マギアレコード-魔法少女まどか☆マギカ外伝×ラブライブ-Shool Idol Project
私の好きな作品二つを組み合わせて自由自在に書いた二次創作です。
1年前からSSにというものにハマっていろんな作品を読み漁ってきましたが、投稿するのは今回が初めてです。
そのためワードセンスや文章のまとめ方が上手く出来ていないかもしれませんが、温かく見守ってくれると助かります。
多少のキャラ崩壊があるかもしれませんが、両方とも好きな方に見ていただけると嬉しいです。
○原作と異なる設定
・時間軸としてはマギレコ(ゲーム版もアニメ版も同じ)とラブライブ(アニメ)でμ’sが活動していた高校時代を並行世界とした物語です。
・そのため穂乃果と鶴乃(高2)、いろはとマミと雪穂(中3)がそれぞれ同い年という事になります。
・マギレコのメインストーリーにはマミがいろはを襲ってマギウスに雇われたり、杏子がミザリーウォーター(フクロウ幸運水)を飲んだりしてますが今回、見滝原の魔法少女は序盤では一切出番がなく、最終章あたりから登場させる予定です。
・μ'sが完成するよりも先に廃校の危機を解決してしまっているため、グループを結成する動機が変わります。
・神浜市が日本のどこに存在するか作中では具体的に語られてはいなかったが、雰囲気からして横浜っぽいので神奈川県という事になってます。
・ラブライブではサンシャイン以降、マギレコでは2部以降の世代に追加されたキャラは登場しませんのでご了承ください
以上の設定を踏まえて楽しんでいただけたらと思います。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1598917182
―やあやあ、知ってる?
――聞いたことある?
『「魔法少女のそのウワサ!!」』
―――魔法少女?
――おとぎ話?
―違うよ違うよ
―――本当の話
――白い妖精と契約して
―何でもたった一つだけ願いを叶えてもらう
――その代わり、魔法少女に任命されて
―――魔女退治をされられるの
――魔女っていい魔女?
―――悪い魔女?
―もちのろんろん
―――悪い魔女!
――人間を捕まえて
―お菓子みたいにボリボリバリバリ
―――食べちゃうの!
――そんなのと戦わなきゃいけないの?
―――そうだよ
―だから魔法少女は命がけ
―魔法少女なんて絶対イヤ!
――怖いのも痛いのも大嫌い!!
――でもね、だけどね
―――その代わり
―何でも願いが叶っちゃう!!
――何でもって….
―――何でも!?
「『なんでも!!』」
―ひとつだけなら叶えてくれる
――それなら命だって懸けられちゃう!
『勉強しなくても100点取りたい!』
『たくさん食べても太らないカラダ!』
―――あ~あぁ….
―私も魔法少女になりたいな~
第一話「妹の修学旅行」
――7月某日、夏休み――
穂乃果「雪穂さ、明日から修学旅行って言ってたけど、どこに行くの?」
雪穂「言ってなかったっけ?隣の神奈川県にある神浜市だよ」
穂乃果「穂乃果も行った事ないからよく知らないけど、うちの生徒の間でも結構話題になってて」
穂乃果「一度は行ってみたいって思ってるよ」
雪穂「まあ調べた所、電車ならそんな遠くないみたいだから、たまの休みに行ってみたら?」
雪穂「そろそろ私明日の準備して寝るから、お姉ちゃんも部活に遅れないようにね」
穂乃果「うん、おやすみ」
――翌日――
必要な荷物を揃えた所で適当に朝食を済ませて朝早くから出発
雪穂「それじゃあ、いつもより早いけど、行ってきます!」
穂乃果の母「行ってらっしゃい、気を付けてね」
穂乃果「♪おみやげよろしく~」
そっちは部活で大変なはずなのに、相変わらずお姉ちゃんときたらのんきでいいな
中学校の校庭に集合して7時半にバスが来て出発予定
人生で一度も神浜なんて行った事ないからどんな街かも知らない
幸い亜里沙とは同じクラス、班も一緒で助かった
――バスの中――
雪穂「亜里沙って確か小学校の頃、神浜住んでたんだっけ」
亜里沙「うん、でもお父さんもお母さんも死んじゃったから「つつじの家」っていう施設で暮らしてたんだよ」
雪穂「それじゃあ神浜でおすすめのスポットとかも知ってるの?」
亜里沙「一応ロシアから日本に来て6年間住んでたからその辺の街並みは詳しいよ」
雪穂「それじゃあ街案内よろしくね」
―――修学旅行1日目―――
うちらの班は先生が同伴してないけど
自由にスケジュール立てて好きなように歩きまわれるから都合がいい
――目的地その1――
『参京区』
・水徳商店街で買い物
雪穂「商店街って言っても特に観光するものなくない?」
同じ班の生徒A「確かに、食べたりお土産買うぐらいでしょ」
同じ班の生徒B「観光よりも先にお土産買うとか順序おかしくない?」
亜里沙「参京区なんてこんなもんだよ」
同じ班の生徒C「しょうがないね、次行きましょう」
雪穂「適当に何か立ち食いする?」
生徒A「おっ!あんな所に屋台があるよ」
生徒C「なになに?幻の水が無料で飲めるって!?」
雪穂「何それ?面白そうじゃん!行ってみようよ」
最近この街で話題の「フクロウ印の給水屋」という名前で自転車で移動販売しているらしく
参京名物と言われている「フクロウ幸運水(通称ミザリーウォーター)」という透明な瓶に入った綺麗な水で
私たちの班はメンバー全員でその幻の水を飲んだ
亜里沙「ハラショー!こんなおいしい水、昔の神浜にはなかったよ」
雪穂「うちの水道水より数百倍うまいよ!」
生徒B「いろ○すとか桃の天○水とは別格だね」
生徒A「ただで飲むのがもったいないぐらいだよ」
生徒C「こうなったら、おかわりください!」
屋台のおじさん「ごめんなお嬢ちゃん、うちの水は一日一人一杯までなんだよ」
生徒C「ちぇっ!ケチくさいな」
雪穂「1杯でもただでくれたんだから文句言わないの!」
生徒C「ごめんなさい」
亜里沙「でも何で一日一杯なの?」
屋台のおじさん「一人でも多く、いろんな人に飲んでこの水の素晴らしさを知ってもらいたいんじゃ」
雪穂「ありがとうございました、すっごく美味しかったです!」
屋台のおじさん「まあ機会があればまた明日来なさい」
まだ何一つ観光出来てないけど、これはこれでいい物が見れた
屋台の前で5人揃って瓶を持って、おじさんに写真を撮ってもらった
さて、さっそくお腹も空いてきた所で次の場所に向かう
――目的地その2――
『北養区』
・洋食レストラン「ウォールナッツ」で早めの昼食を取る
まなか「いらっしゃいませ!5名様でよろしいでしょうか?」
雪穂「はい」
まなか「それではお席の方までご案内します」
私たちは奥のテーブルに座る
それぞれ好きなメニューを頼んで料理を待つ
生徒B「何か店員にしちゃずいぶん幼いような」
生徒A「バイトにしてもなんか子供っぽいというか」
雪穂「中学生でもバイトは出来ないでしょ」
生徒C「そういう雪穂だってたまに店番手伝ってるくせに」
雪穂「まあね、一応自分の家だから店番も家族の特権だよ」
亜里沙「でも確かにあの子、うちらと同じ中学生ぐらいに見えるよね」
何気ない会話をしているとさっそく頼んだものが全員分、順番に回ってきた
ウェイトレスA「お待たせいたしました!こちらウォールナッツ特製オムライスになります」
亜里沙が頼んだ当店の名物料理が届く
亜里沙「いただきま~す」モグッ
亜里沙「ハラショー!日本に来て初めてだよ」
生徒A「こんな美味しそうなオムライス、ロシアにもなかったんだね」
まなか「お待たせしました、こちらウォールナッツ特製ハンバーグセット(A注文)とナポリタン(雪穂注文)とペペロンチーノ(C注文)とウォールナッツ特製パフェ(B注文)になります」
一同「いっただきまーす!」
雪穂「てかBちゃん、いきなりデザートとか」
生徒B「私全然お腹空いてないから」
生徒B「今夜ホテルのバイキングでいっぱい食べる予定だから今は軽くしとこうと思って」
生徒A「あの~すいません!」
まなか「はい、どうかいたしましたか?」
生徒A「忙しい所ごめんなさい」
生徒C「あなたも中学生?」
生徒B「Cちゃん、いきなり歳聞くの失礼だよ」
まなか「そうなんです、客観的に見てもこんなお子ちゃまが飲食店で働いてるのは不自然ですよね?」
雪穂「アルバイトですか?」
まなか「いえ、私がこの店の店長を務める胡桃まなかです」
雪穂「この歳から店長やってるんですか!?」
亜里沙「ハラショー!これが噂の子供店長」
生徒A「それはそれで驚いたよ」
雪穂「私たちは今日、東京から修学旅行に来た神田女学園のものです」
まなか「そうだったんですか、修学旅行って事は3年生」
まなか「私より1つ上ですね」
生徒B「マジで!?中2で店長とかうちらとは住む世界が違うじゃん」
まなか「うちの父がここのオーナーなんですけど、今は修行で海外に行ってて」
まなか「母がオーナー代理で私が店長としてこのお店を守ってるんです」
雪穂「そうなんだ、私たちより後輩なのに偉いね」
亜里沙「中学生でお店を仕切ってるなんてすごいよ」
雪穂「実は私も実家が和菓子屋やってて」
まなか「和菓子屋さんですか!それもすごいですね」
雪穂「いやいや、こんな広くておしゃれなレストランに比べたらうちのちっぽけな店なんて大した事ないよ」
生徒C「ちょっと雪穂、その言い方じゃお父さんお母さんに失礼だよ!」
生徒B「何十年も前から祖父の代から継がれている老舗なんでしょ?」
雪穂「一応そうだけど」
まなか「長くお店続けてる方がすごいよ、うちなんて7年前にオープンしたばっかりの新店だから」
雪穂「まなかちゃんは将来、このお店を継ごうとか考えてるの?」
まなか「一応見習いとしては、親が生きてるうちはオーナーの権利を譲らないって言われてるんで」
雪穂「私はとりあえず大学まで行って、就職出来なかったらもしもの時は継ごうかな?程度に考えてる」
まなか「でも今はまだ中学生なので、学生としての生活を楽しむことが一番です」
雪穂「そうだね、お互い頑張ろう」
しばらく食べていると
『23』
何やら数字の書かれた謎の紙が落ちてきた
亜里沙「なんか落ちてきた!」
雪穂「何だろう?一体」
生徒B「なんか数字書いてあるけどこれ」
生徒C「他のお客さんもこっち見てるよ」
生徒A「私たちの所だけだから、とりあえず拾ってどっかで捨てよう」
一体何が起きたのかよく分からないけど
中学生の看板娘同士、仲良く会話も弾んで
昼食を食べ終わった後、私たちは次の目的地に向かう
――目的地その3――
『水名区』
ここはかつての城下町で、歴史を感じさせる古い街並みが残る地区。
古くから「水名の女子は格式と伝統を重んじ、歴史と土地に恥じない立派な女子になるよう努めるべき」という風習がある。
・水名美術館で日本刀の鑑賞
生徒A「見てみて!」
雪穂「何?」
生徒A「あそこに貼ってあるポスター、あれさゆさゆじゃん!」
雪穂「さゆさゆ?」
亜里沙「誰?」
生徒B「神浜のご当地アイドル、史乃沙優希だよ」
生徒C「今は全国的に有名なタレントだけど」
生徒A「って二人とも最近のアイドルとかは知らないか」
雪穂「あんまり興味ないからね」
生徒B「それでそのさゆさゆってアイドルが地元を紹介して」
生徒C「なんでも日本刀マニアらしくて、昔からの趣味でよくこの美術館に通ってたんだって」
生徒A「それでアイドルになってからもプライベートでよくここに来てて」
生徒B「彼女が芸能人だって気付いた美術館のスタッフが彼女の事務所に仕事の依頼をかけて」
生徒A「それでうちの美術館を宣伝して欲しいって頼まれて」
生徒C「結果その仕事が成功して、元々時代劇とか剣に興味なかった人たちもこの美術館にハマって」
生徒B「それで今じゃ客足が増えすぎて、この美術館も予約する人が多くなって」
生徒C「当日入るのは難しいくらいなんだって」
雪穂「それじゃあ私たち、今日運がよかったね」
亜里沙「あの水のおかげかな?」
雪穂「まさか?(笑)ありえないよ」
2時間ぐらいかけて一通り、何種類もの日本刀を見て回り
館内に置いてあるテレビにはそのさゆさゆってアイドルが地元のロケでこの美術館に来た時の番組を収録したビデオが繰り返し再生されている
雪穂「へぇ~なかなか可愛いじゃん」
生徒「でしょ?でしょ!」
雪穂「うちのお姉ちゃんも亜里沙のお姉ちゃんもスクールアイドルやってるんだけどね」
生徒B「スクールアイドル?」
亜里沙「学園内で活動しているアイドル研究部の部員の中で結成されたアイドルだよ」
生徒C「スクールアイドルっていうと「A-RISE」ぐらいしか知らないな」
生徒A「あの人たちもすごいよね」
『20』
さっきから1時間ペースで同じような紙が何度も落ちてくる
しかも一度に5枚も
生徒A「何かさっきから私たちの前にばっかり落ちてくるけど」
生徒B「場所を変えてもしつこく降ってくる」
生徒C「なんか気持ち悪いよね」
雪穂「どうせ誰かのいたずらでしょ?」
亜里沙「誰かに狙われているとかないよね?」
生徒A「もし私たちの後を付けてくるような不審者がいたら通報しよう」
雪穂「とりあえずホテルに着くまで問題なければいいけど」
このままじゃ他のお客さんにも迷惑かかるから美術館を出て、私たちは次の観光地へ向かった
・水名神社で参拝
さっきから不吉な事ばかり起きるので
私たちは神社に行って厄除けのお守りを買う
雪穂「根拠はないけど、人間じゃなくて何かに呪われてるって可能性も考えられるから」
雪穂「それならこのお守りを買って除霊しよう」
生徒A「私はやっぱり人間の仕業だと思うんだけど」
生徒B「雪穂がそういうならそれも信憑性があるよ」
生徒C「それより亜里沙が何か絵馬買いに行って何か書いてるけど」
私たちは特に今会いたい人とか恋しいものはないから
絵馬は必要ないんだけど、亜里沙は昔両親亡くしてるから書きたい気持ちも分かるんだ
亜里沙「2つも買っちゃった、1枚目はこれ」
亜里沙の絵馬『ロシアのおばあちゃんに会えますように』
雪穂「亜里沙のおばあちゃんは今でも生きてるじゃん」
亜里沙「でも、私たち年に1回しかロシアに帰って、おばあちゃんに会う事が出来ないんだ」
雪穂「まあ場合によっては忙しくて会えない時もあるから仕方ないか」
雪穂「それでもう1枚は?」
亜里沙の絵馬『天国のお父さんとお母さんに会いたい』
雪穂「あそこにルールが書いてあるけど、絵馬には1枚に付き一人しか書いちゃいけないんだって」
亜里沙「それじゃあ両親にはもう会えなくなっちゃうの?」
雪穂「まあ仮に分けて書いた所でその願い事が本当に叶うかどうかも分からないけど」
亜里沙「それじゃあこれって占いとかおみくじと一緒なの?」
雪穂「私はそういった都市伝説とかは信じてないからどうでもいいんだけど」
雪穂「死んだ人よりも今生きてる人に会おうって考えた方がいいよ、生きてるうちにね」
『19』
生徒C「また降ってきたよ」
生徒A「やっぱりストーカーでもいるんじゃない?」
生徒B「わざわざこんな長距離まで追っかけてくるかな?」
雪穂「何かこのまま外歩くも怖くなってきたから」
雪穂「ちょっと早いけど、ホテルに行こう!」
亜里沙「えぇ?だってまだ集合時間まであと2時間残ってるよ」
雪穂「今はそれどころじゃないよ」
生徒A「雪穂の言う通り、何か起きてからじゃ遅いんだよ!」
生徒B「私だってまだ観光続けたかったけど、しょうがないよ」
生徒C「ホテル戻って先生にちゃんと事情話しましょう」
実はこの後、水名区全体を歩き回って
水名区町おこし委員会が主催する「水名スタンプラリー」というイベントが期間限定で毎日開催されている
私たちもその町おこしに参加してカードに書かれた各スポットを巡ってスタンプを集める予定だったけど
あまり人気のない所まで行くと、本当に事件に巻き込まれてしまうリスクがあるから
今日は一旦諦めて、またいつかプライベートでここに来ようと思ってる
というわけで予定よりも早く、他の班よりも一足先にホテルへ向かう
――宿泊先で合流――
今回のリゾートホテル「グランドニューミズナ」
夕方5時にここで集合するはずだったけど
誰よりも早く着いてしまった私たちは退屈で外は暑いし、何よりストーカーがいるかもしれないから
先に中のロビーで椅子に座って2時間ほど待機
こうして待っている間にも繰り返し紙が落ちてきて
とうとうホテルの中まで尾行してきたか?
不安を抱えながら2時間後、他の生徒も先生も合流して
チェックインを済ませて、それぞれ指定された各部屋に入る
私たち生徒の部屋は全学年、全クラス、全て4階にある
1クラスにつき5人ずつ1つの部屋に泊まるルールで
私の泊まる部屋は401号室
ここで亜里沙とも班で一緒だった3人とも部屋がバラバラになってしまうのが寂しいけど
とりあえず荷物を降ろして、私服に着替えて
私たちは食堂に行って夕食を食べる事に
雪穂「やっぱりすごい!リゾートホテルというだけあって夕飯は和と洋を兼ね揃えたバイキングが食べられるなんて….」
雪穂「こんなに豪勢な修学旅行なんてないよ」
亜里沙「ハラショー!ロシア料理も好きだけど、日本の料理も他の国の洋食もおいしい!」
『16』
雪穂「どうしてこの期に及んであの紙が落ちてくるかね?」
生徒A「なんかここまで続くと食欲も失せるよ」
とりあえず落ちてくる紙は気にせず、私は好きなだけお腹いっぱい食べまくる
そして食べ終わって部屋に戻り、入浴の準備をする
1クラスずつ時間が分けられてるけど、1組の私たちは一番乗りでお風呂に入る事になった
相変わらず入浴中にも場所を選ぶ事を知らずにあの紙は落ちてきた
水面には大量の紙が溜まっている
しかし浴室全体を見渡しても、この時間は学校が大浴場を貸し切っているため
他の宿泊客の姿はなかった
ここまで来るとやっぱり人間では不可能だとすら思えてくる
予定通り、入浴を済ませて部屋に戻る
その後もテレビ見て遊んだりしてたけど、立て続けにあの紙は落ちてくる
しかも私だけじゃなくて他のルームメイトも同じ目に遭っているらしい
そもそもこの時間からは「各部屋施錠厳守!」と先生から注意されているので
窓も全て閉め切って、部屋はエアコンしかつけてない
もはやストーカーじゃなくて何かしらの霊が憑りついてしまったんだろう
さすがに不愉快になってきた私たちは消灯時間よりも早めに布団を敷いて
電気を消して全員寝る事にした
―――修学旅行2日目―――
他のみんなは先に起きているみたいで
何やら朝っぱらから騒がしくて目が覚めてしまった
雪穂「おはよう….って一体何なの!?」
目が覚めると、部屋には何十枚もの紙が散らばっていた
生徒N「あぁ、高坂さんも起きてたの?」
生徒Q「見てよこれ」
私だけじゃなく他の子の足元にも落ちていた
部屋にいる生徒はみんな、外で一緒だった班のメンバーとは違うけど
きっと他の班の子も誰かしら、昨日同じ水を飲んだかもしれない
雪穂「とりあえず気持ち悪いから早く片付けて、朝ごはん食べにいこう」
生徒N「うん、そうしよう」
昨日と同じ1階の食堂で朝食バイキングを食べる
昨夜と同様に、食事中にもお構いなく落ちてきたけど
今はとにかく腹ペコなのでパンでもご飯でもおかずでも食べまくる
もちろん後で拾って片付けたから大丈夫だよ
そして9時になったらフロントに集合してバスの乗り出発
この日は班分けとかはなく、学校全体で同じ場所を周る予定なので
昨日みたいな自由行動は出来ないけど
でも3年生全員でひとつの街を観光するのもそれは楽しい
午前中は栄区のいろんな名所を歩き回る事になった
まずは現在廃墟となっている「神浜記録博物館」(通称:記録ミュージアム)
本来なら一般の者は中に入れないが、特別に事前に許可をもらっているため
入館して1階のみ見る事が出来たが
どれも古びており、字もにじんでいて読めない
だけどとても神浜の歴史を感じられる物だった
次に繁華街へ移動して、そこで水族館に入った
いろんな魚や甲殻類など海の生き物をガラス越しに見て癒されて
そして屋外ではイルカのショーをやっていた
その後は近くの中華街に行き、学校が事前に予約していた本格中華料理店に全員で入った
ただでさえ広いお店ではあるけど、私たち生徒は特別な部屋に案内され
先生たちは一般のお客さんと同じ部屋で食事をする事になった
生徒一同「わーすごく広くておしゃれ!」
生徒D「なんか、生徒と職員で部屋分けられてるみたいだけど」
生徒E「私たちだけこんな特等席でいいのかしら?」
雪穂「私たちじゃとても人数が多すぎて、一般の客室じゃあふれちゃうからね」
亜里沙「なんだかVIPになった気分」
全員で浮かれていると、コース形式で料理がそれぞれのテーブルに次々と置かれていく
生徒一同「いただきます!」
雪穂「この桃饅頭、中の餡子が柔らかくて口の中で溶けて美味しい!」
亜里沙「どれどれ?」
雪穂「もうね、うちの「ほむまん」とはえらい違いだよ」
亜里沙「穂むら饅頭もなかなかおいしいけど、ここの中華料理は別格だね」
こうしてくつろいで餃子とか小籠包、北京ダックなど
ゆっくり食べていると….突然、私たちの目の前に謎の触手が現れた
生徒一同「きゃああああああああ!!!」
その数、何十本も出て来て生徒たち何十名かが捕まって異次元へと引きずりこまれてしまった
せっかく普段なかなか食べられないような逸品を食べられる機会に
これじゃあもう中華どころか、昼食どころじゃないよ
先生に報告しに行こうと思ったその時…..
雪穂「キャーっ!!」
亜里沙「嫌だ!離してえええ!!」
―――一方その頃、穂乃果たちのアイドル研究部は―――
―PM 2:00
休校日でも校門は開いていて、私たちは昼間からいつもの屋上で歌とダンスの特訓に海未ちゃん考案の筋トレを繰り返す
―prrr
レッスンの途中、絵里ちゃんのスマホに何やら電話がかかっているので一旦休憩
絵里(こんな時に誰よ?)
―ピッ
絵里「もしもし?」
亜里沙の担任「お忙しいところ失礼します」
亜里沙の担任「私、神田女学園の教師をやっておりまして、絢瀬さんの担任を務めている加賀美と申します」
絵里「加賀美先生ですか!どうも、こんにちは」
絵里「妹の亜里沙がいつもお世話になります」
加賀美先生「いえ、とんでもありません」
絵里「それでお話とは、うちの亜里沙に何か問題でも?」
加賀美先生「大変言いづらいのですが、修学旅行中の3年生から絢瀬さんを含む、うちのクラスの生徒で何名かが.....」
加賀美先生「本日の午前11時頃、栄区を観光してる時に突然行方がわからなくなってしまいました」
絵里「そんな、バカな….」
絵里「一体どういう事ですか!?」
加賀美先生「一応、生徒全員に何度も電話をかけて安否を確かめてみたんですが、絢瀬さんも他の生徒たちも音信不通という状況でございまして」
加賀美先生「残りの生徒たちはホテルに戻って待機、しばらく観光は断念する事になりました」
絵里「何か危ない事件に巻き込まれていないといいですが」
加賀美先生「このまま外には一歩も出ないよう我々教師たちも注意しております」
加賀美先生「ですが私たちでは解決出来そうにないので、警察に捜索願いを出す事にしました」
絵里「そうですか、1日でも早く見つかるようお願いします」
加賀美先生「このような事態が起きてしまい誠に申し訳ありません!」
絵里「別に先生方は何も悪くないですよ、あまり自分を責めないでください」
加賀美先生「ですが我々にも大人としての責任があるので、最善は尽くしていきたいと思います」
絵里「分かりました、私たち保護者にも何か出来る事があれば協力します」
加賀美先生「ありがとうございます」
絵里「それじゃあ今日の所はこれで失礼します」
-ガチャッ
亜里沙の失踪事件で頭がいっぱいになり、それどころじゃなくなった私はその日のレッスンをおひらきにした
絵里「いきなりで申し訳ないんだけど、今日はここで早退します」
穂乃果「絵里ちゃん?いきなりどうしたの?」
凛「ちょっと早くないかにゃー?」
にこ「何よ一人だけサボる気?」
絵里「違うわよ、今日に限ってなんか異常に具合が悪くなってきて」
穂乃果「そうだよにこちゃん、そういう言い方よくないよ」
にこ「絵里はともかく、サボりの常習犯のあんたが信用ならないわ」
穂乃果「穂乃果だってサボってないもん!」
海未「そこ!揉めないでください」
にこほの「ごめんなさい」
海未「仕方ないですね、分かりました」
絵里「ありがとう....海未...」
海未「今日のトレーニングはこれにて終了します、全員解散!」
希「えりちらしくないな、一体どうしたんやろ?」
ことり「特に具合が悪そうには見えないけど」
花陽「さっきまで元気にレッスンしてたよね?」
希「まあとにかく今はそっとしてあげてな」
絵里ちゃんは一目散に着替えて帰ってしまった
何があったのかよく分からないけど、家に帰ると両親が何やら慌てている様子
穂乃果「ただいま!ってどうしたの?」
穂乃果の父「さっき、雪穂の中学校から連絡あってな」
穂乃果の母「修学旅行中に神田女学園の生徒たちが突然行方不明になって」
父「先生も同じクラスの生徒たちも電話かけてみたらしいが繋がらなくてな」
穂乃果「嘘だよね?そんなの」
母「本当の所はよくわからないけど、先生の話では雪穂の姿が見えないって言ってたわ」
父「この前の家出とは訳が違う、今回は他の生徒も同じ目に遭っている」
穂乃果「ごめん、お父さん、お母さん」
穂乃果「私、今から神浜行ってくるよ」
父「何をバカな事言ってるんだ?これは雪穂に限った事じゃないだぞ」
母「そうよ、神浜では今大きな事件が起きているかもしれないのよ?」
穂乃果「狙われているのは女子中学生だか高校生だかわからないけど」
穂乃果「妹が危険な目に遭ってるというのに、部活なんか集中出来るわけないじゃん」
穂乃果「不安でもうそれどころじゃないんだよ、だから二人はここで待ってて」
父「まったくどこまでも頑固な奴だ」
母「頑固なのはお父さん譲りかもしれないね」
父「うるせえ!一言多いぞ」
母「何かあったら些細な事でも電話しなさい」
穂乃果「ありがとう、それじゃあ行ってきます」
元々は学校の存続のために廃校を阻止したくてキュウべぇと契約した私
魔法少女になってまだ3ヶ月、少しは慣れてきたけどまだ知らない事が多い
もしかしてだけどこれもおそらく魔女か使い魔の仕業だと思っている
雪穂は魔法少女じゃないけど、人間でも魔法少女でも関係なく学生が狙われている
さっきも何か絵里ちゃんの様子が変だったし、きっと妹の亜里沙ちゃんも魔女絡みの事件に遭っているはず
とりあえず制服のまま、着替えとかも持たずにスクールバッグのまま私は駅に向かう
--秋葉原駅--
ホームで電車を待ってる間に絵里ちゃんに電話して事情を聞いた
―prrr
穂乃果「もしもし、絵里ちゃん?今どこにいるの?」
絵里「もう神浜に着いてるけど」
穂乃果「いつの間に?さっきまで学校いたのにもう着いたの?早すぎるよ」
穂乃果「それより何か今日変だよ、どこか調子悪いの?」
絵里「ごめんなさい穂乃果、あなたもお父さんお母さんから話は聞いてると思うけど」
絵里「みんなの前では言いづらかった、実は亜里沙が….いや、神田女学園の生徒たちが失踪して他の生徒もホテルで待機させられている状況で」
穂乃果「やっぱり亜里沙ちゃんも行方不明か」
絵里「それってあなたの妹さんも?」
穂乃果「そうなんだよ、先生いわく雪穂と亜里沙ちゃんがいるE班のみんなが集合時間になっても戻ってこなくて」
穂乃果「先生方が電話しても繋がらないって、一応私もかけてみたんだけどね」
絵里「とりあえず穂乃果は家に帰ってて!」
穂乃果「どうして?」
絵里「魔法少女のあなたなら分かってると思うけど、これは魔女絡みの事件よ」
絵里「それに神浜市は魔法少女同士の敵対が昔から続いているのよ」
穂乃果「そんなに治安の悪い街なの?」
絵里「あくまでも魔法少女同士の話だけど、何も知らない新米のあなたが立ち入るのは危険すぎるわよ」
絵里「神浜市内にも東、西、中央とそれぞれテリトリーがあって、古くからの住民としてよそ者は街から追い出そうと容赦なく襲ってくる」
絵里「そんな連中ばかりよ、それがあの街のルール」
穂乃果「私も神浜行った事ないからどんな街か知らない、どんな人がいるのか知らない」
穂乃果「でもそんな魔法少女の在り方は間違ってるよ」
絵里「何でも綺麗事で解決出来るほど魔法少女の世界は甘くないわ」
絵里「あなたみたいな右も左もわからない子が神浜に足を踏み入れるなんて自殺行為よ」
絵里「それこそ狼の群れに迷い込む子羊、飛んで火に入る夏の虫」
絵里「あとはベテランの私でなんとかするから、あなたは妹さんが帰ってくるまで待っていなさい」
穂乃果「だったら尚更だよ!正義の魔法少女にベテランも新米も関係ない!」
穂乃果「一人の姉としてこんなの見過ごせるわけないじゃん」
絵里「まったく何かトラブルが起きる度に熱くなって人の話も聞かないで一人で突っ走る」
絵里「どこまでもバカでまっすぐな所、相変わらず穂乃果らしいわね」
穂乃果「えへへ、わがまま言っちゃってごめんね」
絵里「仕方ないわね、ただし今日は野宿する前提になるけどそれでもいいかしら?」
穂乃果「それじゃあ私、雪穂が止まってたホテルにしようかな?」
絵里「ホテルなんてそう当日中に泊まれるもんじゃないわ、泊まれても高くなるだけ」
穂乃果「それじゃあラブホテルとかは?」
絵里「従来のホテルより安いけど、うちらの年齢から考えて尚のこと泊めてもらえるわけがないわよ」
穂乃果「こりゃまいったな」
絵里「未成年、まして高校生なんて入店お断りよ」
穂乃果「そしたら誰かいい人見つけて、土下座して1日だけでも泊めてもらうのってダメ?」
絵里「旅番組のロケじゃあるまい」
穂乃果「でも野宿する勇気ないし、やっぱり帰ろうかな?」
絵里「いいわ、あなたの分だけでもホテル代奢ってあげるわよ」
穂乃果「それでいいの?」
絵里「私はそういうの強いから別に構わない、あなたの方が心配だから」
穂乃果「ありがとう、着いたらまた連絡するよ」
―ガチャッ
秋葉原から神浜なんて距離でいえば遠く感じるけど、電車なら思ってたよりそう遠くはなかった
ここからJR京浜東北線(大船行き)に乗れば1本で着いてしまうほど便利な路線の造りである
1日でも1時間でも早く妹を見つけるため、私は目的の電車に乗った
第二話「故郷、神浜に里帰リーチカ」
―――その頃、絵里は―――
―PM 3:30
絵里「約2年半ぶりに故郷に帰ってみたけど」
絵里「だいぶ変わり果てたわね」
昔はいろんなレジャー施設や建物がそびえ立っていたけど
私が音ノ木坂で過ごしているうちに今は街のほとんどが廃墟と化してしまった
見違えるほど荒れ果てた街並み、治安が悪いのは昔からだけど
今はより一層魔法少女同士の敵対関係が酷くなっている
例のホテルに向かって歩いていると、中学生くらいのピンク髪の女の子がこの街で傭兵として名を轟かしている金髪の少女に言いがかりをつけられている
噂の傭兵「おい!オマエさっき水飲んでたピンクの奴だよな?」
少女(怖い人に声掛けられてしまった…)
少女(よく見たらこの子、街に貼ってあった指名手配のポスターに載ってた要注意人物にそっくり)
少女「ちっ、違います!」
傭兵「ウソつけよ、オレもさっきそこで水飲んでたから知ってるぞ」
例の傭兵は私の妹にどこか似ている気がした
金髪なのはもちろん全く同じ声に聞こえる
でもうちの亜里沙はこんなに尖っていない
少女「あの…ごめんなさい!私、今急いでて」
傭兵「オマエ魔法少女だろ?」
少女「えっ?」
どうやらこの子たちも魔法少女みたいだけど
7年も魔法少女やっていて歳も遥かに上なこの私に敵う相手なんているわけがない
いてもせいぜい七海やちよ、和泉十七夜や希くらいのベテラン魔法少女に限る
傭兵「よそを出歩くならバレないように指輪ぐらい外しとけよ」
少女「すいません!私この街の者じゃないので、掟とかよく知らなくて」
傭兵「堂々と他人のテリトリーを荒らしに来た奴の発言とは思えねえな」
少女「本当に違うんです、そんなつもりさらさらないから」
傭兵「まあいいや、今回は見逃してやるよ」
少女「ありがとうございます」
傭兵「もちろんただでは帰らせねえぞ!」
少女「どうして?」
傭兵「オレの島に不法侵入した罰金として1000円払ったら帰してやる」
少女「ごめんなさい、私今財布持ってなくて」
傭兵「ウソついてんじゃねえ、だった中身見させてもらうぞ!(カバンを引ったくる)」
少女「もうやめてっ!(泣)」
傭兵「悔しかったらオレと勝負して取り返してみ…..痛てっ!(通りかかった魔法少女の攻撃を受ける)」
絵里「みっともない真似はやめなさい!」
傭兵「あ?誰だてめえ?よそ者が邪魔すんな!」
ハンマーを振り下ろしてくるが、私は華麗に避けて反撃
絵里「甘いわ!確かにあなたは魔法少女として強いけど、所詮ベテランの力には程遠いわね」
更には傭兵のハンマーを素手で受け止めた
傭兵「ウソだろ?これだけの魔翌力を込めてるのに….まるで効いてねえぞ」
絵里「今日の所は大目に見てあげるわ、でもこれからはそんな手荒な行動はやめなさい!」
傭兵「わかった….わかったからもう勘弁してくれ!」
観念した傭兵はピンクの髪の少女にカバンを返した
傭兵「ちぇっ….もうオマエに用はない、とっとと帰れ!」
傭兵「二度と来るな、次ここに来たらその時は覚えとけ!」
絵里「怪我しなくてよかったわね、私が抑えているうちに逃げなさい!」
少女「ありがとうございました!」
傭兵「オマエ一体何者なんだ?」
絵里「名乗るほどの者ではないわ、それよりどうしてこんなバカな事やってるの?」
傭兵「オマエには関係ねえだろ、オレには帰る場所がない、だから生きるためには飯とか金が必要なんだ!」
傭兵「どんな理由でもいいから適当に言いがかりつけて奪い取ろうと思って…」
傭兵「でももういいよ、生活に苦しんでないオマエらにはわかんねーよ」
絵里「たとえどんな理由があってもあなたのしてる事は立派な犯罪よ!」
絵里「人に迷惑かけていい理由にはならない、でも言いたい事があるなら聞くわ」
傭兵「オレは幼い頃に両親が死んじまった、魔女に殺されたんだ!」
傭兵「どいつがやったか知らねえけど、知らない以上は無差別にでも片っ端から魔女をぶっ潰して仇を取るためにオレは魔法少女になったんだ!」
絵里「私もあなたぐらいに幼い頃、飛行機の事故で両親を亡くしたの」
絵里「私は軽い怪我で助かった、でも妹は生きていたけど植物状態で意識を取り戻すのに何年かかるか分からなくて….」
絵里「妹の病気を治すために魔法少女になったのよ」
傭兵「そうだったのか、ごめんな襲ったりして…オマエも苦労してたんだな」
絵里「その妹も今は中学3年生で、昨日から修学旅行で神浜に来て….そして今日行方不明になっちゃったのよ」
少女「それは私も一緒です!」
絵里「あなたまだいたの?まあいいわ、一人じゃ危ないし家まで送っていってあげるわよ」
少女「すいません、ご迷惑をおかけして」
絵里「別にいいわ、それよりあなたも一緒ってどういう事?」
少女「最近の事なんですが、実は私には4歳下の妹がいてまだ小学生なんだけど」
少女「生まれつき難病にかかっていて今の医療じゃ助かる保証がなくて、早いうちに妹の病気を治したくてキュウべぇにお願いしたんです!」
少女「そしたら約束通り退院出来たけど、それから数日経ったある日…..」
少女「突然妹が行方不明になって、私以外に両親と妹の近くにいた人たちは誰一人として妹の事を覚えていないんです
少女「それで今はこの街に失踪した妹を探してるんです」
絵里「そうだったのね、あなたの家族は生きてるの?」
少女「一応生きてはいます」
少女「しかし私の両親は今年の春から海外に転勤して1年間滞在する予定で家には私一人しかいません」
少女「来年には帰ってくる予定なんですが、親がいないのは私も同じです」
絵里「生きてるだけまだ幸せよ、いつか帰ってくるわけだし」
傭兵「とりあえずオレもう行くわ、ぐだぐだと暗い話はごめんだ!」
と言い残して傭兵は立ち去った
少女「あの、助けてくれてありがとうございます。せめてお名前だけでも」
絵里「絢瀬絵里よ、昔は神浜で暮らしていたけど、今は隣の東京都千代田区に住んでいるわ」
絵里「それで秋葉原の「国立音ノ木坂学院」で生徒会長を務める高校3年生よ」
少女「ベテランの魔法少女と聞いて通りで強くて、しかも国立高校の生徒会長までやってるなんて、とてつもない威厳を感じます!」
絵里「な~に、大げさよ」
少女「環いろはって言います!宝崎に住んでいて3月まで地元の中学に通っていたんですが….」
いろは「今年の4月から学校の改装工事が始まって休校になってしまいました」
絵里「あら、それは厄介ね」
いろは「それで先生も生徒たちも離任したり転校しなきゃいけなくなって、2月から他の学校探し始めて」
いろは「ちょうどその時期から妹もいなくなっちゃって、周りのみんなも妹の存在を忘れちゃったみたいで」
いろは「それで今は私、3年生になってからは神浜市新西区にあるエスカレーター式の学校「神浜市立大付属学校」の中等部に転入しました」
絵里「あら奇遇ね、実は私も中学までそこに通っていたのよ」
いろは「まさかのOGですか!これも運命ですね」
いろは「でもどうして東京に行っちゃったんですか?」
絵里「最初はそのまま高校まで進学しようって考えてたけど、いろいろワケアリで神浜から出て行かなきゃいけなくなって….」
絵里「うちの妹もあなたと同い年で小学校卒業するまでは神大附属だったのよ」
いろは「うちの妹も1年の頃からそこに通ってます、学年は4つしか変わらないので」
いろは「こんな事お願いするのも図々しいかもしれませんが、もし妹さんが見つかったら」
いろは「小学校の頃、「環うい」っていう子がいたかどうか?聞いてみてもらえますか?」
絵里「もし会えたら一応聞いてみるわ」
絵里「それより宝崎からわざわざ遠い所まで通うのも疲れるでしょ」
いろは「家から電車と徒歩で1時間くらいかけて通っていますが、今はもう慣れました」
絵里「卒業するまで大変だと思うけど、頑張りなさい」
絵里「それじゃあ宝崎まで帰りましょう」
いろは「よろしくお願いします、絢瀬さん」
いろは(なんだか絢瀬さんってかっこよくていい人)
いろは(ベテランとは言ってるけど、なんだかやちよさんとはまた違う頼もしさを感じる)
―――穂乃果視点に戻る―――
―PM4:00
秋葉原から京浜東北線に乗って何駅か停まったけど、わずか数十分程度で神浜に到着
私も絵里ちゃんもさっき下校したばっかりなのに通りで早く着いたわけだ
もしかして絵里ちゃん、家に帰らないでそのまま直行したんじゃ?
―――LINE―――
穂乃果:たったいま、神浜に上陸!
(絵里ちゃんのトークルームと家族のグループラインに送信)
父:妙な事件に巻き込まれないように気を付けなさい
絵里:ごめん穂乃果、少し用事が出来たから先にカフェ行って待ってて!また後で迎えに行きます
―――神浜駅―――
ここがウワサに聞いていた神奈川県神浜市
聞いてた通り街全体が広くて人口も多いというだけあってか魔法少女の数も比例している
絵里ちゃんの言ってた通り魔女絡みの事件が後を絶たない物騒な街だ
こんな危険な所に雪穂が修学旅行に行ってたと思うとゾッとするよ
とりあえず絵里ちゃんおすすめのカフェで待ち合わせの約束をしてるんだけど
なんでも神浜一うまいと評判の名店「ウォールナッツ」をスマホの地図アプリで住所検索っと
穂乃果「神浜に住んでたって話は以前から聞いてたけど、ここがどこなのかもわかんないや」
アプリの経路案内を頼りに歩いてると何だか喉が渇いちゃった
ちょうどいい所に「フクロウ印の給水屋」という屋台があった
穂乃果「フクロウ幸運水….これはラッキー!」
水配りのおじさん「やあお嬢ちゃん、こんな真夏に至福の一杯飲んでいかないかい?もちろん無料だから安心しなさい」
穂乃果「いいの?ありがとう、いただきます!」
私は歓喜のあまり、瓶に入った幻の水を一瞬で飲み干してしまった
穂乃果「はぁ~美味しかった!全然普通の水じゃないよ、もう一杯ください!」
おじさん「ごめんなお嬢ちゃん、この水は数量限定でいろんな人に飲んでもらいたいんだ。一人につき一日一杯までだから、また明日来てくれな」
穂乃果「そっか…図々しい事言っちゃってごめんね、また明日も来るから!」
おじさん「いつでも待ってるよ」
一旦、喉を潤した所で再び神浜の街を探索する
しばらく歩いていると路地裏に迷いこんでしまった私
穂乃果「あれ、ここどこ?穂乃果方向音痴だから地図なんか見てもわかんないよ….誰か助けてえええええ!(花陽ちゃんのものまね)」
???「やけに騒がしいわね、気になって駆けつけたら見かけない顔ね」
穂乃果「やばい、知らない人に目付けられちゃった」
???「あなた、この街の魔法少女じゃないわね?どこから来たの?」
穂乃果「どこからって、何で私が魔法少女だって知ってるんですか?」
???「その指輪を見たら一目瞭然よ、魔翌力の反応を感じて来てみたらここにたどり着いた」
何か知らないけど、この人危ないよ
さっきからすごい言いがかりつけてくるし
何か見た目とか雰囲気は海未ちゃんに似てるけど
海未ちゃんよりも威圧感が増して、更に声も低くて
穂乃果「あの、すいません。隣の東京で秋葉原から来ました」
???「よその魔法少女がうちに何のようかしら?」
関係ないと言いたい所だけど、答えないといつ殺されてもおかしくない状況だ
事情を話せばきっとこの人も納得してくれるかな?
穂乃果「実はうちの妹が昨日から修学旅行で神浜に行ってて、今日突然行方不明になったって学校の人から連絡が来たんです!」
穂乃果「もしかしてこれも魔女絡みの事件ではないかと、いてもたってもいられなくてこの街に駆けつけました!」
???「事情は分かったけど、でも今のあなたには妹さんを救うなんて無理よ」
穂乃果「どうしてそんな事言われなきゃいけないんですか?」
???「あなた、つい最近契約したばかりの新米でしょ?」
穂乃果「そうですけど、どうしてそこまで?」
???「私ぐらいのベテランになるとその挙動からして戦いに慣れていない魔法少女だって分かるのよ」
ベテランっていうとこの人も絵里ちゃんと同じぐらい長年戦ってきたって事?
絵里ちゃんにもさっき似たような事言われた
???「ずいぶん警戒してるけど、私は別にあなたの敵じゃないわ!」
穂乃果「だって見るからに十分怪しいですよ」
???「あなただって見慣れない制服着て、どう見てもこの辺の生徒じゃないわよ」
???「せめてソウルジェムを隠して私服で来るべきだったわね」
穂乃果「面目ないです…」
???「それに新米とか弱い相手にわざわざ攻撃なんかしないわ、そもそもあなたの味方でもないけど一人にしておくのが心配で」
穂乃果「あの、だったら見逃してくれませんか?私、急いでるんです」
???「どこに行くつもり?」
穂乃果「これから待ち合わせしていて、同じ学校の1つ年上で魔法少女としては7年も先輩の人と会う予定なんです」
???(7年も先輩って….それじゃあ私と同期って事になるのかしら?)
???「そう?よくわからないけど、あなた道に迷ってるみたいね」
???「だったら私が案内するわ、この街の事を何ひとつ知らないあなたが一人で行動するのは無用心よ」
穂乃果「ありがとうございます!あの私、秋葉原にある音ノ木坂高校から来た2年の高坂穂乃果って言います」
???「高校2年生….って事は鶴乃と同い年ね」
穂乃果「鶴乃って?」
???「何でもないわ、私は神浜市立大学に通う1年生の七海やちよよ」
やちよ「自慢じゃないけど、あなたの先輩と同じ歳月を戦ってきたベテラン魔法少女よ」
穂乃果(七海やちよって....にこちゃんが言ってたモデルの人?部室にもサイン飾ってあるし)
穂乃果「そうなんですか、やっぱりオーラがすごいです」
やちよ「一応これでも芸能人だからね、あなたは知らないと思うけどこの街だけじゃなく、全国的に有名なモデルよ」
穂乃果「すいません、私これでも芸能界とか疎いもんで」
穂乃果「すいません、私これでも芸能界とか疎いもんで」
やちよ「このカリスマモデル七海やちよさんを目の前にしてピンと来ないなんて、無知って怖いわね」
穂乃果「とりあえず短い付き合いになるかもしれませんが、よろしくお願いします」
やちよ「よろしく、高坂さん」
こうして私は七海やちよという大きな存在に出会って神浜という街の恐ろしさを身に染みて理解した
七海さんは怖い人だと思ったけど、素直になれないだけで本当はいい人なのかもしれない
性格はどっちかというと絵里ちゃんに近いかな?
やちよ「ところでよかったら私の家に寄っていかない?」
穂乃果「へっ?」
やちよ「実は私の実家は元々寮を経営していたのよ、今は亡き私の祖母がオーナーで以前までは両親が管理していた」
やちよ「その両親も3年前に死んじゃって、自然と私の代が回ってきて今、私がこの「みかづき荘」の世帯主よ」
そんなもう一人の先輩魔法少女と会話しながら徐々に距離を縮めていき
七海さんが三代目オーナーを務める例のシェアハウス「みかづき荘」に到着
やちよ「着いたわよ」
穂乃果「お邪魔します、ここがみかづき荘ですか!すごい広くておしゃれで歴史を感じます」
やちよ「そうかしら、とりあえず適当にくつろいでて」
穂乃果「ありがとうございます!実は私の家も和菓子屋やってて」
やちよ「和菓子屋?」
穂乃果「同じように祖父の代から継がれている老舗の和菓子屋さんで「穂むら」って店なんですけどご存じですか?」
やちよ「それって千代田区にあるあの穂むらの事かしら?」
穂乃果「そうなんです」
やちよ「もちろん行った事あるわよ、あそこの名物と言われている「穂むら饅頭」は絶品よ」
穂乃果「ありがとうございます、何だか照れちゃいます」
やちよ「実は昔、モデルの仕事で秋葉原に行った事があるのよ」
やちよ「バラエティ番組の収録があって、ロケに行った時に秋葉原の飲食店を巡ってグルメの取材をやってたの」
穂乃果「なんか過去にテレビの取材が来たって話、お母さんから聞きました」
穂乃果「あいにく私は外に出かけてて立ち合えなかったんですけど」
やちよ「その時の撮影記念にサイン書いたのよ、今頃あなたのお店にも私のサイン貼ってあるかもしれないわ」
やちよ「家に帰ったら色紙見ておきなさい」
穂乃果「なんか思ったより世の中狭いというか広いというか」
穂乃果「うちの和菓子屋にもいろんなスターが買いに来てくれて、サインを残して、そんな芸能人とバッタリ会って」
穂乃果「今日こうして間近で見られるのが嬉しいです」
やちよ「よかったら雑誌でも読む?私の事もっと知りたければこれでも見ておきなさい」
穂乃果「BiBi?表紙飾ってるなんて、すごいじゃないですか!さすがカリスマモデル」
やちよ「慣れない街に来て疲れてるだろうし少し休んでなさい」
穂乃果「はい、失礼します(ソファで横たわる)」
『23』
突然、目の前に数字が刻まれた謎の紙が落ちてきた
穂乃果「何だろう?この紙」
やちよ「不思議な紙ね….なんだか不吉だけど」
穂乃果「誰がこんなイタズラを?」
やちよ(近所の子供でもこんな悪ふざけはしないし、夏でも施錠はしっかりしてるから明らかに人間ではない)
やちよ(おそらくこれも魔女の仕業?それともウワサ絡みの事件かしら?)
やちよ「とりあえず捨てておきなさい」
穂乃果「そうですね、捨てましょう」
やちよ「あのさ、高坂さん」
やちよ「もしよかったら、今夜うちに泊まっていかない?」
穂乃果「ふぇっ!?」
やちよ「一応ここ下宿する所だから、それに今日はルームメイトも帰ってこないみたいだから」
やちよ「一人で過ごすのもなんか寂しくってさ、せっかくだし」
穂乃果「本当にいいんですか?何から何まで迷惑かけちゃって」
やちよ「気にしないで、迷惑かけられる事には慣れてるから」
穂乃果「お言葉に甘えて、今晩はよろしくお願いします」
やちよ「ふふん、まったく可愛い子ね」
この人も意外と寂しがり屋さんだったりして?
七海さんのご好意によって今夜はみかづき荘に泊まる事になったので
絵里ちゃんにはちゃんと連絡しておかなくちゃ
―prrr
穂乃果「もしもし絵里ちゃん?」
絵里「穂乃果、遅くないかしら?さっきからずっと待ってるけど」
穂乃果「ごめん、実はさっき道を歩いてたら親切なお姉さんに拾われて」
穂乃果「それで今日はそこに泊めていただく事になったの」
絵里「そうだったの?いい人ならともかく、あまり知らない人にはついて行っちゃ駄目よ」
穂乃果「大丈夫だよ!見た目怖いけど、全然悪い人じゃないし」
穂乃果「出会って1時間以内に仲良くなったよ、最初は知らない人だったけどよく調べてみたら芸能人なんだって」
絵里「芸能人?どんな人なの?」
穂乃果「神浜出身で全国的に有名なモデルさんだよ」
絵里(モデルってまさか、あいつの事?)
穂乃果「ちなみに今日泊まる所は「みかづき荘」っていうシェアハウスなんだ」
絵里(みかづき荘…なんだか懐かしい響き….)
絵里(ってやっぱりあいつの家じゃん!)
絵里(どうしよう…あそこに穂乃果泊めるのが心配だよ)
絵里(悪いようにされなければいいけど)
絵里「そう、それはよかったわね」
絵里「あと明日、亜里沙たちが泊まってたホテル「グランドニューミズナ」に行くから」
穂乃果「何で?」
絵里「先生や生徒たちに詳しい事情を聞いて調べるのよ」
穂乃果「わかった、そっちも泊まる所見つかったら教えて」
絵里「了解、切るね」
―ガチャッ
やちよ「もう夕方だしお腹空いてるかしら?」
穂乃果「家に何かありますか?」
やちよ「材料も無いし買いに行くのもめんどくさいから」
やちよ「外食にしましょう、近所におすすめの中華料理屋があるの」
やちよ「私の知り合いが経営してるお店なんだけど、そこでよかったらどう?」
穂乃果「中華料理ですか、たまには食べてみたいです。行きましょう」
―――その頃、絵里は―――
宝崎駅で降りて環さんの家まで向かう途中、穂乃果から先ほどの電話が来た
まさか穂乃果が裏でやちよと会っていたなんて…
しかもすぐに仲良くなるなんておかしいわよ
やちよとは昔、ある事件がきっかけで喧嘩しちゃって絶交したっきり一度も会ってない
上京してから今はもう水に流して意地でも思い出さないようにしていた
そんな私と因縁を持った敵と私の可愛い後輩が親しくなるのが許せない
でもそれは穂乃果を思っての心配なんかじゃなくて、やちよに対する嫉妬からくるものなのかしら?
絵里「お待たせ、少し電話が長引いてごめんなさい」
いろは「いいえ、大事な連絡かもしれないのでお構いなく」
絵里「それで環さんの家ってどこかしら?」
いろは「すいません、私スマホの扱いが難しくて」
いろは「地図とかルートがまともに理解できなくて」
絵里「それなら住所教えてくれる?」
いろは「へっ?」
絵里「私が調べて、今から案内するから」
いろは「こんな時まで助けてもらっちゃってすいません」
絵里「いいのよ、中学生がこんな暗い時間に一人で街を歩くなんて見過ごせないもの」
とりあえず環さんに教えてもらった住所を頼りに地図のアプリで経路を調べて指示通りに進んでいく
妹と同じ年頃とはいえ、うちの亜里沙よりよっぽどしっかりしてるけど
『22』
絵里「ハラショー!これは一体何かしら?」
突然、謎の数字が書かれた紙が落ちてきた
いろは「何かまた落ちてきました」
いろは「心当たりはないんですが、今日の夕方に水を無料で配っている屋台を見つけてはそこに寄ったんです」
いろは「何でも「フクロウ幸運水」とか言って、美味しいだけじゃなく飲んだその日から24回まであなたに幸運が降り注ぐ」
いろは「水をくれたおじさんからそのような説明を聞きました」
絵里「なんか胡散臭い占いみたいね」
いろは「一種のおみくじみたいなものかもしれません」
いろは「それにしても気になるのは紙が決まって私の所に落ちてくるんです」
絵里「例の水売り屋が仕組んだ嫌がらせかしら?」
絵里「もしかしたらストーカーに狙われているって事も考えられるわ」
いろは「まさか、さっきのおじさんに後を付けられていたりして?」
絵里「おじさんじゃなくてもその一味である事は確かよ」
絵里「明日になっても同じ事が続くようなら警察に相談しなさい」
いろは「まだ特に実害はありませんが、何かあってからじゃ遅いし」
いろは「明日通報します」
と雑談しているうちに環さんの家に到着
絵里「着いたわよ」
いろは「わざわざこんな遠くまで、ありがとうございます!」
絵里「それじゃあ私はこれで」
いろは「待ってください!」
絵里「あら、何か忘れ物でも?」
いろは「傭兵に絡まれている所を助けてもらった上に家まで見送っていただいて、こんな事聞くのは失礼かもしれませんが」
いろは「絢瀬さんって東京から来たんですよね?」
いろは「今日ってどこか泊まるんですか?」
絵里「今日は妹を探しにやってきたんだけど、神浜では10歳の頃から施設で暮らしていたから、今はその実家がないのよ」
絵里「今日いきなり来てホテル探そうにも、それだけのお金を持ってないし、当日泊まれる所なんてラブホテルくらいよ」
いろは「そうだったんですか、まあ当日ばったり来ちゃったんですから仕方ありません」
絵里「とはいえ高校生は立ち入り禁止だし、適当に公園でも探してベンチで寝過ごす予定なの」
いろは「私がこんな事聞くのも大変おこがましいですが、もしよかったら今日は家に泊まって行きませんか?」
絵里「そんな、高校生でベテラン魔法少女の私が….かよわい後輩の家に泊まるなんて」
絵里「そんな図々しくてみっともない事出来ないわ」
いろは「そんな遠慮しないでください、何から何まで助けてもらったのに….」
いろは「何も恩返し出来ないなんて嫌です、一日のお礼がしたいんです」
絵里「本当にいいの?逆に悪いわね、迷惑かけちゃって」
いろは「こういう時はお互い様です、それに私、絢瀬さんともっと一緒にいたいから」
絵里「ありがとう、せっかくだから1日だけ泊めていただくわ」
いろは「明日もありますし、しっかり休んでください」
お言葉に甘えて環さんの家に泊まる事になった
さっそく家に上げてもらう
絵里「お邪魔します」
いろは「さあどうぞ、適当にくつろいでください」
絵里「結構広くておしゃれで綺麗な部屋ね」
絵里「私何も手伝わなくていいのかしら?」
いろは「両親いないけど、料理とか家事は私一人で出来ますから」
絵里「まだ幼いのに偉いわね、うちの亜里沙もこれぐらい出来るようになってくれたら安心なんだけど」
絵里「これが長女として育った賜物なのかしら?」
いろは「妹の面倒を見るのも大変だけど、何だかんだそれが幸せだって思えてきます」
同じ長女として、にこも大家族なだけあって家庭ではしっかりしてるけど
穂乃果に至っては妹に助けられてばっかりで全然姉らしい事出来てないわね
絵里「実はね、今日の昼間に中学の先生から非常の連絡が来て、妹を含めて他の生徒も何十名か行方不明になっているの」
いろは「もしかして…私の妹も例のウワサに巻き込まれていたりして」
絵里「ウワサ?」
いろは「神浜市だけに現れる新種の妖怪?みたいなもので、魔女とは少し違うんですが」
いろは「魔法少女や人間を誘拐しては、現世に戻ってこれないように結界の中に閉じ込める呪いのような存在です」
いろは「私も最初はあの街に伝わる一種の都市伝説だと思っていました」
絵里「ごめんなさい、2年ぐらい神浜を離れていたもんだから、ウワサという存在を全く知らなくて」
いろは「神浜に住んでいる大学生ぐらいの先輩がいて、私がよくお世話になっているベテラン魔法少女なんですが」
いろは「その人曰く、古くから語られていた都市伝説を元に最近生まれた新たな怪奇現象だって」
いろは「さっきから落ちてくる紙だってもしかしたら例のウワサに関係あるかもしれないし」
絵里「上京してからしばらく見ないうちに物騒な街になったものね」
とりあえず私も穂乃果に泊まる所見つかったって連絡しよう
―――一方その頃、万々歳では―――
鶴乃「へぇ~東京から来たんだ、通りで見かけないと思ったけど」
穂乃果「あなたが七海さんの言ってた鶴乃ちゃん?」
鶴乃「ふんふん!師匠から聞いてたとは話が早い!」
鶴乃「神浜No.1の中華飯店「万々歳」の跡継ぎ娘にして最強の魔法少女、由比鶴乃だよ」
穂乃果「秋葉原の名門校、音ノ木坂高校2年の高坂穂乃果です、よろしくね」
鶴乃「よろしくね穂乃果ちゃん!同い年がいるなんて嬉しいな」
やちよ「あなたたちどことなく似てるわね、髪型といいテンションといい」
鶴乃「いや~驚いたよ、まさかあなたも魔法少女だったんだね」
穂乃果「神浜に行くのはさすがに勇気がいりました」
鶴乃「確かにこの街の魔法少女は市民同士でも揉めるくらいだし、他の街や地域から来た魔法少女なら尚更、敵意を持たれるけど」
鶴乃「十人十色、みんながみんなそうとも限らないし」
鶴乃「よそから来たとかそんなの気にしなくていいよ、鶴乃は大歓迎だよ!」
『21』
穂乃果「また何か落ちてきた」
さっきから一定の時間で立て続けに降ってくる紙は一体何なのか?
鶴乃「何これ?なんか数字書いてあるけど」
やちよ「うちにもさっき2枚落ちたわよ」
穂乃果「よくよく見てみると、さっきより数字減ってないですか?」
やちよ「確かに、それも1時間ペースで降ってくるから」
鶴乃「何かのカウントダウンだったりして?」
穂乃果「穂乃果の17歳の誕生日かな?」
やちよ「そうだとしたら0時まであと6時間しかないでしょ」
穂乃果「ですよね、だって私の誕生日はまだ2週間後だから」
やちよ「だとしたら他に何か心当たりはないのかしら?」
穂乃果「そう言われても、穂乃果わかんないな」
やちよ「やっぱりこれもウワサの一種かもしれないわね」
穂乃果「ウワサ?」
鶴乃「神浜に伝わる都市伝説から生まれた魔物で、人を攫ったり閉じ込めたり」
やちよ「それも倒した所で行方不明になった人は救われるけど、グリーフシードを落とさないから魔女とは似て非なるものよ」
穂乃果「ごめんなさい、神浜市民でない以前に他県の者なんで」
穂乃果「何よりつい最近魔法少女になったばっかりで知らない世界が多くてついて行けないです」
やちよ「混乱するのも無理はないわ、この街をもっと知ってから戦う事をおすすめするわ」
鶴乃「実はね、私もやちよ師匠といろはちゃんと3人でこの前、水名神社に行って「口寄せ神社のウワサ」を倒したんだ」
やちよ「会いたい人に会えたかと思えばそれはウワサが作り出した幻だった」
やちよ「あなたと同じ音ノ木坂の生徒さんもこないだ水名神社で巫女のバイトに来て、同じ魔法少女だったからウワサ駆除に協力してもらったわ」
穂乃果「それって….もしかして希ちゃん?」
やちよ「あら、お知り合い?」
穂乃果「知ってるも何も、うちの高校の先輩で生徒会の副会長やってます」
穂乃果「それに今では身近な友達です」
やちよ「あなたも頼もしい仲間を持ったわね」
鶴乃「東條さん、師匠ほどじゃないけど魔法少女5年やってるだけあってなかなか強い人だったよ」
穂乃果「やっぱり強い魔法少女は他の街でも通用するもんだね」
やちよ「一応これ、私の趣味で作った本だけど」
穂乃果「神浜ウワサファイル?」
やちよ「分厚いノートにこの街のウワサを書き記してまとめたレポートみたいなものよ」
鶴乃「この街を探索してはいろんなウワサを調べて回っては最近集めてるんだよ」
やちよ「妹さんを助けるためにも、この街で生き抜くためにも、これをしっかり読んでおきなさい」
穂乃果「ありがとうございます、帰ったらゆっくり読むんで」
しばらく待っていると注文したラーメンとセットのから揚げ、チャーハンがテーブルに置かれた
鶴乃「お待たせ~こちら魔法少女サービスになります!」
目の前に出てきたそれは常軌を覆すほどの特盛だった
メニューには写真もなく、特別な記載もなかったんだけど
穂乃果「あの、ごめんなさい」
鶴乃「どうしたの?」
穂乃果「穂乃果の知ってる量と違う気がするんだけど….」
穂乃果「思ってたより多くないですか?」
鶴乃「普通のお客さんはこんなに食べられないから同じ値段でも量は並盛だけど」
鶴乃「魔法少女の胃袋に限界はないって聞いてたから」
穂乃果「こんなに食べきれる自信がありません」
穂乃果(これほどの量、いくら大食いの花陽ちゃんでも無理だよ)
やちよ「そうよ鶴乃、少しは加減しなさい!」
鶴乃「ごめんなさい、残してもいいよ」
鶴乃「最悪お持ち帰りのサービスも承るから」
やちよ「まったく、新規のお客さんにはもうちょっと気を遣いなさい」
―prrr
穂乃果(絵里ちゃんからだ)
穂乃果「七海さん、先輩から電話あるんでちょっと失礼します」
やちよ「わかったわ、出てらっしゃい、私は先に食べてるね」
一旦、店の外に出て駐車場で話す
穂乃果「絵里ちゃん、本当に今夜公園のベンチで寝るつもり?」
絵里「そのつもりだったけど幸運が味方してくれたのか、泊めれくれる人が見つかったのよ」
穂乃果「よかった~!穂乃果すっごく心配しちゃったよ」
絵里「そんな余裕があるなら妹の心配しなさい」
穂乃果「それで、宿貸してくれる人ってどんな人?」
絵里「宝崎に住んでる中学生の女の子なんだけど、今日その子が街で傭兵に絡まれている所を助けて家まで見送ってあげたのよ」
穂乃果「そんな優しくてかっこいい事する人なんてにこちゃんぐらいしか見た事ないな」
絵里「一言多いわよ!とにかくその子が帰るまで見守って、着いたら解散の予定だったんだけど」
絵里「助けてもらったお礼に今日泊まって行かない?って向こうから誘われちゃって」
穂乃果「やっぱりすごいな、神浜出身のベテランというだけあって顔も広いんだね」
絵里「神浜にいたのも昔の話でその子も神浜の子じゃないけど、おかげで野宿は免れたわ」
穂乃果「一度会ってみたいな、絵里ちゃんを泊めてくれた恩人に私からもお礼したいから」
絵里「それじゃあ私も穂乃果を泊めてくれた人にお礼しなくちゃね」
穂乃果「それじゃあ明日一緒に神浜で会わせようかな」
絵里「確か七海やちよって人だったわね?」
穂乃果「絵里ちゃん!私名前言ってないのに何で「七海やちよ」の事知ってるの?」
絵里(そりゃ今日会ったばかりの穂乃果よりも私の方が付き合い長いから知ってて当然なんだけど)
絵里「さっき芸能人とか言ってたから、神浜出身の有名なカリスマモデルで検索したら出てきたのよ」
穂乃果「な~んだ、まあ絵里ちゃんもモデル好きだからファッション雑誌とかよく読んでるもんね」
絵里(なんとかごまかせた….なるべく私とやちよの関係を悟られないように)
絵里「とりあえず一日は凌げたわ、問題は明日よ」
絵里「修学旅行の最終日、帰りのバスが出発する前に亜里沙と雪穂ちゃん、その他行方不明になっている生徒を見つけて、集合場所に連れ戻さなきゃいけない」
穂乃果「もちろんだよ、七海さんをはじめ神浜市の魔法少女に手探りで聞いて回るよ」
絵里「街中での調査は穂乃果に任せるわ、私は中学校の生徒や先生方に聞き込みするから合流出来ないけど」
絵里(目的は事実だけど、やちよに会いたくない口実でもあるわ)
絵里「後から会う予定だから、それじゃあまた明日」
穂乃果「おやすみなさい」
―ガチャッ
店内に戻って先ほどのラーメンセットを食べられるだけ食べた
残りはみかづき荘に持って帰る事にした
穂乃果「ごちそうさまでした!」
穂乃果「ごめんね、せっかくサービスしてくれたのに残しちゃって」
鶴乃「気にしないで、うちの料理は50点というバランス感覚に優れてるって街中では評判なんだ」
やちよ「開き直ってないで少しは反省しなさい」
鶴乃「ししょーひどいよぉ(涙目)」
穂乃果「でも味はすごく美味しかったよ」
鶴乃「本当に?よかった….」
やちよ(せめて油の量と具の量を改善する努力が必要ね)
鶴乃「あの~二人には関係ないかもしれないけど」
鶴乃「実は昨日、東京の方から修学旅行生が来てね」
鶴乃「その生徒さんたちがうちの店でお昼ご飯食べてる時に何枚か同じような紙が落ちてきたんだ」
やちよ「どういう事?高坂さんと何か共通する事でも」
鶴乃「詳しい原因はまだ分からないけど、おそらく穂乃果ちゃんと同じ何かに遭遇していた可能性はある」
まさか…うちの雪穂も!?
穂乃果「ごめん鶴乃ちゃん、一応聞いておきたいんだけど」
穂乃果「その生徒さんって制服とか来てた?」
鶴乃「確かに制服姿だったけど、それがどうかしたの?」
穂乃果「学校名とかって分かったりしない?」
鶴乃「制服見ただけじゃよくわからないけど、女子中学生だって事だけは明らかだよ」
中学生って事は雪穂の可能性が濃厚になってきた
穂乃果「もしかするけどそれって神田女学園の子たちだったりして?」
鶴乃「ビンゴだよ!穂乃果ちゃん」
穂乃果「えっ、ウソぉ!?」
すると鶴乃ちゃんは学生手帳を出してきた
穂乃果「これって….」
鶴乃「食べに来た生徒さんのうち一人が落としちゃったみたいで」
雪穂の物でも亜里沙ちゃんの物でもなかったが
手帳を見る限り、妹と同じ中学校の同級生らしい
私の知らない他の生徒だが、何かしら手掛かりにはなるはず
穂乃果「本当だ!ありがとう」
やちよ「一体どういう事なの?」
穂乃果「うちの妹もそこに通ってて昨日から修学旅行でここに来てるんです」
穂乃果「手帳の落とし主とは違うけど、妹と同級生なので」
穂乃果「その妹も原因は分からないけど、今日の昼間から観光中に行方が分からなくなってしまったんです」
鶴乃「それで心配になって妹さんを探しに神浜まで駆けつけてきたってわけだね」
やちよ「一人っ子だった私には分からないけど、お姉ちゃんってのは下の子のためにいつだって必死になるものよ」
鶴乃「兄弟とか姉妹って憧れるなぁ~」
穂乃果「ねえ、鶴乃ちゃん」
穂乃果「その学生証、私に預けてもらってもいいかな?」
鶴乃「いいけど、どうして?」
穂乃果「一保護者としての関わりがあるので、私の方から明日、先生方に会って渡しておこうと思って」
鶴乃「わかった、その子が無事かどうか保証は出来ないけど」
鶴乃「もし会えたら返してあげて(生徒手帳を渡す)」
穂乃果「ありがとう、あとは私に任せて」
やちよ「問題はウワサ絡みの事件か否か」
やちよ「それさえはっきり分かれば、あとは例のウワサを潰して妹さんを連れ戻すだけ」
やちよ「明日の夕方までには何とか間に合うよう協力するわ」
穂乃果「お互いに目的は違うけど、一緒にそのウワサってやつを倒しましょう!」
鶴乃「もし分かったら連絡して、鶴乃お姉さんも手を貸すから」
穂乃果「うん、また明日よろしく」
鶴乃「中華が恋しくなったらまたいつでもおいで」
―PM9:00
みかづき荘に帰って、それからも何度か紙が落ちてきたけど
今日はもう疲れてるし、七海さんが用意してくれた個室で寝る
やちよ「あなたの部屋はここよ、あらかじめ布団も敷いておいたから先に寝てなさい」
穂乃果「明日もお世話になります、おやすみなさい」
――ここからやちよ視点――
高坂さんは床について、私はリビングで環さんに電話をかける
―prrr
いろは(やちよさんからだ、こんな時間にどうしたんだろう?)
―ピッ!
いろは「もしもし?どうしたんですかやちよさん?」
やちよ「夜分遅くにごめんなさい、少し心配になって」
やちよ「あの後、無事に帰れた?」
いろは「えっと、帰ろうとして駅まで歩いてる途中で傭兵らしき女の子に遭遇しました」
やちよ「街中に指名手配の貼り紙があったの気付かなかった?」
いろは「すいません、まだ神浜の事も傭兵もあまり知らなくて」
やちよ「それで言いがかり付けられて何か奪われたり怪我でもしたらどうするのよ?」
いろは「その件なんですけど、実はちょうどベテランらしき魔法少女がそこに通りかかってきて」
いろは「私と同じく他の街から来た人なんですが、これがまた強くてかっこよくて優しくて頼もしい」
いろは「まさにもう絵に描いたようなヒーローで傭兵を撃退してくれたんです」
やちよ「運がよかったわね、たまたまいい人が通りかかって助けてくれたから無事に済んだけど」
やちよ「次からは一人で神浜歩かないこと、用事があって見送れなかった私にも責任はあるけど」
やちよ「魔法少女として1年も満たないうちは出来るだけ誰かを頼りなさい」
いろは「はい、もしもの時はよろしくお願いします」
やちよ「それで、その人もよそから来た魔法少女なんでしょ?」
いろは「そうですけど」
やちよ「一体何が目的で?例の傭兵やマギウスみたいに神浜を襲来するため?」
いろは「そんな危ない人じゃありません、私と同じように行方不明になった妹を探しに神浜にやってきたんです」
やちよ「はぁ~どいつもこいつも妹のためにそこまで命懸けるなんて、神浜市外の魔法少女はどこまでお人好しなんだか」
いろは「私と同い年ぐらいの妹らしくて、修学旅行の途中で姿をくらましてしまったんです」
デジャブかしら?
じゃあその子も高坂さんの妹と同じ中学校の生徒さん?
偶然にしては出来すぎてるわよ
いろは「それで学校の先生から電話来て慌てて妹を探しに神浜まで駆けつけてきたんです」
やちよ「まあそのお姉さんも魔法少女なんだし、一応ウワサや魔女絡みの事件だって可能性も考えられるわ」
やちよ「その上で行動するのは魔法少女….いや、姉の鑑よ!」
いろは「その人、昔神浜に住んでいたらしくて大体の事は知ってるって言ってました」
やちよ「神浜出身のベテランならそれなりに強いのも納得ね」
いろは「でも今はその実家が無くなってて、帰る場所がないから公園で野宿する予定だったみたいで」
いろは「そこで今日、傭兵から助けてもらい家まで見送ってもらったお礼に泊める事にしたんです」
やちよ「その人もその人で苦労してるようだけど、泊まる所が見つかって」
やちよ「あなたたちも何かとツイてるわね」
いろは「やちよさんも今日は一人なんですか?」
やちよ「いいえ、そのお姉さんと同じように失踪中の妹を探しに神浜まで訪ねてきたのよ」
やちよ「それも見るからに無鉄砲で無知な新米の魔法少女なんだけど、あなたみたいにまっすぐで純粋な子で守りたくなるような存在よ」
いろは「歳はどれくらいなんですか?」
やちよ「あなたよりも2つくらい年上で東京の千代田にある秋葉原の名門校「国立音ノ木坂学院」から来た高校生よ」
いろは「そうなんですか?私を助けてくれたお姉さんも同じ高校に通ってるって言ってました」
やちよ「あら奇遇ね、これも運命なのかしら?」
いろは「そういえばこの前、口寄せ神社で一緒に戦ってくれた希さんも音ノ木坂高校の生徒でしたっけ?」
いろは「世の中って思ってたより狭いんですね」
やちよ「ふふん、明日は午前10時に万々歳に集合よ」
やちよ「長くなってごめんなさい、そろそろ寝るわ」
いろは「おやすみなさい」
―ガチャッ
環さんを助けてくれた勇者がどんな人か見てみたいものね
もし会ったらお礼するどころか、ウワサを壊滅させるのに協力をお願いしたいくらいだわ
さて私も寝るとしましょう
――ここから絵里視点――
私は寝たフリをして廊下で電話している環さんの声を盗み聞きした
誰かと話しているみたいだが向こうの声は聞こえなかった
しかし環さんのある一言で電話の相手が誰なのか気付いてしまった
そう、七海やちよ
彼女もあのやちよと何らかのつながりを持っているに違いない
だからと言って環さんを敵視するわけじゃないけど
明日例の場所で会う約束をしているようだった
おそらく穂乃果も一緒なんだろう
でも私は、私だけは….
七海やちよに…..やちよにだけは会う事が出来ない
悪いけど環さん、あなた一人で行って
神浜駅までは一緒について行ってあげるけど
その先でやちよに会ったら本気で抗争になりかねない
下手に会って誤解されるよりも、私はそこに現れない方がいいの
だからせめて環さんと穂乃果だけでも無事でありますように….
第三話「魔法探偵やちよのウワサ事件簿」
―AM8:00
翌日、目が覚めると一足先に環さんが起きて朝食を作ってくれていた
絵里「おはよう」
いろは「おはようございます」
絵里「本当に何も手伝わなくて大丈夫?」
いろは「気にしないでください、私が無理やり泊めちゃったようなものなので」
絵里「逆に助かったわ」
いろは「それにしても家に入ってから、寝てる間にも何枚も紙が落ちてきました」
絵里「やっぱりこれは人間の仕業ではないという訳?」
いろは「そうみたいですね、ここまで来ると人間には不可能だと思います」
いろは「一種の霊現象か先輩が言ってた通りウワサが仕掛けたものだと踏んでいます」
絵里「まあ、もしもの時は私を頼りなさい」
いろは「はい、そういえば今日の10時に万々歳で先輩と合流する約束なんですけど」
いろは「ちなみに万々歳ってご存知ですか?」
絵里「もちろんよ、あの50点と評判の中華料理屋でしょ」
絵里「昔はよく食べに行ってたわよ、完食するのに時間がかかって最終的に食べきれなくて持って帰ったのが懐かしいわ」
いろは「今日そこに行く予定で、もしよかったら絢瀬さんも一緒にどうですか?」
絵里「ごめんなさい、私は他に用事があるから」
いろは「いえ、こちらこそ無理行っちゃってすいません」
絵里「実は妹の宿泊先のホテル「グランドニューミズナ」に行って先生や生徒たちに事情を聞きに行くの」
いろは「修学旅行で泊まってた所ってそこなんですか?」
絵里「うん、昔は「水名ホテル」っていうホテルがあったんだけど、5年前に閉館して」
絵里「建物自体は今でも残ってるらしいけど人はいないようで」
絵里「後から別の土地に新しいホテルが建てられて、それが今回のホテルよ」
いろは「そこまで詳しいなんて、さすが神浜で暮らしていただけありますね」
絵里「最近出来た物はあまり知らないけどね」
絵里「とりあえず神浜駅までは一緒についてってあげるわよ」
いろは「それだけでも十分嬉しいです」
手短に朝食を済ませて出発
宝崎から電車に乗って神浜に向かう
―AM9:00
――神浜駅到着――
絵里「それじゃあ私はここで失礼するわ」
いろは「1日付き合ってくれてありがとうございました」
ここで一旦解散して、私はグランドニューミズナに向かう
一応、やちよ、鶴乃、みふゆとは幼馴染で昔は仲良かったけど
いろいろ聞かれるのもめんどくさいから、その間柄については環さんには黙っていた
鶴乃やみふゆとは特にわだかまりはないけど、問題はやちよだから
その二人と関わる事もやちよは許してくれなかった
二人を巻き込まないように、無意味な争いを避けるためにも
中学を卒業して以来、あの二人とも一切連絡を取らなくなった
――その頃、みかづき荘では――
穂乃果「Zzz….」
やちよ「高坂さん、そろそろ出発するから起きなさい!」
穂乃果「うぅ~眠いよ….もうちょっと寝かせて」
やちよ「仕方ないわね、それなら私一人で行くから」
やちよ「今日一日大人しく留守番してなさい」
穂乃果「ちょっ、待って!今着替えるから」
やちよ「まったく、高校生にもなって手のかかる子ね」
寝坊しちゃった私は朝食を諦めて
一目散に着替えて、軽く身支度をして
七海さんと昨夜、食べに行った中華料理屋へ向かう
―AM10:20
――万々歳で合流――
やちほの「お待たせ」
鶴乃「も~すごい待ったんだよ」
穂乃果「ごめんね、上手に起きれなくて」
やちよ「まったく中学生の環さんですら時間守ってんのに」
いろは「私は全然気にしてないので」
やちよ「それより自己紹介まだだったわね」
穂乃果「初めまして、隣の東京から来たもので秋葉原の国立音ノ坂学院に通う高校2年の高坂穂乃果です」
いろは「環いろはです、私も宝崎に住んでいて、地元の中学校に通う3年生です」
穂乃果「よろしくね、いろはちゃん!」
いろは「よろしくお願いします、高坂さん」
穂乃果「苗字にさん付けなんて堅苦しいよ、穂乃果でいいよ」
いろは「それじゃあ穂乃果さん、お互いに妹探し頑張りましょう!」
穂乃果「妹って何で知ってるの?」
鶴乃「私がさっき説明したから」
いろは「私も数ヶ月前に妹が行方不明になって、神浜にいるって聞いたから」
いろは「もしかしたらと思ってウワサを頼りに探してるんです」
穂乃果「ずっと見つかってないのか….」
いろは「はい…」
穂乃果「私なんてまだ昨日の今日だから重みが違いすぎて」
『6』×2
私といろはちゃんの元にそれぞれ紙が落ちてきた
穂乃果「まただ」
いろは「穂乃果さんにも落ちてくるんですか?」
穂乃果「うん、昨日の夕方から始まった事なんだけど」
穂乃果「何かもう意味が分からなくて」
いろは「私もなんです、昨日からずっと1時間ごとに降り続けて」
やちよ「私の所には落ちなかったけど、昨日高坂さんと一緒だったからみかづき荘が紙だらけで掃除が大変だったわ」
鶴乃「私も昨日の夜、穂乃果ちゃんがうちに食べに来た時1枚だけ降ってくるのを見たよ」
鶴乃「まさかいろはちゃんの所にも落ちてたなんて」
いろは「私たちだけに共通するものって….」
穂乃果「妹がいて、音信不通で、同じ魔法少女で、姉として探し続けている」
鶴乃「たったそれだけの理由で?」
やちよ「それだと対象が狭すぎるわ、現に他の魔法少女や一般人も何十名か巻き込まれているんだし」
やちよ「他に何か心当たりはないかしら?」
穂乃果「心当たりって言われても、これ以上は….」
いろは「あの….関係あるかどうかわかりませんが」
やちよ「何でもいいわ、思い当たる節があったら教えてちょうだい」
いろは「実は昨日の昼にこの当たりで幻の水とかいうのを無料配っている屋台を見かけたんです」
いろは「それでなんとなく寄って、例の水を飲みました」
穂乃果「思い出した!私も昨日見たんだよ!」
やちよ「高坂さんも?」
穂乃果「七海さんと出会うちょっと前に神浜駅で降りて」
穂乃果「街を徘徊していたら、目の前に例の水を配ってるおじさんが現れて」
いろは「穂乃果さんも飲んだんですか?」
穂乃果「うん、すごくおいしかったよ!」
鶴乃「多分それだよ!」
いろは「やっぱり?」
鶴乃「私たちは飲んでないし、見てすらいないけど」
やちよ「その幻の水を飲んだ二人が対象になっているわけね」
やちよ「おそらくこれもウワサの類かもしれないわ」
穂乃果「通りで私にもいろはちゃんにも例の紙が落ちてきたわけか」
鶴乃「という事は穂乃果ちゃんの妹さんと同じ修学旅行に来ていた生徒さんもそれを飲んでいたという事になるのでは?」
やちよ「妹さんは知らないけど、神田女子中学校の生徒さんも飲んでいた事は確かよ」
穂乃果「雪穂だけじゃなくて、亜里沙ちゃんも他の生徒たちも連絡が取れないって先生方が騒いでたから」
穂乃果「確証はないけどうちの妹もきっとそれを飲んでしまった可能性がある!」
[テレパシーで会話]
やちよ(適当に聞き流していたけど)
鶴乃(亜里沙ちゃんってもしかして….)
やち鶴(絵里の妹!?)
やちよ(何で今絵里が出てくるんだろう?)
鶴乃(姉妹揃って遠い所に引っ越したって話は聞いてたけど)
鶴乃(正確に今どこに住んでいて、どこに通っているかは教えてもらえなかった)
やちよ(亜里沙ちゃんも今、中学3年生みたいだけど)
やちよ(たまたま名前が一緒なだけで人違いよ)
鶴乃(うん、気のせいかもね)
いろは「それじゃあういも半年くらい前に神浜に来て、その水を飲んだかもしれないって事?」
やちよ「ウワサが現れるようになったのも半年ほど前からだから」
鶴乃「その可能性もゼロじゃないね」
やちよ「私の本にもそれらしいウワサは記録されていないけど」
やちよ「街の人から聞いた噂だと、確か参京区に存在するって言ってたわ」
鶴乃「うちの近所じゃん!万々歳に来るお客さんの間でも幻の水に関する話題で騒然として後を絶たなくなってきたよ」
やちよ「いてもたってもいられないわ、4人で探しに回りましょう」
穂乃果「でも場所は決まってないんだよね」
いろは「短時間で移動して販売してたから」
やちよ「とりあえず人が集っている所に行ってみましょう」
――その頃、水名区のホテルでは――
たどり着いた例のホテル「グランドニューミズナ」
フロントに事情を説明して中に入れてもらう事に
職員が宿泊しているフロアに行って訪ねる
絵里「あの~すいません」
教師A「何だ君は?一体どこの生徒かね?」
教師A「ここは神田女学園の生徒以外来ていい所じゃないんだよ」
教師A「用がないならさっさと帰りなさい」
絵里「突然会いにきて失礼いたしました、不審に思われるのも無理はありません」
絵里「私、同じ東京都千代田区に住んでいる者でして」
絵里「秋葉原の国立音ノ木坂学院に通う高校3年生の絢瀬絵里と申します」
そういって私は学生証を提示する
教師A「失礼だけど、他の学校、ましてや高校生がどうしてここに来てるんだい?」
教師A「修学旅行ではないだろう?プライベートでわざわざ隣県まで足を運ぶ目的は一体何かね?」
絵里「すいません、先に事情を話しておくべきでした」
絵里「実は、神田女学園に通う絢瀬亜里沙の姉でございまして」
絵里「妹がいつもお世話になっております」
教師A「お姉さんでしたか、これは失礼いたしました」
教師A「両親がお亡くなりになってお姉さんが保護者だと聞いていたもので」
絵里「実は昨日、亜里沙の担任の加賀美先生から電話が来まして」
絵里「修学旅行2日目のお昼頃から妹を含め、生徒さん方数名が行方不明になって連絡も取れない状況だとおっしゃってました」
教師A「大変申し訳ありません、こうなってしまったのも我々大人の責任です」
絵里「頭上げてください、あなたたちを責めに来たわけではありません」
絵里「一人の保護者として妹を助けたくて探しに来ただけです」
教師A「ありがとうございます、私も学年主任の者から外に出ないように言われておりまして」
教師A「助けたくても何も出来なくてもどかしい状況でした」
教師A「なので動いてくれる人がいて安心しました」
絵里「ほんの些細な事でもいいんです、何か変わった事はありませんでしたか?」
教師A「と言われてもな~生徒全員を見てたわけじゃないから心当たりはないけど」
教師A「でも私が付き添っていた3年2組のC班は1日目の昼に参京区の「万々歳」っていう中華料理屋で一緒に昼食を取りました」
それってさっき環さんが言ってた例の中華飯店で鶴乃の実家じゃん
教師A「それで何か知らないけど、午後になってから移動中もホテルにチェックインした後も、何やら数字の書かれた謎の紙が一部の生徒の前にだけ落ちてきて」
教師A「最初は他の生徒のいたずらだと思って注意してましたが、とうとう手がつけられなくなって」
教師A「これは神田女学園の生徒を狙った校外の人物による犯罪ではないかと疑っています」
絵里「そうなんですか、警察には被害届は出しましたか?」
教師A「一応出しましたが、まともに聞いてもらえなかったよ」
絵里「そうでしょうね、となると人間じゃないこの世の者ではない誰かの仕業」
絵里「やはり霊現象かもしれませんね」
教師A「今は警察とか霊媒師とか専門の人に頼んでも無駄かもしれません」
教師A「私たちには今ここにいる生徒が同じ被害に遭わないように見守るぐらいしか出来ません」
絵里「それだけで十分ですよ、ありがとうございます」
教師A「申し訳ない、無責任な大人ばっかりで」
絵里「先生は館内にいる生徒さんたちの保護をお願いします」
とりあえず聞いた話では環さんの身に起きた出来事と同じ
カウントダウン形式で謎の紙が落ちてくる現象
そして環さんが言っていた不確かな原因として
幻の水を飲んだから、飲んだ者にだけ1時間ごとに幸運が降り注ぎ
全部で24回分の幸せが起きると語られていたが
その24回目、最後の幸運を迎えた後
その人はどうなってしまうのか?
いくらなんでも情報不足ではないか?
先生曰く、それが理由で生徒たちが姿を消したのなら
やはり水を飲んだ24時間後には異世界に連れていかれてしまうのだろうか?
とりあえず真相が知りたいから私もそれを飲んで確かめようと思う
―グランドニューミズナ4階―
亜里沙たち3年生の生徒たちが泊まる部屋が並ぶこのフロア
1部屋クラスにつき5人ずつ泊まる事になっていて
亜里沙が泊まった部屋は外で行動する時の班と部屋に泊まる班でまた違うため
行方不明になったのは亜里沙のいた外の班だから
亜里沙と同じ部屋に泊まっていた生徒に事情を聞いてみる
絵里「あの~ごめんなさい」
生徒F「何ですか?」
絵里「今回行方不明になった絢瀬亜里沙の姉の絵里です」
生徒F「お姉さんですか、これはお気の毒に」
生徒S「妹さんが心配なのはわかりますけど」
生徒R「私たち班違うので」
絵里「でも、クラスは一緒なんだよね?」
生徒S「まあ一応」
絵里「どんな事でもいいわ、知っている事があれば教えてくれないかしら?」
生徒R「っていっても絢瀬さんの班のみんなは今どこにいるかわからなくて」
生徒S「班の人全員連絡が取れないらしいです」
絵里「外で一緒だったかどうかを聞きたいんじゃなくて」
絵里「気になってるのは部屋の中で一緒だったかが問題よ」
生徒F「ごめんなさい、私たち402号室の者で絢瀬さんとは部屋も別なんです」
絵里「そうだったの、ごめんね時間取らせちゃって」
生徒S「絢瀬さんなら405号室に泊まる事になってますよ」
絵里「その情報だけでも十分よ、ありがとう」
生徒F「すいません、私たちじゃ力不足で」
生徒R「妹さんが無事に見つかる事を祈ってます」
絵里「君たちも危険な目に遭わないように気を付けなさい」
クラスメイトたちの情報を頼りに405号室に訪ねた
―トントン
絵里「すいませ~ん!誰かいますか?」
扉が開き、中から亜里沙と一緒の部屋で泊まっていた残りの生徒が出た
亜里沙と同室の生徒G「どなたですか?」
―以下省略
亜里沙と同室の生徒K「亜里沙のお姉さんですか」
亜里沙と同室の生徒L「立ち話もあれなんで、どうぞ上がってください」
絵里「失礼します」
部屋の中まで上げてもらう事になった
亜里沙と同室の生徒X「それでお姉さんが一体なんの用ですか?」
絵里「神田女学院の生徒が何名か行方不明になってるって学校から通報受けて」
絵里「君たち、何か心当たりはないかしら?」
生徒G「ていわれても、亜里沙さっきまでここにいましたよ」
そんなわけあるか?
君たちは幽霊でも見たのか?
絵里「え?だって、でも昨日の午後から行方が分からないって」
生徒K「昨日は確かに消えてましたけど」
生徒X「今朝、起きたら浴衣姿で寝てましたよ」
絵里「あら?それならどうして先生に言わなかったの?」
生徒L「すいません、いろいろパニック状態だったもんで」
生徒G「でもなんか様子がおかしかったんです」
絵里「どういう事?」
生徒X「亜里沙にしてはなんだか流調な日本語喋ってて」
生徒L「髪型もいつもストレートなのにいつの間にかシュシュで結んでた」
生徒K「声と外見だけは亜里沙そのものなんだけど」
生徒G「なんか言葉遣いも汚くて男子みたいな喋り方だった」
それってもしかして、昨日会ったあの傭兵の事かしら?
それでこの子たちは声と金髪で亜里沙だと勘違いしているわけね
生徒L「朝食も私たちの時間より先に食堂行って勝手に食べて、部屋に戻ったら急に私服に着替えて出て行っちゃいました」
絵里「そうだったのね、うちの妹がご迷惑をおかけしました(土下座)」
生徒K「まあまあ、頭上げてください」
生徒X「先生方も亜里沙だとは気付いてなかったみたいなので」
絵里「それより、他に変わった事はないかしら?」
生徒G「時間を遡る事1日目、部屋で合流してから異常な事が起きまして」
それってもしかして
生徒K「初日の夜に食堂でご飯食べてる時も」
生徒L「お風呂に入っている時も」
生徒X「みんなで寝ている時も」
生徒G「なんだか謎の数字が書かれたプリント用紙みたいなやつが落ちてきて」
やっぱり環さんや先生が言ってた通り
生徒L「まだ食事や入浴の時は他にもいろんな生徒の所に降ってきましたけど」
生徒X「部屋にいる時だけ何故か知らないけど、亜里沙の分だけ落ちてたんです」
生徒K「2日目の朝になれば紙が溜まってて部屋散らかっちゃったので慌てて片付けました」
絵里「人間に出来るいたずらとは思えない、何かの霊現象かもね」
生徒G「それでその後は班も別々に行動してたので何が起こったかは知りませんが」
生徒L「そうだ、思い出した!」
生徒K「亜里沙と班は違うんですけど、Lと一緒の班で」
生徒L「1日目は亜里沙たちの班と同じ参京を回ってて」
生徒K「そこで何やら屋台のようなものが売り回っていたんです」
絵里「参京区で屋台?」
生徒K「何でも幻の水とかいう瓶に入った、パッと見普通の水なんですが」
生徒L「それを無料で配っているおじさんがいて」
生徒K「私たちは特に興味ないから飲まなかったんですけど」
生徒L「亜里沙たちの班はみんなその水を飲んでました」
生徒K「フクロウ幸運水とかいう名前で飲んだら1日中幸運が起こりまくるって」
生徒L「みんなバカみたいにはしゃいでましたよ」
生徒K「その後あっちの班もうちらもウォールナッツで昼食食べてたんですけど」
生徒L「1時間くらいして、そしたら突然店内に謎の紙が5枚も落ちて来て」
生徒K「私たちのテーブルは関係ないけど、亜里沙たちのテーブルの周りの床が散らかっちゃって」
生徒L「店員さんも困ってました」
絵里「詳しい情報ありがとう」
生徒G「もしかしたらその水と何か関係あるかも?」
生徒X「飲まなかった私たちには紙が落ちたり異常な現象は起こらなかった」
生徒G「でも水の飲んだ生徒たちはみんな口を揃えて「変な紙が落ちてきた」とか「1時間ペースで降ってくる」とか」
生徒K「見返してみれば紙が落ちる度に次々と数値が下がっていたり」
生徒L「まるでカウントダウンみたいね」
生徒G「都市伝説もここまで来ると現実味をおびてきます」
絵里「分かった、あとは私が調べるから」
絵里「みんなありがとう、くれぐれも外には出ないように!」
これで全ての謎がひとつにまとまった
うちの亜里沙と雪穂ちゃん、他にもいろんな生徒がフクロウ幸運水とかいう胡散臭い水を飲んで
そこから1時間ごとにカウントダウン形式で紙が目の前に落ちてくる
そしてちょうど24時間が経過した頃には全ての幸運を使い果たしてしまい
その代償として異世界へと引きずりこまれてしまう
あくまで推測に過ぎないが、行方不明になった原因はきっとそこにある
おいしい話には裏があるというのはまさにこの事である
何とか辻褄は合ってきたが、問題はそのウワサってやつの本拠地である
確か参京とか言ってたから、亜里沙たちが飲んだという例の商店街に行ってみるか
私は部屋を出て、ホテルを抜け出して穂乃果に電話をかける
―AM11:30
――その頃、穂乃果たちは――
穂乃果「私たち、あと5時間しかないんだよね」
いろは「はい、このままウワサが姿を現すのを待った方が無難ですかね?」
やちよ「のんきな事言って、何か起こってからじゃ手遅れよ」
鶴乃「そうだよ、それなら水徳商店街あたりを探してみない?」
やちよ「あの人混みの中ならありそうね」
いろは「分かりました、商店街なら絶好の場所かもしれません」
―prrr
穂乃果「ごめん、ちょっと電話出る」
穂乃果「みんなは先に行ってて!」
やちよ「こんな時に何やってんのよ?」
鶴乃「いいよ、入り口で待ってるから」
入り口から少し離れてみんなの見える所で出た
穂乃果「もしもし絵里ちゃん?」
絵里「穂乃果、今どこにいるの?」
穂乃果「どこって参京区だけど」
絵里「ちょうど水名区のホテルから出た所よ」
穂乃果「何か手掛かりは?」
絵里「亜里沙と雪穂ちゃんたちとは別の班だけど、同じクラスメイトの子たちから聞いて回ったの」
絵里「それぞれバラバラだったけど、いろんな生徒や先生から証言をもらったわ」
穂乃果「それで原因は分かったの?」
絵里「いい?穂乃果、落ち着いて聞きなさい」
穂乃果「うん」
絵里「昨日私を泊めてくれた子も、神田の生徒たちも、みんなに共通する出来事は」
絵里「例の幻の水を飲んだ者は1時間ごとにカウントダウン形式で数字の書かれた紙がその人を対象に落ちてくるのよ」
穂乃果「それ、さっき七海さんから聞いたよ!」
絵里「えっ?」
穂乃果「今ちょうどその話題で持ち切りだったよ!」
絵里「なんだ、それなら私も合流しとけばよかったわね」
穂乃果「でもこれでウワサは現実だって確信が持てたよ」
絵里「そうね、他にも同じような経緯で同じ目に遭っているわけだから」
絵里「もう都市伝説なんかでは片付けられない問題よ」
穂乃果「でも未だにそのウワサの本拠地が見つからなくて」
絵里「私もどこにあるかは分からないわ」
穂乃果「根拠はないかもしれないけど、昨日水をくれたおじさんを探しに今、参京を回ってる所なの」
絵里「って穂乃果!あなたまでその水飲んだの?」
穂乃果「うん、最初は暑くて喉乾いてたから、おじさんの親切さに甘えて飲んじゃったんだ」
穂乃果「でもやちよさんたちに相談して、紙が降ってくる原因とか、最後どうなってしまうのか?」
穂乃果「そして何で雪穂と亜里沙ちゃんが消えちゃったのかも、その理由があの水を飲んだからだったんだね」
絵里「その通りよ、近くにいた他の班の生徒たちも目撃してたわ」
穂乃果「それなら話は早いね」
絵里「まだ1日は経過してないから、異世界に連れていかれる前に、バスが帰る時間までにウワサを見つけて倒して妹を救出するわよ!」
穂乃果「もちろん」
絵里「今から参京に行くわ、おととい亜里沙たちが寄ってた水徳商店街を探してみる」
穂乃果「水徳商店街って、今ちょうど私たちもそこに向かってるんだよ!」
絵里「奇遇ね、なら先にそこで待ってなさい」
絵里「私も後を追うから」
穂乃果「分かった、もし見つけたら連絡するよ!じゃあね」
―ガチャッ
穂乃果「みんな、お待たせ!」
やちよ「時間がないわ、環さんに不幸が訪れる前に見つけるわよ」
一同は水徳商店街に入り、数ある屋台の中から例の水配りおじさんを探した
探すこと20分、ようやく私の目の前に姿を現した
いろは「見つけた!あれです、私が昨日飲んだのは」
穂乃果「私も場所は違うけどおじさんの前通りかかって水もらったの」
やちよ「さて、ここからどうやって結界の中に入るかが問題ね」
鶴乃「今までのウワサも逆鱗に触れるような行為をして結界に引きずり込んできたから」
穂乃果「なら、あの水を2本以上飲むとか」
やちよ「いや、サービスを無下にして断ってみるのもいかがかしら?」
いろは「いろいろ試してみましょう」
――その頃、絵里は――
神田女学園の送迎バスの前で昨日の傭兵がたむろしていた
絵里「こんな所で何やってんの?」
傭兵「んあ?誰だ」
傭兵「って昨日の姉ちゃんかよ」
絵里「あなた昨日そこのホテルに泊まったらしいね」
傭兵「何だよ、悪いかよ?」
絵里「住む所もない生活に余裕のないあなたがこんなおしゃれなホテルに泊まれるだけのお金を持っているはずがないわ」
絵里「何より中学生だからお金があっても保護者なしでは泊まれない」
傭兵「証拠でもあんのか?」
絵里「生徒から聞いたわ、みんなあなたをクラスメイトの絢瀬亜里沙だと勘違いしていたようだけど」
絵里「偶然にも私の妹に声が似てたから大騒ぎにはならなかったけど」
傭兵「また説教しに来たのか?」
絵里「怒らないから正直に言いなさい」
私はソウルジェムを構える
傭兵「って怒る気満々じゃねえかよ」
傭兵「わかったよ、昨日泊まる所がなかったんだ」
傭兵「最近仲間だった奴に捨てられて、今こんな生活してるんだ」
傭兵「学年違うけど中学生だから修学旅行生に紛れて、奴らが泊まってるホテルを尾行して」
傭兵「夜に寝静まった後、幸い窓が開いてた部屋があったからそこまでよじ登って忍び込んだ」
絵里「どうしてそんな人に迷惑かける事ばかりするの?」
傭兵「うるせえ!とにかく生徒のうち何名か行方不明で空室になっていたのが好都合だった」
傭兵「ちょうどホテルのパジャマもあったしそれに着替えて寝た」
傭兵「運よくもそいつらオレの事、たまたま同じ部屋にいるはずだった亜里沙って奴だと思い込んで気さくに話かけてきやがった」
傭兵「とりあえず事がでかくなる前にそいつらより先に朝食いっぱい食って、元の服に着替えて出て行った」
傭兵「何か文句あるか?」
絵里「言ったでしょ?怒るつもりはないって」
傭兵「何でだよ?怒れよ」
傭兵「子供とはいえ、オレ犯罪者なんだぞ!」
絵里「そこまで来ると逆に呆れて同情まで覚えるわよ」
傭兵「オマエに同情されるほどオレは落ちぶれてなんかねーよ」
絵里「いいわよ、幼いながらに両親亡くして苦労してきたんだから」
傭兵「消防の頃から結構荒れてて、問題起こしまくって施設からも追い出されちまったよ」
絵里「それは反省した方がいいわね、でもどうせ迷惑かけるなら相手は選びなさい」
絵里「私はあなたを救いたい、性格違うけど妹にどことなく似てて」
傭兵「何だよそれ?バッカみてえ」
絵里「嫌なら無理にとは言わないけど、辛い時は素直に私に甘えなさい」
傭兵「たくさん迷惑かけるかもしんねえけど、どうなっても知らねえぞ?」
絵里「迷惑なら慣れてるから、あと申し遅れたわ」
絵里「私は東京の千代田から来た魔法少女、秋葉原の音ノ木坂っていう高校から来た絢瀬絵里よ」
傭兵「名乗るほどのもんじゃねえけど、オレは深月フェリシア」
フェリシア「去年、魔女とかいう化け物に親を殺されて、一旦施設に引き取られたけど」
フェリシア「気付いたら魔法少女になってて、帰る所も無くなっちまった」
フェリシア「中央学園に通ってる中1で、しばらく小学校一緒だった本屋のツレの家にこっそり下宿してたよ」
フェリシア「でも最近他の魔法少女と敵対関係が増えちまって、どんどん居場所がなくなっちまったんだ」
絵里「それは自業自得だけど、あなたはまだ幼いしこれからいくらでもやり直せるわ」
絵里「もし落ち着いたら、今まで迷惑かけてきた人たちに謝ってけじめをつけなさい」
フェリシア「今のままじゃダメなのは分かってる、でもどうすりゃいいかわかんねーよ」
絵里「それより、この紙…」
この子の周りにも噂の紙が落ちていた
フェリシア「なんか昨日からずっと落ち続けて、わけわかんねーよ」
絵里「とりあえずこのまま放っておくのは危険よ、私これからその紙をばら撒いてるウワサとかいう魔女だか分からない奴に会いに行く所なの」
フェリシア「マジかよ、オレ魔女だけは許せねえ!」
絵里「とにかくあなたも一緒に連れて行くわ!」
絵里「ウワサの本拠地はおそらく参京区の水徳商店街にあるらしいから」
フェリシア「分かったよ、よろしくな!絵里姉ちゃん」
絵里「私について来なさい、フェリシアちゃん」
私たちは急いで参京の商店街に向かったが
途中でウワサとは関係ない、いつもの魔女と遭遇してしまった
絵里「まったく、こんな時に足止め喰らうなんてついてないわね」
フェリシア「あの野郎…ぜってー許さねえ!」
絵里「ちょっ、フェリシアちゃん?」
フェリシア「まじょぉ…魔女…魔女をぶっ潰す!!」
さっきまで私に懐いてた純粋な子供のような顔は消えて
魔女を目の前にした途端表情が一変した
絵里「気持ちは分かるけど、少し落ち着きなさい!」
フェリシア「うるせえ!ベテランだか何だか知らねえが、神浜の人間でもねえ奴がオレに指図するんじゃねえ!」
フェリシア「ズガッ!ズガガガ!ドッカーン!!」
安全意識が低く、周囲の危険を省みず、倒す事で頭一杯になって
彼女の体よりも大きな鉄製のハンマーで執拗に魔女を攻撃するフェリシアちゃん
力加減を知らないのか、攻撃範囲が敵だけでなく後ろで見守っていた私の顔面にも当たってしまった
無事に倒す事は出来たみたいだけど
フェリシア「おい、大丈夫か?頭からすんげえ血出てんぞ!」
絵里「はぁ…ほんと大胆にやってくれたわね(呆)」
フェリシア「悪い!オレ、魔女見ると親の仇による本能からか頭に血が上って正気を保てねえんだ!」
絵里「私は別にいいわ、魔法少女の攻撃なんてこの7年間で頻繁に受けてきたから、こんなのとっくの昔に慣れてるけど」
絵里「他のか弱い魔法少女の前ではこんな手荒な戦い方はよしなさい!」
フェリシア「ごめん姉ちゃん…本当に悪気はねえんだ」
絵里「まあいいわ、確かにあなたの強さは認めるけど」
フェリシア「お詫びにこのグリーフシードもらってくれよ」
絵里「ご苦労さん」
妹の病気を治した因果で手に入れた固有魔法の治癒能力で頭の怪我は即効で治ったけど
絵里「このまま放っておいたらまた誰かに同じように迷惑かけないか心配だから」
絵里「気が済むまでそばにいてあげるわよ」
フェリシア「もし次魔女出てきたら、代わりに倒してくれよ」
フェリシア「オレ、こういうの不器用だから」
絵里「お安い御用よ、賢い可愛いエリーチカにお任せなさい」
『4』
フェリシア「また落ちてきやがった、一体何なんだよ?」
絵里「とにかく急ぎましょう」
走行しているうちに目的の商店街に着いて、例の水を配っている屋台を探した
フェリシア「あっ、見ろよ!」
絵里「どうしたの?」
フェリシア「オレ、昨日あの水飲んだんだ!」
絵里「通りであなたの前にも紙が落ちてたわけね」
フェリシア「昨日飲んだ水と訳のわからない紙、何か関係あるんじゃねーか?」
フェリシア「ていうかあそこにいるの、昨日のピンクの奴じゃん!」
絵里「またあの子を襲ったりしたら許さないわよ!」
フェリシア「この期に及んで手出すわけねえだろ!」
フェリシア「今は姉ちゃんがいるから、他の魔法少女なんか知ったこっちゃねーよ」
絵里「ちょっと静かにして!何かプライバシーを保護したような高い声が聞こえてくるんだけど」
フェリシア「本当だ!なんかヘリウム吸ったみてえな気持ち悪い声してんな」
――その頃、4人は――
やちよ「何よ?水なんて置いてないじゃない」
鶴乃「もう売り切れちゃったの?」
いろは「さっきまでいたおじさんも突然消えちゃったし」
穂乃果「結局罠だったの?」
【ウワサの声】
―――アラもう聞いた?
――誰から聞いた?
―――『ミザリーウォーター』のそのウワサ
―むかし懐かしママチャリの、荷台に乗った保冷箱
――おじちゃん1杯くださいなって
―――貰った水を飲んだなら
――ゴクゴクプハーッって
―気分は爽快、元気も一杯!
――けれどだけども、それはまやかし
―――飲んだ水はヤバイ水!!
――24時間経っちゃうと
―水に溶けた不幸が災いを引き起こすって
――参京区の学生の間ではもっぱらのウワサ!!
―――モーヒサーン!
穂乃果「なんか犯罪者みたいな声聞こえたけど」
やちよ「それがウワサってやつよ」
鶴乃「私たちはもう聞き慣れてるけど」
いろは「未だにこの声聞くのが怖いです」
穂乃果「それにしてもあのおじさん、一体何者なんだろう?」
いろは「多分人間じゃない、うわさの一部だと思います」
やちよ「これも使い魔の類かしらね」
鶴乃「まあでも、これで一連の失踪事件もウワサが関係していたって事がはっきり分かったよ」
やちよ「問題はその大元となるウワサがどこに潜んでいるか?」
???「そこまでだ」
穂乃果「だっ、誰!?」
やちよ「こいつらはマギウスの翼、黒羽根よ」
鶴乃「ウワサを生み出しているのがマギウスっていう悪の魔法少女の組織でこいつらは下っ端だよ」
黒羽根A「ずいぶん人聞き悪い事を言ってくれるが」
黒羽根B「怪しいものではない、身構えるな」
やちよ「黒いパーカー羽織って顔隠して、無機質な声を出して十分怪しいわよ」
黒羽根C「魔法少女の解放のためなら我々は手段を選ばない」
黒羽根D「悪い事は言わない、命が惜しければウワサから手を退け」
やちよ「今までウワサを撲滅された腹いせかしら?」
いろは「だから先ほどのミザリーウォーターのウワサも、これ以上消されるのはあなたたちにとって不都合であると」
黒羽根A「その通り」
穂乃果「悪いけど、今回に限ってはさすがに黙って見過ごせないよ」
黒羽根C「何故だ?」
鶴乃「この子の妹が行方不明になってるんだよ」
鶴乃「それもあんたたちが仕組んだ呪いの水のせいで」
いろは「根拠はないけど、うちの妹にもその可能性があります」
穂乃果「あなたたちが働いてきた事は人間としても魔法少女としても失格だよ!」
黒羽根B「そこの二人、神浜の魔法少女じゃないな」
黒羽根D「他の地域で恵まれた環境で育ってきたんだろう?」
黒羽根C「通りでよくそんな綺麗事が言えたもんだな」
黒羽根D「しかしこの街は他の地域の常識とは正反対だ」
黒羽根A「いい事教えてやる」
黒羽根B「ミザリーウォーターのウワサを探しているようだが」
黒羽根C「こんな所に本拠地なんてない、貴様らは先ほどから勘違いしている」
鶴乃「じゃあ私たちが追いかけてたのはウワサの出張所みたいなものだったんだね」
黒羽根A「ご名答」
やちよ「それで大元のウワサはどこにあるのか教えなさい」
黒羽根D「そう言われて答えるわけないだろ」
黒羽根B「これでも上の者から口止めされている」
黒羽根A「まあ条件次第で教えてやってもいいだろう」
黒羽根D「我々の味方に付いてくれるなら考えてやろう」
黒羽根B「ただしここでは言えない、場所を変えて教えてやろう」
やちよ「申し訳ないわね、素性の分からない連中の片棒を担げるほど性根は腐ってないから」
黒羽根C「いっその事、うちらの仲間に入れば魔法少女同士、無駄な争いを避けられる」
黒羽根D「我々の目的は魔法少女の解放、ただそれだけだ」
穂乃果「なるほど…いろいろひどい事言っちゃってごめんね」
黒羽根B「気にするな、最初は誰でもそう思うのが普通だ」
やちよ「ちょっと高坂さん、あなた何言ってるの?」
鶴乃「そうだよ、情に流されちゃダメだよ!」
穂乃果「でも私、他の魔法少女と戦いたくない」
穂乃果「この人たちもきっとどこかで挫折したから堕落して今の立場になったんだと思うんだ」
やちよ「そんなの無駄な同情よ」
いろは「そうだよ、妹さんを誘拐されて、見えない所に囚われて」
いろは「私たちは既に不幸な目にあっているんだよ!」
――一方、絵里たちは――
絵里「初めて聞いたけど、これが噂に聞いてたウワサっていう妖怪なのね」
フェリシア「不幸が云々言ってたけど、今以上に不幸な事があってたまるかよ」
絵里「ていうかあの子たち、何か揉めてない?」
フェリシア「ん?そういえば何か黒いコートきた連中に言いがかり付けられてるみてえだな」
絵里「ちょっと私止めてくるわ」
フェリシア「昨日みたいに正義のヒーロー気取りか?」
絵里「何バカな事言ってんのよ?」
フェリシア「俺も一緒に行くよ」
絵里「あなたが行っても余計トラブルになるだけだからここで大人しく待ってなさい」
フェリシア「んだよ、じゃあ陰で盗み聞きでもしてやるよ」
フェリシアちゃんを置いて、私は穂乃果たちと黒羽根集団の仲裁に入る
穂乃果「でもそれならいっその事、私も一緒にあっちの世界に飛び込んで雪穂と仲良くくらせればそっちの方が幸せかな?」
やちよ「東京に帰れなくなって、それでもいいの?」
やちよ「あなたの大事なご両親や学校のお友達もみんな悲しませる事になるのよ」
いろは「お願いだから、目を覚ましてください!穂乃果さん」
絵里「そうよ、あなたまでいなくなったら私は….µ’sのみんなはどうするの?」
穂乃果「絵里ちゃん?」
やちよ「って、あなた…」
いろは「絢瀬さん!」
鶴乃「エリーチカじゃん!久しぶり」
やちよ「どうして絵里がこんな所にいるの?」
やちよ「今更しれっと現れて、一体何の用よ?」
絵里「こんな形で会いたくはなかったけど、今回ばかり私の妹がこいつらに誘拐されたから仕方なく来ただけよ」
絵里「別に用が済んだらとっとと帰るわよ」
絵里「そんな事より穂乃果、µ’sのセンターはあなたでしょ!」
穂乃果「別に穂乃果がいなくたって他にもセンター務まるメンバーなんているでしょ」
絵里「そういう問題じゃないわよ、µ’sは9人の女神というコンセプトで成り立っているのよ」
絵里「あなたが抜けたらこのグループは成立しなくなる」
穂乃果「ていうか8人しかいないでしょ?今も」
※この時点では、真姫はまだ加入していません
絵里「屁理屈はいいから目を覚ましなさい!」
穂乃果「ごめんねみんな、穂乃果って思ってる以上に弱い子なんだよ」
穂乃果「お姉ちゃんなのに妹に助けられてばっかりで全然姉らしい事出来てないし」
穂乃果「こんな無知で無力な私に妹を助けるなんて土台無理な話だよ」
絵里「諦めるなら最後まで本気で戦ってそれで敗れてからにしなさい!」
穂乃果「それじゃあ、さようなら」
そういって穂乃果は2人の黒羽根に連れ去られてしまった
黒羽根A「見たか絢瀬絵里、七海やちよ」
黒羽根B「魔法少女、いや人間なんて所詮自分が可愛い偽善者しかいない」
黒羽根A「理性という仮面で隠しているけど、心なんてない薄情で単純な生き物だよ」
やちよ「そんなバカな….」
黒羽根『それでは失礼する』
そう言い残して羽根のみんなは消えてしまった
絵里「申し遅れたけど、あんたが可愛がってたお客さん」
絵里「私の後輩よ!」
やちよ「どうしてあなたがそれ知ってんのよ?」
絵里「電話で聞いたからね」
やちよ「あの子も先輩と一緒に来たとか言ってたけど」
やちよ「まさかそれもあなたの事だったのね」
やちよ「後輩の1人も守れないなんて….先輩として、ベテラン魔法少女として情けないわね」
鶴乃「ししょー、そんな言い方ないでしょ!」
絵里「いいのよ鶴乃、私にはそこまでの力量が無いのよ」
いろは「そんな事ないですよ!だって昨日私が傭兵に絡まれている所助けてくれたじゃないですか」
やちよ「どういう事?」
フェリシア「それならオレの口から説明してやるよ」
いろは「きゃあああ!!」
やちよ「あなた、指名手配の貼り紙に書いてあった傭兵の深月フェリシアじゃない!」
絵里「だから出てくるなって言ったのに」
フェリシア「誰だオマエ?」
フェリシア「あぁ、モデルの七海やちよか」
やちよ「環さん、こんな要注意人物と関わっちゃダメよ」
フェリシア「この街でオマエほど危ねえ奴なんかいねえよ!偏屈ババア」
やちよ「あなた、わざわざ私に殺されに来たのかしら?」
そういってやちよはフェリシアちゃんに槍を突きつける
絵里「やめなさい!こんな時に喧嘩なんてしてる場合じゃないわ」
やちよ「あなたもあなたよ!「環さんを傭兵から救ったかっこいいベテランさん」がどんな人かと思えば」
やちよ「よりにもよって絢瀬絵里なんてどういう風の吹き回しかしら?」
絵里「何とでも言いなさい、どうせあんただって似たようなもんでしょ?」
絵里「いくらか人を守ってきたのなら、その分いくらか人を見殺しにしてるのよ」
絵里「人間なんてそんな都合よく生きられるもんじゃないのよ」
やちよ「こいつ…」
鶴乃「二人ともやめて!」
鶴乃「ししょーもいろはちゃん助けてもらったんだから文句言わないの!」
鶴乃「エリーチカもししょーの過去の傷をえぐるよう事言っちゃダメ!」
やちえり「すいませんでした!」
いろは「やちよさんが何を言おうと、私は感謝してますよ」
やちよ「なら環さんに泊めてもらった事も感謝しなさい」
絵里「あんたにだけは言われる筋合いないけど、ありがとう環さん」
フェリシア「俺も、昨日は襲ったりして悪かったな」
いろは「うんうん、私こそフェリシアちゃんに迷惑かけちゃったみたいで」
フェリシア「でも今はそこの姉ちゃん専属の傭兵になったから、心配すんな」
やちよ「心配するとしたらあなたに付き合わされてる人たちよ」
やちよ「まあ絵里はどうでもいいとして」
絵里「いちいちうるせえな、とにかくこの子は私がしっかりしつけておくから安心しなさい」
フェリシア「しつけって、オレはペットじゃねえぞ!」
絵里「ほら、あなたも暴れない!」
フェリシア「うっ…..」
鶴乃「危ない傭兵って噂が広まってるけど、エリーチカと一緒なら安心だね」
フェリシア「つかさっきからオマエ誰だよ?」
鶴乃「この私を知らないとは失礼な、神浜で有名な中華飯店「万々歳」を将来継ぐ最強の魔法少女、由比鶴乃だ!」
フェリシア「聞いた事ねーし興味ねーわ」
やちよ「不味いって意味では有名ね」
鶴乃「何だとぉ!?」
いろは「それより絢瀬さんってやちよさんと昔何かあったんですか?」
絵里「その件について今話す事じゃないわ」
絵里「人の過去を詮索しちゃダメよ」
いろは「すいません、にしても穂乃果さんがまさか絢瀬さんと繋がっていたなんて」
絵里「あなたこそやちよの仲間だったとはね」
いろは「何か問題ありましたか?」
絵里「いや、別にやちよの仲間だからってあなたを敵視するつもりはないわ」
『3』
いろは「もう3時間しかない!このままじゃ日が暮れちゃいますよ」
やちよ「言っても肝心の大元がどこにあるか分からない事には始まらないわ」
絵里「念のためにさっき、高坂さんのポケットに神田明神のお守りを入れておいたわ」
フェリシア「お守りなんか入れて何の役に立つんだよ?」
絵里「ただのお守りじゃないわ」
絵里「こんな事もあろうかと思って中に小型のGPSを仕掛けておいたのよ」
やちよ「そんなのまるでストーカーじゃない!」
やちよ(私もいろはに同じような事してるから言えた義理じゃないけど)
絵里「さっき穂乃果がマギウスに寝返るような事言ってたけど」
絵里「あの子はたまに人の意見に流されやすい所があるわ」
やちよ「口ではあんな事言ってたけど、本当は家に帰れなくなって学校のみんなにも会えなくなるのが寂しかったんじゃない?」
絵里「演技なのか素で言ってたのか分からないけど、これも私の計算のうちに過ぎないわ」
絵里「穂乃果にとって大切な人を失う以上の不幸はないから、そのためなら自分を犠牲にする覚悟だってあるはず」
いろは「それじゃあ、穂乃果さんを利用した目的って?」
絵里「穂乃果を一旦マギウスの味方に誘導させて、さっきのGPSを頼りに奴らの本拠地を突き止めるための計画よ」
鶴乃「さっすが賢くて可愛いエリーチカ!」
絵里「まあ穂乃果も羽根の連中も鈍感だから気付いてないだろうけど」
絵里「そろそろかな?これを見てみなさい」
現在進行形で位置表示されるGPSの機能を元に
動いていた印がそこで止まる
鶴乃「おっ!止まった」
やちよ「これ以上動く気配は無さそうね」
絵里「おそらくここがウワサの大元となる場所よ」
フェリシア「でかしたぞ!エリ姉ちゃん!」
やちよ「私にはババアって言ってたくせに、学年1つしか変わらない絵里には何でお姉ちゃん呼ばわりなのよ?」
フェリシア「どっちも大人に見えるけど、雰囲気が違うからな」
やちよ「私ってそんなに老けて見えるのかしら?」
いろは「とりあえず目的地も分かった事だし、行きましょう」
絵里「そうよ、のんきにくっちゃべってる時間はないわ」
鶴乃「よーし、参京院教育学園までレッツゴー!」
一同は目的地へ向かう、思ったよりも近くにその学校はあった
都合のいい事に今日は休校日で生徒も職員もいないみたい
おかげで校門は施錠されているが魔法少女の特権とされるジャンプ力を活かして、門を飛び越えて奥へと忍び込む
そして校庭の先には地下水路への入り口が存在している
どうやらそこが先ほどみんなが語っていたウワサの拠点らしい
フェリシア「まさかこんな所にあいつらのアジトがあったなんてな」
やちよ「学校の裏に勝手に巣を作るなんて、ずいぶん行儀の悪い連中ね」
絵里「悪の組織に常識なんて通用しないわ」
鶴乃「とりあえず、中に入ってみようよ」
いろは「本当にこんな所にウワサなんてあるのかな?」
さっそく地下水路の中へと入った
しばらく暗闇が続いているため、それぞれスマホの非常灯を利用して奥まで進む
すると途中から数ヶ所照明が設置されていて、そこからしばらく歩いていると
先ほどの黒羽根たちが待ち伏せていた
黒羽根A「ようこそ、ミザリーウォーターのウワサへ」
黒羽根B「まさかこんな人気のない所まで追ってくるとはな」
黒羽根C「よくここが分かったな、これが虫の知らせか」
黒羽根D「お前たち、行くぞ」
黒羽根の集団が10人以上?一斉にまとめてかかってきた
鶴乃「ここは私とししょーに任せて!」
やちよ「あなたたちは先に行って、高坂さんを頼むわ!」
絵里「そんな大口叩いて、後で死んでも知らないわよ?」
いろは「とりあえず今は穂乃果さんと妹さんたちを助ける事を考えましょう!」
フェリシア「今のオレたちは味方でこいつらが敵だからな」
あえてここは幼馴染の二人に任せて
私たち3人はウワサを本体を探しに奥まで進んでいく
『2』
絵里「いけない、もう2時間しかないわ!」
フェリシア「このままのペースじゃぜってー間に合わねーじゃん!」
いろは「それでも時間が許す限り私は戦います」
果てしなく長い通路だったけど、走ればわずか数秒でたどり着いた
その先にある大広間には椅子が置いてあり、穂乃果が監禁されていた
絵里「穂乃果!」
いろは「穂乃果さん!」
フェリシア「もう一人知らねえ奴がいたけど、あいつがエリ姉の後輩か?」
絵里「そうよ、今ほどきに行くから大人しく待ってなさい!穂乃果」
硬い鉄格子で身動きを封じられていた穂乃果
それも人間の力では解錠出来ないため
私が持つ魔法の武器「純金製のバール」で破壊した
しかし穂乃果の意識が戻る事はなかった
絵里「どうして?」
白羽根A「そんな事したって無駄だよ」
白羽根B「いくらその鉄格子を壊した所で、本体のソウルジェムが無ければ動けるわけがありません」
絵里「あんたたちがマギウスの翼の幹部なの?」
白羽根A「性格には、マギウスの翼を牛耳っている立場であって」
白羽根B「上にはマギウスという私たちよりも遥かに強いグループがいます」
絵里「それじゃあウワサを作ってるのはそのマギウスの仕業?」
白羽根B「申し遅れました、マギウスの翼の白羽根、天音月夜にございます」
白羽根A「そしてウチがマギウスの翼の白羽根、天音月夜だよ」
奴らは所詮、中間管理職といった立場でそこまで強くはないだろう
それにしても片方はことりの声にそっくりだけど
絵里「さあ、私の大切な後輩を可愛がってくれた落とし前をつけてもらおうかしら?」
月夜「きょっ、脅迫ですか?」
絵里「ソウルジェム、あんたたちが持ってるんでしょ?」
絵里「怪我をしたくなければさっさと返しなさい」
月咲「いいわよ、でもただで返すわけにはいかないね」
月夜「その人の代わりにあなたが身代わりになってくれるなら考えてあげてましょう」
絵里「ずいぶんと汚い事してくれるわね」
月咲「絢瀬絵里、早く変身を解いてあなたのソウルジェムを持って来ないと」
月夜「高坂穂乃果のソウルジェムを叩き割っちゃいますよ?」
月咲「ねー」
月夜「ねー」
絵里「上等よ!私には何やってくれても構わない、でも穂乃果に手出したら後ろの二人が黙ってないわよ?」
月咲「えっ、ウソ?」
絵里「何さっきからぼーっと突っ立ってんのよ?」
絵里「あなたたち、さっさとこいつらを懲らしめてやりなさい!」
いろは「分かりました!恩人の頼みであれば命に代えてでも従います!」
フェリシア「ふんっ、この程度のザコ姉妹を倒すのなんて朝飯前だぜ!」
月咲「なるべく穏便に済ませたかったけど」
月夜「こうなってしまった以上仕方ありませんね」
いろは「私が相手します、嫌なら穂乃果さんのソウルジェムを返しなさい!」
フェリシア「やるんなら正々堂々戦いやがれってんだ!」
環さんは月咲の方に小型の弓矢(通称:クロスボウ)を放ち
フェリシアちゃんは月夜の方をめがけて巨大ハンマーを叩きこむ
いろは「さあ!この人たちが怯んでる隙に」
フェリシア「ほら、今のうちに取り返せよ」
絵里「ありがとう環さん、フェリシアちゃん」
天音姉妹が倒れている隙に私は急いで穂乃果のソウルジェムを取り返し
倒れていた穂乃果をおぶって、一旦部屋の外に出る
しばらく通路を歩いて戻っていると、そこで目を覚ました
絵里「穂乃果!しっかりしなさい!」
穂乃果「ん?っと…..あれ?絵里ちゃん」
絵里「穂乃果、生きてるのね」
穂乃果「なんか私、ずっと寝てたみたい」
穂乃果「ごめんね、さっきは我を忘れてみんなを裏切ろうとして」
絵里「えっ?それじゃああれは演技だったの?」
穂乃果「嘘ついてみんなを不安にさせちゃってごめんね」
穂乃果「羽根の仲間入りなんて本気で思ってないよ」
絵里「そうよね、いつだってあなたの正義感は本物よ」
穂乃果「地下水路に連れていかれて、この部屋に入った途端、ことりちゃんの声した白いフードを被った知らない人にいきなりソウルジェムを奪われちゃって、そこで意識が薄れてしまったの」
穂乃果「最初は羽根たちを騙して拠点を探ろうと思ったけど、逆に嵌められちゃったよ」
穂乃果「これじゃあ穂乃果も魔法少女としても人間としても失格だね」
絵里「そんな事ないわ、あなたの計画は失敗したと思ってるみたいだけど」
絵里「あの後、バレないように尾行して何とかウワサの本拠地までたどり着く事が出来たんだから」
絵里「もっと自信を持っていいのよ、むしろ感謝してるくらい」
GPS仕込んだ事は黙っておこう
穂乃果の応急処置をしている間に環さんとフェリシアちゃんが苦戦している状況
――向こうの部屋では――
月咲「いつまでもまともにやりあってたらうちらに勝ち目がないわ」
月夜「もう一つ、とっておきの手段がございます」
フェリシア「弱い奴ほど卑怯な手段に逃げるよな」
いろは「油断してると危ないよ?」
フェリシア「どうせ大した連中じゃねえだろ」
月夜「それじゃあミュージック♪」
月咲「スタート!」
すると部屋全体にスピーカーが壊れそうなほどの爆音が流れてきた
いろは「ぎゃあああ!!耳が!」
フェリシア「うるせーな!何なんだよ?」
二人とも慌てて耳を塞ぐ
穂乃果「何かすごく騒がしくない?こっちまで聞こえてくるけど」
穂乃果「いろはちゃんたち、大丈夫かな?」
絵里「彼女たちは私が守るから」
絵里「あなたは今のうちに逃げなさい」
穂乃果「そういうわけにはいかないよ」
絵里「何言ってるのよ?」
穂乃果「だって妹を助けに来たのが目的だから」
穂乃果「穂乃果にも戦う義務があるんだよ」
穂乃果「だからお願い、協力させて!」
絵里「言ってもどうせ聞かない事ぐらい知ってるわよ」
絵里「それじゃあ行きましょう」
その時、やちよと鶴乃も部屋の前までたどり着いてきた
鶴乃「お待たせ!」
やちよ「いくら一人あたりの力が弱いとはいえ、何十人も束になって来られると倒すのにも手こずって、膨大な魔翌力を使ってしまうわ」
絵里「ベテランの言うセリフじゃないわね」
穂乃果「七海さんと鶴乃ちゃんも大丈夫だった?」
鶴乃「余裕余裕!」
やちよ「私の事はいいから、あなたたちは自分と妹さんの心配してなさい」
鶴乃「それよりいろはちゃんたちが危ない!」
二人ともずっと耳を塞いで身動きが取れないようだ
とりあえず私たち4人も部屋の中まで入ってみるが
穂乃果「いやああああ!!耳痛いよおおおお!!」
絵里「うるさすぎてとても集中出来ないわ」
やちよ「奴らの武器は吹奏楽器よ」
鶴乃「にしてもうるさいな、何か対処法ないかな?」
やちよ「それが分かれば苦労しないわよ」
鶴乃「そうだ!騒音には騒音で対抗するなんてのはどう?」
やちよ「鶴乃もとうとうこの大音量に耐えられなくなって頭がおかしくなっちゃったかしら?」
鶴乃「違うよ!私はいつだって正気だよ!」
絵里「一応試してみましょう」
穂乃果「少し慣れてきたけど、体を動かすのは厳しいかな?」
絵里「ダンスまでやる必要ないわ、歌だけにしましょう」
穂乃果「なるほど、歌唱力だったらノイズだって掻き消せる自信あるよ」
絵里「それじゃあ歌いましょう!」
私と穂乃果と鶴乃でこの部屋から音が漏れるくらいの爆音を掻き消すくらいに必死で叫んだ
穂絵鶴『わああああああああああ!!!』
少し余裕が出来た所で私と穂乃果はµ’sの曲を歌った
穂乃果「♪だって可能性感じたんだあああああ!!!そうだ進めええええええ!!!」
絵里「♪後悔したくないいいいいいい!!!目の前にいいい!!僕らのおおおお!!!道があるうううううう!!!」
鶴乃「二人ともおおおお!!!いきなり何歌ってんのおおおおおお!!!!」
フェリシア「何かよくわかんねえけど、少し体が楽になったぞ?」
いろは「3人ともありがとう」
やちよ「3人が力尽きる前に私たちはそこの笛姉妹を倒しましょう!」
残りの3人は力技で笛姉妹を倒しにかかる
やちよ「音が使えなければ戦闘能力も皆無ね」
フェリシア「弱い犬ほどよく吠えるってこいつらを意味してるんだな」
『1』
いろは「いや~もうあと1時間で終わっちゃうよ!」
やちよ「ここは私一人で十分よ、あなたたちは奥に進んでウワサを本体を倒してきなさい」
フェリシア「おう、ここは任せたぜ」
いろは「急いで行きましょう!」
環さんとフェリシアちゃんは奥に行った
笛姉妹の二人もそろそろいい具合にソウルジェムが濁ってきている
やちよ「そろそろ限界かしら?とどめを刺させてもらうわよ!」
月咲「まだ気づいてないの?うちらはわざと穢れを溜めてるだけなんだよ」
月夜「真っ黒に濁り切ったソウルジェムを逆手に取ってドッペルを放つ戦法はベテランのあなたならもうお分かりでしょう」
やちよ「あなたたちにもそれだけの知恵はあるみたいね」
やちよ(この状況であの時みたいに環さんのドッペルを利用する手はあるかもしれないが)
やちよ(そんなのは本体だけに使うべきよ)
やちよ(こんな雑魚二人を相手にドッペルを無駄遣いさせるわけにはいかない)
やちよ「それなら私がドッペルを出すしか」
そういってやちよは自分自身に攻撃を仕掛けた
鶴乃「待ってやちよ!」
やちよ「鶴乃?」
鶴乃「こんな所で自害しちゃダメだよ!」
やちよ「あなたたちだって大分濁ってきてるわよ!」
鶴乃「それなら私がドッペル出すよ!」
ほのえり「ドッペル!?」
やちよ「高坂さんは魔法少女になってまだ日が浅いし」
鶴乃「エリーチカが神浜にいた頃はまだドッペルなんて存在しなかったから」
月夜「二人が知らないのも当然でございます」
月咲「最近開発された自動浄化システムだよ」
月夜「それを生み出したのもすべてマギウスでございます」
月咲「そういう事、これが魔法少女の解放に繋がるって」
月夜「ねー」
月咲「ねー」
絵里「そこだけ抜き取ったら聞こえはいいけど」
やちよ「ドッペルを出せば、周りの魔法少女でも手を付けられないくらい強力な魔翌力を発動する」
鶴乃「結界の中だからいいけど、街中で発動されたら建物が壊れちゃうよ」
やちよ「下手したら死人まで出るわよ」
穂乃果「戦いには便利かもしれないけど、時と場所、状況によって使わなきゃいけないね」
月咲「ドッペルとはどれほどの物か?今からうちらが目に物を見せてあげるよ」
月夜「お手本を見てからマギウスとは善か悪かを判断してください」
絵里「穂乃果、ここは私たちに任せて」
やちよ「あなたも大元のウワサの所まで行きなさい」
鶴乃「そうだよ、今回の主役は穂乃果ちゃんなんだから」
穂乃果「みんな….このピーヒョロ姉妹を頼んだよ!」
穂乃果も環さんとフェリシアの元へ突き進む
絵里「二人ともこれで大人しくしてなさい」
そういって天音姉妹のソウルジェムめがけて私が持っていたグリーフシードを2個使って浄化させた
月夜「一体何ですか?」
月咲「敵相手にずいぶんとお人好しだね」
そして二人の力が抜けた隙にやちよは月夜、鶴乃は月咲のソウルジェムを強奪して、その場から離れる
やちよ「今よ!」
鶴乃「隙あり!」
天音姉妹「ふっ…..」
先ほどまで暴れていた笛姉妹が倒れて一気に大人しくなった
絵里「さっき穂乃果のソウルジェムを盗んだ仕返しよ!反省しなさい」
やちよ「とりあえず3人がウワサを倒すまでここで待ってましょう」
鶴乃「もちろん最後にはちゃんと返すから安心して」
やちよ「だからしばらくはそこで眠ってなさい!」
残す所はもうウワサ本体だけとなった
穂乃果、環さん、フェリシアちゃん、後は頼んだわよ
『0:30』
穂乃果「嘘!?もうあと30分しかないじゃん!どうしよう?」
フェリシア「泣いてる暇あんなら戦えよ」
穂乃果「ごめんなさい….ってどなたですか?」
フェリシア「おめーこそ見ねえ顔だけど、めんどくせえから自己紹介は後だ!」
いろは「今は目の前の敵を倒す事に集中しましょう!」
穂乃果「分かったよ、きっと3人で力を合わせれば敵わない相手じゃないよ!」
フェリシア「おーし!絶対諦めねえぞ!」
私たち3人は全力でウワサ本体を狙うも思うように進めない
穂乃果「あっ、いたたた…」
フェリシア「いってーな!何でさっきからオレばっかり石が降ってくるんだよ?」
いろは「大丈夫?」
不幸の期限が近づいているせいか、さっきから転んだり落石がぶつかってきたりと次々と災難に遭っている
でも怯んでいる場合じゃないのは分かってる、何とかはねのけて行くしかない!
穂乃果「やっぱこれ…3人がかりでもキリがないよ」
フェリシア「誰か囮にして一人で倒すしか方法はないのかよ?」
いろは「とりあえず、私はここを抑えるから二人は先に行って!」
穂乃果「いや、私一人でも倒せる気がしないよ」
フェリシア「何情けねえ事言ってんだよ?」
フェリシア「こうなったらここはオレに任せて、オマエら行ってくれ!」
いろは「いいの?」
フェリシア「つーかオレ、高いところ苦手だから」
穂乃果「恩に着るよ、亜里沙ちゃん」
フェリシア「オレは金髪ポニテ姉ちゃんの妹じゃねえけど、まあいいか」
いろは「フェリシアちゃん、ここはお願いします」
フェリシアちゃんを囮に私といろはちゃんは更に上の方へと登っていく
下の方で落石に当たりまくって苦戦してるフェリシアちゃんをよそに
私たちもなかなか本体に手が届かなくて手こずっている状況
穂乃果「本当に私たち二人だけで大丈夫なの?」
いろは「同じく私も魔法少女として経験が浅いので、人並みに強くはありません」
穂乃果「あっ!もう目とか口に砂入っちゃったよ~嫌だ!」
いろは「私もですけど我慢してください!」
上の方に進めば進むほど砂嵐が起こったり、何かする度に異常気象が発生する
穂乃果「雪は嬉しいけど寒いのはやだよぉ~!」
いろは「仮にも長女なのに…みっともない」
穂乃果「これがパンとかイチゴだったらよかったのに」
せめて死ぬ直前ぐらいは幸せで終わりたいものだけど
現実はそう甘くない、最後まで不幸が続くものなんだ
しかも結界の中でミザリーウォーターの素となる巨大なとっくりが目の前にある
本来これは不幸になるための水で、それを飲んだ時点から始まっていたんだとしたら
その大元にたどり着いた結果、今まで以上にない不幸な出来事が連発しているというわけなんだね
もう残り15分、これ以上救いはないんですか?
私の日光剣(通称:ソルセーバー)では届かないし
いろはちゃんの小型な弓から放たれる矢だけがかろうじて当たってるけど、それでも足りないぐらい
妹を助けられないまま私たちは死んじゃう運命なの?
もう穂乃果わからない、完全に勝機を見失ったよ
それはいろはちゃんも同じ心境だった
二人そろってここで死ぬしかないじゃない!
私たちの絶望は限界を超えてしまった….
第四話(最終回)「幼馴染の皮肉な再会」
しかしその時!不幸中の幸いともいうべきか?
不安を裏切るかのように奇跡は起こった!
神様もやっと私たちに味方してくれたんだ
この溜まりに溜まり切った穢れを利用して
私は魔法少女になって初めてドッペルという得体のしれないものを発動してしまった
いろはちゃんにも同じタイミングでドッペルが出てきた
そのピンチがチャンスへ変わり、私たち2人分のドッペルを合わせて
ずっと私たち魔法少女や妹たち、そして一般市民まで人々を苦しめてきたウワサをようやく倒す事が出来た
穂乃果「あれ….穂乃果、死んだんじゃなかったの?」
いろは「私も無事に生きて帰れたようです」
すると先ほどまであった結界がなくなり、ウワサ本体も消滅して
私たちは参京院教育学園の校庭に引きずり戻された
さっきまで暗い地下室から薄明るい夕焼けへと景色が変わった
そして水を飲んで行方不明になった人たちもそこに姿を現した
フェリシア「やっと倒したか、オレもう全身ボロボロだよ」
鶴乃「行方不明だった人たちもちゃんと帰って来てよかったね」
やちよ「それで結局3人とも妹は見つかったのかしら?」
穂乃果「う~ん、どうかな?」
雪穂「お姉ちゃん!何でこんな所にいるの?」
穂乃果「だって雪穂、修学旅行中に失踪しちゃったって聞いたから心配になって探しにいくのは当然だよ」
雪穂「確かに昨日突然意識が薄れたけど、それから1日何があったのかよく覚えてないんだ」
穂乃果「最後まで楽しめなかったのは残念だけど、無事生きて帰って来れてよかったよ」
雪穂「ごめんね、またお姉ちゃんや家族に迷惑かけちゃって」
穂乃果「まあいいって事よ、それよりもバスの出発時間過ぎてるけど大丈夫?」
雪穂「嘘!?やばいじゃんそれ」
亜里沙「お姉ちゃん!会いたかったよ」
絵里「亜里沙も無事だったのね」
亜里沙「いろいろ観光したかったけど、またいつか神浜に行けるならそれでもいいかなって思って」
鶴乃「亜里沙ちゃあああん!久しぶりいいいい!」
鶴乃は亜里沙に抱きついた
亜里沙「鶴乃お姉ちゃん?苦しいよ」
鶴乃「あはは、ごめんごめん」
鶴乃「まさか亜里沙ちゃんも修学旅行来てたなんて」
絵里「ごめん鶴乃、また今度にしてくれる?」
鶴乃「うん、気が向いたらいつでも神浜においでよ」
いろは「二人とも妹さん見つかってよかったですね」
穂乃果「いろはちゃんは?」
いろは「それが….ういがどこにも見当たらなくて」
やちよ「やっぱりもっと別のウワサに巻き込まれているのでは?」
穂乃果「あれ?送迎バスがあそこに停まってるけど」
加賀美先生「行方不明の生徒たちがみんな戻ってきたけど」
加賀美先生「君たちが見つけてくれたのか?」
穂乃果「はい、一応」
教師B「修学旅行は台無しになっちゃったけど」
教師B「君たちのおかげで生徒たちは無事に怪我もなく帰ってこれた」
職員一同「この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません!」
職人一同「今後このような事件に巻き込まれように気を付けます」
職員一同「本当に感謝しております」
穂乃果「そんな….別に先生たちは何も悪くないですよ、頭上げてください」
穂乃果「それより絵里ちゃん、何で先生までここが分かったの?」
絵里「事前に連絡しておいたのよ、遅れるかもしれないって」
絵里「ついでにこの学校の前に来るように頼んだから」
穂乃果「さすが絵里ちゃん!」
絵里「ほら、もう日が暮れちゃうしあなたたちは先に帰りなさい」
亜里沙「うん、帰ったらまた会おうね」
雪穂「お姉ちゃんはどうするの?」
穂乃果「もう少しここでゆっくりしていくよ」
雪穂「そう?じゃあお先に」
雪穂と亜里沙ちゃん含め、神田女学園の生徒たちは迎えに来たバスに乗って帰った
他にも失踪していた市民の方々も帰宅して、校庭は静まり返った
やちよ「そろそろ帰りましょう」
???「待ってください!」
やちよ「この声は…」
絵里「みふゆ!?」
みふゆ「やっちゃん、絵里、二人ともお久しぶりです」
そこには絵里ちゃんと七海さんのもう一人の幼馴染が現れた
みふゆ「そこの3人はお初にかかりますが、わたくし梓みふゆと申します」
やちよ「あなた本当にみふゆなの?」
絵里「一体どこに行ってたのよ?」
みふゆ「先に行方が分からなくなったのは絵里、あなたの方ですよ」
絵里「確かに私が最初にチームを抜けたから、今ここであなたを責める権利はないわ」
鶴乃「みふゆううううう!ホントのホントに本物のみふゆなの?」
みふゆ「あら、鶴乃さんまで、ここにいるのはまぎれもなくあなたの知ってる梓みふゆです」
鶴乃「みふゆぅ、ずっと会いたかったよ!すごく探したんだよ!(泣)」
鶴乃「今日はうちでみふゆのお帰りパーティやろう!」
みふゆ「気持ちは嬉しいですが、お断りします」
絵里「何言ってんのよ?今からでも遅くないわ、帰ってきなさい!みふゆ」
やちよ「せっかく昔みたいにこうやって4人揃って会えたのに….」
みふゆ「私はもうみかづき荘の仲間じゃありません」
みふゆ「今はマギウスの幹部でマギウスの翼のリーダーの梓みふゆなんです」
絵里「それじゃあ私たちの敵って事?」
やちよ「まあ私と絵里はとっくに縁を切ったけど、まさかあなたまで出て行っちゃうなんて….」
みふゆ「口寄せ神社まで私を探しに来てくれたそうですね」
みふゆ「みんな私の事覚えていてくださって親友としての冥利に尽きます」
絵里「笑わせんじゃないわよ」
やちよ「何が親友冥利に尽きるよ?」
鶴乃「こんなの私の知ってるみふゆじゃないよ」
やちよ「やっぱりあなた偽物じゃないの?」
みふゆ「残念ですがここはもう結界の外なので、私を語ってた偽物もこっちの世界には現れてくれません」
やちよ「こんな形で再会なんてするんじゃなかった!」
絵里「そのセリフ、私が一番言いたいくらいよ!特にあんたにはね」
みふゆ「結局、昔の関係にはもう戻れない….」
みふゆ「それが運命なんです、なので諦めてください」
やちよ「魔法少女としての覚悟は前から決めていたはずでしょ?」
みふゆ「私はやっちゃんや絵里みたいに強くは生きられない」
みふゆ「だから今のマギウスが私にとって最後の望みなんです」
やちよ「待って!親友だからこそ命がけであなたを救うわ!」
やちよ「そのためならいくら争ったっていい、自分のソウルジェムが壊れても、意地でも私はあなたを連れ戻す!」
月夜「やめてください!」
月咲「みふゆさんに指一本触れたら、さっきと同じようにそこのオレンジとピンクの魔法少女を人質にしちゃうよ」
みふゆ「いいんです、これは私だけの問題ですから」
月夜「でも」
みふゆ「同じように怪我されるのも不本意なので、先に帰ってください」
天音姉妹「失礼します」
みふゆ「敵だと知りながら二人の手当てをしてくれるなんて、絵里もお人好しですね」
みふゆ「一応お礼を言っておきます」
絵里「別に礼なんか求めてないわよ、気まぐれでやった事だから」
みふゆ「逆にあなたたちがマギウスに入ってくれたら大歓迎です!」
みふゆ「それこそ昔みたいに仲良くやっていけると思います」
やちよ「それだけは絶対に許さない!あなたはマギウスに飼いならされているだけなのに、どうして気付かないの?」
みふゆ「たとえどんな扱いを受けても構いません」
みふゆ「今はマギウスだけを信じます」
絵里「もういいわ!やちよ、ほっときなさい」
やちよ「これは私とみふゆだけの問題よ、あなたはもう関係ないんだから口を挟まないで!」
やちよ「そこまでして救済とか解放に縋るくらいなら、もう好きにすればいい!」
やちよ「金輪際、私たちの目の前に現れないで」
みふゆ「やっちゃんの行動次第ですが、了解しました」
やちよ「あなたもよ、絵里」
絵里「言われなくたって、あんたなんかこっちから願い下げよ」
絵里「用は済んだし、もう帰るわ」
みふゆ「私もここで失礼します」
鶴乃「ちょっと二人とも待ってよ~!」
やちよ「いいのよ鶴乃、行かせなさい」
そういって絵里ちゃんとみふゆさんは去ってしまった
やちよ「ごめんなさい、せっかくウワサを倒したのに、この上ない不幸なシーンを見せてしまって」
いろは「やちよさんは悪くないですよ」
鶴乃「みふゆもきっと….辛かったんだよ」
穂乃果「絵里ちゃんと幼馴染だなんて知らなかったけど」
穂乃果「七海さんって昔、絵里ちゃんと何かあったんですか?」
やちよ「答える必要はないわ、出会ったばかりのあなたには関係ない事だから」
穂乃果「ごめんなさい」
フェリシア「しんきくせー話とか聞きたくねえし、オレももう帰るわ」
いろは「待って!フェリシアちゃん」
フェリシア「んだよ?」
いろは「帰る所はあるの?」
フェリシア「ねえけど、オマエらごときに助けられるほど、オレ落ちぶれてねーし」
いろは「違うの、私が助けて欲しいの!」
フェリシア「何でだよ?オレ、昨日オマエの事いじめたんだぞ?」
フェリシア「魔法少女の間でもオレ誰からも信用されてねえからさ、どうせオマエらも疑ってんだろ」
いろは「そんな事ないよ!私、フェリシアちゃんの事信じてるから」
フェリシア「オレの何をそこまで信じられるんだよ?」
いろは「本当はいい子なんだって、根は悪い奴じゃないって」
いろは「それに私、契約して日も浅くて…弱いから、魔女と戦う時にもフェリシアちゃんがいてくれると安心するの」
フェリシア「つってもオレ、魔女に遭遇すると理性を失って味方にも攻撃しちゃって」
フェリシア「だからオレなんか一緒にいても迷惑だろ?」
穂乃果「とりあえず魔女を見ても落ち着いて戦えるよう、暴れないようにファイトだよ!」
やちよ「我慢出来る事も強さのうちよ」
鶴乃「鶴乃お姉さんと一緒に修行すれば最強に我慢強くなれるよ!」
やちよ「あなたもあなたで落ち着きを覚えた方がいいと思うけど」
鶴乃「ししょーひどいよ~」
穂乃果「とりあえず辛い時はパンでも食べてリラックスしよう」
フェリシア「うっさい…」
いろは「えっ?」
フェリシア「さっきから我慢我慢ってバカの一つ覚えみたいにいちいちうるせんだよ!」
フェリシア「オレの父ちゃんも母ちゃんもみんな魔女に殺されたんだよ!」
フェリシア「魔女が憎いから仇討ちのために暴れて何がいけねえんだよ?」
フェリシア「オマエらみたいに恵まれて育った奴なんかにオレの気持ちがわかってたまるかよ!」
そういってフェリシアちゃんは泣き崩れた
いろは「勝手な事言っちゃってごめんね、でも純粋にあなたが心配なの」
いろは「私だってまだ子供だけど、フェリシアちゃんは私よりもずっと幼い頃から苦しんできた」
いろは「なのにいつまでも報われないままで、そんなの理不尽だよ」
いろは「フェリシアちゃんだって生きるために傭兵やってるって言ってたけど、本当はこんな危ない真似したくなかったよね?」
いろは「フェリシアちゃんにこれ以上誰かと喧嘩して欲しくないから」
いろは「いくら魔女が嫌いでも、魔法少女同士仲良くするべきだと思うよ」
フェリシア「オレ、何で今まで気付かなかったんだろう?」
フェリシア「親が死んでから忘れてた、こんなにオレの事を大事にしてくれる奴がいるなんて」
フェリシア「いつの間にか魔法少女になってて、散々バカな事やって施設からも追い出されて….」
フェリシア「そんなオレがどれだけ罪を重ねてきたか知っても、オレを見捨てたりしないで心から向き合ってくれる奴」
フェリシア「オマエが初めてだよ、いろは」
フェリシア「それに絵里っていう東京の姉ちゃんも、すごくいい奴だった」
いろは「そんないい人が何でやちよさんの敵にならなきゃいけないんだろう?」
やちよ「あいつの名前だけは出さないで」
やちよ「とりあえず環さんもフェリシアも、今日はうちに泊まっていかない?」
いろは「いいんですか?」
フェリシア「オレの事あんなに警戒してたのに、いいのかよ?」
やちよ「事情が変わったのよ、ほらもう暗くなってきたし早くみかづき荘に帰りましょう」
いろは「ありがとうございます」
フェリシア「こんなに温もり感じたのいつ以来だよ?」
そういっていろはちゃんたちは行ってしまった
穂乃果「のんびりしてたらもうこんな時間じゃん!」
穂乃果「うわ~とっくに門限過ぎてるし、帰ったら雷親父の説教が待ってる」
穂乃果「も~どうしよう?」
やちよ「あなたもまだ帰ってなかったの?」
穂乃果「ふぇっ?」
やちよ「まあ今頃帰った所で門限には間に合わないわね」
やちよ「仕方ないわ、せっかくだし今日も泊まりなさい」
穂乃果「2日連続ですいません」
鶴乃「ねえねえ、ししょー」
やちよ「何よ?」
鶴乃「私も泊まっていい?」
やちよ「あなたは近所なんだからまっすぐ帰りなさい」
鶴乃「もぉ~冗談だよぉ~!冷たいな~ししょーは」
穂乃果「そういえば自己紹介まだだったね」
穂乃果「私、絵里ちゃんと同じ音ノ木坂から来た高坂穂乃果です」
フェリシア「オマエがエリ姉の言ってた後輩か」
フェリシア「もう知ってるだろうけど、オレ深月フェリシアな」
フェリシア「もしまた神浜に来て困った事があったら頼ってくれ」
穂乃果「よろしくね、フェリシアちゃん」
なんだかこの街に少しずつ馴染んでいけそうな気がした
適当に話しながら歩いているうちにみかづき荘に着いた
とりあえず家には電話しておこうっと
―prrr
穂乃果「もしもしお母さん?」
穂乃果の母「穂乃果!昨日夜どうしてたのよ?」
母「全然連絡なかったから心配してたのよ」
穂乃果「あはは…ごめんね、でも大丈夫」
穂乃果「昨日と今日で2泊3日、七海やちよさんの家に泊めてもらう事になったから」
母「それならいいけど…って七海やちよってあのカリスマモデルの七海やちよさん!?」
穂乃果「うん、家にもサイン飾ってあるでしょ?」
母「もちろんよ、テレビでよく見てたけど」
母「あんたそんな有名人と出会ったの?」
穂乃果「最初は芸能人だって知らなかったけど、運命なのか?今では知り合いだよ」
母「そんなスターの人と身近で話せるなんて羨ましいわ」
母「くれぐれも失礼のないようにね」
穂乃果「分かってるよ、穂乃果だってもう高校生だからそれくらい」
母「ちょっと七海さんに代わりなさい!」
穂乃果「何で?」
母「あんたを泊めてもらうのにお礼がしたいから」
穂乃果「とかいって、芸能人と普通に話したいだけでしょ?」
母「うるさい!つべこべ言ってないで代わりなさい!」
穂乃果「わかったよ」
穂乃果「すいません、七海さん!」
穂乃果「ちょっと電話代わってもらっていいですか?」
やちよ「いいけど、どうして?」
穂乃果「2日連続で泊めてもらうって連絡したら、うちのお母さんがお礼したいって」
やちよ「わかった、失礼するわ」
七海さんと電話を代わってもらう
やちよ「はい、お電話代わりました!」
やちよ「こちらみかづき荘の七海やちよです」
母「あら、やだ~モデルの七海さんじゃない!」
母「昨日から娘がご迷惑をお掛けしております」
やちよ「いえ、とんでもありません」
やちよ「私が好きで泊めてるだけなので、そんなかしこまらないでください」
母「いやいや、当日いきなり泊めてもらっちゃって本当にありがとうございます!」
やちよ「娘さんも大変礼儀正しい方だったもので、何も心配には及びません」
母「そうでしたか….穂乃果の事、どうぞよろしくお願いします!」
やちよ「わざわざご挨拶いただきありがとうございます」
母「夜分遅くにごめんなさいね、それではおやすみなさい」
やちよ「はい、今日の所は失礼します」
―ガチャッ
やちよ「あなた、いいお母さんを持ったわね」
穂乃果「そんな、親としてお礼をするのは当たり前の事ですから」
やちよ「どこかの誰かさんも見習って欲しいものね」
フェリシア「なっ、何だよ?オレなんか間違ってるか?」
やちよ「さっそく部屋を散らかして、それが泊めてもらう人間の態度かしら?」
フェリシア「別に後で片付けるから文句ねえだろ」
やちよ「まったく、親のいない子供はマナーってものを知らないんだから」
やちよ「でもこんな生意気なお子ちゃまも嫌いじゃないわ」
いろは「食材も一応揃ってるみたいだし、今日は私が夜ご飯作ります」
フェリシア「マジで?やったー!」
フェリシア「ここんとこ、ずっとまともな飯食ってなかったから」
穂乃果「よかったら私も手伝うよ」
やちよ「あの…高坂さん」
穂乃果「はい」
やちよ「私の事、七海さんじゃなくて…」
やちよ「これからはやちよでいいから」
穂乃果「そんな….急に呼び捨てなんて」
やちよ「とかいってるくせに、あなたさっき学校の先輩の絢瀬絵里にはタメ口だったじゃない」
穂乃果「それは….絵里ちゃんは同じ部活の先輩で、もう一人の先輩の部長が部員限定に「先輩禁止」っていうルールを作ったから」
やちよ「それなら「みかづき荘」でも先輩禁止にしようかしら?」
いろは「鶴乃ちゃんやフェリシアちゃんはともかく、私やちよさんの事呼び捨てに出来ないですよ」
やちよ「別にダメじゃないけど、あなたは基本的に礼儀正しい子だから無理そうね」
穂乃果「それじゃあ…やちよちゃんでいいですか?」
やちよ「全然いいわ、それに敬語も使わなくていいから」
穂乃果「いや~さすがにそれは失礼かな?って思います」
やちよ「あなたと同い年の鶴乃だって私にタメ口だし」
やちよ「フェリシアに至っては、初対面にも関わらず誰に対しても呼び捨てでタメ口で話すような子よ」
穂乃果「それじゃあ….やちよちゃん、今夜もよろしくね」
やちよ「よろしく、穂乃果!」
こうして修学旅行は無事に終わり、一連の妹失踪事件もウワサの仕業であると分かって
そのウワサも私たちで力を合わせて壊滅して
絵里ちゃんとやちよちゃんの関係は相変わらず複雑なままだけど
私はこの一晩でみかづき荘のみんなとも鶴乃ちゃんとも仲良くなり
翌日、帰り際にみんなと連絡先まで交換しちゃった
これからも何かしら事件に巻き込まれるかもしれないけど
それでも私はみんなと一緒ならそれだけで十分幸せだよ
だからこの先、長い付き合いになるµ’sとみかづき荘をよろしくお願いします。
『完』
セリフが多くて文章が長くなってしまいましたが
最後までお読みいただきありがとうございました。
物語も本家の途中部分からになっておりますが
頭から見せるよりもあえて最初はストーリーを途中から流し始めて
後から過去のあらすじを公開するという演出にこだわりました
なのでµ'sが全員(ストーリー上はまだ8人)揃うまでの過去や
マギレコの第3章までの話はまだ下書き段階であるため
それらが完成次第、後ほど追って投稿しようと思ってます
そしてこの話の続きに関してはまだ1文字も執筆していないので
それも完成してから投稿するつもりです
基本的に私、即興での執筆が苦手なので
最初にWardで下書きを作って、少しずつ綴っていき
何度か読み直して修正して、ようやく完成してから一括投稿するという方針でやらせていただきます。
週末にはHTML化の申請をするので、しばらくスレは残しておきます
みなさんのご感想をお待ちしております。
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