目の前にある、1枚の紙。
まわりには、そんなことに構ってる暇は無いと、必死の形相をした人達がその紙とにらめっこしていて、その紙に勢い良く書き込んでいる人もいる。
……はあ～。
そう、実は再試だったりするんだよね。
そんなに遊んでたって訳じゃないんだけど……。
だって、受験生にだってたまには息抜きも必要だと思うんだよ！！
それに、受験で忙しいこの時期に、なんで、受験に出そうもない科目をやらなくちゃいけないの！？

ごめんなさい、あたしが悪うございました……とほほ。
とにかく、今はこの数学の再試に集中しよっと
数学……。
　
ううー！！
理系を受ける訳じゃないのに、数学なんて、小中学校レベルの内容で十分じゃない。
……はあ～、無駄口叩いてないで、とっととやろっと。

はあ～、終わった、なんとか再々試だけは免れそう……。
「由比ヶ浜、お疲れ」
えっ！？
「どうだ、上手くいったか？」
「うん、まあ、なんとか……。じゃなくて、どうしてヒッキーがここにいるの？」
「いや、この後誕生日のお祝いを奉仕部でするから、待ってたんだが」

――変なところで律儀なんだから――。

「うん、それじゃ早くいこっ！！」
そういってあたしはヒッキーの右手を左手で握る。
「ちょっ！？」
「ほら、ヒッキーも早く行こうよ」
へいへい……と言葉を返すヒッキー。

そうして、あたし達は奉仕部の教室へ向かって歩き出した。