アイドルと僕 (52)

あまり大きくはないステージの上で踊る彼女たち、というか彼女は、とても輝いて見えた。

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買い物を終えて駅に向かうと、駅前広場に小さなステージができていた。

この暑さのなかご苦労なことに、駅ナカのファッションビルの管理会社がイベントを開催しているらしい。

横目に見ながら通りすぎようとしていると、司会の男性が大きな声で言った。

「それではアスタの皆さんがお送りする、『星空は二度瞬く』です。どうぞ!」

曲名が耳に入って、ふと歩みを止めた。それは、高校生の頃によく聞いていたアイドルグループが歌っていたのと同じものだった。しかし、グループ名はまるで違う。

ステージを見ても、自分が知っているグループのメンバーもいない。

たまたま同じ名前の歌を持っている、全く別のグループか。

少し残念に思いつつ再び行だした瞬間、聞き覚えのあるイントロが耳に入って来た。

『あの日見た流れ星 私はまだ覚えてる』

それは正しく、俺の知る歌と同じフレーズだった。立ち止まってもう一度ステージを眺めると、俺の知らない人たちが、知ってる歌を全力で踊っていた。

そして、そこから動くことはできなくなってしまった。

彼女たちが何者なのかは分からないけれど、そこには確かなパワーを感じた。

ステージ付近の席では、ファンらしき人たちが大きな声でコールしていてる。熱烈なファンがいるようなグループなんだろうか。

一番のサビが終わる頃になると、俺は一人に視線が集中してしまうことに気づいた。

上手の端に立つ、少し小柄な女性だった。ツインテールになっているのは、本家のグループでその立ち位置のメンバーに寄せているからだろうか。

とてつもなくダンスが上手いわけでもなければ、歌も口パクのようではあるけれど、笑顔でそれをこなす彼女はきっとがんばり屋なんだろう。

ぼーっとその子を眺めていると、一曲目を聞き終えてしまった。

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