【ガルパン】七つの黒いウワサ話 (10)
『大洗:みほがボコ好きな理由』
西住みほは子供の頃、母のしほから密かに虐待を受けていたんじゃないかというウワサがある。
それは体に傷が残らないもので、例えば水を入れた洗面器に顔を突っ込ませたり、臭いから近寄るなと言われたり、姉のまほとことさらに差別したりとか、そういった類いのものだ。
そんな時、普通の子供は泣きわめいたり物を投げたり壊したりしてストレスを発散させるのだが、それをすると母からまた容赦ない虐待が加えられる。
その為、みほは自分ではどうしようも出来ない怒りや恨みを、自分自身にぶつけるようになった。
何かあると、泣きながら自分の腕を強く噛んでいたという。
それを見かねた姉のまほが、たまたま近くにあったぬいぐるみをみほに渡して、自分の腕ではなくこれを噛むようにと教えた。
これなら何をしても大丈夫だから、と。
そのぬいぐるみが『ボコ』だった。
それ以来、みほはボコを噛むようになり、時には殴ったり、床に叩きつけたり、踏みつけるようになった。
そして、それによってボコのお腹が破れたり腕が千切れたりすると、自分でガムテープや糸とかを使って何度でも元通りに直した。直さないと、怒りや恨みをぶつける相手が消えるからだ。
「また、こわれたら、わたしがなおすからね」
……その後、しほの虐待が発覚し、夫の常夫がそれをやめさせた事により、みほのボコへの攻撃もなくなった。
ただ、この時のボコに対する執着と、虐待を受けた時に代わりに殴られてくれたという歪んだ感謝と愛情だけがみほの中に強く残る事になった。
だから、みほは殴られても蹴られても何度でも立ち上がり、そして、また復活して殴られてくれるボコが好きだという。
そんな黒いウワサがある。
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『聖グロリアーナ:オレンジペコは役に立たない』
聖グロリアーナでは、戦車道において優秀な生徒に紅茶の名前を与えるという慣例がある。
その与えられる名前は全部で10種類で、ダージリン、アッサム、ローズヒップ、ルクリリ、セイロン、キャンディ、アールグレイ、ニルギリ、ギャル、ディンブラの10名となる。
この時点で気付いてる人もいると思うが、オレンジペコの名前は存在しない。
何故かと言えば、『オレンジペコ』というのは『紅茶の等級』の一つであって、『紅茶の名前ではない』からだ。つまり、彼女だけが『異例の名前』を付けられている。
また、一年生でありながら別名を付けられているのはオレンジペコ一人で、しかも隊長車に乗っている。
では、彼女の役目は?
『装填』をしている。
砲弾を持ち上げて、大砲の中に入れるだけという誰でも出来そうな仕事をしている。
なのに、彼女は『オレンジペコ』という名前を与えられ、一年生でありながら隊長車に乗っている。それは何故か?
理由は、ダージリンのお気に入りだから。
オレンジペコはダージリンが格言を言った時に「○○の言葉ですね」と返せる唯一の生徒だった為、ダージリンは自分の側に置いておきたかった。しかし、紅茶の名前を与えられるほどの才能がなかったので、仕方なしに『オレンジペコ』という異例の名前を与えて、彼女は優秀だと言い張り、隊長車に乗せている。
つまり、『オレンジペコ』は優秀な証ではなく、エコヒイキの証。
そんな黒いウワサがある。
『サンダース:ナオミの性癖』
ナオミがレズ。
そんな黒いウワサがある。
『アンツィオ:アンチョビ達の不正行為』
アンツィオでは練習時に二回オヤツが出る。
どれも美味しいと評判であり、これ目当てに戦車道をやる女子もいるぐらいだ。
ただ、このオヤツを用意するお金がどこから出ているかと言えば、アンツィオの生徒全員がよく知らないと答える。
「なんかー、みんなのお店の売り上げから一部寄付で出してもらってるんじゃない?」
「多分、理事長が全額出してると思う」
「ドゥーチェが自分達のお店の売り上げを全部使って、自腹切ってるって聞いた気がする」
「私達を応援してくれてる人達からの応援金で出してるんじゃなかった?」
実は、そのどれでもなく、オヤツ代はアンチョビ達が勝手に戦車道の予算から出していて、それを戦車の修理費や備品の購入代として計上しているというウワサがある。
その事をアンツィオの生徒は全員知っていて、だから誰一人その話題に触れないし、何も知らない事にしているし、何か聞かれたら口裏を合わるようにしている。
だからオヤツが出ているのはアンチョビの不正行為のおかげであり、アンチョビの人気が高いのもそのせい。
そんな黒いウワサがある。
『プラウダ:カチューシャが小さい理由』
カチューシャは小学校の頃、原因不明の高熱にかかった事がある。
熱が全く下がらず、医者も打つ手がなく、意識がなくなった状態でそのまま大病院に搬送され、そこで生死の境を二週間近くさまよった。
その後、峠を越えたカチューシャは徐々に快方へと向かい、医者も家族も喜んだのだが、その時、既にカチューシャの体には異変が起きていた。
人体には成長を促すホルモンがあるのだが、カチューシャの体の中ではそれが何故か生成されなくなっていたからだ。
その事に気付いたのは、それから五年以上も後の事で、娘の体が全然成長しないので心配になった親が精密検査を頼んだ事により判明した。
医者曰く、世界的にも稀に見る奇病で、症例はほぼ皆無であり、現代医学では治療は不可能だという。
カチューシャの体が小さいのは、そういう理由があるから。
そんな黒いウワサがある。
『黒森峰:捕虜の扱い』
戦車道には『偵察』が公式ルールで許可されている。
ただ、偵察に来た生徒を見つけた時、『どう扱うか』については公式回答が一切ない。
だから、偵察に来た生徒は『捕まえて捕虜にしても良い』という暗黙の了解が昔から存在している。
では、捕虜となった生徒はどう扱われるのか?
これは各校や各人の『法律の範囲内』での『自己判断』で行われる。
要は、脅迫や暴行や監禁などに当たらない範囲で、好きにして良いという事だ。
その為、黒森峰では法律に違反しない範囲での『拷問方法』というのが代々伝えられていて、二度と偵察に来れないよう恐怖を叩き込んでから返すという。
では、その具体的な方法は?
…………黒森峰の戦車道関連の建物の中には、必ずと言って良いほど、どこか目立たない場所に布で覆われた小さな箱が置いてある。
この箱は何? と聞くと、生徒はこう答える。
「よくわかんないけど、ゴキブリを見つけたら、捕まえてそこに入れるように私達は言われている」
そんな黒いウワサがある。
『知波単:伝統ではない突撃精神』
知波単の代名詞と言えば、突撃。
戦況が優勢なら一気に勝負を決める為に突撃。劣勢なら戦況を覆す為に突撃。膠着状態ならとりあえず突撃。
そんな伝統が知波単にはあるが、実はこの伝統、過去の試合映像を見ればわかるのだが九年前に突如として生まれた。
それまでは堅実な戦術で慎重にやってきた知波単の生徒達が、九年前を境に急に突撃こそ知波単の魂だと言い出したのだ。
その為、その年の戦車道メンバーは、過去最高と言われ優勝候補の一角としてあげられていたにもかかわらず、一回戦で当たったサンダース高校にボロカスに負けている。
試合後、何故、あんな無謀な突撃戦術を行ったのか、と当然叩かれたが、その理由を当時のメンバーは最後まで話さなかった。
しかし、これには一つのウワサがある。
当時、知波単は実は経営難に陥っていたというものだ。
その為、資金を潤沢に持っているサンダースに援助や融資の相談をしたのだが、その時、サンダースは承諾する代わりに一つだけ条件をつけた。
「今後、戦車道の試合でサンダースと対戦する時は、知波単は絶対に勝ってはいけない。これを守るなら融資も援助もしよう」
その事を理事長から極秘裏に伝えられた生徒達は、このまま廃校になるぐらいなら負けてもいいからそうします、とその条件を受け入れた。
その為、知波単の生徒は、同じ負けるならせめて華々しく負けてやろうと、突撃戦術を敢行し、以後、下級生にもそれが受け継がれ『負ける為の突撃』が伝統となった。
そんな黒いウワサがある。
完
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