モバP「相手を絶対に服従させられる力かあ」 (35)


P「昨日みたアニメがめちゃくちゃ面白くて思わず徹夜しちゃったよ、とほほ……」

P「寝不足だけど仕事は終わらない……これを終わらせるまでは帰れない……」

P「だけど、相手を絶対に服従させられる力かあ」

P「そんなものがあれば本当に便利だよなあ、こんな仕事だって……」

ちひろ「また変なこと言ってるんですか? その調子だと、いつまで経っても終わんないですよ」

P「ちひろさん! もしかして差し入れですか!?」

ちひろ「ええ。私はそろそろ帰るので、これを」

P「って、またエナドリじゃないですか……」

ちひろ「ふふ、あと一息です。頑張ってくださいね。ではでは、私はこれで」ペコリ

P「はは、どうもありがとうございます。うえ、いつもより苦いなあこれ」グビグビ

P「……はーあ、ちひろさんが仕事代わってくれたらなあ。なーんて」


キュイーーーーーーーーン


ちひろ「はい。承知しました。お仕事を代わります」


P「………は?」



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ちひろ「失礼いたします」スッ

P「ちょ、ちょっと! ちひろさん!? 何やってるんですか?」

ちひろ「プロデューサーさんの代わりに、私がお仕事を終わらせます」

P「えっーーと。……はっはっは! そういう冗談は、また今度ということで」

P「いやー、帰ると見せかけてのフリですね? 一瞬、騙されかけちゃいましたよ」

P「とにかく、この膨大な量の仕事を終わらせるのは、俺の仕事なんで……」

ちひろ「……」カタカタ




P「……マジでやってるよこの人」

ちひろ「…………」カタカタ


――――
――



P(結局、俺とちひろさんの二人がかりで仕事は終わらせた、けど)

P(あの態度の急変……なんか腑に落ちないって言うか)

P「…………まるで、絶対服従みたいだったよな」

P(……ははは、なんてな)




ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん」

P「あ、ちひろさんおはようございます!」

P「いや~~~、昨日は助かりましたよ、ほんと。こんどお寿司でも奢らせてくださいっ!」

ちひろ「……えーと、昨日? ですか?」

P「はい、仕事を手伝ってもらっちゃって」

ちひろ「やだなあ、昨日は私すぐに帰ったじゃないですか」

P「は?」

ちひろ「ふふ、仕事のし過ぎですか? さ、今日も張り切ってがんばりましょう!」

P(あれ、覚えていない……? 昨日の今日だぞ??)


ちひろ「でも、おかしいんですよねえ」

P「おかしい、ですか?」

ちひろ「はい。家でちゃんと寝たはずなんですけど、肩が痛くって」

ちひろ「やだなあ、もしかして歳ですかね……」ガクリ

P「ははは、いやー、ちひろさんはまだ若いから大丈夫ですよ」グッ

ちひろ「もー、またそんなこと言って。ほら、アイドル達が来ちゃいますよ」

P「そ、そうですね」

P「……よーし、やるぞーー!!」

ちひろ「おー!」



P(……何かが、何かがおかしい。……何かが)


――――
――



凛「どうしたの、そんな難しい顔して」

P「え? あ、いや、そんな変な顔してたか?」

凛「ふふ、してるよ。ほら今も」

P「あー、疲れてるのかな……」

凛「肩でも揉んであげようか?」

P「得意なのか?」

凛「いや、べつに。やったことないけど」

P「じゃあ、やめとくよ。うちのアイドルにやらせるわけにはいかないからな」

凛「ふーん、そんな遠慮しなくてもいいのに。……私がやりたいだけなんだし」

P「なんか言ったか?」

凛「んーん、なんでもない」


P(昨日、ちひろさんに言った“仕事を代わってほしい”というお願い)

P(あれがトリガーになったんだとしたら……)

P「……まさかな」

凛「ねえ、何か言った?」

P「いや、何でもない。なあ、凛ちょっといいか」

凛「どうしたの?」

P「折り入ってお願いがあってだな」

凛「ふーん、私に? 珍しいね」

P「ああ。ちょっと服を脱いでみせてくれないか」


キュイーーーーーーーーン


凛「うん。わかった」


凛「ちょっと待ってて、よいしょ……っと」ヌギヌギ

P「やはりか……」

P(なかば疑っていたけど――まじで俺は、絶対服従の力を手に入れたみたいだ……)

P(これがあれば、どんなことでも思いのままに……)



凛「……んっしょっと、ねえ、ブラも外す?」

P「っておいおい!! 凛、もういいから! それでいいから!」

凛「もういいの?」

P「ああ、すまん。こんなこと本当はさせるつもりじゃなかったのに」

P(やばいぞ、担当アイドル相手に何やってんだ俺は……)


ガチャッ


卯月「おはようございまーす! って―――りんちゃんっ!?」

未央「なになに、しまむー!しぶりんがどうしたの――って、え……なにこれ」


凛「ねえ、ブラは外さなくていいの?」

P「……えーっと」

卯月「…………あの、えと、プロデューサー、さん?」

未央「プロデューサー、これどういうこと?」



P(やっべ~~~~~どうしよう)


P「……こうなっては、仕方ない」

P(不可抗力だけど、力を使うしかないか)

P「未央、卯月。二人とも今のことは綺麗さっぱり忘れてくれ」


キュイーーーーーーーーン


卯月「はい。わかりました、忘れます」

P「……ふう。これでとりあえずは大丈夫か……」

P(あとは凛に服を着せれば――)



未央「ねえ。まだ説明が終わってないよね? これ、どういうこと?」

P「え?」


P(どうして未央には効いてないんだ……?)

未央「さっきから変なことばっかり言ってるし、しぶりんは裸だし……」

P「えっと、これは、その」

P(やばい、説明ができない)

未央「ちょっと、私人呼んでくるよ」

P「あ、おい! 未央!」

未央「……見損なったよ、プロデューサー。そんな人じゃないって信じてたのに」


バタン


P「……行ってしまった」

P(終わった、のか……? 俺の人生は、ここで……)

P(こんな、こんなところで……?)

――――
――



ガチャ


未央「こっちです!」

警備員「ちょっと君!」

未央「ほら、あの人がアイドルの服を無理やり脱がせてたんです!!」

P「……なんだ、どうした未央? そんなに慌てて」

卯月「未央ちゃん? 大丈夫ですか?」

凛「遅刻だよ、未央」

未央「へ? しぶりん? ……ふ、服はどうしたの?」

凛「服? べつに、いつも通りだけど」

未央「そうじゃないでしょ! さっきは、ぶ、ブラ姿になってたじゃんか……」

凛「はは、そんなことするわけないでしょ。ここ事務所だよ?」

P「凛の言う通りだぞ。ほら、もう用事はすんだのか。警備員さんも困ってるぞ」

警備員「こほん。君も、あんまり大人をからかうんじゃないよ」

未央「え、あ、えっと……すいませんでした」

警備員「それでは、私はこれで」


バタン


P「さ、仕事の話だ。今度、雑誌の撮影が入ったんだ。未央、もういいよな?」

未央「……う、うん」

凛「それで、今度はどんな服を着るの?」

P「ああ。それはな――」



P(……さて、上手くごまかせたな)

P(二人の記憶をなくしたおかげで、とりあえずは乗り切れたけど)

P(未央には効き目がなかった……この力は誰にも効果があるわけではないのか)

P(ちひろさん、凛、卯月……この三人の共通点と言ったら、あるいは)

P「!」

P(……まさかな)

卯月「プロデューサーさん?」

P「ああ。悪い、話の続きだったな」

P(もう少し、検証する必要があるな――)


未央「…………」


――――
――



未央「……絶対におかしい」

未央「どう考えてもおかしい! おかしいったらおかしい!」

未央(あの時、絶対にしぶりんは裸だった……)

未央(それなのに、なかったことにされてた? どうして?)

未央「二人だって、まるで覚えてないみたいな感じだったし……」

未央(……でも、プロデューサーは、なんであんなことを?)

美嘉「ん? 未央、どうしたのそんな顔して」

未央「美嘉ねえ! ちょうどいいところに!」

美嘉「なになに? アタシに用事?」

未央「まあ、話はのちほどゆっくり、ね」

未央(こうなったら、プロデューサーの本性を絶対に暴いてみせるよ……)

未央(絶対に、ね……)

つづきます・・・


―――
――



美嘉「ふーん……事務所に入ったら、服を脱いだ凛とプロデューサーが一緒にいた、ねえ」

未央「そう。あのさ、美嘉ねえはどう思う?」

美嘉「んー。どうもこうも、状況がよくわからないからなー」

未央「だから、さっき言ったでしょ? あれは絶対に……」

美嘉「絶対に?」

未央「脅されてる、って私は思う」

美嘉「あはは、あのプロデューサーがそんなことするかなー」

未央「私だって、ほんとはそんなこと考えたくもないけど、でも……」

美嘉「……はあー、未央がそこまで言うなら、ちょっとだけ付き合ってあげるよ」

未央「ほ、ほんとに?」

美嘉「うん。ま、ここはカリスマギャルにお任せあれ★」


ガチャ


美嘉「こんにちはー、ちょっとお時間いいですか?」

警備員「ん? ……ああ、城ヶ崎さんか。もしかしてまた、社員証を忘れた?」

美嘉「あはは、そんな何度も失敗しないですよ! 今日は別の用事で!」

警備員「別の用事……って、あれ、君はさっきの」

未央「えっと! 本田未央、です。さっきはお騒がせしてすいませんでした」ペコリ

警備員「ああ。まあ、それなら大丈夫だよ。でも、次は気を付けてね」

未央「はい! 以後、重々気を付けます!」

警備員「ええと。それで、私に用事って言ったよね?」

美嘉「はい。実は、お願い事がありまして――」


―数分前―


未央「で、どうして警備室に行くのさ? 私、さっき怒られたばっかりなのに……」

美嘉「んー、まあ、ちょっとした証拠を集めに」

未央「証拠って?」

美嘉「要するに、アタシが未央の話を信じられないのって、ちゃんとした証拠がないからってことなの」

未央「信じられないって……でも、私はほんとに――」

美嘉「ん、未央がそこまで言うから、アタシはひとまず信じてみた。でも他の人は?」

未央「え?」

美嘉「未央のことを全く知らない赤の他人がこの話を聞いたら、それを信じると思う?」

未央「それは……」

美嘉「アタシは信じないと思う。だって、そこには“証拠”が一つもないからね」


未央「じゃあ、それを探しに警備室に……?」

美嘉「ん、まー、そーいうことになるかな」

未央「でも、そんな都合のいい証拠が転がってるかな」

美嘉「……未央はあの事務所の天井を見たことがある?」

未央「天井?」

美嘉「そう。前にプロデューサーに聞いたことがあるんだけど、あの部屋って実は監視カメラがあるみたいでさ」

美嘉「ほら、個人情報がたくさん置いてあるから、不審者に抜き取られたり、そういう心配もあるじゃない?」

美嘉「だから、念のためにって、会社側でそういう取り決めになったみたいなんだって」

未央「あ……じゃあその映像を見れば……」

美嘉「そ、あの部屋で起きた真実が分かるでしょ?」

未央「美嘉ねえ天才!! ほんとにカリスマなんだね!」ダキッ

美嘉「わわっ! あはは、ちょっともー、そんなに抱き着かないでよねー」


――――
――




未央(美嘉ねえの言うことが正しければ、この映像にすべての証拠が残っているはず……)

未央(ここに……この場所にすべてが……)

警備員「ああ、悪いけど、今日は事務所の映像は撮っていないんだよ」

未央「あ、……え?」

美嘉「撮ってない? それは、どうしてですか」

警備員「昨日のうちにプロデューサーさんから電話があってね、今日の分は撮らなくても結構ですって連絡を貰ったからね」

未央「……えっと、プロデューサーから?」

警備員「ああ。たしか前にもあったよ。仕事に集中したいときは気になるから止めてほしいって」

美嘉「それは問題にはなってないんですか?」

警備員「他にも申し出る人もいるからね。日中は在室する人も多いし、会社としてもそれは許可を出しているかな」



美嘉「……」

未央「美嘉ねえ……?」

美嘉「ありがとうございます、警備員さん。事情はわかりました」

警備員「用事はそれだけ?」

美嘉「はい。じゃ、アタシ達はこれで」ペコリ

警備員「あ、城ヶ崎さん」

美嘉「はい?」

警備員「……さっきの話は黙っておいてね、これでも口止めされてるんだ」

美嘉「ふふ。はーい、了解です★ さ、未央も行こうよ」

未央「う、うん」


バタン


未央「ねえ、さっきの話、やっぱりおかしくない?」

美嘉「おかしいって?」

未央「だって、あんなの、まるで予定してたみたいだったじゃん。映像を残さないなんて……そんなの」

美嘉「……そうだね。アタシもそう思った」

未央「ほんとに?」

美嘉「未央の言うこと、信じてみてもいいかもね。プロデューサーの件、アタシも少し怪しいと思う」

美嘉「なんにせよ、もう少し調べてみる必要がありそうだね……色々と」


――――
――



卯月「……未央ちゃん、大丈夫でしょうか?」

P「ん? 未央がどうかしたのか?」

卯月「今日一日、元気がなさそうだったので、わたし心配で」

P「ん~~~それなら、俺からフォローしておくよ。たぶん、何かあったんだろうから」

卯月「本当ですかプロデューサーさん!」

P「ああ! 俺に任しときな」グッ

卯月「えへへ、はいっ!」

P(……とは言ったものの、未央とは何を話したものかな)

P「なあ、卯月。ひとつお願いがあるんだけどいいか?」

卯月「なんでしょう?」

P「実はだな――――」

―――
――


つづきます・・・
思ったより長くなりそうなので気長にみてください

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