輿水幸子「ボクの両親は、ボクのアイドル活動に無関心なんですよ(自称)」 (113)

幸子「最近はボ……わたくしもファンが増えて、仕事も増えたんてすよ」

幸子父「……そうか」

幸子「この間なんかですね」

幸子母「幸子さん」

幸子「な、なんでしょう。お母様」

母「お食事中は、静かに」

幸子「で、ですが……」

父「輿水の人間たるもの、常にエレガントたれ。違うかな?」

幸子「……はい。わかりました」

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https://i.imgur.com/VfZcpFg.jpg
輿水幸子(14)

母「芸能活動も結構ですが、学業の方も疎かにしてはいませんよね。幸子さん」

幸子「もちろんです」

母「エスカレーター式とはいえ、気の緩みを出さぬようにしなさいませね」

幸子「……はい。ごちそうさまでした、失礼いたします」

父「うむ」

バタン


幸子「あーあ。そういう家柄がどうとか、輿水の人間だからとか、そういうのから離れて実力を試したいからアイドルになったのになあ」

幸子「仕事も増えて、テレビとかにも出るようになったから、少しは認めてもらえるかと思ったのに」

幸子「……トップアイドルになったら、お父様もお母様も認めてくれるのかな」

幸子「誉めて……くれる、のかな……ん?」

幸子「お父様とお母様の寝室が騒がしいな……なにかあったのかな?」

~翌日~


若林智香「ひゃっほーぅ☆ 幸子ちゃん、おはようっ!」

幸子「ああ、智香さん。おはようございます」

智香「今日はダンスレッスンだねっ☆」

幸子「ええ。カワイイボクは、ダンスも完璧だからレッスンなんて必要ありませんけどね」

智香「えへへっ☆」

幸子「な、なんですか智香さん。その笑いは」

智香「アタシ、知ってるよっ。幸子ちゃんがすごい努力してがんばってるの」

幸子「……なんのことか、ボクにはわかりませんね」

智香「レッスンが終わった後でも、残って反復練習したり」

幸子「ひ、人違いじゃないですか?」

智香「誰もいないときに、腹筋とかしてたりっ☆」

幸子「ど、どのくらいできるか試しただけですよ」

智香「しかもそういうの、絶対に人に言わないしねっ!」

幸子「努力なんて……カワイイボクに、似合わないですから」

智香「……そうだね。アタシ、誰にも言わないからっ」

幸子「……ありがとうございます」

智香(言わなくてもみんな見てたから、知ってるんだけどねっ☆)

~レッスン後~


P「すごいな、幸子。前回の振り付け、もう完璧じゃないか!」

幸子「なにを驚いているんですか、プロデューサー。こんなの当然ですよ」

智香「……ふふっ☆」

P「? なにがおかしいんだ、智香」

智香「なんでもないですっ! えへへっ☆」

P「なんなんだ?」

幸子「と、ともかくプロデューサー、ボクはもうレッスンだけなんてうんざりですよ。早くこのボクにふさわしい仕事、もってきてくださいね」

P「ああ、そうだった」

幸子「?」

P「ライブに出演るぞ! 単独ではないが、けっこう大きなハコだからな。人も集まるぞ」

幸子「……へえ。まあ単独じゃないのは不満ですけど、プロデューサーがせっかくとってきた仕事なら、出てあげてもいいですよ。ボクは優しいですからね」

P「よし。じゃあこの曲、完璧に仕上げてくれよ」

幸子「まったく、何を見ていたんですか。既に完璧じゃないですか」

P「確かにそうだがな。じゃあ俺は打ち合わせをしてくる」

智香「行ってらっしゃいっ☆」

幸子「……行きましたね、プロデューサー。智香さん、もう一回ステップみて欲しいんですけど」

智香「? 完璧だったよ。さっきも」

幸子「それはもちろんですけど、まあボクのステップを見ておくことは智香さんにもプラスになるんじゃないかと思いますよ」

智香「えへへっ。うん、そうだよねっ☆」

~その夜 輿水家~


幸子「ライブかー……生でちゃんとした場所でのステージは初めてだなあ。お客さんもいっぱいだっていうし……楽しみだ」

幸子「……お父様とお母様。自慢したいけど、また窘められちゃうんだろうな。きっと」

幸子「いつかは、ボクのステージとか見てくれるのかな……」

幸子「……」

幸子「ハア」

幸子「想像つかないや。そんなの」

幸子母「幸子さん、夕餉の時間ですよ」

幸子「あ、はい。わかりました、お母様」

幸子父「……」

幸子母「……」

幸子「……」

幸子父「あー……幸子?」

幸子「え? はい、なんでしょうか?」

幸子父「その……なんだ。なにか私に言いたいことがあるのではないか?」

幸子「は? いいえ、別に」

幸子母「……では報告しなくてはならないことですとか」

幸子「報告……ですか?」

幸子父「うむ。私も忙しい身だからな」

幸子「それは存じていますが……別に報告することはありません」

幸子(ライブのこととか話しても、また窘められちゃうよね)

幸子母「……ほら。幸子さん、あれですよ」

幸子「はあ」

幸子母「ら……なんとか……ら……」

幸子「? ら?」

幸子「ほら、ら……らい……」

幸子「らい……? ああ!」

幸子父「うむ! なんだ!?」

幸子「ライスのおかわりをお願いします」

幸子母「……どうぞ、幸子さん」

幸子「ありがとうございます」

~その後 幸子父母の寝室~


幸子父「なぜだ!? なぜ幸子は、私たちにライブのことを報告し、招待をせんのだ!!」

幸子母「落ち着いてくださいまし、あなた」

幸子父「これが落ち着いていられるか! 幸子のスケジュールはすべて把握してチケットもおさえているというのに!! 招待をされたらそのチケットを見せて幸子驚かせ、喜ばせる計画なのだぞ!!!」

幸子母「きっと幸子さんの目標は、もっと高い所にあるのですわ」

幸子父「! なるほど。このようなキャパシティでのホールなど、眼中にないわけか。今回は単独ではないとも、聞いておるし」

幸子母「私たちに報告するのはきっと、もっと大きな舞台でのお仕事に相違ありませんことよ。おそらくトップアイドルとなる、その時ですとか……」

幸子父「さもあろう! いや、そうあるべきだ!! 流石は幸子!!! 我々も幸子からの招待があるまでは、陰から密かに応援すると決めておるからな」

幸子母「さあ、ではあなた。今夜も執事に隠し撮りさせた幸子さんのレッスン風景を見ながら、応援の練習をいたしましょう」

幸子父「よかろう。時におまえ、このような動作をどう思う?」ブンブンブン

幸子母「まあ! あなたその頭を激しく振る動作はいったい!?」

幸子父「ヘッドバンギング、と言うそうだ」

幸子母「それは以前、あなたの右腕がライバル企業に引き抜かれた?」

幸子父「ヘッドハンティングではない、ヘッドバンギングだ。アイドルが歌っている時は、このような動きで応じるのがファンの嗜みだと、部下から聞いた」

幸子母「あなたは、いつも良い部下の方に恵まれておいでですのね」

幸子父「L・O・V・E! LOVELY幸子!」ブンブンブンブン

幸子母「こう? こうですの?」ブンブン

幸子父「こう! こうだ!!」ブンブンブンブン

~翌朝~


幸子「ど、どうなさったのですか!? お二人とも首にそんなものを巻かれて!」

幸子父「なんでもない。主治医からは、頚部捻挫だと言われている」

幸子「頚部捻挫って……大丈夫なんですか?」

幸子母「幸子さん」

幸子「え? あ、はい」

幸子母「狼狽(うろた)えてはなりません」

幸子父「うむ。輿水の人間は狼狽えてはならん。常に平静かつエレガントたれ」

幸子「はい……」

幸子父「そうであってこそ! 輿水の……痛たたた」

幸子「大丈夫ですか……? 今日はゆっくりと静養してください」

幸子母「そうもいかないのです。本番が近づいていますから、お父様も当日の為に雑務を片づけておきませんと」

幸子「? 当日って、なんの当日なんですか?」

幸子母「……」

幸子父「……」

幸子「……あの」

幸子母「あらいけませんわ。もうこんな時間ですわよ、あなた」

幸子父「う、うむ! では行ってくる。幸子、がんばるのだぞ」

幸子「え? あ、はい、お気をつけて……」

幸子(あれ? がんばれって、何をがんばれっていうんだろ?)

幸子「……」

幸子「学業、かな?」

~輿水幸子出演合同ライブ当日~


幸子父「おお、まだ時間前というのに大盛況ではないか」

幸子母「これもすべて、幸子さんのファンの方々に相違ありませんことよ」

幸子父「そうであろう。いや、そうに違いない」

幸子母「あら、あそこに幸子さんのウチワを持った方が」

幸子父「おお! そこの貴方、輿水幸子のファンですかな?」

ファン1「あ? 俺?」

幸子父「うむ。うちの幸子が、いつもお世話になっております」

ファン1「え? ああ、おたくも幸子Pなわけね?」

幸子母「幸子P?」

幸子父「失礼だが、幸子Pというのは如何なる意味ですかな?」

ファン1「シンデレラガールズのファンは、それぞれの推しドルの担当P……つまりプロデューサーっつー位置づけなんだけど……知らないの?」

幸子父「恥ずかしながら」

ファン1「マジかー。おたく、ライブ初めて?」

幸子父「これまでこういった催しとは、無縁だったもので」

幸子母「よろしければわたくし達に、教えていただけませんこと?」

ファン1「いっすよ。同じ幸子Pなわけだし」

幸子父「よろしくお願いいたします」

ファン1「じゃあ当然、名刺も持ってきてないっすよね?」

幸子父「名刺ならここに……」

ファン1「輿水コンツェルン代表取締役……うわ、カタいなー。カタい」

幸子父「カタい?」

ファン1「これ、俺の名刺」

幸子母「まあ、綺麗な色合い。それに幸子さんの顔写真が」

幸子父「これは素晴らしい」

ファン1「ま、こういうのはセンスだけど、ライブ前後には名刺交換して交流するのがプロデューサーとしての楽しみのひとつだから」

幸子父「これは、大いに参考にさせてもらわなければ!」

幸子母「これはどちらの業者に作らせたものですの?」

ファン1「え? いや、これは俺が作ったんすよ」

幸子母「ご自分で? まあ!」

ファン1「なんか心配になってきたな。ペンラ用意してきてる? あとUOとか」

幸子父「ペンラ、とは?」

ファン1「ペンライト」

幸子母「ペンライト、とは?」

ファン1「……わーった。こうなったら、1から教えてやるよ。そんで、幸子ちゃんを盛り上げてこーぜ」

幸子父「ありがたい」

幸子母「よろしくご指南、お願いいたしますことね」

幸子父「色々と参考になる話ばかりだったな」

幸子母「本当に。あの方に出会わなければ、私たち大変な恥をかいてしまう所でしたわね」

幸子父「ヘッドバンギングがマナー違反とは知らなかったな」

幸子母「毎晩、ヘッドバンドに左右1㎏の重りを下げて鍛えて参りましたのにね」

幸子父「それにしても、まだ時間前なのにグッズの物販に間に合わぬとはな」

幸子母「残念ですわね」

幸子父「執事に連絡して、ペンライトも入手した」

幸子母「間に合って良かったですわね」

幸子父「では、入場しよう」

幸子母「その前にあなた、これを」

幸子父「そうだったな」

ファン2「幸子ちゃーん!」

ファン3「カワイイー!」

ファン4「ん? オジサンも幸子ちゃんのファン?」

幸子父「うむ」

ファン3「いいけど、その仮面は? Pヘッド?」

幸子母「幸子さんに、知られるわけにはまいりませんので」

幸子「みなさん、ボクのために今日はご苦労様ですね」

客1「誰だ?あれ」

客2「輿水幸子だってよ。知ってるか?」

客3「いーや」

幸子父「ぐぬぬ……」

幸子母「幸子さん、ここは試練の時ですよ」

幸子「では聞いてみてください。ボクの歌」

幸子「~♪」

客1「……へえ」

客2「悪くねぇじゃん」

客3「可愛いよな」

幸子父「幸子……幸子」ボロボロ

幸子母「立派ですよ、幸子さん」ハラハラ

幸子「~~~♪♪♪」

客1「いいな、ノッてきたぜ」

客2「UO折っゃうぜ!」

客3「コールも入れてこうぜ」

幸子父「そ、そうだペンライト」

幸子母「振るのでしたよね」

幸子「まだまだカワイイボクの歌を聴きたいでしょうけど、後の人たちもいるのでこれで失礼しますよ」フフーン

客1「いいな、輿水幸子か」

客2「俺ファンになるわ」

客3「次が楽しみだな」

幸子母「さすがですわ、幸子さん」

幸子父「素晴らしいステージだった。ワシも鼻が高い」

幸子母「ですがサイリウムが途中で光らなくなりましたわね」

幸子父「1本では少なかったやも知れぬな」

幸子母「今後はもっとたくさん用意しないと」

P「幸子! ライブは成功したし、評判もいいぞ」

幸子「……」

P「幸子?」

幸子「え? え、ええ。お客さんも、ボクのカワイさに驚いてましたよね」

智香「とっても良かったよっ☆」

幸子「ええ……」

P「どうかしたのか?」

幸子「いえ。別に……」

智香「あ、プロデューサーさん。幸子ちゃんは、喉が乾いてるんですよ」

P「おお、待ってろ」

幸子「……お客さん、すごくもりあがってましたね」

智香「そうだね」

幸子「みんな、応援してくれてました」

智香「うん」

幸子「会場のサイリウムって、本当に光る海みたいなんですね」

智香「すごかったね」

幸子「……」

智香「おめでとう」

幸子「次も……が、がんばりますから……」

智香「うんうん」

幸子「また……ダンスをみてください……」

智香「……うんっ☆」

~1ヶ月後~


P「決まったぞ幸子!」

幸子「え?」

P「CDデビューだ!」

幸子「へ、へええ……よ、よう、ようやくですか。へえー……」

P「ああ。俺の力が足りないばかりに、待たせたな! だが、これで持ち歌でどこへでも出られるぞ!!」

幸子「か、カワイイ曲にしてくださいよ。ぼ、ボクにふさわしい曲に」

P「任せろ!!!」

幸子「ではボクは、ちょっと失礼しますよ」

バタン

幸子「し、CDデビュー! そうかー! ついにボクも……ボクも」

幸子「これはお父様やお母様にも、ご報告を……」

ピッ

幸子「……」

幸子「いえ、デビューとはつまり、これから世に出るというだけのこと。この程度で浮かれていては、また窘められるに違いないですよね」

幸子「……智香さんにはメールしとこう」

幸子「ただいま戻りました……あれ? 敷地内に重機が?」

幸子母「急ですが当面の間、屋敷の工事がありますのよ」

幸子「工事……どこか修理でもするんですか?」

幸子母「いえ、建て増しです」

幸子「建て増し……何が建つんですか?」

幸子母「オーディオルームと、とりあえずはグッズ等の倉庫ですが、ゆくゆくは記念館にする予定です」

幸子「? はあ」

幸子母「あ! な、なんでもありませんのよ」

幸子「あ、お母様……行っちゃった。グッズってなんのグッズだろう……」

幸子父「素晴らしいジャケットではないか!」

幸子母「本当ですわね」

幸子父「まだグッズ倉庫だが、記念館となった暁にはこのCDが記念すべき第1号展示品として飾られることになるな」

幸子母「その日が待ち遠しいですわね。そして曲も最高でしてよ」

幸子父「幸子の歌を聞く為に、防音シアターを邸内に新設し、ハイレゾオーディオであるMark LevinsonのNo519にプリアンプを2台JBLのProject EVEREST DD67000スピーカーを2台購入したかいがあったな」

幸子母「1500万ほどかかりましたが、買って良かったですわね」

幸子父「安い買い物だったな」

~夕食時~


幸子「先日の定期テスト、数学は満点でしたよ」

幸子父「うむ。流石は幸子」

幸子母「普段の実力を、発揮いたしましたね」

幸子「ええ。ボ……わたくしは、きちんと学業にも力を入れていますから当然です」

幸子父「なるほど、芸能活動にうつつを抜かず授業中も真面目にやっておるのだな」

幸子母「そうなんですね授業中も……授業中手紙を書いてる午後1時~♪」

幸子父「少しだけ~隣のあなたが気になるの~♪」

幸子「……え?」

幸子父「横目で見て……はっ!? い、いや、なんでもない。なんでもないぞ!!」

幸子母「あなたの顔は~……さ、さささ、幸子さん、お、おおお、お顔が汚れていましてよ」

幸子「え? そうですか? ソースがはねたかな?」

幸子父「ふう……危ないとこだったな」ヒソヒソ

幸子母「まだまだ幸子さんには、私たちが密かに応援していることは明かすわけにはまいりませんものね」ヒソヒソ

幸子父「うむ。幸子がトップアイドルとなるまでは……」ヒソヒソ

幸子母「幸子さんが満足してしまっては、いけませんものね」ヒソヒソ

幸子「?」

智香「幸子ちゃん、絶好調だねっ☆」

幸子「ええ……CDのセールスも順調なようですし、ライブでの空気というか、手応えも確実に感じています……」

智香「? どうしたのっ?」

幸子「い、いえ、嬉しいですよ? 思い描いていた通りに人気も出てますし。ただ、なんとく……」

智香「なに?」

幸子「もっとなんというか……ボクはできそうな気がするんですよね」

智香「うーん、そういうものなのかなっ? 成功しても満足ってできないもの……なのかな」

幸子「……どうなんでしょうね?」


P「……」

~数日後~


P「幸子、ちょっといいか?」

幸子「なんですか? また新しい仕事ですか?」

P「まあ、そうとも言えるかもな。紹介しよう、白坂小梅と星輝子だ」

小梅「……どうも」

輝子「……フヒッ」

幸子「あ、はい。初めまして……確か、同じ事務所のアイドルの娘ですよね?」

P「ああ、それでな、3人にはユニットを組んでもらおうと思っている」

幸子「……え?」

P「3人にはユニットを組んでもらおうと思っている」

幸子「ええーっ!? ユニット? ボクがですか?」

P「既に曲もできている。ユニット名は、そうだな……3人で、考えてもらおうかな」

幸子「ちょ、ちょっと待ってください。ボクはソロデビューもしていて」

P「幸子」

幸子「え?」

P「やってみてくれ」

幸子「……はあ」

P「きっといいユニットになる」

幸子「……わかりました」

P「よし。じゃあ、3人でミーティングしてくれ」

幸子「それでですね」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「あの……2人とも?」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「あの……」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「……」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「ちょっと2人とも、黙ってないで喋りましょう……」

小梅「!」

輝子「!」

幸子「色々と思うところがあるかも知れません。事情だってあるでしょう。ですけど、今は目の前を見ましょうよ」

小梅「!!」

輝子「!!」

幸子「ボクにも夢はあります。当然、トップアイドルにはなりますが……いえ、カワイイボクならなれて当たり前ですが、それを見せてあげたい……人たちがいます。ファンのみなさんや、プロデューサー、一緒にレッスンした仲間、それに……」

幸子(お父様や、お母様も……)

幸子「と、ともかく、ユニットを組むことは決まったんです。前向きに、これからのことを考えてみましょうよ!」

小梅「!!! う、うん……」

輝子「!!! か、カッコイイ……」

幸子「! やってくれる……んですか?」

小梅「う、うん……お母さんが勝手に申し込んでたアイドル……だけど、ちょっとやってみたくなった……かも」

輝子「フ、フヒッ。い、今の言葉……魂に……響いた……ナイスシャウト。ナイスカワイイ。ナイス……リーダー!」

幸子「え? り、リーダー!?」

小梅「う、うん……リーダー……幸子ちゃんがいいと思う……」

輝子「リーダーとはつまり、すべてのメンバーに対する模範的なあり方のこと……」

幸子「よくわかりませんが、わかりました! ぼ、ボクで良ければリーダーとしてがんばりますから、いっしょにお願いしますね」

小梅「うん……そ、そうだ。ここにいる3人みんな、身長が同じ……」

輝子「そ、そうだな。全員同じ身長の142㎝だから……」

幸子「ユニット名は『カワイイボクと142's』(かわいいぼくといっしょに)です!」

輿水父「ユニット活動とはどういうことだ! 幸子は既にソロデビューをしておるのだぞ!!」

幸子母「ユニット活動から人気の出た娘がソロデビュー……というのが、スタンダードなアイドルの登り方、ですものね。しかしあなた、既にデビューしたアイドル達によるユニットもございましてよ……」

幸子父「それは全員がある程度以上の人気ありきの、夢の組み合わせの具現化。今回の場合、幸子以外はまだほとんど活動をしていない娘だというではないか」

幸子母「それは確かに……これはこの目で確かめる他ありませんのでは?」

幸子父「うむ。行くほかあるまい、カワイイボクと142's結成ライブに!!!」

~カワイイボクと142's結成ライブ会場~


小梅「お、お客さんいっぱい……」

輝子「で、デリック・ウィブリーかシド・ビシャスになったみたい……だぞ」

幸子「2人とも……今日は、がんばりましょう」

小梅「うん……そうだね。そのためにがんばった……から」

輝子「フヒッ。リーダーの特訓……最高にヘルだったからな……」

幸子「ですが自信を持ってください。ボクたちはその地獄をやり遂げたんです。今日は……3人で……」

小梅「うん……」

輝子「オーバー・ザ・ヘルだーーー!!! ヒャッハーーーッッッ!!!」

ファン1「お、いつぞやのオジサンとオバサンじゃん」

幸子父「おお、ご無沙汰しております。先だっては色々とお教えいただき、本当にありがとうございました」

ファン1「いって。しかしまあ、ユニット結成して再デビューとは意表を突かれたよな」

幸子母「ええ。私どもも戸惑っておりまして……ここへきてユニット活動をすることになるとは……」

ファン1「ま、それもおもしろいんじゃね?」

幸子父「なんですと?」

ファン1「カワイイだけが、輿水幸子じゃない……ってとこかな?」

幸子母「カワイイだけではない……」

ファン1「普通にしてりゃカワイイのに、普通だけじゃないのが面白いんじゃねーのかなってさ。面白いのも輿水幸子っすよ。次は何してくんのか、どんなこと見せてくれんのか、このわくわく感すね」」

幸子父「……あなたには、また教えられましたな」

幸子母「今日のユニットライブ、わたくしもわくわくしてまいりましたわ」

ファン1「へ? まあそりゃ良かった」

幸子「今日はみなさん、カワイイボクと142'sの結成ライブへようこそ」

小梅「カワイくて、ホラーで、パンクな私たちのライブ……」

輝子「ヒヤッハーだぜえええ!!!」

客「「え? ……お、オオオーーーォォォッッッ!!!」」

幸子父「どういったコンセプトなのかは、今ひとつわからぬが……」

幸子母「3人がひとつになっているのは、わかりますわね」

幸子父「うむ。よくぞまとめあげたな、幸子……ん?」

小梅「カワイイ幸子ちゃんと~ホラーの私~♪」

幸子父「あ、あの……娘、確か白坂小梅という名だったな……なかなか……」

小梅「地獄……魅せてあげる……~♪」

幸子父「!!!」ズキュウウウゥゥゥンンン

幸子母「あなた、どうなさったの?」

幸子父「なんという……可憐な……」

幸子母「は?」

輝子「ロックのビートは心音に一番近いんダゼエエエ♪」

幸子母「!!!」ズキュウウウゥゥゥンンン

輝子「6×9=53+1♪ ロックはゴミのひとつ上~ヒャッハー♪」

幸子母「なんて心揺さぶられる……」

幸子父「……リウムを」

幸子母「……は?」

幸子父「サイリウムを!」

幸子母「そうですわね!」

小梅「クロールスペース~♪ カラカラ回る~♪ クリクリ回る~♪」

輝子「恐怖の館の口が開くゼエエエ~~~♪」

幸子父「こ、小梅ちゃあああーーーんんん!!!」

幸子母「輝子ーーーおおお!!!」

幸子「お客さん、盛り上がってましたね! まあ僕のカワイさからすれば当然かも知れませんが、小梅ちゃんも輝子ちゃんも……まあ、すごかったですよ、ええ」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「? どうしたんですか? また、だんまりですか? せっかくライブも成功し……」

小梅「うう……」グスッ

輝子「うう……」グスッ

幸子「なんですか!? どうしたんですか、2人とも」

小梅「アイドル……なって良かった……」

輝子「はじめて……誰かに認められた……気がする」

幸子「……まだまだ、これからですよ」

小梅「……うん」

幸子「……これからも、3人で」

幸子「ええ! カワイイとホラーとヒャッハーでトップアイドルを目指しますよ!!」

小梅・輝子「おー!!!」

P「いいユニットになったな。そして、いいアイドルになったな幸子」

智香「だからユニットを組んだんですねっ☆」

P「1人でも登れたかも知れないが、3人でも登れるだろうと思ってな。1人で登るより大変かも知れないし遠回りになるかも知れないが……登りがいがあるだろう?」

智香「えへへへっ☆」

幸子父「水色の公式ペンラを8本購入した」

幸子母「小梅ちゃんカラーですわね。でもどうして8本も?」

幸子父「これをこう……両手の各指に挟むことで」

幸子母「まあ! なんという光量でしょう!!」

幸子父「ウルヴァリン、もしくはバルログと言うそうだ。む? その大量の紅色のリウムはどうしたのだ?」

幸子母「これはですね、あなた。この弾丸ホルダーを腰と両肩と両手足に巻いてそこに差し込みますでしょう? これによって……」

幸子父「ぬおわっ! な、なんと、全身が輝子カラーで発色を!!」

幸子母「わたくし自身がリウムとなることですのよ」

※レギュレーション違反です

幸子父「ぬうう、足りない光量は気合いのコールでカバーだ! L・O・V・E! LOVELY小梅!!!」

幸子母「オイ! オイ! オイ! 輝子ーーーヒ"ャ"ッ"ハ"ーーーッ"ッ"ッ"!!!」

~1ヶ月後~

幸子「※カワイイボクと ファーストアルバム『カワイイとホラーとパンクで 』6月16日発売を記念と祈念して、カワイイボクがスカイダイビングしますよ」

小梅「が……がんばって! もしもの時は、骨は拾うから……ね」

幸子「やめてくださいよ! 縁起でもない!」

輝子「パンクスは逃げない……その姿勢、ロックだな。成功祈ってる。さあ……レッツ、ソライロタケ」

幸子「言葉の意味はわかりませんが、いきますよ……え、えいっ!」

https://i.imgur.com/l64gCJQ.jpg

P「お疲れ、3人とも。幸子、なかなかいい演技だったぞ」

幸子「本物のスカイダイブ用飛行機に、本物のスカイダイブスーツを着て、もしかしたら本気でやらされるんじゃないかと思いましたよ。ま、まあ、その時はやるつもりでしたけどね」

P「いや、さすがにスカイダイブは18歳からだからな。後はCGを合成してCMを作る」

小梅「高いところ……すごくドドキしたね……」

輝子「ああ、完璧にソライロタケだったな」

幸子「高いところからの光景、確かにすごかったですね」

小梅「アイドルとしても、いける……よね?」

幸子「え?」

輝子「もっと高いところに、の、登りたい……フヒッ」

幸子「……もちろんですよ! がんばりましょう」

P「そうか。3人がそのつもりなら、俺も次のステージを用意しないとな」

小梅「え?」

輝子「つ……次?」

P「アルバムを出したんだから、当然その次は……ツアーだ!」

小梅「ツアー? さ、3人で……ツアー?」

輝子「や、やった……」

幸子「が、がんばりましょう!!!」

幸子「夏休みの1ヶ月をかけて、全国8公演かあ……これはさすがに、お父様とお母様に報告をしないといけないかな!」

幸子「でも、なんて言われるだろう……?」


幸子父「夏休み1ヶ月で全国を回る? それで幸子、学業はどうなっておるのだ?」

幸子母「幸子さん。成績は落ちてはいないようですが、最近は出席日数がずいぶん減っているというお話も聞いていますよ?」

幸子父「ふむ……幸子。ここらでどうだ? そろそろアイドルも辞め……」

幸子「だ、だめです! ボクだけが窘められるのはいいけれど、芸能活動禁止とか言われたら小梅ちゃんや輝子ちゃん、それにプロデューサーが……」

幸子「……」

幸子「でも、言わずに1ヶ月も家を空けるわけにもいきませんよね。どうしよう……」

智香「1ヶ月ほど合宿の為に寮ですごす。……ってことにすればいいのっ? それはかまわないけど」

幸子「まあお父さ……父と母はボクの芸能活動に興味はありませんし、そういうことにしておけば大丈夫かな、と」

智香「でも、本当のこと言っておいた方がいいんじゃ……」

幸子「い、いえ! ここで何か反対されるよりは、そういうことにしておいた方がいいんです」

智香「そうかな……」

幸子「とりあえずそういうことで、よろしくお願いします」

幸子「え? お父様もお母様も不在?」

執事「はい。なんでも事前に全国をまわっておく、と申されまして。現地の交通機関や所在他の確認、なにより空気を感じておくのだ……と」

幸子「? またなにか、輿水コンツェルンの大きなプロジェクトかな」

執事「わたくしめには、事業のことは……合宿の件は、定時連絡でお伝えしておきます」

幸子「ええ、よろしく頼みます」

幸子「よくわからないけれど、直接お伝えしなくてすんだのはラッキーだったかも知れませんね。さあ、それじゃあレッスンです」

小梅「おおー……!」

輝子「オー……!」

トモカ「おーーーっ☆」

~夏休み 真駒内セキスイハイムアリーナ~


幸子父「始発で来たが、もう随分と物販に並んでいるな」

幸子母「みなさんの熱気が伝わりますわね」

幸子父「うむ。それもあってか、北海道は涼しいかと思っていたが、暑いぐらいだ」

幸子母「あなた、その小梅ちゃん法被は脱いでおかれた方がよろしくはありませんこと? 熱中症にでもなったら」

幸子父「これは小梅Pとしての決意と心意気。脱ぐわけにはいかん! お前のその重ね着レザー輝子Tシャツと同じことよ」

店員「次のお客様、どれになさいますか~?」

幸子父「あ、小梅セットと輝子セットを4セットずつ頼む」

店員「4セットですか~?」

幸子父「自分用、保存用、布教用、記念館用だ」

店員「申し訳ありませんが~グッズはそれぞれ、お一人様3点までとさせていただいております~」

幸子父「なんと!」

幸子母「では私も買いますので、合計で4セットでお願いできますかしら」

店員「あ、お2人で2セットずつですね~?」

幸子母「そう。2セットと2セット、4セットだ」

幸子父「そう、2セットずつだ、買えるんだ!」

店員「かしこまりました~。限定CDはどうなさいますすか~?」

幸子母「それも4枚お願いできますこと? あ、それから……」

~真駒内セキスイハイムアリーナ楽屋~


輝子「会場前……す、すごい人だったな……」

小梅「全席完売だ……って」

幸子「初北海道ですが、ボクたち歓迎されているんですね。まあ、当然といえば当然ですけどね」フフーン

P「……いや」

幸子「え?」

小梅「ど、どういう……こと?」

輝子「なにかあるのか? 親友」

P「ここ真駒内セキスイハイムアリーナのキャパは、約1万1千人。だが同じ札幌に、もっと大きなハコがある」

輝子「わ、わかったぞ……」

小梅「うん。北海道最大のハコ……」

幸子「札幌ドームですね」

P「そうだ。札幌ドームのキャパは5万3千人。いつかまた、北海道でライブをやろう。その時は……」

幸子「ええ、札幌ドームで!」

P「よし、じゃあまずは今日のライブだ!」

小梅「う、うん……」

輝子「今日はマツタケでいくぞ」

幸子「言葉の意味はよくわかりませんが、やりましょう!」

~ライブ後 真駒内セキスイハイムアリーナ前~


幸子父「……高まりすぎて、言葉が出ない……」

幸子母「……ほんそれ、ですわ……」

幸子父「気づいたか? 13曲目が小梅ちゃんの『Funny Fantasy Friday』だったのを……」

幸子母「13とフライデー……金曜日をかけていたんですのよね……」

幸子父「それだけではなく、間奏時にチェーンソーモチーフのギターを持った輝子ちゃんが乱入してきてギターソロを弾きだした時は、思わず『演出した奴、出てこーーーい!!!』と叫んでしまったわ」

幸子母「歌い終えた後に『ジェイソンはチェーンソー、使わないけどな……』って照れたように笑った輝子ちゃん、マジ天使……」

幸子父「『小さな恋の密室事件』の時の演出! あれな!! ホラー映画『悪魔の密室』とかけてあったぞ!!! 元は1983年のオランダ映画だがその出来の良さからアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭、フランス語ではle Festival international du film fantastique d'Avoriazというファンタジー映画やSF映画、オカルト映画、サスペンス・ホラー映画に特化したフランスのスキーリゾート地アヴォリアッツで開催されていたその映画祭でグランプリを取った映画だったが、2001年にハリウッドで『ダウン』というタイトルでリメイクされたあの映画だ!!!!」

幸子母「気がついたに決まってますわ! 『悪魔の密室』も『ダウン』もエレベーターが人を襲うというホラー映画ですけれど、今回はゴンドラをエレベーター仕様に装飾して登ったり降りたりしてみせるという演出に鳥肌がたちましたわ!! 乗っているのが輝子ちゃんで、小梅ちゃんはその周囲で楽しそうに踊るのも両映画でもあったシーンのインスパイアで、マイナーながらいいホラー映画を巧みにビジュアライズして、密室というキーワードから歌とからめるその手法には脱帽しすぎてもう脱ぐ毛もありませんことよ!!!」

※2人とも超早口です

ファン2「あの」

幸子父「ん? なんですかな?」

幸子母「どちら様でしたかしら」

ファン2「いえ、初対面なんですけど、お2人ともずいぶんと濃いライブ感想を交わしておられると思いまして」

ファン3「よければこれから、カワイイボクと142'sP同士集まっての打ち上げで語り合いやるんですけど、一緒にどうです?」

幸子父「おお! 私も誰かと語り合いたいと思っておったのですよ!! 今日のこの高まりを!!!」

幸子母「ええ! ぜひに、ご一緒させていただけますこと!?」

ファン4「もちろんですとも。お2人ともなかなか年配だとお見受けしましたが、普段はなにしてる人なんですか?」

幸子父「副業でコンツェルンの総帥を少々」

幸子母「わたくしは、副業で一族の取り纏めをほんの嗜み程度に」

ファン5「? それにしても色々と演出について詳しいんですね」

幸子父「いえいえ、本業であるプロデューサーとしてはまだまだ駆け出しですが、まあそれまでの人生経験がそこそこありますからな」

幸子母「ですけれどライブに来るたび、こんな世界があったのかと目の覚める思いですのよ」

ファン6「わかりみ~♪ 特にカワイイボクと142'sのライブは、カワイさと楽しさとホラーとパンクが最高のリミックスを遂げているアートでアミューズメントなライブなんですよね~♪」

ファン2「個性と個性がコンフリクトしつつも、それを活かしたイカした関係性が3人をひとつにしつつ、でも個性もより際立ってるっていうか」

ファン3「身長が揃っているのに不揃いな3人が調和をなした時のコントラストが描く光景の輝きでしょ!?」

ファン4「もうこれ以上はないでしょ、って数秒前まで思ってた自分を叱りつけたくなること多すぎない? カワイイボクと142's!」

幸子父「小梅ちゃんの進化が凄まじかった。光の速さを超える感じで史上最高アイドルを更新してる感じですよな。楽曲の緩急が上手さ! 曲調の暗さの中の瞳の光の良さ、気弱さ、優しさ、輝子ちゃんへの思慕、ファンへの愛情。全ての感情が見える歌唱!!!」

幸子母「まだこのライブを見ていない人がこの世に存在しているという事実の恐ろしさに、わたくし身震いがいたしますわ! ああ、一刻も早く法整備して義務教育にカワイイボクと142'sを授業として加えなければ!! このままでは人類にとっての損失ですわ!!!」

※7人ともメチャクチャ早口です

ファン2「お2人は、誰Pなんですか?」

幸子父「小梅Pです!」

幸子母「輝子Pですわ!」

幸子父「焼肉屋からカラオケ店をはしごして、徹夜でプロデューサー同士語り合ってしまったな」

幸子母「お値段もお肉の質もリーズナブルなお店でしたけど、人生最高の味がいたしましたわね」

幸子父「JOJO苑など足下にも及ばない味だったな。それに、人生で初めてカラオケボックスというものに入った。

幸子母「疲れましたけど、なんて心地よい疲労感ですことね」

幸子父「しかしこのまま寝てしまう訳にはいかんぞ。今日は移動日だが、明日の日曜日は仙台でのライブだ!」

幸子母「まだ楽しませてくれるなんて……」

幸子父「うむ、急がねばならん。いざ、仙台へ!!」

~翌日宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ前~


輝子「こ、ここも大きな会場だな。ウェンブリーにも負けてない……かも。広いぞ……」

小梅「ここも、私たちでいっぱいにするんだよ……ね……」

幸子「全席完売と聞いてはいても、いつもファンのお客さんがまだいない会場に来ると、驚きを禁じ得ませんよね……」

P「3人とも。その気持ちは、いつまでも忘れないでいてくれ」

輝子「え?」

P「この光景とそれを見た時の気持ちを、いくら3人が成功していっても当たり前にはしないでいてくれ。いつも驚こう。いつも少し不安になろう。そして、いつも……」

幸子「今回もがんばろう、そう思うんですね?」

P「ふっ……わかりがいいな。そういうことだ」

小梅「うん。これからも、ずっと……今の気持ちのまま……」

輝子「ヒャッハー……しような!」

幸子「そしていつか……お父様やお母様もライブに来ていただき、ボクがお2人を熱狂させてみせますよ……」ポツリ

小梅「?」

輝子「?」

~セキスイハイムスーパーアリーナライブ中~

幸子父「うおおおーーー!!! こ、小梅えええーーー!!! 小梅えええーーー!!!」

幸子母「輝子ちゃあああーーーんんん!!! 輝子ちゃあああーーーんんん!!!」

~翌金曜日名古屋 日本ガイシホール~


幸子「それでは最初の曲です。イベント・ホライゾン」

幸子父「……」

幸子母「……」

幸子「あなたと会えなかった7年間~♪ どこに行っていたの……もしかして海王星?~♪」

幸子父「……」

幸子母「……」

小梅「星の海漂う、幽霊船~♪ 私たち以外、誰もいない~♪」

幸子父「小梅ちゃーん! ゆうっれいせーん! おれもー!」

輝子「ワープ装置は幾何学模様~♪ それはパズルボックス~♪」

幸子母「輝子ちゃーん! きかがくー! ぼっくすー!」

~日本ガイシホール ライブ後~

幸子父「優勝!!! 小梅ちゃん優勝!!!」

幸子母「輝子ちゃん……優勝……エモい……尊い……」

ファン2「プロデューサー同士、多くは語らないけど……」

ファン3「小梅ちゃん……いいよね……」

幸子父「いい……」

ファン4「輝子ちゃん……いいよね……」

幸子母「いい……」

~翌々日兵庫県 ワールド記念ホール~

幸子「少しハネてる寝癖のあとも~♪ チャームポイントなの♪」

幸子父「こ、小梅えええぇぇぇーーーっっっ!!! 小梅ちゃあああぁぁぁあああーーーんんん!!!」

幸子「カワイイですよね?♪」

幸子母「輝子おおおぉぉぉーーーっっっ!!! キノコの輝子おおおぉぉぉおおおーーーっっっ!!!」

~ワールド記念ホール ライブ後~


幸子父「今日だけで2時間も小梅ちゃんと同じ空間の空気を吸ってしまった。この歳の身体にはちょっとした致死量ではなかったかな? ふははははは」

幸子母「ですが、私はもう輝子ちゃんなしではいられない身体ですわ。輝子ちゃんと同じ空間の空気を吸わないで生きていくことは、もはやできませんのよ」

幸子父「うむ。小梅ちゃんを知らなかった、あの頃には戻れない」

幸子母「吸うしかありませんことよ。ライブの空気を!」

ファン3「相変わらず濃いですよねー、お2人の感想w」

ファン6「それな~w ホント2人の感想を聞くのもライブ後の楽しみ~♪」

~翌土曜日福岡県 マリンメッセ福岡A館~


輝子「ふ、2人ともはやく……フヒッ」

幸子「だ、大丈夫でしょうか。ライブ前に演者のボクたちが、会場前をウロついたりして」

小梅「大丈夫……ちゃんと変装してるし、あの子も周りを見ていてくれてる……から」

幸子「その見ていてくれてる、あの子っていうのが恐いんですけど……あれ?」

輝子「ど、どうした? リーダー」

幸子「今……」

幸子(お父様とお母様がいらしたような……)

小梅「どうしたの?」

幸子「い、いえ。あ、フラスタが並んでますよ。見に行ってみましょうか!」

輝子「お、そ、そうだな」

小梅「うわ……きれい……」

幸子(まさか、気のせいですよね……)

幸子父「で、ありますからな! ワールド記念ホールでの『ゴア・ゴア・ガールズ』のコール、会場の声が小さすぎだと思いましてな!!」

ファン2「あー、確かに。演者が必死なんだから、俺らももっと必死にならないとですよねー」

ファン3「でもゴア・ゴア・ガールズ、ちょっと曲調がムズくないです?」

ファン4「間違ったコールするぐらいなら、地蔵もやむなしっていうか」

幸子母「確かにそれもわかりますわ。ですけれど、3人がそろって歌う曲ですし、コールが少なかった時の輝子ちゃん、ちょっと残念そうだったのが私は 気になりますの」

ファン3「……俺らの為に歌ってくれてる3人をガッカリさすわけにはいかねーですよね」

ファン4「うん。今からでもコールの練習しようか」

幸子父「おお、それはよい考え!」

幸子母「ゴアゴアゴーゴー! ゴアゴアゴーゴー! ゴゴゴゴーア! ゴアゴアゴー!」

~マリンメッセ福岡A館ライブ後~


輝子「今日は、ゴア・ゴア・ガールズの時のお客さんのコール……き、キマってたな!」

幸子「ちょっとびっくりですよね。1週間足らずの間に、ファンのみなさんが覚えてきてくれたんでしょうね」

小梅「こういうの……うれしいね。年配のお客さんもいたんだけど、すごくもりあがってくれてた……よ」

幸子「年配のお客さんもいるのかあ……それならお父様やお母様がいらしても……」

小梅「え?」

幸子「あ! な、なんでもありませんよ!?」

輝子「隠さず、話せよ……リーダー」

幸子「え?」

小梅「気づいてる……よ。なにかずっと、心に秘めてる……って」

輝子「吐き出しちゃうといいぞ……ホコリタケみたいにな」

幸子「そ、そんな別にたいしたことじゃないんですよ? た、ただ……」

小梅「?」

幸子「ボクの両親は、ボクのアイドル活動に無関心なんですよ。最初にやりたい、って言った時も『そうか』と言われただけだったし、活動のことを話しても『学業はどうなっている』とか『輿水の人間はエレガントたれ』とか、そんな返事ばかりで……」

輝子「……」

幸子「まあ反対されないだけいいんですけど、やっぱり……この成功というか、がんばりを認めてもらえたらなあ……って」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「そんなことありえないんでしょうけどね……」

小梅「そんなことないよ」

幸子「え?」

輝子「やってみようぜ。リーダーの両親も、認めざるを得ないような成功を……」

幸子「2人とも……」

小梅「うん。3人で」

輝子「リーダーの両親を熱狂させてやろうぜ」

幸子「……そうですね。ええ、やりましょう!」

ファン3「え? 来週のライブチケ、取れたんですか!?」

ファン4「次はハコが小さいからウチら全滅だったのに!!」

幸子父「いやあ、ははは。CDを積みまくってなんとか」

幸子母「しかも発券ガチャの結果、アリーナ最前でしたのよ。おほほほほ」

ファン6「すご~い! じゃあ来週のライブはお2人にまかせた~」

ファン5「自分らのぶんまで、コールよろ! です」

幸子父「わかりましたとも」

幸子母「燃え尽きてみせますわよ」

~翌木曜日 山梨県南アルプス市~


輝子「し、親友……明日のライブは、ここ……でやるのか?」

小梅「なんか……今までで一番小さいハコだ……ね」

P「……まあな。収容人数は8000人だが今回は機材とか入るから7000人しか入らない。幸子、どうだ?」

幸子「ここ……覚えていますよ」

小梅「え?」

幸子「子供の頃までボクは、山梨に住んでいましたからね。ここにも来たことがあります」

輝子「そうだったのか。じゃあ明日は……リーダーの凱旋ライブだな?」

小梅「そうか……東北や兵庫でもライブしたから、明日は……」

P「千秋楽前の、今回は幸子メインのライブだな」

幸子「ボクが……わかりました! やりますよ!!」

幸子父「この屋敷も久しぶりだな。ここにいた頃はまだ、幸子も幼かったな……」

幸子母「そうでしたわね。今も可愛いですけれど、昔からずっと愛くるしい私たちの天使ですわよね……」

幸子父「……」

幸子母「……」

幸子父「さて、では今日もコールの練習をするか」

幸子母「そうですわね。そういたしましょう」

幸子父「フランケンフッカーからいくぞ」

幸子母「ハイハイ、ドッカーン! ハイハイ、ドッカーン! フッカーフッカーフッカーフッカー、フランケン! ハイ!」

~翌金曜日 南アルプスジットスタジアム~


幸子「みなさーん! カワイイボクが、山梨に帰ってきましたよーー!!」

観客「おーーー!!!」

幸子「ではここで、カワイイボクのホラーな仲間とパンクな仲間を紹介しますね。小梅ちゃん、輝子ちゃんどうぞ!」

幸子父「L・O・V・E! LOVELY小梅!!!」

幸子母「オイ! オイ! オイ! 輝子ーーーヒ"ャ"ッ"ハ"ーーーッ"ッ"ッ"!!!」

幸子「……え?」

幸子父「LOVELY小梅……ん? し、しまった、高まりすぎて……」

幸子母「輝子ーーーヒ"ャ"ッ"ハ"ーーー……さ、幸子さん!? あ、ま、マスクを忘れ……」

幸子「お、おとう……おかあ……」

幸子父「……」

幸子母「……」

輝子「き、きてたのか!? リーダーの、ご両親……」

小梅「え、で、でも、どうして落ち込んでる……の?」

幸子「……すみません。ボクは帰ります」

輝子「え? か、帰るって……東京へ、か?」

小梅「ま、待って……」

智香「え? 3人がこっちへ向かってるって、今ですかっ?」

P「ああ。確かに2時間半もあればそっちに着くし、輝子と小梅も一緒だが、なにやら幸子の様子がおかしいらしい。俺もすぐに追いかけるが、迎えてやってくれないか?」

智香「わかりましたっ!」

~4時間後 シンデレラガールズ寮~


P「で、なにがあったんだ?」

智香「それがですね……幸子ちゃんのご両親、山梨のライブに来ておられたそうなんです」

P「ほう、そうだったのか」

智香「それはいいんですけどご両親、小梅ちゃんPと輝子ちゃんPだったみたいで……」

P「え?」

智香「それはもう、堂に入った応援ぶりだったそうでして……」

P「それは……」

智香「合流してから幸子ちゃんの家に行ったんですけど、建て増ししている部分に大量の小梅ちゃんグッズと輝子ちゃんグッズが……幸子ちゃんグッズは少しで……」

P「で、あの状態なわけか……」

幸子「……どうせボクなんか……」

輝子「り、リーダー……」

小梅「げ、元気出して……」

智香「幸子ちゃん、いつかはご両親に認めてもらえるようなアイドルになって喜んでもらいたいって思ってたから、そのご両親が同じユニットの他の娘のPさんだってのが、そうとうショックだったみたいで……」

P「なるほどな。しかしまあ、それなら大丈夫だろう」

智香「えっ!?」

P「ちょっと呼んできて欲しい娘がいるんだが、いいか? 智香」

智香「?」

五十嵐響子「幸子ちゃん!」

幸子「?」

本田未央「元気出しなよ、さっちー」

新田美波「ね」

幸子「あれ? 響子さんに未央さんに美波さん。それに……」

藤原肇「気持ち、わかりますから」

幸子「え?」

響子「私の弟も、最初は『お姉ちゃんがいちばん』とか言ってたのに、最近は『卯月ちゃん最高』とか『美穂ちゃんみたいなお姉ちゃんが欲しい』とか言うんですよ!」

幸子「そ、そうなんですか!?」

未央「私のお兄ちゃんもさ、しぶりんとかしまむーみたいな妹の方が可愛くていいとか、言うんだよ!?。アタシにむかって!!」

幸子「えー。直にですか?」

美波「せっかく私がライブ中に投げキッスとかしてあげても、ああいうのはファンにしろよって言われたりね……」

幸子「なんか贅沢というか……」

肇「私のおじいちゃんもですね。この間、一緒にテレビにでておったあの娘、可愛いのう……なんといったかな? 陶芸に興味はないのかな? なんならわしが手取り足取り……とか言ってきて」

幸子「そ、そういうものなんですか?」

https://i.imgur.com/8drz5cw.jpg
※ちなみに肇ちゃんのお爺さんが聞いてきたアイドルとは財前時子様です

響子「まあでも。いくら身内だからって、私だけを応援されたりファンであったりされても困ることもあると思うんですよ」

幸子「え?」

未央「家族だから、いいトコも悪いトコもわかってくれてるのは当然じゃない? そういうのを認めてもらえてたら、後は他のアイドルも応援してあげて欲しいかなーとか思ったりね」

幸子「はあ……」

美波「みんな魅力的だしね。それに」

幸子「なんですか?」

美波「私の父なんか、アイドルのお仕事に批判的で水着のお仕事とか『けしからん』とか言う割には、そのポスターが玄関に家に飾ってあったり」

幸子「それはちょっと、恥ずかしいですね……」

美波「そういうのされないの、むしろいいことよ」

幸子「確かに……反対されないっということは、活動を認めてもらえてるわけですし……しかもライブに来ているってことは、アイドルのことを理解してもらったうえで、ですもんね」

肇「おじいちゃんも『清楚じゃのう……可憐じゃのう……可愛らしいのう』って、床の間にポスターを飾ってずっと言ってて、それがもし自分のことだったら嬉しいけれどそれ以上に恥ずかしいですよ?」

幸子「そうですね、それはちょっと引きますよね……」

https://i.imgur.com/AoZxThs.jpg
※念のため繰り返しますが肇ちゃんのお爺さんが推してるアイドルは財前時子様です

響子「それにね」

幸子「え?」

未央「いくら他の娘の担当Pでも」

幸子「え、ええ」

美波「自分の家族は、一番の理解者なんだから」

幸子「そういう……ものでしょうか」

肇「うん。まあ……たぶんね」

幸子「ふふっ。そうですか」

幸子父「一番、見られてはならぬところを幸子に見られてしまった……」

幸子母「高まりすぎと、気の緩みがありましたわね……」

幸子父「自分以外の、しかも同じユニットのアイドルを親が推していると知った幸子は……さぞやショックを受けておるだろうな……」

幸子母「どういたしましょう、あなた……」

ファン1「ん? ありゃりゃ、いつぞやのオジサンとオバサンじゃん。どうしたの?」

幸子父「おお、あなたは……」

幸子は「実は……」

ファン1「へ? じゃあオジサンとオバサン、輿水幸子の本当のお父さんとお母さんなワケっすか?」

幸子父「うむ、左様」

幸子母「最初は幸子さんにわからないよう、陰ながら応援していたのですが……」

ファン1「そりゃオドロキだけど……ははあ。大方、別に推したいアイドルができた、ってトコっしょ?」

幸子父「うむ……左様」

幸子母「なんともお恥ずかしい話でして……」

ファン1「いやー……別に恥ずかしい話じゃないっしょ?」

幸子父「? それは、如何なる意味ですかな?」

ファン1「家族を想う気持ちと、推しを応援したい気持ちはまた別モンしょ?」

幸子母「それは……そうなのでしょうか?」

ファン1「ジッサイ、幸子ちゃんにアイドルとして成功して欲しい、トップアイドルになって欲しいって気持ちは変わんないっしょ?」

幸子父「無論ですな! まあできれば小梅ちゃんと一緒に頂点獲って欲しいですが」

ファン1「そんなもんっすよ」

幸子母「ですが、その……幸子さんはきっと、ショックを……」

ファン1「……しゃーないっすね」

幸子「え? 未央さんのお兄さん、ボクの担当Pなんですか? でも凛さんや卯月さんを妹にしたいって話じゃありませんでしたっけ?」

未央「んー……というかね、アイドルが好きなんだよね。だから私応援して後押ししてくれるし、でもしぶりんやしまむーを身近に感じたいし、好きなアイドルは別にいて」

幸子「なるほど……ええ、今ならボクもなんとなくわかりますよ。きっとボクのおとうさ……父や母と同じなんでしょうね」

未央「それでね。えっと……良かったらだけど、ちょっと会ってみてあげてくんない?」

幸子「え?」

未央「な、なんかさ、今までは私が冗談でも『皿洗い手伝ってくれたら、さっちーに会わせてあげよっか?』とか言っても『妹のコネで推しに会いたくなんかないね』って言ってたのに、急にその……」

幸子「あ、いいですよ。というかちょっとお話聞きたいですね」

未央「え?」

幸子「家族を応援するのと、担当を推すのとはどう違うのか……とかですかね」

未央「うんうん! 聞いてみるといいよ。明後日はドームで千秋楽だから、明日!」

未央「あ、来た来た。おーい……あれ?」

幸子「はじめまし……えっ!? お父様!? お母様!?」

幸子父「幸子……なんと言っていいか……」

幸子母「今まで黙って、輝子ちゃんや小梅ちゃんを応援していましたこと、ゆるしてくださいまし……」

ファン1「ま、とはいえさ、2人とも元々は幸子ちゃんを応援していて、小梅ちゃんや輝子ちゃんを知ったんだとさ」

未央「お兄ちゃん、この2人ってもしかして……」

ファン1→未央兄「幸子ちゃんのお父さんとお母さんだってさ」

未央「ええーーっ!? なんでお2人がお兄ちゃんと?」

未央兄「まあちょっとした知り合いで。でさ、出会った時は2人とも幸子Pだったんだぜ? まあそこから、別推しになったわけだけど、2人とも。それでさ」

幸子「わかってますよ」

未央兄「へ?」

幸子「もうわかりました。それよりも……というかボクの担当じゃなくてちょっと安心もしてますし……」

未央「あはは。そうだね」

未央兄「?」

幸子「お父様もお母様も、いまや立派なプロデューサーだっていうのが、嬉しいです」

幸子父「なんと……では、ゆるしてくれるのか?」

幸子「ずっとライブにも来てくださってたんでしょう?」

幸子母「ええ、ずっと……」

幸子「ボクはそれで十分です。いいえ、報われました……」

幸子父「おお、幸子よ……」

幸子母「さすがは幸子さんですことよ……」

幸子「お父様……お母様……」

小梅「幸子ちゃん……」

輝子「良かったな……」

未央「急に『会わせろ』って言うからなにかと思ったけど、こういうことか」

未央兄「ま、な。あ、それはそれとしてせっかくなんで自分、サインいっすか?」

幸子「え? あ、はい。いつも応援ありがとうございますね」

未央兄「明日の千秋楽東京ドームライブ、楽しみにしてますから」

幸子父「おお、それそれ」

幸子母「私たちも現地ですのよ。がんばつてくださいましね、幸子さん」

幸子「はい!!!」

~翌日 カワイイボクと142'sツアーライブ千秋楽 東京ドーム~


幸子「ダンボールで作ったツームストーン~♪ ああ、プラン9♪」

未央兄・幸子父・幸子母「さちこー!」

小梅「UFOはまるでホイールキャップ~♪ ああ、フロム♪」

未央兄・幸子父・幸子母「こうめー!」

輝子「ドラキュラの背後をいつも通る白い車~♪ ああ、アウタースペース♪」

未央兄・幸子父・幸子母「しょうこー!」

智香「良かったですね、幸子ちゃん元気になってっ☆」

P「ほんとにな。いや、むしろ今までで一番の笑顔かも知れんぞ。ご両親に認めてもらえ、ライブで盛り上がってもらえたのが、嬉しかったみたいだな」

智香「ご両親、関係者席にご招待したのに、お断りになりましたね」

未央「ウチの兄貴もね」

P「担当の推しとしての信念……かもな。俺も負けてられないな」

智香「えっ?」

P「担当プロデューサーとして、な」

智香「あはははっ☆ そうですねっ!」

未央「これからも私たちを、よろしくお願いしますね」

幸子小梅輝子「プラン9・フロム・アウタースペース~~~♪♪♪」

未央兄・幸子父・幸子母「FuFu!FuwaFuwa! FuFu!FuwaFuwa! FuFu!FuwaFuwa!」

~東京ドームライブ後~


肇祖父「の、のう肇や。聞くところによると、シンデレラガールズのライブには関係者席というのがあると聞いたのじゃがのう……」

肇「……知りません」

肇祖父「この時子ちゃんカラーペンラを、ろくろで鍛えたこの腕でバルログしたいんじゃがのう……」

肇「知りません!」

https://i.imgur.com/T6NaMrU.jpg
※ちなみに肇ちゃんのおじいちゃんは次期人間国宝筆頭の現代の名陶工です(向かって右)

以上で終わりです。おつきあいいただきまして、ありがとうございます。

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