「ねえ、大丈夫かい?」 (9)
「うん、無理に喋らなくていい。でも、ここは危ないね。次の電車も来てる」
「少しだけ歩けるかい?…そう。じゃあ、手を出して」
「うん……しょ…っ!」
「もう少し…もう少し…」
「よし、ここなら大丈夫だ。お疲れ様」
「顔色が良くないね。ちょっと待ってて」
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お待たせ。スポーツドリンクだけど、飲めるかい?」
「……飲めるかと聞いておいてなんだが、かなり汗をかいているね」
「脱水の可能性がある。吐き気があっても、多少無理してでも飲んで欲しいな」
「…うん、そうそう」
「お金?いいよ、単なる私のお節介だ」
「……マジメだなあ。うーん、そうだな……」
「吐き気はないんだね?お腹は空いてるかい?」
「……ふふっ。水分を取って、腸が動いたのかな」
「じゃあ、ちょっと付き合ってくれるかい?」
「助かるよ。ラーメンは好きなんだけど、女一人じゃ入りにくくてね」
「食べれる?うん、好きなのを頼んでね」
「お金?いいって。私が君を連れまわしてるんだ。アルバイト代とでも思ってくれ」
「……じゃあ、この後もちょっとついてきてくれるかい?」
「いい眺めだろう?私が見つけたんだ」
「風が気持ちいいし、柵もないし、人目もない」
「何よりタイミングが関係ない。空を見上げて歩くだけだ」
「電車に飛び込むよりずっと楽だろう?」
「……やっぱり図星か。分かりやすいね、君」
「いやいや、別に咎めたりするわけじゃないさ」
「君は君で色々あったんだろうね。初対面の私じゃ知る由もない事が」
「……ただ、そうだね。ここは、死にやすい」
「電車なんかより、よっぽど。いつでも死ねるさ」
「いつでも死ねる。そう思ったら、少しは気が楽になるんじゃないか?」
「……そう」
「リアリストだね。確かに電車の時と同じかもしれない」
「……これは憶測だけど、君は自分の事より人の世話の方が得意なんじゃないか?」
「あるいは、人の目の前だとある程度行動的になれるけど、自分一人だと途端に何もできなくなるとか」
「……ふふっ。君が分かりやすいんだよ」
「じゃあ、そうだな…」
「まず、友達を作ってみようか」
「君は友達の前なら、カッコつけた相手の前なら、きっと……」
「…きっと最期の一歩を踏み出せる」
「それが君の目標だ」
「……うん、いい顔だ」
「じゃあ、目を瞑ってくれないかな。一応耳も塞いだ方がいい」
「流石に良心が痛むからね。付き合ってくれてありがとう」
「バイバイ」
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