか......」

紗代子「ウソついちゃってすみません......」

P「『眼鏡女子の特権!? 気になるあの人の前で眼鏡を外した姿を見せちゃおう!』、『眼鏡を無くしたと言って、甘えてみるのも一つの手? 気になるあの人と一緒にいられるかも!』なあ......」

紗代子「読み上げないでください......」カアァ

P「雑誌のこの特集を読んだ後に、どうして眼鏡を隠してたのかって訊くのは流石に野暮か」

紗代子「うぅ......」//////

P「もう、眼鏡掛けても良いんじゃないの?」

紗代子「今、眼鏡をかけてプロデューサーのことを見たら、恥ずかしくて私、倒れちゃいます......」


P「眼鏡も本当はあったということだし、一安心だよ」

紗代子「ごめんなさいっ、プロデューサー! ウソついた上に、迷惑までかけてしまって......」

P「いや、迷惑とは思ってないよ。紗代子がそんなイタズラするのが珍しいなって、むしろ新鮮だった」

紗代子「本当、ですか?」

P「本当だよ」

P「......でも、ウソをついたってのはちょっと褒められることじゃないな」チョップ

紗代子「あう」


P「......それにこの雑誌に書いてることを紗代子がしても、新鮮ではあるけど、あんまりインパクトはないよね」

紗代子「そんなっ!」ガーン

P「だって、普段から全く眼鏡を外さない人だったら確かにギャップがあるかもしれないけど、紗代子の場合は眼鏡外してる紗代子を俺は時々見てるわけだから......」

紗代子「確かにっ!」ガガーン!

紗代子「ってことは、私が今日やって来たことは全部空振りだったってことですね......」シュン

P「そういうわけでもないぞ? 確かに紗代子の行動はちょっと的外れだったかもしれないけど、普段から眼鏡をかけてない紗代子も新鮮で、ちょっと良いなって俺も思っちゃったし」

紗代子「本当ですかっ?」

P「うん。正直、何回もドキドキした」

紗代子「そうですか......えへへ♪」


紗代子「あの、プロデューサー。一つ訊いても良いですか?」

P「どうした?」

紗代子「こうして眼鏡を付けていない私と、眼鏡を付けてる私、どちらが好きですか?」

P「えっと、そうだな......」

紗代子「......」ソワソワ

P「......答えられないな」

紗代子「えっ」

P「だってどっちも可愛いし」

紗代子「ふぇっ」


P「でも、今日はほとんど眼鏡をかけた紗代子の姿を見てないから」スッ

スチャ

紗代子「きゃっ......あ、眼鏡が」

P「......うん。やっぱり、眼鏡姿の紗代子も可愛いな」

紗代子「ぷ、プロっ、プロデューサー......」カアァ

P(あっ、さっきそう言えば紗代子が......)

紗代子「」ボフン

紗代子「//////」パタリコ

P「紗代子!? おーい!?」


その後、紗代子が恥ずかしさのあまりしばらく目を合わせてくれないおかげでPちゃんがショック死しかけたり、やがて紗代子とPちゃんが互いの眼鏡を掛けさせ合う関係になるのはまた別のお話。


おわり


ということで、紗代子、誕生日おめでとう!
紗代子と一緒に温かいものでも食べて、紗代子の眼鏡にできた湯気の曇りを一緒に笑い合いたい人生でした。紗代子の眼鏡のつるになる人生も捨てがたいですね。

ではみなさん、よいお年を。

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